説明

汚染土浄化方法及び汚染土浄化装置

【解決手段】反応槽4においてイオン化促進剤を含む溶液2に汚染土1を混合させると、第一の処理液3において粘性土類を含む汚染土1からイオン交換により重金属類や放射性同位体などの汚染物質が分離する。接触槽5においては、汚染物質を吸着し得る吸着剤を収容した吸着容器12を回転装置28,33に設け、第一の処理液3を吸着容器12に通して吸着剤に接触させ、汚染物質を吸着した吸着剤を吸着容器12に残すとともに、汚染物質が除去された第二の処理液21を再利用することができる。
【効果】粘性土類を含む汚染土1から汚染物質を除去する場合に、汚染物質を容易に分離して効率良く回収するとともに、分別された吸着剤を産業廃棄物として処分する場合に、その産業廃棄物の処分量を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土から重金属類や放射性同位体などの汚染物質を除去する汚染土浄化方法及び汚染土浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の製造工場またはその跡地の土壌や自然由来の汚染土壌などを盛土として使用した土地が重金属類などの汚染物質により汚染されている場合があることが明らかとなり、それらの土地の浄化が行なわれている。また、重金属類などの汚染物質ばかりではなく、最近発生した東日本大震災により生じた汚染土壌、特に放射性汚染が深刻な社会問題となっている。
【0003】
従来、例えば下記の特許文献1に示すように、洗浄機で土砂同士の摩擦などにより土砂の表面から汚染物質を離脱させた後に、分離装置で土砂に振動を付与するとともに気泡を吹き付けて土砂を沈降させることにより、土砂と汚染物質とを分離する手段が知られている。また、例えば下記の特許文献2に示すように、土砂を濃縮したものに電解酸化処理を行なうことにより、重金属類などの汚染物質を酸化分解して無害化する手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−254063号公報
【特許文献2】特開2010−279881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したいずれの手段も、土砂に含まれる汚染物質を除去することは、土砂に対する汚染物質の分離性がある程度良いために可能であるが、粘性土、または、その粘性土を含む濁水に含まれる汚染物質を除去することは、粘性土に対する汚染物質の分離性が悪いために困難であった。また、汚染土壌から分別された後に、汚染物質が含まれた粘性土、または、その粘性土を含む濁水は、汚染土壌の約20%にも及び、それらを産業廃棄物として処分した場合に環境面やコスト面で問題となっていた。
【0006】
この発明は、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土から汚染物質を除去する場合に、汚染物質を容易に分離して効率良く回収するとともに、分別された吸着剤を産業廃棄物として処分する場合に、その産業廃棄物の処分量を少なくすることができる汚染土浄化方法及び汚染土浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
後記実施形態(図1〜3に示す第1実施形態、図4〜6に示す第2実施形態)の図面の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる汚染土浄化方法(第1,2実施形態に対応)においては、イオン化促進剤を汚染土(1)に混合させ、例えばイオン化促進剤を含む溶液(2)に汚染土(1)を混合させ、例えばその溶液(2)でそのイオン化促進剤によりイオン交換を行なって、重金属類または放射性同位体または重金属類及び放射性同位体である汚染物質を汚染土(1)から分離した第一の処理液(3)を吸着剤(19)に接触させ、その第一の処理液(3)から汚染物質を吸着した吸着剤(19)を分離して第一の処理液(3)を吸着剤(19)と第二の処理液(21)とに分別する。
【0008】
