説明

汚れ脱離性を有する含フッ素繊維加工剤

【課題】 繊維製品などの基材に対して、それら基材が本来有する吸水性を大幅に損なう事なく、洗濯耐久性を維持しながら、優れた撥油性と防汚性と汚れ脱離性を付与する。
【解決手段】本発明の含フッ素共重合体は、
(a)フルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を有する単量体、および
(b)アルキレンオキサイド基を有する単量体、および
(c)アセトアセチル基を有する単量体、および
(d)酸アニオン基を有する単量体
から誘導された繰返単位を必須成分とし、
単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)と単量体(d)の量がそれぞれ30〜80重量部と10〜69重量部と0.5〜10重量部と0.1〜10重量部である。
本発明の含フッ素共重合体は、汚れ脱離性を有する含フッ素繊維加工剤の活性成分として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品などの被処理物品に、それら被処理物品が本来有する吸水性を大幅に損なう事なく、優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与し、かつ撥油性、防汚性および汚れ脱離性の洗濯耐久性に優れた含フッ素共重合体および含フッ素繊維加工剤に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維織物等に撥水撥油性を付与し、かつ繊維に付着した汚れを洗濯などにより除去しやすくする防汚加工剤として、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、フッ素含有化合物ともいう)と親水性基含有化合物との共重合体が知られている(特開昭49−75472号、同53−134786号、同53−134787号、同59−204980、特開平11−21765号、特開平11−49815号公報参照)。
【0003】
しかしながら、これらの含フッ素共重合体で処理された繊維織物等は必ずしも、洗濯耐久性において満足と言えるものではなく、また、しつこい汚れ(例えば、使用済みエンジンオイル等の廃油)に対しては十分かつ満足できる汚れ脱離性を付与できず、また、繊維織物等が本来有する吸水性を大幅に損なって撥水性を付与する傾向にある。繊維織物等へ撥水性が付与されると、例えば、衣料用途においては、汗を吸わない点で着心地が悪くなるため、繊維織物等の吸水性を大幅に損なわせないことが重要である。
十分な汚れ脱離性を得るには、撥油性とflip-flop性が重要とされ、空気中ではパーフルオロアルキル基(以下、Rf基と略す)が表面に配向し、高い撥油性を示しながら、水中ではこれとは逆に、Rf基が後退し、親水性基が表面に配向して、汚れが落ちやすくなるとされている。Flip-flop性とは、空気中と水中で環境に応じて表面分子構造が変化する性質であり、Shermanらによって提唱されている。[P.Sherman, S.Smith, B,Johannessen, Textile Research Journal,39,499(1969)]
Rf基は鎖長が短いとRfの結晶性の低下とともに撥油性も低下する傾向にあり、油汚れで被処理物品が汚染しやすくなる。このため、Rf基の炭素数は実質的に8以上のものが使用されてきた。(特開昭53−134786号公報参照)
【0004】
さらに、最近になってテロメリゼーションによって得られる炭素数8のRf基を含有する化合物については、
Federal Register(FR Vol.68,No.73/April 16,2003[FRL-2303-8])(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)や
EPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003
EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf) やEPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)が、テロマーが分解または代謝により perfluorooctanoic acid(以下、「PFOA」と略す)を生成する可能性があると公表している。
EPA(米国環境保護庁)は、PFOAに対して科学的調査を強化することを発表している。(EPAレポート"PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf) 参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭49−75472号公報
【特許文献2】特開昭53−134786号公報
【特許文献3】特開昭53−134787号公報
【特許文献4】特開昭59−204980号公報
【特許文献5】特開昭53−134786号公報
【特許文献6】特開平11−21765号公報
【特許文献7】特開平11−49815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、繊維織物等の基材に対して、その中でも特に綿を中心とする天然繊維や混紡繊維において、それら繊維が本来有する吸水性を大幅に損なう事なく、洗濯耐久性を維持しながら、優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与する含フッ素繊維加工剤を提供すること、更にはフルオロアルキル基の炭素数が8未満と従来に比較して短くても、同様に優れた汚れ脱離性を有する含フッ素繊維加工剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(a)フルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を有する単量体、および
(b)アルキレンオキサイド基を有する単量体、および
(c)アセトアセチル基を有する単量体、および
(d)酸アニオン基を有する単量体
から誘導された繰返単位を必須成分とする含フッ素共重合体であって、
単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)と単量体(d)の量がそれぞれ30〜80重量部と10〜69重量部と0.5〜10重量部と0.1〜10重量部である含フッ素共重合体を提供する。
本発明の含フッ素共重合体は、汚れ脱離性を有する含フッ素繊維加工剤の活性成分として機能する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維製品などに、それら繊維が本来有する吸水性を大幅に損なう事なく、優れた撥油性と防汚性と汚れ脱離性を付与し、かつ撥油性と防汚性と汚れ脱離性の洗濯耐久性に優れた加工が可能となる。特に、綿を中心とする天然繊維またはその混紡繊維に対してはその効果が著しい。
