汚染土壌の浄化方法
【課題】 本発明は汚染土壌を効率的かつ安定的に浄化することを目的としている。
【解決手段】 本発明に係る汚染土壌の浄化方法は、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備えることとしている。
【解決手段】 本発明に係る汚染土壌の浄化方法は、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備えることとしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウム等の重金属で汚染された土壌について、重金属を吸収可能な植物を当該土壌で育成し、浄化を図る汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事業所跡地や鉱山、あるいはその下方流域にある土地において、最近当該土地の土壌がカドミウム等の重金属で汚染されている等の環境問題が発生し、当該土地の所有者はもちろん、周辺住民に対しても不安を与える社会問題が危惧されている。
【0003】
こうした汚染土壌を改良し、土壌を浄化する手法として、最近はファイトレメディエーション(Phytoremediation)の技術が注目されている。この技術は、カドミウム等の重金属で汚染された土地に対して、重金属を吸収可能な植物を植えて育成し、ある程度育成された状態で当該植物を収穫して土壌中に含有される重金属を回収することを内容としている。
【0004】
ファイトレメディエーションに係る技術は、汚染土壌を掘り返して蒸気等で重金属を回収したり、薬品等を土壌に散布する等の浄化方法に比し、コストがかからずまた浄化に伴う二次汚染を生じない等の利点を有すため、実用化に向けての研究が行われている。
【0005】
ところで、本出願人は重金属で汚染された土壌を浄化するファイトレメディエーションの実験を行う中、重金属を回収する植物としてマリーゴールドを選択し、その育成を通じて汚染土壌の浄化状況を観察した。マリーゴールドは、従来より重金属を吸収し易く、かつ比較的育成がし易い植物として知られているため、下記特許文献1や特許文献2に示すようにファイトレメディエーションを実行可能な植物の1つであることが知られている。
【特許文献1】特開2005−199209号
【特許文献2】特開2002−540943号
【0006】
ただ、上記特許文献1等に開示されたファイトレメディエーションによる汚染土壌の浄化方法では、単にマリーゴールド等の然るべき重金属を吸収可能とする植物の種を重金属で汚染された土地に直接播くこととし、所要の期間生育させた後、これを収穫することしか開示されておらず、その汚染土壌での植物の生育性や効率的な重金属の回収の実効性について未だ不明瞭な点が存在した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした中、出願人はマリーゴールドの栽培方法において様々な試行錯誤を繰り返して実験を行ったところ、汚染土壌中で効率的かつ安定的にマリーゴールドを根付かせ、またカドミウム等の重金属を回収し、汚染土壌を浄化する本発明に係る方法を開発するに至った。すなわち、本発明は汚染土壌を効率的かつ安定的に浄化することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1は、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備える汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0009】
また、本発明の請求項2は、育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗を、1つの苗を生育させるプラグトレイの各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21mlのいずれかに設定している請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0010】
また本発明の請求項3は、回収工程において回収する重金属が、カドミウム、銅、亜鉛、鉛のいずれかである請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0011】
また本発明の請求項4は、育苗工程において育苗するマリーゴールドの種が、在来種Tagetes erectaより採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種である請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マリーゴールドの種を直接重金属で汚染された汚染土壌に播き、これを生育および育成させる従来の方法に比べて、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備えることとしたため、活着率(根付いた本数を撒いた本数で乗じた値)および回収する重金属の量を飛躍的に増大させることが可能となり、その分本発明は汚染土壌を効率的かつ安定的に浄化することができる効果がある。
【0013】
また、本発明の請求項2によると、育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗を、1つの苗を生育させるプラグトレイの各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21mlのいずれかに設定しているプラグトレイで多数の苗を一度に育苗することが可能となるため、より効率的に汚染土壌中に含まれる重金属を回収することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の請求項3によると、回収工程において回収する重金属が、カドミウム、銅、亜鉛、鉛のいずれかである請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたため、さらにより効率的に汚染土壌中に含まれる重金属を回収することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の請求項4によると、育苗工程において育苗するマリーゴールドの種が、在来種Tagetes erectaより採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種である請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたため、さらにより効率的に汚染土壌中に含まれる重金属を回収することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。先ず本発明は、重金属により汚染された土壌にマリーゴールドを移植し、土壌中の重金属をその植物体としてのマリーゴールドに吸収および蓄積させた後、植物体の全てまたは一部を収穫することで該当土壌より汚染物質である重金属を撤去および処理する土壌を浄化することを内容とするものであり、従来、重金属により汚染された土壌に直接播種した場合、重金属による生育阻害による発芽率の低下だけではなくバイオマスが低下することを改善するため、試行され、なされたものである。
