説明

汚染土壌浄化装置および土壌浄化方法

【課題】 生石灰等の添加を要することなく、汚染土壌から揮発性有機化合物(VOC)を短時間かつ簡単に除去できる装置や方法を提供する。
【解決手段】 この装置は、VOCにより汚染された土壌と過熱蒸気とを受け入れる中空の容器13と、容器13の外壁に配設され、容器13内に受け入れた土壌を加熱するための電気ヒータ14と、土壌を容器13の受入口から排出口まで搬送しつつ撹拌するためのスクリュー15とを備えるガス化装置10を含む。ガス化装置10は、容器13内を過熱蒸気雰囲気とし、電気ヒータ14が過熱蒸気へ熱を与え、スクリュー15による撹拌により過熱蒸気を土壌に浸透させて熱を与えることにより、土壌を80℃〜200℃の温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物により汚染された土壌を浄化するために用いられる汚染土壌浄化装置および土壌浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ホルムアルデヒド、トルエン、ベンゼン、キシレンといった常温で揮発しやすい有機化合物は、揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれ、油脂類の溶解能力が高く、分解しにくく安定しており、燃焼しにくい性質を有することから、電気工場や半導体工場でIC基板や電子部品の洗浄に使用する洗浄剤、金属部品の前処理洗浄、塗料や接着剤の溶剤、その他にドライクリーニングや農薬等に使用されてきた。
【0003】
当時、VOCを規制する法律がなかったことから、土壌にそのまま廃棄され、土壌を汚染し、また、土壌中を流れる地下水をも汚染している。また、近年の再開発等に伴って土壌が掘り返され、VOCが大気中に放出されることにより、光化学反応によりオキシダントや浮遊粒子状物質(SPM)が発生し、大気も汚染している。VOCは、頭痛やめまい、腎傷害等の有害性や発ガン性の可能性があることから、人体への影響も指摘されている。
【0004】
これらのことに鑑み、VOCで汚染された土壌や地下水からVOCを除去するための装置や方法が、これまでに数多く提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
特許文献1では、揮発性有機化合物を含む汚染土壌を加熱用ロータリーキルンにて加熱して揮発性有機化合物を揮発分離または分解させるともに、ロータリーキルンから導出する排ガス中のダストを慣性集塵機やバグフィルタにて捕捉し、捕捉したダストには高濃度の揮発性有機化合物が含まれているため、このダストをダスト加熱装置に供給して加熱し、揮発性有機化合物を揮発分離または分解して浄化処理している。
【0006】
また、特許文献2〜4では、汚染土壌からPCB類、ダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物を効率よく抽出し、水蒸気を用いることにより有機ハロゲン化合物をハロゲン化水素と二酸化炭素に安定的に分解し無害化している。これら特許文献2〜4に記載の装置および方法では、汚染土壌を間接的に加熱し、その汚染土壌に含まれる有機ハロゲン化合物を揮発させ、間接的に加熱された系内で水蒸気と反応させ、ハロゲン化水素と二酸化炭素に分解する。このとき、水蒸気量を生成するガス中の一酸化炭素濃度により制御しながら間接的に加熱し、土壌中に含まれる有機ハロゲン化合物を確実に分解処理している。
【0007】
また、汚染土壌に生石灰等を添加混合して、その水和熱によりVOCを揮発除去する浄化方法が広く利用されている。例えば、特許文献5では、揮発性有機化合物等で汚染された土壌を、水と発熱反応する無機化合物と十分に細粒化しながら均一に混合し、その後、その混合物の表面だけでなく内部にまで空気を接触させて浄化している。この特許文献5に記載の装置および方法では、混合物の一部を、空気接触処理部の円筒部の回転に伴い、突出部を介して所定量持ち上げた後、落下させることにより、単に撹拌するだけとは異なり、より一層効果的に内部にまで空気を接触させることができ、これにより、汚染土壌の浄化効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−219444号公報
【特許文献2】特開2004−057911号公報
【特許文献3】特開2004−298800号公報
【特許文献4】特開2006−035218号公報
【特許文献5】特開2008−055410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載の技術では、揮発性有機化合物の沸点以上に加熱して土壌にしみ込んでいる揮発性有機化合物を揮発分離または分解させて土壌の浄化処理を行うが、バーナーの燃焼により炉内を750℃とし、炉内の高温ガスと接触してガス中の揮発性有機化合物を完全に燃焼させるため、多くの燃料が必要で、さらに、ロータリーキルンの排ガスに同伴して飛散するダスト中に高濃度の揮発性有機化合物が含まれることから、このダストを揮発性有機化合物の沸点以上に加熱して、揮発分離または分解させるため、別途電気ヒータを用いて加熱する必要があり、電力供給も必要となる。また、バーナーによって高温で燃焼させるため、短時間で処理することができるが、例えば80℃〜200℃といった低い温度で処理しようとすると、汚染土壌の内部にまで熱を伝え、その内部に存在するVOCを十分に揮発させるために、相当の時間を要するという問題があった。
【0010】
