説明

汚れ除去液及び汚れ除去方法

【課題】本発明は、毒性発現の可能性の極めて低い又は毒性発現の報告例が無いグリコール類を用いた汚れ除去液及び汚れ除去方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の汚れ除去液の組成は、36〜44容量部の1,3−ブチレングリコールと、36〜44容量部のジプロピレングリコールと、6〜16容量部のトリプロピレングリコールモノブルエーテルと、0.5〜1.5容量部の灯油と、0.5〜1.5容量部のオレンジオイルと、3〜7容量部のテルピネオールと、1〜5容量部の界面活性剤と、0.05〜0.3容量部の除菌剤とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道や物品等の表面に付着した汚れを除去する汚れ除去液及び汚れ除去方法に関し、より詳細には、歩道や物品等の表面に付着したチューインガムやガムテープ等を除去する汚れ除去液及び汚れ除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の公衆道徳の低下や、社会への漠然とした不満等の複合的な要因により、ゴミが歩道等上にまき散らされている。そのなかでも、噛まれた後のチューインガム以外のゴミ類は、容易に清掃できる。しかし、噛まれた後のチューインガムは、粘着性が有るため、歩道等上に付着して残り、軟らかいうちは歩行者の靴裏に付着し、また、時間の経過とともに、歩道等上で踏まれ、また直射日光にさらされて、そのまま変性固化して、表面に埃等が付き、次第に真っ黒い点に変化する。
【0003】
このように歩道等に付着固化したチューインガムを除去するには、清掃者がかがんでヘラ等で剥がしていた。しかし、このようなガム剥がし作業に際して、作業者は、かがんだ状態で連続して作業する必要があり、重労働となるため、全ての歩道に対して、ガム剥がしを行うことが困難となっていた。そして、このようなチューインガムを短時間で溶解する溶剤があれば、ガム剥がしという力仕事を軽減できると考えられている。
【0004】
また、従来から物品の表面に付着したチューインガム等の汚れを除去するものが、下記の通り市販されている。例えば、株式会社サンオレンジから販売されているガム取り用洗剤は、柑橘類の皮の成分であるリモネンを主成分とする。また、株式会社アサヒペンから販売されているガム取りは、リモネン等の天然オイル、界面活性剤、水などを含む。このガム取りの使用説明には、ジュータン・カーペット、皮革製品、その他布地、毛髪、床面にこびりついたチューインガムの除去が用途として記載されている。
【0005】
なお、歩道の材料としては、他の都市部においても同様と思われるが、東京都新宿区においては、約70%がアスファルト、約20%が浸透性が高いリサイクルブロック(浸透性レンガ)、残りの約10%が人造石や天然石等の石製である。しかし、上記市販品では、これらの全て歩道の材料を傷めることなく、チューインガムを十分に短時間で溶解することができるものは、存在していなかった。
【0006】
そこで、本出願人は、歩道や物品等の表面に付着固化したチューインガム等の汚れを効果的に除去するために、特願2007−315349号(特開2008−163321号公報)として、汚れ除去液及び汚れ除去方法に関する発明を出願した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−163321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載される処方は、グリコール類としてエチレングリコールとそれから製造されるポリエチレングリコール類が主成分の一つであった。しかし、これらのグリコール類がヒト体内で代謝されてシュウ酸を生じることによる傷害が起こることが報告された。当該汚れ除去液は、正しい使い方をしている限りにおいて直接ヒトによって摂取される可能性は無いが、ごく一部は道路に付着して環境に拡散する。それが食物循環系を通してヒト体内に入らないとも限らない。
【0009】
そこで、本発明は、特許文献1に開示される主剤のひとつであるグリコール類を、毒性発現の可能性の極めて低い又は毒性発現の報告例が無いグリコール類に変更した汚れ除去液及び汚れ除去方法の提供を第1の目的とする。
【0010】
また、特許文献1に記載される処方では、石畳、緻密な合成石で舗装された路面には極めて有効であったが、多孔質のアスファルト等の粗い路面には不向きであった。
【0011】
そこで、本発明は、新規にアスファルト、コンクリート等の非常に粗い表面を有して透水性の高い、道路、駅構内床、建物床等のガム取りに対して、効果的に汚れを除去できる汚れ除去液及び汚れ除去方法の提供を第2の目的とする。
【0012】
