説明

汚水および/または汚泥の処理システム

【課題】汚水および/または汚泥の処理システムを提供する。
【解決手段】水中に存在する複数のカイミジンコ21の活動領域20を含む第1の槽10と、複数のカイミジンコ21により処理される有機物を含む被処理物22(22b)を活動領域20に供給する供給路11とを有する、汚水および/または汚泥の処理システム1を提供する。この処理システム1においては、活動領域20に空気24を供給する曝気装置13をさらに有する。この処理システム1においては、複数のカイミジンコ21および/またはその屍骸を含む残留物30を活動領域20から回収する回収路(回収管)12bをさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水および/または汚泥の処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、嫌気性消化法や好気性消化法のような生物学的な汚泥減量化方法を見直し、オゾンによる減量化技術と組み合わせて、より効果的で、経済的な汚泥減量化方法を提供することが記載されている。そのため、特許文献1には、有機性汚泥を嫌気性消化工程で嫌気性消化した後、該消化汚泥にオゾンを添加して可溶化し、該可溶化汚泥をさらに好気性微生物の存在下で曝気処理する有機性汚泥の減量化方法であり、好ましくは、嫌気性消化工程に膜分離手段を設け、生物学的な消化汚泥を固液分離して固形汚泥のみをオゾンを添加して可溶化することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、水産加工業や畜産業等から排出される汚水を、食品加工用微生物と土壌微生物により、低コストで汚水を浄化する処理方法を提供することが記載されている。そのため、特許文献2には、汚水の汚濁原因物質を、微生物担体とした火山れきや火力発電所石炭灰中を通過させることにより捕捉粗大化させ取り除き、微生物の働きにより浄化し、覆土した土壌中に繁殖させた小動物により空間内に捕捉された汚濁原因物質を分解することを特徴とする汚水の浄化方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−136100号公報
【特許文献2】特開2000−301185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下水の活性汚泥処理施設などからは大量の下水汚泥、余剰活性汚泥や生汚泥などの有機性汚泥が発生する。工場の廃液あるいは排水処理過程においても、同様に有機性汚泥が発生する。これらの処理施設は日本においてもなお増加傾向を示しており、世界的にはさらに増加せざるを得ず、増大する汚泥の処理処分が問題となる。さらに、河川や沼、池や湖、海などの底には沈殿した有機物などを多く含む泥(ヘドロ)が堆積したり、堆積しつつあり、この泥の処理も問題となる。
【0006】
これらの有機物を多く含む泥状の物質(以降では、汚泥または原汚泥と呼ぶ)の処理方法の1つは、脱水助剤(有機高分子ポリマーなど)を添加し、脱水機で脱水した後、焼却処分することである。汚泥が大量の場合には、脱水機及び焼却炉が大規模なものになり、設備費、維持管理費などが多大の額となる。さらに、焼却処分は経済的な困難性だけではなく、二酸化炭素を含む大気汚染物質を排出するという問題がある。
【0007】
特許文献1に記載されているような微生物を用いた生物学的な汚泥減量化方法があり、それには嫌気性消化法や好気性消化法が知られている。しかしながら、それら生物学的な汚泥減量化方法は、長時間の滞留時間を必要とする割には減量化率が劣り、また、結果として難脱水性汚泥を生ずる等の問題があり十分とはいえない。特許文献2に記載されている、覆土と、その覆土した土壌中に繁殖させた小動物、たとえば、ミミズなどによる土壌改良を伴う方法は、多少の効果が得られるために少なくとも半年あるいは1年といった時間が必要になり、定常的に発生する汚泥や大量の汚泥の処理には不向きである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、水中に存在する複数のカイミジンコの活動領域を含む第1の槽と、複数のカイミジンコにより処理される有機物を含む被処理物を活動領域に供給する供給路とを有する、汚水および/または汚泥の処理システムである。
【0009】
この処理システムにおいては、第1の槽により複数のカイミジンコの活動領域を規定し、その活動領域に有機物を含む被処理物を供給する。このため、被処理物の中に含まれる有機物などを複数のカイミジンコに処理(分解、捕食)させて有機物量(汚泥量、有機物濃度、BOD濃度)を減らすことができる。
【0010】
ミジンコなどの水生小動物は、活性汚泥法を用いた下水処理システムなどにおいては微生物を捕食するために除去対象になるものである。本発明においては、多数の水生小動物を第1の槽に集中させて活動領域を規定し、多数の水生小動物の旺盛な捕食能力を利用し、汚水の浄化と汚泥の減量を図る。水生小動物のうち、カイミジンコは、体長が約0.3mmから5mmと小さく、固い石灰質の2枚の殻で覆われており、エビやカニと同じく水生甲殻類に属するものである。そして、カイミジンコはプランクトンのような浮遊生物とは異なり主に底生生活をするために活動領域を規定しやすく、さらに沈殿しやすい汚泥との接触効率が高く、雑食である。したがって、効率よく汚泥を減量できる。
【0011】