請求項1の発明では、第一の処理液(3)においてイオン交換により汚染土(1)から汚染物質を予め分離させたので、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土(1)から汚染物質を容易に分離させることができる。その後に、第一の処理液(3)の汚染物質を吸着剤(19)により吸着したので、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土(1)から分離した汚染物質を吸着剤(19)により効率良く回収することができる。さらに、第一の処理液(3)を吸着剤(19)と第二の処理液(21)とに分別したので、吸着剤(19)を産業廃棄物として処分することができ、汚染物質を除去して残った第二の処理液(21)については再利用することができる。
【0009】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明にかかる汚染土浄化方法(第1,2実施形態に対応)においては、汚染物質を吸着し得る吸着剤(19)を収容した吸着容器(12)に第一の処理液(3)を通して吸着剤(19)に接触させ、汚染物質を吸着した吸着剤(19)を吸着容器(12)に残すとともに、汚染物質が除去された第二の処理液(21)を吸着容器(19)から回収して、第一の処理液(3)から、汚染物質を吸着した吸着剤(19)を分離する。
【0010】
請求項2の発明では、吸着剤(19)を収容した吸着容器(12)を利用して、汚染物質を吸着した吸着剤(19)を効率良く第二の処理液(21)と分別して回収することができる。
【0011】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明にかかる汚染土浄化方法(第1,2実施形態に対応)においては、前記吸着容器(12)に収容した吸着剤(19)に対し相対動する処理液(3,21)を接触させる。
【0012】
請求項3の発明では、吸着容器(12)において吸着剤(19)に対し処理液(3,21)が相対動しながら接触するので、処理液(3,21)の汚染物質を分離させ易くするとともに吸着剤(19)に吸着させ易くすることができる。
【0013】
請求項4の発明にかかる汚染土浄化装置(第1,2実施形態に対応)に設けた槽(4,5)においては、重金属類または放射性同位体または重金属類及び放射性同位体である汚染物質を吸着し得る吸着剤(19)を収容した吸着容器(12)を有し、イオン化促進剤を混合させた汚染土(1)でイオン化促進剤によりイオン交換が行なわれた第一の処理液(3)をこの吸着容器(12)に通して吸着剤(19)に接触させて、汚染物質を吸着した吸着剤(19)を吸着容器(12)に残すとともに、汚染物質が除去された第二の処理液(21)を吸着容器(12)から回収して、第一の処理液(3)から、汚染物質を吸着した吸着剤(19)を分離する。
【0014】
請求項4の発明では、第一の処理液(3)において、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土(1)からイオン交換により汚染物質を容易に分離させることができる。また、吸着剤(19)を収容した吸着容器(12)を利用して汚染物質を吸着剤(19)により吸着し、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土(1)から分離した汚染物質を吸着剤(19)により効率良く第二の処理液(21)と分別して回収することができる。さらに、第一の処理液(3)を吸着剤(19)と第二の処理液(21)とに分別して、吸着剤(19)を産業廃棄物として処分することができ、汚染物質を除去して残った第二の処理液(21)については再利用することができる。
【0015】
請求項5の発明にかかる汚染土浄化装置(第1,2実施形態に対応)は、下記の反応槽(4)と接触槽(5)とを備えている。前記反応槽(4)では、イオン化促進剤を汚染土(1)に混合させ、例えばイオン化促進剤を含む溶液(2)に汚染土(1)を混合させる。前記接触槽(5)では、重金属類または放射性同位体または重金属類及び放射性同位体である汚染物質を吸着し得る吸着剤を収容した吸着容器(12)を有し、イオン化促進剤を混合させた汚染土(1)で、例えば汚染土(1)を混合した溶液(2)でイオン化促進剤によりイオン交換が行なわれた第一の処理液(3)をこの吸着容器(12)に通して吸着剤(19)に接触させて、汚染物質を吸着した吸着剤(19)を吸着容器(12)に残すとともに、汚染物質が除去された第二の処理液(21)を吸着容器(12)から回収して、第一の処理液(3)から、汚染物質を吸着した吸着剤(19)を分離する。
