説明

汚水処理装置

【課題】高分子凝集剤などの薬剤を使用することがなく、設備費とランニングコストとを大きく軽減することができる安価な汚水処理装置を提供する。また、高BODの汚水に対応することができ、分離排出された有機汚れの固形分を廃棄しても環境に対する悪影響が少ない汚水処理装置を提供する。
【解決手段】有機物で汚染された汚水2を貯留する汚水処理槽3と、この汚水処理槽3に貯留された汚水2の中に気泡2aを噴出させる気泡発生手段4と、汚水2の表面2eに浮上した気泡2aに随伴する有機汚れ2bを汚水2の表面2eから分離する気泡分離手段5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば焼酎製造時に発生する焼酎蒸留廃液や、畜産汚泥あるいは養魚場にて発生する魚糞汚水など、有機物で汚染された高BOD(Biological Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)汚水から有機汚れを分離する汚水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、焼酎製造時に発生する焼酎蒸留廃液や、畜産汚泥あるいは養魚場にて発生する魚糞汚水など、有機物で汚染された高BOD汚水から有機汚れを分離する汚水処理技術として、高分子凝集剤などの薬剤を用いて汚水を処理する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、製紙スラッジを含む汚水に水溶性重合体分散液を添加し凝集させた後、脱水機により脱水して有機汚れを分離するという汚水処理の技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−057927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された汚水処理方法では、薬剤を使用するので、多量の薬剤とこの薬剤を供給する設備とが必要になる結果、設備費とランニングコストとが増大し、装置が高価になるという不具合があった。
【0005】
また、このような薬剤を使用する方法では高BODの汚水に対しては限界があり、対応することができないという不具合があった。
【0006】
さらに、薬剤を使用する方法では、分離排出された汚泥など固形分を廃棄すると環境に対する悪影響が避けられなかった。そのため、発生した固形分は産業廃棄物として処理せざるを得ず、結果として高価格の処理費用がさらに発生するという問題があった。
【0007】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、高分子凝集剤などの薬剤を使用することがなく、従来法に比べて、設備費とランニングコストとを大きく軽減することができる安価な汚水処理装置を提供することを課題としている。
【0008】
また、高分子凝集剤などの薬剤を使用する方法では処理することが困難な高BODの汚水にも対応することができる装置であって、分離排出された有機汚れの固形分を廃棄しても環境に対する悪影響が少ない汚水処理装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、有機物で汚染された汚水を貯留する汚水処理槽と、この汚水処理槽に貯留された汚水の中に気泡を噴出させる気泡発生手段と、上記汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れを汚水の表面から分離する気泡分離手段とを備えたことを特徴とする汚水処理装置である。
【0010】
本発明によれば、気泡発生手段が、汚水の中に気泡を噴出させるので、汚水は、溶存酸素が飽和の状態になり、有機汚れを分解する微生物の活動が活発となる。
【0011】
また、大量の大小あるいは極小の気泡が発生と破裂とを繰り返すので、超音波が発生し、汚水に振動、攪拌が与えられる結果、有機汚れが小さく分解される。
【0012】
また、小さく分解した汚水中の有機汚れが気泡の表面に再び集まり、凝集されるので、多くの有機汚れを気泡に随伴させて汚水の表面に浮上させることができる。
【0013】
