説明

汚水浄化装置用の異常検知方法および異常検知装置

【課題】取り付け設置が容易で、しかも、汚水浄化装置に異常が発生した場合それを初期の段階で検知することが可能で、さらに、構造がシンプル、安価に製作提供することができる異常検知方法および異常検知装置を提供する。
【解決手段】浄化槽B1内に空気を供給する送風機B2の吸気側に発生する吸気圧の変化によって浄化槽B1および送風機B2の異常を検知する汚水浄化装置B用の異常検知装置Aであって、送風機B2の吸気口11の開口近傍に一端側が配される吸気チューブA1の他端側に差圧スイッチA2を備え、この差圧スイッチA2の通電接点20が、送風機B2の吸気圧の変化によってOFF状態からON状態に切り替わったときに、保守時期を報知する報知ランプA3を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水浄化装置用の異常検知方法および異常検知装置に係り、特に、浄化槽の槽外に設置されて浄化槽内の汚水中に空気を供給(散気)する送風機の吸気圧(吸込圧力)の変化から汚水浄化装置の異常を検知する異常検知方法および異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅や共同住宅などから排出される汚水・廃水を微生物(好気性バクテリア)によって分解し、浄化して放流する好気性の汚水浄化装置では、微生物による浄化機能を維持するために、浄化槽内をばっ気攪拌し、槽内を好気性に保つために空気(酸素)を供給する送風機を主要装置として備えている。
したがって、このような好気性の汚水浄化装置では、特に、送風機に異常が生じると、浄化槽内を正常な好気性に保つことができなくなり、浄化機能が低下し、浄化槽から河川への未処理水が放流されて環境汚染となる。
ちなみに、好気性の汚水浄化装置において主要装置である送風機は、ダイヤフラム式ブロアである。このダイヤフラム式ブロアは、フレームに固定された一対の電磁石と、両端をダイヤフラム(チャンバーブロック)に連結され永久磁石(ロッド)を備えている振動子とを備え、通電により電磁石に発生する磁界の変化によって、電磁石と永久磁石との間に働く磁気的相互作用で振動子を往復運動させてこの振動子に連結されているダイヤフラムを振幅(変形)させることにより、空気を吐出(送気)するように構成されている。
【0003】
こうした環境汚染を未然に防ぐために、保守点検委託業者による汚水浄化装置の定期的な法定点検が義務付けられている。この法定点検は、3ヶ月から4ヶ月に1回の間隔で行われている。しかし、3ヶ月から4ヶ月の間隔で行われる法定点検のときに異常を発見しても、殆どの場合、浄化槽や主要装置である送風機などの故障によって既に浄化槽から汚濁した未処理水が放流されてしまった後の事後的な対処という結果になり、そのために、河川などに与える環境汚染の影響は大きいものとなる。
【0004】
そこで、汚水浄化装置に故障などの異常が発生したときに検知し、報知するように構成されている異常検知装置が提案されている(例えば、特許文献1などを参照)。
特許文献1では、異常検知部として電流検知センサを用い、この電流検知センサにより送風機(エアポンプ)が正常に運転しているときと、故障したときの消費電流の変化を監視することで異常を検知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−311283号公報(段落番号0012、0015、および図1、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先行文献1に記載の従来技術では、電気的な接続によって電流検知センサからなる異常検知部を、送風機内に直接組み込む(特許文献1の図1参照)、あるいは送風機の電源コードに組み込む(特許文献1の図3参照)必要があるために、例えば、既設の送風機に取り付け設置するときには、送風機内の配線を切断、あるいは電源コードを切断し、半田付けなどによって組み込み接続するなどの大掛かりな作業となり、必要においては現場での取り付け設置が困難で、送風機の販売メーカのサービス工場などに持ち込んで設置しなければならないなど、面倒で手間が掛かるなどの取扱い性に大きな問題があった。
【0007】