【0016】
請求項5の発明では、反応槽(4)の第一の処理液(3)において、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土(1)からイオン交換により汚染物質を容易に分離させることができる。また、接触槽(5)においては、吸着剤(19)を収容した吸着容器(12)を利用して汚染物質を吸着剤(19)により吸着し、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土(1)から分離した汚染物質を吸着剤(19)により効率良く第二の処理液(21)と分別して回収することができる。さらに、接触槽(5)においては、第一の処理液(3)を吸着剤(19)と第二の処理液(21)とに分別して、吸着剤(19)を産業廃棄物として処分することができ、汚染物質を除去して残った第二の処理液(21)については再利用することができる。しかも、反応槽(4)と接触槽(5)とに分けたので、それぞれの槽(4,5)の機能を高めることができる。
【0017】
請求項4または請求項5の発明を前提とする請求項6の発明にかかる汚染土浄化装置(第1,2実施形態に対応)において、前記吸着容器(12)は、吸着剤(19)を収容した収容室(16)と、その収容室(16)に処理液(3,21)を供給する入口(17)と、その収容室(16)から処理液(3,21)を排出する出口(17)とを備えている。
【0018】
請求項6の発明では、吸着容器(12)において、処理液(3,21)を収容室(16)に入口(17)と出口(17)を通して給排して吸着剤(19)に効率良く接触させることができる。
【0019】
請求項6の発明を前提とする請求項7の発明にかかる汚染土浄化装置(第1,2実施形態に対応)においては、前記吸着容器(12)の収容室(16)とその収容室(16)に収容された吸着剤(19)との間で相対動を生じさせる付与手段(7,8,28,33)を備えている。例えば、付与手段は接触槽(5)で吸着剤(19)に対し吸着容器(12)を動かす可動手段(7,8,28,33)である。例えば、可動手段は、吸着容器(12)が公転する回転装置(28,33)であり、または、吸着容器(12)が公転するとともに自転する回転装置(7,8)である。例えば、複数の回転装置(7,8,28,33)を並設し、各回転装置(7,8,28,33)において吸着容器(12)の公転向きや自転向きを互いに変更する。そのほか、付与手段としては、吸着容器(12)を回転や振動などにより動かすばかりでなく、処理液(3,21)に攪拌や振動などによる流れを与えたりすることができる。
【0020】
請求項7の発明では、吸着容器(12)において吸着剤(19)に対し処理液(3,21)が付与手段(7,8,28,33)により相対動しながら接触するので、処理液(3,21)の汚染物質を分離させ易くするとともに吸着剤(19)に吸着させ易くすることができる。
【0021】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項6の発明を前提とする第8の発明にかかる汚染土浄化装置(第1,2実施形態に対応)において、前記吸着容器(12)は、閉じられた外壁(13)の内側に収容室(16)を有し、その外壁(13)には入口及び出口に該当する複数の貫通路(17)を配設している。また、第8の発明を前提とする第9の発明にかかる汚染土浄化装置(第1,2実施形態に対応)において、前記吸着容器(12)の外壁(13)は、筒状の外周壁(14)と、その外周壁(14)の両端側を塞ぐ外端壁(15)とを有し、その外周壁(15)に複数の貫通路(17)を配設している。吸着容器(12)の形態としては、第9の発明のように中空筒であっても、中空球であってもよく、中空体であれば特に限定しない。第8,9の発明では、吸着容器(12)内に閉じ込めた吸着剤(19)に対し、入口と出口とを兼用する複数の貫通路(17)を通して収容室(16)に給排させた処理液(3,21)を効率良く接触させることができる。
【0022】