上記特許文献2〜4に記載の装置および方法では、まず、200〜600℃といった温度で、間接加熱を行って有機ハロゲン化合物を揮発させ、次に、600〜1300℃といった高温で、揮発した有機ハロゲン化合物を水蒸気と反応させ、揮発性有機化合物を分解するが、間接加熱のみでは土壌の内部にまで熱が伝わらず、VOCを揮発させて除去するには、相当の時間を要し、また、分解のために、別途反応器を要し、その反応器においてさらに加熱しなければならず、エネルギーが多大に必要になるという問題があった。
【0011】
上記の生石灰等を添加して、その水和熱によりVOCを揮発除去する方法では、汚染土壌に生石灰等を添加混合した後、養生時間が少なくとも12時間以上必要であり、また、広い敷地(処理ヤード)も必要となる。また、生石灰の混合時に粉塵とVOCガスが発生するため、仮設テントおよび大規模な換気設備が必要となる。さらに、処理において、粉塵とVOCガスが発生するため、作業員には防塵、防毒マスク等の保護具が必須で、作業環境が良くない。また、生石灰等を大量に使用するため、保管時、生石灰が降雨等の水に濡れると、発熱による火災発生の危険も生じる。
【0012】
生石灰等の添加量は、汚染土壌の性状により左右されることから、汚染土壌の含水量や土質により生石灰等の添加量が大きく異なる。このため、計画段階において、事前に添加混合量の確認試験を行う必要があった。計画時に事前確認試験を実施することができない場合は、安全性を加味した添加量にするといったリスクを考慮する計画とせざるを得なかった。
【0013】
上記の特許文献5に記載の技術では、作業者が劣悪な環境の下で作業等を行う必要がなく、汚染された土壌と無機化合物とを混合した後、小粒状化して無機化合物と均一に混合するとともに、その混合物の内部にまで空気を触れさせることにより、VOCの揮発を促進させ、VOCを効果的に揮発させ回収することができる。しかしながら、無機化合物の混合が必要で、所定の含水量に応じて添加量が大きく異なることから、事前に添加量の確認試験を行う必要がある。事前の確認試験を行う結果、処理に相当の時間を要するという問題があった。
【0014】
また、近年長大化するシールド工事等においては、圧送するVOC汚染土壌に流動化剤等の性状改良剤(ポリマー剤)を混入させることにより、長距離圧送を可能としてきたが、その改良剤を混入したVOC汚染土壌では、80℃程度の加熱によりVOCを効果的に揮発させ、分離することは困難であった。
【0015】
そこで、多大な燃料やエネルギーの消費を必要とせず、また、生石灰や無機化合物等の添加も要することなく、VOCで汚染された土壌中からVOCを十分に除去することができ、そのVOC除去処理を簡単かつ短時間で、かつ比較的低温で行うことができる装置や方法の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、VOCで汚染された土壌を受け入れる中空の容器と、その容器の外壁に配設され、容器内の土壌を間接加熱するための電気ヒータと、土壌を容器の受入口から排出口まで移動させるスクリューとを備えるガス化装置を用い、このガス化装置内へ過熱蒸気を吹き込み、スクリューにより撹拌しつつ、電気ヒータによる間接加熱と過熱蒸気による直接加熱により、短時間の加熱で土壌の内部にまで十分に熱を伝えて土壌全体を80℃以上、例えば80℃〜200℃に加熱し、土壌に含まれるVOCを十分に揮発させ、土壌から除去することができることを見出した。
【0017】
また、中空の容器内へ過熱蒸気を吹き込み、過熱蒸気雰囲気とすることで、容器内を無酸素状態、すなわち還元雰囲気にすることができ、この還元雰囲気の下、VOCを蒸気や二酸化炭素等の無害な低分子へ分解することができることも見出した。
【0018】
本発明は、これらのことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、本発明の汚染土壌浄化装置および土壌浄化方法を提供することにより解決することができる。
【0019】
本発明の汚染土壌浄化装置は、揮発性有機化合物(VOC)により汚染された土壌を浄化する装置であって、上述したガス化装置を含む。このガス化装置は、VOCにより汚染された土壌と過熱蒸気とを受け入れる中空の容器と、その容器の外壁に配設され、その容器内に受け入れた土壌を加熱するための間接加熱手段と、その土壌を上記容器の受入口から排出口まで搬送しつつ撹拌するための搬送撹拌手段とを備える。ガス化装置は、中空の容器内を過熱蒸気雰囲気とし、間接加熱手段が過熱蒸気へ熱を与え、搬送撹拌手段による撹拌により過熱蒸気を土壌に浸透させて熱を与えることにより、土壌を80℃〜200℃の温度に加熱することを特徴とする。
【0020】
容器を間接加熱する熱源は、電気ヒータのほか、重油や灯油を燃焼した燃焼ガスや、燃焼管内で重油や液化ガスを燃焼させ、その熱量を、燃焼管を介して被対象物を加熱するラジアント・チューブ・バーナーを用いることができる。この場合、間接加熱手段は、容器内に配設される。また、土壌を受け入れ、加熱する容器および搬送撹拌手段としては、キルン方式を採用することができる。
【0021】
また、ガス化装置から排出されるVOCを分解して生成された分解ガスをそのまま排出することができないことから、その分解ガスに含まれる不純物を除去するための排ガス処理装置をさらに備えることができる。ガス化装置から排出されるVOCが除去された後の処理土を再利用するために、その処理土を冷却するための冷却装置も備えることができる。
【0022】
この排ガス処理装置は、分解ガスを冷却するとともに、その分解ガスに含まれるガス成分を分離するための冷却分離装置と、ガス成分中に含まれる不純物を吸着除去するための吸着装置と、ガス成分を吸引して、ガス化装置が備える容器内、冷却分離装置内、吸着装置内を負圧に保持し、不純物が除去されたガス成分を大気中へ放出させる送風装置とを含んで構成することができる。