また、この従来技術では、送風機の運転が停止し、消費電流がゼロに落ちたときに送風機の故障を検知するようにしているために、異常検知が発せられたときには既に送風機から浄化槽内への空気の供給は停止しており、酸素不足により微生物が死滅した事後的な対処でしかならないものであった。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解消するために創案されたものであり、取り付け設置が簡易かつ迅速で、しかも、汚水浄化装置に異常が発生した場合それを初期の段階で検知することが可能で、さらに、構造がシンプル、安価に製作提供することができるように改良された画期的な異常検知方法および異常検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の汚水浄化装置用の異常検知方法は、浄化槽内に空気を供給する送風機の吸気側に発生する吸気圧(吸込圧力)の変化によって、前記浄化槽と前記送風機の異常を検知する汚水浄化装置用の異常検知方法であって、
前記送風機の前記吸気圧が、正常基準圧のときには通電接点がOFF状態に維持され、前記吸気圧が前記正常基準圧より下回ったときには前記通電接点がON状態に切り替わり異常を報知することを特徴とする。
【0010】
ここで、前記正常基準圧とは、汚水浄化装置が正常に運転しているときの前記吸気圧(吸込圧力)と大気圧との差圧である。
【0011】
このような構成によれば、送風機の吸気側に発生する吸気圧(吸込圧力)が正常基準圧のときには通電接点がOFF状態に維持されている。そして、吸気圧が正常基準圧より下回ったときには通電接点がOFF状態からON状態に切り替わり、浄化槽および送風機に異常が発生したこと報知する。
また、汚水浄化装置が正常に運転しているときに送風機の吸気側に生じる吸気圧と大気圧との差圧を、異常を検知するときの正常基準圧(判断圧)としていることで、例えば、浄化槽内に設置されている散気装置(散気管)に目詰まりが起きたときや送風機自体の故障に伴う送風機の吸気圧(吸込圧力)のわずかな変化にもすばやく対応して異常を検知することができる。
これにより、送風機の故障などを初期の段階で速やかに検知し、管理者(使用者)などに報知することができる。
ちなみに、送風機自体の故障は、ダイヤフラムの劣化による破損が主な原因となっている。
【0012】
また、本発明の汚水浄化装置用の異常検知装置は、浄化槽内に空気を供給する送風機の吸気側に発生する吸気圧(吸込圧力)の変化によって、前記浄化槽と前記送風機の異常を検知する汚水浄化装置用の異常検知装置であって、
前記送風機に開口されている吸気口に臨ませて、または、その開口付近に一端側が配される吸気チューブと、この吸気チューブの他端側に接続されるスイッチ手段と、このスイッチ手段の通電接点がOFF状態からON状態に切り替わったときに、保守時期を管理者などに報知する報知手段と、を備え、前記スイッチ手段は、前記吸気チューブを通して作用する前記送風機の前記吸気圧が、正常基準圧のときには通電接点がOFF状態に維持され、前記吸気圧が前記正常基準圧より下回ったときには前記通電接点がON状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記正常基準圧は、汚水浄化装置が正常に運転しているときの前記吸気圧(吸込圧力)と大気圧との差圧であり、前記報知手段は、前記スイッチ手段の通電接点がOFF状態からON状態に切り替わったときに、点灯または点滅する報知ランプであることが好適なものとなる。また、報知手段としては、ランプのほかに、ブザー、音声(スピーカ)などを挙げることができる。そして、有線、無線などの送信手段によって管理者の住居内、そして保守点検委託業者に直接に報知するなどの構成を採用することができる。
【0014】
また、前記スイッチ手段は、前記吸気チューブを通して作用する前記送風機の前記吸気圧の変化によって通電接点がOFF状態からON状態切り替わるように構成されているものであれば特に限定されるものではない。例えば、スイッチ部のケース内がダイヤフラムによって、吸気チューブが接続される負圧側と、大気開放の正圧側とに仕切られ、かつ、吸気圧が吸気チューブを通して作用する負圧側と大気開放の正圧側との圧力差によって変位するダイヤフラムの動きに追従(同調)して通電接点がOFF状態、ON状態のいずれかに切り替わるマイクロスイッチを前記負圧側に、前記ダイヤフラムに連繋させて内蔵してなる構成の差圧スイッチを採用することが好適なものとなる。
