説明

汚水処理装置

【課題】維持管理および保守点検が容易で、固形化した油脂成分などを定期的に取り除く作業が不要であるとともに、油脂成分を分解して下水排除基準値以下にし、これにより雑排水をそのまま下水道などに排出することを可能にする汚水処理装置を提供する。
【解決手段】取入部3および雑排水を外部に排出するための送出部5を備えた貯留槽に貯留された雑排水に空気を供給して雑排水を攪拌する空気供給手段26と、貯留槽に貯留された雑排水を循環させる循環装置28とを有し、空気供給手段には圧縮空気供給源から供給されてくる圧縮空気を一時的に貯留し複数の吐出口から圧縮空気を排出する空気導入用筒体が具備され、循環装置28には雑排水を通過させて貯留槽の上流側に雑排水を配送する水循環用筒体が具備され、空気導入用筒体と水循環用筒体の少なくとも一方の内部には複数の永久磁石を収容する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、厨房などで発生した油脂成分を含む雑排水を、貯留槽内に収容し循環させながら下水排出基準に従ってそのまま下水管などに排出することを可能とする汚水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、厨房や食品加工工場などで発生した雑排水には多くの有機物や油脂成分が含まれている。また、これら食品関係以外でも、例えば工場から排出される雑排水の中には、有機物や油脂成分を含んだものが多い。
【0003】
このような雑排水は、そのまま下水管などに排出することができないため、ストレーナを介して大きな屑などが除去されるとともに、貯留槽内にグリース阻集器と称される選別器が設置され、これにより、油脂成分が水から分離されている。
【0004】
従来、知られているグリース阻集器としては、図5に示したように非特許文献1に開示されたものがある。このグリース阻集器2は、雑排水の流入側開口Aと一次処理水の流出側開口Bを備えた貯留槽3内に、上下方向から有効高さの異なる複数の隔壁板4,6,8,10,12などを配置し、これら隔壁板の下方に比較的綺麗な水を案内するとともに、最下流に設置された流出側開口Bを介して槽外に排出している。
【0005】
一方、油脂成分などは標準水位面の上方に分離されるので、この浮遊した油脂成分はバキューム装置で定期的に吸い上げて、産業廃棄物業者の手により処理されるのが一般的である。
【0006】
なお、飲食店や惣菜店、レストラン、ホテル、給食センターや社員食堂など厨房設備をもつ事業所では、排水処理に、調理や食器洗いに伴う油脂成分や残渣物を一時的に溜めておくグリース阻集器の設置が義務づけられている。そして、グリース阻集器を介して法規で規定された下水排除基準値に従って下水道に放出されている。
【0007】
例えば、東京都23区の下水排除基準では、動植物油のノルマルヘキサン抽出物質は、30mm/リットル以下、生物化学的酸素要求量(BOD)は600mg/リットル未満などに規定されている。
【非特許文献1】社団法人 空気調和・衛生工学会 編集・著作「グリース阻集器(1999年7月30日 発行)第2頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のようなグリース阻集器2を食品関係の施設などに設置した場合、貯留槽3内に阻集された肉・野菜などの残渣物や油脂成分は定期的に回収除去しなければならないため、その維持管理には十分な留意が必要になるとともに、回収作業が手間であった。また、多量の雑排水が発生する施設では、数日毎に油脂成分を吸い上げなければならないのが現状である。
【0009】
また、このよなグリース阻集器2の機能を十分に活かすために、かごの掃除、グリースの除去、槽内部の掃除、トラップ内の掃除等の保守管理は欠かせない作業になっている。しかしながら、とかく悪臭を放ったり、不衛生になりがちというのが現状である。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑み、維持管理および保守点検が容易で、固形化した油脂成分などを定期的に取り除く作業が不要であるとともに、油脂成分を効果的に分解して下水排除基準値以下にし、雑排水をそのまま下水道などに排出することを可能にし、さらには悪臭を放つこともない汚水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、