【0017】
先ず、本発明の実施形態に係る育苗工程を説明する。実施形態の育苗工程は、図1の(A)または(B)に示す全体がポリスチレン製からなる市販のプラグトレイを用いて行う。プラグトレイのうち、図1の(A)に示すプラグトレイは、トレイ本体に128個のセルを備える通称128穴のものとされる。図1の(B)に示すプラグトレイは、トレイ本体に200個のセルを備える通称200穴のものとされる。すなわち、図1の(A)に示すプラグトレイは、縦8列、横16列の配列からなる128個の各セルを備え、各セルは口径28mm、深さ50.0mm程度に設定され、土壌充填空間としての各セルのプラグ容積を19〜21mlとしている(表1参照)。また図1の(B)に示すプラグトレイは、縦10列、横20列の配列からなる200個の各セルを備え、各セルは口径24mm、深さ42.0mm程度に設定され、土壌充填空間としての各セルのプラグ容積を11〜13mlとしている(表1参照)。育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗は、プラグトレイのトレイ本体に備えられる各セルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて行うものである。
【0018】
【表1】
プラグトレイの規格及びサイズ
【0019】
育苗工程において発芽・生育させる浄化植物としてのマリーゴールドは、在来種Tagetes erecta(アフリカン・マリーゴールド)より採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種(株式会社ミヨシ作製)が用いられ、この花粉親の品種改良系統については、図2に示す改良プロセスに基づき実施される。
【0020】
育苗工程において、本願の発明者らは、表1の規格の2種類のポリスチレン製プラグトレイ(図1)の土壌充填空間としての各セルに、市販の培養土を予め充填し、各セル内に前記バニラ由来品種F6である花粉親からなるマリーゴールドの種を播種して、ビニールハウス内で毎日水をやり2〜6週間育苗した。以下、ビニールハウス内の室温は春から夏に応じた温度として13.3〜25.3℃とした。本育苗工程での生育状況の確認のため、1週間ごとに葉の枚数、葉長、茎長、地上部の乾燥重量、根長及び根部の乾燥重量を測定した。
【0021】
一方、本発明の実施形態に係る育成工程は、上記育苗工程にてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を、重金属で汚染された土壌の土地に移植し、一定期間育成させることを内容とする。すなわち実施形態において本願の発明者らは、一定期間育苗した苗を、汚染土壌(工場跡地から採取した土壌:土壌中カドミウム濃度10mg/kg、銅濃度53mg/kg、鉛濃度180mg/kg、亜鉛濃度330mg/kg,以下「A土壌」という)を客土してなる育成領域に移植して、1株ずつ8〜10週間毎日水をやり、栽培した。その生育状況の確認のため、平均の茎の長さ(平均茎長)と開花数を測定した。
【0022】
予めプラグトレイで育苗する育苗工程並びに育苗工程で育苗された苗をA土壌に移植し生育させる育成工程を備えた本発明の実施形態に係る方法と比較するため、本願の発明者らは、A土壌に直接播種した直播法も同時に実施し、同じく生育状況の確認のため、平均茎長と開花数を測定した。さらに加えて本願の発明者らは、上記A土壌に移植して行う育苗生育状況と比較するため、A土壌の代りに市販の培養土による栽培も併せて行った。これらの各育苗及び育成条件については、下記表2に示す。
【0023】
【表2】
試験条件
【0024】
こうして、図1の(A)または(B)に示す各プラグトレイで育苗した後、さらにA土壌や培養土に移植したり、A土壌に直播した育成工程を経て、一定期間栽培した後のマリーゴールドを収穫し、根部と地上部に分別した。根部は水洗後、地上部は裁断後にそれぞれ60℃で2日間以上乾燥後、生育状況の確認のため乾燥重量を測定した。
【0025】
また、このようにして乾燥させたマリーゴールドに吸収された重金属(カドミウム、銅、鉛および亜鉛)の濃度を、乾燥したマリーゴールドをさらに微粉砕し、硝酸による湿式分解後、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)を用いて測定した。
【0026】
さらに、上記測定した植物の乾燥重量と、上記測定したマリーゴールド中に吸収された根部と地上部の重金属(カドミウム、銅、鉛および亜鉛)の濃度から、根部と地上部の重金属吸収量を下記A−1式により算出した。なお、1株当たりの重金属吸収量は、上記による根部と地上部の重金属吸収量を加算したものである。
重金属吸収量=乾燥重量×金属濃度 (A−1式)
【0027】
以下、図1の(A)または(B)に示す各プラグトレイで育苗したマリーゴールドの苗5本分の平均の茎の長さ(平均茎長)と、地上部の平均乾燥重量および平均の根の長さ(平均根長)と根部の平均乾燥重量について順次説明する。これらの評価項目は、苗の生長の指標とみなした。
【0028】
「平均茎長」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の茎長を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均茎長を算出した。平均茎長と育苗期間との関係については図3に示す。こうした平均茎長の計測結果を考察すると、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きいほど、また育苗期間の長さに従い、茎長が増加することが判明した。
【0029】
「地上部の平均乾燥重量」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の地上部(茎及び葉)の乾燥重量を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均乾燥重量を算出した。地上部の平均乾燥重量と育苗期間との関係を図4に示す。こうした平均乾燥重量の計測結果より、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きいほど、また育苗期間の長さに従い、地上部の乾燥重量は増加した。
【0030】
「平均根長」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の根長を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均根長を算出した。平均根長と育苗期間との関係を図5に示す。こうした平均根長の計測結果より、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きいほど、また育苗期間が長くなるに従い、根長は増加する傾向にあったが、播種3週間以降では著しい増加は見られなかった。
【0031】
「根部の平均乾燥重量」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の根部の乾燥重量を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均乾燥重量を算出した。根部の平均乾燥重量と育苗期間との関係を図6に示す。こうした平均乾燥重量の計測結果により、いずれのプラグトレイのセル(128穴,200穴)においても育苗期間の長さに従い、乾燥重量は増加したが、播種後4週まではプラグトレイのセルの容積差(土壌充填空間の差)による根部の乾燥重量への影響は認められなかった。