【0015】
このような構成によれば、吸気チューブの一端側を送風機の吸気口に臨ませ、または、吸気口の開口付近に位置させて適宜の固定手段により移動不能に固定し、吸気チューブの他端側に接続されているスイッチ手段を送風機付近の、例えば、建物外壁などに取り付ける。
これにより、異常検知装置の設置が完了し、浄化槽および送風機の異常を検知することができる。つまり、送風機の吸気側に発生する吸気圧(吸込圧力)が正常基準圧より下回ったときにはスイッチ手段の通電接点がOFF状態からON状態に切り替わり、浄化槽および送風機に異常が発生したこと報知手段により報知することができる。
また、吸気チューブ、差圧スイッチなどからなるスイッチ手段、表示ランプなどからなる報知手段、との構成要素からなるシンプルな構造であるために、安価に製作することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の異常検知方法によれば、送風機の吸気側に発生する吸気圧を利用し、吸気圧の変化から浄化槽および送風機の異常を検知し、管理者などに報知することができる。
また、汚水浄化装置が正常に運転しているときの送風機の吸気圧と大気圧との差圧を正常基準圧として、この正常基準圧に対して吸気圧が下回ったときの吸気圧の変化から浄化槽および送風機の異常を検知するようにしている。
これにより、吸気圧の僅かな変化から異常を検知し、管理者などに報知することができる。つまり、送風機に軽い症状の故障が起きた初期の段階で、異常を検知し、管理者などに報知することができるので、故障状態が悪化して送風機が完全に停止するなどのおそれを未然に防ぐことができる。
【0017】
本発明の異常検知装置によれば、前記の異常検知方法において詳述の作用効果に加えて、吸気チューブの一端側を送風機に開口されている吸気口に臨ませるか、吸気口の開口付近に位置させ、吸気チューブの他端側に接続されているスイッチ手段、そして報知手段を送風機が設置される付近の、例えば、建物外壁などに取り付けるなどの簡単な手法で容易に設置することできる。つまり、従来技術のように、送風機内の配線や、送風機に電気を供給する電源コードに半田付けなどによって組み込み接続するなどの作業を一切行わずに、簡易にかつ迅速に取り付け設置することができる。
また、吸気チューブ、差圧スイッチなどからなるスイッチ手段、報知ランプなどからなる報知手段の構成要素からなるシンプルな構造であるために、安価に製作し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る異常検知装置が設置された汚水浄化装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】送風機の一例を示す縦断面図である。
【図3】本実施形態に係る異常検知装置を示す概略説明図である。
【図4】同異常検知装置の装置ボックスの開閉蓋を開いてボックス内を見せた状態で示し正面図である。
【図5】差圧スイッチの一例を示し、(a)は、スイッチケースの上蓋を取り外した状態の正面図であり、(b)は、スイッチ部を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態に係る異常検知方法および異常検知装置Aが適用される汚水浄化装置Bとして、ばっ気型の単独浄化槽および合併浄化槽、そして、ばっ気型水槽、活魚槽、養殖場などを挙げることができる。ここでは、図1に示す汚水浄化装置Bを一例に挙げ、浄化槽B1と、浄化槽B1内に空気(酸素)を供給(送気)する送風機B2に適用させた場合の異常検知方法および異常検知装置Aについて説明する。
図1は、本実施形態に係る異常検知装置が適用された汚水浄化装置の一例を示す概略説明図であり、図2は、送風機の一例を示す縦断面図である。
【0020】
≪汚水浄化装置の構成≫
汚水浄化装置Bは、周知の構造を呈している。つまり、図1に示すように、図示省略の上蓋によって開閉される点検口bを地表に露出させた状態で地中に埋設される浄化槽B1と、この浄化槽B1の槽外に設置されて浄化槽B1内に汚水中に空気(酸素)を供給する送風機B2とを備えている構成である。
