説明

汚染ガス測定装置及び汚染ガス測定方法

【課題】地表層の複数箇所で採取されるガスの汚染濃度を、正確に測定できる汚染ガス測定装置及び汚染ガス測定方法を提供する。
【解決手段】汚染ガス中に含まれる汚染物質の濃度を測定する汚染ガス測定装置であって、複数の汚染ガスを取り込む複数のガス取込管P1〜Pnと、これらのガス取込管P1〜Pnにそれぞれ設けた開閉弁V1からVnと、前記複数のガス取込管に連結する合流管2と、この合流管2に連結するガス測定器12と、前記ガス測定器12で測定した測定値に基づいてガス濃度を演算する制御手段13と、前記合流管2に連結され、前記合流管2に連結され、前記ガス測定器12に清浄な空気を供給する手段3,7とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地層部に存在するガス中の汚染物質の汚染濃度を測定する汚染ガス測定装置に係り、更に詳しくは多数箇所でのガス中に含まれる汚染物質の汚染濃度を正確に測定することができる汚染ガス測定装置及び汚染ガス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌中に存在する揮発性有機化合物等の有害物質は、土壌ガスとして地表層部に分布していることが知られている。このため、土壌ガスを採取して、この土壌ガス中の有害物質の濃度を調べることで、地中の汚染分布状況を推測することが可能である。
【0003】
この地中の汚染分布状況を推測するために、複数地点からの土壌ガスを切り替えながら個別に自動採取し、連続的にガス濃度の分析を行う土壌ガスモニタリング装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この土壌ガスモニタリング装置においては、ガス取り込み用の流路、及び分析装置の洗浄は、次に測定するガスを、流路、及び分析装置に取り込み、共洗いする方式を採用している。
【0005】
【特許文献1】特開2001−221725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の土壌ガスモニタリング装置においては、複数地点からの土壌ガスを採取するための複数の土壌ガス採取用配管を、弁等で切り替えて、順次土壌ガスを採取し、採取した土壌ガスを分析装置に送給する方式が一般的に用いられている。
【0007】
このため、分析装置に有機物が付着し残留する可能性があるので、この分析装置内を清浄な状態にして置かないと、次の土壌ガスの採取に有機物が混入し、正確な測定ができないと云う憾みを生じる。更に、詳しく述べると、微量な有機成分の定量的な測定が困難になり、地中の汚染分布状況の推測が不十分となり、その後の浄化処理に影響を与えると云う問題が生じる。
【0008】
本発明は、上述の事柄に鑑みてなされたもので、地表層の複数箇所で採取されるガスの汚染濃度を、正確に測定できる汚染ガス測定装置及び汚染ガス測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、汚染ガス中に含まれる汚染物質の濃度を測定する汚染ガス測定装置であって、複数の箇所からの汚染ガスを取り込む複数のガス取込管と、これらのガス取込管にそれぞれ設けた開閉弁と、前記複数のガス取込管に連結する合流管と、この合流管に連結するガス測定器と、前記ガス測定器で測定した測定値に基づいてガス濃度を演算する制御手段と、前記合流管に連結され、前記ガス測定器に清浄な空気を供給する手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記ガス測定器を校正するための校正ガスを供給する手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
さらに、第3の発明は、第1の発明において、前記ガス測定器に清浄な空気を供給する手段は、前記合流管に連結する外気取込管と、この外気取込管に設けた吸着装置及び前記制御手段によって開閉操作される開閉弁とを備えたことを特徴とする汚染ガス測定装置。
【0012】
また、第4の発明は、第2の発明において、前記ガス測定器を校正するための校正ガスを供給する手段は、前記合流管に連結する校正ガス取込管と、この校正ガス取込管に設けた校正ガス装置及び前記制御手段によって開閉操作される開閉弁とを備えたことを特徴とする。
【0013】
さらに、第5の発明は、第1乃至第4のいずれかに記載の発明において、前記制御手段に、遠隔モニタリング装置を接続したことを特徴とする。
