汚泥の凝集状態の自動制御方法及び汚泥の凝集システム
【課題】 汚泥の凝集状態を簡易な方法で自動的に判別することが可能な、汚泥の凝集状態の自動判別方法と凝集システムを提供する。
【解決手段】この汚泥の凝集状態の自動制御方法は、汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であるとき、凝集剤の注入量を増減させる。
【解決手段】この汚泥の凝集状態の自動制御方法は、汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であるとき、凝集剤の注入量を増減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥の凝集状態の自動制御方法及び汚泥の凝集システムに係り、より詳細には、汚泥の凝集状態を目視によらずに、自動的に判別が可能であり、この自動判別結果に基づいて汚泥の凝集状態を自動的に制御することが可能な汚泥の凝集状態の自動制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場、し尿処理場、あるいは一般の産業排水処理場等から排出される汚泥は、濃縮処理、及び脱水処理を経て、ケーキ化されたうえで、焼却処分、埋立処分等されてきた。このような汚泥の脱水処理を行う汚泥脱水機において、従来は、スクリュープレス、フィルタープレス等が採用され、例えば細孔径1mm程度のフィルタを用いて汚泥と水とを分離していたところ、フィルタによって汚泥を確実にトラップするために、フィルタに通す前に汚泥を凝集させておく必要がある。そのために、汚泥脱水機の上流側において、従来より、汚泥攪拌槽において、汚泥に対して凝集剤を添加して、汚泥を凝集することが行われてきた。汚泥に対して凝集剤を適量添加することにより、良好な汚泥の凝集状態を形成し、それにより下流側の汚泥脱水機において、凝集した汚泥をフィルタにより確実にトラップし、以って汚泥と水とを分離することが可能である。このような凝集剤の薬注量の適正化は、例えば、以下のような従来技術により行われてきた。
【0003】
特許文献1によれば、汚泥に凝集剤を添加したうえで脱水機により固液分離する場合に、凝集剤の薬注量を適正に保つために、汚泥の流量、汚泥のSS濃度、及び汚泥のPH値に基づいて、凝集剤の薬注量を制御する技術が開示されている。特許文献2によれば、被処理水に凝集剤を添加したうえで汚泥脱水機により固液分離する場合に、降雨により水が被処理水に混入する場合でも適切な凝集剤薬注量となるように調整するために、被処理水の流量と被処理水の懸濁物濃度との積に基づいて、凝集剤薬注量を演算し、さらに、降雨量に基づいて演算した凝集剤薬注量を補正する技術が開示されている。特許文献3によれば、汚泥に脱水剤を添加したうえで汚泥脱水機により固液分離する場合に、脱水剤の薬注量が適正量となるように精度よく制御するために、汚泥脱水機から排出される脱水濾液のカルマン渦の発生周波数に基づいて、脱水剤の薬注量を制御する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の汚泥凝集剤の薬注量の適正化技術には、以下のような技術的問題点が存する。特許文献1及び特許文献2に開示されているように、汚泥凝集剤の薬注量を汚泥の流量と汚泥の懸濁物濃度とに基づいて制御する場合、従来、汚泥の懸濁物濃度計自体の計測精度が低く、さらに汚泥の流量と汚泥の懸濁物濃度との積が同じでも、汚泥の性状に応じて、汚泥凝集剤の適正な薬注量は変動する。このため、従来技術においては、実質的に汚泥流量比例制御を行っていたに等しく、汚泥凝集剤の薬注量の適正化を達成していたとはいえない。
【0005】
この点、特許文献3によれば、脱水濾液のカルマン渦の発生周波数の変化を調べることで、汚泥の動粘度の変化を把握することが可能であり、汚泥の動粘度と脱水剤薬注量との間に相関があることを利用して、より精度よく脱水剤の薬注量の適正化を達成することが可能である。しかしながら、このような汚泥の動粘度と脱水剤薬注量との間の相関関係を利用するためには、脱水濾液のレイノルズ数を約1000以下の一定流量に設定する必要があるとともに、カルマン渦の発生を検出するために、別途、渦により振動するように脱水濾液中に設けられた球、この球に接続された圧電素子、及びこの圧電素子に接続された周波数分析器が必要であり、簡易な制御方法とは言い難い。さらに、従来、トルクセンサ、熱線、熱膜センサを用いて、凝集汚泥の性状を直接計測して脱水剤の過不足を判定し、この判定結果に基づいて薬注制御を行う技術も提案されているが、精度面で十分に満足する結果が得られていない。
【0006】
このような事情から、実際は、汚泥の性状、すなわち汚泥の凝集状態は、汚泥攪拌槽内の汚泥を撮影することにより目視により監視し、この監視結果により凝集剤の薬注量の増減を行っていた。すなわち、汚泥の凝集状態を自動判別し、自動判別した結果を利用して、凝集剤の薬注量を自動調整することが行われてこなかった。さらに、汚泥の凝集状態に応じて汚泥に対する凝集剤の薬注量を決定していないため、恒常的には汚泥が適正に脱水化されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−371300号公報
【特許文献2】特開平09−290273号公報
【特許文献3】特開平09−308900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することが可能な、汚泥の凝集状態の自動判別方法を提供することにある。以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、汚泥の凝集状態を簡易な方法で自動的に制御することが可能な、汚泥の凝集状態の自動制御方法を提供することにある。以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、汚泥を常時適正に脱水することが可能な汚泥の脱水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明の汚泥の凝集状態の自動判別方法は、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、該比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定する、構成としている。
【0010】
本発明は、デジタルカメラのBSS(BestShotSelector)機能を汚泥の凝集状態の数値化に応用したものである。すなわち、デジタルカメラにおいて、複数枚撮影した写真から最もうまく撮影できた写真(最も輪郭が明瞭になっている写真)を選定するのに、複雑で輪郭が明確な画像、つまり高周波数成分が多い画像ほど圧縮率が悪くなり、JPEG等の圧縮形式ファイルにおいてサイズが大きくなることを利用している。ここに、JPEG形式とは、一般向けデジタルカメラで最も普及している画像ファイル形式であり、フーリエ変換を利用して撮影された静止デジタル画像データを量子化すると共に、量子化されたデータを更にハフマン符号化により更なる圧縮を行う不可逆的な圧縮保存の形式である。この原理を応用して、汚泥において、凝集状態、すなわち汚泥が粒々のゼリー状になるほど、その輪郭が明瞭になることから、凝集状態の汚泥を撮影して、その圧縮撮影データ量により、凝集状態を数値化し、これを利用して、汚泥の凝集状態の自動判別を行うものである。
【0011】
より詳細には、以上の構成を有する汚泥の凝集状態の自動判別方法によれば、汚泥の凝集状態を画像撮影し、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮したうえで、単に圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較するだけで、汚泥の凝集状態が進行するほど、その輪郭が明瞭となり、圧縮撮影データ量が多くなることを利用することにより、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能であり、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することができる。
【0012】
更に、前記画像撮影段階は、静止状態にある凝集状態の汚泥を汚泥液面を介して、上方から凝集状態の汚泥のみを撮影するのがよい。更にまた、前記所定閾値は、凝集状態の自動判別対象である汚泥の種類及び/又は汚泥に添加する凝集剤の種類に応じて、予め決定されるのがよい。加えて、前記画像撮影段階は、動的状態にある凝集状態の汚泥を汚泥液面を介して、上方から凝集状態の汚泥のみを撮影するのがよい。さらに、前記所定閾値は、凝集状態の自動判別対象である汚泥の種類及び/又は汚泥に添加する凝集剤の種類に応じて、予め決定されるのがよい。
【0013】
上記課題を達成するために、本発明の汚泥の凝集状態の自動制御方法は、汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、該比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値範囲内であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定し、所定閾値範囲外であるとき、凝集剤の注入量を増減する段階とを、有する構成としている。
【0014】
また、前記比較段階における前記凝集剤の注入量の増減量は、汚泥の流量及び/又はSS濃度に応じて定めるのがよい。更にまた、前記比較段階において、所定閾値は、第1閾値、及び該第1閾値より大きい第2閾値を有し、前記圧縮したデジタル画像データ量を該第1閾値と比較し、圧縮したデジタル画像データ量が該第1閾値以下であるとき、凝集剤の注入量を増大し、圧縮したデジタル画像データ量が該第1閾値より大きいとき、前記圧縮したデジタル画像データ量を該第2閾値と比較し、圧縮したデジタル画像データ量が該第2閾値以上であるとき、凝集剤の注入量を減少するのがよい。
【0015】
上記課題を達成するために、本発明の汚泥の脱水機制御システムは、内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する攪拌槽と、該攪拌槽の下流側に設置され、該攪拌槽で凝集された汚泥を脱水処理する汚泥脱水機と、前記攪拌槽内で攪拌される汚泥を撮影する撮影手段と、該攪拌槽内に凝集剤を添加する凝集剤添加手段とを有する、汚泥の脱水機制御システムにおいて、更に、前記撮影手段に接続されると共に、前記凝集剤添加手段に接続される、凝集剤薬注量の制御部を有し、該凝集剤薬注量の制御部は、前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを処理するデジタル画像データ処理部と、前記凝集剤添加手段の制御部とを有し、該デジタル画像データ処理部は、前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを圧縮するデジタル画像データ圧縮手段と、圧縮化された汚泥のデジタル画像データを所定閾値と比較判定する比較判定手段と、を有し、凝集剤薬注量の制御部は、前記比較判定手段による比較判定結果に基づいて、前記凝集剤手段に対して凝集剤の薬注量の増減あるいは停止に関する要求信号を出力する構成としている。
【0016】
更に、該デジタル画像データ処理部は、汚泥の種類及び/又は汚泥の流量及び/又は凝集剤の種類に応じて定まる閾値データベースを有するのがよい。更にまた、前記所定閾値は、凝集状態が目視により正常と判定される汚泥の凝集状態部を予め画像撮影し、画像撮影データを圧縮し、圧縮した画像撮影データのデータ量を得ることにより取得するのがよい。加えて、前記圧縮デジタル画像データ形式は、JPEG形式等であるのがよい。
【0017】
なお、本発明は、更に下記のような構成を採用することによっても、本発明が解決しようとする課題を解決することができる。すなわち、本発明の更に他の例示的側面としての汚泥の凝集状態の自動制御方法は、汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であるとき、凝集剤の注入量を増減させる。
【0018】
ここで、本発明においては、凝集剤の「注入」、「添加」、「薬注」は略同義である。そして、「圧縮したデジタル画像データ量」は「デジタル画像データの圧縮率」に対応しており、原則として両者は反比例の関係にある。したがって、「圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する」ことは、「デジタル画像データの画像圧縮率を所定閾値の圧縮率換算値と比較する」ことと略同義であり、「圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であるとき」は、「デジタル画像データの画像圧縮率が所定閾値の圧縮率換算値より大きいとき」と略同義である。
【0019】
この構成によれば、圧縮したデジタル画像のデータ量と所定閾値とを比較した上で、デジタル画像のデータ量が所定閾値以上の場合は適正な凝集状態であるとの判断の基に凝集剤の注入量の増減を行わない。一方、デジタル画像のデータ量が所定閾値未満の場合は凝集状態が不適正(凝集剤不足による凝集不足状態又は凝集剤の過注入による凝集剤過多状態)との判断の元に、凝集剤の注入量を増減させる。それにより、汚泥の凝集状態が良好でない場合でも、良好な凝集状態へと制御(調整)することができる。その制御を、カメラで撮影するという簡便な方法、及びそのデジタル画像データのデータ量を比較するという簡便な方法によって行うことができる。本構成は、特に凝集状態が良好となるに従いデジタル画像データのデータ量が大きくなり、凝集状態が不適正となるに従いデジタル画像データのデータ量が小さくなる場合、例えば、画像データ量が最適凝集状態で最大ピークとなる場合に好適である。
【0020】
所定閾値は、凝集剤の注入量を変化させることにより複数の異なる凝集状態となった汚泥の複数の異なる凝集状態を撮影し、その撮影された複数のデジタル画像データを各々圧縮した場合におけるデジタル画像データ量に基づいて予め決定されてもよい。
【0021】
予め、複数の凝集状態における汚泥を撮影しておけば、そのデジタル画像の画像データ量に基づいて、所定閾値を決定することができる。例えば、デジタル画像データのデータ量が、最適な凝集状態において最大ピークとなる場合においては、予め撮影した複数のデジタル画像の各画像データのうち画像データ量が最大値となる凝集状態を最適状態と判断することができる。したがって、この最大画像データ量に基づいて、例えばその95%の値を所定閾値と決定することができる。
【0022】
また、例えば、最大画像データ量近傍のデータ量となる複数枚のデジタル画像に対応する凝集状態を適正範囲とし、その複数枚のデジタル画像データに対応する複数の画像データ量を所定閾値範囲として決定してもよい。この場合、その複数の画像データ量のうち最小の画像データ量が所定閾値となる。
【0023】
比較段階において、凝集剤の注入量の増減量は、所定閾値とデジタル画像データ量との差分又は所定閾値とデジタル画像データ量との比率に応じて定められてもよい。
【0024】
凝集剤注入量の増減量を、所定閾値とデジタル画像データ量との差分又は比率に応じて定めるので、凝集状態を適正化する制御を迅速に行うことができる。例えば、撮影画像のデジタル画像データ量が所定閾値から離れるほど、すなわち、汚泥の凝集状態が適正凝集状態から離れるほど、凝集剤の注入量の増量又は減量を大きくなるように設定することができる。
