説明

汚染土壌修復用充填材及びその充填材を用いた汚染土壌修復方法

【課題】十分な透水性を確保しつつ自立可能な強度を備えた汚染土壌修復用充填材を提供する。
【解決手段】本発明の汚染土壌修復用充填材充填材は、骨材に対するセメントの割合を1.0wt%以上とし、骨材に対する骨材中の粒度75μm以下の細粒分とセメントとの合量の割合を13.0〜30.0wt%としたことを特徴とする。
本発明の充填材を用いることにより、隣接してボーリング孔を掘削することができ、汚染土壌全体を浄化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌を修復するために用いる汚染土壌修復用充填材及びそれを用いた汚染土壌修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、地中に存在する汚染土壌を修復するために様々な方法が開発されている(例えば、下記特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−162262号公報
【特許文献2】特開2003−159584号公報
【特許文献3】特開2006−272273号公報
【特許文献4】特開2008−106578号公報
【0004】
汚染土壌の修復方法の一例としては、高圧噴流体を使って地盤を掘削するジェットグラウト工法があり、そのなかには、ウォータージェットで土壌を切削し、そのスライムを地表に排出して形成したボーリング孔に充填材を充填する方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような修復に用いる充填材において、強度と透水性は相反する関係にあり、透水性を確保しようとすると、強度の弱くなることが一般的である。
土壌を修復するときにセメントを多く含有する充填材を用いると、強度はあるが透水性が悪いため、汚染物質を地中に閉じ込めてしまう弊害が生じてしまうことがある。
逆に、透水性の良好な充填材を用いた場合、汚染物質を閉じ込める弊害は解消されるが、代わりに充填材の強度、すなわち充填後の自立性が不十分になる。そのため、既に充填されたボーリング孔に隣接する形で別のボーリング孔を掘削しようとすると、充填済みの充填材が新たに掘削したボーリング孔側に崩れてしまい、ボーリング孔を互いに隣接するように掘削することは困難であった。そのため、ある程度の間隔を開けてボーリング孔を掘削せねばならず、汚染土壌を残すことなく全ての土壌を修復できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決するため、汚染物質を閉じ込めない十分な透水性を確保しつつ、自立可能な強度を備えた汚染土壌修復用充填材およびその充填材を用いた汚染土壌修復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の汚染土壌修復用充填材は、骨材と、セメントとを含有する汚染土壌修復用充填材であって、骨材に対するセメントの割合を1.0wt%以上とし、骨材に対する骨材中の粒度75μm以下の細粒分とセメントとの合量の割合を13.0〜30.0wt%としたことを特徴とする。
【0008】
本発明の汚染土壌修復用充填材は、強度及び透水性のバランスがよく、崩れずに自立するとともに適度な透水性も確保できるため、隣接して充填材を隙間なく連続的に充填でき、汚染土壌全体を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の充填材を用いた汚染土壌修復方法の一例を示し、ボーリング孔の掘削開始状態を示した図である。
【図2】本発明の充填材を用いた汚染土壌修復方法の一例を示し、ボーリング孔の掘削中の状態を示した図である。
【図3】本発明の充填材を用いた汚染土壌修復方法の一例を示し、充填材の注入開始状態を示した図である。
【図4】本発明の充填材を用いた汚染土壌修復方法の一例を示し、充填材の注入中の状態を示した図である。
【図5】本発明の充填材を用いた汚染土壌修復方法の一例を示し、隣接してボーリング孔を掘削した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の充填材の実施形態を説明する、但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の一実施形態の汚染土壌修復用充填材は、骨材と、セメントとを含有する汚染土壌修復用充填材であって、骨材に対するセメントの割合を1.0wt%以上とし、骨材に対する骨材中の粒度75μm以下の細粒分とセメントとの合量の割合を13.0〜30.0wt%としたことを特徴とする。
【0012】
本発明で用いることができる骨材としては、例えば、粒度が75μm以下の細粒分を骨材全量中に7〜29wt%、好ましくは10〜20wt%含む砂利などを挙げることができる。さらに、骨材は、全部の粒度が10mm以下であるのが好ましい。
なお、本発明において、骨材の粒度はJIS A1102に基づいて測定することができる。
【0013】
また、骨材中には、解体したコンクリート塊などを粉砕等の処理をして製造した再生骨材を含ませることもできる。本発明で用いることができる再生骨材としては、例えば、JIS A5021に基づいた再生骨材などを挙げることができる。
【0014】
本発明で用いることができるセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメントなどを挙げることができる。特に、JIS R5211に基づく高炉セメントB種が好適である。
セメントは、骨材全量に対して1.0wt%以上含ませる。セメントの配合割合の上限は、特に制限するものではないが骨材全量に対して4.5wt%以下、好ましくは4.0wt%以下である。
【0015】
本発明では、骨材全量に対する骨材中の粒度75μm以下の細粒分とセメントとを合わせた量の割合が13.0〜30.0wt%、好ましくは13.5〜25.0wt%である。
【0016】
本発明の充填材は、増粘剤を含有することができ、増粘剤は分解性であるのが好適である。
本発明において用いることができる増粘剤としては、例えば、植物性多糖類を主成分とする易分解性の増粘剤やポリアニオニックセルローズ系ポリマーを主成分とする増粘剤を挙げることができる。
【0017】
以下、本発明の充填材の製造方法の一例を説明する。
粒度75μm以下の細粒分を7〜29wt%含む骨材に対してセメントを1.0wt%以上混合し、さらに、水を骨材全量に対して20〜32wt%混合する。
このとき、骨材は、洗浄などの処置により有害物質を環境基準に合致するレベルまで除去した後に使用することが、環境保護のために好ましい。