雑排水が取り入れられる取入部および雑排水を外部に排出するための送出部を備えた貯留槽と、
前記貯留槽内を複数の小部屋に画成し上下方向に配置される隔壁板と、
前記貯留槽内に貯留された雑排水に空気を供給して前記雑排水を攪拌する空気供給手段と、
前記貯留槽内に貯留された雑排水を循環させる循環装置と、を有し、
前記空気供給手段には、圧縮空気供給源から供給されてくる圧縮空気を一時的に貯留し、さらに複数の吐出口から前記圧縮空気を排出する空気導入用筒体が具備され、
前記循環装置には、雑排水を通過させて前記貯留槽の上流側に前記雑排水を配送する水循環用筒体が具備され、
前記空気導入用筒体と前記水循環用筒体の少なくとも一方の内部には、それぞれ複数の永久磁石が収容されていることを特徴としている。
【0012】
このような構成であれば、圧縮空気の供給により雑排水が攪拌されるので、油脂成分を排水中に混濁、乳化させることができるのは勿論のこと、雑排水中の微生物を増殖させることができる。これにより油脂成分の水と二酸化炭素への分解が促進する。また、油脂性堆積物を断続的に溶解し、水質を改善することができる。
【0013】
さらに、磁石の作用により、磁場との関係で貯留槽内にローレンツ力が発生し、一定の流速を持って流れる貯留された雑排水を振動させ、これによりクラスターの細分化が促進され、水本来の有する溶解力、洗浄力、殺菌作用など、水の活力を取り戻すことができる。また、磁石の作用により、油、塩分などを含む汚水が電気分解される。
【0014】
ここで、前記永久磁石は、NS,SN,NSと磁極同士が反発しあう態様で所定間隔置きに収容されていることが好ましい。
このように磁力線同士が反発しあう態様で配置されることにより、雑排水の処理能力が向上した。これは、反発磁力が外方に作用することによりクラスターの細分化が進んだためと考えられる。
【0015】
一方、本発明では、前記水循環用筒体の出口方向が、地軸の北を向いて配されていることが好ましい。これにより、雑排水の処理能力が向上した。これは、磁力の強度および電流の流れ方向が整えられたためと考えられる。
【0016】
また、本発明では、前記雑排水が、油脂成分を含む雑排水に好ましく適用することができる。
このように、油脂成分を含む雑排水に適用すれば、油脂成分の適正な処理に困難を極めていた厨房や食品加工工場、工場などで有効に活用することができる。また、設備投資が安価であり、メンテナンスの手間も可及的に少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例にかかる汚水処理装置を示したものである。
この汚水処理装置20は、雑排水が排出される厨房や、食品加工工場などの敷地内に設
置されるものである。
【0018】
この汚水処理装置20は、雑排水が連続的に収容される貯留槽22と、この貯留槽22内を複数の小部屋に画成する複数の隔壁板24と、貯留槽22内に圧縮空気を供給する空気供給手段26と、貯留槽22内に貯留された雑排水を循環させる循環装置28とを有している。
【0019】
貯留槽22は、槽本体22aと蓋体22bとから構成され、槽本体22aは、FRPなどの樹脂あるいはコンクリートなどから形成されているが、材質は特に限定されるものではない。貯留槽22には、雑排水が内部に取り入れられる取入部3と、雑排水を外部に排出する送出部5とが具備されている。なお、取入部3の上流には、厨房などの雑排水が集積されるマンホール7が設置され、このマンホール7を介して雑排水が槽本体22a内に順次供給される。
【0020】
一方、蓋体22bは、耐荷重性のある鋼板などから形成されている。
複数の隔壁板24は、その下端24aが槽本体22aの底面より高い位置に配置され、これにより槽本体22aでは、各小部屋A,B,C,D間で流通が可能にされている。
【0021】