さらに、催し物や祭事会場において、目印や機材の固定のために、粘着性の紙、ガムテープ、セロハンテープ等の粘着物が路面や床等に貼り付けられることがある。これらの粘着物は、行事が終了した後に剥がされるべきものである。しかし、粘着物が剥がし忘れられて時間が経過すると、変性固化して非常に剥がしにくくなる。そこで、本発明は、チューインガムに限らず、各種の粘着物を剥がすことができる汚れ除去液及び汚れ除去方法を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、第1の発明の汚れ除去液は、極性溶媒と、非極性溶媒と、界面活性剤と、除菌剤とを含む汚れ除去液であって、前記極性溶媒は、プロピレングリコールと、ジプロピレングリコールと、トリプロピレングリコールと、これらのエーテルと、1,3−ブチレンブリコールと、から選択された複数の溶媒であり、前記プロピレングリコールのエーテルは、プロピレングリコールモノメチルエーテルと、プロピレングリコールモノエチルエーテルと、プロピレングリコールモノプロピルエーテルと、プロピレングリコールモノブチルエーテルと、から選択された何れか一つ又は複数の溶媒であり、前記ジプロピレングリコールのエーテルは、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルと、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルと、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルと、から選択された何れか一つ又は複数の溶媒であり、前記トリプロピレングリコールのエーテルは、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテルと、トリプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテルと、から選択された何れか一つ又は複数の溶媒である。
【0014】
第2の発明の汚れ除去液は、極性溶媒と、非極性溶媒と、界面活性剤と、除菌剤とを含む汚れ除去液であって、前記極性溶媒は、1,3−ブチレングリコールと、ジプロピレングリコールと、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルと、から選択された複数の溶媒の混合物である。
【0015】
前記汚れ除去液において、前記極性溶媒は、1,3−ブチレングリコールと、ジプロピレングリコールと、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルと、からなる三種の溶媒の混合物である。前記汚れ除去液において、36〜44容量部の前記1,3−ブチレングリコールと、36〜44容量部の前記ジプロピレングリコールと、10〜12容量部の前記トリプロピレングリコールモノブチルエーテルと、0.5〜1.5容量部の前記非極性溶媒と、1〜3容量部の前記界面活性剤と、0.05〜0.2容量部の前記除菌剤と、を含む。
【0016】
前記除菌剤は、グルコン酸クロルヘキシジンである。前記非極性溶媒は、常温で液体の炭化水素である。前記汚れ除去液において、汚れ成分の溶解を助けるために、親水性及び疎水性を有する第1の溶解助剤をさらに含む。前記第1の溶解助剤は、テルピネオールである。前記汚れ除去液において、汚れ成分の溶解を助けるために、親水性を有さず疎水性を有する第2の溶解助剤をさらに含む。前記第2の溶解助剤は、リモネンまたはオレンジオイルである。
【0017】
本発明の汚れ除去方法は、前記汚れ除去液を用いる汚れ除去方法であって、前記汚れ除去液を汚れが付着した清掃面に与える工程と、前記汚れ除去液が与れられた前記汚れをこすって除去する工程と、前記こすられた前記清掃面を水で洗浄または拭い取る工程と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る汚れ除去液及び汚れ除去方法によれば、汚れ除去液がヒトに摂取されたとしても代謝されてシュウ酸を生じることによる毒性発現がなく、同時に、石畳、緻密な合成石で舗装された路面のみならず、開口率の大きいアスファルト等の粗い路面の上に付着固化したチューインガムやガムテープ等の汚れを効果的に除去することができ、且つ清掃面を傷めることないため、環境に優しく街や屋内の環境を美化に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の汚れ除去液に関する実施の形態を説明する。本発明の汚れ除去液は、以下の基本方針(1)〜(7)の下で、成分を選択した。
【0020】
(1)環境に負荷の係らない溶剤は、水(HO)以外に存在しないことを踏まえて、可能な限り毒性の少ない溶剤を組み合わせた。特に、ヒトへの安全のために、環境ホルモン等の性質を帯びやすい芳香族炭化水素および芳香環を持つ溶剤を完全に避けた。また、汚れ除去液の全ての成分が、万一ヒトの口に入ったとしても、ほとんど無害なものから構成するようにした。
【0021】
(2)したがって、家庭用食器洗剤等の一般家庭で使用されているものを優先的に選んだ。
【0022】
(3)作業の安全面から引火点の高いもの(少なくとも80℃以上が好ましい)を第1成分(主成分)に選んだ。
【0023】
