説明

汚染地盤の浄化方法

【課題】
不飽和帯または飽和帯の何れに拘わらず、地中の汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとを十分に反応させることができ、その反応で生成された化合物が地下水と共に地上に揚水されることで汚染物質を十分に回収することができる汚染地盤の浄化方法を提供すること。
【解決手段】
汚染された地盤Eの汚染領域を囲むように複数の揚水管3を地中に貫入する。揚水管3を介して地下水を地上に揚水することで汚染領域の地下水位を下げる。地下水位を下げた状態で、地中に貫入された複数の浄化用管13を介して、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを地中に供給する。次いで、複数の揚水管3による地下水の揚水を休止して地下水位を上昇させる。当初の地下水位まで地下水位が上昇したのち、揚水管3を介して地下水を地上に再び揚水する。地下水を揚水したのち、汚染領域の地中の浄化用ガスによる浄化の進捗状況に応じて、浄化用ガスの供給から再び順次繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染地盤の浄化方法に関し、特に、汚染された地盤の汚染領域の地下水位を下げた状態で、汚染領域の地盤に貫入された複数の浄化用管を介して汚染領域の地中に、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを供給するようにした汚染地盤の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されている従来の汚染地盤の浄化方法においては、汚染地盤に挿入した掘削井を介して空気やオゾン等の酸素含有物質からなる浄化促進成分を汚染領域の地中に吹き込む浄化促進成分注入工程と、汚染領域の地中から掘削井を介してガス状物質を吸引回収し、この回収したガス状物質を浄化処理により無害化して排出する回収浄化処理工程とを有し、これらの工程を交互に繰り返すように構成されている。
【特許文献1】特開2001−129529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の汚染地盤の浄化方法は、浄化促進成分を吹き込んで浄化を行なおうとする汚染領域の地中が地下水の存在しない不滞水域(以下「不飽和帯」という。)であったが、地下水が存在する滞水域(以下「飽和帯」という。)に浄化促進成分を吹き込んで浄化を行なおうとすると、地下水位より下方の地中は地下水に浸水しているため、その地中の汚染された土壌と浄化促進成分とを十分に接触させることができず、その結果、地中の汚染物質と浄化促進成分とを十分に反応させることができなかった。
【0004】
また、従来の汚染地盤の浄化方法は、浄化促進成分を汚染領域の地中に吹き込んだのち、汚染領域の地中から掘削井を介してガス状物質を吸引回収するようにしていたので、地中の汚染物質が浄化促進成分と反応して生成された化合物によって汚染物質が覆われ、浄化促進成分との反応が阻害されてガス化が十分に行なわれなかった。この結果、汚染物質がそのままの状態で地中に残留するため、掘削井を介して汚染物質を十分に吸引回収することができないという問題もあった。
【0005】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、不飽和帯または飽和帯の何れに拘わらず、地中の汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとを十分に反応させることができ、その反応で生成された化合物が地下水と共に地上に揚水されることで汚染物質を十分に回収することができる汚染地盤の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る汚染地盤の浄化方法は、汚染された地盤の汚染領域を囲むように互いに間隔を隔てて地中に貫入された複数の揚水管を介して地下水を地上に揚水することで前記汚染領域の地下水位を下げた状態で、前記汚染領域の地中に互いに間隔を隔てて貫入された複数の浄化用管を介して、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを地中に供給する浄化用ガス供給工程と、前記浄化用ガス供給工程を実行したのち、前記複数の揚水管による地下水の揚水を休止して前記地下水位を上昇させる水位上昇工程と、前記水位上昇工程の実行により、前記揚水管による地下水の揚水を行う前の地下水位またはその近傍の水位まで地下水位が上昇したのち、前記複数の揚水管を介して地下水を地上に再び揚水する揚水工程とを備え、前記揚水工程の実行により地下水を揚水したのち、前記汚染領域の地中の前記浄化用ガスによる浄化の進捗状況に応じて、前記浄化用ガス供給工程から再び前記各工程を一回以上順次繰り返すようにしたものである。
