説明

汚染度検出装置及びそれを用いた空気処理装置

【課題】気体の汚染度を検出することができる汚染度検出装置及びこの汚染度検出装置を備えた空気処理装置を提供する。
【解決手段】気体と液体とを接触させるための気液接触部10(気液接触手段)と、液体中に活性酸素種を生成する生成手段としての電解部14(電解手段)と、この気液接触部10にて気体と接触した液体中の活性酸素種の吸光度を検出するための検出手段16と、検出手段16が検出する液体中の活性酸素種の吸光度に基づき、気体の汚染度を算出する制御手段70とを備えて、制御手段70は、検出手段16の第2の汚染度検出部52が検出する気体と接触する前の液体中に活性酸素種の吸光度と、第1の汚染度検出部51が検出する気体と接触した後の液体中の活性酸素種の吸光度との差に基づいて気体の汚染度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の汚染度を検出することができる汚染度検出装置及びそれを用いた空気処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中の悪臭や浮遊微生物、ウイルス等の汚染物質を除去する種々の形態の空気処理装置が提案されている。その一つとして、出願人は先に液体を電解して次亜塩素酸等の殺菌効果を有する物質を含む電解水を生成する電解水生成装置と、電解水との反応性が低い素材で形成された気液接触部材と、この気液接触部材に電解水生成装置にて生成された電解水を滴下する電解水滴下手段と、気液接触部材に空気を送風する送風ファンとを備え、送風ファンによって吸い込んだ被処理空間内の空気を気液接触部材に滴下した電解水に接触させて、該電解水に含まれる次亜塩素酸等にて空気中の汚染物質を除去する空気処理装置を開発した。
【0003】
ところで、このような空気処理装置において、前記電解水生成装置にて実際に殺菌効果を有する物質(次亜塩素酸等)が生成されているかどうかを確認するため、電解水生成装置にて生成された電解水に光を照射し、その透過光をその透過光を2分割し、一方を次亜塩素酸イオンによる吸光度の高い波長(292nm付近)を通す光学フィルタを経てフォトセルに導き、他方を波長400nm以上を通す光学フィルタを経てフォトセルに導き、それらの検出出力を測光電気回路に入力し演算処理を行って次亜塩素酸濃度に変換し、この次亜塩素酸濃度をモニターする装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−319834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来より上述の如く電解水の生成を確認するための装置は存在するものの、被処理空間内の気体(空気)がどの程度汚染されているかを検出する手段はなかった。そのため、ユーザは気体が極度に汚染されている場合であっても、気づかずに被処理空間内に居続ける危険性があり、身体の安全や衛生に影響を及ぼす恐れがあった。
【0005】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、気体の汚染度を検出することができる汚染度検出装置及びこの汚染度検出装置を備えた空気処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の汚染度検出装置は、気体と液体とを接触させるための気液接触手段と、液体中に活性酸素種を生成する生成手段と、気液接触手段にて気体と接触した液体中の活性酸素種の吸光度を検出するための検出手段と、この検出手段が検出する液体中の活性酸素種による当該液体の吸光度に基づき、気体の汚染度を算出する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明の汚染度検出装置は、上記発明において検出手段は、気液接触手段において気体と接触する前の液体中の活性酸素種の吸光度を合わせて検出すると共に、制御手段は、検出手段が検出する気体と接触する前の液体中の活性酸素種の吸光度と、気体と接触した後の液体中の活性酸素種の吸光度との差に基づいて気体の汚染度を算出することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明の汚染度検出装置は、上記各発明において気体の汚染度を表示する表示手段を備え、制御手段は、算出した気体の汚染度を当該表示手段に表示することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明の汚染度検出装置は、請求項1乃至請求項2の何れかに記載の発明において活性酸素種生成手段は、電解手段から成り、この電解手段は、液体中に次亜塩素酸を生成すると共に、検出手段は、液体に照射した光のうち次亜塩素酸による光吸収の大きい