説明

汚水浄化システム

【課題】フィルタの目詰まりを抑制することができ、ろ過効率の良い汚水浄化システムを提供する。
【解決手段】汚水をろ過する高分子マイクロフィルタは、不織布の繊維層に含浸され不織布と一体化された多孔質性樹脂15と、多孔質空間の核となる独立核空間15aと、複数の独立核空間の間を連通させる連続微空間15bとで形成されたスクラム構造を有する多孔質層2を備えている。不織布の繊維10の一部が連続微空間15bの内側へ突き出すように構成され、不織布の平均繊維径dが連続微空間の平均空孔径dよりも小さく構成されており、汚水に含まれる微粒子16は連続微空間15b内に突出した繊維10に引っ掛かりそれ以上多孔質層2の内部に入り込まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水浄化システムに関し、特に、汚水をフィルタによりろ過する汚水浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産汚泥等の有機性汚泥は、一般に、フィルタでろ過され、浄化処理が行われている。大量の有機性汚泥をそのまま廃棄した場合には河川等が汚濁し、自然環境に重大な影響を及ぼすからである。例えば、特許文献1には、活性汚泥法式で発生する余剰汚泥を高温嫌気性消化処理とフィルタ(分離膜)による固液分離とを組み合わせて処理する有機性汚泥の処理方法が記載されている。
【特許文献1】特開平7−148500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のフィルタは長時間使用することにより、汚水に含まれる微細物質によって目詰まりを起こすため、目詰まりするごとにフィルタの洗浄や交換を行う必要があった。しかも、この目詰まりは、処理する汚水の種類にもよるが、かなり頻繁に起こってしまう。このため、フィルタが目詰まりする度に、ろ過処理を中断し、洗浄・交換を行うこととなり、ろ過効率が低下するという問題があった。また、逆洗による洗浄を行っても目詰まりを完全に解消できない場合もあった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、フィルタの目詰まりを抑制することができ、ろ過効率の良い汚水浄化システムを提供することにある。
【0005】
また、本発明の他の目的は、逆洗による洗浄効果の高い汚水浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、汚水を一時的に蓄積するろ過槽と、汚水をろ過する高分子マイクロフィルタと、高分子マイクロフィルタによってろ過された汚水を排水する排水管とを備え、高分子マイクロフィルタは、不織布の繊維層に含浸され不織布と一体化された多孔質性樹脂と、多孔質空間の核となる独立核空間と、複数の独立核空間の間を連通させる連続微空間とで形成されたスクラム構造を有する多孔質層を備え、不織布の繊維の一部が連続微空間の内側へ突き出すように構成され、不織布の平均繊維径が連続微空間の平均空孔径よりも小さいことを特徴とする汚水浄化システムによって達成される。
【0007】
本発明においては、連続微空間の平均空孔径が0.5〜8μmであることが好ましい。これによれば、通水性が低下してろ過効効率が悪くなることを抑制できる。
【0008】
本発明においては、不織布の平均繊維径が8μm以下であることが好ましい。これによれば、連続微空間の平均空孔径を平均繊維径より大きくしても、微小な固形物質を捕捉することができる。
【0009】
本発明においては、連続微空間の前記平均空孔径が4μm以上であり、前記不織布の前記平均繊維径が4μm以下であることが特に好ましい。これによれば、ろ過効率を低下させずに、目詰まりを防止することができる。
【0010】
本発明においては、多孔質層が、1以上の凸部及び/又は凹部で異形化された断面形状を有する繊維で形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明においては、高分子マイクロフィルタが、多孔質層の下流側に形成された多孔質層よりも空隙率の高い不織布の中間繊維層と、中間繊維層の下流側に形成された支持層と、支持層の下流側に形成された中間繊維層よりも空隙率の高い不織布の基材繊維層をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多孔質層を構成する不織布の平均繊維径を連続微空間の平均空孔径よりも小さくすることにより、ろ過により固形物(微粒子)が連続微空間に入った場合であっても、連続微空間内に存在する不織布の繊維に固形物が引っ掛かり多孔質層の内部深くまで固形物が入り込むことを防止できる。従って、高分子マイクロフィルタの目詰まりを防止できるため、ろ過効率を向上させることができる。
【0013】
さらに、多孔質層の内部まで固形物が入り込まないため、逆洗による洗浄効果を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の好ましい実施形態による汚水浄化システム100の構成を示す略断面図である。