【0007】
請求項2に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項1に記載の汚染地盤の浄化方法において、請求項1に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記水位上昇工程を実行している際に、前記複数の浄化用管を介して水を地中に注水するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項1または請求項2に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記揚水工程を実行している際に、前記複数の浄化用管を介して水を地中に注水するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項2または請求項3に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記複数の浄化用管を介して地中に注水する水は、前記浄化用ガスを混合させたオゾン水またはアルカリ水からなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項1ないし請求項4のうち何れか一つに記載の汚染地盤の浄化方法において、前記揚水工程において揚水された水に前記浄化用ガスを混合させるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項2または請求項3に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記複数の浄化用管を介して地中に注水する水は、前記揚水工程において揚水した地下水を利用するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、汚染された地盤の地中の地下水を地上に揚水することで汚染領域の地下水位を下げた状態で、複数の浄化用管を介して汚染領域の地中に、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを供給するようにしたので、当初の地下水位より下方の地中でも地下水に邪魔されることなく浄化用ガスと地中の汚染物質とを十分に接触させることができ、その結果、当初の地下水位より下方の地中に存在する汚染物質であっても浄化用ガス中のオゾンと十分に反応させることができる。
また、浄化用ガスを供給してから、揚水管による地下水の揚水を休止して地下水位を上昇させるようにしたので、地中の汚染物質が浄化用ガス中のオゾンと反応して生成された化合物を、上昇した地下水に溶解させることができる。
その上、地下水に溶解した汚染物質の化合物が地下水と共に地上に揚水されることで汚染物質を十分に回収することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、地下水位を上昇させる際に、複数の浄化用管を介して水を地中に注水することで、地中の汚染物質が浄化用ガス中のオゾンと反応して生成された化合物を注水した水で溶解して洗い流すことができるだけでなく、地下水位を速やかに上昇させることができるため水位上昇工程の作業効率を向上させることもできる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、揚水管を介して地下水を揚水しながら浄化用管を介して地中に水を注水するようにしたので、地中の汚染物質が浄化用ガス中のオゾンと反応して生成された化合物を注水した水で溶解して十分に洗い流すことができると共に、その洗い流した化合物を地下水と共に地上に揚水して回収することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、複数の浄化用管を介して注水する水を、浄化用ガスを混合させたオゾン水とすることで、地中の汚染物質をオゾン水によっても浄化することができ、浄化を一層促進することができる。