波長の光での吸光度を検出することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明の空気処理装置は、請求項4に記載の汚染度検出装置を用いて、気液接触手段に気体を通過させることにより、当該気体中の汚染物質を除去することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明の空気処理装置は、請求項4に記載の発明において気体の汚染度に応じて電解手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の汚染度検出装置によれば、気体と液体とを接触させるための気液接触手段と、液体中に活性酸素種を生成する生成手段と、気液接触手段にて気体と接触した液体中の活性酸素種の吸光度を検出するための検出手段と、この検出手段が検出する液体中の活性酸素種による当該液体の吸光度に基づき、気体の汚染度を算出する制御手段とを備えたので、気体の汚染度を検出することができるようになる。
【0013】
特に、請求項3の如く制御手段は、算出した気体の汚染度を電気信号等に変換して表示部に表示するものとすれば、ユーザーが気体の汚染度を目で見て容易に確認することができるようになる。
【0014】
また、請求項2の発明の如く検出手段は、気液接触手段において気体と接触する前の液体中の活性酸素種の吸光度を合わせて検出すると共に、制御手段は、検出手段が検出する気体と接触する前の液体中の活性酸素種の吸光度と、気体と接触した後の液体中の活性酸素種の吸光度との差に基づいて気体の汚染度を算出するものとすれば、予め気体が汚染される前の吸光度等のデータを保有することなく、気体の汚染度を検出することができる。これにより、制御手段の簡素化を図ることが可能となり、製造コストを極力抑えることができるようになる。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1乃至請求項2の何れかに記載の発明において活性酸素種生成手段は、電解手段から成り、この電解手段は、液体中に次亜塩素酸を生成すると共に、検出手段は、液体に照射した光のうち次亜塩素酸による光吸収の大きい波長の光での吸光度を検出することで、係る吸光度の変化により汚染度を容易に算出することができるようになる。特に、汚染物質により消費される次亜塩素酸による光吸収の大きい波長の光を検出することで、より正確に汚染度を算出することが可能となる。
【0016】
特に、請求項2の発明の如く制御手段が、検出手段が検出する気体と接触する前の液体中の次亜塩素酸の吸光度と、気体と接触した後の液体中の次亜塩素酸の吸光度との差に基づいて気体の汚染度を算出するものとすれば、電解手段にて生成される次亜塩素酸の量が特定できない場合であっても、気体の汚染度を検出することが可能となる。
【0017】
請求項5の発明の空気処理装置によれば、請求項4に記載の汚染度検出装置を用いて、気液接触手段に気体を通過させることにより、当該気体中の汚染物質を除去するので、例えば、請求項6の如く気体の汚染度に応じて電解手段を制御するものとすれば、例えば、気体が汚染されている場合には、次亜塩素酸の生成を促進するよう電解手段を制御することで、気体中の汚染物質の除去を促すことができる。これにより、気体の汚染を早期に解消することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、気体がどの程度汚れているか検出できる汚染度検出装置と、この汚染度検出装置を備えた空気処理装置を提供することを目的とするものである。気体の汚染度を検出するという目的を、気体と液体とを接触させるための気液接触手段と、液体中に活性酸素種を生成する生成手段と、気液接触手段にて気体と接触した液体中の活性酸素種の吸光度を検出するための検出手段と、この検出手段が検出する液体中の活性酸素種による当該液体の吸光度に基づき、気体の汚染度を算出する制御手段とを備えることにより実現した。以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の汚染度検出装置を備えた一実施例の空気処理装置Wの概略図である。実施例の空気処理装置Wは、室内を被処理空間とし、当該空間内の気体(空気)を処理する装置である。本実施例の空気処理装置Wは、気液接触部10と、水貯蔵部12と、電解部14と、検出手段16等から構成されている。
【0020】
気液接触部10は、被処理空間内の気体(以下、空気とする)と液体とを接触させるための気液接触手段で、ハニカム構造を持ったフィルタ部材からなり、気体接触面積が広く確保され、保水可能で、且つ、目詰まりし難い構造とされている。気液接触部10は、波形状に屈曲された素材と、平板状の素材とを接合して全体としてハニカム状に形成されている。これら素材には、後述する電解水との反応性が低い素材、即ち、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン樹脂系、PET樹脂系、塩化ビニル樹脂系、フッ素樹脂系、又は、セラミック樹脂系の素材が使用されている。