そして、図1および図2に示すように、送風機B2の本体部(筐体)に備えられている吐出口3に一端側が接続される送気管4を浄化槽B1内に配管導入させてその他端側が槽内の設置される散気装置(またはばっ気装置)5に接続される。これにより、送風機B2の吐出口3から所定の吐出力(吐出圧力)によって吐出される空気は、送気管4を通り散気装置5へ送られ、この散気装置5から浄化槽B1内の汚水中に供給(散気)されるようになっている。
【0021】
送風機B2は、図2に示すように、フレーム6に固定されて配置される電磁石7と、両端をダイヤフラム(チャンバーブロック)8に連結させた永久磁石(ロッド)9を備えている振動子10とからなり、通電により電磁石7に発生する磁界の変化によって働く磁気的相互作用で振動子10を往復運動させてダイヤフラム8を振幅(変形)させることにより、空気を吐出(送気)するように構成されているダイヤフラム式ブロアである。
【0022】
≪異常検知装置の構成≫
図3は、本実施形態に係る異常検知装置を示す概略構成図であり、図4は、同異常検知装置の装置ボックス内を見せた状態で示す正面図である。ここでは、図1および図2を適宜参照しながら説明する。
異常検知装置Aは、図2、図3および図4に示すように、送風機B2の本体部に開口されている吸気口11の開口付近に一端側が配される吸気チューブA1と、この吸気チューブA1の他端側に接続されるスイッチ手段である差圧スイッチA2と、この差圧スイッチA2の通電接点がOFF状態からON状態に切り替わったときに、保守時期を管理者などに報知する報知手段である報知ランプA3とを備えて構成されている。
【0023】
吸気チューブA1は、例えば、シリコンや合成樹脂材などの適度の可撓を有する材料を用いて、後記の負圧側口部に嵌め差し込み接続し得る太さ(内径)に形成されている。
この吸気チューブA1は、図1および図4に示すように、送風機B2と、この送風機B2が設置されている付近の、建物外壁Kに取り付けられる装置ボックスa内の差圧スイッチA2との間にわたる必要長さに切断されて、一端側が送風機B2の吸気口11の付近に固定され、他端側が差圧スイッチA2の後記の負圧側口部に接続されるようになっている。
【0024】
≪差圧スイッチの構成≫
図5は、差圧スイッチのスイッチケースの上蓋を取り外した状態の正面図およびスイッチ部を示す概略説明図である。ここでは、図3を適宜参照しながら説明する。
差圧スイッチA2は、図5の(a)に示すように、スイッチ部13と、このスイッチ部13が収容されるスイッチケース14から構成されている。
【0025】
スイッチ部13は、図5の(b)に示すように、密閉されたケース15内がダイヤフラム16によって、吸気チューブA1の他端側が接続される負圧側17と、大気開放の正圧側18とに仕切られ、負圧側17にマイクロスイッチ19を内蔵させた構成としている。マイクロスイッチ19は、設定点19aによってダイヤフラム16に接触連繋されている。
これにより、送風機B2の吸気圧(吸込圧力)が吸気チューブA1を通して作用するスイッチ部13内の負圧側17と大気開放の正圧側18との圧力差によって変位するダイヤフラム16の動きに追従(同調)してマイクロスイッチ19が作動し、マイクロスイッチ19の通電接点20がOFF状態、ON状態のいずれかに切り替わる動作を成すようになっている。
本実施形態では、浄化槽B1、送風機B2を含めた汚水浄化装置Bが正常に運転されているときに、負圧側17に作用する吸気圧と正圧側18の大気圧との差圧を、正常基準圧(作動圧力)として、吸気圧が正常基準圧のときには通電接点20がOFF状態に維持され、吸気圧が正常基準圧よりも下回ったときには通電接点20がON状態に切り替わるように構成されているマイクロスイッチ19を備えた差圧スイッチA2を採用している(図3参照)。
【0026】
このように構成されているスイッチ部13は、図5の(a)に示すように、スイッチケース14内に一体に収容される。詳しくは、スイッチケース14側に備えられている負圧側口部21にスイッチ部13の負圧側17が一体連通状に繋がり、正圧側口部(大気開放口部)22にスイッチ部13の正圧側18が一体連通状に繋げられた状態でスイッチケース14内に一体に収容される。