【0025】
凝集剤の注入量を計測する段階を更に有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ注入量が所定注入量未満の場合に、凝集剤の注入量を増大させ、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ注入量が所定注入量以上の場合に、凝集剤の注入量を減少させてもよい。
【0026】
凝集剤の注入量を計測する段階を更に有しているので、凝集剤が不足状態であっても過多状態であってもデジタル画像のデータ量が所定閾値未満となってしまう系において、その所定閾値未満の場合に、凝集剤の注入量を増大させる制御を行うべきか、減少させる制御を行うべきかを適正に判断することができる。
【0027】
凝集剤の注入量を変化させて汚泥の凝集状態を画像撮影する段階を更に有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ凝集剤の注入量を変化させた場合において、注入量が大きいときのデジタル画像データ量の方が注入量が小さいときのデジタル画像データ量よりも大きい場合に、凝集剤の注入量を増大させ、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ凝集剤の注入量を変化させた場合において、注入量が小さいときのデジタル画像データ量の方が注入量が大きいときのデジタル画像データ量よりも大きい場合に、凝集剤の注入量を減少させてもよい。
【0028】
凝集剤の注入量を変化させて汚泥の凝集状態を画像撮影する段階を更に有しているので、凝集剤が不足状態であっても過多状態であってもデジタル画像のデータ量が所定閾値未満となってしまう系において、その所定閾値未満の場合に、凝集剤の注入量を増大させる制御を行うべきか、減少させる制御を行うべきかを適正に判断することができる。
【0029】
例えば、凝集剤の注入量を増大させた場合に、データ量が大きく(凝集状態が適正側に)なる場合には、凝集剤注入量が不足していると判断することができる。その判断に基づき、凝集剤注入量を増大させる制御を行う。逆に、凝集剤の注入量を減少させた場合に、データ量が大きく(凝集状態が適正側に)なる場合には、凝集剤注入量が過多であると判断することができる。その判断に基づき、凝集剤注入量を減少させる制御を行う。
【0030】
本発明の更に他の例示的側面としての汚泥の凝集システムは、内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する攪拌槽と、攪拌槽内で攪拌される汚泥を撮影する撮影手段と、攪拌槽内に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、撮影手段に接続されると共に凝集剤添加手段に接続される凝集剤の注入量制御部と、を有する汚泥の凝集システムであって、注入量制御部は、撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを処理するデジタル画像データ処理部を有し、かつ、デジタル画像データ処理部は、撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを圧縮するデジタル画像データ圧縮手段と、圧縮化された汚泥のデジタル画像データを所定閾値と比較判定する比較判定手段と、を有しており、注入量制御部は、比較判定手段による比較判定結果に基づいて、凝集剤添加手段に対して凝集剤の注入量の増減を指令する要求信号を出力する。
【0031】
その汚泥の凝集システムにおいて、デジタル画像データ処理部は、汚泥の種類、汚泥の流量及び凝集剤の種類のうち少なくともいずれか1つと所定閾値とが関連付けられて構築された閾値データベースを更に有してもよい。
【0032】
注入量制御部は、汚泥の種類、汚泥の流量、汚泥の濃度及び凝集剤の種類のうち少なくともいずれか1つと所定閾値とが関連付けられて構築された閾値データベースを更に有してもよい。ここで言う所定閾値は、特定の条件における所定閾値を基準値として基準化した場合の係数の概念をも含む。例えば、汚泥Aの場合の所定閾値を基準とした場合において、汚泥Bと係数80%(=0.8)とが関連付けられていてもよい。
【0033】
この閾値データベースを参照することにより、特定の条件における所定閾値が設定された場合において、脱水処理における汚泥の種類(場合によっては、汚泥の流量、汚泥の濃度又は凝集剤の種類)が変更となった場合でも、変更後の条件に合った所定閾値を自動的に設定することができる。
【0034】
本発明の更なる課題又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0035】
本発明の汚泥の凝集状態の自動判別方法によれば、汚泥の凝集状態を画像撮影し、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮したうえで、単に圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較するだけで、輪郭が明瞭なほど例えばJPEG形式のサイズが大きくなる原理に基づいて、汚泥の凝集状態が進行するほど、その輪郭が明瞭となり、圧縮撮影データ量が多くなることを利用することにより、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能であり、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することができる。
【0036】
また、本発明の汚泥の凝集状態の自動制御方法及び凝集システムによれば、そのデジタル画像データのデータ量が所定閾値未満である場合に汚泥の凝集状態が不適正であると判断して凝集剤の注入量を増減させることにより、適正凝集状態へのフィードバック制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態1に係る脱水処理システムの概略図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の機能構成図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の演算処理部の機能構成図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置において、演算処理部のデジタル画像データ処置部の機能構成図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る汚泥の凝集状態の自動制御方法のフロー図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る脱水処理システムにおける汚泥の凝集状態と画像データのデータ量との関係の典型例を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態2に係る閾値データベースのデータ構造を示す図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る脱水処理装置の凝集剤添加量の自動制御プロセスを説明するフローチャートである。
【図9】本発明の実施例2における実験結果を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例2における撮影画像の例であって、凝集不足状態を示す撮影画像である。
【図11】本発明の実施例2における撮影画像の例であって、最適凝集状態を示す撮影画像である。
【図12】本発明の実施例2における撮影画像の例であって、凝集剤過多状態を示す撮影画像である。
【図13】本発明の実施例3における実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施の形態1]
本発明に係る実施形態1を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る脱水処理システムの概略図である。図2は、本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の機能構成図である。図3は、本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の演算処理部の機能構成図である。図4は、本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置において、演算処理部のデジタル画像データ処置部の機能構成図である。図5は、本発明の実施形態1に係る汚泥の凝集状態の自動制御方法のフロー図である。図1に示すように、本発明に係る脱水処理システム10は、内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する凝集剤混和槽(攪拌槽)12と、凝集剤混和槽12の下流側に設置され、凝集剤混和槽12で凝集された汚泥を脱水処理する汚泥脱水機14と、凝集剤混和槽12内で攪拌される汚泥を撮影する撮影手段16と、凝集剤混和槽12内に凝集剤を添加する凝集剤添加手段18と、凝集剤添加手段の自動制御装置(注入量制御部)20とを有して概略構成される。対象とする汚泥は、し尿処理場、下水処理場、一般の産業排水処理場等で排出される汚泥でよい。
【0039】
凝集剤混和槽12は、内部に攪拌羽根22を有し、攪拌羽根22を鉛直軸線を中心に回転させることにより、凝集剤混和槽12内の汚泥と凝集剤とを攪拌し、混和することにより、汚泥を凝集状態とするようにしている。凝集剤は、従来用いられているものであり、例えば、高分子凝集剤であり、凝集剤添加手段18は、凝集剤混和槽12の上部開口24に延びる供給管26を有し、供給管26の途中には、ポンプ等の液送手段(図示せず)と、凝集剤混和槽12への凝集剤の薬注量を調整する流量制御バルブ28と、流量制御バルブ28の下流側に設置され、後に説明する凝集剤添加手段18の自動制御装置20に凝集剤の注入量データを送信する凝集剤流量計(注入量計測手段)30とを有し、調整した凝集剤の注入量をフィードバックすることにより、凝集剤添加手段18の自動制御装置20によりバルブの開度を調整するようにしている。汚泥脱水機14は、従来既知のベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス等でよい。従来、汚泥脱水機14は、汚泥が凝集剤混和槽12内で凝集剤により凝集され、凝集状態が形成された凝集汚泥をしてフィルターを通過させることにより、濾過作用により固液に分離し、それにより凝集汚泥を脱水するような構成としていた。それに対して、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレスそれぞれにおいて、ベルトプレスでは濾布間の圧力、遠心脱水機では遠心力による圧力、スクリュープレスではスクリューによる押出圧力により固液分離を行うため、フィルタープレスタイプと同様に、適正な汚泥の凝集状態が、汚泥の適正な脱水に多大な影響を及ぼす。
【0040】
次に、本発明の実施形態1に係る脱水処理システム10の撮影手段16を説明すれば、撮影手段16は、凝集剤混和槽12の上部開口24に設置された撮影手段16であるデジタルカメラである。デジタルカメラは、静画を撮影するいわゆるデジタルスチルカメラで、コンパクトタイプでもよいが、汚泥に対して焦点が合いやすいように、1眼レフタイプが好ましい。デジタルカメラの設置位置について、汚泥以外のものが画面に映らないようにすることと、焦点の合いやすさとの観点から、凝集剤混和槽12の上部開口24に、上方から汚泥液面に向けて設置し、汚泥液面を介して凝集剤混和槽12内の凝集汚泥を直接撮影するようにするのが好ましい。デジタルカメラは、極力ブレを防止するために、強固に固定する必要がある。また、凝集剤混和槽12の大きさに応じて、広角の視野(例えば、左右100〜150度、上下60〜90度)が必要となる場合には、それに対応可能なデジタルカメラを準備する必要がある。変形例として、デジタルカメラの代わりに、MotionJPEG等の動画圧縮技術を取り入れたデジタルビデオカメラを用いてもよい。
【0041】
図1に示すように、汚泥は、凝集剤混和槽12に供給される前に、凝集剤混和槽12の上流側に設置される汚泥流量計32及び汚泥濃度計34により、汚泥の流量及び濃度が測定され、これらのデータが後に説明する凝集剤添加手段18の自動制御装置20に送信されて、凝集剤の設定薬注量を補正するようにしている。
【0042】
図2に示すように、凝集剤の薬注量の自動制御装置20は、パーソナルコンピュータと同等の機能を再現し得るハード構成を備え、システムバスを介して互いに接続された、演算処理部40、表示制御部42、外部インターフェイス44、入力部46、記憶部48、撮像処理部50から概略構成されている。
【0043】
演算処理部40は、自動制御装置全体の制御と凝集剤の薬注量の算出に必要な情報処理を行うCPUであり、各構成部からの信号を受信して、凝集剤の薬注量に応じて開度が決定される流量制御バルブ28に対して制御信号を送信するようにしている。演算処理部40には、記憶部48が接続され、CPUによって実行されるプログラムあるいはデータを格納するROMと、CPUの情報処理にとって必要な情報の記憶部48を構成するRAM等が設けられている。
【0044】
この記憶部48には、汚泥の種類及び/又は汚泥の流量及び/又は凝集剤の種類に応じて定まる閾値データベース(閾値テーブル)45が格納されている。例えば、汚泥の種類と凝集剤の種類とによりマトリックス形式として、ROM等の記憶手段に記憶させておき、実際の汚泥及び凝集剤の種類により、該当する閾値を引用するようにしておけばよい。この閾値データベース45における閾値は、凝集状態が目視により正常と判定される汚泥の凝集状態を予め画像撮影し、この画像撮影データを圧縮し、圧縮した画像撮影データの圧縮データ量を得ることにより取得する。入力部46は、ユーザからの指示を受け付ける操作キー等で構成され、受け付けた指示情報を演算処理部40に転送するようにしている。例えば、閾値データベースを更新するのに、汚泥データ、凝集剤データ等を入力したり、あるいは凝集剤の増減係数を変更したりするのにこの入力部から行う。また、デジタルカメラによる撮影自体の自動化、あるいは撮影間隔を入力部46から設定するようにしてもよい。表示制御部42は、演算処理部40から送られたデータをディスプレイ等上で表示されるデジタル画像データに変換処理する。外部インターフェイス44は、外部システムとのインターフェイスを担い、外部システムとしては、携帯電話、モバイル端末、無線LAN等が接続可能であり、例えば、外部インターフェイス44を通じて、凝集剤の薬注量の自動制御装置の遠隔操作が可能とされている。演算処理部40は、前述のように、凝集剤の薬注量の自動制御装置20の各構成ユニットを統括的に制御するようにしている。より詳細には、演算処理部40は、汚泥の凝集状態の判別処理と、凝集剤の薬注量の演算処理とを行う中心的なユニットである。
【0045】
図3に示すように、演算処理部40の機能構成について、第1比率演算部52と、第2比率演算部54と、凝集剤の薬注量算出部56と、デジタル画像データ処理部58と、凝集剤の薬注量補正部60と、流量制御バルブの開度演算部62とから概略構成されている。第1比率演算部52は、汚泥流量計32からの汚泥流量データに基づいて、初期設定した凝集剤薬注量を比例演算(比率演算)処理する。例えば、第1比率演算部52は、汚泥流量計32によって計測された汚泥流量が初期設定値の半分になると、凝集剤の薬注量を初期設定値に対して半分とするように比例演算(比率演算)処理を行う。