【0023】
上記の冷却分離装置は、冷却水またはアルカリ水溶液といった液体が収容された容器、例えばバブリングタンクとして構成され、この冷却分離装置内に残留する不純物を分離除去するために、不純物を含む液体を受け入れ、液体中に浮遊する不純物を凝集沈殿させる凝集槽を備えることができる。
【0024】
また、土壌浄化装置は、水を貯留する貯水槽と、水を蒸発させる蒸気発生手段と、貯水槽から蒸気発生手段へ給水する給水手段と、発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する蒸気加熱手段とを含む過熱蒸気生成装置をさらに備えることができる。この過熱蒸気を上記の容器へ供給することができる。
【0025】
本発明では、上記の土壌浄化装置のほか、この装置により行われる土壌浄化方法を提供することもできる。この方法は、中空の容器の外壁に配設される間接加熱手段により容器内を加熱するステップと、VOCで汚染された土壌と過熱蒸気とを容器内へ受け入れるステップと、搬送撹拌手段により土壌を容器の受入口から排出口まで搬送しつつ撹拌するステップとを含む。この受け入れるステップにおいて、容器内を過熱蒸気雰囲気とし、撹拌するステップにおいて、間接加熱手段が過熱蒸気へ熱を与え、搬送撹拌手段による撹拌により過熱蒸気を前記土壌に浸透させて熱を与えることにより、土壌を80℃〜200℃の温度に加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の土壌浄化装置および土壌浄化方法を提供することにより、低温かつ短時間で汚染土壌からVOCを揮発させて除去することができ、別途反応器を使用しなくともVOCを分解して処理することができる。また、養生ヤードが不要になるため、処理能力に応じた装置の設置スペースを確保することができれば、狭い場所においても浄化工事を行うことができる。
【0027】
また、排ガス処理装置を備えることで、分解ガスに含まれる塩化水素や一部の炭酸ガス等を溶解させて除去することができ、また、微細な粉塵を吸着装置において吸着除去することができるため、大気汚染を防止することができ、さらには、装置内を負圧に保持することができるため、VOCや粉塵等が大気中へ漏洩することを防止することができる。その結果、大規模な換気設備が不要となり、作業員の作業環境の改善にもつながる。
【0028】
また、特に薬剤を使用することなく処理することができるので、薬剤の保管スペースが不要となり、その保管時の火災等の危険リスクをなくすことができる。さらに、要求される処理能力から装置を計画することができるため、確実な浄化計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の土壌浄化装置の1つの構成例を示した図。
【図2】本発明の土壌浄化装置の別の構成例を示した図。
【図3】過熱蒸気生成装置の構成例を示した図。
【図4】本発明の土壌浄化装置のさらに別の構成例を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の土壌浄化装置の1つの構成例を示した図である。この実施形態では、土壌浄化装置は、ガス化装置から構成されている。
【0031】
ガス化装置10は、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ホルムアルデヒド、トルエン、ベンゼン、キシレンといった常温で揮発しやすい有機化合物、すなわち揮発性有機化合物(VOC)により汚染された土壌を受け入れるための土壌受入口11と、VOCが除去され浄化された土壌を排出するための土壌排出口12と、受け入れた土壌を収容する中空の容器13と、容器13の外壁に配設された間接加熱手段としての電気ヒータ14と、容器13内に配設され、土壌受入口11から受け入れた土壌を、土壌排出口12へ搬送するとともに撹拌する搬送撹拌手段としてのスクリュー15とを含んで構成される。
【0032】
容器13は、一方に長くされた中空円筒形の容器とされ、その一端から突出して土壌受入口11としての受入ノズルが設けられ、その他端に近隣した容器側壁から突出して土壌排出口12としての排出ノズルが設けられている。容器13は、受入ノズルの開口を上に向け、排出ノズルの開口が下に向くように設置される。なお、この受入ノズルには、ホッパー16が設けられ、このホッパー16を介して土壌が投入される。
【0033】
ホッパー16は、鋼製の箱状の構造で、下側が漏斗のようにすぼんだ形状の開閉可能な蓋を備えるものである。この蓋を開くことにより、必要量の土壌を落下させ、下部にある受入ノズルを通して容器13内へ投入することができる。
【0034】
容器13には、さらに、過熱蒸気を受け入れる蒸気受入口17が、例えば、上記の他端に近隣した容器側壁から突出した蒸気ノズルとして設けられる。この蒸気ノズルは、その開口が上を向くように設置され、常圧で、100℃を超える蒸気を過熱蒸気として受け入れるために設けられる。
【0035】
容器13は、その側壁が電気ヒータ14により加熱され、その熱を内部の土壌へ伝達するために、熱伝導性が良好な材質で、また、内部に過熱蒸気が供給されるため、その温度に耐え得る材質で作製される。例えば、炭素鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、ステンレス鋼等を挙げることができるが、本発明では、容器13内に受け入れた土壌を80℃以上、具体的には80℃〜200℃の温度に加熱すればよいことから、比較的低温であり、凝縮水もほとんど存在しないことから、安価な炭素鋼を用いることができる。