また、多くのカイミジンコは体長が1mm前後であるため、多数のカイミジンコを流動体として人為的に、あるいは機械を用いて取り扱うことが容易であり、活動領域のカイミジンコ量の調整や、回収を行いやすい。その一方、原生動物や後生動物のような微小な動物とは異なり、餌となる汚泥を様々な方法で粉砕して動物の口より小さくしなくても捕食し、さらに、自己の体よりも大きな餌であっても捕食することも多い。したがって、単純な構成で汚泥の減量効果の高い処理システムを提供できる。このため、カイミジンコを用いることにより定常的に発生する汚泥や大量の汚泥を比較的短期間に処理できるシステムを提供できる。
【0012】
さらに、活性汚泥法で用いられる微生物や原生動物などのように、育成するための泥あるいはその他の培地は基本的に不要であり、処理システムを簡易化しやすい。また、カイミジンコは、2枚の殻の中などに水分を蓄えて補給することができるので比較的乾燥にも強く、生物を用いた処理システムであって、安定した性能を発揮できる処理システムを提供できる。
【0013】
さらに、カイミジンコは、汚泥中の有機物を捕食し、窒素、リンなどの成分を体内に固定し、カルシウムおよび炭素を殻として固定する。そして、体長が1mm前後で比較的高濃度で存在するので容易に回収できる。このため、処理システムからカイミジンコを回収して肥料、堆肥あるいは上記の素材の供給元として利用できる。さらに、殻の成分は炭酸カルシウムであり、汚泥処理による二酸化炭素の空気中への放出も抑制できる。
【0014】
この処理システムは、単独でヘドロなどの汚泥の処理に用いることができる。また、供給路を介して雑排水などの汚水を第1の槽に供給することにより簡易な構成の下水あるいは排水処理システムを構築できる。さらに、他の処理システムあるいは処理槽からの被処理物をカイミジンコの活動領域に供給することにより複数槽構成の下水処理システムあるいは排水処理システムの一部として用いることも可能である。活動領域を含む第1の槽の上流側に設けられた各種処理槽から排出された汚泥などの被処理物を活動領域に受け容れ、被処理物に含まれる有機物などを飼料(餌)としてカイミジンコが自己増殖するので、カイミジンコにより被処理物(汚泥)を処理できる。すなわち、カイミジンコの捕食により汚泥を減量あるいは減容できる。
【0015】
第1の槽は汚泥を含む排水が流下するシステムの一部であってもよい。第1の槽に排水を適当な時間滞留させることによりカイミジンコにより排水を浄化し、浄化された水を川などに放流できる。第1の槽は、汚泥の処理を効率よく行うことができる程度のカイミジンコが集中して存在する活動領域を確保できるものであればよく、浄化された水とともに活動領域からある程度のカイミジンコが流出することは、この処理システムの効率を低下する要因にはなりにくい。また、カイミジンコ自体は川などに分散している生物であり、流出したカイミジンコが生態系を破壊するような事態は発生しにくい。
【0016】
この処理システムにおいては、活動領域に空気を供給する曝気装置をさらに有することが望ましい。カイミジンコの活動領域に積極的に空気を供給することによりカイミジンコの活動、すなわち、汚泥の捕食による自己増殖をさらに活性化でき、汚泥を含む被処理物の中に含まれる有機物の除去および減量をさらに効率よく行うことができる。上流において曝気された排水あるいは汚泥を活動領域に供給することも好ましい。
【0017】
この処理システムにおいては、複数のカイミジンコおよび/またはその屍骸を含む残留物を活動領域から回収する回収路をさらに有することが望ましい。被処理物の中に含まれる有機物や汚泥などを分解(捕食)したカイミジンコおよび/またはその屍骸を活動領域から回収し、肥料などの他の製品の原料として使用できる。
【0018】
この処理システムにおいては、有機物を含む排水を曝気する曝気槽を第1の槽の上流側にさらに有し、被処理物は、曝気槽から排出された汚泥を含んでいてもよい。第1の槽を、曝気槽において発生した余剰汚泥を減量する汚泥処理槽として使用できる。
【0019】
この処理システムにおいては、有機物を含む排水を曝気する曝気槽を第1の槽の下流側にさらに有し、被処理物は、排水を含むものであってもよい。第1の槽を曝気槽の前処理槽として使用し、カイミジンコにより排水中の有機物を分解(捕食)させて排水中の有機物量を減少できる。このため、第1の槽の下流側の曝気槽のBOD負荷(有機物流入負荷)を軽減できる。したがって、曝気槽をコンパクトにしたり、曝気槽出口の水質を向上できる。このため、第1の槽を採用することにより、下水処理設備のイニシャルコストやランニングコストの軽減を図り、また、処理後の水の水質向上を図ることができる。
【0020】
この処理システムにおいては、活動領域の温度を制御する装置をさらに有することが望ましい。カイミジンコが増殖しやすい温度は24〜26℃であり、活動領域をその温度に制御することにより汚泥をさらに効率よく減量できる。一方、第1の槽に流入する汚泥量が少ないときは活動領域の温度を上記の範囲からずらすことによりカイミジンコの個体数を制御し、カイミジンコが増殖しすぎて餌がなくなり生息環境が破壊されるような状態が発生することを抑制できる。
【0021】
この処理システムにおいては、活動領域のpH値を制御する装置をさらに有することが望ましい。水性甲殻類のカイミジンコは、その多くが淡水産であるが海産もある。淡水産の場合はpH値を7前後(中性)、海産の場合はpH値を8前後(弱アルカリ性)に制御することにより、上記の温度制御と同様にカイミジンコの個体数を制御できる。