そして、気泡分離手段が、汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れを汚水の表面から分離するので、高分子凝集剤などの薬剤を使用することなく汚水から有機汚れを泡の状態で分離することができる。
【0014】
このように、本発明によれば、薬剤を使用することなく有機汚れを泡の状態で分離するので、従来法に比べて、設備費とランニングコストが大きく軽減された極めて安価な汚水処理装置を実現することができる。
【0015】
また、有機汚れを泡の状態で分離するので、高分子凝集剤などの薬剤を使用する方法では処理することが困難な高BODの汚水でも容易に対応することができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、高分子凝集剤などの薬剤を使用しないので、分離排出された有機汚れの固形分は安全に廃棄することができ、環境に対する悪影響がない。
【0017】
特に、分離排出された有機汚れの固形分は、土壌に散布しても安全であるとともに、有機物を豊富に含むので、農作物に対する肥料として再利用することができる。
【0018】
ここで、上記気泡発生手段は、汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れが汚水の表面において周回するように、気泡噴出方向が設定され、上記気泡分離手段は、汚水の表面において周回する上記気泡に随伴する有機汚れを汚水処理槽の外に案内するスクレーパー板を汚水処理槽の汚水の表面近傍に備えていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、気泡に随伴する有機汚れが汚水の表面において周回するように気泡噴出方向が設定され、汚水の表面近傍に設けられたスクレーパー板が、気泡に随伴する有機汚れを汚水処理槽の外に案内するので、簡単な構造で気泡分離手段を実現することができる。その結果、極めて安価な設備とすることができる。
【0020】
また、特に、上記汚水処理槽は、汚水の表面近傍の断面が概ね円形に形成され、上記気泡発生手段は、この円形の中心軸の周りに、汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れが周回するように、この概ね円形の汚水処理槽の接線方向に気泡噴出方向が設定されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、円形の汚水処理槽の中心軸の周りに気泡に随伴する有機汚れが周回するように、円形の汚水処理槽の接線方向に気泡発生手段の気泡噴出方向が設定されているので、気泡に随伴する有機汚れが滞留することなく周回する結果、すみやかに効率良く有機汚れを分離排出することができる。
【0022】
また、上記気泡発生手段の気泡噴出方向は、汚水の周回面に対して概ね俯角5度以上かつ60度以下の方向に設けられていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、気泡噴出方向が、汚水の周回面に対して俯角を形成するように設けられているので、気泡が汚水中に滞留する時間をより長くすることができる。その結果、より多くの有機汚れを気泡に集めることができるようになる。特に、本発明においては、気泡噴出方向が汚水の周回面に対して概ね俯角5度以上かつ60度以下の方向に設けられているので、汚水を周回させる気泡の推進力を維持したまま、気泡が汚水中に滞留する時間を長くすることができる。
【0024】
また、本発明に係る汚水処理装置は、上記汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れが分離された汚水を濾過する濾過手段をさらに備えていることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、有機汚れが分離された汚水をさらに濾過するので、汚水の浄化度をさらに向上させることができる。
【0026】