【0032】
以上より、播種後の育苗工程では、苗の地上部はいずれのプラグトレイのセル(128穴,200穴)においても、育苗期間の長さに従い、生長することが確認された。一方、根部ではいずれのプラグトレイのセル(128穴,200穴)においても、根長は播種後3週間以降では著しい増加は認められなかった。一方乾燥重量は、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が小さい場合、育苗期間の長さに従い、増加する傾向にあった。このことは、プラグ容積(土壌充填空間)が小さいものほど育苗期間の長さに従い、プラグのセル内で根部が過密状態になっていくことを示唆している。
【0033】
次に、上記育苗工程にてプラグトレイの各セル(128穴,200穴)内で育苗させたマリーゴールドの苗を、重金属で汚染された土壌(A土壌)の土地に移植し、一定期間育成させる育成工程の結果を説明する。育成工程では、マリーゴールドの開花数、平均の茎の長さ(平均茎長)、平均乾燥重量及び金属吸収量を測定して行った。これらの開花数、平均茎長、および平均乾燥重量は、マリーゴールドの生長の指標とみなした。
【0034】
「開花数」
汚染土壌(A土壌)や培養土にマリーゴールドの苗を移植後、その苗が開花した株の数を1週間に1回測定した。開花数の測定結果を下記表3に示す。開花数の結果より、下記の点が判明した。
a.図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後に汚染土壌(A土壌)に移植し、栽培した苗は、全ての条件において、ほぼ全株が開花した。
b.汚染土壌(A土壌)に直接種を播いた群では約半数の株しか開花しなかった。
【0035】
【表3】
開花数(開花した株数/全試験株数)の結果
【0036】
「平均茎長」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイの各セル(128穴,200穴)にて育苗した後、汚染土壌(A土壌)や培養土にマリーゴールドを移植し、育成した各株の茎長を1週間に1回測定し、各群における平均茎長を算出した。平均茎長の測定結果を下記表4に示す。こうした平均茎長の結果より、下記の点が判明した。
a.育成期間の長さに従い、茎長が長くなるが、表4より開花後は開花前に比べ茎長の著しい増加は見られなかった。
b.培養土で育成した群では、予め育苗工程で図1の(A)または(B)に示す各プラグのセルの容積(土壌充填空間)で育成させたものの間で、差異はみられなかった。しかし、汚染土壌で栽培した群では、概ね、予め育苗工程で図1の(A)に示す128穴の容積が大きいセル(土壌充填空間)で育苗した群の方が、予め育苗工程で図1の(B)に示す200穴の容積が小さいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群に比べ、茎長がより長くなる傾向が確認された。
c.ほとんどの試験条件において、汚染土壌(A土壌)で育成した群では培養土で栽培した群に比べ茎長が短くなる傾向にあったが、その影響は育苗期間が3週間の群(3−A群)で最も小さかった。
【0037】
【表4】
平均茎長(cm)の結果
【0038】
「平均乾燥重量」
平均乾燥重量は、育成工程で育成したマリーゴールドの苗すべて(根部と地上部をあわた状態)を収穫し、根部においては土を水で洗い流し、地上部においては裁断し、60℃で2日間以上乾燥した後、根部と地上部の乾燥重量を測定した。平均乾燥重量の結果を表5に示す。こうした平均乾燥重量の結果より、下記の点が判明した。
a.各育苗工程で育苗し、その後汚染土壌(A土壌)に移植して育成したマリーゴールドの育成群に関しては、同一育苗条件で育苗し、その後培養土において育成した育成群と比べ平均乾燥重量は減少した。汚染土壌(A土壌)による平均乾燥重量の減少に対する影響は、育苗期間が3週間の群(3−A群)のもので最も小さかった。
b.全ての試験条件において、予め育苗工程で図1の(B)に示す200穴の容積が小さいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群よりも、予め育苗工程で図1の(A)に示す128穴の容積が大きいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群の方が平均乾燥重量は増加した。
【0039】
【表5】
平均乾燥重量(g)の結果
【0040】
「重金属吸収量」
育成工程で育成したマリーゴールドにおいて、上記測定した植物の乾燥重量と、上記測定したマリーゴールド中に吸収された根部と地上部の重金属(カドミウム、銅、鉛および亜鉛)の濃度から、根部と地上部の重金属吸収量を前記A−1式により算出した。なお、1株当たりの重金属吸収量は、上記による根部と地上部の重金属吸収量を加算したものである。こうして算出された1株当たりの重金属吸収量を下記表6に示す。この重金属吸収量の結果より、下記の点が判明した。
a.ほとんどの試験条件において、予め育苗工程で図1の(A)に示す128穴の容積が大きいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群の方が、育苗工程で図の(B)に示す200穴の容積が小さいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群よりも重金属吸収量多いことが判明した。
b.育苗工程において、いずれのプラグトレイで育苗した場合でも(図1の(A)、図1の(B)に示す各トレイ)、育苗期間が3週間の群(3−A群)が最も高い値の重金属吸収量を示した。
【0041】
【表6】
金属吸収量(mg/株)の結果
【0042】
これらの結果から、マリーゴールドをプラグトレイで育苗した育苗工程を経た後、汚染土壌(A土壌)に移植し育成する育成工程を経ることで、生育が阻害されず生長させ、開花させることが可能になり、さらに土壌中に存在する重金属を植物体内に吸収し易くなることが明白となった。次に、こうしたマリーゴールドによる重金属の吸収に関して図面により説明する。
【0043】
図7はカドミウム(Cd)、図8は銅(Cu)、図9は亜鉛(Zn)、図10は鉛(Pb)に関するものであり、それぞれは対応する重金属(Cd,Cu,Zn,Pb)の吸収量および植物体乾燥重量と試験期間(育苗期間と育成期間の和)の関係を示すものである。いずれの重金属においても、育苗及び育成期間の長さに関係なく、育苗期間においてプラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きい方が重金属の吸収量を増加する傾向が確認された。
【0044】
図11はカドミウム(Cd)、図12は銅(Cu)、図13は亜鉛(Zn)、図14は鉛(Pb)に関するものであり、それぞれは対応する重金属(Cd,Cu,Zn,Pb)の吸収量の推移、および植物体乾燥重量と育成期間8週における育苗期間の関係を示すものである。いずれの重金属においても、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)に関わらず育苗期間が3週間の場合が最も高い値の金属吸収量を示した。