【0036】
電気ヒータ14は、容器13の外周に、その側壁に密着して設置される。これにより、電気ヒータ14により発生した熱を直接、容器13の壁へ伝え、その壁から内部の空気や過熱蒸気に与えて土壌に伝達することができる。電気ヒータ14は、抵抗発熱体を備えており、電流を供給することにより抵抗発熱体において発熱することにより、容器13の側壁に対して熱を与えることができる。
【0037】
電気ヒータ14は、容器13の側壁以外にも、電気ヒータ14を取り巻く空気へも熱を与えることから放熱量が多く、このまま使用するのではエネルギーの無駄が多い。そこで、電気ヒータ14を配設した後に断熱材で包囲して外部へ放熱しないようにし、効率的に壁へ与えるようにすることができる。断熱材としては、例えば、グラスウール、ロックウール等の繊維系の断熱材や、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等の発泡系の断熱材を用いることができる。
【0038】
スクリュー15は、一方に長くされた中空円筒形の容器13の両端に橋渡すように回転可能に設けられる回転軸と、その回転軸の周囲に設けられる螺旋状羽根とから構成される。回転軸の一端は、図示しないモータに連結され、モータの回転により回転軸が一定方向へ回転するようになっている。なお、モータは、回転軸の回転数を制御することにより回転速度を制御することができ、この制御により、土壌の搬送速度を制御することができる。土壌は、進行方向に等間隔で配列する羽根間に介在し、回転軸が1回転する間に、その進行方向の1つ前方の羽根間へ移動する。これにより、土壌を、土壌受入口11から土壌排出口12へ向けて移動させ、搬送することができる。
【0039】
スクリュー15は、土壌に含まれる水分により腐食することなく、耐熱性を有し、また、土壌を一定方向に搬送し撹拌することができる程度の強度を有する材料により作製される。この材料としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができる。ステンレス鋼は、過熱蒸気と接触して当該過熱蒸気から受け取った熱を、効率的に土壌に与えることができる比較的高い熱伝導率を有する点でも好ましい。
【0040】
VOCは、大小様々な粒子径を有する土壌中の土粒子に付着した状態で存在し、土粒子間に介在する。土粒子には、その大きさから大きい順に、石、岩石が壊れてできた砕屑物である礫、砂、泥(シルト、粘土)がある。石は、粒子径が75mm以上のものをいい、礫は、粒子径が2〜75mmのものをいい、砂は、0.074〜2mmのものをいい、泥は、0.074mm以下のものをいう。
【0041】
VOCは、いずれのサイズの土粒子にも付着しているが、サイズの大きい石や礫は水で洗浄することにより除去することができる。一方、粒子径の小さい砂や泥は、比表面積が大きく、水で洗浄しても充分に除去することはできない。また、これらの粒子間に介在していることもある。このため、これらの粒子径の小さい砂や泥を処理すべき汚染土壌としてガス化装置10へ供給し、VOCを揮発させて分離除去する。
【0042】
VOCにより汚染された土壌をガス化装置10へ投入する際、粒子径の大きい石や礫をふるい等の分級装置により分別し、粒子径の小さい砂や泥からなる土壌をガス化装置10へ投入することができる。
【0043】
本発明では、上記の砂や泥からなる土壌を供給することができるが、供給される土壌に含まれる粒子の径が大小様々存在すると、その粒子径によって熱伝導が異なり、また、水分を多く含み、粘土やシルトといった粉末状物を含んでいるため、ガス化装置10内で急速に加熱されて乾燥硬化した土塊が形成され、その土塊の内部へと熱が伝えられ、その内部において付着しているVOCを揮発させるには時間を要する。
【0044】
そこで、ガス化装置10へ投入する前の前処理として、土壌中の粒子径の大きな石や礫を取り除いた後、粒子径の小さい粘土やシルトは造粒装置を用いて造粒し、粒子径を揃えることができる。これにより、粘土やシルトといった粉末状物がなくなるため、ガス化装置10へ投入しても土塊を形成することはなく、粒子径がほぼ揃っているため均一に加熱することができ、その結果、加熱時間を短縮することができ、エネルギー消費量を低減することができる。
【0045】
また、土塊が形成されにくいことから、螺旋状羽根がその土塊と接触、衝突することにより破損するのを防止することができ、比較的に厚さの薄い羽根を用いることもできる。薄い羽根は、スクリュー15の軽量化を可能にし、その結果、スクリュー15を回転させるモータの消費電力を抑制することができる点で好ましい。
【0046】
ガス化装置10を用いた処理について説明すると、ホッパー16に、VOCにより汚染された土壌を投入し、その蓋を開いて所定量の土壌を容器13内に投入する。容器13内へは、土壌受入口11を通して投入される。
【0047】
ガス化装置10は、予め土壌が投入される前に、電気ヒータ14を通電して抵抗発熱体が発生する熱を容器13へ与えて、容器13内の空気を加熱するとともに、モータを回転してスクリュー15の回転を開始する。そこへ、上記のようにして土壌を投入し、過熱蒸気も蒸気受入口17を通して導入する。
【0048】
スクリュー15の回転に伴って、土壌が撹拌されるともに一定方向へ搬送される。その間、電気ヒータ14により容器13の壁を通して間接的に熱が与えられ、また、過熱蒸気との接触により直接に熱が与えられる。過熱蒸気の導入口、すなわち蒸気受入口17が土壌排出口12側にあることから、土壌は、土壌排出口12へ搬送されるにつれて温度が高い過熱蒸気により加熱され、昇温される。