また、含フッ素共重合体中のパーフルオロアルキル基の炭素数が8未満であっても、上記の優れた性能を有する含フッ素繊維加工剤が得られる。
従来技術では、パーフルオロアルキル基の炭素数が8未満の場合、汚れ脱離性が低下してしまうが、本発明によれば、炭素数8未満のパーフルオロアルキル基を有する重合性単量体を用いても高flip−flop性と空気中での撥油性維持を両立し、優れた汚れ脱離性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の含フッ素共重合体は、
(a)フルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を有する単量体、および
(b)アルキレンオキサイド基を有する単量体、および
(c)アセトアセチル基を有する単量体、および
(d)酸アニオン基を有する単量体
から誘導された繰返単位を必須成分とする含フッ素共重合体である。
更に必要により、前記単量体(a)、(b)、(c)、(d)と共重合可能な不飽和二重結合を有する、前記単量体(a)、(b)、(c)、(d)以外の単量体(e)から誘導される繰返単位を有してもかまわない。
【0010】
一般に、単量体(b)、(c)、(d)および(e)は、フッ素原子を含有しない。
フルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を有する単量体(a)において、フルオロアルキル基の炭素数は、1〜21、例えば1〜8、特に4〜6であり、フルオロアルケニル基の炭素数は、3〜21、例えば3〜8、特に4〜6であることが好ましい。
【0011】
単量体(a)は一般式(1):
C(−A)(−D)=C(−X)−Y−[Q−Z−]−T−R (1)
[式中、AおよびDおよびXは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFL基(但し、LおよびLは、水素原子、フッ素原子または塩素原子である)、シアノ基、炭素数4〜6の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
は、−C(=O)−O−または−C(=O)−NH−または−O−または
−O−(CFCF(−CF)O−)−(但し、gは1〜21である)であり;
Qは、−(CHn−または−(CHn−N(−Q1)−(但し、nは1〜10、Qは水素原子またはC2q+1、qは1〜30である)であり;
Zは、−S−、−SO−または−SO−または−C(−Z)(−Z)−(但し、ZおよびZは水素原子または−OHまたは−OCO−C2w+1(wは1〜30)である)であり;
Tは、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基または環状脂肪族基であり;
は、直鎖状または分岐状の炭素数1〜21のフルオロアルキル基または炭素数3〜21のフルオロアルケニル基であり;
pは0または1である。]
で表されるものである事が好ましい。
【0012】
単量体(a)は、例えば、アクリレートエステル化合物、アクリルアミド化合物またはビニルエーテル化合物であってよい。
【0013】
Tの具体例は、次のとおりである。
−(CH2)
[mは0〜10(例えば1〜5)である。]

【0014】
一般式(1)において、Rf基の炭素数は、1〜21、例えば1〜8、特に4〜6のパーフルオロアルキル基または3〜21、例えば3〜8、特に3〜6のパーフルオロアルケニル基であることが好ましい。
Rf基がフルオロアルキル基である場合、Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3)2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)2H、−CF2CFHCF3、−(CF2)4H、−(CF2)6H等である。Rf基がフルオロアルケニル基である場合、Rf基の例は、−CF=CFCF3、−CF=C(CF3)2、−CF=C(CF3)(CF2CF2CF3)、−CF=C(CF3)(CF(CF3)2)、−C(CF3)=CF(CF(CF3)2) 、−C(CF2CF3)=C(CF3)2等である。
【0015】
一般式(1)の具体例として以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
アクリレートエステル化合物またはアクリルアミド化合物の具体例:
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)10−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)10−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Br)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−I)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Rf)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH2−C6H5)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−C6H5)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
【0016】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−N(−CH3)−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−N(−CH3)−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−N(−CH3)−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−N(−CH3)−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−N(−C2H5)−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−N(−C2H5)−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−N(−C4H9)−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−CH2−CH(−OCO−CH3)−CH2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−CH2−CH(−OCO−CH3)−CH2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−CH2−CH(−OCO−CH3)−CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2−CH(−OH)−CH2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−CH2−CH(−OH)−CH2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−CH2−CH(−OH)−CH2−Rf