【0045】
上記の結果から、本発明の実施形態に係る育苗工程では、プラグトレイの各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させるプロセスを要することが重金属の吸収の面で最も良好であることが確認され、本発明はそうした育苗工程を備えることを内容とするものである。
【0046】
さらに上記の結果から、本発明の実施形態に係る育成工程では、上記育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させるプロセスを要することが重金属の吸収の面で最も良好であることが確認され、本発明はそうした育成工程を備えることを内容とするものである。
【0047】
このように植物としてのマリーゴールドに吸収された重金属は、回収工程として、植物内で確保している状態を保ちつつ、植物の容量を減少させるため、これを乾燥したのち、焼却するプロセスを備える。すなわち、実施形態に基づく汚染土壌の浄化方法は、上記育苗工程および育成工程に加えて、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収したカドミウム、銅、亜鉛、鉛からなる重金属を回収する回収工程を備るものである。
【0048】
さらに本発明の実施形態に係る育苗工程では、マリーゴールドの苗の育苗を、図1の(A)、図1の(B)に示す各プラグトレイを用いて一度に多数の苗を育苗し、これを汚染土壌に移植して育成させることを内容としているため、効率的に汚染土壌を浄化することが可能となる。ここで1つの苗を生育させるプラグトレイは、各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml(図1の(B)に示すプラグトレイ)、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21ml(図1の(A)に示すプラグトレイ)のいずれかに設定し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて行うこととしている。これにより、育苗工程の後に行われる育成工程において、汚染土壌における効率的な重金属の吸収を各マリーゴールドの苗にて行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上の結果から、本発明の上記実施形態のように、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させる育苗工程を経た後に、汚染土壌へ移植し育成させる育成工程を経ることで、汚染土壌中に拡散されている重金属を植物としてのマリーゴールドに集約させることが可能となる。よって、こうした技術を用いて、重金属類に汚染された土壌を従来よりも効率よく、かつ二次的汚染もなく浄化することが可能である。また、土壌のみならず、重金属類に汚染された水や地下水の浄化にも利用できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態で使用した各プラグトレイの平面図である。
【図2】実施形態で使用したマリーゴールドの花粉親及び雄性不稔株に関する系統図である。
【図3】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの平均茎長の推移を示すグラフである。
【図4】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの地上部の平均乾燥重量の推移を示すグラフである。
【図5】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの平均根長の推移を示すグラフである。
【図6】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの根部の平均乾燥重量の推移を示すグラフである。
【図7】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量とカドミウム吸収量の関係を示すグラフである。
【図8】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量と銅吸収量の関係を示すグラフである。
【図9】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量と亜鉛吸収量の関係を示すグラフである。
【図10】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量と鉛吸収量の関係を示すグラフである。
【図11】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量とカドミウム吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【図12】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量と銅吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【図13】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量と亜鉛吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【図14】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量と鉛吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウム等の重金属で汚染された土壌について、重金属を吸収可能な植物を当該土壌で育成し、浄化を図る汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事業所跡地や鉱山、あるいはその下方流域にある土地において、最近当該土地の土壌がカドミウム等の重金属で汚染されている等の環境問題が発生し、当該土地の所有者はもちろん、周辺住民に対しても不安を与える社会問題が危惧されている。
【0003】
こうした汚染土壌を改良し、土壌を浄化する手法として、最近はファイトレメディエーション(Phytoremediation)の技術が注目されている。この技術は、カドミウム等の重金属で汚染された土地に対して、重金属を吸収可能な植物を植えて育成し、ある程度育成された状態で当該植物を収穫して土壌中に含有される重金属を回収することを内容としている。
【0004】
ファイトレメディエーションに係る技術は、汚染土壌を掘り返して蒸気等で重金属を回収したり、薬品等を土壌に散布する等の浄化方法に比し、コストがかからずまた浄化に伴う二次汚染を生じない等の利点を有すため、実用化に向けての研究が行われている。
【0005】
ところで、本出願人は重金属で汚染された土壌を浄化するファイトレメディエーションの実験を行う中、重金属を回収する植物としてマリーゴールドを選択し、その育成を通じて汚染土壌の浄化状況を観察した。マリーゴールドは、従来より重金属を吸収し易く、かつ比較的育成がし易い植物として知られているため、下記特許文献1や特許文献2に示すようにファイトレメディエーションを実行可能な植物の1つであることが知られている。
