説明

汚泥の脱水処理方法及び装置

【課題】 フィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水処理におけるフィルターケーキの剥離性を向上すると共に、フィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水乾燥処理の処理効率を大幅に向上する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、カレンダー加工を施した織布をフィルタープレス用の濾布として使用することを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、し尿、家畜糞尿、生ごみ等の有機性廃棄物及び各種産業排水の処理によって発生する有機性汚泥を、フィルタープレス型の脱水機によって脱水処理する方法に関する。本発明によれば、かかる方法において、脱水機でのフィルターケーキの剥離性の改善及び乾燥効率の向上を達成することができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水処理場、し尿処理場、産業廃棄物廃水処理施設などから発生する汚泥は、高分子凝集剤や無機凝集剤の添加などの調質を行った後に脱水機で脱水し、埋立処分や焼却処分されている。この目的で使用される脱水機として、濾布を備えたフィルタープレスと、フィルタープレス内の圧力を減圧する装置とを備え、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段を備えた装置があり、濾布上に汚泥のフィルターケーキを形成し、これを剥離して回収する。
【0003】
このようなフィルタープレス型の脱水機においては、濾布からの乾燥ケーキの剥離性が悪く、剥離が不完全の状態で剥離作業を終了してフィルタープレスを閉枠せざるをえない状況になったり、あるいはフィルターケーキの表面に、フィルターケーキ内部への伝熱を阻害する薄膜が形成されてフィルターケーキ内部の水分の蒸発効率が低下するという問題があった。
【0004】
フィルタープレス型脱水機におけるフィルターケーキの剥離性を改善する方法の一例としては、フィルタープレス内の圧力とフィルタープレートの温度とを制御することによってフィルターケーキの熱可塑相を回避することで、フィルターケーキの剥離性を改善するというものがある。
【0005】
しかしながら、この方法では、処理対象の汚泥の性状によって効果はまちまちであり、特に余剰汚泥のようにバイオポリマーを多く含む汚泥や、腐敗の進んだ汚泥などの場合には、圧力と温度の制御だけではフィルターケーキの剥離性が全く改善されず、脱水乾燥処理に支障をきたしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、フィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水処理におけるフィルターケーキの剥離性を向上することによってフィルタープレス型脱水機による汚泥の脱水乾燥処理の処理効率を大幅に向上する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の一態様は、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、カレンダー加工を施した織布をフィルタープレス用の濾布として使用することを特徴とする方法を提供する。
【0008】
本発明において用いることのできるフィルタープレス型脱水機としては、例えば、特開2001−232109号公報で開示されているようなものを用いることができる。以下、特許文献4で開示されているフィルタープレス型脱水機の構成を説明する。当該脱水機のフロー図を図1に、脱水機の構成を図2に、脱水機の濾枠の概要を図3に、脱水機内部の構造を図4に、それぞれ示す。
【0009】
図1に示されているように、本発明において用いることのできるフィルタープレス型脱水機は、脱水乾燥装置1、温水ボイラ2及び真空ポンプ3とを備えることができる。汚泥は汚泥供給ライン4に設けられた汚泥供給ポンプ5によって脱水乾燥装置1に供給される。汚泥供給ライン4には開閉弁V1が設置されている。また汚泥供給ライン4は開閉弁V4を具備したセンターブローライン6に接続されている。
【0010】