【0022】
この処理システムにおいては、活動領域に栄養剤を供給する装置をさらに有することが望ましい。カイミジンコの活動は硫酸マグネシウムや塩化カルシウムなどの栄養剤を供給することにより活発になる。したがって、上記の温度制御と同様に栄養剤の供給量を制御することによりカイミジンコの個体数を制御できる。
【0023】
この処理システムにおいては、活動領域から重金属を除去する装置をさらに有することが望ましい。除去する装置の典型的なものは活性炭などの吸着材であり、カイミジンコの飼育(生育)の阻害要因となり得る重金属類を吸収除去することにより、カイミジンコの個体数を制御できる。
【0024】
本発明の異なる態様の1つは、上記活動領域から回収された残留物、すなわち、カイミジンコおよび/またはその屍骸を含む肥料である。カイミジンコは体長が約0.3mmから5mmと小さいので、大量のカイミジンコまたはその屍骸を効率よく回収することができる。さらに、カイミジンコは石灰質の2枚の殻で覆われているため、複数のカイミジンコを含む肥料(堆肥)はカルシウム成分を豊富に含んだ良好な肥料となる。
【0025】
本発明のさらに異なる態様の1つは、汚水および/または汚泥の処理方法であり、水中に存在する複数のカイミジンコの活動領域を形成する工程と、有機物を含む被処理物を活動領域に供給する工程と、被処理物を複数のカイミジンコに処理させる工程とを有する。排水が流下する場所などにおいてはコンクリートなどにより人工の構造物を育成槽として形成して活動領域を規定することが望ましい。また、池、湖、海などの水域においては、カイミジンコが通過しない程度のメッシュの網などにより一部を囲い込んだり、濠、生簀などを育成槽として形成し、活動領域を規定することが望ましい。上述したように、育成槽のカイミジンコの活動領域に被処理物を供給することにより、被処理物をカイミジンコにより分解(捕食)させることができる。被処理物を複数のカイミジンコに処理させる工程においては、活動領域に空気を供給することが望ましい。
【0026】
この処理方法は、さらに、複数のカイミジンコおよび/またはその屍骸を含む残留物を活動領域から回収する工程をさらに有することが望ましい。被処理物の中に含まれる有機物や汚泥などを分解(捕食)したカイミジンコおよび/またはその屍骸を含む残留物を活動領域から回収し、肥料などの原料として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の槽の上流側に曝気槽を有する処理システムを模式的に示す構成図。
【図2】第1の槽を抜き出して、概略を模式的に示す断面図。
【図3】第1の槽の下流側に曝気槽を有する処理システムを模式的に示す構成図。
【図4】第1の槽を河川に導入した処理システムを模式的に示す構成図。
【図5】第1の槽を湖沼に導入した処理システムを模式的に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に、本発明にかかる処理システム1を模式的に示している。図2に、処理システムに含まれるカイミジンコ処理槽を抜き出して、その概略構成を模式的に示している。
【0029】
この処理システム1は、上流側1aから順に、曝気沈砂槽91、原水ポンプ槽92、流量調整槽93、嫌気性ろ床槽94、接触曝気槽(曝気槽)95、沈殿槽96、汚泥濃縮槽97、汚泥貯留槽98および第1の槽(カイミジンコ処理槽)10を有する。曝気沈砂槽91、原水ポンプ槽92、流量調整槽93、嫌気性ろ床槽94、接触曝気槽(曝気槽)95、沈殿槽96、汚泥濃縮槽97および汚泥貯留槽98としては、公知の排水処理機構、たとえば、農業集落排水処理システム(JARUSIII型処理システム)の排水処理機構に含まれるものであってもよい。したがって、この処理システム1は、既存の排水処理システムに本発明にかかる第1の槽10を加えることにより構成することが可能である。
【0030】
この処理システム1においては、系外から送られてきた生活排水などの汚水(有機物を含む排水)22aは曝気沈砂槽91に流入される。曝気沈砂槽91において土砂類が排除された汚水22aは、水中ポンプ91aにより曝気沈砂槽91から汲み上げられて最初のバッファである原水ポンプ槽92に送られる。原水ポンプ槽92に送られた汚水22aは、水中ポンプ92aにより汲み上げられて流量調整槽93に送られる。流量調整槽93は、汚水22aを一時貯留し、流量および水質の変動を平準化する。流量調整槽93は、嫌気性ろ床槽94より下流側1bの槽に対する負荷条件の均一化および処理システム1の性能の安定化を図るものである。
【0031】
流量調整槽93の下流の嫌気性ろ床槽94は、槽内に充填された接触材を含み、流入された汚水22aは接触材に付着された嫌気性微生物により嫌気性処理される。また、嫌気性ろ床槽94は、下流の接触曝気槽(曝気槽)95からの流出水を含む汚泥(返送汚泥)22cを受け入れ窒素除去も行われる。
【0032】
嫌気性ろ床槽94の下流の接触曝気槽95は槽内に充填された接触材を含み、曝気装置95aにより槽の底部に空気が供給されるようになっている。曝気装置95aは、槽外に設置されたブロワー95bと、ブロワー95bから供給される空気を槽の底部に導く空気管95cとを含む。接触曝気槽95においては、流入された汚水22aに空気が供給され、汚水22aは、接触材表面の生物膜と接触し、好気的な状態で生物処理(活性汚泥処理)される。接触曝気槽95から流出した処理水25および汚泥(余剰汚泥)22bは、沈殿槽96に送られる。沈殿槽96においては汚泥22bを沈降させて固液分離を行い、処理水25は塩素消毒されてから放流される。沈殿槽96から引き抜かれた汚泥22bは汚泥濃縮槽97に送られ濃縮される。