【特許文献1】特開2005−199209号
【特許文献2】特開2002−540943号
【0006】
ただ、上記特許文献1等に開示されたファイトレメディエーションによる汚染土壌の浄化方法では、単にマリーゴールド等の然るべき重金属を吸収可能とする植物の種を重金属で汚染された土地に直接播くこととし、所要の期間生育させた後、これを収穫することしか開示されておらず、その汚染土壌での植物の生育性や効率的な重金属の回収の実効性について未だ不明瞭な点が存在した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした中、出願人はマリーゴールドの栽培方法において様々な試行錯誤を繰り返して実験を行ったところ、汚染土壌中で効率的かつ安定的にマリーゴールドを根付かせ、またカドミウム等の重金属を回収し、汚染土壌を浄化する本発明に係る方法を開発するに至った。すなわち、本発明は汚染土壌を効率的かつ安定的に浄化することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1は、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備える汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0009】
また、本発明の請求項2は、育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗を、1つの苗を生育させるプラグトレイの各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21mlのいずれかに設定している請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0010】
また本発明の請求項3は、回収工程において回収する重金属が、カドミウム、銅、亜鉛、鉛のいずれかである請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0011】
また本発明の請求項4は、育苗工程において育苗するマリーゴールドの種が、在来種Tagetes erectaより採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種である請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マリーゴールドの種を直接重金属で汚染された汚染土壌に播き、これを生育および育成させる従来の方法に比べて、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備えることとしたため、活着率(根付いた本数を撒いた本数で乗じた値)および回収する重金属の量を飛躍的に増大させることが可能となり、その分本発明は汚染土壌を効率的かつ安定的に浄化することができる効果がある。
【0013】
また、本発明の請求項2によると、育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗を、1つの苗を生育させるプラグトレイの各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21mlのいずれかに設定しているプラグトレイで多数の苗を一度に育苗することが可能となるため、より効率的に汚染土壌中に含まれる重金属を回収することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の請求項3によると、回収工程において回収する重金属が、カドミウム、銅、亜鉛、鉛のいずれかである請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたため、さらにより効率的に汚染土壌中に含まれる重金属を回収することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の請求項4によると、育苗工程において育苗するマリーゴールドの種が、在来種Tagetes erectaより採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種である請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法としたため、さらにより効率的に汚染土壌中に含まれる重金属を回収することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。先ず本発明は、重金属により汚染された土壌にマリーゴールドを移植し、土壌中の重金属をその植物体としてのマリーゴールドに吸収および蓄積させた後、植物体の全てまたは一部を収穫することで該当土壌より汚染物質である重金属を撤去および処理する土壌を浄化することを内容とするものであり、従来、重金属により汚染された土壌に直接播種した場合、重金属による生育阻害による発芽率の低下だけではなくバイオマスが低下することを改善するため、試行され、なされたものである。
【0017】
先ず、本発明の実施形態に係る育苗工程を説明する。実施形態の育苗工程は、図1の(A)または(B)に示す全体がポリスチレン製からなる市販のプラグトレイを用いて行う。プラグトレイのうち、図1の(A)に示すプラグトレイは、トレイ本体に128個のセルを備える通称128穴のものとされる。図1の(B)に示すプラグトレイは、トレイ本体に200個のセルを備える通称200穴のものとされる。すなわち、図1の(A)に示すプラグトレイは、縦8列、横16列の配列からなる128個の各セルを備え、各セルは口径28mm、深さ50.0mm程度に設定され、土壌充填空間としての各セルのプラグ容積を19〜21mlとしている(表1参照)。また図1の(B)に示すプラグトレイは、縦10列、横20列の配列からなる200個の各セルを備え、各セルは口径24mm、深さ42.0mm程度に設定され、土壌充填空間としての各セルのプラグ容積を11〜13mlとしている(表1参照)。育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗は、プラグトレイのトレイ本体に備えられる各セルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて行うものである。
【0018】
【表1】
プラグトレイの規格及びサイズ
【0019】
育苗工程において発芽・生育させる浄化植物としてのマリーゴールドは、在来種Tagetes erecta(アフリカン・マリーゴールド)より採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種(株式会社ミヨシ作製)が用いられ、この花粉親の品種改良系統については、図2に示す改良プロセスに基づき実施される。
【0020】
育苗工程において、本願の発明者らは、表1の規格の2種類のポリスチレン製プラグトレイ(図1)の土壌充填空間としての各セルに、市販の培養土を予め充填し、各セル内に前記バニラ由来品種F6である花粉親からなるマリーゴールドの種を播種して、ビニールハウス内で毎日水をやり2〜6週間育苗した。以下、ビニールハウス内の室温は春から夏に応じた温度として13.3〜25.3℃とした。本育苗工程での生育状況の確認のため、1週間ごとに葉の枚数、葉長、茎長、地上部の乾燥重量、根長及び根部の乾燥重量を測定した。