【0046】
第2比率演算部54は、汚泥濃度計34からの汚泥濃度データに基づいて、第1比率演算部52により演算された凝集剤薬注量をさらに比例演算(比率演算)処理し、凝集剤の薬注量算出部56において、凝集剤の薬注量が算出される。例えば、第2比率演算部54は、汚泥濃度計34によって計測された汚泥濃度が初期設定値の半分になると、凝集剤の薬注量を第1比率演算部52によって演算された薬注量に対して更に半分とするように比例演算(比率演算)処理を行う。
【0047】
デジタル画像データ処理部58は、後に説明する汚泥の凝集状態の撮影手段からのデジタル画像データを受信して、汚泥の凝集状態の判別処理を行う。凝集剤の薬注量補正部60は、凝集剤の薬注量算出部56において算出された凝集剤の薬注量に対して、デジタル画像データ処理部58において判別処理された汚泥の凝集状態に基づいて補正処理を行う。流量制御バルブの開度演算部62は、凝集剤の薬注量補正部60において補正処理された凝集剤の薬注量に基づいて、後に説明する流量制御バルブ28の開度を演算し、流量制御バルブ28に制御信号を送信する。
【0048】
図4は、デジタル画像データ処理部58の汚泥の凝集状態の判別処理の実行に係る部分の機能構成図である。図4に示すように、デジタル画像データ処理部58は、デジタル画像データ圧縮部64と、デジタル圧縮画像データ量算出部65と、汚泥凝集状態比較判定部66とを有する。デジタル画像データ圧縮部64は、圧縮専用IC、伝送用インターフェース回路などで構成され、デジタル画像信号を圧縮し、そのデータ量を例えば10分の1以下に低減する。この圧縮手法には、JPEG、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MotionJPEGなどの手法があり、用いる手法や圧縮度合いに応じてデータ圧縮量と画質が異なるが、採用するカメラ撮影画像に適切な手法を用いるのが好ましい。このデジタル画像データ圧縮部64は、デジタルカメラを用いる場合には、カメラに内蔵されているものをそのまま用いればよい。又は圧縮比率を任意に変更する必要がある場合は、デジタルカメラではそのままデータを抽出し、本処理部で任意の圧縮率にて圧縮する方法を用いればよい。デジタル圧縮画像データ量算出部65は、デジタル画像データ圧縮部64によって圧縮されたデジタル画像データの圧縮データ量を算出する。汚泥凝集状態比較判定部66は、閾値データベース45を引用して、例えば現在の汚泥の種類及び凝集剤の種類に応じて閾値(データ量の所定閾値)を決定し、この閾値と、デジタル圧縮画像データ量算出部65によって算出されたデジタル圧縮画像データ量とを比較し、汚泥の凝集状態が正常であるか否かを判定する。
【0049】
以上の構成を有する脱水処理システム10について、図5の制御フロー図を参照しながら、汚泥の凝集状態の自動判別方法、及び汚泥の凝集状態の自動制御方法を含め、以下に詳細に説明する。ステップ1で、制御を開始する。次いで、ステップ2で、汚泥の流量に基づいて、凝集剤の初期注入量を決定する。次いで、ステップ3で、攪拌槽内に投入されている汚泥の凝集状態を撮影する。撮影は、所定の時間間隔(たとえば、1分間隔)で撮影すればよい。次いで、ステップ4で、撮影されたデジタル画像データをJPEG形式で圧縮するとともに、ステップ5で、汚泥性状、汚泥流量及び凝集剤の種類に応じて閾値テーブル(閾値データベース)45を参照し、LOW閾値及びHIGH閾値を引用する。次いで、ステップ6で、圧縮デジタル画像データの容量とLOW閾値とを比較する。
【0050】
次いで、ステップ7で、圧縮デジタル画像データの容量がLOW閾値以下である場合、凝集剤の注入量を増大し、LOW閾値より大きい場合、ステップ8に進む。凝集剤の注入量が増大されることにより、攪拌槽内で汚泥の凝集が促進され、それにより下流側の脱水機14において、固液分離がより有効に行われ適正に汚泥の脱水化が行われる。次いで、ステップ8で、圧縮デジタル画像データの容量とHIGH閾値とを比較し、圧縮デジタル画像データの容量がHIGH閾値以上である場合、凝集剤の注入量を減少し、HIGH閾値より小さい場合、凝集剤の注入量はそのままとする。凝集剤の注入量が減少されることにより、攪拌槽内で汚泥の凝集が抑止され、それにより下流側の脱水機14において、固液分離がより有効に行われ適正に汚泥の脱水化が行われる。
【0051】
以上より、圧縮デジタル画像データの容量がLOW閾値以下である場合、又はHIGH閾値以上である場合、汚泥の凝集状態が異常と判定され、凝集剤の注入量が調整され、圧縮デジタル画像データの容量がLOW閾値より大きくHIGH閾値より小さい場合、汚泥の凝集状態が正常と判定され、凝集剤の注入量はそのままとされる。このように、汚泥の凝集状態が正常となるように、凝集剤の注入量を自動的に制御することにより、脱水機において汚泥を常時適正に脱水し、脱水ケーキとして排出することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態1によれば、汚泥の凝集状態を簡易な方法で数値化するに際し、汚泥の凝集状態を画像撮影し、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮したうえで、単に圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較するだけで、汚泥の凝集状態が進行するほど、その輪郭が明瞭となり、圧縮撮影データ量が多くなることを利用することにより、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能であり、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することができる。
【0053】
[実施例1]
本発明者は、生汚泥の状態と、凝集剤を添加することにより凝集させた凝集汚泥の状態とをそれぞれ撮影し、JPEG容量を比較することにより、本発明の効果を確認した。
(実験条件)
(1)対象:ビーカーに入れた静止状態の汚泥
(2)凝集剤:高分子凝集剤
(3)撮影機材:1眼レフデジタルカメラ
(4)撮影方法:汚泥をビーカーの側壁を介して撮影する場合と、汚泥をビーカーの上方から直接撮影する場合
(実験結果)汚泥をビーカーの上方から直接撮影する場合の実験結果を表1に示す。表1において、No.1ないしNo.10は、同じ汚泥を対象に繰り返し実験を行ったものであり、各回において、生汚泥を撮影する場合と、凝集汚泥を撮影する場合とを行っている。
【0054】
【表1】
以上の実験により、以下の知見を得た。(1)No.1ないしNo.10において、生汚泥撮影によるJPEG容量のばらつきは、最小値(No.1における1461)及び最大値(No.2における1583)であり、平均値1546.7に対して約8パーセントであり、一方、凝集汚泥撮影によるJPEG容量のばらつきは、最小値(No.10における1653)及び最大値(No.4における1691)であり、平均値1673.1に対して約2パーセントであり、凝集汚泥撮影によるJPEG容量のばらつきの方が小さかった。(2)汚泥をビーカーの側壁を介して撮影する場合には、ビーカー越しで汚泥を撮影することから焦点が合いにくいことと、室内の光が映りこむこととに起因して、生汚泥と凝集汚泥それぞれのJPEG容量に有意な差が認められなかった。(3)汚泥をビーカーの上方から直接撮影する場合には、表1に示すように、汚泥と凝集汚泥それぞれのJPEG容量に有意な差が認められ、差は平均で1673.1/1546.7=1.08、すなわち約8%の差であった。この場合には、たとえば、閾値として、1600を設定することにより、この閾値以上のJPEG容量の場合には、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者なら種々の修正あるいは変形が可能である。たとえば、本実施形態によれば、汚泥の凝集状態の自動判別方法を汚泥の凝集状態の自動制御方法に組み合わせて説明したが、それに限定されることなく、たとえば、汚泥の凝集状態の自動判別方法により汚泥の凝集状態が異常と判定されたら警報通知をし、それによりオペレータ自身が凝集剤の増減量を目分量で決定してもよい。また、本実施形態によれば、撮影手段16としてデジタルカメラを採用したが、それに限定されることなく、アナログカメラでもよい。その場合には、カメラの下流側に、アナログの画像信号をデジタル画像信号に変換するA/Dコンバータ、サンプルホールド回路等を設置すればよい。さらに、本実施形態において、凝集剤の注入量を制御するのに、バルブの開度を調整することにより行ったが、それに限定されることなく、たとえばストロークポンプを用い、このストロークポンプによるストローク量を調整してもよい。
【0056】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。この実施の形態2においては、撮影手段16及び画像データ処理部58によって撮影、デジタル化、圧縮されたデジタル画像データのデータ容量が、最適凝集状態においてピーク(最大値)を持つ場合について説明する。なお、この実施の形態2に係る脱水処理システム10の概略構成については、閾値データベース45及び自動制御装置20以外について上記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
<所定閾値の設定>
まずは、この実施の形態2に係る脱水処理システム10における所定閾値の設定プロセスについて説明する。図6は、この実施の形態2における汚泥の凝集状態(横軸)と撮影手段16による画像データのデータ量との関係の典型例を示すグラフである。横軸の汚泥の凝集状態とは、汚泥種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類等の諸条件が一定の場合、凝集剤の薬注量と読み替えることもできる。つまり、凝集剤の薬注量が不足している場合は凝集不足状態となり、画像データ量も小さい。しかし、凝集剤の薬注量が適正な場合には適正凝集状態となり画像データ量が大きくなる。そして、凝集剤の薬注量が過多となった場合は過注入(凝集剤過多状態)となってしまい、再び凝画像データ量が小さくなる。なお、以下の説明において、凝集剤不足状態と凝集剤過多状態とを併せて凝集不適正状態と呼ぶ場合がある。
【0058】
図6に示すように、この脱水処理システム10においては、最適凝集状態Pmにおいて、画像データ量が最大データ量Dmとなる。したがって、例えば、最適凝集状態Pmにおける最大データ量Dmの95%のデータ容量を所定閾値D2(=0.95*Dm)と設定すれば、画像データ量が所定閾値D2以上である場合に対応する凝集状態を適正凝集状態P2、所定閾値D2未満である場合に対応する凝集状態を凝集不適正状態(P1,P3)と判断することができる。この凝集不適正状態(P1,P3)のうち、薬注量不足による凝集不良状態が凝集不足状態P1であり、凝集剤過注入による凝集不適正状態が凝集剤過多状態P3である。
【0059】
なお、初期状態において汚泥種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類等の諸条件を一定条件に設定した上で、予め凝集剤添加手段18による凝集剤添加量(薬注量)を少ない状態から多い状態にまで変化させつつ撮影手段16によって汚泥の凝集状態の撮影を複数回行うことにより、最適凝集状態Pmとなった場合の最大データ量Dmを把握することができる。したがって、この最大データ量Dmに基づき所定閾値D2を算出することができる。
【0060】
また、上記のように最大データ量Dmのみに基づいて所定閾値D2を算出するのでなく、上記方法で撮影した複数枚の画像データに基づいて所定閾値D2を設定してももちろんよい。例えば、最大データ量Dmとなった画像データの前後数枚の画像データに各々対応する凝集状態を適正状態として選択し、その適正状態の場合の画像データ量の最小値を所定閾値D2として設定してもよい。
【0061】
なお、実際の脱水処理開始前に、予め上記の方法で画像データ量と凝集剤の薬注量との関係を明確としていれば、実際の脱水処理において、デジタル画像の画像データ量が所定閾値D2未満となった場合に、凝集剤流量計30による薬注量データに基づき、その状態が凝集不足状態であるのか凝集剤過多状態であるのかを判別することができる。すなわち、予め複数枚の画像を撮影した際に、画像データ量が最大データ量Dmとなったときの薬注量を最適薬注量と設定する。そして、実際の脱水処理において、デジタル画像の画像データ量が所定閾値D2未満となった場合の薬注量を最適薬注量と比較し、その薬注量が最適薬注量よりも少ない場合は凝集不足状態であると判断することができ、最適薬注量よりも多い場合は凝集剤過多状態であると判断することができる。
【0062】
図7は、この実施の形態2における閾値データベース45のデータ構造の例である。この閾値データベース45では、汚泥の種類、汚泥の流量、汚泥の濃度、凝集剤の種類と所定閾とが関連付けられている。例えば、汚泥の種類としては、混合生汚泥、消化汚泥等の他、種々の汚泥(例えば、汚泥種A,汚泥種B等)が処理対象として適用可能である。また、添加する凝集剤の種類としては、カチオン系高分子凝集剤を初めとする種々の凝集剤が適用可能であり、カチオン系の中でも、カチオンA、カチオンB、カチオンC、カチオンD等の種類がある。
【0063】
所定閾値は、例えば、初期条件を基準値とした場合のその係数値として格納されている。例えば、初期条件が、汚泥種類=混合生汚泥、汚泥流量=Q、汚泥濃度=C、凝集剤種類=カチオンAである場合の所定閾値を基準閾値=100%とすると、図7に示すように、汚泥種類が消化汚泥のときの所定閾値は基準閾値に対して90%、汚泥種Aの場合の所定閾値は基準閾値に対して80%となる。また、カチオンBの場合の所定閾値は基準閾値に対して97%、カチオンCの場合の所定閾値は基準閾値に対して90%となる。なお、汚泥の流量と所定閾値との関係、汚泥の濃度と所定閾値との関係は、汚泥種類や凝集剤種類、その他の脱水処理条件によって様々な関係をとりえる。汚泥流量や汚泥濃度が変化しても、所定閾値が一定の場合もあるし、比例関係、反比例関係となる場合も想定されるが、必ずしもそれらの関係になるとは限らず、種々想定される。
【0064】
本実施の形態2においては、自動制御装置20の記憶部48内に閾値データベース45が格納されており、デジタル画像データ処理部58が凝集状態比較判定処理の際に閾値データベース45を参照する。そして、汚泥の種類、流量、濃度及び凝集剤の種類に応じて、係数値が係数された所定閾値を設定するようになっている。
【0065】
<薬注量の決定>
薬注量算出部56における薬注量の算出も、汚泥の種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類に応じて算出される。例えば、記憶部48内に注入量データベース(不図示)が格納されており、その注入量データベースが、汚泥の種類や凝集剤種類と注入量とが関連付けられて構築されていれば、薬注量算出部56がその注入量データベースを参照することにより、処理対象の汚泥種類、使用する凝集剤種類を設定した場合に初期条件としての薬注量(初期薬注量)を決定することができる。汚泥種類や凝集剤種類が変更になった場合でも、変更後の汚泥や凝集剤を用いて薬注量の初期条件をわざわざ実験により求めなくても、汚泥種類と凝集剤種類とを設定変更するだけで、適正な初期薬注量が選択される。初期薬注量データを別途薬注量算出部56に外部から入力する必要もなくなる。
【0066】