前記脱水乾燥装置1と温水ボイラ2とは、温水循環ライン7によって相互に接続されている。温水循環ライン7には温水循環ポンプ8及び背圧弁9が設置されている。温水ボイラ2は、加圧媒体としての熱保有流体を供給するための熱保有流体供給装置を構成している。また脱水乾燥装置1には、開閉弁V2を具備した濾液排出ライン10が接続されている。そして、濾液排出ライン10には真空排気ライン11が接続されている。真空排気ライン11には、開閉弁V3、ドレンポット12及び真空ポンプ3が設置されている。さらに脱水乾燥装置1には、開閉弁V5を具備した排泥ライン14が接続されている。
【0011】
図2は、脱水乾燥装置の構成を示す概略正面図である。図2に示すように、脱水乾燥装置1は、複数の濾枠15と、両端部に設置され濾枠15を締め付けるための濾枠締め付け装置16とを備えている。濾枠締め付け装置16により濾枠15を締め付けることにより、隣接する濾枠15間に汚泥を脱水するための濾布により囲まれた(後述する)濾室を形成するようになっている。脱水乾燥装置1は、温水の供給側及び戻り側にそれぞれ温水ヘッダ17A,17Bを備えている。温水ヘッダ17Aは温水循環ポンプ8に接続され、温水ヘッダ17Bは背圧弁9に接続されている(図1参照)。また脱水乾燥装置1は、上述したように、汚泥供給ライン4、センターブローライン6、温水循環ライン7、濾液排出ライン10及び真空排気ライン11に接続されている。
【0012】
図3は、脱水乾燥装置における濾枠の斜視図である。図3に示すように、プレート15はその前後面に張設されたダイヤフラム(弾性膜)18を備えている。プレート15とダイヤフラム18は一体に構成され、プレート自体がダイヤフラムの機能を有していてもかまわない。なお図3においては、プレート15の前面に張設されたダイヤフラム18のみを示す。ダイヤフラム18には濾液をその排出ラインに流すための複数の排水溝18aが形成されている。濾枠15は汚泥が注入される汚泥注入孔19と、プレート15の四隅に形成された濾液排出孔20と、プレート15の上下端部に形成された温水循環孔21とを備えている。
【0013】
図4は、脱水乾燥装置の内部構造を示す図であり、(a)は汚泥の濾過工程を示し、(b)は汚泥の加圧脱水工程を示す。相隣接して設置された複数の濾枠15等によってその間に濾室22が形成され、各濾室22は対向する1対のダイヤフラム18(18a)に支持された濾布23の内部空間として配置されている。なお、濾布23は汚泥注入孔19に対応した箇所に孔が形成されており、この孔によって汚泥が通過でき、各濾室22に汚泥が供給できるようになっている。
【0014】
各ダイヤフラム18は排水溝18aを有して(図3参照)濾布23に当接しており、図4に示すように、隣接する濾枠15の濾液排出孔20は、この排水溝18a内を流下する濾過水を排出するようになっている。即ち、排水溝18aは各ダイヤフラム18と濾布23との間の濾液排出ラインを構成し、濾液排出口20に接続され、更に図示しない外部の真空ポンプに接続されている。これにより、濾布23で濾過された濾液が濾液排出孔20により脱水乾燥装置1の外部に吸引排出されるようになっている。更に、真空ポンプを動作させることで、濾布23の外側のダイヤフラム18の溝18a内は、例えば−0.08MPa程度の減圧雰囲気下に保たれる。
【0015】
本発明にかかるフィルタープレス型脱水機は、上記に説明したような構造のフィルタープレス型脱水機において、濾布23として、カレンダー加工を施した織布を用いることを特徴とする。本発明によれば、織布にカレンダー加工を施したものを濾布として用いることで、濾布の表面がより平滑になり、濾布目への汚泥の食い込みが抑制されるために、フィルターケーキの濾布への付着を回避すると共に、蒸気の通路が確保されることで乾燥速度が改善されると考えられる。更に、本発明の好ましい態様においては、濾布を構成する織布として、モノフィラメント繊維で形成された織布を用いることが好ましい。この目的で用いることのできるモノフィラメント繊維としては、合成繊維、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、アセテート、プロミックス、キュプラ、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエチレン、ポリウレタン、炭素繊維、フッ素繊維などのモノフィラメントを用いることがより好ましい。
【0016】
なお、本発明において用いるのに好適なカレンダー加工の条件は、織布を構成する繊維の種類によって異なるが、一般に繊維の軟化点よりも若干高めの温度でカレンダー加工を行うことが好ましい。また、織布を構成するのに用いるモノフィラメント繊維としては、繊維径が0.1〜0.3mmのものが好ましい。