【0014】
また、第6の発明は、汚染ガス中に含まれる汚染物質の濃度を測定する汚染ガス測定方法であって、ガス測定器によって汚染ガスを測定した後に、ガス測定器に連結した開閉弁を開操作して、外気をガス測定器に吸引することにより、ガス測定器内に残留しているガスを希釈・除去し、測定値が零になった後に、開閉弁を閉操作して、次の汚染ガスの濃度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス測定装置によれば、ガス測定器内に清浄な空気(ガス)等を供給して、ガス測定器内に残留している汚染物質を含むガスを、希釈させて外部に排出するので、ガス測定器内を清浄な状態にすることができる。その結果、微量な有機成分の定量的な測定が可能になり、地中の汚染分布状況の推測精度を向上させることができる。
【0016】
本発明のガス測定方法によれば、ガス測定器内に清浄な空気(ガス)等を供給して、ガス測定装置内に残留している汚染物質を含むガスを、希釈させて外部に排出するので、ガス測定装置内を清浄な状態にすることができる。その結果、微量な有機成分の定量的な測定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の汚染ガス測定装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1及び図2は本発明の汚染ガス測定装置の一実施の形態を示すもので、図1は本発明の汚染ガス測定装置の一実施の形態を示す構成図、図2は本発明の汚染ガス測定装置の一実施の形態の動作を示すフローチャート図である。
図1において、P1乃至Pnは、ガス取込管で、これらのガス取込管P1乃至Pnの一方は、浄化状況を監視したい箇所に設置したガス採取配管(図示せず)に連結している。また、これらのガス取込管P1乃至Pnの他方側には、弁切替装置1を構成するオンオフ型の開閉弁V1乃至Vnがそれぞれ設けられている。開閉弁V1乃至Vnの出口側は、合流管2に連結されている。
【0018】
この合流管2には、外気取込管3と校正ガス取込管4とが連結されている。外気取込管3及び校正ガス取込管4には、それぞれ開閉弁5,6が設けられている。外気取込管3における開閉弁5の入口には、例えば活性炭等の吸着材を備えた吸着装置7が設けられている。この吸着装置7は、後述する汚染ガス測定器に供給する空気中の塵等を吸着処理するものである。校正ガス取込管4における開閉弁6の入口には、後述する汚染ガス測定器を校正するための校正ガスを貯留する校正ガス装置8が設けられている。この校正ガス装置8内の校正ガス及び吸着装置7を介して取り込まれる外気は、ある一定期間毎に後述する測定器に供給され、汚染ガス測定器を自動校正するために使用される。
【0019】
9は汚染ガス測定装置本体で、この汚染ガス測定装置本体は、吸引ポンプ10、その駆動モータ11、汚染ガス測定器12、及び制御装置13とを備えており、その大きさは片手で持ち運ぶことが可能な大きさで構成されている。吸引ポンプ10の入口は、合流管2に連結され、その出口は汚染ガス測定器12に連結されている。
【0020】
なお、吸引ポンプ10はオンオフの制御が可能であり、汚染ガスを測定する必要のない時は停止しておくことにより、汚染ガス測定器12ヘガスが送られることがなく、汚染ガス測定器12の正確性及び耐久性を向上させている。
【0021】
汚染ガス測定器12の出口側には、吐出管14が連結されている。この吐出管14には、例えば活性炭等の吸着材を備えた吸着装置15が設けられている。この吸着装置15は、汚染ガス測定器12で測定済のガスを装置外へ送る際に、このガス中の汚染物質を吸着し、装置外へ送られるガスを清浄で無害な状態で排出させるものである。
【0022】
制御装置13は、汚染ガス測定器12で測定した汚染ガスの基準値、測定値、前記開閉弁V1乃至Vnの開閉等の汚染ガス採取条件及び汚染ガス測定器12への校正条件等を記憶する記憶部13aと、この記憶部13aの記憶条件に基づいて、開閉弁V1乃至Vnの開閉制御、開閉弁5,6の開閉制御、吸引ポンプ10のオンオフ制御、及び汚染ガス測定器12で測定した汚染ガスの汚染濃度の演算等を行う制御部13bとを備えている。
【0023】
制御装置13には、ガス採取時間やガス採取間隔などの条件設定や測定結果等を遠隔で操作及びモニタリングするための遠隔モニタリング装置16が接続されている。この遠隔モニタリング装置16により、作業員が現場へ出向かなくても処理現場の浄化状況を把握することが可能となる。