【0017】

【0018】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0019】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0020】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0021】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0022】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0023】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0024】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
[式中、Rfは直鎖状または分岐状の炭素数1〜21、例えば1〜8、特に4〜6のフルオロアルキル基または炭素数3〜21、例えば3〜8、特に3〜6のフルオロアルケニル基である。]
【0025】
ビニルエーテル化合物の具体例:
CF2=C(−F)−O−Rf
CF2=C(−F)−O−CH2−Rf
CF2=C(−F)−O−CH2−CH2−Rf
CH2=C(−H)−O−CH2−CH2−Rf
CF2=C(−F)−O−CH2−CH(−OH)−CH2−Rf
CH2=C(−H)−O−CH2−CH(−OH)−CH2−Rf
CH2=C(−H)−O−(CF2−CF(−CF3)−O)2−Rf
CH2=C(−Cl)−O−(CF2−CF(−CF3)−O)2−Rf
[式中、Rfは直鎖状または分岐状の炭素数1〜21、例えば1〜8、特に4〜6のフルオロアルキル基または炭素数3〜21、例えば3〜8、特に3〜6のフルオロアルケニル基である。]
単量体(a)は、2種類以上の混合物であってよい。
【0026】
単量体(b)は、アルキレンオキサイド基において、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を有することが好ましい。
単量体(b)は一般式(2):
C(−A)(−D)=C(−X)−Y−[E−O−]−G (2)
[式中、AおよびDおよびXは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
は、−C(=O)−O−または−C(=O)−NH−または−O−であり;
Eは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり;
rは1〜50であり;
Gは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基である。]
で表されるものが好ましい。Eは、特にエチレンまたはプロピレンであることが好ましい。
【0027】
一般式(2)の具体例は、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
























単量体(b)は、2種類以上の混合物であってよい。
【0028】
単量体(c)としては、アセトアセチル基(CH3-CO-CH2-CO-)および炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。アセトアセチル基は被処理物との密着性に優れ、また、分子内に活性メチレン基を有すため、架橋剤(例えば、イソシアネート化合物)とも良く反応し、洗濯耐久性を向上させる。
【0029】
単量体(c)は、一般式(3):
CH3-CO-CH2-CO-O-Q3-B3 (3)
[式中、Q3は直接結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、
は、アクリロイル基(CH=CH−CO−O−)、メタクリロイル基(CH=C(CH)−CO−O−)、アクリルアミド基(CH=CH−CO−NH−)、メタクリルアミド基(CH=C(CH)−CO−NH−)またはアリル基(CH=CH−CH−)である。]
で表されるものであることが好ましい。Q3は-(CH2)m-(mは0〜10、特に1〜5の数である)であることが好ましい。
【0030】
単量体(c)の具体例としては、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド、アセト酢酸ビニルおよびアセト酢酸アリルなどが挙げられる。アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
単量体(d)としては、酸アニオン基および炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。単量体(d)は、酸アニオン基を形成できる遊離酸または塩の形態の酸基を有する。
酸アニオン基は、遊離酸基から少なくとも1つ(例えば、1つまたは2つの)水素原子を除いた後に残るアニオン基である。
酸基は、カルボン酸基(−C(=O)OH)、リン酸基(-O-P(=O)(OH)2)、ホスホン酸基(-P(=O)(OH)2)、ホスフィン酸基(-P(=O)H(OH))、硫酸基(-O-S(=O)2OH)、スルホン酸基(-S(=O)2OH)、スルフィン酸基(-S(=O)OH)およびこれらの塩からなる群から選択されたものである。
酸基は、塩を形成できる部位となる。
塩を形成することにより、水への溶解性乃至分散性が向上する。また、繊維加工剤として、繊維基材に付与する吸水性を向上させ得る。
【0032】
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アクリルアミド−tert.ブチルスルホン酸,2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸,2−スルホエチルアクリレート,2−スルホエチルメタクリレート,2−スルホプロピルアクリレート,4−スルホフェニルアクリレート,2−ヒドロキシ−3−スルホプロピルアクリレート,2−アクリルアミドプロパンスルホン酸,4−メタクリルアミドベンゼンスルホン酸,p−スチレンスルホン酸などが挙げられる。