【0033】
汚泥濃縮槽97へは、沈殿槽96から引き抜かれた汚泥(余剰汚泥)22bと、接触曝気槽95から嫌気性ろ床槽94に返送された汚泥(返送汚泥)22cの一部が余剰汚泥22bとして送られ濃縮される。濃縮された余剰汚泥22bは、さらに、汚泥貯留槽98に送られ貯留される。汚泥22bの輸送は重力を用いてもよく、ポンプなどを用いてもよい。なお、上記の各槽の配置、組み合わせは一例であり、たとえば、汚水22a、余剰汚泥22b、返送汚泥22cなどの被処理物22の流入汚濁濃度に応じて、嫌気性ろ床槽94および接触曝気槽95は複数設けてもよい。また、嫌気性ろ床槽94の代わりに、あるいは嫌気性ろ床槽94とともに沈殿分離槽を設けて、汚水22aに含まれる固形物を沈殿させて固液分離を行い、接触曝気槽95への流入負荷の安定化を図ってもよい。
【0034】
この処理システム1は、汚泥貯留槽98の下流側1bに設けられた汚泥減量化槽(第1の槽)10を含む。汚泥減量化槽10は、典型的には水23を収容したコンクリート製の水槽であって、カイミジンコ21を飼育(育成、生育)する槽である。したがって、汚泥減量化槽10は、水中に存在する複数のカイミジンコ21の活動領域20を内部に含む。さらに処理システム1は、汚泥貯留槽98に貯留された有機物を含む汚泥(余剰汚泥)22bを被処理物22として汚泥減量化槽10の活動領域20に供給する供給路11を含む。
【0035】
図2に、汚泥減量化槽10および汚泥減量化槽10に付属している幾つかの装置を抜き出して示している。以下では、汚泥減量化槽10および汚泥減量化槽10に付属している幾つかの装置を含めて汚泥減量システム19と称する。汚泥減量化槽(第1の槽)10は、上方向10cが開口となったコンクリート製の直方体状の容器であって、内部に水23を溜めることができる。汚泥減量化槽10は、グラスファイバーなど他の材料で構成することも可能であり、上方向10cが閉鎖されていてもよく、また、上方向10cに屋根、蓋などの構造物が設けられていてもよい。
【0036】
汚泥減量化槽10の内部の水23の中には複数のカイミジンコ21が生息しており、汚泥減量化槽10の内部にカイミジンコ21の活動領域20が形成されている。カイミジンコは主に底生生活をするため、汚泥減量化槽10の内部の底近くが主に活動領域20となる。
【0037】
汚泥減量システム19は、さらに、被処理物22である汚泥22bを汚泥減量化槽10の内部の活動領域20へ供給する供給路11を含む。供給路11は、汚泥減量化槽10の上部から底近くの活動領域20に達する配管システムであり、重力またはポンプなどにより汚泥貯留槽98から送られてきた汚泥22bを活動領域20に供給する。
【0038】
さらに、この汚泥減量システム19は、汚泥減量化槽10の活動領域20に空気24を供給する曝気装置13を有する。曝気装置13は、ブロワー13aと、ブロワー13aから吐出された空気24を汚泥減量化槽10の底部の活動領域20に導いて分散して放出(バブリング)する散気用パイプ13bとを含む。ブロワー13aの代わりにファン、コンプレッサーなどを用いてもよい。
【0039】
さらに、この汚泥減量システム19は、汚泥減量化槽10の底部付近から残留物30を回収する回収管(回収路)12bと、汚泥減量化槽10の上部付近から処理水25を排水する排水管12aとを含む。これらの排水管12aおよび回収管(回収路)12bは、汚泥減量化槽10の側壁10bを貫通するように設けてもよい。また、排水管12aおよび回収管(回収路)12bは、それぞれ、汚泥減量化槽10の上方向10cから汚泥減量化槽10の水域10wの上部に達する配管と、汚泥減量化槽10の水域10wの底部近傍に達する配管とにより形成してもよい。
【0040】
カイミジンコ21の多くの種類は主に汚泥減量化槽10の底またはその近傍で生活する。また、汚泥22bの多くは比重が水よりも大きく汚泥減量化槽10の底に堆積する。したがって、汚泥減量化槽10の底部近傍はカイミジンコ21の活動領域20となり、カイミジンコ21と汚泥22bとの接触効率が高く、汚泥22bが消費され、それとともにカイミジンコ21の世代交代が盛んに行われる。一方、汚泥減量化槽10の上部は、重力分離により汚泥22bの存在率が低く、汚泥22bが堆積された活動領域20の底近くに供給された新たな汚泥22bは堆積された汚泥22bがフィルタとなり上部に浮遊しにくい。したがって、汚泥減量化槽10の水域10wの上部は上澄み、すなわち、汚泥の少ない浄化された水が溜まりやすい。このため、上部の排水管12aにより、汚泥減量化槽10の上部に溜まった、浄化された水(処理水)25を回収できる。汚泥減量システム19の処理水25は、下流の川などに排水してもよく、接触曝気槽95または嫌気性ろ床槽94などへ戻してもよい。
【0041】