【0017】
次に、図1乃至図4に示すように構成されたフィルタープレス型脱水機を使用した汚泥の脱水乾燥方法の具体例について説明する。
まず、濾枠締め付け装置16で濾枠15を所定位置に調整し、濾布23,23間に汚泥を注入して濾室22を形成する。汚泥貯槽(図示せず)に貯留されている調質された汚泥を汚泥供給ライン4に設けられた汚泥供給ポンプ5により、最大濾過圧0.5MPa程度にて開閉弁V1を経由して脱水乾燥装置1の中央部から濾室22に、薬注することなく所定時間(例えば60分)打ち込み、濾過工程を行なう。この状態を図4(a)に示す。この汚泥供給位置は上部あるいは下部から打ち込んでもよく、特に限定するものではない。濾布23で固液分離された濾過水はダイヤフラム18に刻まれた溝18a及び濾液排出孔20により濾液排出ライン10に導かれ、開閉バルブV2を経由して系外に排出される。
【0018】
次に、背圧弁9で圧搾圧力を設定した後、温水循環ポンプ8を稼働して濾枠15とダイヤフラム18で仕切られた部屋に、温水ボイラ2で80℃に加温された温水を例えば15分間圧送し、ダイヤフラム18を膨張させて汚泥の圧搾工程を行なう。この圧搾工程は、汚泥の予備加熱と濾室内汚泥をセンターブロー可能な状態、即ち、センターブロー時に各濾室内の汚泥が系外にでないような状態にすることを目的にしている。従って、圧搾時間は汚泥の種類によって変化させることができ、場合によっては省略してもよい。この時、温水温度は70〜90℃であればよいが、この工程では温水の代わりに水を使用してもよく、又、温水の戻りにバルブを設け、このバルブを閉にすることで循環を停止してもよい。
【0019】
次に、開閉弁V1を閉じ、開閉弁V4,V5を開け、圧力0.5MPaの圧搾空気を汚泥注入孔19に吹き込み、センターブロー工程を行ない、各室の汚泥注入孔19に残留する軟弱な汚泥を排出する。排出された汚泥は汚泥貯槽に回収する。
【0020】
センターブロー工程終了後、再び温水循環ポンプ8を稼働し、背圧弁9の設定圧力を好ましくは0.5MPa〜1.5MPaとして濾室内の汚泥を加圧及び加温する。脱水乾燥工程では、上記圧搾工程やセンターブロー工程の加圧圧力よりも更に圧力を高めることが好ましい。この時の温水温度も上記と同様に70〜90℃であることが好ましい。一方、開閉弁V2を閉じ、開閉弁V3を開け、真空排気ライン11を開いて、真空ポンプ3を稼働し、図4(b)に示すように、脱水乾燥工程を行なう。即ち、真空ポンプ3を稼働し、濾液排出ライン10を経由して、濾布外面(濃縮汚泥と非接触側)を減圧雰囲気下におくと、濾室内では圧搾脱水が進行し、同時に濾布内面(汚泥と接触側)に接触する汚泥の乾燥が加圧及び加温により進むことになる。この時の濾室外の減圧圧力は低ければ低いほどよく、−0.08MPa以下が好ましい。
【0021】
即ち、この脱水乾燥工程に到り濃縮汚泥中の水分は力学的な圧搾力による脱水と、加熱による蒸発と、濾布の外側を減圧雰囲気とすることによる脱水との三重の水分除去機能により、濾室22内から除去される。除去された水はドレンポット12で冷却水と熱交換して凝縮する。圧搾・乾燥時間は、汚泥の種類、目標含水率によって異なり、打ち込み汚泥量と各工程で排出される排水量とから演算して決定される。
【0022】
次に、濾枠締め付け装置16を弛め、開枠してケーキ排出工程を行ないケーキを排出する。本発明においては、上記に説明したように、濾布としてカレンダー加工を施した織布を使用しているので、汚泥の濾布目への食い込みが抑制されるためにケーキの剥離性が向上しており、濾布に残留するケーキは殆どなく、清掃工程は全く不要である。
【0023】
本発明方法によって汚泥の脱水処理を行うことによって汚泥脱水ケーキが得られる。得られた汚泥脱水ケーキは、焼却処理、炭化処理、コンポスト処理などにかけることができる。本発明によれば、フィルタープレス型脱水機におけるケーキの剥離性が向上するのに加えて、脱水処理によって形成される汚泥脱水ケーキの含水量を低下させることができる。この結果、例えば汚泥脱水ケーキを炭化処理する場合の燃料消費量を削減することができ、また、汚泥脱水ケーキをコンポスト処理する場合の水分調整材の使用量や、原料・コンポスト製品の乾燥に必要なエネルギー量を削減することができる。更に、汚泥脱水ケーキを焼却処理する場合においても、助燃剤の使用量を削減することができる。
【0024】