【0016】
図1に示すように、汚水浄化システム100は、汚水101を一時的に蓄積するろ過槽102と、高分子マイクロフィルタ103を収容する高分子マイクロフィルタ収容部104と、排水管105と、逆洗水供給管106と、排水管105と逆洗水供給管106の接続部に取り付けられた切替弁107とを備えている。
【0017】
さらに、汚水浄化システム100は、ろ過処理される汚水101をろ過槽102へ供給する汚水供給管108と、逆洗水供給管106に洗浄水を供給するポンプ109とを有して構成されている。
【0018】
高分子マイクロフィルタ103は、高分子マイクロフィルタ収容部104によりろ過槽102の底部に配置されている。そして、ろ過槽102からの汚水101を受け、これをろ過する。
【0019】
切替弁107は、高分子マイクロフィルタ収容部104と排水管105とを接続させた状態及び高分子マイクロフィルタ収容部104と逆洗水供給管106とを接続させた状態を必要に応じて切り替える。
【0020】
かかる汚水浄化システム100において、ろ過処理を行う場合、切替弁107を排水管105側へ切り替えることにより、高分子マイクロフィルタ収容部104と排水管105とを接続させる。これにより、図1中破線矢印で示すように、ろ過槽102に貯められた汚水101が高分子マイクロフィルタ103によってろ過され、ろ過された水が排水管105へ排出される。
【0021】
また、汚水浄化システム100は、高分子マイクロフィルタ103の高分子マイクロフィルタ収容部104側(排水管105側)からろ過槽102側へ水を流入させ、高分子マイクロフィルタ103の洗浄を行う逆洗機構を備えている。
【0022】
図2は、本発明の好ましい汚水浄化システム100における逆洗処理を説明するための略断面図である。
【0023】
逆洗を行う場合、まず、汚水供給管108からろ過槽102への汚水の供給をストップさせる。そして、図2に示すように、切替弁107を逆洗水供給管106側に切り替えることにより、高分子マイクロフィルタ収容部104を逆洗水供給管106と接続させる。これにより、図2中破線矢印で示すように、ポンプ109から供給される逆洗水が逆洗水供給管106を介して高分子マイクロフィルタ103へ供給され、さらに逆洗水は高分子マイクロフィルタ103を通ってろ過槽102へ送出される。
【0024】
このように、高分子マイクロフィルタ103の下流側(高分子マイクロフィルタ収容部104側)から上流側(ろ過槽102側)へ逆洗水を流すことにより、高分子マイクロフィルタ103の洗浄を行うことができる。
【0025】
次に、本実施形態で用いられる高分子マイクロフィルタ103について詳細に説明する。
【0026】
図3は、高分子マイクロフィルタ103の構造を示す略断面図である。
【0027】
図3に示すように、高分子マイクロフィルタ103は、不織布の繊維の断面形状を異形化することにより形成されたスクラム構造を有する多孔質層2と、多孔質層2の下流側に不織布で形成された多孔質層2よりも空隙率の高い中間繊維層3、織布、ネット、その他の多孔膜等の補強材で中間繊維層3の下流側に形成された支持層4、支持層4の下流側に不織布で形成された中間繊維層3よりも空隙率の高い下部繊維層5とを備えている。
【0028】
多孔質層2、中間繊維層3、下部繊維層5を形成する不織布の材質としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール(ビニロン)系などの合成繊維を用いることができる。各々の層の平均繊維径は、空隙率等に応じて適宜選択することができる。多孔質層2を形成する合成繊維の平均繊維径は、8μm以下とすることが好ましい。尚、耐水性、耐薬品性、耐候性の面からはポリエステルやポリプロピレンが好ましい。
【0029】
高分子マイクロフィルタ103の目付は500g/m〜1000g/mであることが好ましい。目付が500g/mより小さくなるにつれ、長期間使用により繰り返し加わる水圧に耐えることが困難となり、耐久性が低下し易くなる傾向があり、1000g/mよりおおきくなるにつれ、量産性が低下し易くなる傾向があるからである。
【0030】
支持層4は、織布、ネット、その他の多孔膜等の補強材を中間繊維層3と下部繊維層5の間に配設することにより形成されることが好ましい。補強材としては、ものフィラメントやマルチフィラメントの織物基布が好適に用いられるが、スパン織布を用いてもよい。尚、補強材の材質としては、前述の不織布の材質と同様のものが好適に用いられる。また、ネットの場合、ステンレス線とポリエステル等を複合させたものを縦横に網目状に配置してもよい。
【0031】
高分子マイクロフィルタ103の見かけ密度は0.35g/cm〜0.55g/cmであることが好ましい。見かけ密度が0.35g/cmより小さくなるにつれ、汚水と接触するろ過面積が不十分となり、ろ過効率が低下し易くなる傾向があり、0.55g/cmより大きくなるにつれ、通水量が不十分となり、大量の汚水をろ過することが困難になる傾向があるからである。