カルボン酸基を有する単量体の具体例としては、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸,2−アクリロイルオキシエチルコハク酸,2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸,2−アクリロイルオキシエチルフタル酸,2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸,2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸,2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸,2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸,2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸,イタコン酸,カルボキシエチルアクリレート,メタクリロキシエチルトリメリット酸,クロトン酸,N−アクリロイルアラニン,無水マレイン酸,無水シトラコン酸,4−ビニル安息香酸などが挙げられる。
リン酸基を有する単量体の具体例としては、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート,2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート,アシッドホスフォキシプロピルメタクリレート,3−クロロ−2−アシッドホスフォキシプロピルメタクリレート,2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエタノールアミンハーフ塩などが挙げられる。
【0033】
単量体(d)は一般式(4):
C(−A)(−D)=C(−X)−Y−J (4)
[式中、AおよびDおよびXは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、−COOH基、−CHCOOH基であり;
は、−C(=O)−O−または−C(=O)−NH−または−O−であり;
Jは、水素原子、−M−U(ただし、Mは直接結合または炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキレン基または炭素数1〜4のオキシアルキレン基、Uはスルホン酸、カルボン酸、リン酸またはジカルボン酸の一つのカルボキシル基から1つの水素を除いた残基、またはそれらの塩)である。]
で表されるものが好ましい。
【0034】
一般式(4)の具体例は、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CH-CONH-C(CH3)2-CH2-SO3H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2CH2O)n-SO3・Na



単量体(c)は、2種類以上の混合物であってよい。
【0035】
本発明の共重合体において、単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)と単量体(d)の量がそれぞれ30〜80重量部と10〜69重量部と0.5〜10重量部と0.1〜10重量部である。好ましくはそれぞれ50〜80重量部と15〜49重量部と0.5〜5重量部と0.5〜5重量部である。単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)と単量体(d)の量の合計は100重量部であることが好ましい。
【0036】
本発明の共重合体には、汚れ脱離性の耐久性向上、有機溶剤への溶解性、柔軟性の付与、被処理物への密着性などを目的として、他の単量体(e)を導入してもよい。その具体例として例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル、エチレン、塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル、グリセロール(メタ)アクリレート、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートのようなイソシアネート基含有(メタ)アクリレートまたはメチルエチルケトオキシム等のブロック化剤でイソシアネート基がブロックされたそれらの(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。他の単量体(e)の量は、共重合体に対して好ましくは0〜40重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、例えば、1〜10重量%の範囲であってよい。また、他の単量体(e)は2種類以上の混合物であってよい。
【0037】
本発明の共重合体の重量平均分子量は、1000〜1000000、好ましくは5000〜500000であってよい。1000〜1000000であることにより、高い汚れ脱離性が得られ、取り扱いが容易であるように重合体液の粘度が低い。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。
【0038】
本発明の共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体、グラフト共重合体であってもよい。
【0039】
本発明の共重合体を得る為の重合方法は、特に限定されず塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合などの種々重合方法を選択できるが、例えば一般的には有機溶剤を用いた溶液重合や、水または有機溶剤と水を併用する乳化重合が選定され、重合後に水で希釈したり、乳化剤を加えて水に乳化することで処理液に調製される。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類、1−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0040】
乳化重合や、重合後に乳化剤を加えて水に乳化する場合の乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の一般的な各種乳化剤を使用し得る。
重合開始剤として、例えば過酸化物、アゾ化合物、過硫酸系化合物を使用し得る。重合開始剤は、一般に、水溶性および/または油溶性である。
油溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチル4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ−第三級−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t−ブチル等が好ましく挙げられる。
【0041】
また、水溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が好ましく挙げられる。
重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
