汚染土壌浄化工法
【課題】地下水位よりも下方に存在する汚染土壌を浄化することが出来て、しかも、掘削に際して重機の使用を必要としない様な汚染土壌浄化工法の提供。
【解決手段】地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に固化した領域を造成し、固化した領域を造成した後に、地下水位(Lw)よりも上方の土壌汚染領域(Gp)を包含する領域(Ep)に立坑(40)を(地表面30fから)所定の深さ寸法だけ掘削し、掘削された立坑(40)に金属枠(2)を設置する金属枠設置工程を有し、固化した領域で包囲された領域全域を掘削して金属枠を設置するまで、前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返す。
【解決手段】地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に固化した領域を造成し、固化した領域を造成した後に、地下水位(Lw)よりも上方の土壌汚染領域(Gp)を包含する領域(Ep)に立坑(40)を(地表面30fから)所定の深さ寸法だけ掘削し、掘削された立坑(40)に金属枠(2)を設置する金属枠設置工程を有し、固化した領域で包囲された領域全域を掘削して金属枠を設置するまで、前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば揮発性有機化合物(VOC)によって汚染された土壌を浄化する技術に関する。より詳細には、本発明は、深度が深い領域の土壌まで汚染されている場合においても、好適に実施できる汚染土壌の浄化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図25において、工場2の図示しないタンクの破損等により、汚染物質が漏出し、土壌Gの地下深くまで汚染物質が浸透している。
汚染物質は重力の作用により土壌粒子間を下方に移動するので、土壌汚染領域Gpは、図25における左右方向にはさほど広がることはなく、図25における下方に浸透する。そのため、汚染領域Gpは地中深い領域まで到達してしまう。
図25において、汚染物質により汚染された領域が符号Gpで示されており、符号30fは地表を示し、符号Epは汚染物質の浄化処理を施工するべき領域を示し、符号Epbは領域Epの最深部を示している。
【0003】
図25で示すように、汚染された領域Gpにおける汚染された土壌を除去するためには、地中深い領域まで掘削する必要があるが、地中深い領域までの掘削は、人力では困難であり、大型の機械(いわゆる「重機」)を使用するべき場合が多い。
しかし、汚染領域Gpが民家近傍である場合には、騒音や安全性の見地から、重機の使用を出来る限り控えたいという事情が存在する。
すなわち、図25で示す様な汚染土壌Gpの浄化のためには、地中深い領域まで掘削しなければならないという要請と、重機の使用を控えたいという要請とを同時に充足しなければならない。すなわち、相反する要請を同時に充足する必要がある。
【0004】
係る要請を充足する技術として、図26で示す様な技術が考えられる。
図26において、汚染領域Gpを包含する範囲を所定の深さまで掘削し、掘削された領域にライナーリング2を設置し、それを繰り返すことにより、汚染領域Gpを包含する領域に立坑40を削孔する。削孔された立坑40の壁面には、複数のリング状の金属枠(ライナーリング)2が設置される。
汚染領域Gpに存在する汚染土壌は、立坑40の掘削の際に地上側に移動されて、図示しない汚染土壌処理施設で汚染物質が除去され、或いは、図示しない搬送手段(例えば、搬送用車両)によって、立坑40から遠隔地点に設けられた図示しない汚染土壌処理施設へ移動される。
【0005】
汚染領域Gpの最深部Epbまで立坑40が掘削され、ライナーリング2が設置されたならば、ライナーリング2を設置した領域の半径方向内側の空間でVOCの様な汚染物質を計測し、当該汚染物質が除去されたことを確認する。
その後、最深位置に配置されたライナーリング2から順番にライナーリング2を除去して、ライナーリング2を除去した領域を良質土で埋め戻す作業を繰り返す。地表までライナーリング2を撤去して、埋め戻しを完了すれば、汚染土壌の浄化は終了する。
図26で示す様な浄化技術であれば、汚染された土壌を掘削して地上側に送り出して処理するに際して、ライナーリング2を設置した箇所は崩落しないので、ライナーリング2で包囲された領域のみを掘削すれば良い。そのため、立坑40を掘削するに際して、小型掘削機械1(例えば自走式の小型バックホー)や人手にのみより、地中深い領域まで掘削することが可能である。そして、重機の使用を必要としない。
【0006】
しかし、図26で示す浄化技術では、汚染物質が地下水位よりも下方の領域まで到達した場合には、適用することが困難である。
汚染領域Gpが地下水位よりも深い領域まで到達している場合には、当該地下水位よりも深い領域も掘削しなければならないが、地下水位よりも深い領域(地下水位よりも下方の領域)では掘削の際に湧水が生じる。ライナーリング2で包囲されている領域であっても、掘削の際には水が湧き出てくる。
ライナーリング2で包囲されている領域であっても、湧水のため地下水位よりも下方の領域を掘削することが出来ないので、図26で示す工法は、地下水位よりも下方の汚染領域を浄化することが出来ない。
【0007】
その他の従来技術として、例えば、掘削対象領域の周囲に凍結管を埋設し、掘削対象領域の周囲を凍結して掘削孔を削孔する技術が存在する(特許文献1参照)。
しかし、上述した様に、汚染物質は重力が作用する方向に拡散するため、汚染領域が地中深い領域に及んでしまう場合が多い。その様な場合において、掘削対象領域の周囲全てを凍結するには多大なコストが必要となってしまうので、係る従来技術(特許文献1)を適用することは困難である。
また、特許文献1は地盤中に埋蔵された自然由来の不要埋蔵物や、過去に廃棄された兵器等の人為的に埋蔵物の除去に関する技術であり、汚染土壌の浄化を目的とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−263557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、地下水位よりも下方に存在する汚染土壌を浄化することが出来て、しかも、掘削に際して重機の使用を必要としない様な汚染土壌浄化工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の汚染土壌浄化工法は、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に(例えばグラウト材等の固化材により)固化した領域(固化領域Gc)を造成する工程と、固化した領域(Gc)を造成した後に、地下水位(Lw)よりも上方の土壌汚染領域(Gp)を包含する領域(Ep:例えば円形の領域)に立坑(40)を(地表面30fから)所定の深さ寸法(ライナーリング2の1段部或いは複数段の幅方向寸法)だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑(40)に金属枠(例えば、リング状の金属枠2)を設置する金属枠設置工程を有し、固化した領域(Gc)で包囲された領域(地下水位Lwよりも下方の土壌汚染領域Ewpを包含する領域)全域を掘削して金属枠(2)を設置するまで前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返すことを特徴としている(図1〜図10)。
前記掘削工程では、地下水位(Lw)よりも上方の領域では土壌汚染領域(Gp)を包含する土壌を掘削し、地下水位(Lw)よりも下方の領域では、固化された領域(Gc)における汚染土壌と固化材との混合物(固化した当該混合物)を掘削する。
ここで、前記掘削工程で掘り出された汚染土壌(Go)は、地上側(Gf)へ搬送されて汚染土壌処理機構で処理されるのが好ましい。
【0011】
また本発明の汚染土壌浄化工法は、地下水位(Lw)よりも上方の土壌汚染領域(Gp)を包含する領域(Ep:例えば円形の領域)に立坑(40)を(地表面30fから)所定の深さ寸法(リング状の金属枠2の1段部或いは複数段の幅方向寸法)だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑(40)に金属枠(例えば、リング状の金属枠:ライナーリング2)を設置する金属枠設置工程を有し、地下水位(Lw)に到達するまで前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返し、地下水位(Lw)よりも上方の領域全域に立坑(40)を掘削して金属枠(2)を設置した後、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に(例えばグラウト材等の固化材により)固化した領域(固化領域Gc)を造成する工程と、固化した領域(Gc)を造成した後に、固化した領域(Gc)で包囲された領域(地下水位Lwよりも下方の土壌汚染領域Ewpを包含する領域)全域を掘削して金属枠(2)を設置するまで、地下水位(Lw)より下方の領域で且つ固化した領域(Gc)で包囲された領域を掘削する工程及び掘削された固化領域(Gc)に金属枠(2)を設置する工程を繰り返すことを特徴としている(図13)。
【0012】
本発明の実施に際して、金属枠(2)を設置した範囲の内側の土壌(或いは、土壌と固化材の混合物であって、固化したもの)の掘削を完了したならば、下方の金属枠(2)から順に撤去して、撤去された金属枠(2)の内側(半径方向内側)の領域を順次埋め戻すのが好ましい。
【0013】
この場合(請求項1、2の場合)、地下水位(Lw)より下方の領域で且つ固化した領域(Gc)で包囲された領域を掘削した後、(リング状)金属枠(ライナーリング2)を除去する金属枠除去工程と、固化した領域(Gc:例えば円環状の領域)に複数の貫通孔(5)を穿孔する穿孔工程と、固化した領域(Gc)よりも内方(半径方向内方)に揚水手段(6)を設置する工程とを有することも可能である(図13)。
ここで、揚水手段としては、例えば揚水用ポンプ(6)が好ましい。そして、揚水用ポンプ(6)に加えて、除去された金属枠(2)よりも内方に多孔管、砕石(栗石7等)等を充填するのが好ましい(図14〜図16:図22)。
【0014】
ここで、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に(例えばグラウト材等の固化材により)固化した領域(固化領域Gc)を造成する工程において、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に、当該土壌汚染領域(Ewp)の下方の領域(底部Gcbに相当する領域)及び側方の領域(側面部Gcsに相当する領域)の土壌を凍結する凍結工程を行なうように構成しても良い。
【0015】
本発明は、地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)が、金属枠(2)で包囲された領域内である場合のみならず、地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)が金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方に拡散している場合にも実施される。
地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)が金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方に拡散している場合には、金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する注入井(8)を掘削する工程と、(リング状)金属枠(ライナーリング2)よりも(半径方向)内方側に揚水手段(6)を設置し以って前記立坑(40)を吸引井(9)とせしめる工程と、注入井(8)から注水し且つ吸引井(9)から揚水する工程とを有しているのが好ましい(図22)。
【0016】
或いは、金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する吸引井(9)を掘削する工程と、(リング状)金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向内方側に注入手段(80)を設けて以って前記立坑(40)を注入井とせしめる工程と、注入井(8)から好気性微生物を活性化するための材料(例えば、酸素や栄養素)を注入すると共に注水して、吸引井(9)から揚水する工程を有しているのが好ましい(図24)。
【0017】
ここで、注入手段(80)は、汚染土壌(Gp)に好気性微生物を活性化するための材料(例えば、酸素や栄養素)を注入するための機器であれば、公知のものや、市販のものを全て適用可能である。
また、上述した発明(請求項6の発明)において、注入井(8)と吸引井(9)との間の領域に観察用の井戸(観測井)を掘削することも出来る。
【発明の効果】
【0018】
上述する構成を具備する本発明によれば、地下水位(Lw)よりも深度が深い汚染領域(地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域)を包囲するように、固化材により(例えば、固化材を噴射して原位置土を切削して混合して)固化する領域(固化領域Gc)を造成しており、固化材で固化した領域(Gc)は地下水を透過しないので、湧水が抑制される。
すなわち、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域(Ewp)は、固化された領域(Gc)で包囲されているので、当該包囲されている領域(固化領域Gcの外側の領域)の地下水圧が高圧であっても、地下水は固化された領域(Gc)を透過して浸入することが困難である。そのため、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域(Ewp)を掘削しても、湧水が抑制され、地下水位(Lw)より深い領域まで容易且つ安全に掘削することが出来る。
【0019】
ここで、固化材により土壌を固化する技術は、凍結材を流過して土壌を固化する技術に比較して、コストを抑制することが可能である。そのため、本発明によれば、地下水位(Lw)よりも深度が深い領域の汚染土壌の浄化に必要なコストを低く抑えることが可能である。
また本発明によれば、固化材を適宜選定することにより、掘削が妨げられない程度に湧水が防止され、且つ、汚染物質を除去した領域における出来形検測に必要な期間の湧水が防止されると共に、環境に対する圧力を少なくする事が出来る。
【0020】
ここで、固化材で地盤改良された領域(Gc)は透水性が低い。そのため、固化材で地盤改良された領域(Gc)の内側の領域と、その外側の土壌との間で水分の授受を行なうことは出来ない。この事は、汚染された地下水が周囲に拡散している場合において、固化材で固化或いは地盤改良された領域(Gc)の内側に掘削された立坑を利用して、周辺の汚染土壌の浄化する処理が困難である旨を意味している。
それに対して、固化材により固化された土壌(Gc)であってリング状金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向外方の円環状の領域に複数の貫通孔(5)を穿孔し、リング状金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向内方の部分にポンプ(6)等を設置し、砕石(栗石7等)を充填すれば(請求項3)、リング状金属枠(ライナーリング2)が撤去された後、土壌が固化された領域(Gc)の周辺に汚染物質が拡散していても、当該汚染物質は地下水と共に、前記貫通孔(5)を介して砕石(7)を充填した領域(固化材で固化された円環状領域の半径方向内方の領域)に浸入する。
【0021】
前記貫通孔(5)を介して浸入した汚染水を、例えばポンプ(6)等で揚水し、地上側で処理すれば、土壌が固化された領域(Gc)の周辺における汚染も除去される。すなわち、穿孔された立坑(40)を利用して、周辺土壌の汚染物質を除去することが出来るのである。