【0049】
スクリュー15の回転により撹拌される土壌は、土壌内に多数の空隙が形成され、その空隙へ過熱蒸気が入り込み、内部の土壌へも効率的に熱が与えられる。このとき、土壌中の水分は、土壌の加熱に伴い蒸発し、それに伴ってVOCも揮発する。また、土粒子に付着したVOCは、過熱蒸気によりストリッピングされ(剥ぎ取られ)、過熱蒸気から熱を与えられて揮発する。このようにして土壌の内部に存在するVOCも効率的に揮発される。
【0050】
VOCの沸点は、約50〜260℃であるが、本発明では、電気ヒータ14および過熱蒸気により、投入された土壌の温度を80℃以上、具体的には、含まれている有機化合物の種類や濃度に応じて80℃〜200℃に昇温することで、VOCを土壌環境基準以下の値にまで低減させることができることを見出した。このことから、土壌の温度を80℃以上に昇温することで、VOCを十分に揮発させ、土壌から分離することができているものと考えられる。
【0051】
ちなみに、土壌環境基準の値を示しておくと、検液1Lにつき、ジクロロメタンは0.02mg以下、トリクロロエチレンは0.03mg以下、テトラクロロエチレンは0.01mg以下、ベンゼンは0.01mg以下である。
【0052】
また、容器13内は、過熱蒸気が供給されて過熱蒸気雰囲気となり、無酸素状態(還元雰囲気)になっているので、揮発したVOCの分解が進み、VOCは最終的に二酸化炭素や塩化水素等の低分子へ分解される。この分解ガスは、大部分が蒸気、二酸化炭素、窒素から構成され、微量に塩化水素等が含まれる。窒素は、土壌投入時に土壌に伴って流入する空気中の窒素である。
【0053】
一方、VOCが揮発して除去された土壌は、VOCが環境基準以下の濃度とされた処理土であるが、80℃以上に加熱されているため、そのまま再利用することはできない。そこで、自然放冷する等して冷却し、その後、埋め立て等に再利用することができる。
【0054】
過熱蒸気としては、常圧で、例えば150℃〜500℃に加熱した蒸気を用いることができる。過熱蒸気は、容器13の容量に応じて決定することができ、容器13内を微負圧あるいは常圧に保持しつつ導入することができる量を導入することができる。
【0055】
上記のことから、本発明の土壌浄化装置は、上記のことから、図2に示すように、さらに、処理土を冷却するための冷却装置20と、分解ガスを処理するための排ガス処理装置とを備えることができる。
【0056】
冷却装置20は、冷却水と熱交換を行い、処理土を冷却する熱交換器とすることができる。そのほか、処理土に直接冷却水を散布し、冷却水が蒸発することに伴って処理土を冷却する散水装置、ブロワにより空気を吹き付け、空冷する空冷装置を採用することも可能である。冷却装置20により冷却された後の処理土は、処理土収納容器21へ入れられ、再利用されるまで保管される。この処理土収納容器21から取り出し、保管場所まで搬送し、その保管場所で保管することも可能である。
【0057】
排ガス処理装置は、分解ガスを冷却するとともに、分解ガスに含まれるガス成分を分離するための冷却分離装置としてのバブリングタンク22と、バブリングタンク22から排出されるガス成分に同伴されたミストを除去するためのミスト除去装置23と、ミストが除去されたガス成分中に含まれる微細な粉塵を吸着除去するための吸着装置24と、ガス成分を吸引して、ガス化装置10が備える中空の容器13内、バブリングタンク22内、ミスト除去装置23内、吸着装置24内を負圧に保持し、粉塵が除去されたガス成分を大気中へ放出させる送風装置25とを含んで構成される。
【0058】
バブリングタンク22は、所定の容積を有し、内部に冷却水またはアルカリ水溶液が収容される密閉容器と、分解ガスをこの冷却水またはアルカリ水溶液内へ受け入れ、ガス成分をバブリングさせる供給管と、ガス成分のみを排出する排出管とから構成される。
【0059】
例えば、バブリングタンク22内にアルカリ水溶液が収容される場合、分解ガスはアルカリ水溶液により急冷され、分解ガスに含まれる塩化水素や二酸化炭素の一部、含有されている場合にはSO等がアルカリと反応して溶解し、これらを除く、窒素、残りの二酸化炭素、蒸気が気泡を構成してアルカリ水溶液の上部へ移動し、排出管から排出される。なお、アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムを用いることができる。
【0060】
分解ガス中には、微細な土粒子やダスト等の固形物も含まれる。これらの大部分は、冷却水またはアルカリ水溶液の底に堆積し、一部が気泡とともに上部へ移動し、ガス成分に含まれて後流側へ送られる。
【0061】
排出管から排出されるガス成分は、上記の窒素や二酸化炭素のほか、固形物、ミストを含んでいる。ミストに二酸化炭素が溶解して酸を形成すると、酸腐食を生じ、また、吸着装置24に充填される吸着材がミストにより表面が濡れると、吸着能力が大幅に低下することから、ミスト除去装置23によりミストを除去する。ミスト除去装置23としては、密閉容器の内部に金網を備え、その金網によりミストを捕捉分離するデミスタを用いることができる。
【0062】
吸着装置24は、密閉容器内に吸着材が充填された吸着塔とすることができ、ミストが除去されたガス成分中の固形物を吸着除去する。固形物は、例えば、バブリングタンク22において気泡が破裂した際、その気泡内に微細な粉塵として存在するものである。この吸着装置24で吸着除去することにより、大気中へこれらの微細な粉塵が放散されるのを防止することができる。なお、ガス成分中に塩素や一酸化炭素を含む場合、この吸着装置24により吸着除去することができる。吸着装置24で用いることができる吸着材としては、活性炭やゼオライト等を用いることができる。