【0024】
次に、上述した本発明の汚染ガス測定装置の一実施の形態による測定方法を、図1及び図2を用いて説明する。
制御手段13の制御部13bからの制御信号により、吸引ポンプ10が駆動される(ステップS1)と共に、開閉弁V1が開操作される(ステップS2)と、ガス取込管P1から汚染ガスが取り込まれ、合流管2を通してガス測定器12に流入する。ガス測定器12は流入した測定すべき汚染ガスの汚染濃度を測定し(ステップS3)、その測定結果を制御手段13に送信する。汚染ガス測定器12で測定済のガスは、吸着装置15によって清浄で無害な状態で外部に排出される。
【0025】
制御手段13は、ガス測定器12からの測定値を取込み、その濃度状態を演算し、演算値を記憶し(ステップS4)、必要に応じて遠隔モニタリング装置16に送信する。開閉弁V1の開操作によって、ガス測定器12への汚染ガスの一定時間の取込みが終了すると、制御手段13は、開閉弁V1を閉操作して(ステップS5)、ガス取込管P1に対応する測定点の汚染ガスの測定を完了する。
【0026】
次に、制御手段13の制御部13bからの制御信号により、開閉弁5を開操作されて(ステップS6)、ガス測定器12に清浄な空気が取込まれる。これにより、ガス測定器12内に残留している汚染物質を含むガスが希釈、あるいは装置外部に追い出される。その結果、ガス測定器12により測定されるガス濃度が、制御手段13の制御部13bにおいて、零となったことが確認されると(ステップS7)、開閉弁5が閉操作される(ステップS8)。
【0027】
上記のガス測定器12内の清浄操作が終了すると、制御手段13の制御部13bは、開閉弁V2を開操作して(ステップS9)、前述と同様な手順でガス取込管P2に対応する測定点の汚染ガスの測定を行う。この測定手順をn回繰り返すことにより、予め設定した汚染濃度が高いn箇所の汚染状況を正確に把握することができる。この汚染状況に基づき、汚染箇所に対して的確な処理対応を施すことができる。
【0028】
なお、吸着装置7を介した外気の取込みと、校正ガス装置8からのスパン校正ガスの取込みにより、ある一定期間毎にガス測定器12の自動校正を行うが、この校正操作は、制御手段13からの信号により処理される。これにより、長期間にわたる使用でも正確な測定値を得ることが可能となる。
【0029】
以上述べたように、この実施の形態によれば、ガス測定器12の自動校正操作により、ガス測定器12は、長期間にわたる使用でも正確な測定値を得ることが可能となるとともに、予め設定した箇所の汚染状況を正確に把握することができ、その汚染状況に基づき、汚染箇所に対して的確な処理対応を施すことができる。
【0030】
図3は本発明の汚染ガス測定装置を浄化処理施工を実施している現場に適用した一例を示す図である。この図では、エアスパージングにより汚染土壌及び汚染地下水の浄化施工を実施している例である。この図3において、図1と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0031】
この図3中、30は土壌等で形成された地、31は地中下の地下水、32は処理対策すべき汚染物質で、この汚染物質32は、例えば、ガソリン、軽油等といった油類の場合を示しており、その比重は水よりも小さいために、地下水31の水面付近に滞留している。
【0032】
33は空気を地下に供給するための空気注入パイプで、その先端は地中を通過し、地下水31内に導入され、その基端側はブロワ34に連結されている。この空気注入パイプ33は、地下水31中に気泡35を生起させる機能を有している。36は地表層付近に設けた汚染物質吸着部で、この汚染物質吸着部36は、揮発した汚染物質を吸着、分解もしくは吸着して分解する。
【0033】
37は地表層部に分布しているガスを採取する複数のガス採取管で、これらのガス採取管37はその先端が浄化状況を監視したい途中箇所に位置するように、地中に挿入されている。これらのガス採取管37は、図1に示すガス取込管P1乃至Pn、弁切替装置1を介して汚染ガス測定装置本体9に連結されている。
【0034】
この実施の形態においては、ブロア34から供給された空気(エア)は、空気注入パイプ33に供給される。この空気注入パイプ33に供給された空気は、空気注入パイプ33の先端の開口から気泡35となり地下水31中へ送られ、上昇する。