また、複数の浄化用管を介して注水する水をアルカリ水とすることで、地中の汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとが反応して生成された化合物がアルカリ水によって中和されるため、該化合物が地中で飽和状態になることが防止され、汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとの反応を促進させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、揚水工程において揚水された水に浄化用ガスを混合させるようにすることで、揚水した地下水中にまだ汚染物質が未反応のまま残留していた場合は、その汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとが反応して、揚水した地下水を完全に浄化することができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、複数の浄化用管を介して地中に注水する水は、揚水工程において揚水した地下水を利用することで、その揚水した地下水を無駄にせずに済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を使用することができる浄化装置の概略の構成を示す側面図であり、図2は該浄化装置を上方から見た状態を示す平面図であり、図3は該浄化装置の構成部材である揚水管の先端部を破断して拡大して示す縦断面図である。
なお、図1ないし図3については、作図の都合上、それぞれの構成部材の縮尺の比率は互いに異ならせて図示している。
【0019】
図1および図2において符号1で示すものは汚染地盤の浄化装置を示しており、この浄化装置1は、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等を含む汚染物質によって土壌が汚染された地盤Eの汚染領域を囲むように互いに間隔を隔てて地中に貫入された複数の揚水管3と、該複数の揚水管3の各上端部がそれぞれ揚水接続管4を介して接続された一つの集合揚水管5と、集合揚水管5の中途部に配設され各揚水管3および集合揚水管5を介して地下水を揚水するための揚水ポンプ7と、該揚水ポンプ7によって揚水された水を貯留する貯留タンク9と、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを浄化用ガス供給管11aを介して貯留タンク9内に供給することで貯留タンク9内に貯留された水を浄化するための浄化用ガス供給装置11と、互いに間隔を隔てて地盤Eの地中に貫入された複数の浄化用管13と、該複数の浄化用管13の各上端部がそれぞれ接続管14を介して接続された一つの集合浄化用管15と、集合浄化用管15や各浄化用管13を介して、貯留タンク9内に貯留された水を地盤Eの地中に注水するための注水ポンプ17とを備えている。
【0020】
揚水ポンプ7は揚水ポンプ駆動用電動モータ(図示せず)によって駆動され、注水ポンプ17は注水ポンプ駆動用電動モータ(図示せず)によって駆動される。揚水ポンプ7が揚水する定格容量は、注水ポンプ17が注水する定格容量のおよそ10倍とされている。各浄化用管13の地中に貫入される部分には、貫通孔が、浄化用管13の長手方向に沿って等間隔で複数箇所穿設され、かつ、その複数箇所ごとに浄化用管13の軸芯回りに等角度間隔に複数個ずつ穿設されており、これらの貫通孔は、高密度のレーザー光線の照射等によって穿設される。
【0021】
各浄化用管13より各揚水管3の方が長尺とされ、かつ、地中に、より深く貫入される(図1を参照)。貯留タンク9は、貯留タンク9内の水を外部に排水するための蛇口9aを備え、該蛇口9aは貯留タンク9の本体における下部の外側面側に取り付けられている。前記浄化用ガス供給管11aの中途部には、三方弁19が配設され、該三方弁19と集合浄化用管15の中途部とが分岐管21を介して接続されている。三方弁19を適宜切り換えることによって、浄化用ガス供給装置11から供給された浄化用ガスが貯留タンク9または分岐管21の何れか一方側に択一的に供給され、分岐管21に供給された浄化用ガスは、集合浄化用管15および接続管14を介して各浄化用管13から地盤Eの地中に供給される。
【0022】