また、含フッ素共重合体の分子量調節を目的として公知のメルカプト基含有化合物を使用してもよく、その具体例として2−メルカプトエタノール、チオプロピオン酸、ドデシルメルカプタンなどが挙げられる。メルカプト基含有化合物は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
具体的には、共重合体は、以下のようにして製造できる。
【0042】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、例えば50〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤は、一般に、油溶性重合開始剤であってよい。有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類、1−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる
有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0043】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、例えば50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、水溶性重合性開始剤および/または油溶性重合開始剤であってよい。
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、水溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。乳化剤としては、カチオン性、アニオン性およびノニオン性の一般的な各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲で用いられる。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0044】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜80重量部、例えば5〜50重量部の範囲で用いてよい。
【0045】
このようにして得られた共重合体は、必要により水や有機溶剤等に希釈または分散された後、乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなどの任意の形態に調製でき、加工剤とすることが可能である。共重合体は、加工剤の有効成分として機能する。加工剤は、含フッ素共重合体および媒体(特に、液状媒体)(例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。加工剤において、含フッ素共重合体の濃度は、例えば、0.01〜50重量%であってよい。
本発明の加工剤は、含フッ素共重合体および水性媒体を含んでなることが好ましい。本明細書において、「水性媒体」とは、水のみからなる媒体、および水に加えて有機溶剤(有機溶剤の量は、水100重量部に対して、80重量部以下、例えば0.1〜50重量部、特に5〜30重量部である。)をも含有する媒体を意味する。
【0046】
本発明の共重合体は、被処理物品の種類や前記調製形態(乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなど)などに応じて、任意の方法で加工剤として被処理物品に適応され得る。例えば、水性乳濁液や有機溶剤溶液である場合には、浸漬塗布、スプレー塗布等のような被覆加工の既知の方法により、被処理物の表面に付着させ乾燥する方法が採用され得る。この際、必要ならばキュアリング等の熱処理を行っても良い。
また、必要ならば、他のブレンダーを併用することも可能である。例えば、撥水撥油剤、防シワ剤、防縮剤、難燃剤、架橋剤、帯電防止剤、柔軟剤、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ワックスエマルション、抗菌剤、顔料、塗料などである。これらのブレンダーは被処理物、処理時に処理浴に添加して使用しても良いし、あらかじめ、可能なら、本発明の共重合体と混合して使用しても良い。
【0047】
被処理物品としては、特に限定されないが繊維製品の他、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。特に繊維製品に対して有用である。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。
【0048】
本発明においては、被処理物品を加工剤で処理する。「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素共重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0049】
次に、実施例、比較例および試験例を挙げて本発明を詳しく説明する。ただし、これらの説明が本発明を限定するものでない。
以下において、部または%は、特記しない限り、重量部または重量%を表す。
【0050】
(1)汚れ脱離性
汚れ脱離性の試験は、米国のAATCC Stain Release Management Performance Test Methodに準じて行った。試験用の汚れにはコーンオイルまたはミネラルオイルまたは人工油を使用した。人工油はカーボンブラック16.7%、牛脂極度硬化油20.8%、流動パラフィン62.5%からなるダイヤペースト1gにダフニーメカニックオイル(出光興産製)100mlを加えて調製した。
水平に敷いたブロッティングペーパーの上に20cm四方の試験布を広げ、汚れとして人工油を5滴(約0.2cc)を試験布に垂らす。その上からグラッシンペーパーをかけて、さらに2268gの分銅をのせ、60秒、放置する。60秒後に分銅とグラッシングペーパーを取り除き、そのまま、室温で15分、放置する。15分経過後、試験布にバラスト布を加えて1.8kgとし、洗剤(AATCC標準のWOB洗剤)100gを使用して、AATCC標準洗濯機(米国ケンモア社製)で浴量64リットル、浴温38℃の条件で12分間洗濯し、濯いだ後、AATCC標準タンブラー乾燥機(米国ケンモア社製)で試験布を乾燥する。乾燥した試験布の残存シミ汚れの状態を判定用標準写真板と比較し、汚れ脱離性能を該当する判定級(表1参照)をもって表す。判定用標準写真板は、AATCC―TM130−2000(American Association of Textile Chemists and Colorists Test Method 130-2000)のものを使用した。
【0051】
【表1】

【0052】
(2)吸水性
吸水性の試験は、繊維製品を用いてAATCC−TM79−2000に準じて行った。即ち、試験布を水平に広げ、水を50μLを垂らしてから、水滴が試験布に染込んで鏡面反射が無くなるまでの時間を測定した。
【0053】
(3)撥油性