さらに、砕石(7)を充填することにより、金属枠(2)を除去した後に、汚染土壌を掘削、除去した領域が崩落することが防止される。
【0022】
ここで、固化材で土壌を固化することに代えて、凍結材により地下水位(Lw)よりも下方の領域における土壌を凍結して固化すれば(請求項4)、凍結した土壌(Gf)は地下水を透過しないので、凍結した土壌(Gf)を掘削する際に湧水は生じないので、安全且つ容易に、地下水位(Lw)よりも深い領域まで掘削することが出来る。
それに加えて、凍結材により地下水位(Lw)よりも下方の領域における土壌であって、汚染されている領域(Ewp)を包囲する位置の土壌を凍結して固化すれば(請求項4)、凍結した土壌(Gf)が原状態に復帰した(解凍した)後は、土壌本来の透水性を回復する。そのため、リング状金属枠(2)を撤去した後、金属枠(2)の外方に残存した凍結した土壌を穿孔しなくても、一定時間が経過すれば、リング状金属枠(2)を撤去した後の空間内に地下水が浸入可能となる。
【0023】
従って、リング状金属枠(ライナーリング2)よりも内方の部分にポンプ(6)等を設置し、砕石(栗石7等)を充填すれば、地下水位以下の領域において、凍結された領域(Gf)よりも外側に汚染物質が拡散していても、当該汚染物質は地下水に連行されて、解凍された土壌を透過して、砕石(7)を充填した領域に浸入する。そして汚染物質を包含する地下水を、例えばポンプ(6)等で地上側へ揚水し、地上側で処理することにより、土壌が凍結された領域(Gf)の周辺に拡散した汚染物質を除去することが出来る。
凍結された土壌(Gf)が解凍すれば、固化材の様な異物が地中に残存しないため、施工された領域に対する環境的な圧力が最小限となり、いわゆる「環境に優しい」施工が行われることになる。
【0024】
本発明において、汚染物質が固化された領域(Gc)の外方まで拡散している場合に、当該汚染物質が拡散している領域の外縁部に注入井(8)を掘削し、金属枠(2)よりも半径方向内方側を吸引井(9)に構成し(立坑40を吸引井にせしめ)、注入井(8)から注水し、吸引井(9)から揚水すれば(請求項5)、注入井(8)から吸引井(9)への流れ(fw)が生成され、汚染領域外縁部から汚染物質を包含した水が吸引井(9)に吸引されて地上側へ揚水される。これにより、土壌が凍結された領域の外側における汚染物質も、地下水に連行されて地中から除去される。
【0025】
或いは本発明において、金属枠(2)よりも半径方向内方側に注入井(8)を構成し(立坑40を注入井にせしめ)、該注入井(8)から好気性微生物を活性化するための材料(例えば、酸素、栄養素:好気性微生物そのもの等を含む)を注入すれば(請求項6)、前記材料(例えば、酸素及び栄養素、好気性微生物)が汚染領域(Gp)に注入されることにより、好気性微生物が活性化され、汚染物質を生物学的に分解し、無害化する。これにより、地中における汚染物質が除去される。
ここで、好気性微生物による生物学的作用により汚染物質を分解するので、環境に対する圧力が少ない。
【0026】
それに加えて本発明によれば、金属枠(2)で包囲された領域のみを掘削するように構成されており、掘削するべき範囲が限定されているので、重機を用いることなく、比較的小型の機械或いは作業員のみで掘削が可能であり、その上、深い領域まで掘削する事が出来る。
ここで、施工現場が市街地の様な狭い領域の場合、大型の重機、例えば、大型クレーン等を施工のため持ち込めば、施工の際の振動や騒音が問題となる。また、仮に重機が転倒した場合等の事故を想定すると、周辺の建物に甚大な被害が及ぶ危険性が高い。それに対して本発明では、大型の重機が不要なので、そのような危険性を想定する必要が無い。
【0027】
そして、大型の重機が不要な本発明によれば、例えば稼働中の施設等、狭い領域で施工することが可能である。
従来技術では、深層部にまで達した汚染土壌を浄化するに際して地表部から掘削した場合には、土壌安息角以下の傾斜角を有する空間を掘削しなければならないので、掘削現場が広い範囲に及んでしまい、大量の掘削土が発生してしまう。
それに対して、本発明によれば、金属枠(2)を設置することにより、掘削現場を小規模に抑えて、掘削土量の激減させることができる。すなわち本発明によれば、施工領域がリング状金属枠(ライナーリング2)で包囲されているので、掘削された立坑が土壌安息角以下の傾斜角を有していなくても、掘削された立坑が崩落してしまうことは無い。
また、金属枠(2)は複数の円弧状のパーツが公知の方法によって組み立てられたものであり、そのため、組立て、分解が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】汚染領域が地下水位よりも深い領域に到達しており、地下水に流れがない状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態において、地上の建造物を撤去した状態を示す図である。
【図3】第1実施形態において、汚染領域下方の円盤状の底部を固化した状態を示す断面図である。
【図4】第1実施形態において、図3で示す底部の周縁部であって、地下水位よりも下方の側面部を固化した状態を示す断面図である。
【図5】側面部と底部との相対的な位置関係を示す地下水位から見た平面図である。
【図6】第1実施形態における立坑掘削及びライナーリング設置の初期状態を示す工程図。
【図7】第1実施形態における立坑掘削及びライナーリング設置の図6よりも後の状態を示す工程図。
【図8】第1実施形態において、地下水位より上方の領域における立坑掘削及びライナーリング設置が完了した状態を示す工程図。
【図9】第1実施形態において、地下水位より下方の領域に立坑を掘削してライナーリングを設置する状態を示す図である。
【図10】第1実施形態において、汚染領域の立坑掘削及びライナーリング設置が完了した状態を示す工程図である。
【図11】第1実施形態において、出来形検測の際にリフト・アップ力が作用する状態を示す図である。
【図12】図11で示すリフト・アップ力により出来形が破損されない様にする例を示す図である。
【図13】第1実施形態の変形例において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化する直前の状態を示す図である。
【図14】第2実施形態におけるライナーリング除去及び立坑の埋め戻しの初期状態を示す工程図である。
【図15】第2実施形態において、地下水位より下方の領域の埋め戻しを完了した後、地下水位より上方の領域を埋め戻している状態を示す工程図である。
【図16】第2実施形態において、埋め戻しが完了した状態を示す工程図である。
【図17】汚染領域が地下水位よりも深い領域に到達しており、地下水に流れがある状態を示す断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化した状態を示す図である。
【図19】第3実施形態において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化した後、地下水位より上方の領域に立坑を掘削しライナーリングを設置する工程を示す図である。
【図20】第3実施形態において、地下水位より上方の領域における立坑掘削及びライナーリング設置を完了した状態を示す図である。
【図21】第3実施形態において、地下水位より下方の領域に立坑を掘削し、ライナーリングを設置した状態を示す図である。
【図22】第3実施形態において、埋め戻した後に、注入井と吸引井により汚染物質を除去する状態を示す図である。
【図23】第3実施形態の変形例において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化する直前の状態を示す図である。
【図24】本発明の第4実施形態を説明する図である。
【図25】汚染領域が拡散する態様を説明する断面図である。
【図26】図25で示す汚染領域を浄化する技術の概要を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図12に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態を実施する前における土壌汚染の状態を示している。
図1において、工場20において、図示しないタンクの破損等の理由により、汚染物質が漏出し、土壌Gの地下深くまで汚染物質が浸透しており、汚染領域Gpの先端は、地下水位Lwの下方の領域まで延在している。
ここで、図1〜図12の第1実施形態は、地下水の流れが存在せず、汚染領域Gpの汚染物質が水平方向には拡散していない場合に対処するものである。
【0030】
上述したように、汚染物質は重力の作用により土壌粒子間を下方に移動するので、土壌汚染領域Gpは、図1における左右方向にはさほど広がることはなく、図1における下方に浸透する。そのため、汚染領域Gpは地中深い領域まで到達してしまう。
図1において、土壌Gはハッチングを付して示されており、ハッチングが付されていない白抜き部分が汚染物質により汚染された領域Gpである。また図1において、符号Lwは地下水位を示しており、符号30fは地表を示し、符号Epは第1実施形態を施工するべき領域を示しており、符号Ewpは地下水位Lwよりも下方の施工領域を示す。
【0031】
第1実施形態の施工に当たっては、図2で示すように、工場20が撤去された状態で行われる。しかし、工場20における全ての建造物を撤去しなければならない訳ではない。汚染領域Gp直上に存在する建造物を撤去すれば足りる。
具体的には、図3で説明する地下水位Lwよりも下方の領域で且つ汚染領域Gpを包囲する領域Gc(図6:底部Gcb及び側面部Gcs)の固化に必要な機材(図示せず)を、汚染領域Gp直上の位置まで搬入して、設置することが可能な程度に、建造物を撤去すれば良い。
【0032】
次に、図3で示すように、地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gp下方の領域Gcb(底部)を固化する。底部Gcbは例えば円盤状の領域である。ただし、四角形その他の平板形状であっても良い。
図3で示す工程では、図示しない手段、例えば注入手段、或いは噴射手段によって、地下水位Lwから下方の円盤状の底部Gcbに、固化材、例えばグラウト材を供給する。
図3において、地下水位Lw下方の円盤状の底部Gcbを固化するに当たっては、図示しない地盤改良用の機器を汚染領域Gpの直上に設置して、公知技術に係る工法を適用して、地下水位Lwから下方の領域の固化を行う。公知技術に係る工法としては、例えば、いわゆる注入工法や、いわゆるグラウト工法、凍結工法、その他が適用可能である。なお「グラウト工法」とは、固化材(グラウト材)を供給して土壌を切削しつつ、固化材と土壌とを撹拌、混合して地中固結体を造成する工法である。
ここで、グラウト材は固化材の一例として例示されたものであり、その他の固化材、例えば各種薬液、セメントミルク、その他が使用可能である。
【0033】
底部Gcbの固化を行ったならば、図4で示すように、底部Gcb周縁部と地下水位Lwとの間の領域(側面部)Gcsを固化する。側面部Gcsを固化することにより、地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gpは、底部Gcbと側面部Gcsとにより包囲されることになる。なお本明細書において、底部Gcbと側面部Gcsとを包括的に、「固化土壌Gc」或いは「固化領域Gc」と表現する場合がある。
図4において、底部Gcbと側面部Gcsとにより包囲されている領域であって、汚染領域Gp以外の領域は、地下水位Lwよりも下方の領域Gwと同一の状態となっている。
【0034】
側面部Gcsを地下水位Lwから見た状態が図5で示されている。側面部Gcsは、例えば、図5で示すように、底部Gcb周縁部に連続して形成されている複数の円柱状の地中固結体により構成されている。
側面部Gcsを造成するに際しては、例えば、底部Gcb周縁部をオーガで掘削し、底部Gcbまで到達せしめる。そして、地下水位Lwと底部Gcbとの間の領域において、固化材をオーガ先端から注入して、当該固化材と原位置土とをオーガの回転により混練して、円柱状の地中固結体を造成する。底部Gcb周縁部を包囲する様に、当該円柱状の地中固結体を複数本に亘って造成すれば、側面部Gcsが築造される。
【0035】
地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gpを包含する様に固化領域Gcを固化したならば(図4、図5)、地下水位Lwよりも上方の領域であって、汚染領域Gpを包含する領域を掘削する(図6)。
掘削に当たっては、図6及び図7で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域であって汚染領域Gpを包含する範囲を、掘削領域の断面が円形となる様に、地表30fから所定の深さまで立坑40を掘削する。所定の深さまで掘削したならば、掘削された領域にライナーリング2を設置する。
【0036】
図6では、地表30fから数えて2段目のライナーリング2を設置した状態を示しており、図7では地表30fから数えて4段目のライナーリング2を設置した状態を示している。
図6及び図7において、立坑40の掘削には、小型掘削機械1(例えば自走式の小型バックホー)を用いて、地表30fから土壌の鉛直方向下方に向かって掘削する。
掘削された土壌Go(汚染土壌を含む)は、例えばダンプトラック(車両)3により、或いは地上側に設置した図示しないベルトコンベアにより、図示しない汚染土壌処理設備へ運搬され、公知の手法により無害化される。
立坑40の掘削に際しては、小型掘削機械1により、例えばライナーリング2の鉛直方向寸法hrに相当する深さ(ライナーリング2の1段分の深さ)だけ掘削し、掘削された立坑40にライナーリング2を1段分設置する。以下、立坑40の掘削とライナーリング2の設置とを交互に繰り返す。
【0037】
ここで、立坑40を掘削する深さは、ライナーリング2の1段分の深度hrに限定されるものではない。例えば、ライナーリング2の2段分の深度(寸法2hr)だけ立坑40を掘削し、立坑40にライナーリング2を2段設置しても良い。
すなわち、立坑40の掘削に際しては、ライナーリング2のn段分の深度だけ立坑40を掘削し、ステップS2では掘削された立坑40の内壁面を覆うようにライナーリング2をn段設置することが出来る。換言すれば、立坑40の掘削とライナーリング2の設置に際して、上述したライナーリング2の段数nは、1のみならず、掘削された立坑40が崩落してしまう恐れがない限りにおいて、2以上の自然数であっても良い。
【0038】
図8で示す状態では、地下水位Lwよりも上方の領域であって、汚染領域Gpを包含する領域に立坑40が掘削されてライナーリング2が設置されている。
ここで、図8においてライナーリング2が5段設置されているのは、図示の煩雑を避けるために簡略化して表現したものである。実際の施工にあたっては、地下水位Lwに到達するまでのライナーリング2の設置段数は、非常に大きな数値となる。
地下水位Lwまでライナーリング2を設置した段階で、地下水位Lwよりも上方における汚染領域Gpの汚染土壌は掘削されて地上側に搬送されている。そして、図4で説明した通り、地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gpは、固化領域Gcにより包囲された状態である。
【0039】
次に、図9で示す様に、地下水位Lwよりも下方の領域で、且つ、固化領域Gcにより包囲されている領域の土壌を掘削して、地下水位Lwよりも下方の領域を掘削して、立坑40を下方に延長する。そして、削孔された地下水位Lwよりも下方の領域(立坑40を下方に延長した領域)にライナーリング2を設置する。
ここで、固化領域Gcは透水性が低く、固化領域Gc周辺の地下水は固化領域Gcで包囲された領域に浸入することが出来ない。そのため、固化領域Gcで包囲された領域を掘削しても掘削個所から地下水が湧き出すことはない。従って、湧水のため、地下水位Lw以深の領域の掘削が困難になることが防止され、地下水位Lwよりも下方の領域であっても容易に掘削することが出来る。