分岐管21が接続された集合浄化用管15の部位と注水ポンプ17との間における集合浄化用管15の中途部には開閉弁23が配設されており、貯留タンク9内の水が注水ポンプ17によって集合浄化用管15に供給されるときは開閉弁23が開弁される一方、浄化用ガス供給装置11から浄化用ガスが分岐管21に供給されるときは、開閉弁23が閉弁される。
【0023】
浄化用ガス供給装置11には、酸素ガスが収容された酸素ボンベ25が酸素ガス供給管25aを介して接続され、酸素ボンベ25内の酸素ガスが浄化用ガス供給装置11に導入され、浄化用ガス供給装置11の内部で放電管による無声放電によってオゾンが発生し、酸素に対してオゾンが所定の割合で混合されて浄化用ガスが生成される。浄化用ガスとしては、例えば、容積比でオゾンが1パーセントないし10パーセントで残りが酸素からなるガスをあげることができる。
【0024】
図2に示すように、揚水管3は、上方から見て、汚染された地盤Eの汚染領域を略矩形状に囲むように互いに略等間隔を隔てて地中に貫入されており、集合揚水管5は、上方から見て、これら全ての揚水管3を囲むように略矩形状に形成された環状部5aと、該環状部5aの矩形状の一つの角部から延びて貯留タンク9に接続される延設部5bとからなり、該延設部5bの中途部に揚水ポンプ7が配設されている。そして、各揚水管3の上端部が対向する集合揚水管5の部分に各揚水管3の上端部がそれぞれ揚水接続管4を介して接続されている。
【0025】
また、集合浄化用管15は、上方から見て、貯留タンク9から地盤Eの汚染領域の一側に沿って延びる主集合管15aと、該主集合管15aから分岐して延びる三つの分岐集合管15bとからなり、三つの分岐集合管15bは互いに間隔を隔てて平行に配置されている。主集合管15aの中途部には、前記注水ポンプ17および開閉弁23が配設されている。そして、各浄化用管13の上端部が対向する分岐集合管15bの部分に各浄化用管13の上端部がそれぞれ接続管14を介して接続されている。
なお、浄化装置1を側方から見た状態を示す図1から分かるように、集合浄化用管15より集合揚水管5の方が高い位置に配置されているが、これとは逆に集合揚水管5より集合浄化用管15の方を高い位置に配置しても良いし、両管が交差する部位の少なくとも何れか一方の管を互いに干渉しないように適宜屈曲させて集合浄化用管15と集合揚水管5とを同じ高さに配置するようにしても良い。
【0026】
各揚水管3の先端部は、図3に示すように、揚水管本体3aと該揚水管本体3aの下端部に螺着された貫入体27とを備えている。該貫入体27は、揚水管本体3aの下端部に螺合されるねじ部材27aと、該ねじ部材27aの下部内周に圧入または溶接により上端部が固定される有孔筒体27bと、該有孔筒体27bの下端部の外周に圧入または溶接により上端部が固定される先端部材27cと、有孔筒体27bの外周面を一定の間隙を隔てて被覆するように、ねじ部材27aの下部外周と先端部材27cの上部外周とに嵌合された濾過網27dとからなる。前記有孔筒体27bの側面には、複数の小さな貫通孔29が互いに一定の間隔を隔てて等間隔に穿設され、これらの貫通孔29を介して地下水が揚水される。前記濾過網27dは、水の通過を許容する一方、土砂や粒土壌の通過を阻止するように構成され、有孔筒体27bの貫通孔29が土砂や粒土壌で目詰まりしないようになっている。
【0027】
次に、前述したように構成された浄化装置1を使用して地盤Eの汚染領域の地中を浄化する方法について説明する。
(1)まず、汚染領域の地盤Eの地中に、略等間隔を隔てて複数の浄化用管13を縦横に整列するように貫入する。
(2)次に、地中に貫入された全ての浄化用管13を囲むように互いに間隔を隔てて複数の揚水管3を地中に貫入する。
(3)次に、全ての揚水管3を囲むように集合揚水管5を配管したのち、該集合揚水管5に各揚水管3の上端部をそれぞれ揚水接続管4を介して接続する。
【0028】
(4)次に、各浄化用管13の近傍に分岐集合管15bが位置するように集合浄化用管15配管したのち、分岐集合管15bに各浄化用管13の上端部をそれぞれ接続管14を介して接続する。
(5)次に、揚水ポンプ7が中途部に配設された集合揚水管5の延設部5bと注水ポンプ17および開閉弁23が中途部に配設された集合浄化用管15の主集合管15aとをそれぞれ貯留タンク9に接続する。
(6)次に、酸素ガス供給管25aを介して酸素ボンベ25が接続された浄化用ガス供給装置11を浄化用ガス供給管11aを介して貯留タンク9に接続する。
(7)次に、集合浄化用管15の主集合管15aの中途部と三方弁19とを分岐管21を介して接続する。以上で、浄化装置1の設置が完了する。