【0021】
また、気液接触部10の一側には当該気液接触部10に被処理空間の空気を通風させるための図示しないファンが設置されている。そして、ファンの運転により、当該気液接触部10に被処理空間の空気を通過させて、そこで液体と接触させるよう構成されている。
【0022】
前記気液接触部10にて空気と接触する液体は、活性酸素種生成手段にて生成された活性酸素種を含む液体である。本実施例の活性酸素種生成手段は、電解部14から成る。即ち、本実施例の気液接触部10にて空気と接触する液体は、電解部14にて電解処理された電解水である。電解部14は、液体(本実施例では水道水)を電気化学的に処理(電気分解)することにより電解水を生成するための電解手段であり、電解槽20と、この電解槽20内に貯えられた液体(以下、水とする)中に浸漬された一対の電極22、23にて構成されている。そして、電極22、23は後述する制御手段70に接続され、該電極22、23への通電が当該制御手段70の電解制御部25にて制御されている。
【0023】
具体的には、制御手段70の電解制御部25により、電極22、23への通電が開始されると、電解槽20内に貯えられた水道水が電気分解(電気化学的処理)され、活性酸素種が生成される。
【0024】
ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素分子と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは、過酸化水素といった所謂狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった所謂広義の活性酸素を含むものとする。
【0025】
そして、電解槽20内にて生成された電解水は、例えば、ポンプにより吸い上げられて、前記気液接触部10に滴下されるよう構成されている。また、前記電極22、23は、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板である。
【0026】
上記電極22、23により水道水に通電すると、
カソード電極:4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
アノード電極:2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、
カソード電極:2H++2e-+(2OH-)→H2+(2OH-
アノード電極:2Cl-→Cl2+2e-
の反応が起こる。更にこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
【0027】
この構成では、電極22、23に通電することで、酸化力の強いHClO(次亜塩素酸)が発生し、この次亜塩素酸を含む電解水が気液接触部10に供給され、当該気液接触部10にて前述したファンによる通風される空気と接触する。このように、電解水中の次亜塩素酸により、当該空気中の汚染物質を分解除去することができる。ここで、電解部14にて生成される次亜塩素酸は、少なくとも気液接触部10にて空気中の汚染物質により消費される次亜塩素酸の量より多くする必要がある。即ち、空気中の汚染物質により消費される次亜塩素酸が電解部14にて生成される次亜塩素酸より少ないと、空気中に汚染物質がどれだけ存在していたか不明である。この場合、正確に気体の汚染度を算出することができない。従って、本実施例では制御手段70により、空気中の汚染物質に消費される次亜塩素酸の量より電解部14で生成される次亜塩素酸の量が多くなるように電解が制御されている。
【0028】
また、前記水貯蔵部12は、前記電解部14の電解槽20への水の供給部であり、且つ、前記気液接触部10から流出した水を受けるための受部である。そして、この水貯蔵部12と、電解部14の電解槽20及び気液接触部10とは環状に配管接続されて、水が循環する液体循環経路35が形成される。即ち、電解部14の電解槽20の一端に形成された取出口20Aには、配管30が接続され、当該配管30の一端は電解槽20内の水内にて開口している。この配管30の他端は気液接触部10の上端に接続される。また、気液接触部10下端には、配管32が接続され、この配管32は水貯蔵部12に至る。そして、水貯蔵部12には当該水貯蔵部12に貯溜された水を取り出すための配管34の一端が開口し、当該配管34の他端は前記電解槽20の下部に形成された取込口20Bに接続されて、環状の液体循環経路35が構成されている。