【0040】
また、固化領域Gcの内壁面Dcoは崩落し難いので、地下水位Lwよりも上方の領域の施工(図6及び図7)の様に、ライナーリング2の1段分を掘削して、ライナーリング2を1段だけ設置することを繰り返す必要は無い。例えば、固化土壌Gcで包囲されている領域における掘削を完了した後に、固化土壌Gcで包囲されている領域の全域に亘ってライナーリング2を設置することが出来る。
もちろん、土圧が高い等の理由により、固化土壌Gcを掘削した領域Dcoが崩落する可能性があれば、固化土壌Gcをライナーリング2の1段分(或いは2段以上)の深さだけ掘削し、ライナーリング2を1段(或いは2段以上)ずつ設置しても良い。ライナーリング2を1段(或いは2段以上)ずつ設置する場合には、ライナーリング2で囲われた領域を掘削する。
図9において、固化土壌Gcで包囲された領域にライナーリング2を設置している状態を示す。
【0041】
固化土壌Gcを掘削した汚染土壌と固化材との混合物は、図6、図7の工程と同様に地上側30に搬出され、図示しない汚染処理設備で汚染物質と分離されて無害化される。
図9で示す工程において、地下水位Lw位深の汚染領域Gpにおける汚染土壌を掘削して地上側30に搬出することにより、地下水位Lw位深の領域から汚染物質が取り除かれる。
【0042】
図10は、地下水位Lwよりも下方の土壌が掘削されて、ライナーリング2が設置された状態が示されている。図10の状態では、固化領域Gcの内側にライナーリング2が設置されている。
この段階で、固化領域Gcの内側の空間(出来形)の確認、検査(出来形検測)が必要となる場合が存在する。その様な場合には、固化領域Gc中のライナーリング2を設置した領域の半径方向内側の空間(出来形)において、VOCの様な汚染物質を計測し、当該汚染物質が除去されたことを確認すれば良い。
【0043】
図10において、出来形の底部には、湧水等が溜まった水を排出するために揚水ポンプ11が設置されている。
施工領域1近傍の地表30fには、揚水ポンプ11で揚水された地下水を貯蔵し、必要な場合には処理を行なう水処理装置10が設置されており、この水処理装置10と揚水ポンプ11とは揚水管12によって接続されている。
【0044】
ここで、地下水位Lw位深の汚染領域Gpにおける汚染土壌を掘削して地上側30に搬出した状態では、図11で示すように、底部Gcbには上方向への力(いわゆる「リフト・アップ力」:複数の矢印Fuで示す)が作用する。このリフト・アップ力Fuは、底部Gcbが地下水位Lwよりも下方に位置するほど大きくなり、場合によっては、固化領域Gcの底部Gcbを破損し、或いは、亀裂を生じさせる恐れがある。そして底部Gcbが破損してしまうと、出来形検測に支障をきたす可能性も有る。
【0045】
リフト・アップ力Fuにより底部Gcbが破損することを防止するためには、図12で示すように、底部Gcbの一部(例えば中央部)に貫通孔Hbを形成してやれば良い。その様な貫通孔Hbを形成すれば、地下水圧が貫通孔Hbから抜けるので、リフト・アップ力も図12の矢印Fsmで示すように小さくなる。
発明者の経験では、貫通孔Hbから固化領域Gcの内側の空間(出来形)内に流入する地下水量(湧水量)は少なく、出来形検測に悪影響は与えない。しかし、貫通孔Hbからの湧水量が多い場合には、図12で示すように、貫通孔Hb内にポンプ11を配置して、湧水を地上側に汲み出せば良い。
【0046】
第1実施形態において、明確には図示されていないが、計測その他の作業を終了したならば、最深位置に配置されたライナーリング2を除去する。ライナーリング2は円弧状のライナーピースを複数個連結して構成されているので、ライナーピースの連結を解除する事により、最深位置(最下方)のライナーリング2を除去する事が出来る。
ライナーリング2を除去した後、掘削孔が崩落するのを防止するため、ライナーリング2を除去した領域を良質土で埋め戻す。埋め戻し材である良質土は、図7〜図9の工程で掘削された汚染土壌を図示しない汚染土壌処理設備で無害化したものを、原位置へ埋め戻せば良い。或いは、施工領域以外から供給される清浄な土壌であって、施工領域に対して環境的な影響を及ぼさないような土壌を用いても良い。
【0047】
ライナーリング2の除去及び立坑40の埋め戻しに際して、ライナーリング2は、例えば、1段ずつ除去される。しかし、ライナーリング2を除去した後、良質土で埋め戻すまでの間に、立坑40が崩落しないのであれば、一度に2段以上のライナーリング2を除去することも可能である。
最上段(地表側)までライナーリング2を撤去したならば、換言すれば地表までライナーリング2を撤去したならば、施工を終了する。
【0048】
図1〜図12で示す第1実施形態によれば、地下水位Lwよりも上方における汚染領域Gpでは、ライナーリング2で包囲された領域(汚染土壌の領域)を掘削し、掘削された汚染土壌を地上側に送り出して処理することにより、汚染物質を汚染土壌と共に地中から除去して、施工領域を浄化することができる。
一方、地下水位Lwよりも下方における汚染領域Gpは、その周辺を固化領域Gcで包囲し、固化領域Gcで包囲された内側の領域を掘削し、掘削された汚染土壌を地上側に送り出して処理することにより、汚染物質を汚染土壌と共に地中から除去して、施工領域を浄化している。
【0049】
ここで、地下水位Lwより深い領域は、湧水のため、掘削が困難である。
これに対して、第1実施形態によれば、地下水位Lwよりも下方における汚染領域Gpを固化領域Gcで包囲しており、固化領域Gcは透水性が低いので、周辺における地下水は固化領域Gcで包囲された領域の内側には浸入することが出来ない。そのため、地下水位Lwよりも深い領域を掘削する際における湧水を抑制することが出来る。
ここで、固化材を供給することによる土壌固化技術は、その他の技術、例えば遮水壁等を築造して湧水を防止する工法等に比較して、コストの削減及び工期の短縮の点で有利である。
【0050】
ここで、固化材を適宜選定することにより、掘削が妨げられない程度に湧水が抑制され、且つ、汚染物質を除去した領域における出来形検測に必要な期間だけ湧水が抑制されると共に、環境に対する影響を少なくする事が可能である。
係る見地に従えば、固化材としてグラウト材を使用する場合には、その透水係数kの範囲は、例えば、 1×10−5cm/s〜1×10−6cm/s とするのが好ましい。
【0051】
第1実施形態において、図6〜図8で示す工程では、小型掘削機械、例えばバックホーによって汚染領域Gpを掘削している。しかし、図示はされていないが、作業員の手作業による掘削、人力による掘削であっても良い。
図1〜図12の第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、ライナーリング2で包囲された領域のみを掘削するように構成されており、掘削するべき範囲Epが限定されているので、重機を用いることなく、簡単な機械或いは作業員のみで、深い領域まで掘削することが出来る。
大型重機を必要とせず、ライナーリング2で包囲された狭い領域のみで実施されるので、図1〜図12の第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、掘削土量を最小化して、施工領域も最小化することが出来る。そのため、例えば稼働中の施設等において、施工領域が狭い条件下での汚染土壌浄化が可能となる。
【0052】
第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、ライナーリング2を積層して設置しながら鉛直下方に堀進めるため、積層されたライナーリング2が剛性の高い山留壁として作用して、深い領域まで掘削しても、掘削された立坑40が崩落してしまうことはない。そのため、法面を設けないで掘削することが可能となる。そのため、掘削土量を最小化でき、汚染範囲に対して効率的な施工が可能となる。
【0053】
さらに、第1実施形態で用いられるライナーリング2は、複数の円弧状のライナーピースを連結して組み立てている。そのため、ライナーリング2の組立て、分解は、公知の技術により容易に行なうことが出来る。
【0054】
ここで、図1〜図12の第1実施形態では、地下水位Lw以深の汚染領域Gpを包囲するように底部Gcb、側面部Gcsを固化した後に、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置しているが、図13で示す第1実施形態の変形例では、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置した後に、地下水位Lw以深の汚染領域Gpを包囲するように底部Gcb、側面部Gcsを固化する。
図13は、地下水位Lwよりも上方の領域(地下水位Lw上方の汚染領域を包含している)に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置した状態を示している。そして、図13の状態では、地下水位Lwよりも下方の領域には、汚染領域Gpが残存している。
【0055】
図13の状態から、図3、図4で示すように、地下水位Lwより下方の汚染領域Gpを包囲する様に底部Gcb及び側面部Gcsを固化し、図9で示すように、固化領域Gcで包囲された地下水位Lwより下方の領域に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置して、図10で示す状態にせしめる。
図13の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図12の第1実施形態と同様である。
【0056】
次に、図14〜図16を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図1〜図13の第1実施形態では、地下水位Lwよりも上方の領域も、下方の領域も、全て埋め戻し材(例えば、良質土)で埋め戻しているが、図14〜図16の第2実施形態では、埋め戻しの態様が異なっている。
換言すれば、図14〜図16の第2実施形態は、埋め戻しについて、図1〜図13の第1実施形態とは異なっている。
【0057】
上述したように、固化材供給により固化された土壌は透水性が低いので、地下水が透過して掘削の際に湧水が生じるのを防止することが出来る。その反面、固化された土壌が地下水の透過を妨げるので、地下水に流れが存在し、地下水に連行されて汚染物質が拡散しており、土壌が固化された領域のみならず周辺土壌も汚染されている場合に、固化土壌Gcの内側に掘削された立坑40を利用して、立坑40周辺の土壌における汚染を浄化することは困難である。
これに対して、図14〜図16の第2実施形態では、固化材を供給して固化された土壌(固化領域)Gc、すなわちライナーリング2よりも半径方向外方の円環状の固化された領域に、複数の貫通孔5を穿孔している。
【0058】
グラウト材で固化された円環状領域(固化領域Gc:ライナーリング2よりも半径方向外方の円環状の固化された領域)に複数の貫通孔5を穿孔するに際して、図示しない削岩機その他の穿孔用機械で貫通孔5を穿孔する。穿孔に際して、穿孔用機械の反力は、除去する以前のライナーリング2で得るのが好ましい。
具体的には、図示しない穿孔用機械の末尾部分に図示しないロッドを接続し、当該ロッドの他端部をライナーリング2の内周面に当接すれば、穿孔用機械の反力をライナーリング2により支持することが可能となる。
【0059】
第2実施形態における施工の手順としては、概略次の様になる。
先ず、固化領域Gcで包囲された領域の土壌が掘削され、図10で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域及び下方の領域の全域にライナーリング2が設置されるまでは、図1〜図13で示す第1実施形態と同様である。
上述した様に、第2実施形態は、汚染物質が取り除かれ、或いは、汚染物質が存在しないことが確認された後、ライナーリング2を取り外しつつ、掘削領域Dcoを埋め戻す工程が、図1〜図13で示す第1実施形態と相違している。
【0060】
第2実施形態によれば、図14で示すように、最下層のライナーリング2を除去して、垂直方向位置が最下層のライナーリング2と対応する固化領域Gc(ライナーリングよりも半径方向外方の円環状領域)に、上述した要領で、貫通孔5を複数個穿孔する。
そして、コルゲート管(多孔管)を立坑40内の鉛直方向に配置する。また、図示しないコルゲート管の内側に揚水管90を配置し、揚水管90を地上側30の図示しない汚染処理装置に接続する。
【0061】
次に、最初に除去したライナーリング2の直上のライナーリング2を除去する。そして、最初に除去したライナーリング2の垂直方向位置と対応する領域(或いは、固化領域Gcを穿孔した領域)に砕石7(例えば割栗石等)を充填する。砕石7を充填することにより、ライナーリング2を除去した領域が崩落する事が防止されると共に、貫通孔5を介して浸入した地下水(汚染物質を連行している地下水)がコルゲート管及びその内側の揚水管90に到達することを保証している。
以下、地下水位Lwよりも下方の領域では、固化領域Gcの穿孔、コルゲート管の接続、直上のライナーリング除去、砕石充填を繰り返す。
【0062】
図15で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域では、第1実施形態と同様な工程によって、ライナーリングを除去しつつ、良質土によって立坑40を埋め戻す。
図15では、地下水位Lwよりも上方の領域の概略1/2程度が、良質土によって埋め戻された状態を示している。そして、図16では、地下水位Lwよりも上方の領域の全域が、良質土によって埋め戻された状態を示している。
【0063】
図16で示すように、地下水位Lwよりも下方の領域では、立坑40の内側の空間には、例えば砕石(割栗石等)7が充填されている。
地下水の流れにより、土壌が固化された領域Gcの周辺に拡散した汚染された水は、矢印Fで示すように、貫通孔5を介して、砕石7を充填した領域内に浸入する。
浸入した汚染水は図示しないコルゲート管等により集水され、集水された汚染水は、例えばポンプ6と揚水90を介して地上側30に揚水される。そして、地上側で、図示しない処理装置で処理される。
これにより、汚染水に連行された汚染物質が周辺土壌から除去される。
【0064】
換言すれば、地下水位Lwよりも下方の領域において、固化領域Gcを穿孔し、固化領域Gcで包囲された領域内に砕石7を充填することにより、固化領域Gc周辺に拡散した汚染物質を連行した地下水を、砕石を充填した領域に浸入せしめ、例えばコルゲート管により集水して、上述したように地上側へ揚水して、処理している。
その結果、図14〜図16の第2実施形態によれば、固化領域Gc周辺に拡散した汚染物質を、立坑40を利用して除去することができる。
図14〜図16の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図13の第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、図17〜図22を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図17〜図22の第3実施形態は、地下水位Lwよりも下方の領域Gwまで汚染が浸透しており、且つ、地下水に流れがある場合に対処する実施形態である。
【0066】
図17では、施工前の土壌の汚染状態を示している。
図17において、土壌Gはハッチングを付して示されており、ハッチングが付されていない白抜き部分が、例えば工場20から漏出した汚染物質により汚染された領域Gpである。
図17において、工場20において、汚染物質が漏出した箇所が符号Esで示されている。また、符号Lwは地下水位を示し、符号Ewpは地下水位Lwよりも下方の施工領域であって、汚染物質漏出箇所Es直下の領域を示している。
図17において、地下水位Lwよりも深い領域Gwでは、汚染領域Gpは地下水の流れFwによって、図17の左側から右側へと流れている。
【0067】
第3実施形態の施工は、工場20が撤去された状態で行われる。しかし、工場20における全ての建造物を撤去しなければならない訳ではない。汚染領域Gp直上に存在する建造物を撤去すれば足りる。