撥油性の試験は、繊維製品を用いてAATCC−TM118−2000に準じて行った。即ち、試験布を水平に広げ、表2に示す試験溶液を1滴落し、30秒後の浸透状態で判定する。撥油性が低い場合は、空気中で油汚れが被処理物品に進入して除去困難となる為、汚れ脱離性の試験と並び重要な評価指標となる。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例1
100mL4つ口フラスコに2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA)14g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)(AE-400)4g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.4g、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)0.6g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS) 1gとイソプロピルアルコール30gを仕込んで60分間窒素フローした。内温を75−80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル0.12gを添加し、8時間反応させ、含フッ素共重合体を得た。含フッ素共重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。最後に、苛性ソーダを加えて中和し、含フッ素共重合体の20%溶液になるように水で希釈した。単量体の組成及び重量比を表3に示す。また、表3中の略号に関する説明を表4に示す。
【0056】
実施例2〜5
表3に示す組成および重量比の単量体に変更する以外は実施例1と同様の手順を繰り返すことで、最終的に20%の含フッ素共重合体溶液を得た。含フッ素共重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。単量体の組成及び重量比を表3に示す。また、表3中の略号に関する説明を表4に示す。
【0057】
比較例1
100mL4つ口フラスコに2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA) 14g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)(AE-400)4g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1g、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)0.5g、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)0.5gとイソプロピルアルコール30gを仕込んで60分間窒素フローした。内温を75−80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル0.12gを添加し、8時間反応させ、含フッ素共重合体を得た。含フッ素共重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。最後に、酢酸を加えて中和し、含フッ素共重合体の20%溶液になるように水で希釈した。単量体の組成及び重量比を表3に示す。また、表3中の略号に関する説明を表4に示す。
【0058】
比較例2
100mL4つ口フラスコに2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA) 10g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)(AE-400)5.8g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)3.8g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)0.2g、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(T-M)0.2gとイソプロピルアルコール30gを仕込んで60分間窒素フローした。内温を75−80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル0.12gを添加し、8時間反応させ、含フッ素共重合体を得た。含フッ素共重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。最後に、苛性ソーダを加えて中和し、含フッ素共重合体の20%溶液になるように水で希釈した。単量体の組成及び重量比を表3に示す。また、表3中の略号に関する説明を表4に示す。
【0059】
比較例3
表3に示す組成および重量比の単量体に変更する以外は比較例1と同様の手順を繰り返すことで、最終的に20%の含フッ素共重合体溶液を得た。含フッ素共重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。単量体の組成及び重量比を表3に示す。また、表3中の略号に関する説明を表4に示す。
【0060】
試験例1
実施例1で得られた含フッ素共重合体の20%水分散液 11.0部
NICCA Assist V2(MDI系ブロックドイソシアネート、日華化学) 0.25部
NICCA Sunmarina S-750(ポリエチレンワックス水分散体、日華化学) 1.70部
ベッカミンNS-19 (グリオキザールレジン、大日本インキ化学) 8.0部
ベッカミンX-80 (グリオキザールレジン用触媒、大日本インキ化学) 2.4部
水道水 76.65部
【0061】
上記の割合で、実施例1で得られた含フッ素共重合体溶液とブロックドイソシアネート等の薬剤を水で希釈し、加工処理液を調製した。このようにして得られた処理液に、100%綿ツイル布を浸漬し、ロールで絞ってウエットピックアップが60mass%となるようにした。次いで、布を160℃で3分間、乾燥、熱処理することにより、加工剤処理を完了した。これらの布について、汚れ脱離性、吸水性および撥油性を測定した。結果を表5に示す。
また、洗濯耐久性を評価する目的で被処理布をAATCC法に準じ、浴温40℃で1回あたりの洗濯時間が12分(すすぎ等の時間は含まず)のノーマルコンディションで洗濯し、タンブラー乾燥を行い、これを1サイクルとし、このサイクルを繰り返し行った被処理布についても汚れ脱離性、吸水性および撥油性を測定した。結果を表5に示す。
【0062】
試験例2〜5及び比較試験例1〜3
含フッ素共重合体の20%水分散液をそれぞれ実施例2〜5及び比較例1〜3で得られたものに変更する以外は、試験例1と同様の手順で処理液を調製し、布処理し、汚れ脱離性、吸水性および撥油性を測定した。結果を表5に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を有する単量体、および
(b)アルキレンオキサイド基を有する単量体、および