カイミジンコ21の一部は、曝気装置13により散気された空気24などにより浮遊し、汚泥減量化槽10の水域10wの上部にもある程度存在し、処理水25に含まれる比重の軽い汚泥22bを捕食する。したがって、汚泥減量化槽10においては、浮遊するタイプの汚泥22bであっても減量化が図られる。また、処理水25には、カイミジンコ21またはその屍骸(死骸)が含まれる可能性が高い。カイミジンコ21はそれ自体、自然界に存在するので、適当な量の放出であれば川などに未処理で放出しても環境への影響は少ない。一方、カイミジンコ21の大きさは1mm前後と微生物に比べると十分に大きいので適当なメッシュのフィルタを介して放流することにより、カイミジンコ21の放出を抑制できる。また、処理水25を接触曝気槽95に戻すことにより接触曝気槽95の微生物をカイミジンコ21が捕食する可能性がある場合は、処理水25は嫌気性ろ床槽94に戻すことが望ましい。
【0042】
汚泥減量化槽10の底近傍の部分は、底で生活するカイミジンコ21またはその死骸がもっとも蓄積されやすい部分と考えられる。したがって、汚泥減量化槽10の底あるいは底近傍から回収管(回収路)12bを介して適当なタイミングで残留物30を吸引などの方法により回収することにより、汚泥22bよりもカイミジンコ21またはその死骸を多く含む残留物30を回収できる。カイミジンコ21は、体長が約0.3mmから5mmと小さいため、ポンプなどを用いることにより活動領域20から大量のカイミジンコ21を回収しやすい。また、カイミジンコ21は、後述するように、殻を有し、炭酸カルシウムを多く含むので、他の小動物よりも炭素およびカルシウムを多く固定でき、二酸化炭素の排出を抑制でき、肥料などの原料としても利用できる。
【0043】
さらに、この汚泥減量システム19は、カイミジンコ21の個体数を制御する環境制御システム14を含む。環境制御システム14の主な制御対象は、活動領域20の温度と、pH値と、栄養剤と、重金属などの育成阻害要素の除去である。環境制御システム14は、汚泥減量化槽10の内部の状態をモニターするための幾つかのセンサー15a〜15cと、活動領域20の環境を制御するための幾つかの制御機構16b〜16eと、それらを制御するコントロールユニット(コントローラー)17とを含む。
【0044】
環境制御システム14は、汚泥減量化槽10の汚泥22bの量を監視するための汚泥レベルセンサー15aを含む。汚泥レベルセンサー15aとしては、超音波、静電容量、光センサーなどを用いたものがある。
【0045】
環境制御システム14は、汚泥減量化槽10の底近傍の温度を測定する温度センサー(サーモスタット)15bと、汚泥減量化槽10の底近傍に設置された温度制御機構(ヒーター)16bとを含む。コントローラー17は、サーモスタット15bが検出した温度と、汚泥レベルセンサー15aとの測定結果に基づき活動領域20の温度を制御する。
【0046】
カイミジンコ21の捕食活動を活発にするためには活動領域20の温度を24〜26℃に制御することが好ましい。汚泥減量化槽10が地下埋設型であって、流入する汚泥22bの温度が外気温に依存して大きく変動する環境になく、汚泥減量化槽10の内部に汚泥22bの堆積量がある程度確保されていれば、活動領域20の温度は比較的安定しており、カイミジンコ21の捕食活動を継続するのに適した温度になることが多い。しかしながら、冬季の温度が低下する地域においては活動領域20を加温できる装置が用意されていることが望ましい。一方、夏季の温度が非常に高温になる地域では、活動領域20を冷却できる装置が用意されていることが望ましい。
【0047】
また、汚泥減量化プロセスを継続するためにはある程度のカイミジンコ21を汚泥減量化槽10の内部で常に育成している必要があり、そのためには汚泥22bが汚泥減量化槽10に常に残っている必要がある。したがって、汚泥減量化槽10の汚泥22bの残量により温度を1つの要素としてカイミジンコ21の捕食力を制御し、個体数を制御することが望ましい。
【0048】
温度制御機構16bは、ヒーターに限られない。曝気装置13によりバブリングする空気を適当な方法で加温したり、冷却したりすることにより、活動領域20の温度を制御できる。温水を排水する工場設備、温泉、地下水源などがあれば温水、蒸気、地下水などを用いて温度制御することも可能である。
【0049】
環境制御システム14は、活動領域20のpH値をモニターするpHセンサー15cと、pH調整機構(薬液注入装置)16cとを含み、コントローラー17は活動領域20のpH値を監視して温度と同様の制御を行う。カイミジンコ21の生息に適したpH値は、淡水産のカイミジンコはpH値が7前後、好ましくは6.5〜8、海産のカイミジンコはpH値が8前後、好ましくは7.5〜9である。生活排水に含まれる汚泥22bを受け容れて減量する場合、pH制御が要求されるケースは少ないと予想される。特に、上流の接触曝気槽95などで処理された汚泥22bのpH値は、カイミジンコ21の育成条件とほぼ同じであることが多い。しかしながら、工場排水、ヘドロなどを含む汚泥22bにおいては、pH値がカイミジンコ21の育成に適した条件から外れている可能性があり、そのような場合は薬液注入装置16cにより有機系の酸あるいはアルカリ、または石灰などのカイミジンコ21に無害のpH調整剤を汚泥減量化槽10に投入したり、供給される汚泥22bに混ぜることが望ましい。
【0050】
さらに、環境制御システム14は、活動領域20に栄養剤を供給する栄養剤供給機構16dを有する。カイミジンコ21は、汚泥22bを主に捕食して増殖するが、汚泥22bに含まれる有機物および/または無機物だけでは栄養分が不足したり、栄養が片寄り、効率よく増殖しない場合がある。栄養剤供給機構16dでは、栄養剤として、たとえば、硫酸マグネシウムや塩化カルシウムを活動領域20に供給することにより、カイミジンコ21の増殖を促す。