【0029】
また、当該液体循環経路35における水の流通を円滑なものとするため、各配管30乃至34上にポンプなどを設置することが望ましい。例えば、配管30に電解槽20内の水を吸い込んで、気液接触部10に供給するためのポンプP1を設置し、配管34に水蔵部12に貯えられた水を吸い上げて、電解槽20に供給するためのポンプP2を設置するものとする。
【0030】
一方、本実施例の空気処理装置Wは、汚染度検出装置Zを備える。この汚染度検出装置Zは、前述した気液接触部10、電解部14、検出手段16等から成る。検出手段16は、気液接触部10にて空気と接触した液体中の活性酸素種(本実施例では上述した次亜塩素酸)の吸光度を検出するための第1の汚染度検出部51等から成る。更に、本実施例の検出手段16は、当該第1の汚染度検出部51に加えて、気液接触部10において空気と接触する前の液体(水)中の次亜塩素酸の吸光度を合わせて検出する第2の汚染度検出部52を備える。
【0031】
本実施例の各汚染度検出部51、52は、図2に示すように液体に光を照射するための光源60と、石英等から形成された紫外光透過性の液体流路61と、光源60から照射され、液体流路61を流れる液体(水)を通過した光(透過光)を検出するための光検出部62と、光検出部62の検出出力を電気信号に変換する信号変換装置64と、該信号変換装置64にて変換された電気信号に基づいて表示する表示部65とから構成されている。本実施例では、光源60として水銀ランプを使用するが、これ以外にも、LED、キセノンランプ、タングステンランプ、重水素ランプなどを使用してもよい。更に、各汚染度検出部51、52の流路通路61を流れる液体(水)を通過した光の検出波長は、次亜塩素酸の吸収極大波長236nm付近とすることが望ましい。
【0032】
具体的に説明すると、一般的に次亜塩素酸は汚染物質を除去する特性を持つことが知られている。従って、気液接触部10にて液体(水)と接触する空気中に汚染物質が存在すると、当該汚染物質により次亜塩素酸は消費されるので、空気と接触する前の液体中に含まれる次亜塩素酸より接触した後の液体中に含まれる次亜塩素酸の量が減少する。当該次亜塩素酸の減少量は空気中に含まれる汚染物質の割合、即ち、空気の汚染度により異なることが明らかである。
【0033】
従って、空気中に汚染物質の存在する場合と存在しない場合とで著しく変化する次亜塩素酸に着目し、液体(水)通過した光のうち、当該次亜塩素酸の光吸収の大きい波長(236nm)の光を検出することで、より正確に汚染度を算出することが可能である。
【0034】
また、前記液体流路61は、紫外光を透過する性質を有するものであれば良く、本実施例の石英以外にガラスや樹脂などの素材により形成することも可能である。
【0035】
第1の汚染度検出部51は、前記電解部14と気液接触部10とを接続する配管30上に介設され、第2の汚染度検出部52は、気液接触部10と水貯蔵部12とを接続する配管32上に介設されている。また、各汚染度検出部51、52は前記制御手段70に接続されている。
【0036】
上述した制御手段70は、本実施例の空気処理装置Wの制御を司る制御装置であり、汎用のマイクロコンピュータ等により構成されている。図3に示すように当該制御手段70の入力側には、上記各汚染度検出部51、52等が接続され、出力側には前述した電解部14の電極22、23、配管30、34に介設された各ポンプP1、P2と、被処理空間の汚染度を表示するための前記汚染度表示部55等が接続されている。当該汚染度表示部55は前記各汚染度検出部51、52にて検出された吸光度の入力に基づき、当該制御手段70の汚染度差分検算部57にて演算処理され、算出された汚染度を表示するための表示手段である。
【0037】
本実施例の制御手段70は、第1の汚染度検出部51が検出する、気体と接触した後の液体中の次亜塩素酸の吸光度と、第2の汚染度検出部52が検出する、気体と接触する前の液体中の次亜塩素酸の吸光度の差に基づいて気体の汚染度を算出している。
【0038】
以上の構成で次に本実施例の空気処理装置の動作について具体的に説明する。本実施例では、汚染物質としてラベンダのエッセンシャルオイルを被処理空間に散布して空気処理、及び汚染度の検出を行った。先ず、空気処理装置Wの電源が投入されると、制御手段は、電極22、23の通電を開始する。これにより、電解部14の電解槽20内に貯えられた水が電気分解されて次亜塩素酸を含む電解水が生成される(電気化学的処理)。
【0039】
また、制御手段は電極22、23への通電を開始すると同時に、或いは、電極22、23への通電を開始して所定時間経過後に、配管30及び配管32に介設されたポンプP1及びポンプP2の運転を開始する。これにより、電解部14の電解槽20内にて生成された電解水が電解槽20から吸い上げられ、配管30、ポンプを介して気液接触部10に供給される。
