説明

汚染物質保管施設

【課題】有害汚染物質の保管のための安全確実な容器を大量に安価に供給する。また、その保管場所の
地代等の負担を十分に軽減できるようにする。
【解決手段】無機質ケイ酸を主成分とする止水処理剤により、外表面を改質処理した多孔質石材容器を
汚染物の保管場所に配列する。コンクリート等の安価な多孔質石材容器の外表面を改質処理して止水塗
膜を形成しておけば、長期間、十分な密閉性を保持したまま野路で汚染物質を保管できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、放射性物質を含む汚染物質が無害化するまで長期間保管をするために使用する汚
染物質保管施設に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故により飛散した放射性物質が、様々な場所で環境を汚染している。汚染濃度の高
い地域では、道路等の表面の土を削り取るといった処理が行なわれている。この場合に、大量の汚泥等
の汚染物質の処分方法が問題になっている。高濃度の放射性物質については、各種の処理技術が紹介さ
れている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−28627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。低濃度の放射性汚染物質はきわめて大
量に発生する。たとえそれを濃縮できたとしてもなお、広大な処分地が必要になる。それらが無害化す
るまで、処分地に長期間保管せねばならないが、その間に汚染物質が流出したり飛散したりするような
保管方法は採用できない。
上記の課題を解決するために、本発明は次のような汚染物質保管施設及びその保管方法を提供するこ
とを目的とする。
(1)保管のための安全確実な容器を大量に安価に供給する。
(2)保管場所の地代等の負担を十分に軽減できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
無機質ケイ酸を主成分とする止水処理剤により、外表面を改質処理した多孔質石材容器を汚染物の保
管場所に配列したことを特徴とする汚染物質保管施設。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の汚染物質保管施設において、前記改質処理は、前記多孔質石材容器の表面から前記止
水剤を含浸させて止水壁を形成し、かつ、前記多孔質石材容器の表面に前記止水剤による均一な止水性
塗膜を形成することを特徴とする汚染物質保管施設。
【0007】
〈構成3〉
構成1または2に記載の汚染物質保管施設において、前記多孔質石材容器は、コンクリート板材から
成ることを特徴とする汚染物質保管施設。
【0008】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、前記多孔質石材容器は、ALC
(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)板材から成ることを特徴とすることを特徴とする汚染
物質保管施設。
【0009】
〈構成5〉
構成1乃至3のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、前記多孔質石材容器は、自然石から成
ることを特徴とする汚染物質保管施設。
【0010】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、前記多孔質石材容器には、内面及び外
面の両方が、無機質ケイ酸を主成分とする止水処理剤により改質処理されていることを特徴とする汚染
物質保管施設。
【0011】
〈構成7〉
構成1乃至6のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、前記改質処理は、前記汚染物を収容し
た前記多孔質石材容器の蓋部と器部の隙間に、前記止水剤を浸透させて止水壁を形成し、かつ、前記隙
間を封止する止水壁を形成することを特徴とする汚染物質保管施設。
【0012】
〈構成8〉
構成1乃至7のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、前記配列された容器の上面には、前記
容器に照射される日光の直射を防ぐ位置に、太陽光発電パネルが配置されていることを特徴とする汚染
物質保管施設。
【発明の効果】
【0013】
〈構成1の効果〉
コンクリート等の安価な多孔質石材容器の外表面を改質処理して止水塗膜を形成しておけば、長期間
、十分な密閉性を保持したまま野路で汚染物質を保管できる。
〈構成2の効果〉
多孔質石材容器の表面から前記止水剤を含浸させて所定の厚みの止水壁を形成するとともに、最外層
に止水剤による均一な止水性塗膜を形成すれば、機械的強度も耐候性も優れた密閉容器となる。
〈構成3の効果〉
一般のコンクリート板材が最も製造し易い。また、適度な密度の多孔質材となるから、止水処理のた
めの改質に最も適している。
〈構成4の効果〉