【0063】
送風装置25は、例えばブロワとされ、吸着装置24から排出されるガス成分を吸引し、排ガスとして大気中へ放出する。このため、吸い込み側を負圧にし、ガス化装置10の容器13からバブリングタンク22およびミスト除去装置23を通して吸着装置24へつながる装置内を微負圧に保持することを可能にする。これにより、ガス化装置10内で発生したVOCや分解ガスが大気中へ放出されることはなく、固形物も排出されることがなくなり、大規模な換気設備が不要となり、作業員の作業環境も改善することができる。
【0064】
バブリングタンク22を設置することにより、バブリングタンク22内に固形物が堆積することになるが、この固形物を分離除去するために、固形物を含む冷却水またはアルカリ水溶液を受け入れ、その液体中に浮遊する固形物を凝集沈殿させる凝集槽26がさらに設けられる。
【0065】
凝集槽26は、その液体を受け入れ、貯留することができる所定の容量をもつ容器とされる。貯留された液体の中に凝集剤が添加され、一定期間静置すると、液体中に浮遊する固形物が凝集剤により凝集して大きな塊となって沈殿し、上澄み液と沈殿物とに分離される。
【0066】
凝集剤としては、これまでに知られた薬剤を用いることができ、具体的には、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等を用いることができる。
【0067】
バブリングタンク22内の冷却水またはアルカリ水溶液は、凝集槽26へ抜き出した分だけ、それらの液を補給することができる。凝集槽26の上澄み液は、排水処理された後、バブリングタンク22の補給水として使用されたり、洗浄水として使用される。その使用量が少なく水が余る場合には、水質分析を行った後、河川等に排水される。その反対に、水が不足する場合には補給される。
【0068】
排水処理は、図示しない排水処理装置により行われる。排水処理装置は、砂ろ過槽と、繊維ろ過槽と、活性炭槽と、再利用タンクとを含むことができる。排水中の浮遊物は、その大きさに応じて、比較的大きいものは砂ろ過槽により、それより小さいものは糸くず状の繊維が収容された繊維ろ過槽により取り除かれ、最後に活性炭槽で微細物が吸着除去された後、その排水は、再利用のために再利用タンクへ収容される。
【0069】
過熱蒸気の供給源がない現場においては、過熱蒸気を生成しなければならない。このため、本発明の土壌浄化装置は、過熱蒸気生成装置をさらに備えることができる。過熱蒸気生成装置としては、例えば、図3に示す構成の装置を用いることができる。
【0070】
図3に示す過熱蒸気生成装置は、水を貯留する貯水槽としての貯水タンク30と、水を蒸発させ、蒸気を発生させる蒸気発生手段としてのボイラ31と、貯水タンク30からボイラ31へ水を給水する給水手段としての給水ポンプ32と、ボイラ31で発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する蒸気加熱手段としての蒸気加熱機33とから構成される。
【0071】
貯水タンク30は、所定量の水を収容することができるFRPや炭素鋼等から作製された所定容量の容器とされ、給水ポンプ32は、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ、往復ポンプ等を使用することができる。また、ボイラ31は、バーナーや電気ヒータを使用して水を加熱し、蒸発させることにより蒸気を発生させるものを採用することができる。また、U字形あるいはW形のチューブと、その内部へ空気を供給し、燃料を噴射して燃焼させる燃焼手段とから構成されるラジエントチューブバーナーを採用することも可能である。
【0072】
蒸気加熱機33は、上記のバーナーを使用するもののほか、電磁誘導加熱によるものであってもよい。電磁誘導加熱は、コイルに強い電流を流して強力な磁場を発生させ、その上に電気を通しやすい鉄やステンレス鋼等の金属を置き、電磁誘導により渦電流を発生させ、その抵抗により金属が発熱するという原理を利用した加熱方法である。したがって、この電磁誘導加熱を利用した蒸気加熱機としては、鉄またはステンレス鋼等で作製された円筒管の外周に導線を巻いたものを用いることができる。
【0073】
なお、ボイラ31から蒸気加熱機33への配管および蒸気加熱機33からガス化装置10への配管は、内部を流れる蒸気および過熱蒸気の温度が低下しないように断熱材が巻かれる。
【0074】
ここに、実際に本発明の土壌浄化装置を用い、汚染土壌を処理した結果を示す。トリクロロエチレンを約10mg/Lの濃度で含むVOC汚染土壌を、図1および図2に示すガス化装置10を用い、容器13内に約350℃の過熱蒸気を供給して、常温の土壌を約9分間で、ガス化装置10内を通過させ、約110℃にまで昇温した後、処理土として取り出し、常温まで冷却した。
【0075】
以下の表1に、試験を行った結果を示す。表1中、「流動化剤」は、シールド工事等で掘削土を流動化させる性状改良剤(ポリマー剤)であり、「<0.005」は、定量下限値未満であることを示す。基準適合判定は、土壌汚染対策法における指定基準の0.03mg/L未満であるか否かにより行った。
【0076】
【表1】

【0077】
この冷却した処理土中のトリクロロエチレンの濃度を測定すると、表1の試験No1、3に示すように、指定基準の0.03mg/L未満にまで低下させることができていることを確認することができた。なお、試験No2、4では、指定基準の0.03mg/L未満にまで低下させることはできなかったものの、トリクロロエチレンを十分に除去することができていることを表した。また、過熱蒸気の温度を約500℃にして、常温の土壌を約9分間で、ガス化装置10内を通過させ、約180〜200℃にまで昇温した場合は、試験No5、6に示すように、いずれも指定基準どころか、定量下限値未満にまで低下させることができた。
