説明

汚染土無害化システム

【課題】汚染土を乾燥させる際に汚染物質の揮発を抑制することで、乾燥装置からの排気の処理に要するコストを低減できる汚染土無害化システムを提供すること。
【解決手段】汚染土に含有されている汚染物質を分解することにより、汚染土を無害化する汚染土無害化システム1であって、汚染土を乾燥させる乾燥機21と、乾燥機21にて乾燥された汚染土の汚染物質を、減圧還元加熱にて分解する減圧還元加熱装置24と、乾燥機21の内部の汚染土の温度を、汚染物質の揮発を抑制する所定の温度範囲内に維持するように、乾燥機21を制御する乾燥機制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を減圧還元加熱にて分解することにより汚染土を無害化するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有害物質による土壌汚染が顕在化し、人の健康や自然環境への影響について懸念が拡大しており、汚染土を無害化するための技術の必要性が高まっている。特に、汚染土の最終処分場の確保が困難になりつつあることもあり、様々な汚染現場に対応可能かつ低コストなオンサイト型の汚染土無害化技術が求められている。
【0003】
このような要求に対して、ダイオキシン類やPCB(ポリ塩化ビフェニル)等の有機塩素系の汚染物質を無害化する方法として、減圧還元加熱分解脱塩素化処理が知られている。減圧還元加熱分解脱塩素化処理とは、減圧雰囲気下で汚染土を加熱処理することにより、当該汚染土中のダイオキシン類を還元・分解して無害化する処理をいう。また、減圧還元加熱分解脱塩素化処理における処理時間の短縮や処理効率の向上を図った処理システムとして、汚染土を乾燥及び粉砕する気流乾燥機、気流乾燥機から排出された汚染土を粒径によって分別する分級機、及び、分別された汚染土を加熱して汚染物質を還元・分解する加熱分解脱塩素化装置を備えた処理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−275973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の減圧還元加熱分解脱塩素化処理による処理システムにおいては、高温の乾燥用空気を乾燥装置内部に導入することにより汚染土の乾燥を行い、後段の減圧還元加熱分解脱塩素化処理の効率向上や反応の安定化を図っている。従って、PCBのような比較的揮発性の高い汚染物質が汚染土に含有されている場合、当該汚染物質が大量に揮発し、乾燥用空気や汚染土から蒸発した水蒸気と共に乾燥装置から排気される可能性があった。この場合、最終的に乾燥用空気を大気中に放出するためには、当該乾燥用空気内に揮発した汚染物質を無害化しなければならず、汚染物質に対応した適切な処理装置を設けなければならなかった。例えば、揮発したPCBが乾燥用空気に含まれている場合には、このPCBを高温処理等しなければならない。しかし、乾燥用空気には汚染土から蒸発した大量の水蒸気も含まれているため、PCBと共に水蒸気も高温処理に導入されてしまう。従って、処理対象の熱容量が増大し、高温処理に要するエネルギーが非常に大きなものとなり、処理コストの増大を招いていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、汚染土を乾燥させる際に汚染物質の揮発を抑制することで、乾燥装置からの排気の処理に要するコストを低減できる汚染土無害化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の汚染土無害化システムは、汚染土に含有されている汚染物質を分解することにより、当該汚染土を無害化する汚染土無害化システムであって、前記汚染土を乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置にて乾燥された前記汚染土の前記汚染物質を、減圧還元加熱にて分解する減圧還元加熱装置と、前記乾燥装置の内部の前記汚染土の温度を、前記汚染物質の揮発を抑制する所定の温度範囲内に維持するように、前記乾燥装置を制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の汚染土無害化システムは、請求項1に記載の汚染土無害化システムにおいて、前記汚染物質がPCBであり、前記温度範囲が220℃以下であること、を特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の汚染土無害化システムは、請求項1又は2のいずれか一項に記載の汚染土無害化システムにおいて、前記乾燥装置の内部の前記汚染土を冷却する冷却手段を備え、前記温度制御手段は、前記汚染土の温度が前記温度範囲を超過すると判断した場合において、前記冷却手段によって当該汚染土を冷却させること、を特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の汚染土無害化システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の汚染土無害化システムにおいて、一台の前記減圧還元加熱装置に対して、複数台の前記乾燥装置を備えること、を特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の汚染土無害化方法は、汚染土に含有されている汚染物質を分解することにより、当該汚染土を無害化する汚染土無害化方法であって、前記汚染土の温度を前記汚染物質の揮発を抑制する所定の温度範囲内に維持させつつ、前記汚染土を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程において乾燥された前記汚染土の前記汚染物質を、減圧還元加熱にて分解する減圧還元加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1又は5に記載の発明によれば、温度制御手段によって乾燥装置の制御を行い、乾燥装置の内部の汚染土の温度を所定温度範囲内に保持しているので、乾燥時における汚染土からの汚染物質の揮発を抑制することができる。従って、汚染土から蒸発した蒸気ガスについては集塵機や蒸気ガス洗浄槽、脱臭触媒装置によって処理を行うことができるので、燃焼処理を行う必要がなく、処理に要するコストを著しく低減することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、PCBを含有する汚染土の乾燥時の温度を220℃以下とすることにより、PCBの汚染土からの揮発量を大幅に低減することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、乾燥装置の内部の汚染土の温度が所定温度を超過した場合、温度制御手段は冷却手段によって当該汚染土を冷却させるので、汚染土から汚染物質が大量に揮発することを回避することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、一台の減圧還元加熱装置に対して複数台の乾燥装置を備えているので、汚染土の含水率の変動等、必要とされる乾燥能力の変動に対して迅速に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る汚染土無害化システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態に共通の基本的概念について説明する。実施の形態に係る汚染土無害化システムは、汚染物質を含有する汚染土の無害化を目的とするものである。
【0018】
実施の形態に係る汚染土無害化システムの設置対象は任意であり、例えば、化学工場などの工場跡地や、廃棄物処分場、河口等に設置し、汚染土に含まれるダイオキシン類やPCB等を無害化させることができる。
【0019】
実施の形態に係る汚染土無害化システムの特徴の一つは、概略的に、乾燥装置に投入されている汚染土の温度を、汚染物質の揮発を抑制可能な温度範囲内に制御することにある。これにより、汚染土に含有されている水分は蒸発させる一方で、汚染土に含有されている汚染物質の揮発を抑制し、後段の減圧還元加熱分解脱塩素化処理において汚染物質の大部分を処理させることができ、全体の処理コストを低減することができる。