【0040】
一方、制御手段は電極22、23への通電を開始すると同時に、或いは、電極22、23への通電を開始して所定時間経過後に、図示しないファンを始動する。これにより、気液接触部10にはファンで加速され、吹き出された被処理空間からの空気が通風供給される。
【0041】
この被処理空間内の空気は気液接触部10に供給された電解水中の次亜塩素酸に接触する。前述したように次亜塩素酸は気液接触部10に供給される空気中に汚染物質が存在する場合、この汚染物質を除去する。このとき、汚染物質により次亜塩素酸が消費される。そして、当該気液接触部10を通過した水(電解水)は、配管32を経て水貯蔵部12に流入し、そこで一端貯溜される。貯えられた水貯蔵部12内の水は、配管34に介設されたポンプP2にて吸い上げられ、取込口20Bから電解部14の電解槽20内に流入し、そこで再び電解処理されるサイクルを繰り返す。
【0042】
一方、制御手段70には、配管30上に介設された第2の汚染度検出部52にて検出された空気と接触する前の液体中(水中)の次亜塩素酸の吸光度(汚染度1測定)が入力され、且つ、配管32上に介設された第1の汚染度検出部51にて検出された気体と接触した後の水中の次亜塩素酸の吸光度(汚染度2測定)が入力される(図4のステップS1)。
【0043】
制御手段70は、図4のステップS1に示すように各汚染度検出部51、52からの吸光度の情報を受け取ると、図4のステップS2に移行して、第1の汚染度検出部51にて検出された吸光度と第2の汚染度検出部52にて検出された吸光度から吸光度差を演算し、当該吸光度差から汚染度を算出する。ここで、上述したラベンダのエッセンシャルオイルを散布した場合の第1の汚染度検出部51にて検出される空気と接触した後の水中の次亜塩素酸の吸光度と、第2の汚染度検出部52にて検出される空気と接触する前の水中の次亜塩素酸の吸光度の差(Δabs)を図5に示す。
【0044】
図5において、縦軸は空気と接触する前の水中の次亜塩素酸の吸光度(absIN)と、空気と接触した後の水中の次亜塩素酸の吸光度(absOUT)の差(Δabs=absOUTーabsIN)、横軸は時間の経過を示している。この場合、ラベンダオイルを散布する前の吸光度差を0とする(図5のA)。ラベンダオイルの散布を開始すると気液接触部10にて空気と水とが接触することにより、水中の次亜塩素酸が消費される。これにより、空気と接触した後の水中の次亜塩素酸の吸光度(absOUT)が低下していく(図5のAからCに推移する状態)。ここで、図5のAからBの状態における吸光度差(Δabs=absOUTーabsIN)と当該吸光度差に基づき算出され汚染度を図6に示す。図6に示すように吸光度差が負の方向に大きくなるほど、空気の汚染度は上昇している。従って、図6に示す吸光度差と汚染度の関係からも吸光度差に基づき空気の汚染度を算出できることがわかった。
【0045】
上述した吸光度差と汚染度の関係から、例えば、図4のステップS2にて求められた吸光度差がΔabs1である場合、図6から汚染度はZ1であることが求められる。このように汚染度が算出されると、制御手段70は次にステップS3に移行する。そして、制御手段70は、当該汚染度を電気信号に変換して、汚染度表示部55に表示する(ステップS4)。
【0046】
このように、本発明によれば制御手段70により、各汚染度検出部51、52にて検出される水中の次亜塩素酸の吸光度差に基づき空気の汚染度を算出することができる。更に、第1の汚染度検出部51にて検出される液体中の次亜塩素酸の吸光度と、第2の汚染度検出部52にて検出される水中の次亜塩素酸の吸光度の差から汚染度を算出し、算出された汚染度を電気信号に変換して、汚染度表示部55に表示することができる。これにより、被処理空間内の空気の汚染度を直接表示することができるようになる。従って、ユーザーは汚染度表示部55により空気の汚染度を直接目で見て容易に確認することができるようになり、被処理空間内の空気がどの程度の汚染されているかリアルタイムで検知することが可能となる。
【0047】
特に、本実施例では第1の汚染度検出部51が検出する空気と接触した後の水中の次亜塩素酸の吸光度と、第2の汚染度検出部52が検出する空気と接触する前の水中の次亜塩素酸の吸光度との差に基づいて空気の汚染度を算出するので、予め空気が汚染される前の吸光度などのデータを保有することなく、空気の汚染度を算出することができる。これにより、制御手段70の簡素化を図ることが可能となり、製造コストを極力抑えることができるようになる。
【0048】