第8の発明または第9の発明を前提とする第10の発明にかかる汚染土浄化装置(第1,2実施形態に対応)において、前記吸着容器(12)は、回転中心軸(10)の回転中心(10a)に対する所定の半径位置で例えば腕部(11)や筒体(36)の内側などの支持部になどに支持されている。例えば、腕部(11)は回転中心軸(10)の回転方向に沿って複数配設されている。第10の発明では、吸着容器(12)が回転中心軸(10)を中心に公転し、その公転により、吸着剤(19)に対し処理液(3,21)が相対動しながら接触するので、処理液(3,21)の汚染物質を分離させ易くするとともに吸着剤(19)に吸着させ易くすることができる。
【0023】
第10の発明を前提とする第11の発明にかかる汚染土浄化装置(第1実施形態に対応)において、前記吸着容器(12)は、回転中心軸(10)の回転中心(10a)と平行な回転中心(12a)で例えば腕部(11)などの支持部に対し回転可能に支持されている。第11の発明では、吸着容器(12)が公転するとともに自転するので、吸着剤(19)に対する処理液(3,21)の相対動を助長することができる。
【0024】
第11の発明を前提とする第12の発明にかかる汚染土浄化装置(第1実施形態に対応)において、前記吸着容器(12)の外側には羽根(18)を設けている。第12の発明では、回転中心軸(10)とともに回転する例えば腕部(11)などの支持部の回転力により羽根(18)が処理液(3,21)から抵抗圧力を受けるので、回転中心(12a)を中心とする吸着容器(12)の回転力を高めることができる。
【0025】
第10の発明を前提とする第13の発明にかかる汚染土浄化装置(第2実施形態に対応)において、前記吸着容器(12)は回転中心軸(10)の回転中心(10a)で回転する筒体(36)内の空洞で例えば腕部(11)や筒体(36)の内側などの支持部に支持されている。第13の発明では、吸着容器(12)が公転する回転装置(28,33)としてコンパクトにまとめることができる。
【0026】
第13の発明を前提とする第14の発明にかかる汚染土浄化装置(第2実施形態に対応)において、前記筒体(36)の外側には羽根(18)を設けている。第14の発明では、第二の処理液(21)に対する攪拌機能を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土(1)から汚染物質を除去する場合に、汚染物質を容易に分離して効率良く回収するとともに、分別された吸着剤(19)を産業廃棄物として処分する場合に、その産業廃棄物の処分量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態にかかる汚染土浄化装置を正面側から見た概略断面図である。
【図2】第1実施形態にかかる汚染土浄化装置を側面側から見た概略断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態にかかる汚染土浄化装置の回転装置に支持された吸着容器を示す概略断面図であり、(b)は同じく概略断面図である。
【図4】第2実施形態にかかる汚染土浄化装置を正面側から見た概略断面図である。
【図5】(a)は第2実施形態にかかる汚染土浄化装置の回転装置を示す図4の拡大図であり、(b)はこの回転装置を側面側から見た概略断面図である。
【図6】(a)は第2実施形態にかかる汚染土浄化装置の回転装置に支持された吸着容器を示す概略断面図であり、(b)は同じく概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本発明の第1実施形態にかかる汚染土浄化方法及び汚染土浄化装置について図1〜3を参照して説明する。
図1,2に示す汚染土浄化装置は、既存の各種装置を利用して分別前の汚染土壌などを段階的に分別することができる分別システム(図示せず)の一環として設置され、分別された汚染土1をイオン化促進剤含有溶液2に混合させてそのイオン化促進剤によりイオン交換が行なわれた第一の処理液3を得る反応槽4と、その第一の処理液3から重金属類や放射性同位体などの汚染物質を分離する接触槽5とを備えている。
【0030】