建材として汎用されているALCを使用することで、容器を安価に大量生産できる。また、多孔質材
であり、止水処理のための改質に適している。
〈構成5の効果〉
自然石の場合には、比較的強度の高い容器が提供できる。
〈構成6の効果〉
容器の内面及び外面に止水処理をすれば、容器の耐久性が向上する。
〈構成7の効果〉
容器本体に蓋をした後に、容器本体と蓋の隙間まで密閉されるように、止水剤による改質処理を施す
と、容器に別途密閉用のシール材等を設ける必要がなくなる。
〈構成8の効果〉
容器への日光の直射を避ける日除けに、太陽光発電パネルを使用すれば、容器の温度上昇を防ぎ、容
器の劣化を抑制し、かつ、売電により施設の管理費等を捻出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の汚染物質保管施設の主要部を示し、(a)は分解斜視図、(b)はA−A線に沿う横断面図である。
【図2】実施例3の多孔質石材容器を示し、(a)はその外観斜視図、(b)はB−B線に沿う主要部拡大横断面図である。
【図3】汚染物質保管施設の実施例斜視図である。
【図4】本発明の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の汚染物質保管施設の主要部を示し、(a)は分解斜視図、(b)はA−A横断面図で
ある。
後で図3を用いて説明する汚染物質保管施設には、図1(a)に示すような多孔質石材容器17を多
数配列する。多孔質石材容器17は、例えば、縦1m、横2m、高さ1mのコンクリート製の箱とする
。この中に、例えば、汚染物質を詰めたポリエチレン製の袋20を収納する。
【0017】
多孔質石材容器17は、蓋部18と器部19とで構成される。器部19に蓋部18を被せて封印する
。ここで、図1(b)に示すように、蓋部18と器部19の外表面14を止水処理剤により、改質処理
する。蓋部18と器部19を共にコンクリートのような多孔質石材にしたのは、止水処理剤がある程度
の深さまで浸透して、堅固で安定な止水壁16を形成することができるからである。単に容器の表面に
止水性の塗膜を形成するよりも、圧倒的に長期安定性に優れている。
【0018】
止水処理剤は、無機質ケイ酸を主成分とするものが好ましい。例えば、株式会社NNCコーポレーシ
ョン社製のナノコンシーラ(商品名)が適する。コンクリート板の表面に塗布すると、表面状態にもよ
るが、6mm〜20mm程度浸透して、堅固な止水壁16を形成することができる。
【0019】
蓋部18と器部19を工場で生産するとき、最終工程で上記の改質処理を行えばよい。またあるいは
、汚染物入り袋20を収容して器部19に蓋部18を被せた後に、止水処理剤を塗布するようにしても
構わない。容器の外側から処理をすることができるので非常に作業性が良いという特徴がある。
【0020】
汚染物の保管場所にこの容器を多数配列して、例えば、放射線量が安全なレベルになるまで、長期間
保存する。野積みにする場合には、太陽光や風雨にさらされて、容器の表面から劣化が始まる。上記の
止水壁16は長期間安定にコンクリート板全体を保護する。
【実施例2】
【0021】
上記の実施例では、多孔質石材容器17にコンクリート板を使用した、コンクリート板材は製造し易
くコストも安い。また、適度な密度の多孔質材となるから、止水処理のための改質に適している。特に
、一般住宅用建材に使用されるALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)板材は、大量に
生産され、サイズも取り扱いも容易で、本発明の多孔質石材容器17に最適である。
【0022】
また、山から切り出した石棺、即ち、自然石を使用することもできる。その場合にも、止水処理剤が
浸透する多孔質材が好ましい。多数のひび割れを有する石棺を止水処理剤で改質して使用することがで
きる。また、上記の例では、容器の外側のみを改質処理したが、蓋部18と器部19の内面及び外面の
両方を、無機質ケイ酸を主成分とする止水処理剤により改質処理して、さらに耐久性を高めることがで
きる。
【実施例3】
【0023】
図2は実施例3の多孔質石材容器を示し、(a)はその外観斜視図、(b)はB−B線に沿う主要部
拡大横断面図である。
図2(a)に示すように、汚染物入り袋20を収容して器部19に蓋部18を被せて、汚染物質保管
施設に配列した後に、止水処理剤を塗布して、さらに強固に止水処理をすることができる。
【0024】
この例では、図2(b)に示すように、蓋部18と器部19の隙間に、前記止水剤を浸透させて止水
壁16を形成し、かつ、前記隙間を封止する止水壁16を形成する。例えば、蓋部18と器部19には
、予めその外表面に止水壁16が形成されているものとする。蓋部18を器部19に被せた後に、全体
に止水処理剤を塗布して、止水性塗膜22を形成する。止水壁16の表面にさらに強固な塗膜が形成さ
れて、耐久性を向上させることができる。
【0025】
さらに、蓋部18と器部19の隙間に、止水処理剤を十分に塗布すると、図2(b)に示すように、
両者の対向面に止水壁16が形成される。これと同時に、蓋部18と器部19の隙間に染み込んだ止水