【0035】
この気泡35は、地下水31の水面上に滞留している汚染物質32と接触する。このとき、汚染物質32の揮発が促進され、ガス化し、地下水31の水面上方である不飽和帯の地中を空気の流れに乗って上昇し、さらには地表面まで上昇する。地表面には汚染物質吸着部36を敷設してあるので、ガス化した汚染物質は、汚染物質吸着部36に吸着される。
【0036】
このとき、地表層部に分布している汚染ガスは、ガス採取管37、図1に示すガス取込管P1乃至Pn、弁切替装置1を介して汚染ガス測定装置本体9に取り込まれて、その側定箇所での汚染ガスの濃度を正確に把握することができる。
【0037】
この実施の形態によれば、エアスパージングにより汚染土壌及び汚染地下水の浄化施工を実施している箇所での汚染状況を正確に把握することができる。この汚染状況に基づき、汚染箇所に対して的確な処理対応を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の汚染ガス測定装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明の汚染ガス測定装置の一実施の形態の動作を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の汚染ガス測定装置の一実施の形態を浄化処理施工を実施している現場に適用した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
P1〜Pn ガス取込管
V1〜Vn 開閉弁
1 弁切替装置
2 合流管
3 外気取込管
4 校正ガス取込管
5 開閉弁
6 開閉弁
7 吸着装置
8 校正ガス装置
9 汚染ガス測定装置本体
10 吸引ポンプ
12 汚染ガス測定器
13 制御装置
15 吸着装置
16 遠隔モニタリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染ガス中に含まれる汚染物質の濃度を測定する汚染ガス測定装置であって、複数の箇所からの汚染ガスを取り込む複数のガス取込管と、これらのガス取込管にそれぞれ設けた開閉弁と、前記複数のガス取込管に連結する合流管と、この合流管に連結するガス測定器と、前記ガス測定器で測定した測定値に基づいてガス濃度を演算する制御手段と、前記合流管に連結され、前記ガス測定器に清浄な空気を供給する手段とを備えたことを特徴とする汚染ガス測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の汚染ガス測定装置において、前記ガス測定器を校正するための校正ガスを供給する手段を備えたことを特徴とする汚染ガス測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の汚染ガス測定装置において、前記ガス測定器に清浄な空気を供給する手段は、前記合流管に連結する外気取込管と、この外気取込管に設けた吸着装置及び前記制御手段によって開閉操作される開閉弁とを備えたことを特徴とする汚染ガス測定装置。
【請求項4】
請求項2記載の汚染ガス測定装置において、前記ガス測定器を校正するための校正ガスを供給する手段は、前記合流管に連結する校正ガス取込管と、この校正ガス取込管に設けた校正ガス装置及び前記制御手段によって開閉操作される開閉弁とを備えたことを特徴とする汚染ガス測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の汚染ガス測定装置において、前記制御手段に、遠隔モニタリング装置を接続したことを特徴とする汚染ガス測定装置。
【請求項6】
汚染ガス中に含まれる汚染物質の濃度を測定する汚染ガス測定方法であって、ガス測定器によって汚染ガスを測定した後に、ガス測定器に連結した開閉弁を開操作して、外気をガス測定器に吸引することにより、ガス測定器内に残留しているガスを希釈・除去し、測定値が零になった後に、開閉弁を閉操作して、次の汚染ガスの濃度を測定することを特徴とする汚染ガス測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−170184(P2008−170184A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1544(P2007−1544)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】