また、脱水処理の途中で汚泥の流量や濃度が変化した場合には、第1比率演算部52及び第2比率演算部54による比率演算処理が行われる。例えば、汚泥流量が80%となった場合に薬注量も80%とし、汚泥濃度が60%となった場合に薬注量も60%とする。これにより、脱水処理途中で流量や濃度等の状態が変化した場合でも、変化後の状態に応じた適正な薬注量とすることができる。
【0067】
一方、その薬注量に基づき脱水処理を行っている場合に、画像データ処理部58によって画像データ量が所定閾値D2未満であると判断された場合には、薬注量補正部60による薬注量の補正が行われる。この薬注量の補正とは、すなわち、画像データ量に基づき凝集不足状態と判断した場合に薬注量を所定量増加させ、凝集剤過多状態と判断した場合に薬注量を所定量減少させる処理である。
【0068】
この増加量及び/又は減少量は、一定値であってもよい。すなわち、凝集不足状態が判断された場合に、凝集剤薬注量を一定量増加させ、再び画像撮影し凝集状態の判断を行う。そして、まだ凝集不足状態が判断された場合に、再び凝集剤薬注量を一定量増加させる方法である。この、一定量の薬注量増減処理と凝集状態の判断処理とを繰り返すことにより、凝集状態は徐々に適正状態へと向かっていくこととなる。
【0069】
しかしながら、汚泥凝集状態比較判定部66が、撮影した画像データ量と所定閾値D2との差分(又は比率)を演算し、その差分値(又は比率値)に基づき薬注量補正部60による増減量が算出されてもよい。例えば、撮影した画像データ量と所定閾値D2との差分値に比例するように増減量が設定されるようになっていれば、その差分値が大きい(すなわち、凝集不適正の程度が大きく、適正凝集状態から遠く離れている)場合に、より大きい増減量で薬注量補正を行うことができる。その結果、制御の効率を向上させ、適正凝集状態へと迅速に向かわせることができる。
【0070】
<制御プロセス>
なお、この実施の形態2において、撮影した画像データ量と所定閾値D2とを比較した場合に、画像データ量が所定閾値D2未満と判断した場合には、その凝集不適正状態が凝集不足状態であるのか凝集剤過多状態であるのかを判断する状態判断工程を行う。この状態判断工程は、凝集剤の薬注量を一旦減少(又は増加)させて、そのときの撮影画像の画像データ量が増加する(つまり、適正方向に向かう)のか減少する(つまり不適正方向に向かう)のかを見極める工程である。
【0071】
薬注量を減少させた場合に画像データ量が増加すれば、凝集剤過多状態であると判断することができ、逆に薬注量を減少させた場合に画像データ量が減少すれば、凝集不足状態であると判断することができる。同様に、薬注量を増加させた場合に画像データ量が増加すれば、凝集不足状態であると判断することができ、薬注量を増加させた場合に画像データ量が減少すれば、凝集剤過多状態であると判断することができる。
【0072】
図8は、この実施の形態2に係る脱水処理システム10の凝集剤添加量の自動制御プロセスを説明するフローチャートである。汚泥種類、汚泥流量、予め想定した汚泥濃度、凝集剤種類等の初期条件に基づき、初期注入量を設定する(S21)。汚泥流量計32及び汚泥濃度計34のデータに基づき、汚泥の流入状態に変化があるか否かを監視する(S22)。そして、流入状態に変化がある場合は、第1比率演算部52及び第2比率演算部54による比率演算を行い、変化後の状態に応じた注入量を算出する(S23)。
【0073】
凝集剤混和槽12において汚泥の凝集状態の画像撮影を行う(S24)。そして、その撮影画像データの画像圧縮を行って(S25)、圧縮後の画像データ量と所定閾値D2との容量比較を行う(S26)。なお、この所定閾値D2は閾値データベース45から参照したものであるが(S27)、所定閾値D2は、汚泥種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類等の条件に応じて基準閾値からの係数補正がされたものが用いられる(S28)。基準閾値は、脱水処理開始前に、予め凝集剤注入量を変化させて複数の凝集状態としたものを画像撮影した上で設定しておく。
【0074】
画像データ量が所定閾値D2以上である場合は(S29)、凝集状態が適正状態(S30)であると判断することができる。したがって、この場合は、注入量を増減することなく再び(S22)へとループする。画像データ量が所定閾値D2未満である場合(S29)、凝集剤の注入量を一旦減少させて画像撮影を行う(S31)。その結果、画像データ量が更に減少した場合(S32)は、凝集不足状態であると判断し(S33)、注入量を増大させる(S34)。一方、(S31)による画像撮影により画像データ量が増大した場合(S32)は、凝集剤過多状態であると判断し(S35)、注入量を減少させる(S36)。
【0075】
なお、(S31)の状態判断工程においては、凝集剤の注入量を一旦増加させて画像撮影を行ってもよい。この場合は、画像データ量が更に減少した場合は凝集剤過多状態であると判断し、画像データ量が増大した場合は凝集剤不足状態であると判断する。もちろん、凝集剤の注入量の一旦減少と一旦増加との両方の工程を行ってもよい。
【0076】
また、予め画像データ量と凝集剤注入量との関係が明確になっていれば、凝集不適正状態の場合であっても状態判断工程を必要とすることなく、凝集剤流量計30のデータに基づき凝集不足状態であるか凝集剤過多状態であるかを判断することができる。
【0077】
[実施例2]
所定の脱水処理システムにおいて、以下条件のもとに、凝集不良状態(凝集剤注入量不足)、最適凝集状態、凝集剤過多状態(凝集剤注入量過剰)における撮影画像の圧縮後画像データ量の測定を行った。投光器を用いない場合(照度:30〜50lx)の結果を表2に、投光器を用いた場合(照度:200〜300lx)の結果を表3に示し、図9にそのグラフを示した。なお、各実験において各々10回の撮影を行っている。
【0078】
汚泥種類:下水濃縮汚泥(混合生汚泥、汚泥濃度4%)
撮影手段:デジタルカメラ(圧縮方法:JPEG)
凝集剤:カチオン系高分子凝集剤
凝集剤添加量:凝集不足状態で0.2%、最適凝集状態で0.4%、凝集剤過多状態で0.6%
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
以上の結果より、最適凝集状態において、画像データのデータ量は略ピーク(最大値)を持ち、凝集不足状態であっても凝集剤過多状態であってもデータ量が減少することがわかる。また、撮影照度が200〜300lxの場合よりも30〜50lxの場合の方が、最適凝集状態時の画像データ量が大きく、結果としてピーク形状がより際立って凝集不適正(凝集不足、凝集剤過多)状態との差異が明確となっている。ここで、例えば、図9に示すように、所定閾値D2を設定すれば、適正凝集状態と不適正凝集状態との判別を明確かつ確実に行うことができる。
【0081】
なお、投光器なし/投光器ありの各々について凝集不足状態、最適凝集状態、凝集剤過多状態の場合の撮影画像の例を図10〜図12に示した。
【0082】
[実施例3]
所定の脱水処理システムにおいて、以下条件のもとに、凝集不良状態(凝集剤注入量不足)、最適凝集状態、凝集剤過多状態(凝集剤注入量過剰)における撮影画像の圧縮後画像データ量の測定を行った。実験結果を表4〜表7に示し、図13にそのグラフを示した。なお、データ量の測定は1条件の実験につき各10回行い、その平均値を採用した。
【0083】
汚泥種類:混合生汚泥(汚泥濃度4%)/消化汚泥(汚泥濃度4%)
撮影手段:デジタルカメラ(圧縮方法:JPEG)
凝集剤:カチオンA〜D(いずれもカチオン系高分子凝集剤)
凝集剤添加量:表中に記載
投光器:なし(30〜50lx)
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
以上の結果より、汚泥や凝集剤の種類によって最適凝集状態における画像データのデータ量が異なることがわかる。また、いずれの場合においても、画像データのデータ量は略ピーク(最大値)を持ち、凝集不足状態であっても凝集剤過多状態であってもデータ量が減少することがわかる。ここで、例えば、図13に示すように、各条件時の所定閾値D2を設定すれば、適正凝集状態と不適正凝集状態との判別を明確かつ確実に行うことができる。
【0088】
[実施例3]
上記実施例2における表2の撮影回数1回目の撮影画像の画像データに対して2階調化の画像処理を行ったときの画像データ量を比較した。表8に撮影画像の画像データに対して256階調の2階調化を行い、各々白黒の閾値を80,110,128,200にとったときの画像データ量を示した。
【0089】
【表8】
以上の結果より、2階調化を行うことにより、一層ピークが際立ち、最適凝集状態と凝集不足状態や凝集剤過多状態との差異が明確となる。特に、閾値110の場合は、最適凝集状態の場合のデータ量100%に対して、凝集不足状態:32.7%、凝集剤過多状態:45.4%となり、表2の場合よりもピークの先鋭化が著しい。したがって、画像データの画像データ処理部58が画像データの2階調化処理部を有するように構成すれば、適正凝集状態と不適正凝集状態の切り分けがより明確となり、一層の自動制御の効率化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の汚泥の凝集状態の自動判別方法によれば、汚泥の凝集状態を簡易な方法で数値化することにより、自動判別することが可能であり、この自動判別方法を用いて、汚泥の凝集剤の自動制御方法を実現することにより、適正に凝集された汚泥を脱水することが可能となる点において、汚泥処理技術に有用である。
【符号の説明】
【0091】
D2:所定閾値
Dm:最大データ量
P1:凝集不足状態(凝集不適正状態)
P2:適正凝集状態
P3:凝集剤過多状態(凝集不適正状態)
Pm:最適凝集状態
10:脱水処理システム
12:凝集剤混和槽(攪拌槽)
14:脱水機
16:撮影手段
18:凝集剤添加手段
20:凝集剤の薬注量の自動制御装置(注入量制御部)
22:攪拌羽根
24:上部開口
26:供給管
28:流量制御バルブ
30:凝集剤流量計(注入量計測手段)
32:汚泥流量計
34:汚泥濃度計
40:演算処理部
42:表示制御部
44:外部インターフェイス
45:閾値データベース(閾値テーブル)
46:入力部
48:記憶部
50:撮像処理部
52:第1比率演算部
54:第2比率演算部
56:薬注量算出部
58:画像データ処理部
60:薬注量補正部
62:流量制御バルブの開度演算部
64:デジタル画像データ圧縮部
65:デジタル圧縮画像データ量算出部
66:汚泥凝集状態比較判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥の凝集状態の自動制御方法及び汚泥の凝集システムに係り、より詳細には、汚泥の凝集状態を目視によらずに、自動的に判別が可能であり、この自動判別結果に基づいて汚泥の凝集状態を自動的に制御することが可能な汚泥の凝集状態の自動制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場、し尿処理場、あるいは一般の産業排水処理場等から排出される汚泥は、濃縮処理、及び脱水処理を経て、ケーキ化されたうえで、焼却処分、埋立処分等されてきた。このような汚泥の脱水処理を行う汚泥脱水機において、従来は、スクリュープレス、フィルタープレス等が採用され、例えば細孔径1mm程度のフィルタを用いて汚泥と水とを分離していたところ、フィルタによって汚泥を確実にトラップするために、フィルタに通す前に汚泥を凝集させておく必要がある。そのために、汚泥脱水機の上流側において、従来より、汚泥攪拌槽において、汚泥に対して凝集剤を添加して、汚泥を凝集することが行われてきた。汚泥に対して凝集剤を適量添加することにより、良好な汚泥の凝集状態を形成し、それにより下流側の汚泥脱水機において、凝集した汚泥をフィルタにより確実にトラップし、以って汚泥と水とを分離することが可能である。このような凝集剤の薬注量の適正化は、例えば、以下のような従来技術により行われてきた。
【0003】
特許文献1によれば、汚泥に凝集剤を添加したうえで脱水機により固液分離する場合に、凝集剤の薬注量を適正に保つために、汚泥の流量、汚泥のSS濃度、及び汚泥のPH値に基づいて、凝集剤の薬注量を制御する技術が開示されている。特許文献2によれば、被処理水に凝集剤を添加したうえで汚泥脱水機により固液分離する場合に、降雨により水が被処理水に混入する場合でも適切な凝集剤薬注量となるように調整するために、被処理水の流量と被処理水の懸濁物濃度との積に基づいて、凝集剤薬注量を演算し、さらに、降雨量に基づいて演算した凝集剤薬注量を補正する技術が開示されている。特許文献3によれば、汚泥に脱水剤を添加したうえで汚泥脱水機により固液分離する場合に、脱水剤の薬注量が適正量となるように精度よく制御するために、汚泥脱水機から排出される脱水濾液のカルマン渦の発生周波数に基づいて、脱水剤の薬注量を制御する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の汚泥凝集剤の薬注量の適正化技術には、以下のような技術的問題点が存する。特許文献1及び特許文献2に開示されているように、汚泥凝集剤の薬注量を汚泥の流量と汚泥の懸濁物濃度とに基づいて制御する場合、従来、汚泥の懸濁物濃度計自体の計測精度が低く、さらに汚泥の流量と汚泥の懸濁物濃度との積が同じでも、汚泥の性状に応じて、汚泥凝集剤の適正な薬注量は変動する。このため、従来技術においては、実質的に汚泥流量比例制御を行っていたに等しく、汚泥凝集剤の薬注量の適正化を達成していたとはいえない。
【0005】
この点、特許文献3によれば、脱水濾液のカルマン渦の発生周波数の変化を調べることで、汚泥の動粘度の変化を把握することが可能であり、汚泥の動粘度と脱水剤薬注量との間に相関があることを利用して、より精度よく脱水剤の薬注量の適正化を達成することが可能である。しかしながら、このような汚泥の動粘度と脱水剤薬注量との間の相関関係を利用するためには、脱水濾液のレイノルズ数を約1000以下の一定流量に設定する必要があるとともに、カルマン渦の発生を検出するために、別途、渦により振動するように脱水濾液中に設けられた球、この球に接続された圧電素子、及びこの圧電素子に接続された周波数分析器が必要であり、簡易な制御方法とは言い難い。さらに、従来、トルクセンサ、熱線、熱膜センサを用いて、凝集汚泥の性状を直接計測して脱水剤の過不足を判定し、この判定結果に基づいて薬注制御を行う技術も提案されているが、精度面で十分に満足する結果が得られていない。
【0006】
このような事情から、実際は、汚泥の性状、すなわち汚泥の凝集状態は、汚泥攪拌槽内の汚泥を撮影することにより目視により監視し、この監視結果により凝集剤の薬注量の増減を行っていた。すなわち、汚泥の凝集状態を自動判別し、自動判別した結果を利用して、凝集剤の薬注量を自動調整することが行われてこなかった。さらに、汚泥の凝集状態に応じて汚泥に対する凝集剤の薬注量を決定していないため、恒常的には汚泥が適正に脱水化されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−371300号公報
【特許文献2】特開平09−290273号公報