【0020】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る実施の形態の具体的内容について説明する。まず、汚染土無害化システムの全体構成、及び、当該汚染土無害化システムによる汚染土無害化処理の概略を説明する。次に、本実施の形態に係る汚染土無害化システムの特徴である乾燥装置の構成、及び、当該乾燥装置に投入された汚染土の温度制御処理についての詳細を説明する。
【0021】
(汚染土無害化システムの構成)
図1は汚染土無害化システムの概略図である。図1に示すように、汚染土無害化システム1は、主に白抜きのブロックで示された装置を含む汚染土処理系統、主に斜線のブロックで示された装置を含む蒸気ガス処理系統、及び、主に格子のブロックで示された装置を含む乾留ガス処理系統の3系統に大別され、これらの系統の内の複数系統、あるいは全ての系統において共通して用いられる装置として、熱交換器50、活性炭吸着槽60、燃料供給装置70、排熱利用配管80、及び、制御盤90を備えている。
【0022】
(汚染土無害化システムの構成−汚染土処理系統)
汚染土処理系統は、汚染土無害化システム1に投入された汚染土の処理を行うための処理系統であり、土壌ホッパー20、乾燥機21、吹込装置22、搬送装置23、減圧還元加熱装置24、及び、冷却装置25を備えている。
【0023】
(汚染土無害化システムの構成−土壌ホッパー20)
土壌ホッパー20は、汚染土を乾燥機21に供給するためのものである。土壌ホッパー20の具体的な構成は公知であるので説明は省略するが、例えば、作業者によって当該土壌ホッパー20に投入された汚染土を所定の送出量で送出し、図示しない移送装置を介して乾燥機21に供給するように構成されている。
【0024】
(汚染土無害化システムの構成−乾燥機21)
乾燥機21は、土壌ホッパー20から供給された汚染土を乾燥させるためのものであり、特許請求の範囲における乾燥装置に対応している。乾燥機21の具体的な構成は任意であるが、例えば、ロータリーキルン式や、ベルトコンベヤ式、あるいはバッチ式等の乾燥機を用いることができる。乾燥機21の構成の細部については後述する。
【0025】
(汚染土無害化システムの構成−吹込装置22)
吹込装置22は、乾燥機21における後述する回転炉21cの内部に冷却用気体を吹き込むためのものであり、特許請求の範囲における冷却手段に対応している。吹込装置22は、図示しない送風ファン及び図示しない吹込管を備えている。送風ファンは、冷却用気体を送風する。吹込管は、一端が送風ファンに接続され、他端は乾燥機21の回転炉21cに接続されている。これにより、送風ファンから送風された冷却用気体は、吹込管を通過して回転炉21cの内部に向かって吹き込まれ、汚染土を直接冷却する。なお、冷却用気体として用いられる気体は任意であるが、例えば、外気を冷却用気体として送風ファンから送風させることができる。
【0026】
(汚染土無害化システムの構成−搬送装置23)
搬送装置23は、乾燥機21から排出された汚染土を減圧還元加熱装置24に搬送するためのものである。搬送装置23の具体的な構成は任意であるが、例えば、密閉型のベルトコンベヤ等を用いることで、汚染土を外部に飛散させることなく搬送を行うことが出来る。
【0027】
(汚染土無害化システムの構成−減圧還元加熱装置24)
減圧還元加熱装置24は、乾燥機21で乾燥された汚染土を無害化するためのものである。減圧還元加熱装置24としては、ロータリーキルン方式の加熱炉を用いることができる。図2は減圧還元加熱装置24の構成の概略を示した図であり、図2(a)は減圧還元装置の全体の側面図(一部を破断して示す)、図2(b)は図2(a)における領域Aの拡大図、図2(c)は図2(a)における領域Bの拡大図である。また、図3は、回転炉24cの内部構造を示した側面図である。図2に示すように、減圧還元加熱装置24は、燃焼室24a、加熱部24b、回転炉24c、及び、駆動部24dを備えている。
【0028】
燃焼室24aは、加熱部24bの燃焼スペースを確保するためのものであり、回転炉24cを覆うように設けられている。燃焼室24aは、当該燃焼室24a内部の気体を外部に排出するための排気出口24eを備えている。この排気出口24eには、排熱利用配管80(図2では省略)が接続されており、回転炉24cを加熱した後の燃焼ガスが、当該排気出口24eから当該排熱利用配管80を経由して乾燥機21へと供給される。
【0029】
加熱部24bは、減圧還元加熱装置24における汚染土を加熱するものである。具体的には、燃焼室24a内部でLPG等の燃料を燃焼させ、発生した熱によって、回転炉24cの炉壁を介して当該回転炉24cの内部の汚染土を間接加熱する。
【0030】
回転炉24cは、当該回転炉24cの内部に投入された汚染土を移動させながら加熱する略円筒形の炉であり、燃焼室24aの内部を貫通するように略水平状に、かつ、回転自在に設置されている。回転炉24cの一方の端部には汚染土の供給口24f、他方の端部には汚染土の排出口24gが設けられており、これら供給口24f及び排出口24gの周囲には、粉塵や乾留ガスの漏出防止のためのフード24hが設けられている。供給口24f側のフード24hは、後述する乾留ガス配管40を介して乾留ガス処理系統に接続されており、排出口24g側のフード24hは、冷却装置25と接続されている。
【0031】
また、図3に示すように、回転炉24cの内周面には螺旋状の送り羽根24iが設けられており、回転炉24cの内部の汚染土は当該回転炉24cの回転に伴って送り羽根24iによって回転炉24cの一方の端部から他方の端部まで移動し、排出される。また、回転炉24cの内部には、汚染土の温度計測のための温度計測器24jが設置されている。
【0032】
駆動部24dは、回転炉24cを所定の回転速度で回転させるものであり、チェーンやギア等を介して回転炉24cと連結されている。
【0033】
ここで、回転炉24cの内部の気体は、乾留ガス処理系統へと吸引されているため、回転炉24cの内部は減圧還元性雰囲気が保たれている。また、回転炉24cは、燃焼室24a内部に供給された燃焼ガスによって外周面側から加熱されており、回転炉24cの外周から内周に伝達された熱によって、当該回転炉24cの内部の汚染土が加熱される。このように、減圧還元性雰囲気の中で汚染土が所定温度範囲に加熱及び保持されることにより、当該汚染土が無害化される。
【0034】
(汚染土無害化システムの構成−冷却装置25)
図1において、冷却装置25は、減圧還元加熱装置24で無害化された汚染土を冷却するものである。汚染土にダイオキシン類が含まれている場合、減圧還元加熱装置24において所定温度まで加熱後保持されることで一旦無害化された場合でも、その後の温度低下時に一定の温度範囲で長時間放置されることによって、汚染土中の金属が触媒となってダイオキシン類が再合成されることがある。そこで、無害化された汚染土を冷却装置25によって急速に冷却することによりダイオキシン類の再合成を防止することができる。図4は冷却装置25の側面図である(一部を破断して示す)。図4に示すように、冷却装置25は、回転体25a、駆動部25b、給水管25c、及び、水噴霧装置25dを備えている。
【0035】
回転体25aは、内部に投入された無害化された汚染土を移動させながら冷却させる略円筒形の回転体であり、長軸方向が略水平となるような向きで、回転自在に設置されている。回転体25aの一方の端部には汚染土の供給口25e、他方の端部には汚染土の排出口25fが設けられている。また、回転体25aの内部には螺旋状の送り羽根25gを設け、回転体25aを回転させることで内部の汚染土を移動させることができる。また、回転体25aの内部には、図示しない温度計測器が設置されている。温度計測器は、回転体25aの内部の所定位置における汚染土の温度を計測し、計測したデータを制御盤90に出力する。
【0036】
駆動部25bは、回転体25aを所定の回転速度で回転させるものであり、歯車等を介して回転体25aと連結されている。