また、本発明に係る汚水処理装置は、上記濾過手段で濾過された濾過水の汚れを沈殿させる沈殿槽と、この沈殿槽に貯留された濾過水を沈殿物とともに気泡発生手段に輸送する濾過水ポンプとをさらに備え、上記気泡発生手段は、濾過水ポンプにより輸送された濾過水の流れにより負圧を発生させてこの負圧により空気を吸引して気泡を噴出させるエジェクタを有していることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、沈殿槽が濾過手段で濾過された濾過水の汚れを沈殿させるので、汚水の浄化度をさらに向上させることができる。
【0028】
また、沈殿槽の底部に沈降する沈殿物が、沈殿槽に貯留された中間の濾過水とともに汚水処理槽に自動的に常時、還流される結果、沈殿槽における沈殿物や堆積物の除去作業が不要となる。
【0029】
さらに、濾過水ポンプが、沈殿槽に貯留された濾過水を沈殿物とともに気泡発生手段に輸送し、気泡発生手段のエジェクタが、この輸送された濾過水の流れにより負圧を発生させて空気を吸引して気泡を噴出させるので、沈殿槽から汚水処理槽への沈殿物の還流に要する動力を気泡発生手段の動力に利用することができる。その結果、よりランニングコストが少ない汚水処理装置にすることができる。
【0030】
ここで、上記エジェクタは、輸送された沈殿槽の濾過水の流れにより発生した負圧により、さらに汚水処理槽に貯留された汚水を吸引して気泡とともに噴出させることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、エジェクタが、さらに汚水処理槽の汚水を吸引して気泡とともに噴出させるので、汚水に含まれる有機汚れと気泡とをエジェクタにおいて接触させることができる結果、より多くの有機汚れを気泡に随伴させることができるようになる。
【0032】
また、本発明に係る汚水処理装置は、上記汚水処理槽の汚水の表面近傍から汚水を吸引するエジェクタと、汚水処理槽の底部近傍から汚水を吸引するエジェクタとを備えていることが好ましい。
【0033】
このようにすれば、一方のエジェクタが、表面近傍から汚水を吸引するとともに、他方のエジェクタが、汚水処理槽の底部近傍から汚水を吸引するので、汚水処理槽の広い範囲の汚水を気泡と接触させることができる。
【0034】
また、特に、汚水処理槽の底部近傍から汚水を吸引するエジェクタを設けることにより、沈降した有機汚れをより多く気泡と接触させることができるようになる。
【0035】
また、上記濾過手段は、上記汚水処理槽の中心部に配置された筒状のスクリーンを有し、このスクリーンの内部と、上記沈殿槽とが連通管を介して接続されていることが好ましい。
【0036】
このようにすれば、比較的有機汚れの濃度の低い汚水処理槽の中心部において、筒状のスクリーンにより有機汚れが濾過され、連通管を介してスクリーンの内部から沈殿槽へと濾過水が輸送されるので、濾過手段における固形物等の付着、堆積を少なくすることができる。
【0037】
特に、本発明によれば、汚水処理槽の中心部に筒状のスクリーンを配置することにより、スクリーンの全周囲に気泡を到達させることができるので、気泡による振動と超音波で固形物がスクリーンに付着することを効果的に防止することができる結果、スクリーンの目詰まりが少なく、固形物付着による圧力損失の増大を抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、高分子凝集剤などの薬剤を使用することなく汚水から有機汚れを泡の状態で分離することができるので、従来法に比べて、設備費とランニングコストが大きく軽減された極めて安価な汚水処理装置を実現することができる。
【0039】
また、有機汚れを泡の状態で分離するので、高分子凝集剤などの薬剤を使用する方法では処理することが困難な高BODの汚水にも容易に対応することができる。
【0040】
さらに、高分子凝集剤などの薬剤を使用しないので、分離排出された有機汚れの固形分は安全に廃棄することができるなど、環境に対する悪影響が少ない。また、分離排出された有機汚れの固形分は農作物に対する肥料として再利用することができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は本発明の実施の形態に係る汚水処理装置1の構成を示す斜視図であり、図2は、汚水処理装置1の構成を示すフロー図である。また、図3は、汚水処理槽3の汚水2の表面2e近傍から汚水2を吸引するエジェクタ4aの構成を示す説明図であり、図4は、汚水処理槽3の底部近傍から汚水2を吸引するエジェクタ4bの構成を示す説明図である。