(4)一般的に、チューインガムは、植物性樹脂(天然チクル)や酢酸ビニル樹脂等からなるガムベースと、砂糖やキシリトールからなる甘味料と、ガムベースを適切な程度に軟化させる軟化材と、香料とから構成されている。このように、チューインガムは、種々の物性の異なる複数の素材からなる複合材料である。即ち、チューインガムには、非常に脂溶性が強く炭化水素でなければ溶解しない複数の成分と、極性溶媒に良く溶解する複数の成分と、が配合されている。したがって、それぞれの成分に対応した溶剤を選択して組み合わせた。
【0024】
(5)最後に、汚れ除去後に、清掃面を水で洗浄する作業を行うので、脂溶性成分ならびに溶剤が水に可溶化するように界面活性剤を加えた。
【0025】
(6)ヒトが噛んで吐き捨てたガムには、ヒトに有害な伝染病等の黴菌、ウィルス等が含まれる可能性があるのでそれ等を除菌する為の除菌剤を加えた。
【0026】
(7)清掃作業者が気持ちよく作業できるように、匂いと色に配慮して、香料や色素を適宜加えた。
【0027】
上記のような方針に基づき、本発明の汚れ除去液を、次に示すような、極性溶媒と、非極性溶媒と、界面活性剤と、溶解助剤と、除菌剤と、から構成した。
【0028】
好ましい極性溶媒はグリコール類であり、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びこれらのエーテル、1,3−ブチレンブリコール、の何れか一つ又は複数を組み合わせたものを用いることができる。プロピレングリコールのエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、の何れか一つ又は複数を組み合わせたものを用いることができる。ジプロピレングリコールのエーテルとしては、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、の何れか一つ又は複数を組み合わせたものを用いることができる。トリプロピレングリコールのエーテルとしては、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、の何れか一つ又は複数を組み合わせたものを用いることができる。
【0029】
また、非極性溶媒としては、本発明の汚れ除去液による作業容易性の点から、通常の外気温(例えば、0℃〜50℃)で液体の炭化水素を用いることが好ましい。このような炭化水素としては、灯油(ケロシン)が好適であるが、常温(10℃〜40℃)で液体であって、沸点が150〜200℃、引火点(開放式)が35℃以上、好ましくは引火点(開放式)が40℃以上の任意の炭化水素を用いることができる。なお、作業時の安全性向上を目的として、灯油と比較してあまりにも高い沸点および引火点を有する炭化水素を選ぶと、汚れ除去後に蒸発しにくくなり、当該炭化水素が清掃面に残ってシミとなるため好ましくない。また、炭化水素は、二重結合を有する不飽和炭化水素でもよく、環状の炭化水素を含んでもよい。
【0030】
界面活性剤としては、市販の医薬・化粧品用のものを用いることができ、入手可能なものであれば特に限定されない。界面活性剤は、主に花王株式会社のレオドールMO−60(商標)や花王エマール20T(商標)を用いることができる。なお、他の使用可能な界面活性剤としては、市販されているもの、例えば、Oleic acid monoglyceride(商品名:花王レオドールMO−60(商標))、Monocaprilic acid monoglyceride(商品名:花王ホモテックスPT(商標))、3−Octadecyloxypropyl−N,N−trimethylammonium chloride stearyl alcohol n−seta(商品名:花王コータミンE−80K(商標))、Polyoxyethylene(3) lauryl ether sulfate triethanolamine(商品名:花王エマール20T(商標))、Solvitane sesquiolate(花王レオドールAO−15V(商標))の何れを用いてもよい。
【0031】
溶解助剤としては、親水性及び疎水性を有する第1の溶解助剤、親水性を有さずに疎水性を有する第2の溶解助剤を適宜混合して用いると、チューインガムに含まれる複合成分の溶解に効果的である。第1の溶解助剤として、好ましくは、中鎖アルカノール(例えば、炭素数としては、8〜12、好ましくは炭素数10前後)や、二重結合を有する環状構造を含むアルコールを用いることができ、より好ましくは、ライラックの芳香を有するデカノールや、テルピネオール等の高級アルコールを用いることができる。また、第2の溶解助剤としては、二重結合を有する環状構造を含む炭化水素を用いることができ、好ましくはレモンの芳香を有するリモネン等を用いることができる。第1および第2の溶解助剤は、これらに限定されず、常温で液体であり、適切な引火点および沸点を備えていればこれらに限定されない。なお、テルピネオール、リモネンはいわゆる「植物精油」に含まれている。したがって、テルピネオール、リモネン等を含む「植物精油」を、そのまま上記溶解助剤として、加えてもよい。テルピネオール、リモネンが含まれる植物としては、ユーカリ、杉、オレンジ等である。