【0021】
一方、本発明の実施形態に係る育成工程は、上記育苗工程にてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を、重金属で汚染された土壌の土地に移植し、一定期間育成させることを内容とする。すなわち実施形態において本願の発明者らは、一定期間育苗した苗を、汚染土壌(工場跡地から採取した土壌:土壌中カドミウム濃度10mg/kg、銅濃度53mg/kg、鉛濃度180mg/kg、亜鉛濃度330mg/kg,以下「A土壌」という)を客土してなる育成領域に移植して、1株ずつ8〜10週間毎日水をやり、栽培した。その生育状況の確認のため、平均の茎の長さ(平均茎長)と開花数を測定した。
【0022】
予めプラグトレイで育苗する育苗工程並びに育苗工程で育苗された苗をA土壌に移植し生育させる育成工程を備えた本発明の実施形態に係る方法と比較するため、本願の発明者らは、A土壌に直接播種した直播法も同時に実施し、同じく生育状況の確認のため、平均茎長と開花数を測定した。さらに加えて本願の発明者らは、上記A土壌に移植して行う育苗生育状況と比較するため、A土壌の代りに市販の培養土による栽培も併せて行った。これらの各育苗及び育成条件については、下記表2に示す。
【0023】
【表2】
試験条件
【0024】
こうして、図1の(A)または(B)に示す各プラグトレイで育苗した後、さらにA土壌や培養土に移植したり、A土壌に直播した育成工程を経て、一定期間栽培した後のマリーゴールドを収穫し、根部と地上部に分別した。根部は水洗後、地上部は裁断後にそれぞれ60℃で2日間以上乾燥後、生育状況の確認のため乾燥重量を測定した。
【0025】
また、このようにして乾燥させたマリーゴールドに吸収された重金属(カドミウム、銅、鉛および亜鉛)の濃度を、乾燥したマリーゴールドをさらに微粉砕し、硝酸による湿式分解後、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)を用いて測定した。
【0026】
さらに、上記測定した植物の乾燥重量と、上記測定したマリーゴールド中に吸収された根部と地上部の重金属(カドミウム、銅、鉛および亜鉛)の濃度から、根部と地上部の重金属吸収量を下記A−1式により算出した。なお、1株当たりの重金属吸収量は、上記による根部と地上部の重金属吸収量を加算したものである。
重金属吸収量=乾燥重量×金属濃度 (A−1式)
【0027】
以下、図1の(A)または(B)に示す各プラグトレイで育苗したマリーゴールドの苗5本分の平均の茎の長さ(平均茎長)と、地上部の平均乾燥重量および平均の根の長さ(平均根長)と根部の平均乾燥重量について順次説明する。これらの評価項目は、苗の生長の指標とみなした。
【0028】
「平均茎長」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の茎長を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均茎長を算出した。平均茎長と育苗期間との関係については図3に示す。こうした平均茎長の計測結果を考察すると、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きいほど、また育苗期間の長さに従い、茎長が増加することが判明した。
【0029】
「地上部の平均乾燥重量」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の地上部(茎及び葉)の乾燥重量を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均乾燥重量を算出した。地上部の平均乾燥重量と育苗期間との関係を図4に示す。こうした平均乾燥重量の計測結果より、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きいほど、また育苗期間の長さに従い、地上部の乾燥重量は増加した。
【0030】
「平均根長」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の根長を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均根長を算出した。平均根長と育苗期間との関係を図5に示す。こうした平均根長の計測結果より、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きいほど、また育苗期間が長くなるに従い、根長は増加する傾向にあったが、播種3週間以降では著しい増加は見られなかった。
【0031】
「根部の平均乾燥重量」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後、各苗の根部の乾燥重量を1週間に1回測定し、各群(128穴,200穴)での平均乾燥重量を算出した。根部の平均乾燥重量と育苗期間との関係を図6に示す。こうした平均乾燥重量の計測結果により、いずれのプラグトレイのセル(128穴,200穴)においても育苗期間の長さに従い、乾燥重量は増加したが、播種後4週まではプラグトレイのセルの容積差(土壌充填空間の差)による根部の乾燥重量への影響は認められなかった。
【0032】
以上より、播種後の育苗工程では、苗の地上部はいずれのプラグトレイのセル(128穴,200穴)においても、育苗期間の長さに従い、生長することが確認された。一方、根部ではいずれのプラグトレイのセル(128穴,200穴)においても、根長は播種後3週間以降では著しい増加は認められなかった。一方乾燥重量は、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が小さい場合、育苗期間の長さに従い、増加する傾向にあった。このことは、プラグ容積(土壌充填空間)が小さいものほど育苗期間の長さに従い、プラグのセル内で根部が過密状態になっていくことを示唆している。
【0033】
次に、上記育苗工程にてプラグトレイの各セル(128穴,200穴)内で育苗させたマリーゴールドの苗を、重金属で汚染された土壌(A土壌)の土地に移植し、一定期間育成させる育成工程の結果を説明する。育成工程では、マリーゴールドの開花数、平均の茎の長さ(平均茎長)、平均乾燥重量及び金属吸収量を測定して行った。これらの開花数、平均茎長、および平均乾燥重量は、マリーゴールドの生長の指標とみなした。
【0034】
「開花数」
汚染土壌(A土壌)や培養土にマリーゴールドの苗を移植後、その苗が開花した株の数を1週間に1回測定した。開花数の測定結果を下記表3に示す。開花数の結果より、下記の点が判明した。
a.図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイのセル(128穴,200穴)にて育苗した後に汚染土壌(A土壌)に移植し、栽培した苗は、全ての条件において、ほぼ全株が開花した。
b.汚染土壌(A土壌)に直接種を播いた群では約半数の株しか開花しなかった。
【0035】
【表3】
開花数(開花した株数/全試験株数)の結果
【0036】
「平均茎長」