汚染土1は、2mm以下に細分化された粘性土、または、その粘性土を含む濁水を主体とし、比重が4以上であるクロムや鉄やニッケルや銅や亜鉛やカドミウムやスズやモリブデンやタングステンや水銀や鉛などの重金属類、または、セシウムやストロンチウムなどの放射性同位体などの汚染物質を含み、反応槽4に搬入される。イオン化促進剤とはイオン化傾向剤や腐食酸などを粉体または溶剤にして混合したものである。イオン化傾向とは溶液中(主に水溶液中)における元素(主に金属)のイオンヘのなり易さの相対尺度を示し、イオン化傾向剤としてはカリウム化合物やカルシウム化合物やナトリウム化合物やマグネシウム化合物や銅化合物や銀化合物などを利用する。腐食酸としてはイオン交換容量を増加させるフルボン酸やフミン酸などを利用する。そのほか、イオン化促進剤としてリグニンスルホン酸塩などを利用してもよい。この反応槽4の下部には前記接触槽5の下部に連通する底通路6が開閉可能に設けられている。
【0031】
この接触槽5内には一対の回転装置7,8が可動手段(相対動付与手段)として設けられている。両回転装置7,8においては、駆動モータ9により回転する回転中心軸10の回転方向に沿って複数の腕部11が互いに間隔をあけて配設され、各腕部11には回転中心軸10の回転中心10a対する所定の半径位置で吸着容器12が着脱可能に取り付けられている。
【0032】
吸着容器12は回転中心軸10の回転中心10aと平行な回転中心12aで回転可能に腕部11に対し支持されている。図3に示すように、吸着容器12において、閉じられた外壁13は円筒状の外周壁14とその外周壁14の両端側を塞ぐ外端壁15とを有し、その外壁13の内側には収容室16が設けられているとともに、その外周壁14には入口及び出口に該当する複数の貫通路17が配設されている。両外端壁15は外周壁14に対し着脱し得る。吸着容器12の外周壁14の外側には回転中心12aに沿って延びる複数の羽根18が吸着容器12の回転方向に沿って互いに間隔をあけて配設されている。両回転装置7,8において回転中心軸10の回転向きX7,X8は互いに逆になっており、回転中心軸10とともに回転する腕部11の回転力により羽根18が抵抗圧力を受けて吸着容器12が回転中心12aで回転し、吸着容器12の回転向きY7,Y8と回転中心軸10の回転向きX7,X8とが互いに逆になる。
【0033】
吸着容器12の収容室16には重金属類や放射性同位体などの汚染物質を吸着し得る複数の吸着剤19が収容室16の容積の6〜8割程度を占めるように収容されている。吸着剤19としては、人工または天然のゼオライトや活性炭などを利用することができる。
【0034】
さて、75μm程度まで細分化された粘性土、または、その粘性土を含む濁水を主体とする汚染土1を反応槽4に搬入するとともに、イオン化傾向剤や腐食酸などを粉体または溶剤にして混合したイオン化促進剤含有溶液2を反応槽4に搬入し、反応槽4内を攪拌して汚染土1とイオン化促進剤含有溶液2とを混合すると、第一の処理液3が生成される。第一の処理液3においては、イオン化促進剤によりイオン交換が行なわれ、重金属類や放射性同位体などの汚染物質が汚染土1から分離される。そのような第一の処理液3は底通路6を通って接触槽5に送られる。
【0035】
接触槽5では、両回転装置7,8において、吸着容器12が回転中心軸10の回転中心10aを中心に公転するとともに回転中心12aを中心に自転し、しかも、両回転中心軸10の回転向きX7,X8が互いに逆になっているとともに、吸着容器12の回転向きY7,Y8と回転中心軸10の回転向きX7,X8とが互いに逆になっているため、複雑な乱流が生じるとともに、各吸着容器12の収容室16で吸着剤19が複雑に動く。従って、第一の処理液3と吸着容器12と吸着剤19とが激しく相対動しながら、反応槽4から接触槽5に送られた第一の処理液3が各吸着容器12の各貫通路17を何回も出入して収容室16で吸着剤19に接触する。その結果、各吸着容器12内で重金属類や放射性同位体などの汚染物質が吸着剤19に吸着されて残り、第一の処理液3から吸着剤19により汚染物質を吸着して残った第二の処理液21が、接触槽5に溜まって、接触槽5の上部に開閉可能に設けられた溢水口20から排出される。第二の処理液21では吸着剤19によりかなりの汚染物質が除去されるため、溢水口20から排出された第二の処理液21を脱水して、ミネラル分の高めた土壌として再利用することができる。各吸着容器12内で残った吸着剤19は、吸着容器12を腕部11から離脱させるとともに両外端壁15を開いて捨てることができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態にかかる汚染土浄化方法及び汚染土浄化装置について第1実施形態との相違点を中心に図4〜6を参照して説明する。