【0032】
除菌剤としては、市販のヒトに適用可能な除菌剤を用いることができ、例えば、ウェルテック株式会社の薬用マウスウオッシュ洗口液「コンクールF(商標)」(医薬部外品)を用いることができる。
【0033】
後述のチューインガム等の汚れ取り実験を通じて、汚れ取りの清掃現場における評価を行った。その結果、以下の事実が判明した。
(1)汚れに対する溶解力があまりに強いものを選択すると、汚れが溶解して、歩道等の非清掃面の微細なひびに浸透し、結果として、清掃後にシミとなって残る。
(2)一方、汚れに対する溶解力があまりに弱いものを選択すると、汚れの除去に時間がかかり除去が困難になる。
(3)安全性を考慮して引火点をあまりに高い溶剤を選ぶと、溶剤の蒸気圧が低くなって、蒸発しにくくなるため、汚れの除去後に溶剤がシミとなって残る。したがって、作業後、ある程度の時間が経過した後に、蒸発するものを選択する必要がある。または、グリコール類等の溶剤は蒸発しにくいが、蒸発しにくくても洗浄水や雨水等に溶けて流し落とせるものを選択することもできる。
【0034】
さらに、本発明の汚れ除去液が、アスファルト、コンクリート、合成レンガ等に使用可能にするためにクリアした点を記す。
(1)路面等の表面が粗い(開口率が高い)場合には、汚れ除去液が汚れの上に留まって流れないことが重要になる。溶解力強く流れ易いと、チューンガム等の汚れが路面に染みとなって残る。
(2)アスファルトの場合、疎水性成分の溶解力が強いとアスファルトが溶ける。
(3)その結果、チューンガム等に対する溶解力が強いがアスファルトを溶かさず、粘度が高い溶剤が要求される。
【0035】
なお、本発明に係る汚れ除去液は、グリコール類、炭化水素類、高級アルコール類、界面活性剤の4つのカテゴリーに分離される溶剤を所定の組成で組み合わせる事で、有効に、市井のガムやペイント類による落書き除去、油性汚れが付着した大理石等の建物床や衣服から汚れの除去ができる。
【実施例】
【0036】
本発明の汚れ除去液の第1〜第5の実施例に関して、表1〜表5を用いて説明する。なお、各表において、成分の数値は全て容量部である。表1〜表5の各成分は、和光純薬工業株式会社から購入したものを用いた。
【0037】
本発明の第1の実施例は、主成分として、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを含むものである。第1の実施例の汚れ除去液として、表1に組成を示す番号1〜8の試料を作成した。また、オレンジオイルは、薬局やスーパーマーケット等で購入したものを用いた。なお、オレンジオイルは、柑橘類の果皮から得られる精油であって、d−リモネンを90〜94%有しており、d−リモネンに比して入手容易で廉価であるため、d−リモネンの代用として用いた。なお、第1の実施例の試料No.1〜6の組成は、本出願による特願2007−315349号(特開2008−163321号公報)に開示されており、比較例として記載した。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明の第2の実施例は、主成分として、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及び、プロピレングリコールを含み、他の成分として、第1の実施例と同じものを含む。第2の実施例の汚れ除去液として、表2に組成を示すNo.9〜15の試料を作成した。なお、第2の実施例の試料No.9〜11の組成は、本出願による特願2007−315349号(特開2008−163321号公報)に開示されており、比較例として記載した。
【0040】
【表2】

【0041】
本発明の第3の実施例は、主成分として、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを含み、他の成分として、第1の実施例と同じものを含む。第3の実施例の汚れ除去液として、表3に組成を示すNo.16〜22の試料を作成した。
【0042】
【表3】

【0043】
本発明の第4の実施例は、主成分として、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルを含み、他の成分として、第1の実施例と同じものを含む。第4の実施例の汚れ除去液として、表4に組成を示すNo.23〜25の試料を作成した。
【0044】
【表4】

【0045】
本発明の第5の実施例は、主成分として、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルを含み、他の成分として、第1の実施例と同じものを含む。第5の実施例の汚れ除去液として、表5に組成を示す試料No.26〜32の汚れ除去液を作成した。なお、試料No.32において、除菌剤として、コンクールFを0.1容量%添加した。コンクールFには、殺菌消毒薬としてグルコン酸クロルヘキシジンが含まれており、グルコン酸クロルヘキシジンを直接加えてもよいが、入手が容易なコンクールFを用いた。