【特許文献3】特開平09−308900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することが可能な、汚泥の凝集状態の自動判別方法を提供することにある。以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、汚泥の凝集状態を簡易な方法で自動的に制御することが可能な、汚泥の凝集状態の自動制御方法を提供することにある。以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、汚泥を常時適正に脱水することが可能な汚泥の脱水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明の汚泥の凝集状態の自動判別方法は、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、該比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定する、構成としている。
【0010】
本発明は、デジタルカメラのBSS(BestShotSelector)機能を汚泥の凝集状態の数値化に応用したものである。すなわち、デジタルカメラにおいて、複数枚撮影した写真から最もうまく撮影できた写真(最も輪郭が明瞭になっている写真)を選定するのに、複雑で輪郭が明確な画像、つまり高周波数成分が多い画像ほど圧縮率が悪くなり、JPEG等の圧縮形式ファイルにおいてサイズが大きくなることを利用している。ここに、JPEG形式とは、一般向けデジタルカメラで最も普及している画像ファイル形式であり、フーリエ変換を利用して撮影された静止デジタル画像データを量子化すると共に、量子化されたデータを更にハフマン符号化により更なる圧縮を行う不可逆的な圧縮保存の形式である。この原理を応用して、汚泥において、凝集状態、すなわち汚泥が粒々のゼリー状になるほど、その輪郭が明瞭になることから、凝集状態の汚泥を撮影して、その圧縮撮影データ量により、凝集状態を数値化し、これを利用して、汚泥の凝集状態の自動判別を行うものである。
【0011】
より詳細には、以上の構成を有する汚泥の凝集状態の自動判別方法によれば、汚泥の凝集状態を画像撮影し、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮したうえで、単に圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較するだけで、汚泥の凝集状態が進行するほど、その輪郭が明瞭となり、圧縮撮影データ量が多くなることを利用することにより、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能であり、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することができる。
【0012】
更に、前記画像撮影段階は、静止状態にある凝集状態の汚泥を汚泥液面を介して、上方から凝集状態の汚泥のみを撮影するのがよい。更にまた、前記所定閾値は、凝集状態の自動判別対象である汚泥の種類及び/又は汚泥に添加する凝集剤の種類に応じて、予め決定されるのがよい。加えて、前記画像撮影段階は、動的状態にある凝集状態の汚泥を汚泥液面を介して、上方から凝集状態の汚泥のみを撮影するのがよい。さらに、前記所定閾値は、凝集状態の自動判別対象である汚泥の種類及び/又は汚泥に添加する凝集剤の種類に応じて、予め決定されるのがよい。
【0013】
上記課題を達成するために、本発明の汚泥の凝集状態の自動制御方法は、汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、該比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値範囲内であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定し、所定閾値範囲外であるとき、凝集剤の注入量を増減する段階とを、有する構成としている。
【0014】
また、前記比較段階における前記凝集剤の注入量の増減量は、汚泥の流量及び/又はSS濃度に応じて定めるのがよい。更にまた、前記比較段階において、所定閾値は、第1閾値、及び該第1閾値より大きい第2閾値を有し、前記圧縮したデジタル画像データ量を該第1閾値と比較し、圧縮したデジタル画像データ量が該第1閾値以下であるとき、凝集剤の注入量を増大し、圧縮したデジタル画像データ量が該第1閾値より大きいとき、前記圧縮したデジタル画像データ量を該第2閾値と比較し、圧縮したデジタル画像データ量が該第2閾値以上であるとき、凝集剤の注入量を減少するのがよい。
【0015】
上記課題を達成するために、本発明の汚泥の脱水機制御システムは、内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する攪拌槽と、該攪拌槽の下流側に設置され、該攪拌槽で凝集された汚泥を脱水処理する汚泥脱水機と、前記攪拌槽内で攪拌される汚泥を撮影する撮影手段と、該攪拌槽内に凝集剤を添加する凝集剤添加手段とを有する、汚泥の脱水機制御システムにおいて、更に、前記撮影手段に接続されると共に、前記凝集剤添加手段に接続される、凝集剤薬注量の制御部を有し、該凝集剤薬注量の制御部は、前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを処理するデジタル画像データ処理部と、前記凝集剤添加手段の制御部とを有し、該デジタル画像データ処理部は、前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを圧縮するデジタル画像データ圧縮手段と、圧縮化された汚泥のデジタル画像データを所定閾値と比較判定する比較判定手段と、を有し、凝集剤薬注量の制御部は、前記比較判定手段による比較判定結果に基づいて、前記凝集剤手段に対して凝集剤の薬注量の増減あるいは停止に関する要求信号を出力する構成としている。
【0016】
更に、該デジタル画像データ処理部は、汚泥の種類及び/又は汚泥の流量及び/又は凝集剤の種類に応じて定まる閾値データベースを有するのがよい。更にまた、前記所定閾値は、凝集状態が目視により正常と判定される汚泥の凝集状態部を予め画像撮影し、画像撮影データを圧縮し、圧縮した画像撮影データのデータ量を得ることにより取得するのがよい。加えて、前記圧縮デジタル画像データ形式は、JPEG形式等であるのがよい。
【0017】
なお、本発明は、更に下記のような構成を採用することによっても、本発明が解決しようとする課題を解決することができる。すなわち、本発明の更に他の例示的側面としての汚泥の凝集状態の自動制御方法は、汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であるとき、凝集剤の注入量を増減させる。
【0018】
ここで、本発明においては、凝集剤の「注入」、「添加」、「薬注」は略同義である。そして、「圧縮したデジタル画像データ量」は「デジタル画像データの圧縮率」に対応しており、原則として両者は反比例の関係にある。したがって、「圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する」ことは、「デジタル画像データの画像圧縮率を所定閾値の圧縮率換算値と比較する」ことと略同義であり、「圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であるとき」は、「デジタル画像データの画像圧縮率が所定閾値の圧縮率換算値より大きいとき」と略同義である。
【0019】
この構成によれば、圧縮したデジタル画像のデータ量と所定閾値とを比較した上で、デジタル画像のデータ量が所定閾値以上の場合は適正な凝集状態であるとの判断の基に凝集剤の注入量の増減を行わない。一方、デジタル画像のデータ量が所定閾値未満の場合は凝集状態が不適正(凝集剤不足による凝集不足状態又は凝集剤の過注入による凝集剤過多状態)との判断の元に、凝集剤の注入量を増減させる。それにより、汚泥の凝集状態が良好でない場合でも、良好な凝集状態へと制御(調整)することができる。その制御を、カメラで撮影するという簡便な方法、及びそのデジタル画像データのデータ量を比較するという簡便な方法によって行うことができる。本構成は、特に凝集状態が良好となるに従いデジタル画像データのデータ量が大きくなり、凝集状態が不適正となるに従いデジタル画像データのデータ量が小さくなる場合、例えば、画像データ量が最適凝集状態で最大ピークとなる場合に好適である。
【0020】
所定閾値は、凝集剤の注入量を変化させることにより複数の異なる凝集状態となった汚泥の複数の異なる凝集状態を撮影し、その撮影された複数のデジタル画像データを各々圧縮した場合におけるデジタル画像データ量に基づいて予め決定されてもよい。
【0021】
予め、複数の凝集状態における汚泥を撮影しておけば、そのデジタル画像の画像データ量に基づいて、所定閾値を決定することができる。例えば、デジタル画像データのデータ量が、最適な凝集状態において最大ピークとなる場合においては、予め撮影した複数のデジタル画像の各画像データのうち画像データ量が最大値となる凝集状態を最適状態と判断することができる。したがって、この最大画像データ量に基づいて、例えばその95%の値を所定閾値と決定することができる。
【0022】
また、例えば、最大画像データ量近傍のデータ量となる複数枚のデジタル画像に対応する凝集状態を適正範囲とし、その複数枚のデジタル画像データに対応する複数の画像データ量を所定閾値範囲として決定してもよい。この場合、その複数の画像データ量のうち最小の画像データ量が所定閾値となる。
【0023】
比較段階において、凝集剤の注入量の増減量は、所定閾値とデジタル画像データ量との差分又は所定閾値とデジタル画像データ量との比率に応じて定められてもよい。
【0024】
凝集剤注入量の増減量を、所定閾値とデジタル画像データ量との差分又は比率に応じて定めるので、凝集状態を適正化する制御を迅速に行うことができる。例えば、撮影画像のデジタル画像データ量が所定閾値から離れるほど、すなわち、汚泥の凝集状態が適正凝集状態から離れるほど、凝集剤の注入量の増量又は減量を大きくなるように設定することができる。
【0025】
凝集剤の注入量を計測する段階を更に有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ注入量が所定注入量未満の場合に、凝集剤の注入量を増大させ、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ注入量が所定注入量以上の場合に、凝集剤の注入量を減少させてもよい。
【0026】
凝集剤の注入量を計測する段階を更に有しているので、凝集剤が不足状態であっても過多状態であってもデジタル画像のデータ量が所定閾値未満となってしまう系において、その所定閾値未満の場合に、凝集剤の注入量を増大させる制御を行うべきか、減少させる制御を行うべきかを適正に判断することができる。
【0027】
凝集剤の注入量を変化させて汚泥の凝集状態を画像撮影する段階を更に有し、比較段階において、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ凝集剤の注入量を変化させた場合において、注入量が大きいときのデジタル画像データ量の方が注入量が小さいときのデジタル画像データ量よりも大きい場合に、凝集剤の注入量を増大させ、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値未満であって、かつ凝集剤の注入量を変化させた場合において、注入量が小さいときのデジタル画像データ量の方が注入量が大きいときのデジタル画像データ量よりも大きい場合に、凝集剤の注入量を減少させてもよい。
【0028】
凝集剤の注入量を変化させて汚泥の凝集状態を画像撮影する段階を更に有しているので、凝集剤が不足状態であっても過多状態であってもデジタル画像のデータ量が所定閾値未満となってしまう系において、その所定閾値未満の場合に、凝集剤の注入量を増大させる制御を行うべきか、減少させる制御を行うべきかを適正に判断することができる。
【0029】
例えば、凝集剤の注入量を増大させた場合に、データ量が大きく(凝集状態が適正側に)なる場合には、凝集剤注入量が不足していると判断することができる。その判断に基づき、凝集剤注入量を増大させる制御を行う。逆に、凝集剤の注入量を減少させた場合に、データ量が大きく(凝集状態が適正側に)なる場合には、凝集剤注入量が過多であると判断することができる。その判断に基づき、凝集剤注入量を減少させる制御を行う。
【0030】
本発明の更に他の例示的側面としての汚泥の凝集システムは、内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する攪拌槽と、攪拌槽内で攪拌される汚泥を撮影する撮影手段と、攪拌槽内に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、撮影手段に接続されると共に凝集剤添加手段に接続される凝集剤の注入量制御部と、を有する汚泥の凝集システムであって、注入量制御部は、撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを処理するデジタル画像データ処理部を有し、かつ、デジタル画像データ処理部は、撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを圧縮するデジタル画像データ圧縮手段と、圧縮化された汚泥のデジタル画像データを所定閾値と比較判定する比較判定手段と、を有しており、注入量制御部は、比較判定手段による比較判定結果に基づいて、凝集剤添加手段に対して凝集剤の注入量の増減を指令する要求信号を出力する。
【0031】
その汚泥の凝集システムにおいて、デジタル画像データ処理部は、汚泥の種類、汚泥の流量及び凝集剤の種類のうち少なくともいずれか1つと所定閾値とが関連付けられて構築された閾値データベースを更に有してもよい。
【0032】
注入量制御部は、汚泥の種類、汚泥の流量、汚泥の濃度及び凝集剤の種類のうち少なくともいずれか1つと所定閾値とが関連付けられて構築された閾値データベースを更に有してもよい。ここで言う所定閾値は、特定の条件における所定閾値を基準値として基準化した場合の係数の概念をも含む。例えば、汚泥Aの場合の所定閾値を基準とした場合において、汚泥Bと係数80%(=0.8)とが関連付けられていてもよい。
【0033】
この閾値データベースを参照することにより、特定の条件における所定閾値が設定された場合において、脱水処理における汚泥の種類(場合によっては、汚泥の流量、汚泥の濃度又は凝集剤の種類)が変更となった場合でも、変更後の条件に合った所定閾値を自動的に設定することができる。
【0034】
本発明の更なる課題又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0035】
本発明の汚泥の凝集状態の自動判別方法によれば、汚泥の凝集状態を画像撮影し、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮したうえで、単に圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較するだけで、輪郭が明瞭なほど例えばJPEG形式のサイズが大きくなる原理に基づいて、汚泥の凝集状態が進行するほど、その輪郭が明瞭となり、圧縮撮影データ量が多くなることを利用することにより、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能であり、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することができる。
【0036】