【0051】
さらに、環境制御システム14は、汚泥減量化槽10の内部の主に重金属を吸着する吸着機構16eを含む。吸着機構16eの典型的なものは、粉末活性炭や粒状活性炭であり、カイミジンコ21の飼育(生育)の阻害要因となり得る重金属類を吸収する。
【0052】
カイミジンコ21は、体長が約0.3mmから5mmと小さく、固い石灰質の2枚の殻(貝殻)で覆われており、エビやカニと同じく水生甲殻類に属する。カイミジンコ21は、典型的には、甲殻類貝虫亜綱ポドコーパ目カイミジンコ科に属するハイナガカイミジンコである。この処理システム1においては、生活環境を維持できる汚泥減量化槽10にカイミジンコ21を育成するようにしているので、カイミジンコ21は乾燥などから守られ、汚泥22bという餌が豊富に与えられ、さらに、卵の孵化を促しやすい。カイミジンコ21の卵は、直径が約0.1mm程度とさらに小さいため、持ち運びが容易で、大量のカイミジンコ21の卵を汚泥減量化槽10に供給しやすい。また、カイミジンコ21は雑食で、藻類や植物性の物質、生物の死骸などさまざまなものを捕食するので、様々な有機物を含む可能性がある汚泥22bの減量化に適している。さらに、カイミジンコ21は、無性生殖(単為生殖)により自己増殖するので繁殖しやすく、この点でも汚泥22bの減量化に適している。多くのカイミジンコ21は淡水産で、水草の多い浅い池や水田などで底生生活をしており、沈殿しやすい汚泥22bの減量化に適している。また、カイミジンコ21は2枚の殻の中などに水分を蓄えて補給することができるので比較的乾燥にも強く、処理システム1に万一異常が発生したような場合でも、生存し、処理システム1を復帰しやすい。さらに、カイミジンコ21の農薬などの化学物質に対して敏感な性質を利用すれば、排水中に含まれる毒性の検査(毒性試験、バイオアッセイ)にも使用できる。カイミジンコ21、特にハイナガカイミジンコは、排水中に含まれる毒性の有無や性質を判定する指標生物として適している。
【0053】
本発明者らは、カイミジンコ21を用いて汚泥減量化実験を行った。まず、ビーカーにカイミジンコ21を約350匹と、河川水1.5リットルとを入れて、曝気により溶存酸素をほぼ飽和状態にし、恒温槽で25℃に維持した。ビーカー内の河川水のpH値は、pH緩衝剤を用いてpH値を8付近(弱アルカリ性)に調整した。1日置きに約0.3gずつ汚泥を投入していき、1週間で3回汚泥を投入し合計約1.0g投入した。そして、カイミジンコ21の栄養剤として硫酸マグネシウムおよび塩化カルシウムを適量添加した。
【0054】
同じ条件のもとで、カイミジンコ21が入っているビーカーと、入っていないビーカーとを用意して1週間後に懸濁(浮遊)物質量(SS)を測定した。カイミジンコ21が入っていないビーカーのSSが5mg/lであったのに対して、カイミジンコ21が入っているビーカーのSSは4mg/lであった。したがって、懸濁(浮遊)物質量(SS)を評価基準としたカイミジンコ21による汚泥の減量効果は約20%であった。このように、カイミジンコ21は汚泥減量化に有効であることが確認された。
【0055】
図1に示すように、この処理システム1は、汚泥減量化槽10から回収された残留物30により堆肥31を製造するシステム(堆肥製造システム)40を含む。底生生活を行うカイミジンコ21は、汚泥減量化槽10の底近傍に集まりやすく、カイミジンコ21は流動体として取り扱いできる程度に小さいので、ポンプなどにより大量のカイミジンコ21および/またはその死骸を効率よく回収できる。また、大型の貝などと異なり、破砕しなくても貝殻として炭酸カルシウムなどを回収する原料となる。堆肥製造システム40においては、残留物30と土とを適当な割合で混合および発酵させ、堆肥化している。
【0056】
したがって、汚泥減量化槽10から回収された残留物30は大量のカイミジンコ21および/またはその死骸を含み、これらは有機物を含む被処理物22を分解(捕食)しているので堆肥31またはその他の肥料として有効利用できる。さらに、カイミジンコ21は石灰質の2枚の殻で覆われているため、残留物30はカルシウム成分を豊富に含み、カルシウム成分を必要とする肥料の製造に適している。残留物30は、肥料以外の製品の原料に利用することも可能である。
【0057】
さらに、カイミジンコ21は、農薬などの化学物質や重金属に対して敏感であり、ある程度は体内に吸収(蓄積)されるものの、それらが多く存在する環境では生存できない。このため、環境汚染につながるような成分がカイミジンコ21に濃縮される可能性は小さく、汚染の拡大などの負の連鎖を断ち切れる原料としても有効である。したがって、汚泥減量システム19においては、毒性の指標生物としてカイミジンコ21を活用することにより環境汚染物質の流入を監視でき、環境汚染の拡大を抑制しやすい。さらに、貝殻は炭酸カルシウムであり、カイミジンコ21は炭素も豊富に固定し、二酸化炭素の放出および拡散の抑制に有効である。
【0058】
このように汚泥減量システム19においては、汚泥減量化槽10により水中に存在する複数のカイミジンコ21の活動領域20を形成し(第1の工程)、ポンプなどにより有機物を含む被処理物22である汚泥22bを活動領域20に供給し(第2の工程)、汚泥22bをカイミジンコ21に捕食させることにより処理(減量)させる(第3の工程)。そして、複数のカイミジンコ21またはその死骸を含む残留物30を活動領域20から回収すること(第4の工程)によりカイミジンコ21を資源として活用できる。