図1の(A)または(B)に示す規格のプラグトレイの各セル(128穴,200穴)にて育苗した後、汚染土壌(A土壌)や培養土にマリーゴールドを移植し、育成した各株の茎長を1週間に1回測定し、各群における平均茎長を算出した。平均茎長の測定結果を下記表4に示す。こうした平均茎長の結果より、下記の点が判明した。
a.育成期間の長さに従い、茎長が長くなるが、表4より開花後は開花前に比べ茎長の著しい増加は見られなかった。
b.培養土で育成した群では、予め育苗工程で図1の(A)または(B)に示す各プラグのセルの容積(土壌充填空間)で育成させたものの間で、差異はみられなかった。しかし、汚染土壌で栽培した群では、概ね、予め育苗工程で図1の(A)に示す128穴の容積が大きいセル(土壌充填空間)で育苗した群の方が、予め育苗工程で図1の(B)に示す200穴の容積が小さいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群に比べ、茎長がより長くなる傾向が確認された。
c.ほとんどの試験条件において、汚染土壌(A土壌)で育成した群では培養土で栽培した群に比べ茎長が短くなる傾向にあったが、その影響は育苗期間が3週間の群(3−A群)で最も小さかった。
【0037】
【表4】
平均茎長(cm)の結果
【0038】
「平均乾燥重量」
平均乾燥重量は、育成工程で育成したマリーゴールドの苗すべて(根部と地上部をあわた状態)を収穫し、根部においては土を水で洗い流し、地上部においては裁断し、60℃で2日間以上乾燥した後、根部と地上部の乾燥重量を測定した。平均乾燥重量の結果を表5に示す。こうした平均乾燥重量の結果より、下記の点が判明した。
a.各育苗工程で育苗し、その後汚染土壌(A土壌)に移植して育成したマリーゴールドの育成群に関しては、同一育苗条件で育苗し、その後培養土において育成した育成群と比べ平均乾燥重量は減少した。汚染土壌(A土壌)による平均乾燥重量の減少に対する影響は、育苗期間が3週間の群(3−A群)のもので最も小さかった。
b.全ての試験条件において、予め育苗工程で図1の(B)に示す200穴の容積が小さいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群よりも、予め育苗工程で図1の(A)に示す128穴の容積が大きいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群の方が平均乾燥重量は増加した。
【0039】
【表5】
平均乾燥重量(g)の結果
【0040】
「重金属吸収量」
育成工程で育成したマリーゴールドにおいて、上記測定した植物の乾燥重量と、上記測定したマリーゴールド中に吸収された根部と地上部の重金属(カドミウム、銅、鉛および亜鉛)の濃度から、根部と地上部の重金属吸収量を前記A−1式により算出した。なお、1株当たりの重金属吸収量は、上記による根部と地上部の重金属吸収量を加算したものである。こうして算出された1株当たりの重金属吸収量を下記表6に示す。この重金属吸収量の結果より、下記の点が判明した。
a.ほとんどの試験条件において、予め育苗工程で図1の(A)に示す128穴の容積が大きいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群の方が、育苗工程で図の(B)に示す200穴の容積が小さいプラグのセル(土壌充填空間)で育苗した群よりも重金属吸収量多いことが判明した。
b.育苗工程において、いずれのプラグトレイで育苗した場合でも(図1の(A)、図1の(B)に示す各トレイ)、育苗期間が3週間の群(3−A群)が最も高い値の重金属吸収量を示した。
【0041】
【表6】
金属吸収量(mg/株)の結果
【0042】
これらの結果から、マリーゴールドをプラグトレイで育苗した育苗工程を経た後、汚染土壌(A土壌)に移植し育成する育成工程を経ることで、生育が阻害されず生長させ、開花させることが可能になり、さらに土壌中に存在する重金属を植物体内に吸収し易くなることが明白となった。次に、こうしたマリーゴールドによる重金属の吸収に関して図面により説明する。
【0043】
図7はカドミウム(Cd)、図8は銅(Cu)、図9は亜鉛(Zn)、図10は鉛(Pb)に関するものであり、それぞれは対応する重金属(Cd,Cu,Zn,Pb)の吸収量および植物体乾燥重量と試験期間(育苗期間と育成期間の和)の関係を示すものである。いずれの重金属においても、育苗及び育成期間の長さに関係なく、育苗期間においてプラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)が大きい方が重金属の吸収量を増加する傾向が確認された。
【0044】
図11はカドミウム(Cd)、図12は銅(Cu)、図13は亜鉛(Zn)、図14は鉛(Pb)に関するものであり、それぞれは対応する重金属(Cd,Cu,Zn,Pb)の吸収量の推移、および植物体乾燥重量と育成期間8週における育苗期間の関係を示すものである。いずれの重金属においても、プラグトレイのセルの容積(土壌充填空間)に関わらず育苗期間が3週間の場合が最も高い値の金属吸収量を示した。
【0045】
上記の結果から、本発明の実施形態に係る育苗工程では、プラグトレイの各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させるプロセスを要することが重金属の吸収の面で最も良好であることが確認され、本発明はそうした育苗工程を備えることを内容とするものである。
【0046】
さらに上記の結果から、本発明の実施形態に係る育成工程では、上記育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させるプロセスを要することが重金属の吸収の面で最も良好であることが確認され、本発明はそうした育成工程を備えることを内容とするものである。
【0047】
このように植物としてのマリーゴールドに吸収された重金属は、回収工程として、植物内で確保している状態を保ちつつ、植物の容量を減少させるため、これを乾燥したのち、焼却するプロセスを備える。すなわち、実施形態に基づく汚染土壌の浄化方法は、上記育苗工程および育成工程に加えて、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収したカドミウム、銅、亜鉛、鉛からなる重金属を回収する回収工程を備るものである。
【0048】
さらに本発明の実施形態に係る育苗工程では、マリーゴールドの苗の育苗を、図1の(A)、図1の(B)に示す各プラグトレイを用いて一度に多数の苗を育苗し、これを汚染土壌に移植して育成させることを内容としているため、効率的に汚染土壌を浄化することが可能となる。ここで1つの苗を生育させるプラグトレイは、各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml(図1の(B)に示すプラグトレイ)、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21ml(図1の(A)に示すプラグトレイ)のいずれかに設定し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて行うこととしている。これにより、育苗工程の後に行われる育成工程において、汚染土壌における効率的な重金属の吸収を各マリーゴールドの苗にて行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上の結果から、本発明の上記実施形態のように、プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させる育苗工程を経た後に、汚染土壌へ移植し育成させる育成工程を経ることで、汚染土壌中に拡散されている重金属を植物としてのマリーゴールドに集約させることが可能となる。よって、こうした技術を用いて、重金属類に汚染された土壌を従来よりも効率よく、かつ二次的汚染もなく浄化することが可能である。また、土壌のみならず、重金属類に汚染された水や地下水の浄化にも利用できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態で使用した各プラグトレイの平面図である。