【0078】
ここではトリクロロエチレンの濃度のみを示したが、その他のテトラクロロエチレン等であっても同様の指定基準未満の濃度にすることができた。この結果から、過熱蒸気雰囲気下、土壌の温度を80℃〜200℃といった適切な温度に管理することで、極めて短期間にVOCを揮発させて除去し、土壌を浄化することができることを見出すことができた。
【0079】
本発明の土壌浄化装置および土壌浄化方法は、掘削を伴う原位置で処理することができない、VOCで汚染されたシールド工事等で短時間に大量に発生する掘削土の処理に適用することができる。なお、この掘削土については、掘削時や土砂排出時に、鉄粉(VOC浄化用鉄粉)、鉄粉と過酸化水素(フェントン工法の薬剤)、過マンガン酸等の強酸化剤を添加混合して浄化する方法があるが、VOCを十分に分解除去することができないことから、本発明の装置や方法を採用することが適切である。
【0080】
これまで、容器13を間接加熱する熱源としては、電気ヒータ14を用いる構成について説明してきたが、これに限られるものではなく、重油や灯油を燃焼した燃焼ガスや、燃焼管内で重油や液化ガスを燃焼させ、その熱量を、燃焼管を介して被対象物を加熱するラジアント・チューブ・バーナー等とすることも可能である。また、容器13および搬送撹拌手段としては、上記の容器およびスクリューに代えて、キルン方式を採用することができる。
【0081】
具体的には、図4に示す装置断面図のように、土壌受入口40、土壌排出口41、容器42、チューブ43、燃焼手段、動力手段44から構成されている。容器42は、一方に長くされた中空円筒形の炭素鋼やステンレス鋼等から形成された鋼製容器であり、その内部に、その鋼製容器より小さい径をもつ回転可能な同じ材質からなる内管45が挿設されている。鋼製に限らず、熱伝導率が高いアルミニウムや銅等から形成された容器を用いることも可能であるが、材料コストを考慮すると、鋼製が好ましい。内管45の内壁には、螺旋状に形成された内側に向けて突出する螺旋板46が配設されている。容器42は、容器の長手方向を水平方向にして設置されるため、容器42内に鋼製の球体やセラミックボール等の球状物47を配置し、その上に内管45を設置することにより、内管45のみを回転させることが可能となる。なお、これは一例であるので、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0082】
容器42の一端には、蒸気ラインが接続される蒸気土壌混合ノズル48が設けられ、その蒸気土壌混合ノズル48に、土壌受入口40が設けられている。土壌受入口40は、フランジ接続することができるようにされていて、ホッパーを接続することができる。容器42の他端側に、土壌排出口41が設けられている。
【0083】
蒸気土壌混合ノズル48は、図2に示すように水平であってもよいが、容器42側が下方となるように傾斜が設けられ、土壌受入口40から投入された土壌がスムーズに容器42内に入れられるようにすることもできる。蒸気土壌混合ノズル48には、このノズルに連続して、土壌を内管45内へ案内するためのガイド49が配設されている。例えば、ガイド49は、円管をその長さ方向に半分に切断し、円弧形にしたものを用いることができる。
【0084】
内管45の内壁には螺旋板46が設けられているため、内管45の回転により土壌受入口40の側から土壌排出口41の側へ向け、螺旋板46に沿って土壌が移動される。このとき、土壌は、螺旋板46により撹拌される。内管45は、土壌排出口41の側に、土壌排出口41から土壌が適切に排出されるように複数の開口50が形成されており、その末端が閉鎖され、モータ等の動力手段44と接続されている。このため、動力手段44へは土壌が入り込むことはなく、複数の開口50を通り、土壌排出口41へ排出される。
【0085】
容器42の外周に巻かれるチューブ43および燃焼手段は、ラジエントチューブバーナーとすることができる。チューブ43は、容器42の外壁との接触面積を増加させるべく、その断面が略矩形とされる。なお、チューブ43は、図4に示すように、隣り合うチューブの間隔が出来るだけ狭くなるように巻くことができる。燃焼手段は、図示していないが、チューブ43の一端に設けられ、噴射ノズルと点火プラグとを備える。チューブ43内は、噴射ノズルから噴射される燃料を燃焼させることにより発生する高温の排ガスが流れる。この排ガスは、チューブ43内を流れる間に、容器42の壁面、内管45の壁面を通して、内管45の内部の土壌に伝えられる。また、その熱は、内管45に設けられる螺旋板46にも伝えられるので、螺旋板46により土壌が撹拌および移動される間、常時土壌に熱が与えられ、効率良く加熱することができる。
【0086】
このラジエントチューブバーナーを用いることで、燃料として重油や都市ガス等を使用するものの、その熱効率が非常に良いことから、電気ヒータに比較してコストを約1/3に抑制することができる。上記のような容器42を用い、土壌を効率良く加熱ことができるので、その容器42の径を大きくとることができ、同じ加熱時間であっても汚染土壌の処理量を増加させることが可能となる。
【0087】
これまで本発明の土壌浄化装置および土壌浄化方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