また、本発明の汚泥の凝集状態の自動制御方法及び凝集システムによれば、そのデジタル画像データのデータ量が所定閾値未満である場合に汚泥の凝集状態が不適正であると判断して凝集剤の注入量を増減させることにより、適正凝集状態へのフィードバック制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態1に係る脱水処理システムの概略図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の機能構成図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の演算処理部の機能構成図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置において、演算処理部のデジタル画像データ処置部の機能構成図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る汚泥の凝集状態の自動制御方法のフロー図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る脱水処理システムにおける汚泥の凝集状態と画像データのデータ量との関係の典型例を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態2に係る閾値データベースのデータ構造を示す図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る脱水処理装置の凝集剤添加量の自動制御プロセスを説明するフローチャートである。
【図9】本発明の実施例2における実験結果を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例2における撮影画像の例であって、凝集不足状態を示す撮影画像である。
【図11】本発明の実施例2における撮影画像の例であって、最適凝集状態を示す撮影画像である。
【図12】本発明の実施例2における撮影画像の例であって、凝集剤過多状態を示す撮影画像である。
【図13】本発明の実施例3における実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施の形態1]
本発明に係る実施形態1を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る脱水処理システムの概略図である。図2は、本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の機能構成図である。図3は、本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置の演算処理部の機能構成図である。図4は、本発明の実施形態1に係る凝集剤の薬注量の自動制御装置において、演算処理部のデジタル画像データ処置部の機能構成図である。図5は、本発明の実施形態1に係る汚泥の凝集状態の自動制御方法のフロー図である。図1に示すように、本発明に係る脱水処理システム10は、内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する凝集剤混和槽(攪拌槽)12と、凝集剤混和槽12の下流側に設置され、凝集剤混和槽12で凝集された汚泥を脱水処理する汚泥脱水機14と、凝集剤混和槽12内で攪拌される汚泥を撮影する撮影手段16と、凝集剤混和槽12内に凝集剤を添加する凝集剤添加手段18と、凝集剤添加手段の自動制御装置(注入量制御部)20とを有して概略構成される。対象とする汚泥は、し尿処理場、下水処理場、一般の産業排水処理場等で排出される汚泥でよい。
【0039】
凝集剤混和槽12は、内部に攪拌羽根22を有し、攪拌羽根22を鉛直軸線を中心に回転させることにより、凝集剤混和槽12内の汚泥と凝集剤とを攪拌し、混和することにより、汚泥を凝集状態とするようにしている。凝集剤は、従来用いられているものであり、例えば、高分子凝集剤であり、凝集剤添加手段18は、凝集剤混和槽12の上部開口24に延びる供給管26を有し、供給管26の途中には、ポンプ等の液送手段(図示せず)と、凝集剤混和槽12への凝集剤の薬注量を調整する流量制御バルブ28と、流量制御バルブ28の下流側に設置され、後に説明する凝集剤添加手段18の自動制御装置20に凝集剤の注入量データを送信する凝集剤流量計(注入量計測手段)30とを有し、調整した凝集剤の注入量をフィードバックすることにより、凝集剤添加手段18の自動制御装置20によりバルブの開度を調整するようにしている。汚泥脱水機14は、従来既知のベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス等でよい。従来、汚泥脱水機14は、汚泥が凝集剤混和槽12内で凝集剤により凝集され、凝集状態が形成された凝集汚泥をしてフィルターを通過させることにより、濾過作用により固液に分離し、それにより凝集汚泥を脱水するような構成としていた。それに対して、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレスそれぞれにおいて、ベルトプレスでは濾布間の圧力、遠心脱水機では遠心力による圧力、スクリュープレスではスクリューによる押出圧力により固液分離を行うため、フィルタープレスタイプと同様に、適正な汚泥の凝集状態が、汚泥の適正な脱水に多大な影響を及ぼす。
【0040】
次に、本発明の実施形態1に係る脱水処理システム10の撮影手段16を説明すれば、撮影手段16は、凝集剤混和槽12の上部開口24に設置された撮影手段16であるデジタルカメラである。デジタルカメラは、静画を撮影するいわゆるデジタルスチルカメラで、コンパクトタイプでもよいが、汚泥に対して焦点が合いやすいように、1眼レフタイプが好ましい。デジタルカメラの設置位置について、汚泥以外のものが画面に映らないようにすることと、焦点の合いやすさとの観点から、凝集剤混和槽12の上部開口24に、上方から汚泥液面に向けて設置し、汚泥液面を介して凝集剤混和槽12内の凝集汚泥を直接撮影するようにするのが好ましい。デジタルカメラは、極力ブレを防止するために、強固に固定する必要がある。また、凝集剤混和槽12の大きさに応じて、広角の視野(例えば、左右100〜150度、上下60〜90度)が必要となる場合には、それに対応可能なデジタルカメラを準備する必要がある。変形例として、デジタルカメラの代わりに、MotionJPEG等の動画圧縮技術を取り入れたデジタルビデオカメラを用いてもよい。
【0041】
図1に示すように、汚泥は、凝集剤混和槽12に供給される前に、凝集剤混和槽12の上流側に設置される汚泥流量計32及び汚泥濃度計34により、汚泥の流量及び濃度が測定され、これらのデータが後に説明する凝集剤添加手段18の自動制御装置20に送信されて、凝集剤の設定薬注量を補正するようにしている。
【0042】
図2に示すように、凝集剤の薬注量の自動制御装置20は、パーソナルコンピュータと同等の機能を再現し得るハード構成を備え、システムバスを介して互いに接続された、演算処理部40、表示制御部42、外部インターフェイス44、入力部46、記憶部48、撮像処理部50から概略構成されている。
【0043】
演算処理部40は、自動制御装置全体の制御と凝集剤の薬注量の算出に必要な情報処理を行うCPUであり、各構成部からの信号を受信して、凝集剤の薬注量に応じて開度が決定される流量制御バルブ28に対して制御信号を送信するようにしている。演算処理部40には、記憶部48が接続され、CPUによって実行されるプログラムあるいはデータを格納するROMと、CPUの情報処理にとって必要な情報の記憶部48を構成するRAM等が設けられている。
【0044】
この記憶部48には、汚泥の種類及び/又は汚泥の流量及び/又は凝集剤の種類に応じて定まる閾値データベース(閾値テーブル)45が格納されている。例えば、汚泥の種類と凝集剤の種類とによりマトリックス形式として、ROM等の記憶手段に記憶させておき、実際の汚泥及び凝集剤の種類により、該当する閾値を引用するようにしておけばよい。この閾値データベース45における閾値は、凝集状態が目視により正常と判定される汚泥の凝集状態を予め画像撮影し、この画像撮影データを圧縮し、圧縮した画像撮影データの圧縮データ量を得ることにより取得する。入力部46は、ユーザからの指示を受け付ける操作キー等で構成され、受け付けた指示情報を演算処理部40に転送するようにしている。例えば、閾値データベースを更新するのに、汚泥データ、凝集剤データ等を入力したり、あるいは凝集剤の増減係数を変更したりするのにこの入力部から行う。また、デジタルカメラによる撮影自体の自動化、あるいは撮影間隔を入力部46から設定するようにしてもよい。表示制御部42は、演算処理部40から送られたデータをディスプレイ等上で表示されるデジタル画像データに変換処理する。外部インターフェイス44は、外部システムとのインターフェイスを担い、外部システムとしては、携帯電話、モバイル端末、無線LAN等が接続可能であり、例えば、外部インターフェイス44を通じて、凝集剤の薬注量の自動制御装置の遠隔操作が可能とされている。演算処理部40は、前述のように、凝集剤の薬注量の自動制御装置20の各構成ユニットを統括的に制御するようにしている。より詳細には、演算処理部40は、汚泥の凝集状態の判別処理と、凝集剤の薬注量の演算処理とを行う中心的なユニットである。
【0045】
図3に示すように、演算処理部40の機能構成について、第1比率演算部52と、第2比率演算部54と、凝集剤の薬注量算出部56と、デジタル画像データ処理部58と、凝集剤の薬注量補正部60と、流量制御バルブの開度演算部62とから概略構成されている。第1比率演算部52は、汚泥流量計32からの汚泥流量データに基づいて、初期設定した凝集剤薬注量を比例演算(比率演算)処理する。例えば、第1比率演算部52は、汚泥流量計32によって計測された汚泥流量が初期設定値の半分になると、凝集剤の薬注量を初期設定値に対して半分とするように比例演算(比率演算)処理を行う。
【0046】
第2比率演算部54は、汚泥濃度計34からの汚泥濃度データに基づいて、第1比率演算部52により演算された凝集剤薬注量をさらに比例演算(比率演算)処理し、凝集剤の薬注量算出部56において、凝集剤の薬注量が算出される。例えば、第2比率演算部54は、汚泥濃度計34によって計測された汚泥濃度が初期設定値の半分になると、凝集剤の薬注量を第1比率演算部52によって演算された薬注量に対して更に半分とするように比例演算(比率演算)処理を行う。
【0047】
デジタル画像データ処理部58は、後に説明する汚泥の凝集状態の撮影手段からのデジタル画像データを受信して、汚泥の凝集状態の判別処理を行う。凝集剤の薬注量補正部60は、凝集剤の薬注量算出部56において算出された凝集剤の薬注量に対して、デジタル画像データ処理部58において判別処理された汚泥の凝集状態に基づいて補正処理を行う。流量制御バルブの開度演算部62は、凝集剤の薬注量補正部60において補正処理された凝集剤の薬注量に基づいて、後に説明する流量制御バルブ28の開度を演算し、流量制御バルブ28に制御信号を送信する。
【0048】
図4は、デジタル画像データ処理部58の汚泥の凝集状態の判別処理の実行に係る部分の機能構成図である。図4に示すように、デジタル画像データ処理部58は、デジタル画像データ圧縮部64と、デジタル圧縮画像データ量算出部65と、汚泥凝集状態比較判定部66とを有する。デジタル画像データ圧縮部64は、圧縮専用IC、伝送用インターフェース回路などで構成され、デジタル画像信号を圧縮し、そのデータ量を例えば10分の1以下に低減する。この圧縮手法には、JPEG、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MotionJPEGなどの手法があり、用いる手法や圧縮度合いに応じてデータ圧縮量と画質が異なるが、採用するカメラ撮影画像に適切な手法を用いるのが好ましい。このデジタル画像データ圧縮部64は、デジタルカメラを用いる場合には、カメラに内蔵されているものをそのまま用いればよい。又は圧縮比率を任意に変更する必要がある場合は、デジタルカメラではそのままデータを抽出し、本処理部で任意の圧縮率にて圧縮する方法を用いればよい。デジタル圧縮画像データ量算出部65は、デジタル画像データ圧縮部64によって圧縮されたデジタル画像データの圧縮データ量を算出する。汚泥凝集状態比較判定部66は、閾値データベース45を引用して、例えば現在の汚泥の種類及び凝集剤の種類に応じて閾値(データ量の所定閾値)を決定し、この閾値と、デジタル圧縮画像データ量算出部65によって算出されたデジタル圧縮画像データ量とを比較し、汚泥の凝集状態が正常であるか否かを判定する。
【0049】
以上の構成を有する脱水処理システム10について、図5の制御フロー図を参照しながら、汚泥の凝集状態の自動判別方法、及び汚泥の凝集状態の自動制御方法を含め、以下に詳細に説明する。ステップ1で、制御を開始する。次いで、ステップ2で、汚泥の流量に基づいて、凝集剤の初期注入量を決定する。次いで、ステップ3で、攪拌槽内に投入されている汚泥の凝集状態を撮影する。撮影は、所定の時間間隔(たとえば、1分間隔)で撮影すればよい。次いで、ステップ4で、撮影されたデジタル画像データをJPEG形式で圧縮するとともに、ステップ5で、汚泥性状、汚泥流量及び凝集剤の種類に応じて閾値テーブル(閾値データベース)45を参照し、LOW閾値及びHIGH閾値を引用する。次いで、ステップ6で、圧縮デジタル画像データの容量とLOW閾値とを比較する。
【0050】
次いで、ステップ7で、圧縮デジタル画像データの容量がLOW閾値以下である場合、凝集剤の注入量を増大し、LOW閾値より大きい場合、ステップ8に進む。凝集剤の注入量が増大されることにより、攪拌槽内で汚泥の凝集が促進され、それにより下流側の脱水機14において、固液分離がより有効に行われ適正に汚泥の脱水化が行われる。次いで、ステップ8で、圧縮デジタル画像データの容量とHIGH閾値とを比較し、圧縮デジタル画像データの容量がHIGH閾値以上である場合、凝集剤の注入量を減少し、HIGH閾値より小さい場合、凝集剤の注入量はそのままとする。凝集剤の注入量が減少されることにより、攪拌槽内で汚泥の凝集が抑止され、それにより下流側の脱水機14において、固液分離がより有効に行われ適正に汚泥の脱水化が行われる。
【0051】
以上より、圧縮デジタル画像データの容量がLOW閾値以下である場合、又はHIGH閾値以上である場合、汚泥の凝集状態が異常と判定され、凝集剤の注入量が調整され、圧縮デジタル画像データの容量がLOW閾値より大きくHIGH閾値より小さい場合、汚泥の凝集状態が正常と判定され、凝集剤の注入量はそのままとされる。このように、汚泥の凝集状態が正常となるように、凝集剤の注入量を自動的に制御することにより、脱水機において汚泥を常時適正に脱水し、脱水ケーキとして排出することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態1によれば、汚泥の凝集状態を簡易な方法で数値化するに際し、汚泥の凝集状態を画像撮影し、画像撮影した汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮したうえで、単に圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較するだけで、汚泥の凝集状態が進行するほど、その輪郭が明瞭となり、圧縮撮影データ量が多くなることを利用することにより、圧縮したデジタル画像データ量が所定閾値以上であるとき、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能であり、汚泥の凝集状態を簡易な方法で、自動的に判別することができる。