具体的には、地下水位Lwよりも下方の施工領域Ewpの固化に必要な機材(図示せず)を、当該施工領域Ewp直上の位置まで搬入して、設置することが可能な程度に、建造物を撤去すれば良い。
【0068】
次に、第1実施形態と同様に、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染物質漏出箇所Es直下の汚染領域を包囲するように、固化領域Gcを造成する。固化領域Gcの造成の手法については、図3〜図5を参照して上述したのと同様である。
汚染物質漏出箇所Es直下の汚染領域を包囲するように、固化領域Gcを造成したならば、図19で示す様に、図6〜図8で述べたのと同じ要領で、地下水位Lwよりも浅い領域における汚染領域Gpにおいて、立坑40を掘削してライナーリング2を設置しつつ、汚染された土壌を地上側に移動する。
【0069】
図20で示す状態では、地下水位Lwよりも浅い領域Gにおいて、立坑40の掘削とライナーリング2の設置が完了している。
そして、図9、図10を参照して説明したのと同じ要領で、固化領域Gcで包囲された領域内に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置する。図21は、固化領域Gcで包囲された領域内で、立坑40の掘削と、ライナーリング2の設置を完了した状態が示されている。
図21の状態では、固化領域Gcで包囲された領域内の汚染土壌は、地上側30へ搬出、除去されている。
【0070】
ここで、図21を参照すれば明らかな様に、汚染領域Gpは、固化領域Gcよりも外部にまで拡散している。そして、ライナーリング2で包囲された図21の状態では、立坑40を利用して、固化領域Gc外部に拡散した汚染物質を除去することが出来ない。
そのため、第3実施形態では、図14〜図16の第2実施形態と同様に、立坑40を活用して、固化土壌Gc周辺に拡散した汚染物質を除去する。
【0071】
立坑40とその周辺土壌との間における透水性を確保するため、図21の状態から、図14〜図16で説明したのと同様な態様で、貫通孔5を形成しつつライナーリング2を除去する。
すなわち、ライナーリング2を除去(撤去)するに際して、ライナーリング2よりも外方に存在する固化された領域に複数の貫通孔5を穿孔して、立坑40への地下水の流入を確保する。そして、地下水位Lwよりも下方の領域では、図22で示す様に、立坑40の底部に揚水用ポンプ6を設置し、ライナーリング2を除去された領域に砕石(割栗石)7を充填する。図示はされていないが、砕石7を充填する際に、ポンプ6を設置した部分までコルゲート管を配置して、ポンプ6までの集水性を向上させることが望ましい。
【0072】
そして、地下水位Lwよりも上方の領域では、第2実施形態と同様に(図15、図16参照)、良質土によって立坑40を充填する。
ここで、固化領域Gcの造成に際して、固化材を使用せず、いわゆる凍結工法を利用した場合には、凍結された領域(固化領域Gc)は一定の時間が経過すると解凍して、地下水が流れる程度の透水性を持つ。そのため、凍結工法を利用した場合には、ライナーリング2を撤去すれば、立坑40への地下水の流入のために凍結された領域Gfを穿孔する必要はない。
【0073】
図22において、周辺の地下水が汚染物質を連行して、固化領域Gcの貫通孔5を介して(凍結工法を用いた場合には、固化領域Gcは存在しない)、砕石7が充填された領域(ライナーリング2撤去後の領域)に流入する。流入した地下水(汚染水)は、ポンプ6及び揚水管9を介して地上側に設置した浄化装置10に送られる。浄化装置10において汚染物質を連行した地下水を処理することにより、ライナーリング2の投影領域よりも外方の領域に拡散している汚染物質が、周辺土壌から除去されるのである。
【0074】
ここで第3実施形態では、立坑40の外側(ライナーリング2の投影領域よりも外方の領域)に拡散している汚染物質を除去するために、揚水管9が吸引井として作用し、次に述べる注入井8と共に汚染物質を連行した地下水を地上側へ揚水している。
吸引井である揚水管9に向かう地下水の流れを作るために、図22においては、注水井8を削孔している。
図22において、注水井8は、立坑40よりも外側の領域であって、汚染が拡散している領域、換言すれば地下水の流れについて立坑40の下流側に、少なくとも1箇所以上削孔されている。
【0075】
前記吸引用のポンプ6は、揚水管9、吸引ラインLoを介して、地上側30の浄化装置10に接続されている。その浄化装置10は、注入ラインLiを経由して前記注入井8と接続されている。
図22において、注水井8から注水して、揚水管(吸引井)9で吸引或いは揚水することにより、汚染された地下水が立坑40或いは揚水管(吸引井)9に向かう流れ(矢印fs)が形成される。
これにより、立坑40(或いは、ライナーリング2が撤去された後の領域)よりも外側の領域に拡散している汚染物質は、地下水及び/又は注入井8から供給された水に連行されて立坑40内に浸入し、揚水ポンプ6及び揚水管9により地上側へ搬送されて処理され、以って、土壌から除去されるのである。
なお、図22では、注入井8から注水される水は、浄化装置10で浄化処理された水を利用しているが、図示しない水源から供給しても良い。また、注入井8から注入される液体は、水のみならず、汚染物質除去用の浄化剤であっても良い。
【0076】
上述したように、第3実施形態では、立坑40に配置された揚水管9を吸引井として構成し、周辺に拡散した汚染物質を連行した地下水を吸引して地上側30へ揚水することが可能である。その結果、立坑40を利用して、その周辺に拡散した汚染物質を除去する事が出来る。
すなわち、第3実施形態によれば、地下水位Lwよりも下方の領域Gwまで汚染が浸透しており、且つ、地下水に流れがあるため、汚染物質が漏出した箇所Es直下から外れた領域まで汚染物質が拡散している場合であっても、当該拡散した汚染物質は立坑40を利用して除去される。
【0077】
図示はされていないが、図17〜図23の第3実施形態において、汚染物質が漏出した箇所Es直下の領域であって且つ地下水位Lwよりも下方の領域Ewp(図17参照)の、外殻部分(底部及び外周部分)を、いわゆる注入工法や、いわゆるグラウト工法、凍結工法、その他により、領域Ewpに固化材を供給して固化することに代えて、いわゆる凍結工法により凍結することが可能である。
第3実施形態において、凍結工法を用いた場合には、汚染領域Gpを除去した後、固結した領域は自然解凍して、元の状態の土壌に復帰する。したがって環境に対する圧力が極めて小さい。そして、凍結した状態が解凍した後は、元の土壌として透水性を回復するので、周辺の汚染物質を連行した地下水を立坑40で吸引して、地上側30へ揚水できる。
また、凍結する事により土壌を固化して固化領域Gcを構成するので、地下水位Lwよりも深度が深い領域であっても、周辺の地下水は固化領域Gcで包囲された領域内部には浸入せず、そのため掘削の際の湧水が防止される。
【0078】
図17〜図22の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図16の各実施形態と同様である。
【0079】
ここで、図17〜図22の第3実施形態では、地下水位Lwよりも下方で且つ汚染物質漏出箇所Es直下の領域を包囲するように固化領域Gcを造成した後、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置しているが、図23で示す第3実施形態の変形例では、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置した後に、地下水位Lw以深で固化領域Gcを造成している。
図23は、地下水位Lwよりも上方の領域(地下水位Lw上方の汚染領域を包含している)に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置した状態であって、地下水位より下方で固化領域Gcを造成する直前の状態を示している。図23の状態では、地下水位Lwよりも下方には、未だに汚染物質が残存している。
【0080】
図23の状態から、図3〜図5を参照して上述した態様で、地下水位Lwよりも下方で且つ汚染物質漏出箇所Es直下の領域を包囲するように、固化領域Gcを造成し、固化領域Gcで包囲された領域に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置すれば、図21で示す状態となる。そして、立坑40の底部に揚水用ポンプ6を設置し、ライナーリング2を除去された領域に砕石(割栗石)7を充填し、コルゲート管を配置して、図22で示す状態にする。
図23の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、図17〜図22の第3実施形態と同様である。
【0081】
立坑40(或いは、ライナーリング2の投影領域)よりも外方の領域に拡散している汚染物質を除去する手法として、微生物を利用する方法(いわゆる「バイオレメディエーション」)が存在する。
図24の第5実施形態は、バイオレメディエーションにより、立坑40周辺に拡散した汚染物質を除去している。
以下、図24を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
【0082】
図24の第4実施形態では、地下水位Lwよりも下方の領域に立坑40を掘削し、その内壁面にライナーリング2を設置するまでは、第3実施形態において図17〜図21を参照して説明したのと同様の処理を行なう。
ここで、第3実施形態では、立坑40は吸入井として用いられているが、図24の第4実施形態では、立坑40を注入井として利用する。
図24で示すように、第4実施形態では、ライナーリング除去後の領域に砕石7を充填し、同時に地表30fから当該領域まで垂直にチューブ8を埋設する。チューブ8の下端は砕石7まで延在しており、注入手段80が接続されており、以って、立坑40は注入井を構成する。
【0083】
図24において、汚染物質が拡散している領域の縁部近傍には、吸引井9が削孔されている。ここで、吸引井9は揚水管により構成されている。
地上側30には、インラインミキサ11と、酸素供給装置12と、栄養塩供給装置13とが設けられている。インラインミキサ11は、吸引ラインLiを介して吸引井9と接続している。またインラインミキサ11は、注入ラインLoを介して、チューブ8と接続している。
酸素供給装置12は、酸素供給ラインLaによってインラインミキサ11に接続している。栄養塩供給装置13は、栄養塩供給ラインLvによって吸引ラインLiと接続している。
【0084】
図24の第4実施形態では、吸引(揚水)した地下水に栄養塩を供給し、ラインミキサ11内で撹拌して酸素を供給する。そして、地下水と栄養塩と酸素との混合流体を、チューブ8を介して地下水を含む地層Gwに注入している。
地下水を含む地層Gwに注入された混合流体は、栄養塩と酸素を包含しているため、土中の好気性微生物を活性化する。好気性微生物が活性化するため、汚染物質は生物学的に分解されて無害化する。すなわち、立坑40(或いは、ライナーリング2が撤去された領域)よりも外側の領域であって、汚染Gpが拡散している領域に存在する汚染物質は、活性化した好気性微生物により生物学的に分解され、無害化するのである。
【0085】
土中の好気性微生物により汚染物質が分解された後の地下水は、矢印ftで示す様に流れ、吸引井9(揚水管)により地上側30へ揚水される。
地上側30へ揚水された地下水には、汚染物質を生物学的に分解する好気性微生物が大量に存在している。係る地下水に、上述した態様で栄養塩、酸素を添加されて、好気性微生物が活性化した状態で、チューブ9を経由して、再度、地中に注入され、汚染物質を生物学的に分解して、無害化するのである。
【0086】
ここで、揚水された地下水を、地上設備(図24では図示せず)で処理しても良い。
また、図24では示されていないが、注入井40と揚水井9との間に観測井を設け、地下水の汚染の度合い、或いは生物学的分解の進行程度をチェックする様に構成することも可能である。
さらに、図24の第4実施形態では、地中に注入するのは酸素と栄養素のみであるが、汚染物質に対する嗜好性の高い微生物を投入する事も可能である。
図24の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図23の各実施形態と同様である。
【0087】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態では、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を包囲する固化領域Gcは、固化材を供給することにより造成される場合について述べている。しかし、上述した様に、いわゆる凍結工法により、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を包囲する部分を凍結して、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を掘削する際における湧水を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1・・・小型掘削機械
2・・・ライナーリング
3・・・搬送機械/小型ダンプトラック
5・・・貫通孔
6・・・ポンプ
7・・・栗石
8・・・注入井
9・・・吸引井
10・・・汚染水処理装置
11・・・インラインミキサ
12・・・酸素供給装置
13・・・栄養塩供給装置
30・・・地上側
40・・・立坑
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば揮発性有機化合物(VOC)によって汚染された土壌を浄化する技術に関する。より詳細には、本発明は、深度が深い領域の土壌まで汚染されている場合においても、好適に実施できる汚染土壌の浄化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図25において、工場2の図示しないタンクの破損等により、汚染物質が漏出し、土壌Gの地下深くまで汚染物質が浸透している。
汚染物質は重力の作用により土壌粒子間を下方に移動するので、土壌汚染領域Gpは、図25における左右方向にはさほど広がることはなく、図25における下方に浸透する。そのため、汚染領域Gpは地中深い領域まで到達してしまう。
図25において、汚染物質により汚染された領域が符号Gpで示されており、符号30fは地表を示し、符号Epは汚染物質の浄化処理を施工するべき領域を示し、符号Epbは領域Epの最深部を示している。
【0003】
図25で示すように、汚染された領域Gpにおける汚染された土壌を除去するためには、地中深い領域まで掘削する必要があるが、地中深い領域までの掘削は、人力では困難であり、大型の機械(いわゆる「重機」)を使用するべき場合が多い。
しかし、汚染領域Gpが民家近傍である場合には、騒音や安全性の見地から、重機の使用を出来る限り控えたいという事情が存在する。
すなわち、図25で示す様な汚染土壌Gpの浄化のためには、地中深い領域まで掘削しなければならないという要請と、重機の使用を控えたいという要請とを同時に充足しなければならない。すなわち、相反する要請を同時に充足する必要がある。
【0004】
係る要請を充足する技術として、図26で示す様な技術が考えられる。
図26において、汚染領域Gpを包含する範囲を所定の深さまで掘削し、掘削された領域にライナーリング2を設置し、それを繰り返すことにより、汚染領域Gpを包含する領域に立坑40を削孔する。削孔された立坑40の壁面には、複数のリング状の金属枠(ライナーリング)2が設置される。
汚染領域Gpに存在する汚染土壌は、立坑40の掘削の際に地上側に移動されて、図示しない汚染土壌処理施設で汚染物質が除去され、或いは、図示しない搬送手段(例えば、搬送用車両)によって、立坑40から遠隔地点に設けられた図示しない汚染土壌処理施設へ移動される。
【0005】
汚染領域Gpの最深部Epbまで立坑40が掘削され、ライナーリング2が設置されたならば、ライナーリング2を設置した領域の半径方向内側の空間でVOCの様な汚染物質を計測し、当該汚染物質が除去されたことを確認する。