本発明は、更に上記の汚泥脱水方法を実施するための装置にも関する。即ち、本発明の他の態様は、フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機であって、カレンダー加工を施した織布がフィルタープレス用の濾布として装着されていることを特徴とする脱水機に関する。
【0025】
本発明の各種態様は以下の通りである。
1.フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、カレンダー加工を施した織布をフィルタープレス用の濾布として使用することを特徴とする方法。
2.モノフィラメントを織布した後、カレンダー加工を施した織布を、フィルタープレス用の濾布として使用する上記第1項に記載の方法。
3.モノフィラメントが合成繊維で形成されている上記第2項に記載の方法。
4.フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機であって、カレンダー加工を施した織布がフィルタープレス用の濾布として装着されていることを特徴とする脱水機。
5.フィルタープレス用の濾布として、モノフィラメントを織布した後、カレンダー加工を施した織布が装着されている上記第4項に記載のフィルタープレス型脱水機。
6.モノフィラメントが合成繊維で形成されている上記第5項に記載のフィルタープレス型脱水機。
【0026】
実施例
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
し尿処理余剰汚泥(固形分濃度19.6g/L)に、ポリ硫酸第二鉄を1.8%asFe添加混合し、続いてポリマー凝集剤(荏原製作所社製、商品名エバクロースB034)を汚泥の固形分に対して0.6重量%添加して調質(凝集処理)を行った後、フィルタープレス型脱水機による脱水処理にかけた。
【0027】
脱水処理は、上記に説明した図1〜図4に示すフィルタープレス型脱水機を用いて行った。まず、膨張破砕物を添加して調質した汚泥を汚泥供給ポンプでフィルタープレスの濾室内に圧入した(濾過工程)。濾過工程でのポンプ圧力を濾過圧力という。濾過工程終了後、温水循環ポンプを起動し、濾枠とダイヤフラムの空間に温水を供給した。このとき、背圧弁で温水圧力を1.5MPaに調整した。温水を供給することでダイヤフラムが変形して濾室内の汚泥が圧搾脱水される(圧搾工程)。圧搾工程での温水圧力を圧搾圧力という。次に、汚泥供給間に残留する未脱水汚泥を圧搾空気でフィルタープレス外に吹き飛ばした(ブロー工程)。温水循環ポンプを再起動し、真空ポンプを駆動させた。真空ポンプは濾液排出ラインに連結されているので、濾液排出ライン、ダイヤフラムに切られた溝を減圧する(脱水乾燥工程)。脱水乾燥工程での濾液ライン及びダイヤフラムに切られた溝の圧力をフィルタープレス圧力といい、真空ポンプの圧力を意味する。この工程の初期には、圧搾力による脱水が主として生じるが、時間経過と共に乾燥による脱水が主として生じるようになる。このとき、水は濾室内圧力に対応する温度で沸騰蒸発するので、圧力が低いほど沸点が低下し、温水温度(85℃)との温度差が大きくなるので熱の移動量が増大し乾燥速度が大きくなる。
【0028】
なお、用いたフィルタープレスは濾過面積4m2の両面加圧方式で、濾室の厚みは30mmであった。濾布として、ポリエステル製モノフィラメント繊維から形成された朱子織の織布にカレンダー加工を施したものを用いた(実施例)。また、比較例として、ナイロン製マルチフィラメント繊維織布の濾布を用いた。
【0029】
実施例及び比較例ともに、フィルタープレスの熱源は85℃の温水とし、温水循環ポンプでダイヤフラムの裏面に循環供給した。真空発生装置は真空ポンプを使用し、フィルタープレス内の圧力を0.01MPaとした。濾過時間は60分、濾過圧力は0.5MPa、圧搾時間は30分、圧搾圧力は1.5MPa、乾燥時間は90分とし、到達ケーキ含水率の測定、及びケーキの剥離性の観察を行った。ケーキの剥離性に関しては、フィルタープレスの開枠及び濾布振盪後に濾布に付着しているケーキの面積割合(ケーキ付着面積/濾布面積×100%)で評価した。結果を表1にまとめる。
【0030】
【表1】

【0031】
濾布として、ナイロンマルチフィラメント繊維の織布を用いた比較例では、ケーキ含水率が57.2%であったが、ケーキの剥離性が悪く、ケーキが割かれた形で両側の濾布に付着してしまった。振盪機での振動による剥離を試みたが、濾布面のほぼ100%にケーキが付着した状態となった。その付着具合も、濾布面にしっかりとケーキが食い込んだ状態であり、スクレーパを用いて人力による剥離を試みたが完全には剥離できなかった。