図4に示す汚染土浄化装置も、第1実施形態と同様に、既存の各種装置を利用して分別前の汚染土壌などを段階的に分別することができる分別システム(図示せず)の一環として設置され、分別された汚染土1をイオン化促進剤含有溶液2に混合させてそのイオン化促進剤によりイオン交換が行なわれた第一の処理液3を得る反応槽4と、その第一の処理液3から重金属類や放射性同位体などの汚染物質を分離する第一及び第二の接触槽5a,5bを並設した接触槽5と、第一の処理液3から汚染物質を除去して残った第二の処理液21を排出する排出槽23とを備えている。
【0037】
第1実施形態と同様な汚染土1は反応槽4に搬入される。この反応槽4の下部には前記第一の接触槽5aの下部に連通する底通路6が開閉可能に設けられている。反応槽4内の上部及び下部には攪拌装置(攪拌羽根24、攪拌ポンプ25)が設けられている。
【0038】
第一の接触槽5a内は、反応槽4に対し底通路6を介して連通する滞留室26と、第一の接触槽5aと第二の接触槽5bとの境界部上側で滞留室26より上方に設けられた接触室27とに区分され、滞留室26と接触室27とが上昇流路27aにより連通されている。接触室27には回転装置28が可動手段(相対動付与手段)として設けられている。上昇流路27aの付近で接触室27にはエア流発生装置(エア噴出口29)が設けられている。滞留室26の下部には攪拌装置(攪拌ポンプ25)が設けられている。
【0039】
第二の接触槽5b内は、第一の接触槽5aと第二の接触槽5bとの境界部で縦通路30を介して第一の接触槽5aの接触室27と連通する滞留室31と、第二の接触槽5bと排出槽23との境界部上側で滞留室31より上方に設けられた接触室32とに区分され、滞留室31と接触室32とが上昇流路32aにより連通されている。接触室32には回転装置33が可動手段(相対動付与手段)として設けられている。上昇流路32aの付近で接触室32にはエア流発生装置(エア噴出口29)が設けられている。滞留室31の下部には攪拌装置(攪拌ポンプ25)が設けられている。
【0040】
排出槽23内は第二の接触槽5bと排出槽23との境界部で縦通路34を介して第二の接触槽5bの接触室32と連通している。排出槽23内の下部には攪拌装置(攪拌ポンプ25)が設けられている。攪拌ポンプ25より上方で排出槽23内に設けられたサンドポンプ35には排出管35aが接続されている。
【0041】
前記回転装置28,33においては、図5に示すように、図示しない駆動モータにより回転する回転中心軸10の回転方向に沿って複数の腕部11が互いに間隔をあけて配設され、回転中心軸10とともに各腕部11を介して回転する円筒体36の内側の空洞で、吸着容器12が各腕部11に対し回転中心軸10の回転中心10aに対する所定の半径位置に着脱可能に取り付けられている。円筒体36の外側には回転中心10aに沿って延びる複数の羽根18が円筒体36の回転方向に沿って互いに間隔をあけて配設されている。回転装置28,33において、回転中心軸10とともに回転する腕部11の回転力により羽根18が抵抗圧力を受ける。
【0042】
図6に示すように、吸着容器12において、閉じられた外壁13は円筒状の外周壁14とその外周壁14の両端側を塞ぐ外端壁15とを有し、その外壁13の内側には収容室16が設けられているとともに、その外周壁14には入口及び出口に該当する複数の貫通路17が配設されている。両外端壁15は外周壁14に対し着脱し得る。
【0043】
吸着容器12の収容室16には重金属類や放射性同位体などの汚染物質を吸着し得る複数の吸着剤19が収容室16の容積の6〜8割程度を占めるように収容されている。吸着剤19としては、人工または天然のゼオライトや活性炭などを利用することができる。
【0044】
さて、75μm程度まで細分化された粘性土、または、その粘性土を含む濁水を主体とする汚染土1を反応槽4に搬入するとともに、イオン化傾向剤や腐食酸などを粉体または溶剤にして混合したイオン化促進剤含有溶液2を反応槽4に搬入し、反応槽4内を攪拌羽根24や攪拌ポンプ25により攪拌して汚染土1とイオン化促進剤含有溶液2とを混合すると、第一の処理液3が生成される。第一の処理液3においては、イオン化促進剤によりイオン交換が行なわれ、重金属類や放射性同位体などの汚染物質が汚染土1から分離される。そのような第一の処理液3は、底通路6を通って第一の接触槽5aの滞留室26に送られ、攪拌ポンプ25により攪拌されながら、さらに上昇流路27aから第一の接触槽5aの接触室27に送られる。