【0042】
図1〜図4を参照して、図示の本発明の実施の形態に係る汚水処理装置1は、有機物で汚染された高BODの汚水2から有機汚れを分離するものであり、汚水処理槽3と、この汚水処理槽3に貯留された汚水2の中に気泡2aを噴出させる気泡発生手段4と、汚水2の表面2eに浮上した気泡2aに随伴する有機汚れ2bを汚水2の表面2eから分離する気泡分離手段5とを備えている。またこの汚水処理装置1は、汚水2を濾過する濾過手段6と、この濾過手段6で濾過された濾過水2cの汚れを沈殿させる沈殿槽7と、この沈殿槽7に貯留された濾過水2cを沈殿物2dとともに気泡発生手段4に輸送する濾過水ポンプ8とを備えている。
【0043】
上記汚水2は、例えば、焼酎製造時に発生する焼酎蒸留廃液や、畜産汚泥あるいは畜産汚泥あるいは養魚場にて発生する魚糞汚水など、有機汚れを含む高BODの汚水である。本実施形態では、汚水処理装置1は、BOD20,000ppm程度の汚水2を対象としており、この濃度の汚水2を沈殿槽7の排出管7aにおいて200〜2000ppmまで浄化する仕様になっている。
【0044】
上記汚水処理槽3は、供給配管3aで供給される有機物で汚染された汚水2を貯留する円筒形状のFRP製タンクである。この汚水処理槽3は、汚水2の表面2e近傍の断面が円形に形成されているので、特に汚水2の表面2eが円を描くように周回することができるようになっている。
【0045】
上記気泡発生手段4は、汚水処理槽3に貯留された汚水2の中に気泡2aを噴出させる装置であり、汚水処理槽3の上方に設けられたスクリーンの支持板に支持される2つのエジェクタ4a、4bを有している。これらのエジェクタ4a、4bは、高い粘性をもった高BODの汚水であっても支障なく機能する混気ジェットノズルが採用されており、図3、図4にも示すように、濾過水ポンプ8により輸送された濾過水2cの流れにより負圧を発生させてこの負圧により汚水処理槽3に貯留された汚水2の上方にある空気Aを空気吸引管4c(図3、図4)を介して吸引して気泡2aを噴出させるとともに、同じ濾過水2cの流れにより発生した負圧により、汚水処理槽3に貯留された汚水2を汚水吸引口4dを介して吸引して噴出口4eから気泡2aとともに噴出させるように構成されている。
【0046】
ここで、それぞれの気泡発生手段4のエジェクタ4a、4bは、円形の汚水処理槽3の中心軸3bの周りに、汚水2の表面2eに浮上した気泡2aに随伴する有機汚れ2bが周回するように、汚水処理槽3の接線方向に気泡噴出方向が設定されている。
【0047】
また、これら気泡発生手段4のエジェクタ4a、4bの気泡噴出方向は、汚水2の周回面2fに対して概ね俯角5度以上かつ60度以下の方向に設けられている。
【0048】
そして、特に、本実施形態では、一方のエジェクタ4aは、汚水処理槽3の汚水2の表面2e近傍から汚水2を吸引し、他方のエジェクタ4bは、吸引管4f(図4)を介して汚水処理槽3の底部近傍から汚水2を吸引するように構成されている。
【0049】
上記気泡分離手段5は、汚水2の表面2eにおいて周回する気泡2aに随伴する有機汚れ2bを汚水処理槽3の外に案内するスクレーパー板5aを汚水処理槽3の汚水2の表面2e近傍に備え、汚水処理槽3の側面に設けられた排出口3cから気泡2aに随伴する有機汚れ2bを分離排出するようになっている。
【0050】
上記濾過手段6は、気泡2aに随伴する有機汚れ2bが分離された汚水2を濾過するものであり、この濾過手段6は、汚水処理槽3の中心部に、筒状の固液分離機能を持つ金属製のスクリーン6aを配置している。そして、このスクリーン6aの内部と沈殿槽7とは、連通管6bを介して接続され、濾過水2cが、連通管6bを通って自然流下し沈殿槽7に貯水されるようになっている。
【0051】
また、スクリーン6aの上部には、気泡2aに随伴する有機汚れ2bが沈殿槽7に送られる濾過水2cに混入することを防止する遮蔽部6cを有している。
【0052】
上記沈殿槽7は、濾過手段6で濾過された濾過水2cの汚れを重力により沈殿させる円筒形状のFRP製のタンクである。そして、沈殿物2dが沈降して浄化度が向上した濾過水2cはこの沈殿槽7の上部に設けられた排出管7aから排出され、図略の次の工程に供給される。