【0037】
給水管25cは、回転体25aの外周面に冷却水を流すことにより、回転体25aの壁面を通じて内部の汚染土を間接的に冷却するためのものである。具体的には、回転体25aの長軸方向に沿って給水管25cが配置され、この給水管25cに所定間隔で放水ヘッド25hが設けられている。放水ヘッド25hの放水方向は回転体25aに向けられている。給水管25cに冷却水が供給されると、放水ヘッド25hから回転体25aの外周面に冷却水が放水され、冷却された回転体25aの壁面を介して内部の汚染土が間接冷却される。
【0038】
水噴霧装置25dは、冷却能力低下時に回転体25aの内部の汚染土に直接冷却水を噴霧するためのものである。具体的には、冷却装置25の外部において、水噴霧装置25dの一方の端部と給水管25cとが図示しないバルブを介して接続されている。水噴霧装置25dの他方の端部は回転体25aの内部に配置されており、当該端部には水を噴霧させる噴霧口25iが設けられている。所定の操作手段によってバルブが操作され、水噴霧装置25dに冷却水が供給されると、噴霧口25iから回転体25aの内部の汚染土に対して冷却水が噴霧され、汚染土が直接冷却される。
【0039】
(汚染土無害化システムの構成−蒸気ガス処理系統)
図1において、蒸気ガス処理系統は、乾燥機21において乾燥された汚染土から蒸発した水分等を含む蒸気ガスの処理を行うための処理系統であり、蒸気ガス配管30、緊急用配管31、集塵機32、活性炭供給装置33、保温ガス配管34、集塵ダスト配管35、集塵ダスト回収機36、蒸気ガス洗浄槽37、及び、脱臭触媒装置38を備えている。図5は、蒸気ガス処理系統の装置構成を模式的に表した概略図である。ここで、本実施の形態の説明における「蒸気ガス」とは、乾燥機21において乾燥された汚染土から蒸発した蒸気、当該汚染土から揮発したPCBや臭気分等のガス、当該汚染土から飛散した粉塵や、当該粉塵に付着しているダイオキシン等を含み、あるいは、これらの物質のうちの一部が除去・分解等された、ガス状物質をいう。
【0040】
(汚染土無害化システムの構成−蒸気ガス配管30)
蒸気ガス配管30は、蒸気ガスを上述の蒸気ガス処理系統に属する装置に所定の順序で導入させるためのものであり、前後に連続した処理を行う装置を相互に接続する。
【0041】
(汚染土無害化システムの構成−緊急用配管31)
緊急用配管31は、乾燥機21において加熱された土壌の温度が所定温度範囲を上回った場合や、乾燥機21から蒸気ガス配管30に排出された蒸気ガスが所定温度を下回った場合等の緊急時において、蒸気ガスを集塵機32へと導入させずに、乾留ガス処理系統における後述する高温集塵機41へと導入させるためのものである。具体的には、乾燥機21と集塵機32との間において、切替ダンパー39を介して緊急用配管31の一端が蒸気ガス配管30に接続されている。また、緊急用配管31の他端は、乾留ガス処理系統における後述する乾留ガス配管40に接続されている。なお、切替ダンパー39は、乾燥機21における後述する蒸気ガス温度計測器から出力される温度信号に基づいて、制御盤90によって制御される。
【0042】
(汚染土無害化システムの構成−集塵機32)
集塵機32は、蒸気ガスに含まれる粉塵を捕集するためのものである。集塵機32は、蒸気ガス配管30を介して乾燥機21と接続されており、乾燥機21の内部で発生した蒸気ガスが当該集塵機32へと導入される。また、集塵機32は集塵ダスト配管35を介して集塵ダスト回収機36と接続されており、集塵機32において捕集された粉塵は、集塵ダスト配管35を経由して集塵ダスト回収機36へと搬送される。集塵機32の具体的構成は任意であるが、例えば、サイクロン式集塵機32aやバグフィルタ式集塵機32bを用いることができ、あるいは、これらの集塵機を組み合わせて用いることもできる。本実施の形態においては、図5に示したように、1台のサイクロン式集塵機32a及び2台のバグフィルタ式集塵機32bを用いた例を示している。また、これらの集塵機32の周囲を覆うように保温ジャケット32cが設けられており、当該保温ジャケット32cの内部に保温ガスを送風することで集塵機32の温度を所定温度範囲内に保持することができる。
【0043】
(汚染土無害化システムの構成−活性炭供給装置33)
活性炭供給装置33は、所定量の活性炭を集塵機32に吹き込むためのものであり、集塵機32の入り口側において蒸気ガス配管30に接続されている。蒸気ガスに含まれる粉塵を活性炭に吸着させ、粉塵が吸着した活性炭を集塵機32によって捕集させることにより、粉塵の捕集率を高めることができる。捕集された活性炭は、集塵機32に捕集された粉塵と共に集塵ダスト配管35によって搬送される。
【0044】
(汚染土無害化システムの構成−保温ガス配管34)
保温ガス配管34は、集塵機32を所定温度以上に保持するために、集塵機32の周囲を覆っている保温ジャケット32cの内部に保温ガスを供給し、集塵機32の周囲に対流させるためのものである。
【0045】
(汚染土無害化システムの構成−集塵ダスト配管35)
集塵ダスト配管35は、集塵機32によって捕集された粉塵を、集塵ダスト回収機36へと搬送させるためのものである。集塵ダスト配管35の具体的な構成は任意であるが、例えば、当該集塵ダスト配管35の一方の端部には粉塵搬送用のエアーを供給する搬送エアー供給機35aを接続し、他方の端部を集塵ダスト回収機36に接続しても良い。この場合、エアーの温度低下によって集塵ダスト配管35が閉塞することを防止するため、乾燥機21の加熱に用いられた後に乾燥機21から排出された熱風を搬送用エアーとして利用しても良い。あるいは、捕集された粉塵をベルトコンベヤによって集塵ダスト回収機36へと移送させることもできる。
【0046】
(汚染土無害化システムの構成−集塵ダスト回収機36)
集塵ダスト回収機36は、集塵ダスト配管35によって搬送された粉塵を回収するためのものであり、例えば、バグフィルタ式集塵機が用いられる。集塵ダスト回収機36によって回収された粉塵は、乾燥機21にて乾燥された汚染土と共に減圧還元加熱装置24に投入される。
【0047】
(汚染土無害化システムの構成−蒸気ガス洗浄槽37)
蒸気ガス洗浄槽37は、集塵機32を通過した蒸気ガスに微量に含まれている粉塵やダイオキシン等を除去するためのものである。ダイオキシンは粉塵に吸着しているため、この粉塵を蒸気ガス洗浄槽37によって除去することにより、蒸気ガスからダイオキシンを除去することができる。蒸気ガス洗浄槽37の具体的な構成は任意であるが、例えば、蒸気ガスと洗浄液とを気液混合して、微粒化された洗浄液によって粉塵を捕集させるウェットスクラバーを用いることができる。
【0048】
(汚染土無害化システムの構成−脱臭触媒装置38)
脱臭触媒装置38は、蒸気ガス洗浄槽37を通過した蒸気ガスに含まれている微量の臭気分やPCB等を除去するためのものである。脱臭触媒装置38は、所定温度以上に昇温された蒸気ガスと触媒とを接触させることにより、蒸気ガスに含まれている臭気分やPCB等を酸化させる。なお、脱臭触媒装置38において酸化反応を生じさせるために、乾留ガス処理系統における後述する排ガス酸化装置45を通過した高温の乾留ガスから熱交換器50を介して加熱され、所定温度以上となった蒸気ガスが、当該脱臭触媒装置38に導入される。脱臭触媒装置38の具体的な構成については公知であるため説明を省略する。
【0049】
(汚染土無害化システムの構成−乾留ガス処理系統)
図1において、乾留ガス処理系統は、減圧還元加熱処理の過程で汚染土から分離したダイオキシン類等を含む乾留ガスの処理を行うための処理系統であり、乾留ガス配管40、高温集塵機41、消石灰供給装置42、造粒機43、バイパス配管44、排ガス酸化装置45、排ガス冷却装置46、集塵機47、及び、脱硫装置48を備えている。図6は、乾留ガス処理系統の装置構成を模式的に表した概略図である。
【0050】
(汚染土無害化システムの構成−乾留ガス配管40)