その後、最深位置に配置されたライナーリング2から順番にライナーリング2を除去して、ライナーリング2を除去した領域を良質土で埋め戻す作業を繰り返す。地表までライナーリング2を撤去して、埋め戻しを完了すれば、汚染土壌の浄化は終了する。
図26で示す様な浄化技術であれば、汚染された土壌を掘削して地上側に送り出して処理するに際して、ライナーリング2を設置した箇所は崩落しないので、ライナーリング2で包囲された領域のみを掘削すれば良い。そのため、立坑40を掘削するに際して、小型掘削機械1(例えば自走式の小型バックホー)や人手にのみより、地中深い領域まで掘削することが可能である。そして、重機の使用を必要としない。
【0006】
しかし、図26で示す浄化技術では、汚染物質が地下水位よりも下方の領域まで到達した場合には、適用することが困難である。
汚染領域Gpが地下水位よりも深い領域まで到達している場合には、当該地下水位よりも深い領域も掘削しなければならないが、地下水位よりも深い領域(地下水位よりも下方の領域)では掘削の際に湧水が生じる。ライナーリング2で包囲されている領域であっても、掘削の際には水が湧き出てくる。
ライナーリング2で包囲されている領域であっても、湧水のため地下水位よりも下方の領域を掘削することが出来ないので、図26で示す工法は、地下水位よりも下方の汚染領域を浄化することが出来ない。
【0007】
その他の従来技術として、例えば、掘削対象領域の周囲に凍結管を埋設し、掘削対象領域の周囲を凍結して掘削孔を削孔する技術が存在する(特許文献1参照)。
しかし、上述した様に、汚染物質は重力が作用する方向に拡散するため、汚染領域が地中深い領域に及んでしまう場合が多い。その様な場合において、掘削対象領域の周囲全てを凍結するには多大なコストが必要となってしまうので、係る従来技術(特許文献1)を適用することは困難である。
また、特許文献1は地盤中に埋蔵された自然由来の不要埋蔵物や、過去に廃棄された兵器等の人為的に埋蔵物の除去に関する技術であり、汚染土壌の浄化を目的とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−263557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、地下水位よりも下方に存在する汚染土壌を浄化することが出来て、しかも、掘削に際して重機の使用を必要としない様な汚染土壌浄化工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の汚染土壌浄化工法は、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に(例えばグラウト材等の固化材により)固化した領域(固化領域Gc)を造成する工程と、固化した領域(Gc)を造成した後に、地下水位(Lw)よりも上方の土壌汚染領域(Gp)を包含する領域(Ep:例えば円形の領域)に立坑(40)を(地表面30fから)所定の深さ寸法(ライナーリング2の1段部或いは複数段の幅方向寸法)だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑(40)に金属枠(例えば、リング状の金属枠2)を設置する金属枠設置工程を有し、固化した領域(Gc)で包囲された領域(地下水位Lwよりも下方の土壌汚染領域Ewpを包含する領域)全域を掘削して金属枠(2)を設置するまで前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返すことを特徴としている(図1〜図10)。
前記掘削工程では、地下水位(Lw)よりも上方の領域では土壌汚染領域(Gp)を包含する土壌を掘削し、地下水位(Lw)よりも下方の領域では、固化された領域(Gc)における汚染土壌と固化材との混合物(固化した当該混合物)を掘削する。
ここで、前記掘削工程で掘り出された汚染土壌(Go)は、地上側(Gf)へ搬送されて汚染土壌処理機構で処理されるのが好ましい。
【0011】
また本発明の汚染土壌浄化工法は、地下水位(Lw)よりも上方の土壌汚染領域(Gp)を包含する領域(Ep:例えば円形の領域)に立坑(40)を(地表面30fから)所定の深さ寸法(リング状の金属枠2の1段部或いは複数段の幅方向寸法)だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑(40)に金属枠(例えば、リング状の金属枠:ライナーリング2)を設置する金属枠設置工程を有し、地下水位(Lw)に到達するまで前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返し、地下水位(Lw)よりも上方の領域全域に立坑(40)を掘削して金属枠(2)を設置した後、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に(例えばグラウト材等の固化材により)固化した領域(固化領域Gc)を造成する工程と、固化した領域(Gc)を造成した後に、固化した領域(Gc)で包囲された領域(地下水位Lwよりも下方の土壌汚染領域Ewpを包含する領域)全域を掘削して金属枠(2)を設置するまで、地下水位(Lw)より下方の領域で且つ固化した領域(Gc)で包囲された領域を掘削する工程及び掘削された固化領域(Gc)に金属枠(2)を設置する工程を繰り返すことを特徴としている(図13)。
【0012】
本発明の実施に際して、金属枠(2)を設置した範囲の内側の土壌(或いは、土壌と固化材の混合物であって、固化したもの)の掘削を完了したならば、下方の金属枠(2)から順に撤去して、撤去された金属枠(2)の内側(半径方向内側)の領域を順次埋め戻すのが好ましい。
【0013】
この場合(請求項1、2の場合)、地下水位(Lw)より下方の領域で且つ固化した領域(Gc)で包囲された領域を掘削した後、(リング状)金属枠(ライナーリング2)を除去する金属枠除去工程と、固化した領域(Gc:例えば円環状の領域)に複数の貫通孔(5)を穿孔する穿孔工程と、固化した領域(Gc)よりも内方(半径方向内方)に揚水手段(6)を設置する工程とを有することも可能である(図13)。
ここで、揚水手段としては、例えば揚水用ポンプ(6)が好ましい。そして、揚水用ポンプ(6)に加えて、除去された金属枠(2)よりも内方に多孔管、砕石(栗石7等)等を充填するのが好ましい(図14〜図16:図22)。
【0014】
ここで、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に(例えばグラウト材等の固化材により)固化した領域(固化領域Gc)を造成する工程において、地下水位(Lw)よりも下方の土壌汚染領域(Ewp)を包囲する様に、当該土壌汚染領域(Ewp)の下方の領域(底部Gcbに相当する領域)及び側方の領域(側面部Gcsに相当する領域)の土壌を凍結する凍結工程を行なうように構成しても良い。
【0015】
本発明は、地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)が、金属枠(2)で包囲された領域内である場合のみならず、地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)が金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方に拡散している場合にも実施される。
地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)が金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方に拡散している場合には、金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する注入井(8)を掘削する工程と、(リング状)金属枠(ライナーリング2)よりも(半径方向)内方側に揚水手段(6)を設置し以って前記立坑(40)を吸引井(9)とせしめる工程と、注入井(8)から注水し且つ吸引井(9)から揚水する工程とを有しているのが好ましい(図22)。
【0016】
或いは、金属枠(ライナーリング2)で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する吸引井(9)を掘削する工程と、(リング状)金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向内方側に注入手段(80)を設けて以って前記立坑(40)を注入井とせしめる工程と、注入井(8)から好気性微生物を活性化するための材料(例えば、酸素や栄養素)を注入すると共に注水して、吸引井(9)から揚水する工程を有しているのが好ましい(図24)。
【0017】
ここで、注入手段(80)は、汚染土壌(Gp)に好気性微生物を活性化するための材料(例えば、酸素や栄養素)を注入するための機器であれば、公知のものや、市販のものを全て適用可能である。
また、上述した発明(請求項6の発明)において、注入井(8)と吸引井(9)との間の領域に観察用の井戸(観測井)を掘削することも出来る。
【発明の効果】
【0018】
上述する構成を具備する本発明によれば、地下水位(Lw)よりも深度が深い汚染領域(地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域)を包囲するように、固化材により(例えば、固化材を噴射して原位置土を切削して混合して)固化する領域(固化領域Gc)を造成しており、固化材で固化した領域(Gc)は地下水を透過しないので、湧水が抑制される。
すなわち、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域(Ewp)は、固化された領域(Gc)で包囲されているので、当該包囲されている領域(固化領域Gcの外側の領域)の地下水圧が高圧であっても、地下水は固化された領域(Gc)を透過して浸入することが困難である。そのため、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域(Ewp)を掘削しても、湧水が抑制され、地下水位(Lw)より深い領域まで容易且つ安全に掘削することが出来る。
【0019】
ここで、固化材により土壌を固化する技術は、凍結材を流過して土壌を固化する技術に比較して、コストを抑制することが可能である。そのため、本発明によれば、地下水位(Lw)よりも深度が深い領域の汚染土壌の浄化に必要なコストを低く抑えることが可能である。
また本発明によれば、固化材を適宜選定することにより、掘削が妨げられない程度に湧水が防止され、且つ、汚染物質を除去した領域における出来形検測に必要な期間の湧水が防止されると共に、環境に対する圧力を少なくする事が出来る。
【0020】
ここで、固化材で地盤改良された領域(Gc)は透水性が低い。そのため、固化材で地盤改良された領域(Gc)の内側の領域と、その外側の土壌との間で水分の授受を行なうことは出来ない。この事は、汚染された地下水が周囲に拡散している場合において、固化材で固化或いは地盤改良された領域(Gc)の内側に掘削された立坑を利用して、周辺の汚染土壌の浄化する処理が困難である旨を意味している。
それに対して、固化材により固化された土壌(Gc)であってリング状金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向外方の円環状の領域に複数の貫通孔(5)を穿孔し、リング状金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向内方の部分にポンプ(6)等を設置し、砕石(栗石7等)を充填すれば(請求項3)、リング状金属枠(ライナーリング2)が撤去された後、土壌が固化された領域(Gc)の周辺に汚染物質が拡散していても、当該汚染物質は地下水と共に、前記貫通孔(5)を介して砕石(7)を充填した領域(固化材で固化された円環状領域の半径方向内方の領域)に浸入する。
【0021】
前記貫通孔(5)を介して浸入した汚染水を、例えばポンプ(6)等で揚水し、地上側で処理すれば、土壌が固化された領域(Gc)の周辺における汚染も除去される。すなわち、穿孔された立坑(40)を利用して、周辺土壌の汚染物質を除去することが出来るのである。
さらに、砕石(7)を充填することにより、金属枠(2)を除去した後に、汚染土壌を掘削、除去した領域が崩落することが防止される。
【0022】
ここで、固化材で土壌を固化することに代えて、凍結材により地下水位(Lw)よりも下方の領域における土壌を凍結して固化すれば(請求項4)、凍結した土壌(Gf)は地下水を透過しないので、凍結した土壌(Gf)を掘削する際に湧水は生じないので、安全且つ容易に、地下水位(Lw)よりも深い領域まで掘削することが出来る。
それに加えて、凍結材により地下水位(Lw)よりも下方の領域における土壌であって、汚染されている領域(Ewp)を包囲する位置の土壌を凍結して固化すれば(請求項4)、凍結した土壌(Gf)が原状態に復帰した(解凍した)後は、土壌本来の透水性を回復する。そのため、リング状金属枠(2)を撤去した後、金属枠(2)の外方に残存した凍結した土壌を穿孔しなくても、一定時間が経過すれば、リング状金属枠(2)を撤去した後の空間内に地下水が浸入可能となる。
【0023】
従って、リング状金属枠(ライナーリング2)よりも内方の部分にポンプ(6)等を設置し、砕石(栗石7等)を充填すれば、地下水位以下の領域において、凍結された領域(Gf)よりも外側に汚染物質が拡散していても、当該汚染物質は地下水に連行されて、解凍された土壌を透過して、砕石(7)を充填した領域に浸入する。そして汚染物質を包含する地下水を、例えばポンプ(6)等で地上側へ揚水し、地上側で処理することにより、土壌が凍結された領域(Gf)の周辺に拡散した汚染物質を除去することが出来る。
凍結された土壌(Gf)が解凍すれば、固化材の様な異物が地中に残存しないため、施工された領域に対する環境的な圧力が最小限となり、いわゆる「環境に優しい」施工が行われることになる。
【0024】
本発明において、汚染物質が固化された領域(Gc)の外方まで拡散している場合に、当該汚染物質が拡散している領域の外縁部に注入井(8)を掘削し、金属枠(2)よりも半径方向内方側を吸引井(9)に構成し(立坑40を吸引井にせしめ)、注入井(8)から注水し、吸引井(9)から揚水すれば(請求項5)、注入井(8)から吸引井(9)への流れ(fw)が生成され、汚染領域外縁部から汚染物質を包含した水が吸引井(9)に吸引されて地上側へ揚水される。これにより、土壌が凍結された領域の外側における汚染物質も、地下水に連行されて地中から除去される。
【0025】
或いは本発明において、金属枠(2)よりも半径方向内方側に注入井(8)を構成し(立坑40を注入井にせしめ)、該注入井(8)から好気性微生物を活性化するための材料(例えば、酸素、栄養素:好気性微生物そのもの等を含む)を注入すれば(請求項6)、前記材料(例えば、酸素及び栄養素、好気性微生物)が汚染領域(Gp)に注入されることにより、好気性微生物が活性化され、汚染物質を生物学的に分解し、無害化する。これにより、地中における汚染物質が除去される。
ここで、好気性微生物による生物学的作用により汚染物質を分解するので、環境に対する圧力が少ない。
【0026】
それに加えて本発明によれば、金属枠(2)で包囲された領域のみを掘削するように構成されており、掘削するべき範囲が限定されているので、重機を用いることなく、比較的小型の機械或いは作業員のみで掘削が可能であり、その上、深い領域まで掘削する事が出来る。
ここで、施工現場が市街地の様な狭い領域の場合、大型の重機、例えば、大型クレーン等を施工のため持ち込めば、施工の際の振動や騒音が問題となる。また、仮に重機が転倒した場合等の事故を想定すると、周辺の建物に甚大な被害が及ぶ危険性が高い。それに対して本発明では、大型の重機が不要なので、そのような危険性を想定する必要が無い。
【0027】
そして、大型の重機が不要な本発明によれば、例えば稼働中の施設等、狭い領域で施工することが可能である。