【0032】
高分子マイクロフィルタ103は、98kPaの圧力差を与えたときの空気通過量が1(cm/s)/cm〜10(cm/s)/cmとなるように形成されていることが好ましい。空気通過量が1(cm/s)/cmより小さくなるにつれ、通水量が不十分となり、大量の汚水をろ過することが困難になる傾向があり、10(cm/s)/cmより大きくなるにつれ、汚水と接触する繊維量が不十分となり、ろ過効率が低下し易くなる傾向があるからである。
【0033】
図4(a)及び(b)は、高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の構造を示す要部断面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるAで示す部分の拡大図である。
【0034】
図4(a)に示すように、多孔質層2はスクラム構造を有しており、多孔質層2を形成する不織布の繊維層に含浸され不織布と一体化された多孔質性樹脂15と、多孔質層2の多孔質空間の核となる独立核空間15aと、複数の独立核空間15aの間を連通させる連続微空間15bを備えている。
【0035】
多孔質層2の厚さは、10μm〜1000μmであることが好ましい。多孔質層2の厚さが10μmより薄くなるにつれ、連続微空間15bを十分に確保することができず、ろ過能力が不足すると共に、刷毛等による物理的な洗浄などによって短時間で多孔質層2全体が破損し易く、スクラム構造の効果が不十分となって寿命が低下し易くなる傾向があり、1000μmより厚くなるにつれ、通水性が不足してろ過効率が低下し易くなる傾向があるからである。多孔質層2の厚さを10μm〜1000μmの範囲にすることで、多孔質層2の表層側が破損しても、その内側が新たな表層となって連続微空間15bで継続的にろ過を行うことができ、ろ過性能の信頼性、長寿命性に優れる。
【0036】
図4(b)に示すように、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の平均繊維径dは、連続微空間15bの平均空孔径dよりも小さく構成されている。また、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の一部が、連続微空間15bの各空孔の内側へ突き出した構造となっている。
【0037】
多孔質層2を図4(b)のように構成する場合、多孔質層2の連続微空間(連続気泡)15bの平均空孔径dは、0.5μm〜8μmであることが好ましい。また、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の平均繊維径dは、8μm以下とすることが好ましく、4μm以下とすることがより好ましい。連続微空間の平均空孔径dが0.5μmより小さくなると、通水性が大幅に低下してろ過効効率が悪くなる。また、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の平均繊維径dが8μmより大きくなると、連続微空間の平均空孔径dを不織布の繊維10の平均繊維径dよりもさらに大きくする必要があることから、微小な固形物質を捕捉することが困難となり、空孔に引っ掛かって閉塞状態となり、逆洗や洗浄で除去できなくなってしまうからである。従って、連続微空間の平均空孔径dを4μm以上とし、不織布の繊維10の平均繊維径を4μm以下とすることが特に好ましい。
【0038】
このような構成により、ろ過により微粒子16が連続微空間内に入った場合でも、連続微空間内に存在する不織布の繊維10に微粒子16引っ掛かり、多孔質層2の内部深くまで微粒子16が入り込むことが防止される。したがって、高分子マイクロフィルタの目詰まりを防止することができる。また、図2に示した逆洗処理においても、微粒子16が多孔質層2内の深いところまで入り込んでいないため、洗浄効果を高くすることができる。
【0039】
図5(a)乃至(c)は、多孔質層2を形成する繊維の構造を示す模式斜視図である。
【0040】
図5(a)は、多孔質層2を形成する繊維10の円周上に複数の凸部11が形成された例であり、図5(b)は、多孔質層2を形成する繊維10aの外周に凸部11aが螺旋状の凸条に形成された例であり、図5(c)は、多孔質層2を形成する繊維10bの外周表面に略球状の複数の凸部11bが形成された例である。これらの凸部11,11a,11bは、表面に凸部11,11a,11bに対応する凹凸が形成された圧延ローラの間に繊維10,10a,10bを通すことにより形成することができる。
【0041】
凸部11,11a,11bの大きさは繊維10,10a,10bの繊維径にもよるが、繊維径が上述の8μm以下の場合、凸部11,11a,11bの直径は2μm以下であることが好ましい。
【0042】