乾留ガス配管40は、乾留ガスを上述の乾留ガス処理系統に属する装置に所定の順序で導入させるためのものであり、前後に連続した処理を行う装置を相互に接続する。また、図1の減圧還元加熱装置24と高温集塵機41との間において、蒸気ガス処理系統における緊急用配管31の一端が乾留ガス配管40に接続されており、緊急時には蒸気ガスが乾留ガス処理系統に導入されるようになっている。
【0051】
(汚染土無害化システムの構成−高温集塵機41)
高温集塵機41は、高温の乾留ガスに含まれる粉塵を捕集するためのものであり、乾留ガス配管40を介して減圧還元加熱装置24の回転炉24cと接続されているとともに、乾留ガス配管40を介して排ガス酸化装置45と接続されている。回転炉24cの内部において汚染土から分離された乾留ガスは、乾留ガス配管40を経由して高温集塵機41へと導入され、当該乾留ガスに含まれる粉塵が除去された後、排ガス酸化装置45へと排出される。高温集塵機41によって捕集された粉塵は、造粒機43へと移送される。高温集塵機41によって粉塵が捕集され、排ガス酸化装置45への粉塵の流入が防止されることにより、排ガス酸化装置45の内部における煤の発生を防止でき、排ガス酸化装置45を停止してメンテナンスを行う必要性を低減することができる。なお、高温集塵機41の具体的な構成は任意であるが、例えば、セラミックフィルターを使用して耐熱性能を高めた高温集塵機41を用いることができる。
【0052】
(汚染土無害化システムの構成−消石灰供給装置42)
図6において、消石灰供給装置42は、乾留ガスに含まれている酸性ガスを中和するために、当該乾留ガスに消石灰を投入するためのものである。本実施の形態においては、乾留ガス系統に属する装置を酸性ガスによる腐食から保護するため、高温集塵機41に導入される前に消石灰を投入している。すなわち、高温集塵機41よりも減圧還元加熱装置24側において消石灰供給装置42を乾留ガス配管40に接続している。但し、消石灰供給装置42の接続位置は任意であり、高温集塵機41よりも後段において、例えば排ガス冷却装置46と集塵機47との間における乾留ガス配管40に接続し、当該乾留ガス配管40を流れている乾留ガスに消石灰を投入させることもできる。
【0053】
(汚染土無害化システムの構成−造粒機43)
造粒機43は、高温集塵機41によって捕集された粉塵を、所定の大きさを有する粒体として形成するためのものである。高温集塵機41によって捕集された粉塵は、図示しない粉塵計量機によって計量された後、図示しない混練機に導入される。ここで、先に計量された粉塵の量に応じて、図示しないサイロから混練機にバインダーが投入されると共に、図示しない給水機からは水が供給される。混練機によってバインダー及び水と混練された粉塵は、造粒機43によって粒体に形成される。このように、造粒機43によって粉塵を粒体とし、当該粒体を減圧還元加熱装置24に投入することで、粉塵が再度乾留ガス処理装置に流入することを防ぐことができる。なお、造粒機43の具体的な構成は公知であるので説明を省略する。
【0054】
(汚染土無害化システムの構成−バイパス配管44)
バイパス配管44は、高温集塵機41への導入前における乾留ガスの温度が所定温度以下となった場合において、当該乾留ガスを高温集塵機41に導入させず、当該高温集塵機41の後段にある排ガス酸化装置45に導入させるものである。具体的には、消石灰供給装置42と乾留ガス配管40との接続部よりも減圧還元加熱装置24側において、切替ダンパー49を介してバイパス配管44の一方の端部と乾留ガス配管40とが接続されている。また、バイパス配管44の他方の端部は、乾留ガス配管40を介して排ガス酸化装置45と接続されている。また、切替ダンパー49の近傍に、乾留ガスの温度を計測するための図示しない温度計測器が設けられている。温度計測器から出力される温度信号に基づいて、制御盤90によって切替ダンパー49の切替え動作が制御される。
【0055】
(汚染土無害化システムの構成−排ガス酸化装置45)
排ガス酸化装置45は、高温集塵機41を通過した乾留ガスに含まれるダイオキシン類等を高温焼却処理するためのものである。排ガス酸化装置45は、図示しない流入部、焼却部、及び、流出部を備えている。流入部は、乾留ガスが流入する部分であり、乾留ガス配管40を介して高温集塵機41及びバイパス配管44と接続されている。焼却部は、流入部から流入した乾留ガスを焼却する部分である。焼却部には、LPG等の燃料及び助燃空気が供給され、乾留ガスを焼却させる。流出部は、焼却部において焼却された乾留ガスが流出する部分であり、乾留ガス配管40を介して熱交換器50に接続されている。
【0056】
(汚染土無害化システムの構成−排ガス冷却装置46)
排ガス冷却装置46は、熱交換器50を通過した乾留ガスを冷却するためのものである。排ガス冷却装置46における乾留ガスの流入側は、乾留ガス配管40を介して熱交換器50に接続されており、流出側は、乾留ガス配管40を介して集塵機47に接続されている。なお、排ガス冷却装置46の具体的な構成は任意であり、水冷式ガス冷却装置や、空冷式ガス冷却装置を用いることができる。
【0057】
(汚染土無害化システムの構成−集塵機47)
集塵機47は、排ガス冷却装置46を通過した乾留ガスに微量に残留している粉塵を捕集するためのものである。集塵機47における乾留ガスの流入側は、乾留ガス配管40を介して排ガス冷却装置46と接続されており、流出側は、乾留ガス配管40を介して脱硫装置48と接続されている。なお、集塵機47の具体的な構成は任意であるが、サイクロン式集塵機47aや、バグフィルタ式集塵機47bを用いることができる。
【0058】
(汚染土無害化システムの構成−脱硫装置48)
脱硫装置48は、集塵機47を通過した乾留ガスに含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物を除去するためのものである。脱硫装置48における乾留ガスの流入側は、乾留ガス配管40を介して集塵機47と接続されており、流出側は、乾留ガス配管40を介して活性炭吸着槽60に接続されている。脱硫装置48の具体的な構成は任意であるが、例えば、アルカリスラリー及びアルカリ溶液を吸収剤とする湿式脱硫装置を用いることができる。
【0059】
(汚染土無害化システムの構成−熱交換器50)
熱交換器50は、乾留ガス処理系統において排ガス酸化装置45を通過した乾留ガスと、蒸気ガス処理系統において蒸気ガス洗浄槽37を通過した蒸気ガスとの間で、熱交換を行わせるためのものである。熱交換器50の具体的な構成は任意であるが、例えば、内筒と外筒との二重の筒を備えた輻射式熱交換器を用いることができる。乾留ガスは、熱交換器50において蒸気ガスによって熱を奪われるので、後段の排ガス冷却装置46の効率が向上される。また、蒸気ガスは、熱交換器50において乾留ガスから熱を受け取ることで、後段の脱臭触媒装置38における触媒反応に必要な温度まで加温される。
【0060】
(汚染土無害化システムの構成−活性炭吸着槽60)
図1において、活性炭吸着槽60は、蒸気ガス処理系統における脱臭触媒装置38を通過した蒸気ガス及び乾留ガス処理系統における脱硫装置48を通過した乾留ガスに、微量に粉塵や臭気分等が残留していた場合に、これを吸着するためのものである。活性炭吸着槽60の内部を排ガスが通過する際、排ガスに含まれている粉塵や臭気分等が活性炭に吸着・除去される。活性炭吸着槽60の流入側は、図示しない配管を介して脱臭触媒装置38及び脱硫装置48と接続されており、流出側は、排ガスを大気中に排気するための煙突100に接続されている。なお、活性炭吸着槽60の具体的な構成は公知であるため、説明を省略する。
【0061】
(汚染土無害化システムの構成−燃料供給装置70)
燃料供給装置70は、乾燥機21、減圧還元加熱装置24、及び、排ガス酸化装置45に、燃料及び助燃空気を供給するためのものである。
【0062】
(汚染土無害化システムの構成−排熱利用配管80)
排熱利用配管80は、減圧還元加熱装置24の排熱を乾燥機21において利用させるためのものである。具体的には、排熱利用配管80の一方の端部は減圧還元加熱装置24の燃焼室24aに設けられた排気ファンに接続され、他方の端部は乾燥機21の後述する燃焼室21aに接続されている。減圧還元加熱装置24の燃焼室24aの内部において、加熱部24bが燃料を燃焼させることで発生した燃焼ガスは、回転炉24cを加熱した後に、排熱利用配管80を経由して乾燥機21の燃焼室21aに導入される。