【0029】
(8)地下水位下降工程
次に、揚水ポンプ駆動用電動モータを作動させて揚水ポンプ7を駆動させ、各揚水管3等を介して地下水を揚水する。一本の揚水管3から毎分およそ100リットルの水が揚水される。揚水ポンプ7によって揚水された水は、集合揚水管5の延設部5bを介して送水され貯留タンク9に貯留される。これによって、地盤Eの汚染領域の地下水位が、揚水ポンプ7によって揚水される前の地下水位H1から地下水位H2まで下降する(図1を参照)。なお、地下水は揚水管3から揚水されるので、地下水位H2は、揚水管3の貫入体27の近傍が最も低くなっている。
【0030】
(9)浄化用ガス供給工程
前記(8)の地下水位下降工程により、地下水位をH2まで下げた状態で、浄化用ガス供給装置11を作動させて、分岐管21,集合浄化用管15および複数の浄化用管13を介して地盤Eの地中に浄化用ガスを所定の供給時間供給する。このとき、開閉弁23は閉弁しておくと共に三方弁19は、浄化用ガス供給装置11から供給された浄化用ガスが分岐管21の方に供給されるように切り換えておく。
地下水位がH2まで下降することで、当初の地下水位H1より下方にあった地中の土壌が地下水位H2より上方に位置するようになるので、その地中の土壌に含まれていた汚染物質と浄化用ガス供給装置11から供給された浄化用ガスとを十分に接触させることができ、汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとを十分に反応させることができる。
【0031】
(10)水位上昇工程
前記(9)の浄化用ガス供給工程における浄化用ガスの供給時間が経過したのち、揚水ポンプ駆動用電動モータの作動を停止して、各揚水管3による地下水の揚水を休止する。暫くすると、地盤Eの地中の地下水位が自然に上昇し、揚水する前の地下水位H1に戻る。このとき、地下水位を上昇させる際に、注水ポンプ駆動用電動モータを作動させて注水ポンプ17を駆動させ、集合浄化用管15および各浄化用管13を介して水を地中に注水するようにしてもよい。これによって、地中の汚染物質が浄化用ガス中のオゾンと反応して生成された化合物を注水した水で溶解して洗い流すことができるだけでなく、地盤Eの地中の地下水位を速やかに上昇させることができるため、水位上昇工程の作業効率を向上させることもできる。
【0032】
(11)揚水工程
前記(10)の水位上昇工程により、揚水を行う前の地下水位H1またはその近傍の水位まで地下水位が上昇したのち、揚水ポンプ駆動用電動モータを作動させて揚水ポンプ7を駆動させ、各揚水管3を介して地下水を再び揚水する。このとき、開閉弁23は開弁しておくと共に三方弁19は、浄化用ガス供給装置11から供給された浄化用ガスが貯留タンク9の方に供給されるように切り換えておく。一方、揚水ポンプ7により揚水した地下水に溶解している汚染物質の濃度を計測装置によって測定する。
なお、この揚水工程を実行している際、注水ポンプ17を駆動させて各浄化用管13を介して地盤Eの地中に貯留タンク9内の水を注水するようにしてもよい。注水することで、地中の汚染物質が浄化用ガス中のオゾンと反応して生成された化合物を注水した水で溶解して十分に洗い流すことができると共に、その洗い流した化合物を地下水と共に各揚水管3等を介して地上に揚水して回収することができる。
【0033】
(12)前記(11)の揚水工程で、汚染物質の濃度を測定した結果、地中の土壌汚染の浄化がまだ不十分であると判断された場合は、前記(11)の揚水工程の実行により地下水を揚水したのち、再び前記(8)の地下水位下降工程から前記(11)の揚水工程までの各工程を順次繰り返す。そして、前記計測装置による測定結果に基づき監視される地中の浄化の進捗状況に応じて、前記(8)の地下水位下降工程から前記(11)の揚水工程までの各工程を何回か順次繰り返す。
前記計測装置による測定結果に基づき、地中の土壌汚染の浄化が十分行なわれた判断されたとき、地盤Eの汚染領域の浄化作業を終了する。
【0034】
(13)次に、地中に貫入した各揚水管3および各浄化用管13を地中から引き抜くと共に、これらの揚水管3および浄化用管13や集合揚水管5,集合浄化用管15,揚水ポンプ7,貯留タンク9,浄化用ガス供給装置11および注水ポンプ17等を他の汚染領域等の別の場所へ搬出する。
