説明

汚泥の燃焼処理方法及び汚泥の肥料化方法

【課題】低コストで、環境負荷を低減させた汚泥の燃焼処理方法及び汚泥の肥料化方法を提供する。
【解決手段】汚泥燃焼炉20を用いた汚泥の燃焼処理方法であって、汚泥に木材チップを所定の重量比で混入して、汚泥燃焼炉20で燃焼させる。含水率の高い汚泥であっても、木材チップと混焼させることにより二酸化炭素の削減と、得られた焼却灰を肥料として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等の汚泥の燃焼処理方法及び汚泥の肥料化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥等の汚泥は、埋立てしたり、焼却したりすることにより処理されている。下水汚泥等は、含水率が70〜90%程度であり燃焼しにくいため燃焼を補助させるものを混入させている。例えば、一般廃棄物や産業廃棄物などのごみに汚泥を混入させて同時に焼却する汚泥混焼炉(特許文献1参照)や、ゴミと汚泥を混焼する流動床式ごみ焼却装置(特許文献2参照)などが提案されている。上述した汚泥混焼炉や流動床式ごみ焼却装置では、都市ごみ等を混入させて焼却することで、含水率が高い下水汚泥であっても安定して燃焼させることができる。しかしながら、ごみの発熱量は一定ではないため、汚泥混焼炉や流動床式ごみ焼却装置の炉内の温度を一定に保つのが困難であり、温度管理にコストがかかるという問題があった。
【0003】
また、重油や灯油などの液体燃料を大量に用いて燃焼させた場合も同様にコストがかかるという問題があった。
【0004】
なお、いずれの場合も、汚泥の燃焼の際に大量の二酸化炭素が発生するということが問題となっていた。
【特許文献1】特開2000−230709号公報
【特許文献2】特開2001−090924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑み、低コストで、環境負荷を低減させた汚泥の燃焼処理方法及び汚泥の肥料化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることを特徴とする汚泥の燃焼処理方法にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の汚泥の燃焼処理方法において、前記汚泥の乾燥固形分と前記木材チップとの質量比が1:1〜1:3.4となるように前記汚泥と前記木材チップとを混合することを特徴とする汚泥の燃焼処理方法にある。
【0008】
本発明の第3の態様は、汚泥燃焼炉を用いた汚泥の肥料化方法であって、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより肥料を製造することを特徴とする汚泥の肥料化方法にある。
【0009】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の汚泥の肥料化方法において、前記汚泥の乾燥固形分と前記木材チップとの質量比が1:1〜1:3.4となるように前記汚泥と前記木材チップとを混合して燃焼させることにより、前記肥料がPを5〜28%、カリウムを1〜5%含むように製造することを特徴とする汚泥の肥料化方法にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより、低コストで汚泥を燃焼させることができる。また、汚泥の燃焼の際の二酸化炭素を削減させることができ、環境負荷を低減させた汚泥の燃焼処理方法となる。また、得られた燃焼灰は、肥料して用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、汚泥燃焼炉を用いた汚泥の燃焼処理方法であって、汚泥に木材チップを混入して燃焼させるというものである。汚泥と所定の大きさの木材チップを混入することにより、下水汚泥のように含水率の高い汚泥を効率よく燃焼させることができ、低コストで環境負荷を低減した汚泥の燃焼処理方法となる。
【0012】
ここでいう汚泥とは、下水処理場から排出される下水汚泥、農業集落の排水汚泥、し尿汚泥、食品製造業の排水汚泥などの汚泥のことである。本発明の汚泥の燃焼処理方法は、比較的含水率が高い汚泥、例えば、含水率が80〜90%程度の下水汚泥の処理にも好適なものである。
【0013】
本発明で用いる木材チップは、木片の廃材などではなく、生木のパルプ用チップ、廃棄部材ではない木材の破砕片等の未利用の間伐材からなるものである。本発明において、木材チップは補助燃料として用いられるものであり、汚泥と共に燃焼炉に入れられた木材チップが燃焼することにより燃焼炉の温度が上昇し、汚泥を効率よく燃焼させることができる。かかる木材チップは、低位発熱量が10〜20MJ/kg程度であり、木材チップを汚泥に混入することで汚泥を効率よく燃焼させることができる。所定の大きさの木材チップを用いることにより、汚泥と木材チップの混合物の単位質量あたりの発熱量が一定となり、汚泥燃焼炉内の温度制御が容易となる。木屑や一般廃棄物などは低位発熱量にばらつきがきがあるため、これらを汚泥に混入させて燃焼する際には、発熱量が安定していないため、汚泥に対する混入割合を適宜調整する必要があるのに対し、所定の大きさの木材チップを用いることで、汚泥に対する混合割合を厳格に調整する必要がない。
【0014】
また、木材チップは、汚泥と共に容易に搬送することができるものであり、従来から使用されている汚泥燃焼施設で使用することができるものである。
【0015】