【0053】
上記濾過水ポンプ8は、沈殿槽7の下方に滞留している沈殿物2dを沈殿槽7に貯留された濾過水2cとともに気泡発生手段4に輸送するポンプであり、沈殿槽7の上部に設けられた沈殿槽蓋部7bに設置され、吸引部8aに接続される取水管8cと吐出部8bに接続される濾過水供給配管8dとを介して沈殿物2dと濾過水2cとを気泡発生手段4に輸送するように構成されている。
【0054】
次に図1〜図4を参照して、本発明の実施の形態に係る汚水処理装置1の作用について説明する。
【0055】
図1〜図4に示すように、本発明の実施の形態に係る汚水処理装置1においては、有機物で汚染された高BODの汚水2が、供給配管3aを介して供給され、汚水処理槽3が、この有機物で汚染された汚水2を貯留する。そして、気泡発生手段4がこの汚水2の中に気泡2aを噴出させるので、汚水は、溶存酸素が飽和の状態になり、有機汚れを分解する微生物の活動が活発となる。
【0056】
また、大量の大小あるいは極小の気泡2aが発生と破裂とを繰り返すので、超音波が発生し、汚水2に振動、攪拌が与えられる結果、有機汚れが小さく分解される。
【0057】
また、小さく分解した汚水2中の有機汚れが気泡2aの表面に再び集まり、凝集されるので、多くの有機汚れを気泡2aに随伴させて汚水2の表面2eに浮上させることができる。
【0058】
そして、気泡分離手段5が、浮上した気泡2aに随伴する有機汚れ2bを汚水2の表面2eから分離する。
【0059】
このように、従来の汚水処理装置がむしろ消泡に努めていたのに対し、この汚水処理装置1は、積極的に気泡2aを発生させて、有機汚れを分離しようとするものである。
【0060】
この時、エジェクタ4a、4bが、沈殿槽7から濾過水ポンプ8により輸送された濾過水2cの流れにより負圧を発生させてこの負圧により汚水2の上方にある空気Aを空気吸引管4cを介して吸引して気泡2aを噴出させる。また、同じ濾過水2cの流れにより発生した負圧により、汚水処理槽3に貯留された汚水2を汚水吸引口4dを介して吸引して噴出口4eから気泡2aとともに噴出させる。
【0061】
また、この時、円形の汚水処理槽3の底部近傍は、排出されない固形物2gが沈下し集まってくるので、一方のエジェクタ4aが、汚水処理槽3の汚水2の表面2e近傍から汚水2を吸引するとともに、他方のエジェクタ4bが、吸引管4fを介して汚水処理槽3の底部近傍から汚水2を吸引して常時吸い上げ、再度流動させて循環するようになっている。
【0062】
また、濾過水ポンプ8が、沈殿槽7の下方に滞留している沈殿物2dを沈殿槽7に貯留された濾過水2cとともに気泡発生手段4に輸送して、汚水処理槽3に還流する。
【0063】
そして、それぞれの気泡発生手段4のエジェクタ4a、4bが、汚水処理槽3の接線方向に気泡2aを噴出するので、円形の汚水処理槽3の中心軸3bの周りに、汚水2の表面2eに浮上した気泡2aに随伴する有機汚れ2bが周回する。
【0064】
そして、気泡分離手段5のスクレーパー板5aが汚水2の表面2eにおいて周回する気泡2aに随伴する有機汚れ2bを汚水処理槽3の外に案内し、汚水処理槽3の側面に設けられた排出口3eから気泡2aに随伴する有機汚れ2bが分離排出される。
【0065】
また、排出された有機物汚れ2bは、図略の天日乾燥または乾燥装置、またはその他の装置類により、容易に水分を除去することができる。
【0066】
そして、濾過手段6の筒状のスクリーン6aが、さらに汚水2を濾過するとともに、スクリーン6aの上部に設けられた濾過手段6の遮蔽部6cが、気泡2aに随伴する有機汚れ2bが沈殿槽7に送られる濾過水2cに混入されることを防止するので、有機汚れ2bの少ない濾過水2cが沈殿槽7に送られる。
【0067】
この時、スクリーン6aの外表面には固形物が付着する傾向性があるが、気泡発生手段4による気泡2aと、水流とによりスクリーン6aにおいて微震動と超音波とを発生させ、これにより固形物の付着は大幅に抑制される。
【0068】
そして、沈殿槽7では、濾過手段6で濾過された濾過水2cの汚れをさらに重力により沈殿させて、汚濁の少ない浄化度が向上した上部の濾過水2cをこの沈殿槽7の上部に設けられた排出管7aから排出して処理済み水として図略の次の工程に供給する。