そして、図5の(a)に二点鎖線で示すように、スイッチケース14側に備えられている配線引込み口部23からスイッチケース14内に引き込まれる配線(例えば、報知ランプA3にわたり配線されるリード線など)29がスイッチ部13のそれぞれの端子部24にそれぞれ接続されるようになっている。
【0027】
また、差圧スイッチA2は、図5の(a)に示すように、円盤形状の設定ツマミ25を備えている。この設定ツマミ25は、汚水浄化装置B(浄化槽B1)の大きさ(汚水処理容量)や汚水浄化装置Bの設置現場(環境)などに異なる吐出能力(吐出流量)の送風機B2に合わせた正常基準圧を任意に設定するためのものである。
これにより、設定ツマミ25を回し、設定ツマミ25の表面円周に表示されている目盛り26を、異常検知時の正常基準圧に合わせる調整を行うことで、正常基準圧を、汚水浄化装置Bの大きさや汚水浄化装置Bの設置現場(環境)などに合わせて任意に設定することができるようになっている。
【0028】
そして、このように構成されている差圧スイッチA2は、図4に示すように、所望の大きさに形成されている扉付装置ボックスa内にネジ止めなどによって内設され、装置ボックスaに備えられている引き込み部26から装置ボックスa内に引き込まれる吸気チューブA1の他端側が、スイッチケース14の負圧側口部21に差し込み接続されるようになっている。
また、同じく引き込み部26から装置ボックスa内に引き込まれる異常検知装置Aの電源ケーブル27は、図3および図4に示すように、装置ボックスa内に備えられているコンセント28内に引き込み配線され、このコンセント28から引き出された配線(リード線)29が、差圧スイッチA2の引込み口部23からスイッチケース14内に引き込まれてスイッチ部13の端子部24にそれぞれ接続されるようになっている。また、コンセント28から引き出された配線29は装置ボックスaの扉30側に備えられている報知ランプA3に接続されるようになっている。
【0029】
報知ランプA3は、浄化槽B1(散気装置5などの目詰まりなど)、送風機B2(ダイヤフラム8の破損など)によって、送風機B2の吸気圧(吸込圧力)が正常基準圧より下回り、それにより、差圧スイッチA2の通電接点20がOFF状態からON状態に切り替わり、差圧スイッチA2を介して電流が流れたときに、浄化槽B1や送風機B2に異常が発生していることを管理者(使用者)などに報知する役目を成すものである。
【0030】
この報知ランプA3は、発光ダイオード,白熱電球,ハロゲンランプ,蛍光ランプ,HIDランプなどからなり、点灯、または、点滅によって浄化槽B1や送風機B2の保守時期であることを管理者などに報知するように構成されている。
そして、報知ランプA3は、送風機B2の吸気圧(吸込圧力)が正常基準圧に復帰し、差圧スイッチA2の通電接点20がON状態からOFF状態に切り替わる。つまり、報知ランプA3への電流が遮断されることで消灯するようになっている。
【0031】
なお、図示を省略しているが、報知ランプA3の消灯は、差圧スイッチA2から報知ランプA3への電流の流れを遮断、通電させる切換えスイッチを装置ボックスaに備えることができる。つまり、差圧スイッチA2と報知ランプb2とを間に切換えスイッチを介して配線接続することで、報知ランプA3の消灯を切換えスイッチによって行うことができる。そして、送風機B2の吸気圧(吸込圧力)が正常基準圧に復帰したところで、切換えスイッチを元に戻すことで、異常が発生したときに報知ランプA3を点灯または点滅させて管理者に異常を報知することができる。
【0032】
また、本実施形態では、図3および図4に示すように、報知ランプA3が点灯、または、点滅すると同時に、音で汚水浄化装置Bの異常を管理者に報知するための報知手段であるブザーA4を、報知ランプA3と同じく装置ボックスaの蓋30側に備えている。
【0033】
[作用説明]
つぎに、このように構成されている本実施形態に係る異常検知装置Aの取り付け設置について簡単に説明する。ここでは、既設の汚水浄化装置Bに対して異常検知装置Aを設置する場合を一例に挙げて説明する。ここでは、図1および図2、図5を適宜参照しながら説明する。
まず始めに、設置現場において、既設の汚水浄化装置B(浄化槽B1、送風機B2)が正常に運転していることを確認する。この確認作業は専用機器を用いて行われる。