更に、前述したように各汚染度検出部51、52にて汚染物質により消費される次亜塩素酸の光吸収の大きい波長の光を用いて、吸光度を検出することで、より正確に汚染度を算出することが可能となる。この場合、特に、電解部14にて生成される次亜塩素酸の濃度などの量が特定できない場合であっても、空気の汚染度を容易に算出することができる。
【0049】
尚、ラベンダオイルの散布が停止されると(図5のC)、ラベンダオイルの量が徐々に少なくなる。これによって、次亜塩素酸の消費される量が少なくなるので、吸光度差が小さくなっていく(図5のD)。そして、係る吸光度差は0付近に戻り(図5のE)、ラベンダオイルが完全に無くなると、最終的に吸光度差は0に戻る。
【0050】
ところで、前記図4のステップS2にて算出された汚染度が高い場合には、被処理空間が著しく汚染されていることがわかる。この場合、被処理空間の汚染を早期に解消することが好ましい。そこで、本発明の空気処理装置Wでは、制御手段70により空気の汚染度に応じて電解部14における電解が制御されている。具体的には、図4のステップS2において汚染度が算出されると、制御手段70は、ステップS5にて上記ステップS2にて算出された汚染度を判定し、ステップS6にて電極入力を変更する。例えば、ステップS5にて汚染度が所定の設定値X1より高いと判断された場合には、制御手段70はステップS5にて電極22、23に印加する電流値を1ステップ上昇する。
【0051】
一方、ステップS2にて算出された汚染度が所定の設定値X1より高い値に設けられた所定の設定値X2より高い場合には、制御手段70はステップS5にて電極22、23に印加する電流値を2ステップ上昇する。このように、算出された汚染度が高い場合、制御手段70は汚染度に応じて電解入力を上昇するので、電解部14において次亜塩素酸の生成が促進される。その結果、気液接触部10にて空気中の汚染物質と接触する次亜塩素酸が多くなり、被処理空間の汚染を早期に解消することが可能となる。また、制御手段70はステップS6にて電解入力を変更した後、ステップS1に戻って、上述した制御を繰り返す。
【0052】
尚、汚染度が設定値X2以下に低下すると、制御手段70は電極22、23に印加する電流値を1ステップ低下する。更に、汚染度が設定値X1以下に低下すると、制御手段70は、電極22、23に印加する電流値をもう1ステップ低下する。そして、吸光度差が汚染物質が無い場合の吸光度差(例えば、図5のAの如く吸光度差が0)になると、制御手段70は汚染物質が除去されたと判断して、電極22、23の通電を停止するか、若しくは、予め設定された電流値にする。
【0053】
以上のように、空気の汚染度に応じて電解入力を変更することで、汚染度が高い場合には電解入力を上昇させて、次亜塩素酸の発生を促進し、気液接触部10にて気体中の汚染物質と接触する次亜塩素酸を増加させて、汚染物質を早期に除去することができるようになる。尚、上記では汚染度が設定値(X1或いはX2)以下に低下すると、電極22、23に印加する電流値を1ステップずつ下げるものとしたが、これに限らず、汚染度が略ゼロに低下して、汚染物質が無い状態となるまで、上昇した電解入力を維持するものとしても差し支えない。
【0054】
尚、本実施例では液体に照射した光のうち、次亜塩素酸の吸収極大波長236nmの吸光度を検出し、当該吸光度に基づいて汚染度を算出するものとしたが、検出する吸光度は次亜塩素酸の吸収極大波長に限定されるものではない。例えば、電解水中に存在する次亜塩素酸イオンの吸収極大波長292nmの吸光度を検出し、当該吸光度に基づいて汚染度を算出するものとしても差し支えない。
【実施例2】
【0055】
尚、前記実施例1では気液接触部10にて空気と接触する前の液体(水)中の次亜塩素酸の吸光度を検出する第2の汚染度検出部52と、空気と接触した後の水中の次亜塩素酸の吸光度を検出する第1の汚染度検出部51の2つの検出部を備えた検出手段16を設け、第2の汚染度検出部52にて検出される空気と接触する前の水中の次亜塩素酸の吸光度と、第1の汚染度検出部51にて検出される空気と接触した後の水中の次亜塩素酸の吸光度との差に基づいて気体の汚染度を算出するものとしたが、図7に示すように単一の検出部(第1の汚染度検出部51)にて検出手段16を構成し、当該第1の汚染度検出部51にて検出される水中の次亜塩素酸の吸光度から汚染度を算出するものとしても構わない。
【0056】
実施例1では空気に接触する前と後の水中の次亜塩素酸の吸光度差に基づいて汚染度を算出するため、電解部14にて生成される次亜塩素酸の量が解らなくても汚染度を算出することが可能であるが、本実施例のように単一の検出部(第1の汚染度検出部51)にて水中の次亜塩素酸の吸光度を検出する場合には、気液接触部10に供給される水中に汚染物質が含まれていないことと、気液接触部10に供給される次亜塩素酸の量が一定であることが必要がある。また、制御手段70には空気中に汚染物質がない状態での水中の次亜塩素酸の吸光度のデータを予め保有しておかなければならない。そして、制御手段70は、第1の汚染度検出部51にて検出される水中の次亜塩素酸の吸光度と予め保有する空気中に汚染物質がない状態での水中の次亜塩素酸の吸光度のデータとを比較して、空気の汚染度を算出する。