【0063】
(汚染土無害化システムの構成−制御盤90)
制御盤90は、汚染土無害化システム1の動作の制御を行うためのものである。図7は、制御盤90の電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。図7に示すように、制御盤90は、乾燥機制御部91、減圧還元加熱装置制御部92、冷却装置制御部93、蒸気ガス処理制御部94、乾留ガス処理制御部95、入力部96、及び、記憶部97を備えている。乾燥機制御部91は、乾燥機21及び吹込装置22の制御を行うものであり、特許請求の範囲における温度制御手段に対応している。減圧還元加熱装置制御部92は、減圧還元加熱装置24の制御を行う。冷却装置制御部93は、冷却装置25の制御を行う。蒸気ガス処理制御部94は、蒸気ガス処理系統の緊急用配管31に対する切替ダンパー39の切替制御を行う。乾留ガス処理制御部95は、乾留ガス処理系統のバイパス配管44に対する切替ダンパー49の切替制御を行う。入力部96は、汚染土の含水率等の性状や投入量等、制御盤90による制御に用いられる運転情報を当該制御盤90に入力させるためのものである。記憶部97は、入力部96を介して制御盤90に入力された運転情報を格納する。
【0064】
なお、制御盤90の具体的構成は任意であるが、例えば、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラム、所要データを格納するための内部メモリ、及び、これらのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成される。
【0065】
(汚染土無害化システムによる処理の流れ)
次に、汚染土無害化システム1によって行われる汚染土無害化処理の概略を説明する。図8は、汚染土無害化処理の流れを示したフローチャートである。
【0066】
(汚染土無害化システムによる処理の流れ−汚染土)
まず、汚染土の処理の流れについて説明する。処理の開始時には、分級や汚染土測定等の所定の前段階処理を経た汚染土が、土壌ホッパー20に投入されている。土壌ホッパー20に投入された汚染土は、まず、所定の送出量にて当該土壌ホッパー20から送出され、移送装置によって乾燥機21に移送される(ステップSA−1)。乾燥機21は乾燥機制御部91によって制御されており、乾燥機21に投入された汚染土の温度が所定温度範囲内に保持され、当該汚染土が乾燥される(ステップSA−2)。この乾燥機制御部91による汚染土の温度制御処理の詳細は後述する。乾燥機21によって乾燥された汚染土は、当該乾燥機21から排出される(ステップSA−3)。
【0067】
乾燥機21から排出された汚染土は、搬送装置23によって、減圧還元加熱装置24へと搬送される(ステップSA−4)。減圧還元加熱装置24に搬送された汚染土は、供給口24fから回転炉24cの内部に投入される(ステップSA−5)。回転炉24cに投入された汚染土は、当該回転炉24cの炉壁を介して、燃焼室24aにおける燃焼ガス等から加熱され、減圧還元加熱処理が行われる(ステップSA−6)。
【0068】
ここで、ステップSA−6における減圧還元加熱処理について説明する。図9は減圧還元加熱処理の流れを示したフローチャートである。汚染土に含まれるダイオキシン類やPCB等を当該汚染土から分離し、減圧還元加熱にて分解するためには、汚染土の温度が約570℃以上、望ましくは約670℃以上で10分間以上保持されるように、減圧還元加熱装置24を制御する必要がある。上記温度範囲に汚染土を保持するために必要となる加熱量は、減圧還元加熱装置24に投入される汚染土の投入量等によって変動する。このため、減圧還元加熱装置制御部92は、汚染土の投入量等の運転情報を取得する(ステップSB−1)。この運転情報は、例えば、土壌ホッパー20から取得でき、あるいは、操作者によって予め記憶部97に格納される。そして、減圧還元加熱装置制御部92は、当該取得した運転情報に対応する加熱量を決定する(ステップSB−2)。例えば、記憶部97には、汚染土の投入量、及び汚染土の減圧還元加熱処理に適した加熱量であって当該汚染土の温度が約570℃以上になるような加熱量を相互に関連付けて構成された制御テーブルが予め格納されており、この制御テーブルを参照して加熱量を決定し、当該決定した加熱量の加熱を行うように加熱部24bを制御する(ステップSB−3)。
【0069】
さらに、減圧還元加熱装置制御部92は、汚染土の投入直後から所定時間の温度変化を温度計測器24jによって計測させ、計測した温度変化率と加熱量との関係によって、上記温度範囲を目標とした加熱部24bの予測制御を行う(ステップSB−4)。すなわち、減圧還元加熱装置制御部92は、ステップSB−2で決定した加熱量、及び当該加熱量にて運転を行った際に温度計測器24jによって計測された汚染土の温度を記憶部97に所定間隔で運転履歴情報として格納し、当該格納された運転履歴情報に基づいて、加熱量に対する汚染土の温度のトレンド分析を行い、このトレンド分析結果を参照して、加熱部24bの制御を行う。例えば、加熱量の変化分に対する汚染土の温度の変化分の傾きを算定すると共に、加熱量の変化から対応する汚染土の変化までの遅れ時間を特定し、これらの傾き及び遅れ時間を基準として、所望の汚染土の温度に対する適切な加熱量を算定して、当該算定した加熱量にて加熱部24bを制御する。加熱部24bに加熱された回転炉24cの内部では、汚染土に含まれるダイオキシン類やPCB等が当該汚染土から分離され、減圧還元加熱にて分解される。この時に汚染土から分離したダイオキシン類やPCB等を含む乾留ガスは、回転炉24cの供給口24f側のフード24hから、乾留ガス配管40へと排出される。
【0070】
ここで、汚染土の処理の流れについての説明に戻る。減圧還元加熱処理が完了し、回転炉24cの内部を排出口24gまで移動した汚染土は、排出口24gから排出される(ステップSA−7)。減圧還元加熱装置24の回転炉24cから排出された汚染土は、冷却装置25の回転体25aへと投入される(ステップSA−8)。回転体25aの供給口25eから回転体25aの内部に投入された汚染土は、回転体25aの外周面に放水されている冷却水によって、当該回転体25aの壁面を介して間接冷却される(ステップSA−9)。冷却装置制御部93は、回転体25aの内部の汚染土の温度上昇等に基づいて、冷却装置25の冷却能力が低下していると判定した場合には(ステップSA−10、Yes)、水噴霧装置25dによって汚染土に対して冷却水の噴霧を行わせ、当該汚染土を直接冷却させる(ステップSA−11)。回転体25aの内部を排出口25fまで移動した汚染土は、排出口25fから排出される(ステップSA−12)。排出された汚染土は、無害化された土として所定の搬出手段により搬出される。
【0071】
(汚染土無害化システムによる処理の流れ−蒸気ガス)
次に、乾燥機21における汚染土の乾燥時に当該汚染土から蒸発した蒸気ガスの処理の流れについて説明する。図10は蒸気ガスの処理の流れを示したフローチャートである。上述のステップSA−2において汚染土から蒸発した蒸気ガスには、汚染土に含まれていた水分、汚染土から飛散した粉塵、汚染土から揮発した臭気分等が含まれている。この蒸気ガスは、乾燥機21から蒸気ガス配管30へと排出される(ステップSC−1)。ここで、蒸気ガス温度計測器によって計測された蒸気ガス温度が所定温度(例えば約70℃)未満であった場合(ステップSC−2、Yes)、蒸気ガス処理制御部94は切替ダンパー39を動作させ、当該蒸気ガスを緊急用配管31を介して乾留ガス処理系統へと導入させる(ステップSC−3)。蒸気ガス温度が70℃以上である場合には(ステップSC−2、No)、蒸気ガス配管30に導入された蒸気ガスは、集塵機32へと導入される(ステップSC−4)。ここで、活性炭供給装置33によって活性炭が集塵機32に吹き込まれ、当該活性炭に、蒸気ガスに含まれている粉塵が吸着する。集塵機32に導入された蒸気ガスがサイクロンやバグフィルタ等を通過すると、当該蒸気ガスに含まれている粉塵や当該粉塵が吸着した活性炭が除去される(ステップSC−5)。なお、ここで除去された粉塵等は、集塵ダスト配管35を経由して集塵ダスト回収機36へと搬送され、集塵ダスト回収機36から減圧還元加熱装置24に投入される。