【0069】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る汚水処理装置1によれば、気泡発生手段4がこの汚水2の中に気泡2aを噴出させるので、汚水は、溶存酸素が飽和の状態になり、有機汚れを分解する微生物の活動が活発となる。
【0070】
また、大量の大小あるいは極小の気泡2aが発生と破裂とを繰り返すので、超音波が発生し、汚水2に振動、攪拌が与えられる結果、有機汚れが小さく分解される。
【0071】
また、小さく分解した汚水2中の有機汚れが気泡2aの表面に再び集まり、凝集されるので、多くの有機汚れを気泡2aに随伴させて汚水2の表面2eに浮上させることができる。
【0072】
そして、気泡分離手段5が、汚水2の表面2eに浮上した気泡2aに随伴する有機汚れ2bを汚水2の表面2eから分離するので、高分子凝集剤などの薬剤を使用することなく汚水2から有機汚れを泡の状態で分離することができる。
【0073】
このように、汚水処理装置1によれば、薬剤を使用することなく有機汚れを泡の状態で分離するので、従来法に比べて、設備費とランニングコストが大きく軽減された極めて安価な汚水処理装置を実現することができる。
【0074】
また、有機汚れ2bを泡の状態で分離するので、高分子凝集剤などの薬剤を使用する方法では処理することができない高BODの汚水2でも容易に対応することができる。
【0075】
さらに、汚水処理装置1によれば、高分子凝集剤などの薬剤を使用しないので、分離排出された固形分は安全に廃棄することができ、環境に対する悪影響がない。
【0076】
特に、分離排出された固形分は、土壌に散布しても安全であるとともに、有機物を豊富に含むので、農作物に対する肥料として再利用することができるようになる。
【0077】
また、汚水処理装置1によれば、気泡2aに随伴する有機汚れ2bが汚水2の表面2eにおいて周回するように気泡噴出方向が設定され、汚水2の表面2e近傍に設けられたスクレーパー板5aが、周回する気泡2aに随伴する有機汚れ2bを汚水処理槽3の外に案内するので、簡単な構造で気泡分離手段5を実現することができる結果、極めて安価な設備とすることができる。
【0078】
また、円形の汚水処理槽3の中心軸3bの周りに気泡2aに随伴する有機汚れ2bが周回するように、円形の汚水処理槽3の接線方向に気泡発生手段4の気泡噴出方向が設定されているので、気泡2aに随伴する有機汚れ2bが滞留することなく周回することができる結果、すみやかに効率良く気泡2aに随伴する有機汚れ2bを分離排出することができる。
【0079】
さらに、気泡噴出方向が、汚水2の周回面2fに対して俯角を形成するように設けられているので、気泡2aが汚水2中に滞留する時間をより長くすることができる。その結果、より多くの有機汚れを気泡2aに集めることができるようになる。特に、本実施形態によれば、気泡噴出方向が汚水2の周回面2fに対して概ね俯角5度以上かつ60度以下の方向に設けられているので、汚水2を周回させる気泡2aの推進力を維持したまま、気泡2aが汚水2中に滞留する時間を長くすることができる。
【0080】
また、この汚水処理装置1によれば、有機汚れが分離された汚水2をさらに濾過するので、汚水2の浄化度をさらに向上させることができる。
【0081】
さらに、沈殿槽7が濾過手段6で濾過された濾過水2cの汚れを沈殿させるので、汚水2の浄化度をさらに向上させることができる。
【0082】
また、沈殿槽7の底部に沈降する沈殿物2dが、沈殿槽7に貯留された中間の濾過水2cとともに汚水処理槽3に自動的に常時、還流される結果、沈殿槽7における沈殿物2dや堆積物の除去作業が不要となる。
【0083】
そして、濾過水ポンプ8が、沈殿槽7に貯留された濾過水2cを沈殿物2dとともに気泡発生手段4に輸送するとともに、気泡発生手段4のエジェクタ4a、4bが、この輸送された濾過水2cの流れにより負圧を発生させて空気Aを吸引して気泡2aを噴出させるので、沈殿槽7から汚水処理槽3への沈殿物2dの還流に要する動力を気泡発生手段4の動力に利用することができる結果、よりランニングコストが少ない汚水処理装置1にすることができる。
【0084】