【0057】
本実施例の如く単一の第1の汚染度検出部51にて検出手段16を構成しても、制御手段70に予め空気中に汚染物質がない状態での水中の次亜塩素酸の吸光度のデータを保有させることで、第1の汚染度検出部51にて検出される水中の次亜塩素酸の吸光度と上記保有された次亜塩素酸の吸光度のデータとから汚染度を算出することが可能となる。
【0058】
本実施例では図7に示すように第1の汚染度検出部51を水貯蔵部12と電解部14とを接続する配管34上に介設するものとしたが、これに限らず、気液接触部10を通過後から電解部14に入るまでの間の液体循環経路35内であれば、何れに設けても差し支えない。また、図7に破線で示すように配管34に汚染度検出用の配管80を介設して、当該配管80上に第1の汚染度検出部51を設置するものとしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の汚染度検出装置を一実施例の空気処理装置の概略図である。
【図2】図1の汚染度検出装置の各汚染度検出部を模式的に示した説明図である。
【図3】本発明の空気処理装置の制御手段のブロック図である。
【図4】本実施例の制御手段の制御を示すフローチャートである。
【図5】吸光度差の変化を示す図である。
【図6】吸光度差と汚染度の関係を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例の汚染度検出装置を備えた実施例2の空気処理装置の概略図である。
【符号の説明】
【0060】
W 空気処理装置
Z 汚染度検出装置
10 気液接触部(気液接触手段)
12 水貯蔵部
14 電解部(電解手段)
16 検出手段
20 電解槽
20A 取出口
20B 取込口
22、23 電極
25 電源
30、32、34 配管
35 液体循環経路
51 第1の汚染度検出部
52 第2の汚染度検出部
55 汚染度表示部(表示手段)
60 光源
61 液体流路
62 光検出部
64 信号変換装置
65 表示部
70 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体とを接触させるための気液接触手段と、
前記液体中に活性酸素種を生成する生成手段と、
前記気液接触手段にて前記気体と接触した前記液体中の活性酸素種の吸光度を検出するための検出手段と、
該検出手段が検出する前記液体中の活性酸素種による当該液体の吸光度に基づき、前記気体の汚染度を算出する制御手段とを備えたことを特徴とする汚染度検出装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記気液接触手段において前記気体と接触する前の前記液体中の活性酸素種の吸光度を合わせて検出すると共に、
前記制御手段は、前記検出手段が検出する前記気体と接触する前の前記液体中の活性酸素種の吸光度と、前記気体と接触した後の前記液体中の活性酸素種の吸光度との差に基づいて前記気体の汚染度を算出することを特徴とする請求項1に記載の汚染度検出装置。
【請求項3】
前記気体の汚染度を表示する表示手段を備え、
前記制御手段は、算出した前記気体の汚染度を当該表示手段に表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚染度検出装置。
【請求項4】
前記活性酸素種生成手段は、電解手段から成り、
該電解手段は、前記液体中に次亜塩素酸を生成すると共に、
前記検出手段は、前記液体に照射した光のうち前記次亜塩素酸による光吸収の大きい波長の光での吸光度を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚染度検出装置。
【請求項5】
前記気液接触手段に前記気体を通過させることにより、当該気体中の汚染物質を除去することを特徴とする請求項4に記載の汚染度検出装置を用いた空気処理装置。
【請求項6】
前記気体の汚染度に応じて、前記電解手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の空気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−46068(P2008−46068A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224021(P2006−224021)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】