処理剤が、隙間全体を封止する止水壁16を形成する。即ち、この部分の止水壁16が一体化して、蓋
部18と器部19の隙間を完全に封止する。
【0026】
容器に蓋をした後に、蓋部18と器部19の隙間まで完全に密閉されるので、長期間、風雨や太陽光
に曝されて気密性を損なったり、容器の内部に収容された汚染物質が外部に漏れ出すようなことがない

【実施例4】
【0027】
図3は、汚染物質保管施設10の実施例斜視図である。
例えば、図のように、汚染物の保管場所に、上記の実施例で説明した容器を多数配列する。例えば、
器部19の底にはフォークリフトの爪を差し込む凹部28を設けておく。これにより、図3のように容
器を2段あるいは数段積み上げて保管場所を有効に利用できる。
【0028】
ここで、夏期にこれらの容器に直射日光が当たると容器の劣化が促進される。また、容器の内部が高
温になり、内圧が高まって、汚染性のガス漏れを発生させるおそれがある。そこで、この実施例では、
汚染物質保管施設10に配列した容器の上面であって、容器に照射される日光の直射を防ぐ位置にボー
ド24を設けた。そして、ボード24上に太陽光発電パネル26を配列した。
【0029】
このように、容器への日光の直射を避ける日除けに、太陽光発電パネルを使用すれば、容器の温度上
昇を防ぎ、容器の劣化を抑制し、かつ、売電により汚染物質保管施設10の管理費等を捻出できるとい
う効果がある。
【実施例5】
【0030】
図4は本発明の変形例の斜視図である。
上記の実施例では、多数の容器を配列したものの上面に大サイズのボードと太陽光パネルを配置した
。しかしながら、図4(a)に示すように、個々の容器の壁面に太陽光パネルを固定することも可能で
ある。また、上記の実施例の容器はフォークリフトで運搬可能なコンテナサイズのものとしたが、図4
(b)に示すように、小屋や倉庫状の大サイズの容器にも本発明が同様に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
10 汚染物質保管施設
14 外表面
16 止水壁
17 多孔質石材容器
18 蓋部
19 器部
20 汚染物入り袋
22 止水性塗膜
24 ボード
26 太陽光発電パネル
28 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質ケイ酸を主成分とする止水処理剤により、外表面を改質処理した多孔質石材容器を汚染物の保
管場所に配列したことを特徴とする汚染物質保管施設。
【請求項2】
請求項1に記載の汚染物質保管施設において、
前記改質処理は、前記多孔質石材容器の表面から前記止水剤を含浸させて止水壁を形成し、かつ、前
記多孔質石材容器の表面に前記止水剤による均一な止水性塗膜を形成することを特徴とする汚染物質保
管施設。
【請求項3】
請求項1または2に記載の汚染物質保管施設において、
前記多孔質石材容器は、コンクリート板材から成ることを特徴とする汚染物質保管施設。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、
前記多孔質石材容器は、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)板材から成ることを
特徴とすることを特徴とする汚染物質保管施設。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、
前記多孔質石材容器は、自然石から成ることを特徴とする汚染物質保管施設。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、
前記多孔質石材容器には、内面及び外面の両方が、無機質ケイ酸を主成分とする止水処理剤により改
質処理されていることを特徴とする汚染物質保管施設。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、
前記改質処理は、前記汚染物を収容した前記多孔質石材容器の蓋部と器部の隙間に、前記止水剤を浸
透させて止水壁を形成し、かつ、前記隙間を封止する止水壁を形成することを特徴とする汚染物質保管
施設。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の汚染物質保管施設において、
前記配列された容器の上面には、前記容器に照射される日光の直射を防ぐ位置に、太陽光発電パネル
が配置されていることを特徴とする汚染物質保管施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88235(P2013−88235A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227873(P2011−227873)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(511250471)有限会社小椋産業 (1)
【出願人】(509312695)株式会社エア−・マンズ (1)
【Fターム(参考)】