【0053】
[実施例1]
本発明者は、生汚泥の状態と、凝集剤を添加することにより凝集させた凝集汚泥の状態とをそれぞれ撮影し、JPEG容量を比較することにより、本発明の効果を確認した。
(実験条件)
(1)対象:ビーカーに入れた静止状態の汚泥
(2)凝集剤:高分子凝集剤
(3)撮影機材:1眼レフデジタルカメラ
(4)撮影方法:汚泥をビーカーの側壁を介して撮影する場合と、汚泥をビーカーの上方から直接撮影する場合
(実験結果)汚泥をビーカーの上方から直接撮影する場合の実験結果を表1に示す。表1において、No.1ないしNo.10は、同じ汚泥を対象に繰り返し実験を行ったものであり、各回において、生汚泥を撮影する場合と、凝集汚泥を撮影する場合とを行っている。
【0054】
【表1】
以上の実験により、以下の知見を得た。(1)No.1ないしNo.10において、生汚泥撮影によるJPEG容量のばらつきは、最小値(No.1における1461)及び最大値(No.2における1583)であり、平均値1546.7に対して約8パーセントであり、一方、凝集汚泥撮影によるJPEG容量のばらつきは、最小値(No.10における1653)及び最大値(No.4における1691)であり、平均値1673.1に対して約2パーセントであり、凝集汚泥撮影によるJPEG容量のばらつきの方が小さかった。(2)汚泥をビーカーの側壁を介して撮影する場合には、ビーカー越しで汚泥を撮影することから焦点が合いにくいことと、室内の光が映りこむこととに起因して、生汚泥と凝集汚泥それぞれのJPEG容量に有意な差が認められなかった。(3)汚泥をビーカーの上方から直接撮影する場合には、表1に示すように、汚泥と凝集汚泥それぞれのJPEG容量に有意な差が認められ、差は平均で1673.1/1546.7=1.08、すなわち約8%の差であった。この場合には、たとえば、閾値として、1600を設定することにより、この閾値以上のJPEG容量の場合には、汚泥の凝集状態が正常であると判定することが可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者なら種々の修正あるいは変形が可能である。たとえば、本実施形態によれば、汚泥の凝集状態の自動判別方法を汚泥の凝集状態の自動制御方法に組み合わせて説明したが、それに限定されることなく、たとえば、汚泥の凝集状態の自動判別方法により汚泥の凝集状態が異常と判定されたら警報通知をし、それによりオペレータ自身が凝集剤の増減量を目分量で決定してもよい。また、本実施形態によれば、撮影手段16としてデジタルカメラを採用したが、それに限定されることなく、アナログカメラでもよい。その場合には、カメラの下流側に、アナログの画像信号をデジタル画像信号に変換するA/Dコンバータ、サンプルホールド回路等を設置すればよい。さらに、本実施形態において、凝集剤の注入量を制御するのに、バルブの開度を調整することにより行ったが、それに限定されることなく、たとえばストロークポンプを用い、このストロークポンプによるストローク量を調整してもよい。
【0056】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。この実施の形態2においては、撮影手段16及び画像データ処理部58によって撮影、デジタル化、圧縮されたデジタル画像データのデータ容量が、最適凝集状態においてピーク(最大値)を持つ場合について説明する。なお、この実施の形態2に係る脱水処理システム10の概略構成については、閾値データベース45及び自動制御装置20以外について上記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
<所定閾値の設定>
まずは、この実施の形態2に係る脱水処理システム10における所定閾値の設定プロセスについて説明する。図6は、この実施の形態2における汚泥の凝集状態(横軸)と撮影手段16による画像データのデータ量との関係の典型例を示すグラフである。横軸の汚泥の凝集状態とは、汚泥種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類等の諸条件が一定の場合、凝集剤の薬注量と読み替えることもできる。つまり、凝集剤の薬注量が不足している場合は凝集不足状態となり、画像データ量も小さい。しかし、凝集剤の薬注量が適正な場合には適正凝集状態となり画像データ量が大きくなる。そして、凝集剤の薬注量が過多となった場合は過注入(凝集剤過多状態)となってしまい、再び凝画像データ量が小さくなる。なお、以下の説明において、凝集剤不足状態と凝集剤過多状態とを併せて凝集不適正状態と呼ぶ場合がある。
【0058】
図6に示すように、この脱水処理システム10においては、最適凝集状態Pmにおいて、画像データ量が最大データ量Dmとなる。したがって、例えば、最適凝集状態Pmにおける最大データ量Dmの95%のデータ容量を所定閾値D2(=0.95*Dm)と設定すれば、画像データ量が所定閾値D2以上である場合に対応する凝集状態を適正凝集状態P2、所定閾値D2未満である場合に対応する凝集状態を凝集不適正状態(P1,P3)と判断することができる。この凝集不適正状態(P1,P3)のうち、薬注量不足による凝集不良状態が凝集不足状態P1であり、凝集剤過注入による凝集不適正状態が凝集剤過多状態P3である。
【0059】
なお、初期状態において汚泥種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類等の諸条件を一定条件に設定した上で、予め凝集剤添加手段18による凝集剤添加量(薬注量)を少ない状態から多い状態にまで変化させつつ撮影手段16によって汚泥の凝集状態の撮影を複数回行うことにより、最適凝集状態Pmとなった場合の最大データ量Dmを把握することができる。したがって、この最大データ量Dmに基づき所定閾値D2を算出することができる。
【0060】
また、上記のように最大データ量Dmのみに基づいて所定閾値D2を算出するのでなく、上記方法で撮影した複数枚の画像データに基づいて所定閾値D2を設定してももちろんよい。例えば、最大データ量Dmとなった画像データの前後数枚の画像データに各々対応する凝集状態を適正状態として選択し、その適正状態の場合の画像データ量の最小値を所定閾値D2として設定してもよい。
【0061】
なお、実際の脱水処理開始前に、予め上記の方法で画像データ量と凝集剤の薬注量との関係を明確としていれば、実際の脱水処理において、デジタル画像の画像データ量が所定閾値D2未満となった場合に、凝集剤流量計30による薬注量データに基づき、その状態が凝集不足状態であるのか凝集剤過多状態であるのかを判別することができる。すなわち、予め複数枚の画像を撮影した際に、画像データ量が最大データ量Dmとなったときの薬注量を最適薬注量と設定する。そして、実際の脱水処理において、デジタル画像の画像データ量が所定閾値D2未満となった場合の薬注量を最適薬注量と比較し、その薬注量が最適薬注量よりも少ない場合は凝集不足状態であると判断することができ、最適薬注量よりも多い場合は凝集剤過多状態であると判断することができる。
【0062】
図7は、この実施の形態2における閾値データベース45のデータ構造の例である。この閾値データベース45では、汚泥の種類、汚泥の流量、汚泥の濃度、凝集剤の種類と所定閾とが関連付けられている。例えば、汚泥の種類としては、混合生汚泥、消化汚泥等の他、種々の汚泥(例えば、汚泥種A,汚泥種B等)が処理対象として適用可能である。また、添加する凝集剤の種類としては、カチオン系高分子凝集剤を初めとする種々の凝集剤が適用可能であり、カチオン系の中でも、カチオンA、カチオンB、カチオンC、カチオンD等の種類がある。
【0063】
所定閾値は、例えば、初期条件を基準値とした場合のその係数値として格納されている。例えば、初期条件が、汚泥種類=混合生汚泥、汚泥流量=Q、汚泥濃度=C、凝集剤種類=カチオンAである場合の所定閾値を基準閾値=100%とすると、図7に示すように、汚泥種類が消化汚泥のときの所定閾値は基準閾値に対して90%、汚泥種Aの場合の所定閾値は基準閾値に対して80%となる。また、カチオンBの場合の所定閾値は基準閾値に対して97%、カチオンCの場合の所定閾値は基準閾値に対して90%となる。なお、汚泥の流量と所定閾値との関係、汚泥の濃度と所定閾値との関係は、汚泥種類や凝集剤種類、その他の脱水処理条件によって様々な関係をとりえる。汚泥流量や汚泥濃度が変化しても、所定閾値が一定の場合もあるし、比例関係、反比例関係となる場合も想定されるが、必ずしもそれらの関係になるとは限らず、種々想定される。
【0064】
本実施の形態2においては、自動制御装置20の記憶部48内に閾値データベース45が格納されており、デジタル画像データ処理部58が凝集状態比較判定処理の際に閾値データベース45を参照する。そして、汚泥の種類、流量、濃度及び凝集剤の種類に応じて、係数値が係数された所定閾値を設定するようになっている。
【0065】
<薬注量の決定>
薬注量算出部56における薬注量の算出も、汚泥の種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類に応じて算出される。例えば、記憶部48内に注入量データベース(不図示)が格納されており、その注入量データベースが、汚泥の種類や凝集剤種類と注入量とが関連付けられて構築されていれば、薬注量算出部56がその注入量データベースを参照することにより、処理対象の汚泥種類、使用する凝集剤種類を設定した場合に初期条件としての薬注量(初期薬注量)を決定することができる。汚泥種類や凝集剤種類が変更になった場合でも、変更後の汚泥や凝集剤を用いて薬注量の初期条件をわざわざ実験により求めなくても、汚泥種類と凝集剤種類とを設定変更するだけで、適正な初期薬注量が選択される。初期薬注量データを別途薬注量算出部56に外部から入力する必要もなくなる。
【0066】
また、脱水処理の途中で汚泥の流量や濃度が変化した場合には、第1比率演算部52及び第2比率演算部54による比率演算処理が行われる。例えば、汚泥流量が80%となった場合に薬注量も80%とし、汚泥濃度が60%となった場合に薬注量も60%とする。これにより、脱水処理途中で流量や濃度等の状態が変化した場合でも、変化後の状態に応じた適正な薬注量とすることができる。
【0067】
一方、その薬注量に基づき脱水処理を行っている場合に、画像データ処理部58によって画像データ量が所定閾値D2未満であると判断された場合には、薬注量補正部60による薬注量の補正が行われる。この薬注量の補正とは、すなわち、画像データ量に基づき凝集不足状態と判断した場合に薬注量を所定量増加させ、凝集剤過多状態と判断した場合に薬注量を所定量減少させる処理である。
【0068】
この増加量及び/又は減少量は、一定値であってもよい。すなわち、凝集不足状態が判断された場合に、凝集剤薬注量を一定量増加させ、再び画像撮影し凝集状態の判断を行う。そして、まだ凝集不足状態が判断された場合に、再び凝集剤薬注量を一定量増加させる方法である。この、一定量の薬注量増減処理と凝集状態の判断処理とを繰り返すことにより、凝集状態は徐々に適正状態へと向かっていくこととなる。
【0069】
しかしながら、汚泥凝集状態比較判定部66が、撮影した画像データ量と所定閾値D2との差分(又は比率)を演算し、その差分値(又は比率値)に基づき薬注量補正部60による増減量が算出されてもよい。例えば、撮影した画像データ量と所定閾値D2との差分値に比例するように増減量が設定されるようになっていれば、その差分値が大きい(すなわち、凝集不適正の程度が大きく、適正凝集状態から遠く離れている)場合に、より大きい増減量で薬注量補正を行うことができる。その結果、制御の効率を向上させ、適正凝集状態へと迅速に向かわせることができる。
【0070】
<制御プロセス>
なお、この実施の形態2において、撮影した画像データ量と所定閾値D2とを比較した場合に、画像データ量が所定閾値D2未満と判断した場合には、その凝集不適正状態が凝集不足状態であるのか凝集剤過多状態であるのかを判断する状態判断工程を行う。この状態判断工程は、凝集剤の薬注量を一旦減少(又は増加)させて、そのときの撮影画像の画像データ量が増加する(つまり、適正方向に向かう)のか減少する(つまり不適正方向に向かう)のかを見極める工程である。
【0071】
薬注量を減少させた場合に画像データ量が増加すれば、凝集剤過多状態であると判断することができ、逆に薬注量を減少させた場合に画像データ量が減少すれば、凝集不足状態であると判断することができる。同様に、薬注量を増加させた場合に画像データ量が増加すれば、凝集不足状態であると判断することができ、薬注量を増加させた場合に画像データ量が減少すれば、凝集剤過多状態であると判断することができる。
【0072】
図8は、この実施の形態2に係る脱水処理システム10の凝集剤添加量の自動制御プロセスを説明するフローチャートである。汚泥種類、汚泥流量、予め想定した汚泥濃度、凝集剤種類等の初期条件に基づき、初期注入量を設定する(S21)。汚泥流量計32及び汚泥濃度計34のデータに基づき、汚泥の流入状態に変化があるか否かを監視する(S22)。そして、流入状態に変化がある場合は、第1比率演算部52及び第2比率演算部54による比率演算を行い、変化後の状態に応じた注入量を算出する(S23)。
【0073】
凝集剤混和槽12において汚泥の凝集状態の画像撮影を行う(S24)。そして、その撮影画像データの画像圧縮を行って(S25)、圧縮後の画像データ量と所定閾値D2との容量比較を行う(S26)。なお、この所定閾値D2は閾値データベース45から参照したものであるが(S27)、所定閾値D2は、汚泥種類、汚泥流量、汚泥濃度、凝集剤種類等の条件に応じて基準閾値からの係数補正がされたものが用いられる(S28)。基準閾値は、脱水処理開始前に、予め凝集剤注入量を変化させて複数の凝集状態としたものを画像撮影した上で設定しておく。
【0074】
画像データ量が所定閾値D2以上である場合は(S29)、凝集状態が適正状態(S30)であると判断することができる。したがって、この場合は、注入量を増減することなく再び(S22)へとループする。画像データ量が所定閾値D2未満である場合(S29)、凝集剤の注入量を一旦減少させて画像撮影を行う(S31)。その結果、画像データ量が更に減少した場合(S32)は、凝集不足状態であると判断し(S33)、注入量を増大させる(S34)。一方、(S31)による画像撮影により画像データ量が増大した場合(S32)は、凝集剤過多状態であると判断し(S35)、注入量を減少させる(S36)。
【0075】
なお、(S31)の状態判断工程においては、凝集剤の注入量を一旦増加させて画像撮影を行ってもよい。この場合は、画像データ量が更に減少した場合は凝集剤過多状態であると判断し、画像データ量が増大した場合は凝集剤不足状態であると判断する。もちろん、凝集剤の注入量の一旦減少と一旦増加との両方の工程を行ってもよい。
【0076】
また、予め画像データ量と凝集剤注入量との関係が明確になっていれば、凝集不適正状態の場合であっても状態判断工程を必要とすることなく、凝集剤流量計30のデータに基づき凝集不足状態であるか凝集剤過多状態であるかを判断することができる。
【0077】
[実施例2]
所定の脱水処理システムにおいて、以下条件のもとに、凝集不良状態(凝集剤注入量不足)、最適凝集状態、凝集剤過多状態(凝集剤注入量過剰)における撮影画像の圧縮後画像データ量の測定を行った。投光器を用いない場合(照度:30〜50lx)の結果を表2に、投光器を用いた場合(照度:200〜300lx)の結果を表3に示し、図9にそのグラフを示した。なお、各実験において各々10回の撮影を行っている。