【0059】
なお、カイミジンコ21は、汚泥22bに含まれる有機物を捕食(分解)し、窒素やリンなどの成分を体内に吸収し固定するが、たとえば、カイミジンコ21の個体数に対して汚泥22bの供給量が多すぎるような場合、すなわちカイミジンコ21の増殖速度が汚泥22bの供給速度に比べて遅いような場合には、汚泥22bを分解する過程で高濃度の窒素やリンを体外に排出する場合も考えられる。この場合、処理水25には窒素やリンなどの栄養塩が豊富に含まれているため、吸着剤(吸着材)で窒素やリンの成分を吸着させた後に、処理水25を排水管12aから系外の川などへ排水することが好ましい。これにより、処理水25による系外の水域の富栄養化を防止できる。さらに、窒素やリンを吸着させた吸着剤は、栄養塩を豊富に含んだ良好な肥料やその原料、工業原料などに有効利用できる。あるいは、窒素やリンなどを含んだ処理水25の一部を汚泥減量化槽10からポンプなどで回収し、栄養塩を豊富に含んだ処理水25を液肥(水肥)として水耕栽培などに利用することもできる。以降の実施形態においても同様である。
【0060】
図3に、上記と異なる処理システムの例を示している。この処理システム1xは、2連の曝気槽95xおよび95yを有し、上流側1aの曝気槽95xを、カイミジンコ21を育成する槽(カイミジンコ処理槽、第1の槽)10aにしている。この処理システム1xは、嫌気性ろ床槽94から供給される汚水(排水)22aを受け入れ、カイミジンコ処理槽10aの曝気装置13から放出される空気量を多くしカイミジンコ21の育成に十分な溶存酸素を確保するとともに、カイミジンコ処理槽10aに浮遊するカイミジンコ21の割合を増やすことで、カイミジンコ処理槽10aを通過する処理水中に浮遊する汚泥(スカム)もカイミジンコ21により処理されるようにしている。カイミジンコ処理槽10aの処理水(カイミジンコ処理槽10aの上部からの排水)25は、下流側1bの曝気槽95yに供給され、さらに処理される。なお、上記の実施形態と共通する構成については共通の符号を付して説明を省略する。以下の実施形態においても同様である。
【0061】
この処理システム1xは、曝気槽95yの上流にカイミジンコ処理槽10aを有し、有機物を含む排水22aはカイミジンコ処理槽10aの活動領域20で前処理される。したがって、カイミジンコ21により分解(捕食)させて有機物量が減少した処理水25を下流の曝気槽95yへ供給できる。このため、曝気槽95yのBOD濃度(有機物流入負荷)を軽減でき、曝気槽95yの容量を小さくできる。したがって、処理システム1xのイニシャルコストやランニングコストの軽減を図ることができる。
【0062】
この処理システム1xにおいては、曝気槽95yにおいて汚泥(返送汚泥)22cを直接、あるいは嫌気性ろ床槽94を介してカイミジンコ処理槽10aへ返送することにより、処理システム1xから放出される汚泥を減量したり、汚泥の放出をほぼ零に抑えることができる。カイミジンコ処理槽10aは、この処理システム1xのさらに上流の、たとえば、処理システム1xに導入される生汚泥を受け容れる槽に配置することも可能である。カイミジンコ21は雑食で、自己の体のサイズより大きな餌であっても捕食することができる。このため、生汚泥の減量と粉砕とをカイミジンコ21により行うことも可能である。
【0063】
図4に、さらに異なる処理システム1yの概要を模式的に示している。この処理システム1yにおいては、水中に設けられたカイミジンコ21が通過しない程度のメッシュの網29によりカイミジンコ育成槽(カイミジンコ処理槽、第1の槽)10cを構成し、筏50あるいは船などの浮遊物により河川、湖沼、海などの水域100に浮かべ、水域100の底に堆積している汚泥(ヘドロ)22dをカイミジンコ育成槽10cへ供給する。ある程度の量のカイミジンコ21が集中して管理できる領域を活動領域20として規定することにより、カイミジンコ21の捕食活動や生殖活動により汚泥(ヘドロ)22dを減量化できる。河川、湖沼、海などの水域100であれば、カイミジンコ21を透過せず、汚泥(ヘドロ)22dも保持できる程度のメッシュの網29によりカイミジンコ育成槽10cを構成し、カイミジンコ21の活動領域20を形成できる。網29のメッシュのサイズは、約0.3mmから5mm程度のカイミジンコ21の体長や、約0.1mm程度のカイミジンコ21の卵の直径を考慮して設定できる。不透水性、たとえば、プラスチックなどの樹脂性の板、膜、コンクリートなどの部材によりカイミジンコ育成槽10cを構成してもよい。カイミジンコ育成槽10cはカイミジンコ21の育成と、カイミジンコ21と汚泥22dとの接触効率を高めるための半閉鎖的な空間(領域)を形成するためのものであり、活動領域20の水分、空気および飼料(汚泥、ヘドロ)22dの系外への発散(分散)が適度に阻害され、それらが活動領域20の内部にカイミジンコ21の育成のために保持できるものであればよい。
【0064】
この処理システム1yにおいては、筏50に搭載したポンプ51により、河川、湖沼、海などの水域100の底に堆積しているヘドロ(汚泥)22dを、供給路11を介してカイミジンコ育成槽10cに投入する。カイミジンコ育成槽10cにおいては、汚泥22dがカイミジンコ21により捕食減量され、汚泥22dとともにカイミジンコ育成槽10cに投入された水は、カイミジンコ育成槽10cを構成する網29を介して、処理水25として水域100に戻される。