【0072】
集塵機32を通過した蒸気ガスは、蒸気ガス洗浄槽37に導入される(ステップSC−6)。蒸気ガス洗浄槽37においては、蒸気ガスに含まれている微量の粉塵やダイオキシン等が除去される(ステップSC−7)。
【0073】
蒸気ガス洗浄槽37を通過すると、蒸気ガスは熱交換器50に導入される。熱交換器50において、蒸気ガスは熱交換器50を介して乾留ガスから熱を受取る。これにより、蒸気ガスは、後段の脱臭触媒装置38における反応に必要な温度まで昇温される(ステップSC−8)。
【0074】
熱交換器50において昇温された蒸気ガスは、脱臭触媒装置38に導入される(ステップSC−9)。脱臭触媒装置38に蒸気ガスが導入されると、脱臭触媒装置38の触媒によって蒸気ガスに微量に含まれている臭気分やPCB等の酸化反応が促進され、蒸気ガスが無害化される(ステップSC−10)。
【0075】
脱臭触媒装置38を通過した蒸気ガスは、活性炭吸着槽60へと導入される(ステップSC−11)。活性炭吸着槽60に蒸気ガスが導入されると、蒸気ガスに微量に残留している粉塵や臭気分等が活性炭に吸着され、除去される(ステップSC−12)。活性炭吸着槽60を通過した蒸気ガスは、煙突100に導入され、煙突100から大気に放出される(ステップSC−13)。
【0076】
(汚染土無害化システムによる処理の流れ−乾留ガス)
次に、減圧還元加熱装置24における汚染土の減圧還元加熱処理時に当該汚染土から分離された乾留ガスの処理の流れについて説明する。図11は乾留ガスの処理の流れを示したフローチャートである。上述の減圧還元加熱処理において汚染土から分離された乾留ガスは、回転炉24cの供給口24f側のフード24hから、乾留ガス配管40へと排出される(ステップSD−1)。ここで、乾留ガス配管40の切替ダンパー49の近傍に配置されている温度計測器によって計測された乾留ガスの温度が所定温度未満であった場合(ステップSD−2、Yes)、乾留ガス処理制御部95は切替ダンパー49を動作させ、当該乾留ガスをバイパス配管44を介して排ガス酸化装置45に導入させる(ステップSD−3)。乾留ガスの温度が所定温度以上である場合には(ステップSD−2、No)、乾留ガス配管40に導入された乾留ガスは、高温集塵機41へと導入される(ステップSD−4)。乾留ガスが高温集塵機41を通過する際、当該高温集塵機41のフィルターによって、乾留ガスに含まれている粉塵が捕集される(ステップSD−5)。なお、高温集塵機41によって捕集された粉塵は、造粒機43へと移送され、当該造粒機43によって粒体化された後、減圧還元加熱装置24に投入される。
【0077】
高温集塵機41を通過した乾留ガスは、排ガス酸化装置45に導入される(ステップSD−6)。排ガス酸化装置45の流入部から焼却部に流入した乾留ガスは、焼却部に供給された燃料及び助燃空気によって焼却処理される(ステップSD−7)。これにより、乾留ガスに含まれるダイオキシン類等が酸化され、無害化される。焼却処理された乾留ガスは、流出部から排出される。
【0078】
排ガス酸化装置45から排出された乾留ガスは、熱交換器50へと導入される。熱交換器50において、乾留ガスは当該熱交換器50を介して蒸気ガスに熱を放出する(ステップSD−8)。
【0079】
熱交換機において温度が降下した乾留ガスは、排ガス冷却装置46に導入される(ステップSD−9)。排ガス冷却装置46に乾留ガスが導入されると、乾留ガスは所定の温度範囲まで冷却される(ステップSD−10)。
【0080】
排ガス冷却装置46にて冷却された乾留ガスは、集塵機47へと導入される(ステップSD−11)。集塵機47においては、乾留ガスに微量に残留している粉塵が捕集される(ステップSD−12)。
【0081】
集塵機47を通過した乾留ガスは、脱硫装置48に導入される(ステップSD−13)。脱硫装置48に乾留ガスが導入されると、当該乾留ガスに含まれている硫黄酸化物や窒素酸化物が除去される(ステップSD−14)。
【0082】
脱硫装置48を通過した乾留ガスは、活性炭吸着槽60に導入される(ステップSD−15)。活性炭吸着槽60に乾留ガスが導入されると、当該乾留ガスに微量に残留している粉塵や臭気分等が活性炭に吸着され、除去される(ステップSD−16)。活性炭吸着槽60を通過した蒸気ガスは、煙突100に導入され、煙突100から大気に放出される(ステップSD−17)。
【0083】
(乾燥機21の構成の詳細)
次に、本実施の形態に係る乾燥機21の構成について詳細に説明する。乾燥機21としては、上述のように本実施の形態では、ロータリーキルン式や、ベルトコンベヤ式、あるいはバッチ式等の乾燥機を用いることができるが、本実施の形態ではロータリーキルン式の乾燥機21を例に挙げて説明する。図12は乾燥機21の構成の概略を示した図であり、図12(a)は乾燥機21の全体の側面図、図12(b)は図12(a)における領域Cの拡大図、図12(c)は図12(a)における領域Dの拡大図である。図12に示すように、乾燥機21は、燃焼室21a、加熱部21b、回転炉21c、及び、駆動部21dを備えている。
【0084】
(乾燥機21の構成−燃焼室21a)
燃焼室21aは、加熱部21bの燃焼スペースを確保するためのものであり、回転炉21cを覆うように設けられている。また、燃焼室21aには排熱利用配管80が接続されており、減圧還元加熱装置24からの排熱が当該燃焼室21aに導入される。また、燃焼室21aは、燃焼室21aの内部の気体を排出するための排気出口21eを備えている。燃焼室21aの内部では、加熱部21bが燃料を燃焼させることで発生した燃焼ガスと、排熱利用配管80を経由して流入した減圧還元加熱装置24の排熱とによって、回転炉21cが加熱される。その後に、これらの高温ガスは排気出口21eを通過して当該燃焼室21aから排気される。
【0085】
(乾燥機21の構成−加熱部21b)
加熱部21bは、乾燥機21における汚染土を加熱するものであり、バーナー、比率調整弁、ガス電磁弁、加熱帯測温部、圧力計測部、炎検出部、警報部、及び、表示部を備えている(全て図示せず)。バーナーは、燃焼室21aの内部で燃料と助燃空気とを混合して燃焼させるものであり、燃焼室21aの壁部に設けられている。バーナーによって燃料が燃焼されることで発生した熱は、回転炉21cに伝達され、回転炉21cの炉壁を介して当該回転炉21cの内部の汚染土を間接加熱する。比率調整弁は、バーナーによって混合される燃料と助燃空気との混合比率を調整するものである。ガス電磁弁は、バーナーに供給される燃料を遮断するためのものである。加熱帯測温部は、燃焼室21aから燃焼ガスが排出される際の当該燃焼ガスの温度を計測する。加熱帯測温部としては、白金測温体や、熱電対を用いることができる。圧力計測部は、回転炉21cの内部圧力を計測するものである。炎検出部は、バーナーが発生させている炎の検出を行うためのものである。炎検出部としては、紫外線感知器を用いることができる。警報部は、炎検出部によってバーナーの炎の立ち消えが検出された場合など、何らかの異常が発生した場合において、その異常に応じて警報を出力するためのものである。表示部は、加熱部21bの動作状態(例えば、正常状態、異常状態等)を表示するためのものである。表示部の具体的な構成は任意であり、各状態に対応した色(例えば、正常状態:青、異常状態:赤)で発光する発光体を用いてもよく、あるいは、液晶表示装置を用いて表示をさせてもよい。
【0086】
(乾燥機21の構成−回転炉21c)