【0045】
第一の接触槽5aの接触室27では、回転装置28において、円筒体36及び各吸着容器12が回転中心軸10の回転中心10aを中心に公転するため、円筒体36の各羽根18やエア噴出口29からのエア流により攪拌及び洗浄され、両端面側が開放された円筒体36の内外で複雑な乱流が生じるとともに、各吸着容器12の収容室16で吸着剤19が複雑に動く。従って、第一の処理液3と各吸着容器12と吸着剤19とが激しく相対動しながら、反応槽4から滞留室26を経て接触室27に送られた第一の処理液3が各吸着容器12の各貫通路17を何回も出入して収容室16で吸着剤19に接触する。その結果、各吸着容器12内で重金属類や放射性同位体などの汚染物質が吸着剤19に吸着されて残り、第一の処理液3から吸着剤19により汚染物質を吸着して残った第二の処理液21(21a)が、縦通路30を通して第二の接触槽5bの滞留室31に送られ、さらに上昇流路32aから第二の接触槽5bの接触室32に送られる。
【0046】
第二の接触槽5bの接触室32においても、第一の接触槽5aの接触室27の場合と同様に処理され、第二の処理液21(21a)から吸着剤19により汚染物質を吸着して残った第二の処理液21(21b)が、縦通路34を通して排出槽23に送られ、攪拌ポンプ25により攪拌されながら、サンドポンプ35により排出管35aから排出される。第二の処理液21(21b)では吸着剤19によりかなりの汚染物質が除去されるため、排出管35aから排出された第二の処理液21(21b)を脱水して、ミネラル分の高めた土壌として再利用することができる。回転装置28,33において各吸着容器12内で残った吸着剤19は、吸着容器12を腕部11から離脱させるとともに両外端壁15を開いて捨てることができる。
【0047】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 第1,2実施形態の反応槽4において、イオン化促進剤を含む溶液2に汚染土1を混合させたので、第一の処理液3において、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土1からイオン交換により重金属類や放射性同位体などの汚染物質を容易に分離させることができる。
【0048】
(2) 第1,2実施形態の接触槽5において、吸着剤19を収容した吸着容器12を利用して第一の処理液3の汚染物質を吸着剤19により吸着し、特に、粘性土、または、その粘性土を含む濁水などの汚染土1から分離した汚染物質を吸着容器12の吸着剤19により効率良く回収することができる。
【0049】
(3) 第1,2実施形態の接触槽5において、第一の処理液3を吸着容器12の吸着剤19と第二の処理液21とに分別したので、吸着剤19を吸着容器12から排出して産業廃棄物として処分することができ、汚染物質を除去して残った第二の処理液21については再利用することができる。
【0050】
(4) 第1実施形態の接触槽5において吸着容器12が公転するとともに自転し、また、第2実施形態の接触槽5において吸着容器12が公転するので、吸着容器12の吸着剤19に対する処理液3,21の相対動を助長して、複数の貫通路17を通して収容室16に給排させた処理液3,21を吸着剤19に接触させ、処理液3,21の汚染物質を分離させ易くするとともに吸着剤19に吸着させ易くすることができる。
【0051】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 可動手段(付与手段)としては、第1実施形態の回転装置7,8や第2実施形態の回転装置28,33以外に、吸着容器12に振動を与える振動付与装置を接触槽5に設置したり、付与手段としては、反応槽4や接触槽5において処理液3,21に攪拌や振動などによる流れを与える各種の付与装置を設置したりすることができる。
【0052】
・ 図示しないが、第一の処理液3が吸着剤と接触しながら滞留して通過する吸着容器を接触槽5に設けることができる。
・ 第1,2実施形態の接触槽5において回転装置7,8,28,33の数を増減することができる。