10…ガス化装置、11…土壌受入口、12…土壌排出口、13…容器、14…電気ヒータ、15…スクリュー、16…ホッパー、17…蒸気受入口、20…冷却装置、21…処理土収納容器、22…バブリングタンク、23…ミスト除去装置、24…吸着装置、25…送風装置、26…凝集槽、30…貯水タンク、31…ボイラ、32…給水ポンプ、33…蒸気加熱機、40…土壌受入口、41…土壌排出口、42…容器、43…チューブ、44…動力手段、45…内管、46…螺旋板、47…球状物、48…蒸気土壌混合ノズル、49…ガイド、50…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物(VOC)により汚染された土壌を浄化する土壌浄化装置であって、
前記VOCにより汚染された土壌と過熱蒸気とを受け入れる中空の容器と、前記容器の外壁もしくは該容器内に配設され、該容器内に受け入れた前記土壌を加熱するための間接加熱手段と、前記土壌を前記容器の受入口から排出口まで搬送しつつ撹拌するための搬送撹拌手段とを備えるガス化装置を含み、
前記ガス化装置が、前記容器内を過熱蒸気雰囲気とし、前記間接加熱手段が前記過熱蒸気へ熱を与え、前記搬送撹拌手段による撹拌により前記過熱蒸気を前記土壌に浸透させて熱を与えることにより、該土壌を80℃〜200℃の温度に加熱することを特徴とする、土壌浄化装置。
【請求項2】
前記ガス化装置から排出される前記VOCを分解して生成された分解ガスに含まれる不純物を除去するための排ガス処理装置と、前記ガス化装置から排出される前記VOCが除去された後の処理土を冷却するための冷却装置とをさらに備える、請求項1に記載の土壌浄化装置。
【請求項3】
前記排ガス処理装置は、前記分解ガスを冷却するとともに、該分解ガスに含まれるガス成分を分離するための冷却分離装置と、前記ガス成分中に含まれる前記不純物を吸着除去するための吸着装置と、前記ガス成分を吸引して、前記ガス化装置が備える前記容器内、前記冷却分離装置内、前記吸着装置内を負圧に保持し、前記不純物が除去されたガス成分を大気中へ放出させる送風装置とを含む、請求項2に記載の土壌浄化装置。
【請求項4】
前記冷却分離装置内に残留する前記不純物を分離除去するために、該不純物を含む液体を受け入れ、該液体中に浮遊する該不純物を凝集沈殿させる凝集槽をさらに備える、請求項3に記載の土壌浄化装置。
【請求項5】
水を貯留する貯水槽と、前記水を蒸発させる蒸気発生手段と、前記貯水槽から蒸気発生手段へ給水する給水手段と、発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する蒸気加熱手段とを含む過熱蒸気生成装置をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌浄化装置。
【請求項6】
揮発性有機化合物(VOC)により汚染された土壌を浄化する土壌浄化方法であって、
中空の容器の外壁もしくは該容器内に配設される間接加熱手段により該容器内を加熱するステップと、
前記VOCで汚染された土壌と過熱蒸気とを前記容器内へ受け入れるステップと、
搬送撹拌手段により前記土壌を前記容器の受入口から排出口まで搬送しつつ撹拌するステップとを含み、
前記受け入れるステップにおいて、前記容器内を過熱蒸気雰囲気とし、前記撹拌するステップにおいて、前記間接加熱手段が前記過熱蒸気へ熱を与え、前記搬送撹拌手段による撹拌により前記過熱蒸気を前記土壌に浸透させて熱を与えることにより、該土壌を80℃〜200℃の温度に加熱することを特徴とする、土壌浄化方法。
【請求項7】
前記容器から排出される前記VOCを分解して生成された分解ガスに含まれる不純物を除去するステップと、前記容器の前記排出口から排出される前記VOCが除去された後の処理土を冷却するステップとをさらに含む、請求項6に記載の土壌浄化方法。
【請求項8】
前記不純物を除去するステップは、前記分解ガスを冷却するとともに、該分解ガスに含まれるガス成分を分離するステップと、前記ガス成分中に含まれる前記不純物を吸着除去するステップと、前記ガス成分を吸引して、前記容器内を負圧に保持し、前記不純物が除去されたガス成分を大気中へ放出させるステップとを含む、請求項7に記載の土壌浄化方法。
【請求項9】
前記ガス成分が分離された後に残留する前記不純物を含む液体を受け入れ、該液体中に浮遊する該不純物を凝集沈殿させるステップをさらに含む、請求項8に記載の土壌浄化方法。
【請求項10】
貯水槽から給水された水を蒸発させるステップと、蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するステップと、生成した前記過熱蒸気を前記容器へ送出するステップとを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の土壌浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161768(P2012−161768A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25608(P2011−25608)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 株式会社 日刊建設工業新聞社,日刊建設工業新聞,第2面,平成22年11月10日 株式会社 日刊建設産業新聞社,日刊建設産業新聞,第2面,平成22年11月10日 株式会社 日刊建設通信新聞社,建設通信新聞,第3面,平成22年11月10日
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(507270218)大旺新洋株式会社 (14)
【Fターム(参考)】