回転炉21cは、内部に投入された汚染土を移動させながら乾燥させる略円筒形の炉であり、燃焼室21aの内部を貫通するように回転自在に設置されている。回転炉21cの一方の端部には汚染土の供給口21fが設けられており、他方の端部には汚染土の排出口21gが設けられている。供給口21f及び排出口21gの周囲には、汚染土の粉塵や汚染土から蒸発・揮発した蒸気ガスが乾燥機21の外部に漏出することの無いよう、二重化フード21hが設けられている。図12(b)及び図12(c)に示すように、二重化フード21hは、一次フード21i及び二次フード21jを備えている。一次フード21iは、供給口21fと排出口21gとをそれぞれ覆うように、回転炉21cに対して摺動自在に設けられている。供給口21f側の一次フード21iは、蒸気ガス配管30が接続されている。また、蒸気ガス配管30との接続部近傍には図示しない蒸気ガス温度計測器が設けられており、当該蒸気ガス温度計測器によって回転炉21cの内部から蒸気ガス配管30に排出される蒸気ガスの温度が計測される。排出口21g側の一次フード21iは、搬送装置23と接続されている。二次フード21jは、一次フード21iと回転炉21cとの間隙を覆うように、回転炉21cに対して摺動自在に設けられており、配管21kを介して、図示しない局所集塵機と接続されている。局所集塵機が動作している場合には、二次フード21jと回転炉21cの外周との間に存在する気体が局所集塵機まで吸引され、当該局所集塵機にて粉塵が除去された後に大気に排出される。
【0087】
また、回転炉21cは、その長軸方向が水平から所定角度の傾斜を有するように配置されており、内部の汚染土は回転による滑りによって供給口21fから排出口21gまで移動し、排出される。回転炉21cは、燃焼室21a内部に供給された燃焼ガス等によって外周面側から加熱されており、回転炉21cの外周から内周に伝達された熱によって、当該回転炉21cの内部の汚染土が加熱される。
【0088】
また、回転炉21cの内部における供給口21f及び排出口21gの近傍には図示しない温度計測器が設置されている。温度計測器は、供給口21fから供給される汚染土の温度、及び、排出口21gから排出される直前の汚染土の温度を計測し、計測したデータを制御盤90に出力する。なお、汚染土は回転炉21cの内部を移動する間は加熱され続けるため、排出口21gから排出される直前に最も高温となる。従って、排出口21gから排出される直前の汚染土の温度を計測することにより、乾燥炉の内部における汚染土の最高温度を把握することが出来る。温度計測器の具体的構成は任意であるが、例えばシース熱電対を用いることができる。
【0089】
(乾燥機21の構成−駆動部21d)
駆動部21dは、回転炉21cを所定の回転速度で回転させるものであり、チェーンやギア等を介して回転炉21cと連結されている。
【0090】
なお、図1においては乾燥機21が1台設けられているが、減圧還元加熱装置24に対して複数台の乾燥機21を設けることもできる。これにより、汚染土の含水率の変動等、必要とされる乾燥能力の変動に対して迅速に対応することができる。
【0091】
(乾燥機制御部91による汚染土の温度制御処理)
次に、乾燥機制御部91による汚染土の温度制御処理について説明する。図13は、乾燥機制御部91による汚染土の温度制御処理の流れを示したフローチャートである。
【0092】
上述のステップSA−1において乾燥機21に移送された汚染土は、供給口21fから回転炉21cの内部に投入される(ステップSE−1)。回転炉21cに投入された汚染土は、当該回転炉21cの炉壁を介して、燃焼室21aにおける燃焼ガス等から加熱される。このとき、乾燥機制御部91は、温度計測器によって計測された汚染土の温度、及び、蒸気ガス温度計測器によって計測された蒸気ガスの温度に基づいて、加熱部21bによる回転炉21cの加熱量の制御を行う。
【0093】
ここで、乾燥機21によって汚染土を乾燥させる際の、汚染土の温度条件について説明する。図14はPCBを含有している汚染土を所定温度まで加熱して乾燥させた場合における、乾燥後の汚染土のPCB含有量を示した表であり、図15は図14に示した表をグラフに表したものである。図14及び図15から明らかなように、乾燥時の汚染土の温度を高温にする程、乾燥後の汚染土におけるPCB含有量が減少している。具体的には、乾燥前の汚染土におけるPCB含有量を基準とすると、乾燥後の汚染土におけるPCB含有量は、120℃で乾燥させた場合には約20%減少し、220℃で乾燥させた場合には約40%減少し、440℃で乾燥させた場合には99%以上減少している。以上の結果から、乾燥時における汚染土からのPCBの揮発を抑制し、蒸気ガスの処理負担を低減するためには、乾燥時の汚染土の温度を少なくとも約220℃以下とする必要があり、さらには約120℃以下とすることが望ましい。
【0094】
以上の温度条件に基づき、乾燥機制御部91は、排出口21g側の温度計測器によって計測される汚染土の温度が約220℃(より好ましくは約120℃。以下同じ)以下に保たれるように、且つ、蒸気ガス温度計測器によって計測される蒸気ガスの温度が約70℃以上に保たれるように、加熱部21bの制御を行う。
【0095】
上記温度範囲に汚染土を保持するために必要となる加熱量は、乾燥機21に投入される汚染土の含水量等の性状や投入量によって変動する。このため、乾燥機制御部91は、汚染土の含水量等の性状や投入量等の運転情報を取得する(ステップSE−2)。この運転情報は、例えば、土壌ホッパー20や乾燥機21の前段側に設けた水分計や土壌ホッパー20から取得でき、あるいは、操作者によって予め記憶部97に格納される。そして、乾燥機制御部91は、当該取得した運転情報に対応する加熱量を決定する(ステップSE−3)。例えば、記憶部97には、汚染土の含水量等の性状、投入量、及び汚染土の乾燥に適した加熱量であって当該汚染土の温度が約220℃以下になるような加熱量を相互に関連付けて構成された制御テーブルが予め格納されており、この制御テーブルを参照して加熱量を決定し、当該決定した加熱量の加熱を行うように加熱部21bを制御する(ステップSE−4)。
【0096】
さらに、乾燥機制御部91は、汚染土の投入直後から所定時間の温度変化を温度計測器によって計測させ、計測した温度変化率と加熱量との関係によって、上記温度範囲を目標とした加熱部21bの予測制御を行う(ステップSE−5)。すなわち、乾燥機制御部91は、ステップSE−3で決定した加熱量、及び当該加熱量にて運転を行った際に温度計測器によって計測された汚染土の温度を記憶部97に所定間隔で運転履歴情報として格納し、当該格納された運転履歴情報に基づいて、加熱量に対する汚染土の温度のトレンド分析を行い、このトレンド分析結果を参照して、加熱部21bの制御を行う。例えば、加熱量の変化分に対する汚染土の温度の変化分の傾きを算定すると共に、加熱量の変化から対応する汚染土の変化までの遅れ時間を特定し、これらの傾き及び遅れ時間を基準として、所望の汚染土の温度に対する適切な加熱量を算定して、当該算定した加熱量にて加熱部21bを制御する。
【0097】
このように制御された加熱部21bによって汚染土が加熱され、汚染土に含まれている水分が蒸発し、当該汚染土の含水率が5%未満まで低減される。温度計測器によって計測される汚染土の温度が約220℃以下だった場合には(ステップSE−6、No)、乾燥機制御部91は、汚染土無害化システム1の状態を、吹込装置22を動作させない状態であると共に、蒸気ガスを蒸気ガス処理系統に導入する状態である通常状態に維持する(ステップSE−7)。
【0098】
一方、温度計測器によって計測される汚染土の温度が220℃を超えた場合(ステップSE−6、Yes)、乾燥機制御部91は、汚染土無害化システム1の状態を、緊急状態に移行させる(ステップSE−8)。具体的には、吹込装置22を動作させ、回転炉21cの内部に冷却用気体を吹き込ませて汚染土を冷却すると共に、蒸気ガス処理制御部94によって蒸気ガス処理系統における切替ダンパー39を動作させ、蒸気ガスを緊急用配管31を介して乾留ガス処理系統へと導入させる。以後、乾燥機制御部91は汚染土温度が220℃を超えている間は(ステップSE−6、Yes)、緊急状態を維持する。汚染土温度が220℃以下となった場合は(ステップSE−6、No)、乾燥機制御部91は吹込装置22を停止させると共に、蒸気ガス処理制御部94によって蒸気ガス処理系統における切替ダンパー39を再度動作させ、汚染土無害化システム1を通常状態へと移行させる(ステップSE−7)。