木材チップの大きさは、例えば、縦、横、高さが2mm〜7cmであり、好ましくは4〜5cmである。
【0016】
木材チップの形状は、前述した大きさの範囲内であれば特に限定されず、略直方体、円形、三角錐などのいずれの形状であってもよいが、同形状のものを用いるのが好ましい。発熱量が一定となるためである。また、木材チップの材質も特に限定されないが、例えば、松、杉、ヒノキ、くぬぎ等が挙げられ、松が好ましい。松は発熱量が単位質量当たり他の木材チップより約1.5倍程度高いからである。また、汚泥と木材チップとの混合比は、汚泥の乾燥固形分と木材チップとの質量比が1:1〜1:3.4となるように、汚泥に木材チップを混入するのが好ましい。すなわち、含水率が80〜85%の下水汚泥1kgの場合、木材チップを0.2〜0.5kg混入するようにするのが好ましい。この質量比とすることで、効率よく汚泥を燃焼させることができる。
【0017】
本発明の汚泥の燃焼処理方法では、所定の大きさの木材チップを用いることにより、重油等の液体燃料と比べて、二酸化炭素の発生を著しく低減させることができ、環境負荷を低減させることができる。ここで、含水率が80〜85%の下水汚泥は、低位発熱量が約2.5MJ/kgである。下水汚泥1kgを燃焼するためには、補助燃料として低発熱量約42MJ/kgのA重油が約0.1kg必要となる。これに対し、木材チップの低位発熱量は水分含有率によって大きく異なるが、生木のチップでは約14MJ/kg程度であり、A重油の低位発熱量の3分の1である。したがって、生木の木材チップで重油と同等の発熱量を得るためには、A重油の消費量の3倍の量を焼却すればよいこととなる。下水汚泥を1日2トン焼却する小型の施設の場合、A重油であると約200kg必要であり、生木の木材チップは約600kg必要となるが、生木の木材チップを用いた場合は、A重油を用いる場合と比較して二酸化炭素の排出量を約430kg削減することができる。また、間伐材からなる木材チップは、木片の廃材よりも汚泥を燃焼させる際に発生する二酸化炭素の量が少ない。
【0018】
さらに、本発明の汚泥の燃焼処理方法は、木材チップがカーボンニュートラルな材料であるという点からも、従来の汚泥の燃焼処理方法よりも二酸化炭素の排出量を減少させて、温暖化防止に寄与することができる。
【0019】
また、木材チップは低コストで且つ安定して供給できるものであるため、本発明の汚泥の燃焼処理方法は低コストで安定して行うことができるものである。重油などの液体燃料(化石燃料)の価格は大きく乱高下しているのに対し、特に、中山間地域では木材チップは豊富であり、木材チップの価格は重油のように価格が乱高下することはなく安定している。そして、木材チップのコストはA重油の1/9程度である。使用量を考慮しても補助燃料として木材チップを用いた場合、A重油を用いる場合と比較して価格は3分の1となる。また、従来のように廃棄物と混焼する燃焼方法では、廃棄物を安定して供給することが難しいのに対し、木材チップは安定して供給することができる。本発明の汚泥の燃焼処理方法は、中山間地域の自治体で小規模で汚泥を燃焼処理している場合に、特に有効なものである。
【0020】
以上のように、木材チップを補助燃料として用いた本発明の汚泥の燃焼処理方法は、低コストで且つ二酸化炭素の発生を著しく低減させて環境負荷を低減させたものである。
【0021】
さらに、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより製造される燃焼灰は、肥料として用いることができる。例えば、汚泥の乾燥固形分と木材チップとの質量比が1:1〜1:3.4となるように汚泥と木材チップとを混合して燃焼させることにより、Pを5〜28%、カリウムを1〜5%含む肥料を成形することができる。下水汚泥1kgを燃焼するのに必要な木材チップを0.3kgとすれば、これらを燃焼すると、それぞれ下水汚泥の燃焼灰は0.04kg、木材チップの燃焼灰は0.009kg程度得られる。一般的な下水汚泥の燃焼灰の成分は、例えば、P:28%、K:1.5%、CaO:10.5%、SiO:32%、Mg:4%、Al:19%、Fe:3%程度であり、木材チップの燃焼灰中のカリウム(K)の成分は、5%程度であるから、下水汚泥に木材チップを混入して燃焼させて得られる燃焼灰は、P:23%、K(カリウム):2.1%含むものとなり、良質な肥料となる。
【0022】
例えば、中国地方の中山間地域は間伐材が極めて豊富に存在し、間伐材の利用方法の研究が盛んに行われており、暖房機用の燃料ペレット、エタノール製造原料、ボイラー燃料等が製造・研究されている。しかしながら、暖房用ペレットは冬期だけの使用であり、エタノールの製造は研究段階であり、ボイラー燃料は木屑だけを燃料とするものであり、より有効な間伐材の利用方法が求められていた。自治体の運営する下水汚泥の焼却は、年中休むことなく稼働するものであり、本発明の汚泥の燃焼処理方法では、多量の木材チップを安定して供給されることが必要とされる。すなわち、本発明の汚泥の燃焼処理方法は、中山間地域の間伐材を有効利用するものであり、産業のない中山間地域の地場産業の育成に寄与することができるものである。さらに、本発明によれば、汚泥の燃焼により製造される燃焼灰を肥料として有効利用することができる。燃焼灰は、価格高騰の化学肥料の代替としての役割を果たすことができ、周辺の農家に肥料として低価格で提供することができる。したがって、本発明の汚泥の燃焼処理方法は、特に地場産業の乏しい中山間地域の林業産業の育成及び農業に貢献することができる。
【0023】