また、エジェクタ4a、4bが、汚水処理槽3の汚水2を吸引して気泡2aとともに噴出させるので、汚水処理槽3の汚水2に含まれる有機汚れと気泡2aとをエジェクタ4a、4bにおいて接触させることができる結果、より多くの有機汚れを気泡2aに随伴させることができるようになる。
【0085】
また、一方のエジェクタ4aが、表面近傍から汚水2を吸引するとともに、他方のエジェクタ4bが、汚水処理槽3の底部近傍から汚水2を吸引するので、汚水処理槽3の広い範囲の汚水2を気泡2aと接触させることができる。
【0086】
また、特に、汚水処理槽3の底部近傍から汚水2を吸引するエジェクタ4bを設けることにより、沈降した有機汚れをより多く気泡2aと接触させることができるようになる。
【0087】
そして、比較的有機汚れの濃度の低い汚水処理槽3の中心部において、筒状のスクリーン6aにより有機汚れが濾過され、連通管6bを介してスクリーン6aの内部から沈殿槽7へと濾過水2cが輸送されるので、濾過手段6における固形物等の付着、堆積を少なくすることができる。
【0088】
特に、本実施形態によれば、汚水処理槽3の中心部に筒状のスクリーン6aを配置することにより、スクリーン6aの全周囲に気泡2aを到達させることができるので、気泡2aによる振動と超音波で固形物がスクリーン6aに付着することを効果的に防止することができる結果、スクリーン6aの目詰まりが少なく、固形物付着による圧力損失の増大を抑制することができるようになる。
【0089】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0090】
例えば、汚水2は、必ずしもBOD20,000ppm程度の汚水に限定されない。この汚水処理装置1は、BOD300〜100,000ppmの範囲の汚水2に対して対応可能である。また、必ずしも焼酎製造時に発生する焼酎蒸留廃液や、畜産汚泥あるいは養魚場にて発生する魚糞汚水などに限定されず、その他の有機汚れを含む汚水にも適用可能である。
【0091】
また、汚水処理槽3、沈殿槽7は、円筒形状のFRP製タンクに限らない。それぞれ汚水2、濾過水2cを貯留可能なものであれば、ステンレス製タンクを採用するなど種々の設計変更が可能である。
【0092】
また、気泡発生手段4は、必ずしも濾過水2cの流れにより発生した負圧により、空気Aや汚水2を吸引して噴出口4eから気泡2aとともに噴出させるように構成されている必要はない。汚水処理槽3に貯留された汚水2の中に気泡2aを噴出させるものであれば、種々の装置が採用可能である。
【0093】
また、他方のエジェクタ4bは、吸引管4fを介して汚水処理槽3の底部近傍から汚水2を吸引するように構成されていることが好ましいが、エジェクタ4a、4b両方共に汚水処理槽3の汚水2の表面2e近傍から汚水2を吸引するものであってもよい。
【0094】
さらに、汚水2のBOD濃度や処理量、汚水2の状況などによっては、エジェクタ4a、4bの設置本数は変化させることが可能である、場合によってはいずれかのエジェクタだけでもよい。
【0095】
また、濾過手段6は、必ずしも筒状の固液分離機能を持つ金属製のスクリーン6aに限定されない、汚水2によっては種々の濾布に変更可能であるなど、種々の設計変更が可能である。
【0096】
さらに、濾過水ポンプ8は、沈殿槽7の上部に設けられた沈殿槽蓋部7bに設置されている必要はない。沈殿槽7の下方に滞留している沈殿物2dを沈殿槽7に貯留された濾過水2cとともに気泡発生手段4に輸送することができるものであれば、濾過水ポンプ8の設置場所は、変更可能である。
【0097】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態に係る汚水処理装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る汚水処理装置の構成を示すフロー図である。
【図3】汚水処理槽の汚水の表面近傍から汚水を吸引するエジェクタの構成を示す説明図である。
【図4】汚水処理槽の底部近傍から汚水を吸引するエジェクタの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0099】
A 空気