なお、以上説明した作業工程(1)ないし(13)は、本発明の要旨または思想に反しない範囲で、順序や内容を必要に応じて適宜変更することができる。例えば、揚水ポンプ駆動用モータ7を駆動する揚水ポンプ駆動用電動モータ,浄化用ガス供給装置11,注水ポンプ17を駆動する注水ポンプ駆動用電動モータ,三方弁19および開閉弁23を制御装置によりそれぞれ制御して自動的に適宜作動させるようにしてもよい。
【0035】
上述したような汚染地盤の浄化方法によれば、汚染された地盤Eの地中の地下水を地上に揚水することで汚染領域の地下水位を下げた状態で、複数の浄化用管13を介して汚染領域の地中に、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを供給するようにしたので、当初の地下水位H1より下方の地中でも地下水に邪魔されることなく浄化用ガスと地中の汚染物質とを十分に接触させることができ、その結果、当初の地下水位H1より下方の地中に存在する汚染物質であっても浄化用ガス中のオゾンと十分に反応させることができる。
【0036】
また、浄化用ガスを供給してから、揚水管3による地下水の揚水を休止して地下水位を上昇させるようにしたので、地中の汚染物質が浄化用ガス中のオゾンと反応して生成された化合物を、上昇した地下水に溶解させることができる。
その上、地下水に溶解した汚染物質の化合物が地下水と共に各揚水管3等を介して地上に揚水されることで汚染物質を十分に回収することができる。
さらにまた、この実施の形態による汚染地盤の浄化方法によれば、複数の浄化用管13を介して注水する水は、揚水工程において揚水した地下水を利用するようにしたので、その揚水した地下水を無駄にせずに済む。
【0037】
しかも、揚水した地下水は、浄化用ガス供給装置11から供給された浄化用ガスと貯留タンク9内で混合されるため、揚水した地下水中の、未反応のまま残留していた汚染物質が貯留タンク9内で浄化用ガス中のオゾンと反応して浄化されるだけでなく、余剰となった浄化用ガスが貯留タンク9内の地下水と混合されてオゾン水となり、そのオゾン水が複数の浄化用管13を介して地中に注水されるので、注水されたオゾン水中のオゾンによって地中の汚染物質の浄化が一層促進される。
また、浄化用ガス供給装置11から供給された浄化用ガスを、三方弁19を適宜切り換えることによって、貯留タンク9内に供給して貯留タンク9内の地下水を浄化するためのものと、複数の浄化用管13を介して地中に供給して汚染土壌を浄化するためのものとの二つの用途に使用するようにしたので、それぞれ浄化用ガス供給装置を別個に設ける場合と比べて浄化装置1を小型化することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と明細書との全体から読み取れる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更後の汚染地盤の浄化方法もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0039】
例えば、上述した実施の形態においては、複数の浄化用管13を介して注水する水は、揚水工程において揚水した地下水を利用するようにしたが、このような構成に代えて、水道水や貯留タンク9とは別個の貯留タンクに貯留されたアルカリ水を、複数の浄化用管13を介して注水するようにしてもよい。注水する水をアルカリ水とする場合は、地中の汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとが反応して生成された化合物がアルカリ水によって中和されるため、該化合物が地中で飽和状態になることが防止され、汚染物質と浄化用ガス中のオゾンとの反応を一層促進させることができる。前記アルカリ水としては、例えば、重量比で水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが30パーセントないし50パーセントで残りが水である水溶液からなるアルカリ水をあげることができる。
【0040】
また、上述した実施の形態の浄化装置1においては、接続管14に直接接続された浄化用管13を介して地盤Eの地中に浄化用ガスを供給したり水を注水する例を示したが、これに代えて例えば、図4および図5に示すように、地中に貫入された各浄化用管13内に地中挿入用具31をそれぞれ挿入して浄化用ガスの供給等を行うようにしてもよい。図4は浄化用管13内に地中挿入用具31を挿入して膨張管35a,35b,35cを拡径した状態を、浄化用管13を破断して示した一部断面図であり、図5は地中挿入用具31を使用して浄化用ガスを供給し地中を浄化している状態を、一部を破断して示した一部断面図である。なお、作図の都合上、図4では長手方向中途部で二分割して左右にずらして図示している。