高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の形成工程において、1以上の凸部11,11a,11bで異形化された断面形状を有する繊維10,10a,10bをニードルパンチやウォータージェットニードル等の方法によって、三次元に交絡させて多孔質層2を形成することにより、独立核空間15aを連通する略均一な連続微空間15bを形成することができ、多孔質層2の連続微空間(微細空孔)15bの平均空孔径を前述の0.5μm〜8μmに形成することができる。
【0043】
図6(a)乃至(f)は、多孔質層2を形成する繊維の構造の変形例を示す略断面図である。
【0044】
図6(a)は繊維10cの外周に5個の凸部11cが形成された例であり、図6(b)は繊維10dの外周に4個の凸部11dが形成された例であり、図6(c)は繊維10eの外周に3個の凸部11eが形成された例であり、図6(d)は繊維10fの外周に4個の凹部11fが形成された例であり、図6(e)は繊維10gの外周に3個の凹部11gが形成された例であり、図6(f)は繊維10hの外周に2個の凹部11hが形成された例である。
【0045】
図6に示した繊維10c乃至10hの断面形状と同様の断面形状を有する金型から繊維を延伸させることにより、繊維の断面形状を異形化することができ、繊維の長手方向に連続的な凸条や凹条を形成することができる。また、延伸の際に繊維を捻ることにより、図5(b)で示したように凸条や凹条を螺旋状に形成することができる。尚、繊維を液中で延伸させることにより、異形化された断面形状を確実に維持することができ生産性に優れる。
【0046】
図6では、2個〜5個の凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hにより、断面形状を異形化したものを示したが、凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数は2個〜8個、形成することができる。凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数が2個より少なくなるにつれ、異形化の効果が不十分となり、通水性が低下し易くなってろ過効率が低下する傾向があり、凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数が8個より多くなるにつれ、断面形状を維持するのが困難となり生産性が低下し易くなると共に、空隙率が高くなってろ過性能が低下し易くなる傾向があるからである。尚、図5及び図6で示した各々の繊維10a乃至10hは、それぞれ単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
以上のように構成された高分子マイクロフィルタ103によれば、以下の作用を有する。まず、スクラム構造を有する上流側の多孔質層2の目を細かくすることにより、表面部で汚水中の粒子を確実に捕捉して、内部への侵入を阻止でき、ろ過性能に優れる。また、ろ過時に上流側となる多孔質層2側から下流側の下部繊維層5側に向かって空隙率が高くなるように各層の空隙率を調整することにより、微細な懸濁物質であっても確実に多孔質層2の表面で捕捉して、ろ過することができると共に、ろ過された汚水のろ過水を下部繊維層5側から速やかに排出することができ、ろ過効率に優れる。
【0048】
また、上流側の多孔質層2の目を細かくし、下流側の下部繊維層5の目を粗くすることにより、逆洗や物理的な剥離により多孔質層2の表面に付着した懸濁物質を容易に取り除くことができ、目詰まりが発生し難く、長期間連続して使用することが可能でメンテナンス性、実用性に優れる。
【0049】
また、中間繊維層3と下部繊維層5との間に形成された支持層4を有することにより、全体を補強して縦横の変形を防止することができ耐久性に優れる。また、下部繊維層5により高分子マイクロフィルタ103の全体の厚みと強度を調整することができ、スクレーパやブラシ等により洗浄を行う際に、そのクッション性で衝撃を吸収することができ、多孔質層2の破損が発生し難くなると共に、ろ過水を自由に移動、排出させることができ、通水性を向上させることができる。
【0050】
さらにまた、多孔質層2を形成する繊維10乃至10hが、1以上の凸部11乃至11eや凹部11f乃至11hで異形化された断面形状を有することにより、多孔質層2内に略均一な連続微空間を形成することができ、ろ過性能の均一性に優れる。また、多孔質層2が、略均一な連続微空間が多重に形成されたスクラム構造を有するので、多孔質層2の表面で繊維10乃至10hが断裂する等にしても、さらにその内側の繊維10乃至10hで形成された連続微空間によって継続的にろ過を行うことができ、ろ過性能の信頼性、長寿命性に優れる。
【0051】
この高分子マイクロフィルタ103は、重力ろ過を行うことができ、目詰まりが発生し難く、外部からの小さな刺激で懸濁物質を剥離することができるので、逆洗で洗浄する以外に、ブラシ洗浄方式、ウォータージェット洗浄方式、吸引洗浄方式、スクレーパ洗浄方式等により洗浄することができ、濃度の濃い汚水にも対応することができ汎用性に優れる。また、ブラシ洗浄やスクレーパ洗浄などの剥離洗浄により、多孔質層2の表面に付着した懸濁物質を凝集した状態で剥離させてろ過槽などの底部に沈降させることができるので、汚水の濃度が濃くなることが防止でき、安定したろ過流量を得ることができる。