【0046】
【表5】

【0047】
次に、表1〜表5に示す組成を有する試料のそれぞれについて、以下の条件で、歩道に付着したチューインガムの剥がし実験を行った。清掃面となる歩道の材質としては、人造石、天然石、アスファルト、浸透性レンガを選択して実験に用いた。人造石、天然石、アスファルト、及び浸透性レンガに対する実験手順は、下記の通りであり、同様の工程で行った。
(1)第1工程では、金ブラシに試料液を湿らせた(試料液に金ブラシを浸す)。
(2)第2工程では、金ブラシに試料液がついたまま、歩道等の清掃面に付着しているチューインガムを金ブラシでこすった。
(3)第3工程では、第2工程の直後、清掃面の表面と、そこに付着したチューインガムとの界面が軟らかくなったので、スクレーパ(皮すき)で、チューインガムを剥ぎ取った。
(4)第4工程では、金ブラシでこすられた歩道を、乾いた雑巾で拭き取った。
(5)第5工程は、歩道面にチューインガムが残っていないか点検し、残りがあれば第1〜第4工程を繰り返した。
(6)第6工程では、完全にチューインガムが残っていないことを確認してから(アスファルト以外の場合)、水に濡らした雑巾で、清掃面を拭き取った。
なお、第1工程に先立って、前工程として、予めスクレーパ等によって、歩道に付着したチューインガムをそぎ取ってもいい。
【0048】
各試料の溶解能力について、表1〜表5に示すように1〜5の点数を用いて評価した。1点は対象面に対して全く汚れを落とせなかったものであり、2点は対象面に対してほとんど汚れを落とせなかったものであり、3点は対象面に対して汚れを落としたものであり、4点は対象面に対して良好に汚れを落とせたものであり、5点は対象面に対して極めて良好に汚れを落とせたものである。
【0049】
このような実験手順でチューインガムの除去を行った結果、特に、試料No.32の汚れ除去液は、路面の材質にかかわらず汚れを効果的に落とすことができた。試料No.32の汚れ除去液の特徴は、液自身の粘度が高く容易に路面に広がらずガム上に留まるである点にあり、これが本発明の汚れ除去液と、本出願による特願2007−315349号の汚れ除去液との最大の違いである。高粘度のの汚れ除去液が汚れの上に載ったまま流れ去らずに、汚れを溶解させるため、粘度が低い従来の汚れ除去液と比較してより少量で汚れを除去することができる。また、高粘度であるため、透水性のコンクリートブロック等の路面に浸みて無駄になることも少ない。また、使用した液の大部分がガム上に残るので除去液の大部分がガムといっしょに回収され、除去液の環境への放出を最小限に押さえることができる。除去液粘度は、立ったままでガム取りを行うことを可能にしたガム取り棒との組み合わせで使用される機会が多いので、手元の除去液リザーバから実際のガム取りを行う先端部分とを連結する細いチューブを経由して小さな圧力で効率的に供給できるように調整される。この粘度は、1,3−ブチレングリコールによって与えられるが、1,3−ブチレングリコールのみでは粘度が高くなりすぎて前記細いチューブを通りにくくなる。そこで、第5の実施例では、適切な粘度を与えるために、1,3−ブチレングリコールに加えて、ジプロピレングリコール及び/又はトリプロピレングリコールモノブチルエーテルを適宜添加している。トリプロピレングリコールモノブチルエーテルは、粘度もある程度高いこと、およびエーテルであるために疎水性も高くなることの相乗効果が生じるため、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルを添加することにより、チューインガム等の汚れに対する溶解性を向上することができる。
【0050】
上記実験結果から、以下の範囲の組成で汚れ除去液を提供することができる。なお、各成分の合計が必ずしも100%とならないことに留意されたい。
【0051】
好ましい汚れ除去液の組成は、36〜44容量部の1,3−ブチレングリコールと、36〜44容量部のジプロピレングリコールと、6〜16容量部のトリプロピレングリコールモノブルエーテルと、0.5〜1.5容量部の灯油と、0.5〜1.5容量部のオレンジオイルと、3〜7容量部のテルピネオールと、1〜5容量部の界面活性剤(レオドールMO−60)と、0.05〜0.3容量部の除菌剤(コンクールF)とからなる。
【0052】
さらに好ましい汚れ除去液の組成としては、40容量部の1,3−ブチレングリコールと、40容量部のジプロピレングリコールと、11容量部のトリプロピレングリコールモノブルエーテルと、1容量部の灯油と、1容量部のオレンジオイルと、5容量部のテルピネオールと、2容量部の界面活性剤(レオドールMO−60)と、0.1容量部の除菌剤(コンクールF)とからなる。
【0053】