地中挿入用具31を使用する場合は、各接続管14は、各浄化用管13に直接接続するのではなく、各地中挿入用具31に接続するようにする。
【0041】
地中挿入用具31は、円筒状の1本の外管33と、この外管33の長手方向に互いに所定の間隔を隔てて外管33の外周に嵌合された3個の膨張管35a,35b,35cと、3本の内管37a,37b,37cとを備えている。3個の膨張管35a,35b,35cの、外管33の長手方向における配置間隔は、浄化用管13の貫通孔13aが穿設された間隔(浄化用管13の長手方向の間隔)と同一とされている。内管37a,37b,37cは、それぞれの一端側が外管33の一端側から突出した状態で他端側がそれぞれ外管33内に挿入されている。各膨張管35a,35b,35cは、拡径可能な弾性材料たるゴム材からなり、各膨張管35a,35b,35cのそれぞれの両端部は円環状の締め付け部材によって外管33の外周に気密に緊縛され、かつ、各膨張管35a,35b,35cと外管33とのそれぞれの間隙に、外部と気密に区画された円環状の区画室36がそれぞれ形成されている。
【0042】
外管33の長手方向において各膨張管35a,35b,35cが隣り合う間の外管33の部位には、外管33内と外部とを連通する連通孔39がそれぞれ穿設されている。そして、膨張管35a,35b間の連通孔39と内管37bとが連通され、膨張管35b,35c間の連通孔39と内管37aとが連通されている。
一方、各膨張管35a,35b,35cに対応する外管33の部位には、前記各区画室36と外管33内とを連通する空気供給孔が各区画室36に対応してそれぞれ穿設されており、各空気供給孔と内管37cとが連通している。外管33の内周と内管37a,37b,37cの外周との間隙には、エポキシ系樹脂等の樹脂等からなる充填材が充填され固化されている。外管33および内管37a,37b,37cの下端側の開口部は、栓部材(図示せず)がそれぞれ固着され密栓されている。
【0043】
浄化用ガスを供給したり水を注水したい地中の深度に位置する貫通孔13aが地中挿入用具31の各膨張管35a,35b,35cの間に位置付けられるように浄化用管13内に地中挿入用具31を挿入する。
各地中挿入用具31の各内管37a,37bは各接続管14に接続され、各内管37cは空気供給装置41に接続される(図5を参照)。
【0044】
そして、空気供給装置41を作動させて、内管37cを介して、膨張管35a,35b,35cと外管33とのそれぞれの間隙に形成された区画室36に所定の高圧の空気を供給し、各区画室36内が所定の圧力になったとき空気供給装置41の作動を停止して各区画室36内を所定の圧力に保持する。これによって、膨張管35a,35b,35cが拡径され、膨張管35a,35b,35cのそれぞれの外周面が浄化用管13の内周面に圧接された状態で保持される。
而して、各接続管14と各地中挿入用具31の内管37a,37bおよび連通孔39と浄化用管13の貫通孔13aとを介して浄化用ガスが供給されたり水が注水されたりする。これによって、浄化用ガスまたは水が地中の所望の深度だけに集中して供給または注水される。
【0045】
また、他の深度の地中に浄化用ガスを供給したり水を注水したい場合は、膨張管35a,35b,35cと外管33との間の区画室36から内管37cを介して空気を排出して膨張管35a,35b,35cを縮径させたのち、地中の所望の深度に位置する貫通孔13aが各膨張管35a,35b,35cの間に位置付けられるように地中挿入用具31を浄化用管13内で移動させる。そして、再び空気供給装置41を作動させて膨張管35a,35b,35cを拡径させたのち、地中挿入用具31を介して地中に浄化用ガスを供給したり水を注水する。
【0046】
なお、この例では、各地中挿入用具31の内管37aと内管37bとの両管とも各接続管14に接続する一方、三方弁19や開閉弁23を切り換えることで浄化用ガスまたは水のうち何れか一方のみを択一的に内管37aと内管37bとに共に供給するようにしたが、これに代えて、内管37aと内管37bとに浄化用ガスと水とをそれぞれ別個に供給する構成に変更して、内管37bには水を供給しながら内管37aには浄化用ガスを供給するようにしてもよい。このようにすることで、内管37aを介して深度の深い地中に供給した浄化用ガスが上昇して地上に漏洩しようとするのを、浄化用ガスを供給した深度より浅い地中に内管37bを介して供給した水によって阻止することができるだけでなく、その供給した水で、地中の汚染物質が浄化用ガス中のオゾンと反応して生成された化合物を溶解して下方に流下させることができる。そして、その流下させた汚染物質の化合物が揚水管3を介して地下水と共に地上に揚水されることで汚染物質を十分に回収することができる。