確認作業が終わったところで、異常検出装置Aの装置ボックスaを、図1に示すように、送風機B2が設置されている付近の、建物外壁Kに取り付け、装置ボックスaから引き出されている吸気チューブA2を、図2に示すように、送風機B2の吸気口11の開口付近に位置させ、当該位置より不用意に移動しないようにクリップなどの固定具31を用いて固定する。この作業は、送風機B2の上部カバーを取り外すことで簡単に行うことができる。
そして、送風機B2の電源ケーブル32が差し込まれている既設の外部コンセント33に、異常検知装置Aの電源ケーブル27を差し込み、ついで、装置ボックスa内の差圧スイッチA2のスイッチケース14の上蓋を取り外し、図5の(a)に示す設定ツマミ25を回して、送風機B2の吐出能力に合わせた正常基準圧を目盛りから選定する正常基準圧、例えば、30〜100paの正常基準圧を設定する調整作業を行うことで、異常検知装置Aの既設汚水浄化装置Bへの取り付け設置が完了となる。
最後に、例えば、1時間から2時間程度の試運転を行い、異常検知装置Aが正常に動作するか否かの動作確認作業を行う。
【0034】
このように、本実施形態に係る異常検知装置Aによれば、既設の汚水浄化装置Bの異常を検知する装置として、簡易にかつ迅速に取り付け設置することができる。
そして、汚水浄化装置Bの異常検知として、送風機B2の吸気口11に発生する吸気圧(吸気圧力)の変化(汚水浄化装置Bの正常運転時と異常運転時との吸気圧の変化)を利用し、この吸気圧と大気圧との差圧を、異常を検知するときの正常基準圧(判断基準圧)としていることで、浄化槽B1内に設置されている散気装置5に目詰まり、送風機A2のダイヤフラム8の破損などによる故障に伴う送風機A2の吸気圧(吸込圧力)のわずかな変化にもすばやく対応して異常を検知することができる。つまり、汚水浄化装置Bに異常が発生したときは初期の段階で速やかに検知し、管理者(使用者)などに報知することができる。
これにより、散気装置5の目詰まり、送風機A2のダイヤフラム8の破損などによる軽い症状の故障、特に、送風機A2に軽い症状の故障が起きた初期の段階で、異常を検知し、管理者などに報知することができるので、故障状態が悪化して送風機A2が完全に停止するなどのおそれを未然に防ぐことができる。
【0035】
[異常検知方法の説明]
つぎに、異常検知装置Aを用いた本実施形態に係る汚水浄化装置Bの異常検知方法について説明する。
前記したように、汚水浄化装置Bの送風機B2の吐出能力に合わせた異常検知装置Aの差圧スイッチA2の正常基準圧を設定する。これにより、汚水浄化装置Bが正常に運転しているときに、送風機B2の吸気口11に発生する吸気圧が、正常基準圧のときには差圧スイッチA2の通電接点20がOFF状態に維持されている。
そして、送風機B2のダイヤフラム8の破損や浄化槽B1内の送気装置5の目詰まりなどの原因によって、送風機B2の吐出口3からの空気の吐出量に変化、例えば、圧力減少、風量減少、風速減少などが起こり、それに伴う送風機B2の吸気口11に発生する吸気圧(吸気圧力)が、正常基準圧よりも下回る変化が起こると、正常基準圧の吸気圧によってOFF状態に維持されていた差圧スイッチA2の通電接点20がON状態に切り替わる。すると、差圧スイッチA2を介して報知ランプA3に電流が流れ、報知ランプA3が点灯、または、点滅、同時にブザーA4が鳴って、汚水浄化装置B(浄化槽B1、送風機B2)に異常が発生したことを管理者などに報知する。
【0036】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項5に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、差圧スイッチA2のスイッチケース14に、報知ランプA3、ブザーA4などの報知手段を直接組み込み取り付けるなどによって、異常検知装置Aをコンパクトサイズに構成することができる。つまり、前記の実施形態のように、装置ボックスaを用いずに、差圧スイッチA2のみの大きさにて異常検知装置Aをコンパクトに製作することができる。この場合、電源はDCとすることが好適なものとなる。これにより、異常検知装置Aの製作コストを大幅に削減し、より低価格にて提供することが可能となる。
【0037】