1 汚水処理装置
2 汚水
2a 気泡
2b 浮上した気泡に随伴する有機汚れ
2c 濾過水
2e 汚水の表面
2f 汚水の周回面
3 汚水処理槽
3b 中心軸
4 気泡発生手段
4a、4b エジェクタ
5 気泡分離手段
5a スクレーパー板
6 濾過手段
6a スクリーン
6b 連通管
7 沈殿槽
8 濾過水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物で汚染された汚水を貯留する汚水処理槽と、
この汚水処理槽に貯留された汚水の中に気泡を噴出させる気泡発生手段と、
上記汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れを汚水の表面から分離する気泡分離手段と、
を備えたことを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
上記気泡発生手段は、汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れが汚水の表面において周回するように、気泡噴出方向が設定され、
上記気泡分離手段は、汚水の表面において周回する上記気泡に随伴する有機汚れを汚水処理槽の外に案内するスクレーパー板を汚水処理槽の汚水の表面近傍に備えていることを特徴とする請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項3】
上記汚水処理槽は、汚水の表面近傍の断面が概ね円形に形成され、
上記気泡発生手段は、この円形の中心軸の周りに、汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れが周回するように、この概ね円形の汚水処理槽の接線方向に気泡噴出方向が設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の汚水処理装置。
【請求項4】
上記気泡発生手段の気泡噴出方向は、汚水の周回面に対して概ね俯角5度以上かつ60度以下の方向に設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の汚水処理装置。
【請求項5】
上記汚水の表面に浮上した気泡に随伴する有機汚れが分離された汚水を濾過する濾過手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の汚水処理装置。
【請求項6】
上記濾過手段で濾過された濾過水の汚れを沈殿させる沈殿槽と、
この沈殿槽に貯留された濾過水を沈殿物とともに気泡発生手段に輸送する濾過水ポンプと、
をさらに備え、
上記気泡発生手段は、濾過水ポンプにより輸送された濾過水の流れにより負圧を発生させてこの負圧により空気を吸引して気泡を噴出させるエジェクタを有していることを特徴とする請求項5に記載の汚水処理装置。
【請求項7】
上記エジェクタは、輸送された沈殿槽の濾過水の流れにより発生した負圧により、さらに汚水処理槽に貯留された汚水を吸引して気泡とともに噴出させることを特徴とする請求項6に記載の汚水処理装置。
【請求項8】
上記汚水処理槽の汚水の表面近傍から汚水を吸引するエジェクタと、汚水処理槽の底部近傍から汚水を吸引するエジェクタとを備えていることを特徴とする請求項7に記載の汚水処理装置。
【請求項9】
上記濾過手段は、上記汚水処理槽の中心部に配置された筒状のスクリーンを有し、
このスクリーンの内部と、上記沈殿槽とが連通管を介して接続されていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の汚水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−144302(P2007−144302A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341690(P2005−341690)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(391053364)株式会社ナガオカ (5)
【出願人】(505438926)有限会社島村建築設計事務所 (1)
【Fターム(参考)】