空気供給手段26は、ブロワ30と、このブロア30に接続された空気供給管32とから構成される。空気供給管32は、主に槽外に配置される送風管31と、槽本体22a内において、槽本体22aの両長側壁に沿って水平方向に配管された塩化ビニル製の直線状配管32a、32bと、これら直線状配管32a、32bから下方に分岐された複数の下方分岐配管32c、32c、…と、これら長側壁に沿う両側の下方分岐配管32c、32c同士を連結する複数の連結配管32d、32d、…とを有している。そして、これら連結配管32dの途中には、それぞれ圧縮空気が導入される圧縮空気導入用筒体34が上下に設置されている。なお、この圧縮空気導入用筒体34内には、多数の微細孔が形成されるとともに、図4に示したように、多数の永久磁石からなる磁気装置50が内蔵されている。この磁気装置50については後述する。
【0022】
一方、雑排水の循環装置28は、水中ポンプ35を用いて槽本体22a内の雑排水を繰り返し循環させるためのもので、これにより雑排水内の油脂成分の分解が促進される。この循環装置28は、水中ポンプ35と、この水中ポンプ35により吸引された水分を送り出す配管系36とから構成されている。なお、配管系36には、ゴミなどを取り除くストレーナ37が設置されるとともに、槽本体22a内への水の送出口となる水循環用筒体40とが具備されている。この水循環用筒体40内にも,上記空気導入用筒体34と同様に、永久磁石による磁気装置50が収容されている。
【0023】
以下に、これら空気導入用筒体34と水循環用筒体40に収容された複数の永久磁石からなる磁気装置50について、図4を参照しながら説明する。
なお、空気導入用筒体34および水循環用筒体40に収容された磁気装置50は、実質的に同様に形成されたものであるため、水循環用筒体40内に構成された磁気装置50について説明する。
【0024】
先ず、水循環用筒体40は、SUS304などの磁性を有するステンレス鋼板から形成されている。そして、この筒体40内に同じくステンレス製の軸54が収容され、この軸54の周囲に複数の永久磁石56が所定の間隔で取り付けられている。
【0025】
さらに、この永久磁石56は円盤状に形成されたもので、1つの磁石のガウスは、1000ガウス以上あることが好ましい。
また、1つの磁石56と隣接する磁石56の間には、ステンレス製のカラー58が介装
され、本実施例ではこれらのカラー58により、例えば40φの永久磁石56がSN、NS,SN、NSと互いに反発しあう態様で25mm間隔に並べられている。
【0026】
さらに、最外方の磁石56の側方には、ダブルナット60が設置され、これらのナット60により磁石56の固定と抜けが防止されている。
このように形成された磁気装置50が、圧縮空気導入用筒体34と水循環用筒体40との内部に収容されている。なお、雑排水を循環させる循環装置28の水循環用筒体40は、ステンレスに代えて鋼で形成しても良い。しかしながら、水循環用筒体40の内部を水が循環して流れるため、酸化を防止するために、水循環用筒体40の外方に例えば、塩化ビニルなどからなるカバー部材を取り付けることもできる。
【0027】
本実施例では、磁気装置50の永久磁石56の磁水循環用筒体40極は、SN,NS,SNと互いに反発しあう対応で設置したが、SN,SN,SNと互いに引き合う対応で設置しても良い。
【0028】
また、水循環用筒体40を、その配管系36の取り付け部に対し角度調整可能にしておき、その筒体40の出口を地軸の方向(すなわち南北の方向)に向けて取り付けることが好ましい。このような方向に水循環用筒体40を取り付ければ、油脂成分の分解が促進されることが確認された。
【0029】
なお、貯留槽本体22a内の設置スペースに余裕があれば、空気導入用筒体34も、地軸の方向に向けることが好ましい。
空気導入用筒体34および水循環用筒体40に収容された磁気装置50は、上記のように構成されているが、空気導入用筒体34は、圧縮空気を槽内に排出する必要があるため、上記の構成に加えて、筒体34に多数の小孔が設けられている。また、その外側にカバー部材を設ける場合には、そのカバー部材にも空気孔を設ける必要がある。
【0030】
本実施例に係る汚水処理装置は上記のように構成されているが、以下に作用について説明する。
今、厨房などで発生した油脂成分を含む雑排水がマンホール7を介して貯留槽22の取入部3に流入されている。また、貯留槽22内では、循環装置28により雑排水が槽本体22a内を循環しているとともに、空気供給手段26の駆動により、ブロア30から圧縮空気が槽本体22a内に送り込まれている。そして、その圧縮空気は、圧縮空気導入用筒体40に設けた微細孔を介して、槽本体22aの上層部および下層部から発散されている。