従来技術では、深層部にまで達した汚染土壌を浄化するに際して地表部から掘削した場合には、土壌安息角以下の傾斜角を有する空間を掘削しなければならないので、掘削現場が広い範囲に及んでしまい、大量の掘削土が発生してしまう。
それに対して、本発明によれば、金属枠(2)を設置することにより、掘削現場を小規模に抑えて、掘削土量の激減させることができる。すなわち本発明によれば、施工領域がリング状金属枠(ライナーリング2)で包囲されているので、掘削された立坑が土壌安息角以下の傾斜角を有していなくても、掘削された立坑が崩落してしまうことは無い。
また、金属枠(2)は複数の円弧状のパーツが公知の方法によって組み立てられたものであり、そのため、組立て、分解が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】汚染領域が地下水位よりも深い領域に到達しており、地下水に流れがない状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態において、地上の建造物を撤去した状態を示す図である。
【図3】第1実施形態において、汚染領域下方の円盤状の底部を固化した状態を示す断面図である。
【図4】第1実施形態において、図3で示す底部の周縁部であって、地下水位よりも下方の側面部を固化した状態を示す断面図である。
【図5】側面部と底部との相対的な位置関係を示す地下水位から見た平面図である。
【図6】第1実施形態における立坑掘削及びライナーリング設置の初期状態を示す工程図。
【図7】第1実施形態における立坑掘削及びライナーリング設置の図6よりも後の状態を示す工程図。
【図8】第1実施形態において、地下水位より上方の領域における立坑掘削及びライナーリング設置が完了した状態を示す工程図。
【図9】第1実施形態において、地下水位より下方の領域に立坑を掘削してライナーリングを設置する状態を示す図である。
【図10】第1実施形態において、汚染領域の立坑掘削及びライナーリング設置が完了した状態を示す工程図である。
【図11】第1実施形態において、出来形検測の際にリフト・アップ力が作用する状態を示す図である。
【図12】図11で示すリフト・アップ力により出来形が破損されない様にする例を示す図である。
【図13】第1実施形態の変形例において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化する直前の状態を示す図である。
【図14】第2実施形態におけるライナーリング除去及び立坑の埋め戻しの初期状態を示す工程図である。
【図15】第2実施形態において、地下水位より下方の領域の埋め戻しを完了した後、地下水位より上方の領域を埋め戻している状態を示す工程図である。
【図16】第2実施形態において、埋め戻しが完了した状態を示す工程図である。
【図17】汚染領域が地下水位よりも深い領域に到達しており、地下水に流れがある状態を示す断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化した状態を示す図である。
【図19】第3実施形態において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化した後、地下水位より上方の領域に立坑を掘削しライナーリングを設置する工程を示す図である。
【図20】第3実施形態において、地下水位より上方の領域における立坑掘削及びライナーリング設置を完了した状態を示す図である。
【図21】第3実施形態において、地下水位より下方の領域に立坑を掘削し、ライナーリングを設置した状態を示す図である。
【図22】第3実施形態において、埋め戻した後に、注入井と吸引井により汚染物質を除去する状態を示す図である。
【図23】第3実施形態の変形例において、地下水位より下方の汚染領域を包囲する様に固化する直前の状態を示す図である。
【図24】本発明の第4実施形態を説明する図である。
【図25】汚染領域が拡散する態様を説明する断面図である。
【図26】図25で示す汚染領域を浄化する技術の概要を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図12に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態を実施する前における土壌汚染の状態を示している。
図1において、工場20において、図示しないタンクの破損等の理由により、汚染物質が漏出し、土壌Gの地下深くまで汚染物質が浸透しており、汚染領域Gpの先端は、地下水位Lwの下方の領域まで延在している。
ここで、図1〜図12の第1実施形態は、地下水の流れが存在せず、汚染領域Gpの汚染物質が水平方向には拡散していない場合に対処するものである。
【0030】
上述したように、汚染物質は重力の作用により土壌粒子間を下方に移動するので、土壌汚染領域Gpは、図1における左右方向にはさほど広がることはなく、図1における下方に浸透する。そのため、汚染領域Gpは地中深い領域まで到達してしまう。
図1において、土壌Gはハッチングを付して示されており、ハッチングが付されていない白抜き部分が汚染物質により汚染された領域Gpである。また図1において、符号Lwは地下水位を示しており、符号30fは地表を示し、符号Epは第1実施形態を施工するべき領域を示しており、符号Ewpは地下水位Lwよりも下方の施工領域を示す。
【0031】
第1実施形態の施工に当たっては、図2で示すように、工場20が撤去された状態で行われる。しかし、工場20における全ての建造物を撤去しなければならない訳ではない。汚染領域Gp直上に存在する建造物を撤去すれば足りる。
具体的には、図3で説明する地下水位Lwよりも下方の領域で且つ汚染領域Gpを包囲する領域Gc(図6:底部Gcb及び側面部Gcs)の固化に必要な機材(図示せず)を、汚染領域Gp直上の位置まで搬入して、設置することが可能な程度に、建造物を撤去すれば良い。
【0032】
次に、図3で示すように、地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gp下方の領域Gcb(底部)を固化する。底部Gcbは例えば円盤状の領域である。ただし、四角形その他の平板形状であっても良い。
図3で示す工程では、図示しない手段、例えば注入手段、或いは噴射手段によって、地下水位Lwから下方の円盤状の底部Gcbに、固化材、例えばグラウト材を供給する。
図3において、地下水位Lw下方の円盤状の底部Gcbを固化するに当たっては、図示しない地盤改良用の機器を汚染領域Gpの直上に設置して、公知技術に係る工法を適用して、地下水位Lwから下方の領域の固化を行う。公知技術に係る工法としては、例えば、いわゆる注入工法や、いわゆるグラウト工法、凍結工法、その他が適用可能である。なお「グラウト工法」とは、固化材(グラウト材)を供給して土壌を切削しつつ、固化材と土壌とを撹拌、混合して地中固結体を造成する工法である。
ここで、グラウト材は固化材の一例として例示されたものであり、その他の固化材、例えば各種薬液、セメントミルク、その他が使用可能である。
【0033】
底部Gcbの固化を行ったならば、図4で示すように、底部Gcb周縁部と地下水位Lwとの間の領域(側面部)Gcsを固化する。側面部Gcsを固化することにより、地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gpは、底部Gcbと側面部Gcsとにより包囲されることになる。なお本明細書において、底部Gcbと側面部Gcsとを包括的に、「固化土壌Gc」或いは「固化領域Gc」と表現する場合がある。
図4において、底部Gcbと側面部Gcsとにより包囲されている領域であって、汚染領域Gp以外の領域は、地下水位Lwよりも下方の領域Gwと同一の状態となっている。
【0034】
側面部Gcsを地下水位Lwから見た状態が図5で示されている。側面部Gcsは、例えば、図5で示すように、底部Gcb周縁部に連続して形成されている複数の円柱状の地中固結体により構成されている。
側面部Gcsを造成するに際しては、例えば、底部Gcb周縁部をオーガで掘削し、底部Gcbまで到達せしめる。そして、地下水位Lwと底部Gcbとの間の領域において、固化材をオーガ先端から注入して、当該固化材と原位置土とをオーガの回転により混練して、円柱状の地中固結体を造成する。底部Gcb周縁部を包囲する様に、当該円柱状の地中固結体を複数本に亘って造成すれば、側面部Gcsが築造される。
【0035】
地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gpを包含する様に固化領域Gcを固化したならば(図4、図5)、地下水位Lwよりも上方の領域であって、汚染領域Gpを包含する領域を掘削する(図6)。
掘削に当たっては、図6及び図7で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域であって汚染領域Gpを包含する範囲を、掘削領域の断面が円形となる様に、地表30fから所定の深さまで立坑40を掘削する。所定の深さまで掘削したならば、掘削された領域にライナーリング2を設置する。
【0036】
図6では、地表30fから数えて2段目のライナーリング2を設置した状態を示しており、図7では地表30fから数えて4段目のライナーリング2を設置した状態を示している。
図6及び図7において、立坑40の掘削には、小型掘削機械1(例えば自走式の小型バックホー)を用いて、地表30fから土壌の鉛直方向下方に向かって掘削する。
掘削された土壌Go(汚染土壌を含む)は、例えばダンプトラック(車両)3により、或いは地上側に設置した図示しないベルトコンベアにより、図示しない汚染土壌処理設備へ運搬され、公知の手法により無害化される。
立坑40の掘削に際しては、小型掘削機械1により、例えばライナーリング2の鉛直方向寸法hrに相当する深さ(ライナーリング2の1段分の深さ)だけ掘削し、掘削された立坑40にライナーリング2を1段分設置する。以下、立坑40の掘削とライナーリング2の設置とを交互に繰り返す。
【0037】
ここで、立坑40を掘削する深さは、ライナーリング2の1段分の深度hrに限定されるものではない。例えば、ライナーリング2の2段分の深度(寸法2hr)だけ立坑40を掘削し、立坑40にライナーリング2を2段設置しても良い。
すなわち、立坑40の掘削に際しては、ライナーリング2のn段分の深度だけ立坑40を掘削し、ステップS2では掘削された立坑40の内壁面を覆うようにライナーリング2をn段設置することが出来る。換言すれば、立坑40の掘削とライナーリング2の設置に際して、上述したライナーリング2の段数nは、1のみならず、掘削された立坑40が崩落してしまう恐れがない限りにおいて、2以上の自然数であっても良い。
【0038】
図8で示す状態では、地下水位Lwよりも上方の領域であって、汚染領域Gpを包含する領域に立坑40が掘削されてライナーリング2が設置されている。
ここで、図8においてライナーリング2が5段設置されているのは、図示の煩雑を避けるために簡略化して表現したものである。実際の施工にあたっては、地下水位Lwに到達するまでのライナーリング2の設置段数は、非常に大きな数値となる。
地下水位Lwまでライナーリング2を設置した段階で、地下水位Lwよりも上方における汚染領域Gpの汚染土壌は掘削されて地上側に搬送されている。そして、図4で説明した通り、地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gpは、固化領域Gcにより包囲された状態である。
【0039】
次に、図9で示す様に、地下水位Lwよりも下方の領域で、且つ、固化領域Gcにより包囲されている領域の土壌を掘削して、地下水位Lwよりも下方の領域を掘削して、立坑40を下方に延長する。そして、削孔された地下水位Lwよりも下方の領域(立坑40を下方に延長した領域)にライナーリング2を設置する。
ここで、固化領域Gcは透水性が低く、固化領域Gc周辺の地下水は固化領域Gcで包囲された領域に浸入することが出来ない。そのため、固化領域Gcで包囲された領域を掘削しても掘削個所から地下水が湧き出すことはない。従って、湧水のため、地下水位Lw以深の領域の掘削が困難になることが防止され、地下水位Lwよりも下方の領域であっても容易に掘削することが出来る。
【0040】
また、固化領域Gcの内壁面Dcoは崩落し難いので、地下水位Lwよりも上方の領域の施工(図6及び図7)の様に、ライナーリング2の1段分を掘削して、ライナーリング2を1段だけ設置することを繰り返す必要は無い。例えば、固化土壌Gcで包囲されている領域における掘削を完了した後に、固化土壌Gcで包囲されている領域の全域に亘ってライナーリング2を設置することが出来る。
もちろん、土圧が高い等の理由により、固化土壌Gcを掘削した領域Dcoが崩落する可能性があれば、固化土壌Gcをライナーリング2の1段分(或いは2段以上)の深さだけ掘削し、ライナーリング2を1段(或いは2段以上)ずつ設置しても良い。ライナーリング2を1段(或いは2段以上)ずつ設置する場合には、ライナーリング2で囲われた領域を掘削する。
図9において、固化土壌Gcで包囲された領域にライナーリング2を設置している状態を示す。
【0041】
固化土壌Gcを掘削した汚染土壌と固化材との混合物は、図6、図7の工程と同様に地上側30に搬出され、図示しない汚染処理設備で汚染物質と分離されて無害化される。
図9で示す工程において、地下水位Lw位深の汚染領域Gpにおける汚染土壌を掘削して地上側30に搬出することにより、地下水位Lw位深の領域から汚染物質が取り除かれる。
【0042】
図10は、地下水位Lwよりも下方の土壌が掘削されて、ライナーリング2が設置された状態が示されている。図10の状態では、固化領域Gcの内側にライナーリング2が設置されている。
この段階で、固化領域Gcの内側の空間(出来形)の確認、検査(出来形検測)が必要となる場合が存在する。その様な場合には、固化領域Gc中のライナーリング2を設置した領域の半径方向内側の空間(出来形)において、VOCの様な汚染物質を計測し、当該汚染物質が除去されたことを確認すれば良い。
【0043】
図10において、出来形の底部には、湧水等が溜まった水を排出するために揚水ポンプ11が設置されている。
施工領域1近傍の地表30fには、揚水ポンプ11で揚水された地下水を貯蔵し、必要な場合には処理を行なう水処理装置10が設置されており、この水処理装置10と揚水ポンプ11とは揚水管12によって接続されている。
【0044】
ここで、地下水位Lw位深の汚染領域Gpにおける汚染土壌を掘削して地上側30に搬出した状態では、図11で示すように、底部Gcbには上方向への力(いわゆる「リフト・アップ力」:複数の矢印Fuで示す)が作用する。このリフト・アップ力Fuは、底部Gcbが地下水位Lwよりも下方に位置するほど大きくなり、場合によっては、固化領域Gcの底部Gcbを破損し、或いは、亀裂を生じさせる恐れがある。そして底部Gcbが破損してしまうと、出来形検測に支障をきたす可能性も有る。
【0045】
リフト・アップ力Fuにより底部Gcbが破損することを防止するためには、図12で示すように、底部Gcbの一部(例えば中央部)に貫通孔Hbを形成してやれば良い。その様な貫通孔Hbを形成すれば、地下水圧が貫通孔Hbから抜けるので、リフト・アップ力も図12の矢印Fsmで示すように小さくなる。
発明者の経験では、貫通孔Hbから固化領域Gcの内側の空間(出来形)内に流入する地下水量(湧水量)は少なく、出来形検測に悪影響は与えない。しかし、貫通孔Hbからの湧水量が多い場合には、図12で示すように、貫通孔Hb内にポンプ11を配置して、湧水を地上側に汲み出せば良い。
【0046】
第1実施形態において、明確には図示されていないが、計測その他の作業を終了したならば、最深位置に配置されたライナーリング2を除去する。ライナーリング2は円弧状のライナーピースを複数個連結して構成されているので、ライナーピースの連結を解除する事により、最深位置(最下方)のライナーリング2を除去する事が出来る。
ライナーリング2を除去した後、掘削孔が崩落するのを防止するため、ライナーリング2を除去した領域を良質土で埋め戻す。埋め戻し材である良質土は、図7〜図9の工程で掘削された汚染土壌を図示しない汚染土壌処理設備で無害化したものを、原位置へ埋め戻せば良い。或いは、施工領域以外から供給される清浄な土壌であって、施工領域に対して環境的な影響を及ぼさないような土壌を用いても良い。