【0053】
・ 第1,2実施形態の反応槽4と接触槽5とからなる汚染土浄化装置を複数直列または並列接続することができる。
・ 第1,2実施形態において、吸着剤19を収容する吸着容器12も吸着剤により成形することができる。また、吸着剤19を省略して吸着容器12を吸着剤としても機能させることができる。
【0054】
・ 第1,2実施形態において、反応槽4と接触槽5とを一つの槽としてまとめ、その槽に汚染土1をイオン化促進剤含有溶液2に混合させて搬入するとともに、回転装置7,8,28,33を設けることができる。
【0055】
・ 第2実施形態において、第1実施形態と同様に、吸着容器12を公転に加えて自転させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…汚染土、2…イオン化促進剤含有溶液、3,21…処理液、4…反応槽、5…接触槽、7,8…回転装置(可動手段、付与手段)、12…吸着容器、16…吸着容器の収容室、17…吸着容器の貫通路(入口、出口)、19…吸着剤、28,33…回転装置(可動手段、付与手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化促進剤を汚染土に混合させ、そのイオン化促進剤によりイオン交換を行なって、重金属類または放射性同位体または重金属類及び放射性同位体である汚染物質を汚染土から分離した第一の処理液を吸着剤に接触させ、その第一の処理液から汚染物質を吸着した吸着剤を分離して第一の処理液を吸着剤と第二の処理液とに分別することを特徴とする汚染土浄化方法。
【請求項2】
汚染物質を吸着し得る吸着剤を収容した吸着容器に第一の処理液を通して吸着剤に接触させ、汚染物質を吸着した吸着剤を吸着容器に残すとともに、汚染物質が除去された第二の処理液を吸着容器から回収して、第一の処理液から、汚染物質を吸着した吸着剤を分離することを特徴とする請求項1に記載の汚染土浄化方法。
【請求項3】
前記吸着容器に収容した吸着剤に対し相対動する処理液を接触させることを特徴とする請求項2に記載の汚染土浄化方法。
【請求項4】
重金属類または放射性同位体または重金属類及び放射性同位体である汚染物質を吸着し得る吸着剤を収容した吸着容器を有し、イオン化促進剤を混合させた汚染土でイオン化促進剤によりイオン交換が行なわれた第一の処理液をこの吸着容器に通して吸着剤に接触させて、汚染物質を吸着した吸着剤を吸着容器に残すとともに、汚染物質が吸着された第二の処理液を吸着容器から回収して、第一の処理液から、汚染物質を吸着した吸着剤を分離する槽を備えたことを特徴とする汚染土浄化装置。
【請求項5】
イオン化促進剤を汚染土に混合させる反応槽と、
重金属類または放射性同位体または重金属類及び放射性同位体である汚染物質を吸着し得る吸着剤を収容した吸着容器を有し、イオン化促進剤を混合させた汚染土でイオン化促進剤によりイオン交換が行なわれた第一の処理液をこの吸着容器に通して吸着剤に接触させて、汚染物質を吸着した吸着剤を吸着容器に残すとともに、汚染物質が吸着された第二の処理液を吸着容器から回収して、第一の処理液から、汚染物質を吸着した吸着剤を分離する接触槽と
を備えたことを特徴とする汚染土浄化装置。
【請求項6】
前記吸着容器は、吸着剤を収容した収容室と、その収容室に処理液を供給する入口と、その収容室から処理液を排出する出口とを備えたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の汚染土浄化装置。
【請求項7】
前記吸着容器の収容室とその収容室に収容された吸着剤との間で相対動を生じさせる付与手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の汚染土浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86053(P2013−86053A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230743(P2011−230743)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(511063918)
【出願人】(591104859)
【Fターム(参考)】