【0032】
一方、濾布としてポリエステル製モノフィラメント繊維織布にカレンダー加工を施したものを用いた本発明の実施例では、ケーキの剥離性は良好で、フィルタープレスの開枠と同時にケーキの剥離が起こり、振盪機を作動させることによって100%剥離した。これは、モノフィラメント繊維の織布にカレンダー加工を施したことによって、濾布の表面がより平滑となり、濾布目への汚泥の食い込みが抑制され、フィルターケーキの濾布への付着が回避されると共に、蒸気の通路が確保されることにより乾燥速度が改善され、比較例と比べてフィルターケーキの含水率が低下したものと考えられる。
【0033】
以上の実験結果から、本発明にしたがって、フィルタープレス型脱水機の濾布として、モノフィラメント繊維で形成した織布にカレンダー加工を施したものを使用することにより、フィルタープレスでのケーキの剥離性を向上させることができると共に、脱水ケーキの含水量を低減させることができ、その後の焼却処理、炭化処理、コンポスト処理などを極めて良好に実施することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、フィルタープレス型脱水機の濾布として、カレンダー加工した織布、好ましい態様では、モノフィラメント繊維で形成した織布にカレンダー加工を施したものを使用することにより、脱水ケーキの含水量を低減させることができると共に、フィルタープレスにおけるケーキの剥離性を向上させることができる。本発明により得られる脱水ケーキをコンポスト処理する場合、有機物減量が大きいので、従来よりも短期間でコンポスト化することができる。また、脱水ケーキの低含水率化によって、脱水ケーキをコンポスト処理する場合の水分調整材使用量の削減、脱水汚泥や製品コンポストを乾燥する場合のエネルギー使用量の削減を図ることができる。また、脱水ケーキを炭化処理や焼却処理する場合にも、エネルギー使用量の削減を図ることができると共に、二酸化炭素発生量も削減することができ、地球温暖化対策の一助ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機のシステムを示すフロー図である。
【図2】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機の構成を示す概略正面図である。
【図3】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機における濾枠の斜視図である。
【図4】本発明において使用することのできるフィルタープレス型脱水機の内部構造を示す図である。(a)は濾過工程を示し、(b)は加圧脱水乾燥工程を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機によって汚泥を脱水処理する方法において、カレンダー加工を施した織布をフィルタープレス用の濾布として使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
モノフィラメントを織布した後、カレンダー加工を施した織布を、フィルタープレス用の濾布として使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノフィラメントが合成繊維で形成されている請求項2に記載の方法。
【請求項4】
フィルタープレスと、フィルタープレス内を減圧状態にするための減圧装置と、フィルタープレス内の汚泥を加熱する手段とを有するフィルタープレス型脱水機であって、カレンダー加工を施した織布がフィルタープレス用の濾布として装着されていることを特徴とする脱水機。
【請求項5】
フィルタープレス用の濾布として、モノフィラメントを織布した後、カレンダー加工を施した織布が装着されている請求項4に記載のフィルタープレス型脱水機。
【請求項6】
モノフィラメントが合成繊維で形成されている請求項5に記載のフィルタープレス型脱水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−68638(P2006−68638A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255590(P2004−255590)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】