【0065】
図5に、さらに異なる処理システム1zの構成を模式的に示している。この処理システム1zにおいては、カイミジンコ育成槽(カイミジンコ処理槽、第1の槽)10cを、河川、湖沼、海などの水域100の浅瀬101に設置し、周囲のヘドロ(汚泥)22dや汚濁された河川(湖沼、海)水100aをポンプなどによりカイミジンコ育成槽10cに供給路11を介して投入する。カイミジンコ育成槽10cは、網29を用いた容器であってもよく、コンクリートなど他の不透水性の部材を用いた容器であってもよい。川の流れや、重力などによりポンプを用いずに汚泥22dあるいは汚泥22dを含む汚水100aがカイミジンコ育成槽10cに導入されるようにしてもよい。
【0066】
この処理システム1zでは、汚濁された河川(湖沼、海)水100aおよび/またはヘドロ22dの中に含まれる有機物などをカイミジンコ21に分解(捕食)させるので、有機物量(有機物濃度、BOD濃度、COD濃度)を減らすことができる。さらに、カイミジンコ21の処理活動により浄化された河川(湖沼、海)水(処理水)100bを活動領域20から河川、湖沼、海などの水域100へ戻すことができる。また、富栄養化した湖沼水100aに含まれる窒素(N)やリン(P)がカイミジンコ21の栄養剤となり、カイミジンコ21に固定されるので、湖沼水100a中の栄養塩量(栄養塩濃度)を減らすことができる。
【0067】
さらに、この処理システム1zにおいては、カイミジンコ21の活動領域20から回収された複数のカイミジンコ21は、栄養塩(N、P)を含む被処理物を捕食しているので、窒素やリンの成分を豊富に含んだ良好な堆肥31として有効利用できる。また、閉鎖性水域の富栄養化により発生したアオコや水の華などの藻類を、カイミジンコ21の活動領域20に供給することにより、藻類の減量化を図ることができる可能性がある。
【符号の説明】
【0068】
1 汚水および/または汚泥の処理システム(処理システム)
10 第1の槽(汚泥減量化槽)、 11 供給路、 12a 排水管
12b 回収管(回収路)、 13 曝気装置、 14 環境制御システム
17 コントロールユニット(コントローラー)、 19 汚泥減量システム
20 活動領域、 21 カイミジンコ、 22 被処理物
30 残留物、 31 堆肥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に存在する複数のカイミジンコの活動領域を含む第1の槽と、
前記複数のカイミジンコにより処理される有機物を含む被処理物を前記活動領域に供給する供給路とを有する、汚水および/または汚泥の処理システム。
【請求項2】
請求項1において、前記活動領域に空気を供給する曝気装置をさらに有する、処理システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記複数のカイミジンコおよび/またはその屍骸を含む残留物を前記活動領域から回収する回収路をさらに有する、処理システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、有機物を含む排水を曝気する曝気槽を前記第1の槽の上流側にさらに有し、
前記被処理物は、前記曝気槽から排出された汚泥を含む、処理システム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、有機物を含む排水を曝気する曝気槽を前記第1の槽の下流側にさらに有し、
前記被処理物は、前記排水を含む、処理システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記活動領域の温度を制御する装置をさらに有する、処理システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記活動領域のpH値を制御する装置をさらに有する、処理システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記活動領域に栄養剤を供給する装置をさらに有する、処理システム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、前記活動領域から重金属を除去する装置をさらに有する、処理システム。
【請求項10】
請求項3に記載の処理システムから回収された残留物を含む、肥料。
【請求項11】
水中に存在する複数のカイミジンコの活動領域を形成する工程と、
有機物を含む被処理物を前記活動領域に供給する工程と、
前記被処理物を前記複数のカイミジンコに処理させる工程とを有する、汚水および/または汚泥の処理方法。
【請求項12】
請求項11において、前記複数のカイミジンコおよび/またはその屍骸を含む残留物を前記活動領域から回収する工程をさらに有する、処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−101879(P2011−101879A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231122(P2010−231122)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509285481)南信環境管理センター株式会社 (1)
【Fターム(参考)】