【0099】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、乾燥機制御部91によって乾燥機21の加熱部21bの制御を行い、乾燥機21の内部の汚染土の温度を所定温度範囲内に保持しているので、乾燥時における汚染土からの汚染物質の揮発を抑制することができる。従って、蒸気ガスについては集塵機32や蒸気ガス洗浄槽37、脱臭触媒装置38によって処理を行うことができるので、燃焼処理を行う必要がなく、処理に要するコストを著しく低減することができる。
【0100】
特に、乾燥時の汚染土の温度を約220℃以下、望ましくは約120℃以下とすることにより、PCBの汚染土からの揮発量を大幅に低減することができる。
【0101】
また、乾燥機21の内部の汚染土の温度が所定温度を超過した場合、乾燥機制御部91は吹込装置22によって回転炉21cの内部に冷却用気体を吹き込ませ、汚染土を冷却させるので、汚染土から汚染物質が大量に揮発することを回避することができる。
【0102】
また、一台の減圧還元加熱装置24に対して複数台の乾燥機21を備えているので、汚染土の含水率の変動等、必要とされる乾燥能力の変動に対して迅速に対応することができる。
【0103】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0104】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0105】
(冷却手段について)
上述の実施の形態では、乾燥機21の内部の汚染土を冷却する冷却手段として吹込装置22を使用し、乾燥機21の内部に冷却用空気を吹き込むと説明したが、所定の給水手段を用いて乾燥機21の内部に冷却水を注水するように構成してもよい。この場合、冷却装置25の給水管25cを分岐して乾燥機21にも冷却水を給水できるようにし、乾燥機21と冷却装置25とで冷却水を共用させることもできる。これにより、汚染土が高温となった場合の当該汚染土の冷却速度を向上させることができ、汚染土から揮発するPCBの量を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
この発明に係る汚染土無害化システム及び方法は、汚染物質を減圧還元加熱することにより汚染土を無害化するシステム及び方法に適用でき、汚染土を乾燥させる際に汚染物質の揮発を抑制することで、乾燥装置からの排気の処理に要するコストを低減できる汚染土無害化システム及び方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】汚染土無害化システムの概略図である。
【図2】減圧還元加熱装置24の構成の概略を示した図であり、図2(a)は減圧還元装置の全体の側面図、図2(b)は図2(a)における領域Aの拡大図、図2(c)は図2(a)における領域Bの拡大図である。
【図3】減圧還元加熱装置24の回転炉24cの内部構造を表した側面図である。
【図4】冷却装置25の側面図である。
【図5】蒸気ガス処理系統の装置構成を模式的に表した概略図である。
【図6】乾留ガス処理系統の装置構成を模式的に表した概略図である。
【図7】制御盤90の電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。
【図8】汚染土無害化処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】減圧還元加熱処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】蒸気ガスの処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】乾留ガスの処理の流れを示したフローチャートである。
【図12】乾燥機21の構成の概略を示した図であり、図12(a)は乾燥機21の全体の側面図、図12(b)は図12(a)における領域Cの拡大図、図12(c)は図12(a)における領域Dの拡大図である。
【図13】乾燥機制御部91による汚染土の温度制御処理の流れを示したフローチャートである。
【図14】PCBを含有している汚染土を所定温度まで加熱して乾燥させた場合における、乾燥後の汚染土のPCB含有量を示した表である。
【図15】図14に示した表をグラフに表したものである。
【符号の説明】
【0108】
1 汚染土無害化システム
20 土壌ホッパー
21 乾燥機
21a、24a 燃焼室
21b、24b 加熱部
21c、24c 回転炉
21d、24d、25b 駆動部
21e、24e 排気出口
21f、24f、25e 供給口
21g、24g、25f 排出口
21h 二重化フード
21i 一次フード
21j 二次フード
21k 配管
22 吹込装置
23 搬送装置
24 減圧還元加熱装置
24h フード
24i、25g 送り羽根
24j 温度計測器
25 冷却装置
25a 回転体
25c 給水管
25d 水噴霧装置
25h 放水ヘッド
25i 噴霧口
30 蒸気ガス配管
31 緊急用配管
32、47 集塵機
32a、47a サイクロン式集塵機
32b、47b バグフィルタ式集塵機
32c 保温ジャケット
33 活性炭供給装置
34 保温ガス配管
35 集塵ダスト配管
35a 搬送エアー供給機
36 集塵ダスト回収機
37 蒸気ガス洗浄槽
38 脱臭触媒装置
39 切替ダンパー
40 乾留ガス配管
41 高温集塵機
42 消石灰供給装置
43 造粒機
44 バイパス配管
45 排ガス酸化装置
46 排ガス冷却装置
48 脱硫装置
49 切替ダンパー
50 熱交換器
60 活性炭吸着槽
70 燃料供給装置
80 排熱利用配管
90 制御盤
91 乾燥機制御部
92 減圧還元加熱装置制御部
93 冷却装置制御部
94 蒸気ガス処理制御部
95 乾留ガス処理制御部
96 入力部
97 記憶部
100 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土に含有されている汚染物質を分解することにより、当該汚染土を無害化する汚染土無害化システムであって、
前記汚染土を乾燥させる乾燥装置と、
前記乾燥装置にて乾燥された前記汚染土の前記汚染物質を、減圧還元加熱にて分解する減圧還元加熱装置と、
前記乾燥装置の内部の前記汚染土の温度を、前記汚染物質の揮発を抑制する所定の温度範囲内に維持するように、前記乾燥装置を制御する温度制御手段と、
を備えることを特徴とする汚染土無害化システム。
【請求項2】
前記汚染物質がPCBであり、
前記温度範囲が220℃以下であること、
を特徴とする請求項1に記載の汚染土無害化システム。
【請求項3】
前記乾燥装置の内部の前記汚染土を冷却する冷却手段を備え、
前記温度制御手段は、前記汚染土の温度が前記温度範囲を超過すると判断した場合において、前記冷却手段によって当該汚染土を冷却させること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の汚染土無害化システム。
【請求項4】
一台の前記減圧還元加熱装置に対して、複数台の前記乾燥装置を備えること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の汚染土無害化システム。
【請求項5】
汚染土に含有されている汚染物質を分解することにより、当該汚染土を無害化する汚染土無害化方法であって、
前記汚染土の温度を前記汚染物質の揮発を抑制する所定の温度範囲内に維持させつつ、前記汚染土を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程において乾燥された前記汚染土の前記汚染物質を、減圧還元加熱にて分解する減圧還元加熱工程と、
を含むことを特徴とする汚染土無害化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−66473(P2009−66473A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234777(P2007−234777)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【Fターム(参考)】