なお、本発明の汚れ除去液の溶解能力を左右する要因としては、温度、対象面の材質が考えられる。例えば、汚れ除去液が使用される対象面の温度としては、屋外であれば、冬では0℃から、夏場では40〜50℃まで変動しえる。さらに、対象面の素材も天然石から人工石まであり、天然石や人工石といっても石の種類により汚れとの結合状態が大きく相違する。したがって、本発明の汚れ除去液は、このような温度や対象面の材質に対応して、上述のように各成分の組成量を適宜変動することが好ましい。気温により除去液の粘度と溶解力が変化するので、夏用と冬用で配合が変えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒と、非極性溶媒と、界面活性剤と、除菌剤とを含む汚れ除去液であって、
前記極性溶媒は、プロピレングリコールと、ジプロピレングリコールと、トリプロピレングリコールと、これらのエーテルと、1,3−ブチレンブリコールと、から選択された複数の溶媒であり、
前記プロピレングリコールのエーテルは、プロピレングリコールモノメチルエーテルと、プロピレングリコールモノエチルエーテルと、プロピレングリコールモノプロピルエーテルと、プロピレングリコールモノブチルエーテルと、から選択された何れか一つ又は複数の溶媒であり、
前記ジプロピレングリコールのエーテルは、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルと、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルと、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルと、から選択された何れか一つ又は複数の溶媒であり、
前記トリプロピレングリコールのエーテルは、トリプロピレングリコールノルマルプロピルエーテルと、トリプロピレングリコールノルマルブチルエーテルと、から選択された何れか一つ又は複数の溶媒であることを特徴とする汚れ除去液。
【請求項2】
極性溶媒と、非極性溶媒と、界面活性剤と、除菌剤とを含む汚れ除去液であって、
前記極性溶媒は、1,3−ブチレングリコールと、ジプロピレングリコールと、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルと、から選択された複数の溶媒の混合物であることを特徴とする汚れ除去液。
【請求項3】
請求項2に記載の汚れ除去液において、
前記極性溶媒は、1,3−ブチレングリコールと、ジプロピレングリコールと、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルと、からなる三種の溶媒の混合物であることを特徴とする汚れ除去液。
【請求項4】
請求項3に記載の汚れ除去液において、
36〜44容量部の前記1,3−ブチレングリコールと、36〜44容量部の前記ジプロピレングリコールと、10〜12容量部の前記トリプロピレングリコールモノブチルエーテルと、0.5〜1.5容量部の前記非極性溶媒と、1〜3容量部の前記界面活性剤と、0.05〜0.2容量部の前記除菌剤と、を含むことを特徴とする汚れ除去液。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の汚れ除去液において、
前記除菌剤は、グルコン酸クロルヘキシジンであることを特徴とする汚れ除去液。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の汚れ除去液において、
前記非極性溶媒は、常温で液体の炭化水素であることを特徴とする汚れ除去液。
【請求項7】
請求項1〜8の何れか一項に記載の汚れ除去液において、
汚れ成分の溶解を助けるために、親水性及び疎水性を有する第1の溶解助剤をさらに含むことを特徴とする汚れ除去液。
【請求項8】
請求項7に記載の汚れ除去液において、
前記第1の溶解助剤は、テルピネオールであることを特徴とする汚れ除去液。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の汚れ除去液において、
汚れ成分の溶解を助けるために、親水性を有さず疎水性を有する第2の溶解助剤をさらに含むことを特徴とする汚れ除去液。
【請求項10】
請求項9に記載の汚れ除去液において、
前記第2の溶解助剤は、リモネンまたはオレンジオイルであることを特徴とする汚れ除去液。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の汚れ除去液を用いる汚れ除去方法であって、
前記汚れ除去液を汚れが付着した清掃面に与える工程と、
前記汚れ除去液が与れられた前記汚れをこすって除去する工程と、
前記こすられた前記清掃面を水で洗浄または拭い取る工程と、を含む汚れ除去方法。

【公開番号】特開2010−275439(P2010−275439A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129938(P2009−129938)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(506407567)株式会社オギノ (3)
【Fターム(参考)】