【図2】実施形態で使用したマリーゴールドの花粉親及び雄性不稔株に関する系統図である。
【図3】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの平均茎長の推移を示すグラフである。
【図4】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの地上部の平均乾燥重量の推移を示すグラフである。
【図5】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの平均根長の推移を示すグラフである。
【図6】実施形態に係る育苗工程で育苗され、各プラグトレイのセルで育苗されたマリーゴールドのうち、育苗期間ごとの根部の平均乾燥重量の推移を示すグラフである。
【図7】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量とカドミウム吸収量の関係を示すグラフである。
【図8】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量と銅吸収量の関係を示すグラフである。
【図9】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量と亜鉛吸収量の関係を示すグラフである。
【図10】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、各試験期間別の植物体乾燥重量と鉛吸収量の関係を示すグラフである。
【図11】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量とカドミウム吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【図12】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量と銅吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【図13】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量と亜鉛吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【図14】実施形態に係る育苗工程および育成工程を経て育成された植物体としてのマリーゴールドに関し、育成期間8週における各育苗期間別の植物体乾燥重量と鉛吸収量の推移の関係を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備える汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗を、1つの苗を生育させるプラグトレイの各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21mlのいずれかに設定している請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
回収工程において回収する重金属が、カドミウム、銅、亜鉛、鉛のいずれかである請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
育苗工程において育苗するマリーゴールドの種が、在来種Tagetes erectaより採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種である請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項1】
プラグトレイのトレイ本体に備えられる多数のセルにそれぞれ培養土を充填し、各セル内にマリーゴールドの種を播き、各セル内において種を発芽・生育させて、葉が2〜4枚、各葉の最大の長さが0.3〜3cm、茎の長さが2〜4.5cm、根部以外の地上部の乾燥重量が0.02g以上、根部の長さが4〜10cm、根部の乾燥重量が0.01g以上になるまで2〜6週の間、育苗させる育苗工程と、育苗工程においてプラグトレイの各セル内で育苗させたマリーゴールドの苗を重金属で汚染された土壌の土地に移植し、8〜10週の間、育成させる育成工程と、育成工程で育成されたマリーゴールドの根、葉、茎もしくは花を含めて収穫し、それを乾燥させた後、焼却してマリーゴールドが吸収した重金属を回収する回収工程と、を備える汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
育苗工程におけるマリーゴールドの苗の育苗を、1つの苗を生育させるプラグトレイの各セルにおける土壌充填空間を、深さ42.0mm、容積11〜13ml、あるいは深さ50.0mm、容積19〜21mlのいずれかに設定している請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
回収工程において回収する重金属が、カドミウム、銅、亜鉛、鉛のいずれかである請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
育苗工程において育苗するマリーゴールドの種が、在来種Tagetes erectaより採取した種から品種改良したバニラ由来品種F6の花粉親の種である請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−179209(P2010−179209A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23182(P2009−23182)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人科学技術振興機構「新規育種植物による土壌汚染浄化技術」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390032469)株式会社小泉 (3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人科学技術振興機構「新規育種植物による土壌汚染浄化技術」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390032469)株式会社小泉 (3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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