また、水には、水に対して0〜1.25wt%、好ましくは0.3〜0.7wt%の増粘剤を含有させてもよい。
この混合物をミキサーなどで5分間以上攪拌混合して練り上げ、充填材を製造することができる。
【0018】
本発明の充填材は、透水係数が1×10-4〜1×10-2cm/sec、一軸圧縮強度が5〜30kN/mになり、強度及び透水性のバランスがよく、崩れずに自立するとともに適度な透水性を確保できるものである。
【0019】
以下に、本発明の充填材を用いた汚染土壌修復方法の一例を説明する。
汚染土壌修復方法としては、例えば、ウォータージェットで土壌を掘削して形成した第一のボーリング孔に本発明の充填材を充填した後、第一のボーリング孔に隣接して第二のボーリング孔を掘削し、第二のボーリング孔に、本発明の充填材を充填して汚染土壌を修復することができる。
【0020】
より具体的に図面を用いて説明すると、図1又は図2に示すように、まず、先端に高圧ジェットノズルを取り付けたロッド1を土壌汚染の深度まで降下させる。高圧ポンプで水を注入するとともにコンプレッサーで空気を注入してウォータージェットで地中の汚染土壌を切削して第一のボーリング孔2を掘削する。切削した汚染土壌3は泥水とともにロッド1内を通して地上に排出し、排泥タンクなどへ送り出して処理する。
次に、図3又は図4に示すように、第一のボーリング孔2に本発明の充填材4を充填する。
充填材4を充填し終えたら、図5に示すように、第一のボーリング孔2に隣接して第二のボーリング孔5を第一のボーリング孔2と同様に掘削し、本発明の充填材を充填する。
このように全ての汚染土壌部分を掘削し、本発明の充填材を充填した後、注水曝気洗浄法により地下汚染濃度を低下させ、さらに、バイオ栄養剤を注入してバイオ浄化し、汚染土壌を修復することができる。
【0021】
このように、従来の汚染土壌修復用充填材では、自立可能にするため強度を高めると透水性が劣り、逆に透水性を高めると強度が劣るため、隣接して充填材を充填することができず、間隔を設けてボーリング孔を形成しなければならず、汚染浄化しにくい部分が生じていたが、本発明の充填材は、自立する強度を有しながらも適度な透水性があるため、隣接して充填材を充填することができ、汚染土壌の全てを掘削し、浄化することが可能である。さらに、本発明の充填剤は、圧送性に優れており、詰まりや過負荷を生じることなく、地中に送ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の充填材の実施例について説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0023】
以下の各成分を用いてサンプル1〜14となる土壌修復用充填材の供試体を製造した。
<骨材>:粒度0.75mm以下の細粒分を下記表1に示す重量で含む骨材を使用した。なお、骨材の粒度はJIS A1102に基づいて測定した。骨材の使用量は全て1500kgとした。
<セメント>:JIS R5211に基づく高炉セメントを使用した。使用量は、下記表1に示す。
<水>:水道水を用いた。使用量は全て400kgとした。また、水には、サンプル14を除き、ポリアニオックセルローズ系ポリマーを主成分とする増粘剤を配合した。配合割合は、下記表1に示した。
【0024】
上記各成分を、ホバート型ソイルミキサーで10分間混合攪拌して練り上げ、約1mの充填剤を作製し、これを直径φ50mm、長さ100mmの円柱状の型に充填し、タッピングして天端をラップで覆った。これを温度20℃±3℃、湿度95%以上で7日間養成し、脱型してサンプル1〜14の供試体を形成した。
【0025】
サンプル1〜14の各供試体に対して一軸圧縮強度及び透水係数の測定を行った。
一軸圧縮試験はJIS A1203:1999に基づき測定し、透水係数はJIS A1218:1998に基づき測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
(結果)
サンプル1〜6、8は一軸圧縮試験では崩れてしまい負荷がかかると自立することができなかった。
サンプル7、9〜11は自立するとともに適度に水を透過するものであった。
サンプル12〜14は自立するが透水係数が10−6オーダーであり、水の透過が悪いものであった。
【0028】
これら結果からすると、サンプル7及び9〜11が強度及び透水性がともに優れていた。これらは、骨材に対するセメント割合が1.0wt%以上であり、骨材に対する骨材中の75μm以下の細粒分とセメントの合量の割合が13.0〜30.0wt%の範囲内であった。
【0029】
(考察)
サンプル1〜6は、細粒分とセメントの割合が低くなると粒度の大きいものが結合しにくくなるため強度がないと思われる。また、サンプル12〜14は、細粒分とセメントの割合が高くなると水が透過しにくくなるため透水性が悪くなったものと思われる。サンプル8は、セメントの割合が低いため強度がないものと思われる。
【符号の説明】
【0030】
1ロッド 2第一のボーリング孔 3汚染土壌 4充填材 5第二のボーリング孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材と、セメントとを含有する汚染土壌修復用充填材であって、
骨材に対するセメントの割合を1.0wt%以上とし、骨材に対する骨材中の粒度75μm以下の細粒分とセメントとの合量の割合を13.0〜30.0wt%とした汚染土壌修復用充填材。
【請求項2】
骨材に対するセメントの割合を1.0〜4.5wt%とした請求項1に記載の充填剤。
【請求項3】
骨材中の前記細粒分の割合を7〜29wt%とした請求項1又は2に記載の充填材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の汚染土壌修復用充填材を用いた汚染土壌修復方法であって、土壌を掘削して形成したボーリング孔に前記充填材を充填した後、該ボーリング孔に隣接して他のボーリング孔を掘削し、そのボーリング孔に他の前記充填材を充填する汚染土壌修復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−55816(P2012−55816A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200583(P2010−200583)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000174910)三井金属資源開発株式会社 (2)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】