【0078】
汚泥種類:下水濃縮汚泥(混合生汚泥、汚泥濃度4%)
撮影手段:デジタルカメラ(圧縮方法:JPEG)
凝集剤:カチオン系高分子凝集剤
凝集剤添加量:凝集不足状態で0.2%、最適凝集状態で0.4%、凝集剤過多状態で0.6%
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
以上の結果より、最適凝集状態において、画像データのデータ量は略ピーク(最大値)を持ち、凝集不足状態であっても凝集剤過多状態であってもデータ量が減少することがわかる。また、撮影照度が200〜300lxの場合よりも30〜50lxの場合の方が、最適凝集状態時の画像データ量が大きく、結果としてピーク形状がより際立って凝集不適正(凝集不足、凝集剤過多)状態との差異が明確となっている。ここで、例えば、図9に示すように、所定閾値D2を設定すれば、適正凝集状態と不適正凝集状態との判別を明確かつ確実に行うことができる。
【0081】
なお、投光器なし/投光器ありの各々について凝集不足状態、最適凝集状態、凝集剤過多状態の場合の撮影画像の例を図10〜図12に示した。
【0082】
[実施例3]
所定の脱水処理システムにおいて、以下条件のもとに、凝集不良状態(凝集剤注入量不足)、最適凝集状態、凝集剤過多状態(凝集剤注入量過剰)における撮影画像の圧縮後画像データ量の測定を行った。実験結果を表4〜表7に示し、図13にそのグラフを示した。なお、データ量の測定は1条件の実験につき各10回行い、その平均値を採用した。
【0083】
汚泥種類:混合生汚泥(汚泥濃度4%)/消化汚泥(汚泥濃度4%)
撮影手段:デジタルカメラ(圧縮方法:JPEG)
凝集剤:カチオンA〜D(いずれもカチオン系高分子凝集剤)
凝集剤添加量:表中に記載
投光器:なし(30〜50lx)
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
以上の結果より、汚泥や凝集剤の種類によって最適凝集状態における画像データのデータ量が異なることがわかる。また、いずれの場合においても、画像データのデータ量は略ピーク(最大値)を持ち、凝集不足状態であっても凝集剤過多状態であってもデータ量が減少することがわかる。ここで、例えば、図13に示すように、各条件時の所定閾値D2を設定すれば、適正凝集状態と不適正凝集状態との判別を明確かつ確実に行うことができる。
【0088】
[実施例3]
上記実施例2における表2の撮影回数1回目の撮影画像の画像データに対して2階調化の画像処理を行ったときの画像データ量を比較した。表8に撮影画像の画像データに対して256階調の2階調化を行い、各々白黒の閾値を80,110,128,200にとったときの画像データ量を示した。
【0089】
【表8】
以上の結果より、2階調化を行うことにより、一層ピークが際立ち、最適凝集状態と凝集不足状態や凝集剤過多状態との差異が明確となる。特に、閾値110の場合は、最適凝集状態の場合のデータ量100%に対して、凝集不足状態:32.7%、凝集剤過多状態:45.4%となり、表2の場合よりもピークの先鋭化が著しい。したがって、画像データの画像データ処理部58が画像データの2階調化処理部を有するように構成すれば、適正凝集状態と不適正凝集状態の切り分けがより明確となり、一層の自動制御の効率化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の汚泥の凝集状態の自動判別方法によれば、汚泥の凝集状態を簡易な方法で数値化することにより、自動判別することが可能であり、この自動判別方法を用いて、汚泥の凝集剤の自動制御方法を実現することにより、適正に凝集された汚泥を脱水することが可能となる点において、汚泥処理技術に有用である。
【符号の説明】
【0091】
D2:所定閾値
Dm:最大データ量
P1:凝集不足状態(凝集不適正状態)
P2:適正凝集状態
P3:凝集剤過多状態(凝集不適正状態)
Pm:最適凝集状態
10:脱水処理システム
12:凝集剤混和槽(攪拌槽)
14:脱水機
16:撮影手段
18:凝集剤添加手段
20:凝集剤の薬注量の自動制御装置(注入量制御部)
22:攪拌羽根
24:上部開口
26:供給管
28:流量制御バルブ
30:凝集剤流量計(注入量計測手段)
32:汚泥流量計
34:汚泥濃度計
40:演算処理部
42:表示制御部
44:外部インターフェイス
45:閾値データベース(閾値テーブル)
46:入力部
48:記憶部
50:撮像処理部
52:第1比率演算部
54:第2比率演算部
56:薬注量算出部
58:画像データ処理部
60:薬注量補正部
62:流量制御バルブの開度演算部
64:デジタル画像データ圧縮部
65:デジタル圧縮画像データ量算出部
66:汚泥凝集状態比較判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、
汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、
画像撮影した前記汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、
該圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、
該比較段階において、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であるとき、前記凝集剤の注入量を増減させる、汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項2】
前記比較段階において、
前記凝集剤の注入量の増減量が、汚泥の流量及び/又はSS濃度に応じて定められる、請求項1に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項3】
前記画像撮影段階において、
静止状態又は動的状態にある前記凝集状態の汚泥を、汚泥液面を介して、上方から該凝集状態の汚泥のみを撮影する、請求項1又は請求項2に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項4】
前記所定閾値は、
前記凝集状態の汚泥の種類及び/又は該汚泥に添加する前記凝集剤の種類に応じて予め決定される、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項5】
前記所定閾値は、
前記凝集剤の注入量を変化させることにより複数の異なる凝集状態となった前記汚泥の該複数の異なる凝集状態を撮影し、
その撮影された複数のデジタル画像データを各々圧縮した場合におけるデジタル画像データ量に基づいて予め決定される、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項6】
前記比較段階において、
前記凝集剤の注入量の増減量は、前記所定閾値と前記デジタル画像データ量との差分又は前記所定閾値と前記デジタル画像データ量との比率に応じて定められる、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項7】
前記凝集剤の注入量を計測する段階を更に有し、
前記比較段階において、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記注入量が所定注入量未満の場合に、前記凝集剤の注入量を増大させ、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記注入量が所定注入量以上の場合に、前記凝集剤の注入量を減少させる、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項8】
前記凝集剤の注入量を変化させて前記汚泥の凝集状態を画像撮影する段階を更に有し、
前記比較段階において、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記凝集剤の注入量を変化させた場合において、該注入量が大きいときの前記デジタル画像データ量の方が該注入量が小さいときの前記デジタル画像データ量よりも大きい場合に、前記凝集剤の注入量を増大させ、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記凝集剤の注入量を変化させた場合において、該注入量が小さいときの前記デジタル画像データ量の方が該注入量が大きいときの前記デジタル画像データ量よりも大きい場合に、前記凝集剤の注入量を減少させる、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項9】
内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する攪拌槽と、
前記攪拌槽内で攪拌される前記汚泥を撮影する撮影手段と、
該攪拌槽内に前記凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、
前記撮影手段に接続されると共に前記凝集剤添加手段に接続される凝集剤の注入量制御部と、を有する汚泥の凝集システムであって、
該注入量制御部は、
前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを処理するデジタル画像データ処理部を有し、かつ、
該デジタル画像データ処理部は、
前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを圧縮するデジタル画像データ圧縮手段と、
圧縮化された汚泥のデジタル画像データを所定閾値と比較判定する比較判定手段と、を有しており、
前記注入量制御部は、
前記比較判定手段による比較判定結果に基づいて、前記凝集剤添加手段に対して凝集剤の注入量の増減を指令する要求信号を出力する、汚泥の凝集システム。
【請求項10】
前記注入量制御部は、
前記汚泥の種類、前記汚泥の流量、汚泥の濃度及び前記凝集剤の種類のうち少なくともいずれか1つと前記所定閾値とが関連付けられて構築された閾値データベースを更に有する、請求項9に記載の汚泥の凝集システム。
【請求項1】
汚泥に対して、所定量の凝集剤を注入する段階と、
汚泥の凝集状態を画像撮影する段階と、
画像撮影した前記汚泥の凝集状態のデジタル画像データを圧縮する段階と、
該圧縮したデジタル画像データ量を所定閾値と比較する段階とを有し、
該比較段階において、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であるとき、前記凝集剤の注入量を増減させる、汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項2】
前記比較段階において、
前記凝集剤の注入量の増減量が、汚泥の流量及び/又はSS濃度に応じて定められる、請求項1に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項3】
前記画像撮影段階において、
静止状態又は動的状態にある前記凝集状態の汚泥を、汚泥液面を介して、上方から該凝集状態の汚泥のみを撮影する、請求項1又は請求項2に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項4】
前記所定閾値は、
前記凝集状態の汚泥の種類及び/又は該汚泥に添加する前記凝集剤の種類に応じて予め決定される、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項5】
前記所定閾値は、
前記凝集剤の注入量を変化させることにより複数の異なる凝集状態となった前記汚泥の該複数の異なる凝集状態を撮影し、
その撮影された複数のデジタル画像データを各々圧縮した場合におけるデジタル画像データ量に基づいて予め決定される、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項6】
前記比較段階において、
前記凝集剤の注入量の増減量は、前記所定閾値と前記デジタル画像データ量との差分又は前記所定閾値と前記デジタル画像データ量との比率に応じて定められる、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項7】
前記凝集剤の注入量を計測する段階を更に有し、
前記比較段階において、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記注入量が所定注入量未満の場合に、前記凝集剤の注入量を増大させ、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記注入量が所定注入量以上の場合に、前記凝集剤の注入量を減少させる、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項8】
前記凝集剤の注入量を変化させて前記汚泥の凝集状態を画像撮影する段階を更に有し、
前記比較段階において、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記凝集剤の注入量を変化させた場合において、該注入量が大きいときの前記デジタル画像データ量の方が該注入量が小さいときの前記デジタル画像データ量よりも大きい場合に、前記凝集剤の注入量を増大させ、
前記圧縮したデジタル画像データ量が前記所定閾値未満であって、かつ前記凝集剤の注入量を変化させた場合において、該注入量が小さいときの前記デジタル画像データ量の方が該注入量が大きいときの前記デジタル画像データ量よりも大きい場合に、前記凝集剤の注入量を減少させる、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の汚泥の凝集状態の自動制御方法。
【請求項9】
内部で凝集剤とともに汚泥を攪拌する攪拌槽と、
前記攪拌槽内で攪拌される前記汚泥を撮影する撮影手段と、
該攪拌槽内に前記凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、
前記撮影手段に接続されると共に前記凝集剤添加手段に接続される凝集剤の注入量制御部と、を有する汚泥の凝集システムであって、
該注入量制御部は、
前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを処理するデジタル画像データ処理部を有し、かつ、
該デジタル画像データ処理部は、
前記撮影手段により撮影された汚泥のデジタル画像データを圧縮するデジタル画像データ圧縮手段と、
圧縮化された汚泥のデジタル画像データを所定閾値と比較判定する比較判定手段と、を有しており、
前記注入量制御部は、
前記比較判定手段による比較判定結果に基づいて、前記凝集剤添加手段に対して凝集剤の注入量の増減を指令する要求信号を出力する、汚泥の凝集システム。
【請求項10】
前記注入量制御部は、
前記汚泥の種類、前記汚泥の流量、汚泥の濃度及び前記凝集剤の種類のうち少なくともいずれか1つと前記所定閾値とが関連付けられて構築された閾値データベースを更に有する、請求項9に記載の汚泥の凝集システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−247151(P2010−247151A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70258(P2010−70258)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]