【0031】
この状態で槽本体22a内では、圧縮空気が発散されることにより水分子のクラスターの細分化が促進されている。
また、圧縮空気の供給は、攪拌の他、PHの上昇(アルカリ化)をもたらし、その結果、有用バクテリアの増殖し易い環境を創出するものと考えられる。
【0032】
また、空気供給手段26と水循環装置28における各磁気装置50により、油、塩分などを含む汚水が電気分解される。
さらに本発明において、磁気装置50の作用は、磁力が一定の流速を持った水に作用し、分子クラスターを微細化し浄化作用を発揮していると考えられる。
【0033】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、空気導入用筒体34と水循環用筒体40の両方に永久磁石による磁気装置50を構成したが、磁気装置50はいずれ一方に構成されていれば良い。例
えば、油脂成分の少ない施設などにおいては、空気導入用筒体34内の磁気装置50を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る汚水処理装置の平面図である。
【図2】図2は図1に示した汚水処理装置の正面図である。
【図3】図3は図1に示した汚水処理装置の右側面図である。
【図4】図4は図1に示した汚水処理装置に採用された磁気装置の断面図である。
【図5】図5は従来の汚水処理装置の概略図である。
【符号の説明】
【0035】
3 取入部
5 送出部
7 マンホール
20 汚水処理装置
22 貯留槽
22a 槽本体
22b 蓋体
22a 槽本体
24 隔壁板
26 空気供給手段
28 循環装置
30 ブロア
31 送風管
32 空気供給管
32a 直線状配管
32c 下方分岐配管
32d 連結配管
34 圧縮空気導入用筒体
35 水中ポンプ
36 配管系
37 ストレーナ
40 水循環用筒体
50 磁気装置
56 磁石
58 カラー
A,B,C,D 小部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑排水が取り入れられる取入部および雑排水を外部に排出するための送出部を備えた貯留槽と、
前記貯留槽内を複数の小部屋に画成し上下方向に配置される隔壁板と、
前記貯留槽内に貯留された雑排水に空気を供給して前記雑排水を攪拌する空気供給手段と、
前記貯留槽内に貯留された雑排水を循環させる循環装置と、を有し、
前記空気供給手段には、圧縮空気供給源から供給されてくる圧縮空気を一時的に貯留し、さらに複数の吐出口から前記圧縮空気を排出する空気導入用筒体が具備され、
前記循環装置には、雑排水を通過させて前記貯留槽の上流側に前記雑排水を配送する水循環用筒体が具備され、
前記空気導入用筒体と前記水循環用筒体の少なくとも一方の内部には、それぞれ複数の永久磁石が収容されていることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
前記永久磁石は、NS,SN,NSと磁極同士が反発しあう態様で所定間隔置きに収容されていることを特徴とする請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項3】
前記水循環用筒体の出口方向が、地軸の北を向いて配されていることを特徴とする請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項4】
前記雑排水が、油脂成分を含む排水であることを特徴とする請求項1に記載の汚水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−160549(P2009−160549A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2142(P2008−2142)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(508009862)
【出願人】(508009459)
【Fターム(参考)】