【0047】
さらにまた、上述した実施の形態の汚染地盤の浄化方法においては、上述したような浄化装置1を使用した汚染地盤の浄化方法の例を示したが、本発明は、このような方法に代えて、他の浄化装置を使用した汚染地盤の浄化方法であってもよい。要は、本発明に係る汚染地盤の浄化方法を使用することができる浄化装置であればどのような浄化装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を使用することができる浄化装置の概略の構成を示す側面図である。
【図2】図2は該浄化装置を上方から見た状態を示す平面図である。
【図3】図3は浄化装置の構成部材である揚水管の先端部を破断して拡大して示す縦断面図である。
【図4】図4は浄化用管内に地中挿入用具を挿入してその膨張管を拡径した状態を、浄化用管を破断して示した一部断面図である。
【図5】図5は地中挿入用具を使用して浄化用ガスを供給し地中を浄化している状態を、一部を破断して示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0049】
3 揚水管
13 浄化用管
E 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された地盤の汚染領域を囲むように互いに間隔を隔てて地中に貫入された複数の揚水管を介して地下水を地上に揚水することで前記汚染領域の地下水位を下げた状態で、前記汚染領域の地中に互いに間隔を隔てて貫入された複数の浄化用管を介して、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを地中に供給する浄化用ガス供給工程と、
前記浄化用ガス供給工程を実行したのち、前記複数の揚水管による地下水の揚水を休止して前記地下水位を上昇させる水位上昇工程と、
前記水位上昇工程の実行により、前記揚水管による地下水の揚水を行う前の地下水位またはその近傍の水位まで地下水位が上昇したのち、前記複数の揚水管を介して地下水を地上に再び揚水する揚水工程とを備え、
前記揚水工程の実行により地下水を揚水したのち、前記汚染領域の地中の前記浄化用ガスによる浄化の進捗状況に応じて、前記浄化用ガス供給工程から再び前記各工程を一回以上順次繰り返すようにした汚染地盤の浄化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記水位上昇工程を実行している際に、前記複数の浄化用管を介して水を地中に注水するようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記揚水工程を実行している際に、前記複数の浄化用管を介して水を地中に注水するようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記複数の浄化用管を介して地中に注水する水は、前記浄化用ガスを混合させたオゾン水またはアルカリ水からなることを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうち何れか一つに記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記揚水工程において揚水された水に前記浄化用ガスを混合させるようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記複数の浄化用管を介して地中に注水する水は、前記揚水工程において揚水した地下水を利用するようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−99621(P2010−99621A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274997(P2008−274997)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(591211711)カルト株式会社 (20)
【Fターム(参考)】