【0052】
また、高分子マイクロフィルタ103はろ過圧力装置を必要としないので省エネルギー性に優れ、ろ過装置全体を小型化、軽量化することができ、量産性、取り扱い性を向上させることができる。また、凝集剤等を使用することなく、汚水に含まれているミネラル分を残存させたまま、懸濁物質のみを取り除いて浄化処理を行うことができ、清水として河川等に放流することができるので環境保護性に優れる。また、汚水中の懸濁物質が高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の表面に付着しても、ろ過効率が低下することがなく、優れたろ過性能を維持することができ、実用性、信頼性に優れる。
【0053】
以上説明したように、本発明によれば、ろ過処理を行うことにより微粒子が多孔質層の連続微空間内に入った場合でも、連続微空間内に存在する不織布の繊維に微粒子が引っ掛かるため、多孔質層の内部の深いところまで微粒子が入り込むことを防止できる。従って、高分子マイクロフィルタの目詰まりを抑制することができる。また、逆洗における洗浄効果も高くすることができる。
【0054】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることはいうまでもない。
【0055】
例えば、本発明による汚水浄化システムの用途は、特に限定されるものではなく、し尿・畜産汚水処理、セメント・コンクリート製品又は骨材、石工品の製造時に発生するノロ排水の処理、選炭廃液の処理、工場排水の処理、その他様々な産業において発生する汚水の処理にも用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態による汚水浄化システム100の構成を示す略断面図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態による汚水浄化システム100における逆洗処理を説明するための略断面図である。
【図3】図3は、高分子マイクロフィルタ103の構造を示す略断面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の構造を示す要部断面図である。
【図5】図5(a)乃至(c)は、多孔質層2を形成する繊維の構造を示す模式斜視図である。
【図6】図6(a)乃至(f)は、多孔質層2を形成する繊維の構造の変形例を示す略断面図である。
【符号の説明】
【0057】
2 多孔質層
3 中間繊維層
4 支持層
5 下部繊維層
10 繊維
10a-10h 繊維
11 凸部
11a-11e 凸部
11f-11h 凹部
15 多孔質性樹脂
15a 独立核空間
15b 連続微空間
16 微粒子
100 汚水浄化システム
101 汚水
102 過槽
103 高分子マイクロフィルタ
104 高分子マイクロフィルタ収容部
105 排水管
106 逆洗水供給管
107 切替弁
108 汚水供給管
109 ポンプ
平均繊維径
平均空孔径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水を一時的に蓄積するろ過槽と、
前記汚水をろ過する高分子マイクロフィルタと、
前記高分子マイクロフィルタによってろ過された前記汚水を排水する排水管とを備え、
前記高分子マイクロフィルタは、不織布の繊維層に含浸され前記不織布と一体化された多孔質性樹脂と、多孔質空間の核となる独立核空間と、複数の前記独立核空間の間を連通させる連続微空間とで形成されたスクラム構造を有する多孔質層を備え、
前記不織布の繊維の一部が前記連続微空間の内側へ突き出すように構成され、
前記不織布の平均繊維径が前記連続微空間の平均空孔径よりも小さいことを特徴とする汚水浄化システム。
【請求項2】
前記連続微空間の前記平均空孔径が0.5〜8μmであることを特徴とする請求項1に記載の汚水浄化システム。
【請求項3】
前記不織布の前記平均繊維径が8μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚水浄化システム。
【請求項4】
前記連続微空間の前記平均空孔径が4μm以上であり、前記不織布の前記平均繊維径が4μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の汚水浄化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−22907(P2009−22907A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190075(P2007−190075)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】