また、差圧スイッチA2は、前記の実施形態に限定されるものではなく、送風機B2の吸気口11に発生する吸気圧(吸気圧力)が、正常基準圧(吸気圧と大気圧との差圧)のときには通電接点20がOFF状態に維持され、吸気圧が正常基準圧より下回ったときには通電接点20がON状態に切り替わるように構成されているものであればよく、任意である。
【0038】
また、報知手段として、有線や無線などの送信手段を用いて管理者(使用者)の住居内、そして保守点検委託業者に直接、汚水浄化装置Bの異常を報知(通報)するなどの構成を採用することができる。例えば、異常検知装置Aが設置される建物外壁Kなどの屋外に、異常検知装置Aが異常検知したときに異常信号などを送信する送信機を設置し、一方、送信機B2からの異常信号などを受けて管理者、そして保守点検委託業者に報知ランプA3、ブザーA4などにより異常を報知する受信機を、管理者の住居内、そして保守点検委託業者の管理事務所などに設置することで可能となる。この場合、電話回線やネット回線その他の既設回線を利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
A 異常検知装置
A1 吸気チューブ
A2 差圧スイッチ(スイッチ手段)
A3 報知ランプ(報知手段)
A4 ブザー(報知手段)
B 汚水浄化装置
B1 浄化槽
B2 送風機
3 吐出口
4 送気管
5 散気装置
11 吸気口
20 通電接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽内に空気を供給する送風機の吸気側に発生する吸気圧の変化によって、前記浄化槽と前記送風機の異常を検知する汚水浄化装置用の異常検知方法であって、
前記送風機の前記吸気圧が、正常基準圧のときには通電接点がOFF状態に維持され、前記吸気圧が前記正常基準圧より下回ったときには前記通電接点がON状態に切り替わり異常を報知することを特徴とする汚水浄化装置用の異常検知方法。
【請求項2】
前記正常基準圧は、汚水浄化装置が正常に運転しているときの前記吸気圧と大気圧との差圧であることを特徴とする請求項1に記載の汚水浄化装置用の異常検知方法。
【請求項3】
浄化槽内に空気を供給する送風機の吸気側に発生する吸気圧の変化によって、前記浄化槽と前記送風機の異常を検知する汚水浄化装置用の異常検知装置であって、
前記送風機に開口されている吸気口に臨ませて、または、その開口付近に一端側が配される吸気チューブと、
この吸気チューブの他端側に接続されるスイッチ手段と、
このスイッチ手段の通電接点がOFF状態からON状態に切り替わったときに、保守時期を報知する報知手段と、を備え、
前記スイッチ手段は、前記吸気チューブを通して作用する前記送風機の前記吸気圧が、正常基準圧のときには通電接点がOFF状態に維持され、前記吸気圧が前記正常基準圧より下回ったときには前記通電接点がON状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする汚水浄化装置用の異常検知装置。
【請求項4】
前記正常基準圧は、汚水浄化装置が正常に運転しているときの前記吸気圧と大気圧との差圧であることを特徴とする請求項3に記載の汚水浄化装置用の異常検知装置。
【請求項5】
前記報知手段は、前記スイッチ手段の通電接点がOFF状態からON状態に切り替わったときに、点灯または点滅する報知ランプであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の汚水浄化装置用の異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−253380(P2010−253380A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106124(P2009−106124)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【特許番号】特許第4377451号(P4377451)
【特許公報発行日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(503386414)東浜工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】