【0047】
ライナーリング2の除去及び立坑40の埋め戻しに際して、ライナーリング2は、例えば、1段ずつ除去される。しかし、ライナーリング2を除去した後、良質土で埋め戻すまでの間に、立坑40が崩落しないのであれば、一度に2段以上のライナーリング2を除去することも可能である。
最上段(地表側)までライナーリング2を撤去したならば、換言すれば地表までライナーリング2を撤去したならば、施工を終了する。
【0048】
図1〜図12で示す第1実施形態によれば、地下水位Lwよりも上方における汚染領域Gpでは、ライナーリング2で包囲された領域(汚染土壌の領域)を掘削し、掘削された汚染土壌を地上側に送り出して処理することにより、汚染物質を汚染土壌と共に地中から除去して、施工領域を浄化することができる。
一方、地下水位Lwよりも下方における汚染領域Gpは、その周辺を固化領域Gcで包囲し、固化領域Gcで包囲された内側の領域を掘削し、掘削された汚染土壌を地上側に送り出して処理することにより、汚染物質を汚染土壌と共に地中から除去して、施工領域を浄化している。
【0049】
ここで、地下水位Lwより深い領域は、湧水のため、掘削が困難である。
これに対して、第1実施形態によれば、地下水位Lwよりも下方における汚染領域Gpを固化領域Gcで包囲しており、固化領域Gcは透水性が低いので、周辺における地下水は固化領域Gcで包囲された領域の内側には浸入することが出来ない。そのため、地下水位Lwよりも深い領域を掘削する際における湧水を抑制することが出来る。
ここで、固化材を供給することによる土壌固化技術は、その他の技術、例えば遮水壁等を築造して湧水を防止する工法等に比較して、コストの削減及び工期の短縮の点で有利である。
【0050】
ここで、固化材を適宜選定することにより、掘削が妨げられない程度に湧水が抑制され、且つ、汚染物質を除去した領域における出来形検測に必要な期間だけ湧水が抑制されると共に、環境に対する影響を少なくする事が可能である。
係る見地に従えば、固化材としてグラウト材を使用する場合には、その透水係数kの範囲は、例えば、 1×10−5cm/s〜1×10−6cm/s とするのが好ましい。
【0051】
第1実施形態において、図6〜図8で示す工程では、小型掘削機械、例えばバックホーによって汚染領域Gpを掘削している。しかし、図示はされていないが、作業員の手作業による掘削、人力による掘削であっても良い。
図1〜図12の第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、ライナーリング2で包囲された領域のみを掘削するように構成されており、掘削するべき範囲Epが限定されているので、重機を用いることなく、簡単な機械或いは作業員のみで、深い領域まで掘削することが出来る。
大型重機を必要とせず、ライナーリング2で包囲された狭い領域のみで実施されるので、図1〜図12の第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、掘削土量を最小化して、施工領域も最小化することが出来る。そのため、例えば稼働中の施設等において、施工領域が狭い条件下での汚染土壌浄化が可能となる。
【0052】
第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、ライナーリング2を積層して設置しながら鉛直下方に堀進めるため、積層されたライナーリング2が剛性の高い山留壁として作用して、深い領域まで掘削しても、掘削された立坑40が崩落してしまうことはない。そのため、法面を設けないで掘削することが可能となる。そのため、掘削土量を最小化でき、汚染範囲に対して効率的な施工が可能となる。
【0053】
さらに、第1実施形態で用いられるライナーリング2は、複数の円弧状のライナーピースを連結して組み立てている。そのため、ライナーリング2の組立て、分解は、公知の技術により容易に行なうことが出来る。
【0054】
ここで、図1〜図12の第1実施形態では、地下水位Lw以深の汚染領域Gpを包囲するように底部Gcb、側面部Gcsを固化した後に、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置しているが、図13で示す第1実施形態の変形例では、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置した後に、地下水位Lw以深の汚染領域Gpを包囲するように底部Gcb、側面部Gcsを固化する。
図13は、地下水位Lwよりも上方の領域(地下水位Lw上方の汚染領域を包含している)に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置した状態を示している。そして、図13の状態では、地下水位Lwよりも下方の領域には、汚染領域Gpが残存している。
【0055】
図13の状態から、図3、図4で示すように、地下水位Lwより下方の汚染領域Gpを包囲する様に底部Gcb及び側面部Gcsを固化し、図9で示すように、固化領域Gcで包囲された地下水位Lwより下方の領域に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置して、図10で示す状態にせしめる。
図13の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図12の第1実施形態と同様である。
【0056】
次に、図14〜図16を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図1〜図13の第1実施形態では、地下水位Lwよりも上方の領域も、下方の領域も、全て埋め戻し材(例えば、良質土)で埋め戻しているが、図14〜図16の第2実施形態では、埋め戻しの態様が異なっている。
換言すれば、図14〜図16の第2実施形態は、埋め戻しについて、図1〜図13の第1実施形態とは異なっている。
【0057】
上述したように、固化材供給により固化された土壌は透水性が低いので、地下水が透過して掘削の際に湧水が生じるのを防止することが出来る。その反面、固化された土壌が地下水の透過を妨げるので、地下水に流れが存在し、地下水に連行されて汚染物質が拡散しており、土壌が固化された領域のみならず周辺土壌も汚染されている場合に、固化土壌Gcの内側に掘削された立坑40を利用して、立坑40周辺の土壌における汚染を浄化することは困難である。
これに対して、図14〜図16の第2実施形態では、固化材を供給して固化された土壌(固化領域)Gc、すなわちライナーリング2よりも半径方向外方の円環状の固化された領域に、複数の貫通孔5を穿孔している。
【0058】
グラウト材で固化された円環状領域(固化領域Gc:ライナーリング2よりも半径方向外方の円環状の固化された領域)に複数の貫通孔5を穿孔するに際して、図示しない削岩機その他の穿孔用機械で貫通孔5を穿孔する。穿孔に際して、穿孔用機械の反力は、除去する以前のライナーリング2で得るのが好ましい。
具体的には、図示しない穿孔用機械の末尾部分に図示しないロッドを接続し、当該ロッドの他端部をライナーリング2の内周面に当接すれば、穿孔用機械の反力をライナーリング2により支持することが可能となる。
【0059】
第2実施形態における施工の手順としては、概略次の様になる。
先ず、固化領域Gcで包囲された領域の土壌が掘削され、図10で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域及び下方の領域の全域にライナーリング2が設置されるまでは、図1〜図13で示す第1実施形態と同様である。
上述した様に、第2実施形態は、汚染物質が取り除かれ、或いは、汚染物質が存在しないことが確認された後、ライナーリング2を取り外しつつ、掘削領域Dcoを埋め戻す工程が、図1〜図13で示す第1実施形態と相違している。
【0060】
第2実施形態によれば、図14で示すように、最下層のライナーリング2を除去して、垂直方向位置が最下層のライナーリング2と対応する固化領域Gc(ライナーリングよりも半径方向外方の円環状領域)に、上述した要領で、貫通孔5を複数個穿孔する。
そして、コルゲート管(多孔管)を立坑40内の鉛直方向に配置する。また、図示しないコルゲート管の内側に揚水管90を配置し、揚水管90を地上側30の図示しない汚染処理装置に接続する。
【0061】
次に、最初に除去したライナーリング2の直上のライナーリング2を除去する。そして、最初に除去したライナーリング2の垂直方向位置と対応する領域(或いは、固化領域Gcを穿孔した領域)に砕石7(例えば割栗石等)を充填する。砕石7を充填することにより、ライナーリング2を除去した領域が崩落する事が防止されると共に、貫通孔5を介して浸入した地下水(汚染物質を連行している地下水)がコルゲート管及びその内側の揚水管90に到達することを保証している。
以下、地下水位Lwよりも下方の領域では、固化領域Gcの穿孔、コルゲート管の接続、直上のライナーリング除去、砕石充填を繰り返す。
【0062】
図15で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域では、第1実施形態と同様な工程によって、ライナーリングを除去しつつ、良質土によって立坑40を埋め戻す。
図15では、地下水位Lwよりも上方の領域の概略1/2程度が、良質土によって埋め戻された状態を示している。そして、図16では、地下水位Lwよりも上方の領域の全域が、良質土によって埋め戻された状態を示している。
【0063】
図16で示すように、地下水位Lwよりも下方の領域では、立坑40の内側の空間には、例えば砕石(割栗石等)7が充填されている。
地下水の流れにより、土壌が固化された領域Gcの周辺に拡散した汚染された水は、矢印Fで示すように、貫通孔5を介して、砕石7を充填した領域内に浸入する。
浸入した汚染水は図示しないコルゲート管等により集水され、集水された汚染水は、例えばポンプ6と揚水90を介して地上側30に揚水される。そして、地上側で、図示しない処理装置で処理される。
これにより、汚染水に連行された汚染物質が周辺土壌から除去される。
【0064】
換言すれば、地下水位Lwよりも下方の領域において、固化領域Gcを穿孔し、固化領域Gcで包囲された領域内に砕石7を充填することにより、固化領域Gc周辺に拡散した汚染物質を連行した地下水を、砕石を充填した領域に浸入せしめ、例えばコルゲート管により集水して、上述したように地上側へ揚水して、処理している。
その結果、図14〜図16の第2実施形態によれば、固化領域Gc周辺に拡散した汚染物質を、立坑40を利用して除去することができる。
図14〜図16の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図13の第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、図17〜図22を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図17〜図22の第3実施形態は、地下水位Lwよりも下方の領域Gwまで汚染が浸透しており、且つ、地下水に流れがある場合に対処する実施形態である。
【0066】
図17では、施工前の土壌の汚染状態を示している。
図17において、土壌Gはハッチングを付して示されており、ハッチングが付されていない白抜き部分が、例えば工場20から漏出した汚染物質により汚染された領域Gpである。
図17において、工場20において、汚染物質が漏出した箇所が符号Esで示されている。また、符号Lwは地下水位を示し、符号Ewpは地下水位Lwよりも下方の施工領域であって、汚染物質漏出箇所Es直下の領域を示している。
図17において、地下水位Lwよりも深い領域Gwでは、汚染領域Gpは地下水の流れFwによって、図17の左側から右側へと流れている。
【0067】
第3実施形態の施工は、工場20が撤去された状態で行われる。しかし、工場20における全ての建造物を撤去しなければならない訳ではない。汚染領域Gp直上に存在する建造物を撤去すれば足りる。
具体的には、地下水位Lwよりも下方の施工領域Ewpの固化に必要な機材(図示せず)を、当該施工領域Ewp直上の位置まで搬入して、設置することが可能な程度に、建造物を撤去すれば良い。
【0068】
次に、第1実施形態と同様に、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染物質漏出箇所Es直下の汚染領域を包囲するように、固化領域Gcを造成する。固化領域Gcの造成の手法については、図3〜図5を参照して上述したのと同様である。
汚染物質漏出箇所Es直下の汚染領域を包囲するように、固化領域Gcを造成したならば、図19で示す様に、図6〜図8で述べたのと同じ要領で、地下水位Lwよりも浅い領域における汚染領域Gpにおいて、立坑40を掘削してライナーリング2を設置しつつ、汚染された土壌を地上側に移動する。
【0069】
図20で示す状態では、地下水位Lwよりも浅い領域Gにおいて、立坑40の掘削とライナーリング2の設置が完了している。
そして、図9、図10を参照して説明したのと同じ要領で、固化領域Gcで包囲された領域内に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置する。図21は、固化領域Gcで包囲された領域内で、立坑40の掘削と、ライナーリング2の設置を完了した状態が示されている。
図21の状態では、固化領域Gcで包囲された領域内の汚染土壌は、地上側30へ搬出、除去されている。
【0070】
ここで、図21を参照すれば明らかな様に、汚染領域Gpは、固化領域Gcよりも外部にまで拡散している。そして、ライナーリング2で包囲された図21の状態では、立坑40を利用して、固化領域Gc外部に拡散した汚染物質を除去することが出来ない。
そのため、第3実施形態では、図14〜図16の第2実施形態と同様に、立坑40を活用して、固化土壌Gc周辺に拡散した汚染物質を除去する。
【0071】
立坑40とその周辺土壌との間における透水性を確保するため、図21の状態から、図14〜図16で説明したのと同様な態様で、貫通孔5を形成しつつライナーリング2を除去する。
すなわち、ライナーリング2を除去(撤去)するに際して、ライナーリング2よりも外方に存在する固化された領域に複数の貫通孔5を穿孔して、立坑40への地下水の流入を確保する。そして、地下水位Lwよりも下方の領域では、図22で示す様に、立坑40の底部に揚水用ポンプ6を設置し、ライナーリング2を除去された領域に砕石(割栗石)7を充填する。図示はされていないが、砕石7を充填する際に、ポンプ6を設置した部分までコルゲート管を配置して、ポンプ6までの集水性を向上させることが望ましい。
【0072】
そして、地下水位Lwよりも上方の領域では、第2実施形態と同様に(図15、図16参照)、良質土によって立坑40を充填する。
ここで、固化領域Gcの造成に際して、固化材を使用せず、いわゆる凍結工法を利用した場合には、凍結された領域(固化領域Gc)は一定の時間が経過すると解凍して、地下水が流れる程度の透水性を持つ。そのため、凍結工法を利用した場合には、ライナーリング2を撤去すれば、立坑40への地下水の流入のために凍結された領域Gfを穿孔する必要はない。
【0073】
図22において、周辺の地下水が汚染物質を連行して、固化領域Gcの貫通孔5を介して(凍結工法を用いた場合には、固化領域Gcは存在しない)、砕石7が充填された領域(ライナーリング2撤去後の領域)に流入する。流入した地下水(汚染水)は、ポンプ6及び揚水管9を介して地上側に設置した浄化装置10に送られる。浄化装置10において汚染物質を連行した地下水を処理することにより、ライナーリング2の投影領域よりも外方の領域に拡散している汚染物質が、周辺土壌から除去されるのである。
【0074】
ここで第3実施形態では、立坑40の外側(ライナーリング2の投影領域よりも外方の領域)に拡散している汚染物質を除去するために、揚水管9が吸引井として作用し、次に述べる注入井8と共に汚染物質を連行した地下水を地上側へ揚水している。