(c)アセトアセチル基を有する単量体、および
(d)酸アニオン基を有する単量体
から誘導された繰返単位を必須成分とする含フッ素共重合体であって、
単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)と単量体(d)の量がそれぞれ30〜80重量部と10〜69重量部と0.5〜10重量部と0.1〜10重量部である含フッ素共重合体。
【請求項2】
単量体(a)が一般式(1):
C(−A)(−D)=C(−X)−Y−[Q−Z−]−T−R (1)
[式中、AおよびDおよびXは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFL基(但し、LおよびLは、水素原子、フッ素原子または塩素原子である)、シアノ基、炭素数4〜6の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
は、−C(=O)−O−または−C(=O)−NH−または−O−または
−O−(CFCF(−CF)O−)−(但し、gは1〜21である)であり;
Qは、−(CHn−または−(CHn−N(−Q1)−(但し、nは1〜10、Qは水素原子またはC2q+1、qは1〜30である)であり;
Zは、−S−、−SO−または−SO−または−C(−Z)(−Z)−(但し、ZおよびZは水素原子または−OHまたは−OCO−C2w+1(wは1〜30)である)であり;
Tは、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基または環状脂肪族基であり;
は、直鎖状または分岐状の炭素数1〜21のフルオロアルキル基または炭素数3〜21のフルオロアルケニル基であり;
pは0または1である。]
で表される請求項1記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
単量体(a)におけるフルオロアルキル基の炭素数が4〜6およびフルオロアルケニル基の炭素数が3〜6である請求項2記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
単量体(a)におけるフルオロアルキル基およびフルオロアルケニル基がそれぞれパーフルオロアルキル基およびパーフルオロアルケニル基である請求項2記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
単量体(b)が一般式(2):
C(−A)(−D)=C(−X)−Y−[E−O−]−G (2)
[式中、AおよびDおよびXは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
は、−C(=O)−O−または−C(=O)−NH−または−O−であり;
Eは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり;
rは1〜50であり;
Gは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基である。]
で表される請求項1記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
単量体(c)がアセトアセチル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物である請求項1記載の含フッ素重合体。
【請求項7】
単量体(c)が一般式(3):
CH3-CO-CH2-CO-O-Q3-B3 (3)
[式中、Q3は直接結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、
は、アクリロイル基(CH=CH−CO−O−)、メタクリロイル基(CH=C(CH)−CO−O−)、アクリルアミド基(CH=CH−CO−NH−)、メタクリルアミド基(CH=C(CH)−CO−NH−)またはアリル基(CH=CH−CH−)である。]
で表されるものである請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項8】
単量体(c)がアセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド、アセト酢酸ビニルおよびアセト酢酸アリルからなる群から選択されたものである請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項9】
単量体(d)が、酸アニオン基を形成できる遊離酸または塩の形態の酸基を有する請求項1記載の含フッ素重合体。
【請求項10】
単量体(d)における酸基が、カルボン酸基(−C(=O)OH)、リン酸基(-O-P(=O)(OH)2)、ホスホン酸基(-P(=O)(OH)2)、ホスフィン酸基(-P(=O)H(OH))、硫酸基(-O-S(=O)2OH)、スルホン酸基(-S(=O)2OH)、スルフィン酸基(-S(=O)OH)、およびこれらの塩からなる群から選択された基である請求項9記載の含フッ素重合体。
【請求項11】
酸基が、スルホン酸基またはその塩である請求項9記載の含フッ素重合体。
【請求項12】
単量体(d)が一般式(4):
C(−A)(−D)=C(−X)−Y−J (4)
[式中、AおよびDおよびXは、水素原子、メチル基、炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、−COOH基、−CHCOOH基であり;
は、−C(=O)−O−または−C(=O)−NH−または−O−であり;
Jは、水素原子、−M−U(ただし、Mは直接結合または炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキレン基または炭素数1〜4のオキシアルキレン基、Uはスルホン酸、カルボン酸、リン酸またはジカルボン酸の一つのカルボキシル基から1つの水素を除いた残基、またはそれらの塩)である。]
で表される請求項1記載の含フッ素重合体。
【請求項13】
請求項1に記載の含フッ素共重合体を有効成分とする繊維加工剤。
【請求項14】
含フッ素共重合体および液状媒体を含んでなる請求項13に記載の繊維加工剤。
【請求項15】
請求項13または14に記載の繊維加工剤で繊維基材を処理することを特徴とする繊維基材の処理方法。
【請求項16】
繊維加工剤を塗布して乾燥した後の前記含フッ素重合体で被覆された繊維基材において、含フッ素重合体の重量が、繊維基材の0.05〜10重量%である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の処理方法で被覆された繊維基材。

【公開番号】特開2010−222382(P2010−222382A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189434(P2007−189434)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】