なお、本発明の汚泥の燃焼処理方法は、従来から使用されている燃焼施設を用いて行えばよい。以下、図1の汚泥の燃焼施設について説明しながら、本発明の汚泥の燃焼処理方法について簡単に説明する。
【0024】
図1は、汚泥の燃焼施設の一例であり、流動式汚泥燃焼施設である。
【0025】
汚泥燃焼炉20は、ガスの上方への移動を許容する板状部材21Aによって下方が仕切られてガス供給部21となっている。このガス供給部21は、外部から供給された高温のガスを汚泥燃焼炉20の上部の流動層1へ向かって噴出することができるようになっている。かかる流動層1は、砂から形成されるものであり、ガス供給部21から供給されるガスで流動するようになっている。なお、流動層1の上部は、空気と微量の未燃ガスを混合して完全燃焼させるフリーボード部となっている。
【0026】
汚泥燃焼炉20の側面には、外部に補助バーナーなどの熱源が設けられており、流動層1の温度が低下した場合は流動層1に熱が供給できるようになっている。また、汚泥燃焼炉20の側面には温度センサが設けられており、流動層1の温度が検出できるようになっている。
【0027】
コンベア11は、始端部側に汚泥を供給するホッパ12及び木材チップを供給するホッパ13が設けられており、終端部が汚泥燃焼炉20へと接続されている。このコンベア11は、スクリューコンベアであり、汚泥や木材チップを所定量ずつ供給することができるようになっている。
【0028】
ホッパ12から供給される汚泥及びホッパ13から供給される木材チップは、コンベア11により汚泥燃焼炉20へと搬送される。そして、汚泥燃焼炉20を所定の流動速度で運転することで、汚泥及び木材チップは流動層1の砂の中に分散されて、燃焼させられる。
【0029】
上述した汚泥の燃焼施設を用いて汚泥の燃焼処理試験を行った。なお、汚泥の燃焼処理試験では、流動層1の温度センサが検出した炉内温度信号を制御装置に送り、炉内温度に基づいて、A重油の供給量が制御できるようにしてある。
【0030】
コンベア11により10分間で汚泥30kgを汚泥燃焼炉20へと供給した。その後、重油を補助燃料として用いて、安全運転になった燃焼状態(汚泥燃焼炉20の炉内出口温度約800℃、流動層1の温度約760℃)としたところで、4〜5cmの木材チップを10分間で10kgの割合でホッパ13からコンベア11を介して汚泥燃焼炉20へ供給した。これに伴い、汚泥燃焼炉20の炉内出口温度が上昇して重油の供給量が減少し始め、炉内出口温度が850℃まで上昇したところで、A重油の供給量はゼロとなった。その後も10分間で10kgの割合で木材チップを供給することにより、A重油の供給量はゼロのままであった。
【0031】
これより、A重油の代わりに木材チップを用いることにより、汚泥を燃焼できることがわかった。
【0032】
汚泥を燃焼させて得た燃焼灰を取り出したところ、P:14%、K:2.5%、CaO:20.5%、SiO:33.5%、Al:19.0%、Fe:7.5%、Mg:3%であった。これより、燃焼灰は良質の肥料となることがわかった。
【0033】
本試験では、汚泥を供給した後に、木材チップを供給したが、汚泥と木材チップを混合してから汚泥燃焼炉20に供給してもよい。例えば、ホッパ12から汚泥が供給されたコンベア11にホッパ13から木材チップを供給して、汚泥と木材チップとを同時に汚泥燃焼炉20に供給してもよい。
【0034】
なお、本発明の汚泥の燃焼処理方法は、上述した流動式汚泥燃焼施設以外にも適用できるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】汚泥の燃焼施設の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 流動層
11 コンベア
12、13 ホッパ
20 汚泥燃焼炉
21 ガス供給部
21A 板状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥燃焼炉を用いた汚泥の燃焼処理方法であって、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることを特徴とする汚泥の燃焼処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥の燃焼処理方法において、前記汚泥の乾燥固形分と前記木材チップとの質量比が1:1〜1:3.4となるように前記汚泥と前記木材チップとを混合することを特徴とする汚泥の燃焼処理方法。
【請求項3】
汚泥燃焼炉を用いた汚泥の肥料化方法であって、汚泥に木材チップを混入して燃焼させることにより肥料を製造することを特徴とする汚泥の肥料化方法。
【請求項4】
請求項3に記載の汚泥の肥料化方法において、前記汚泥の乾燥固形分と前記木材チップとの質量比が1:1〜1:3.4となるように前記汚泥と前記木材チップとを混合して燃焼させることにより、前記肥料がPを5〜28%、カリウムを1〜5%含むように製造することを特徴とする汚泥の肥料化方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−112684(P2010−112684A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288169(P2008−288169)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(507234438)公立大学法人県立広島大学 (24)
【Fターム(参考)】