吸引井である揚水管9に向かう地下水の流れを作るために、図22においては、注水井8を削孔している。
図22において、注水井8は、立坑40よりも外側の領域であって、汚染が拡散している領域、換言すれば地下水の流れについて立坑40の下流側に、少なくとも1箇所以上削孔されている。
【0075】
前記吸引用のポンプ6は、揚水管9、吸引ラインLoを介して、地上側30の浄化装置10に接続されている。その浄化装置10は、注入ラインLiを経由して前記注入井8と接続されている。
図22において、注水井8から注水して、揚水管(吸引井)9で吸引或いは揚水することにより、汚染された地下水が立坑40或いは揚水管(吸引井)9に向かう流れ(矢印fs)が形成される。
これにより、立坑40(或いは、ライナーリング2が撤去された後の領域)よりも外側の領域に拡散している汚染物質は、地下水及び/又は注入井8から供給された水に連行されて立坑40内に浸入し、揚水ポンプ6及び揚水管9により地上側へ搬送されて処理され、以って、土壌から除去されるのである。
なお、図22では、注入井8から注水される水は、浄化装置10で浄化処理された水を利用しているが、図示しない水源から供給しても良い。また、注入井8から注入される液体は、水のみならず、汚染物質除去用の浄化剤であっても良い。
【0076】
上述したように、第3実施形態では、立坑40に配置された揚水管9を吸引井として構成し、周辺に拡散した汚染物質を連行した地下水を吸引して地上側30へ揚水することが可能である。その結果、立坑40を利用して、その周辺に拡散した汚染物質を除去する事が出来る。
すなわち、第3実施形態によれば、地下水位Lwよりも下方の領域Gwまで汚染が浸透しており、且つ、地下水に流れがあるため、汚染物質が漏出した箇所Es直下から外れた領域まで汚染物質が拡散している場合であっても、当該拡散した汚染物質は立坑40を利用して除去される。
【0077】
図示はされていないが、図17〜図23の第3実施形態において、汚染物質が漏出した箇所Es直下の領域であって且つ地下水位Lwよりも下方の領域Ewp(図17参照)の、外殻部分(底部及び外周部分)を、いわゆる注入工法や、いわゆるグラウト工法、凍結工法、その他により、領域Ewpに固化材を供給して固化することに代えて、いわゆる凍結工法により凍結することが可能である。
第3実施形態において、凍結工法を用いた場合には、汚染領域Gpを除去した後、固結した領域は自然解凍して、元の状態の土壌に復帰する。したがって環境に対する圧力が極めて小さい。そして、凍結した状態が解凍した後は、元の土壌として透水性を回復するので、周辺の汚染物質を連行した地下水を立坑40で吸引して、地上側30へ揚水できる。
また、凍結する事により土壌を固化して固化領域Gcを構成するので、地下水位Lwよりも深度が深い領域であっても、周辺の地下水は固化領域Gcで包囲された領域内部には浸入せず、そのため掘削の際の湧水が防止される。
【0078】
図17〜図22の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図16の各実施形態と同様である。
【0079】
ここで、図17〜図22の第3実施形態では、地下水位Lwよりも下方で且つ汚染物質漏出箇所Es直下の領域を包囲するように固化領域Gcを造成した後、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置しているが、図23で示す第3実施形態の変形例では、地下水位Lw位浅の領域において立坑40を削孔してライナーリング2を設置した後に、地下水位Lw以深で固化領域Gcを造成している。
図23は、地下水位Lwよりも上方の領域(地下水位Lw上方の汚染領域を包含している)に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置した状態であって、地下水位より下方で固化領域Gcを造成する直前の状態を示している。図23の状態では、地下水位Lwよりも下方には、未だに汚染物質が残存している。
【0080】
図23の状態から、図3〜図5を参照して上述した態様で、地下水位Lwよりも下方で且つ汚染物質漏出箇所Es直下の領域を包囲するように、固化領域Gcを造成し、固化領域Gcで包囲された領域に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置すれば、図21で示す状態となる。そして、立坑40の底部に揚水用ポンプ6を設置し、ライナーリング2を除去された領域に砕石(割栗石)7を充填し、コルゲート管を配置して、図22で示す状態にする。
図23の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、図17〜図22の第3実施形態と同様である。
【0081】
立坑40(或いは、ライナーリング2の投影領域)よりも外方の領域に拡散している汚染物質を除去する手法として、微生物を利用する方法(いわゆる「バイオレメディエーション」)が存在する。
図24の第5実施形態は、バイオレメディエーションにより、立坑40周辺に拡散した汚染物質を除去している。
以下、図24を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
【0082】
図24の第4実施形態では、地下水位Lwよりも下方の領域に立坑40を掘削し、その内壁面にライナーリング2を設置するまでは、第3実施形態において図17〜図21を参照して説明したのと同様の処理を行なう。
ここで、第3実施形態では、立坑40は吸入井として用いられているが、図24の第4実施形態では、立坑40を注入井として利用する。
図24で示すように、第4実施形態では、ライナーリング除去後の領域に砕石7を充填し、同時に地表30fから当該領域まで垂直にチューブ8を埋設する。チューブ8の下端は砕石7まで延在しており、注入手段80が接続されており、以って、立坑40は注入井を構成する。
【0083】
図24において、汚染物質が拡散している領域の縁部近傍には、吸引井9が削孔されている。ここで、吸引井9は揚水管により構成されている。
地上側30には、インラインミキサ11と、酸素供給装置12と、栄養塩供給装置13とが設けられている。インラインミキサ11は、吸引ラインLiを介して吸引井9と接続している。またインラインミキサ11は、注入ラインLoを介して、チューブ8と接続している。
酸素供給装置12は、酸素供給ラインLaによってインラインミキサ11に接続している。栄養塩供給装置13は、栄養塩供給ラインLvによって吸引ラインLiと接続している。
【0084】
図24の第4実施形態では、吸引(揚水)した地下水に栄養塩を供給し、ラインミキサ11内で撹拌して酸素を供給する。そして、地下水と栄養塩と酸素との混合流体を、チューブ8を介して地下水を含む地層Gwに注入している。
地下水を含む地層Gwに注入された混合流体は、栄養塩と酸素を包含しているため、土中の好気性微生物を活性化する。好気性微生物が活性化するため、汚染物質は生物学的に分解されて無害化する。すなわち、立坑40(或いは、ライナーリング2が撤去された領域)よりも外側の領域であって、汚染Gpが拡散している領域に存在する汚染物質は、活性化した好気性微生物により生物学的に分解され、無害化するのである。
【0085】
土中の好気性微生物により汚染物質が分解された後の地下水は、矢印ftで示す様に流れ、吸引井9(揚水管)により地上側30へ揚水される。
地上側30へ揚水された地下水には、汚染物質を生物学的に分解する好気性微生物が大量に存在している。係る地下水に、上述した態様で栄養塩、酸素を添加されて、好気性微生物が活性化した状態で、チューブ9を経由して、再度、地中に注入され、汚染物質を生物学的に分解して、無害化するのである。
【0086】
ここで、揚水された地下水を、地上設備(図24では図示せず)で処理しても良い。
また、図24では示されていないが、注入井40と揚水井9との間に観測井を設け、地下水の汚染の度合い、或いは生物学的分解の進行程度をチェックする様に構成することも可能である。
さらに、図24の第4実施形態では、地中に注入するのは酸素と栄養素のみであるが、汚染物質に対する嗜好性の高い微生物を投入する事も可能である。
図24の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図23の各実施形態と同様である。
【0087】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態では、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を包囲する固化領域Gcは、固化材を供給することにより造成される場合について述べている。しかし、上述した様に、いわゆる凍結工法により、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を包囲する部分を凍結して、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を掘削する際における湧水を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1・・・小型掘削機械
2・・・ライナーリング
3・・・搬送機械/小型ダンプトラック
5・・・貫通孔
6・・・ポンプ
7・・・栗石
8・・・注入井
9・・・吸引井
10・・・汚染水処理装置
11・・・インラインミキサ
12・・・酸素供給装置
13・・・栄養塩供給装置
30・・・地上側
40・・・立坑
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に固化した領域を造成する工程と、固化した領域を造成した後に、地下水位よりも上方の土壌汚染領域を包含する領域に立坑を所定の深さ寸法だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑に金属枠を設置する金属枠設置工程を有し、固化した領域で包囲された領域全域を掘削して金属枠を設置するまで、前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返すことを特徴とする汚染土壌浄化工法。
【請求項2】
地下水位よりも上方の土壌汚染領域を包含する領域に立坑を所定の深さ寸法だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑に金属枠を設置する金属枠設置工程を有し、地下水位に到達するまで前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返し、地下水位よりも上方の領域全域に立坑を掘削して金属枠を設置した後、地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に固化した領域を造成する工程と、固化した領域を造成した後に、固化した領域で包囲された領域全域を掘削して金属枠を設置するまで、地下水位より下方の領域で且つ固化した領域で包囲された領域を掘削する工程及び掘削された領域に金属枠を設置する工程を繰り返すことを特徴とする汚染土壌浄化工法。
【請求項3】
地下水位より下方の領域で且つ固化した領域で包囲された領域を掘削した後、金属枠を除去する金属枠除去工程と、固化した領域に複数の貫通孔を穿孔する穿孔工程と、固化した領域よりも内方に揚水手段を設置する工程とを有する請求項1、2の何れかの汚染土壌浄化工法。
【請求項4】
地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に固化した領域を造成する工程において、地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に、当該土壌汚染領域(Ewp)の下方の領域(底部Gcbに相当する領域)及び側方の領域(側面部Gcsに相当する領域)の土壌を凍結する凍結工程を行なう請求項1〜3の何れか1項の汚染土壌浄化工法。
【請求項5】
金属枠で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する注入井を掘削する工程と、金属枠よりも内方側に揚水手段を設置し以って前記立坑を吸引井とせしめる工程と、注入井から注水し且つ吸引井から揚水する工程とを有している請求項1〜4の何れか1項の汚染土壌浄化工法。
【請求項6】
金属枠で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する吸引井を掘削する工程と、金属枠よりも半径方向内方側に注入手段を設けて以って前記立坑を注入井とせしめる工程と、注入井から好気性微生物を活性化するための材料を注入すると共に注水して、吸引井から揚水する工程を有している請求項1〜4の何れか1項の汚染土壌浄化工法。
【請求項1】
地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に固化した領域を造成する工程と、固化した領域を造成した後に、地下水位よりも上方の土壌汚染領域を包含する領域に立坑を所定の深さ寸法だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑に金属枠を設置する金属枠設置工程を有し、固化した領域で包囲された領域全域を掘削して金属枠を設置するまで、前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返すことを特徴とする汚染土壌浄化工法。
【請求項2】
地下水位よりも上方の土壌汚染領域を包含する領域に立坑を所定の深さ寸法だけ掘削する掘削工程と、掘削された立坑に金属枠を設置する金属枠設置工程を有し、地下水位に到達するまで前記掘削工程及び金属枠設置工程を繰り返し、地下水位よりも上方の領域全域に立坑を掘削して金属枠を設置した後、地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に固化した領域を造成する工程と、固化した領域を造成した後に、固化した領域で包囲された領域全域を掘削して金属枠を設置するまで、地下水位より下方の領域で且つ固化した領域で包囲された領域を掘削する工程及び掘削された領域に金属枠を設置する工程を繰り返すことを特徴とする汚染土壌浄化工法。
【請求項3】
地下水位より下方の領域で且つ固化した領域で包囲された領域を掘削した後、金属枠を除去する金属枠除去工程と、固化した領域に複数の貫通孔を穿孔する穿孔工程と、固化した領域よりも内方に揚水手段を設置する工程とを有する請求項1、2の何れかの汚染土壌浄化工法。
【請求項4】
地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に固化した領域を造成する工程において、地下水位よりも下方の土壌汚染領域を包囲する様に、当該土壌汚染領域(Ewp)の下方の領域(底部Gcbに相当する領域)及び側方の領域(側面部Gcsに相当する領域)の土壌を凍結する凍結工程を行なう請求項1〜3の何れか1項の汚染土壌浄化工法。
【請求項5】
金属枠で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する注入井を掘削する工程と、金属枠よりも内方側に揚水手段を設置し以って前記立坑を吸引井とせしめる工程と、注入井から注水し且つ吸引井から揚水する工程とを有している請求項1〜4の何れか1項の汚染土壌浄化工法。
【請求項6】
金属枠で包囲された領域よりも外方の汚染領域に到達する吸引井を掘削する工程と、金属枠よりも半径方向内方側に注入手段を設けて以って前記立坑を注入井とせしめる工程と、注入井から好気性微生物を活性化するための材料を注入すると共に注水して、吸引井から揚水する工程を有している請求項1〜4の何れか1項の汚染土壌浄化工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−5383(P2011−5383A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149436(P2009−149436)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]