説明

汚泥掻き寄せ装置

【課題】 この発明は、ノッチ部を有するチェーンにおいて用いる汚泥掻き寄せ装置の従動ホイールの改良に関する。
【解決手段】汚泥掻き寄せ装置の駆動ホイールに連動する従動ホイールが、従動ホイールの外周面で軸方向の中央で突出する大径の第1輪部と、該第1輪部の左右両側に段差部を介して左右一対に連設される同心小径の第2輪部とからなり、該一対の第2輪部の外周面上で、従動ホイールの軸線と平行する同一線上に沿って略横倒円柱状の補助ピン部を幅方向に左右一対に設け、該補助ピン部は、第2輪部の外周面に沿って、ノッチチェーンのセグメントのピッチ間隔で等間隔に複数配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂製のノッチチェーンを駆動ホイールに連動して循環動させる従動ホイールを備えた汚泥掻き寄せ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥掻き寄せ装置の無端チェーンの方式として、ローラーチェーンやブッシュドチェーンのバレル部が歯車式の駆動ホイールの歯部と噛み合ってチェーンに動力を伝達する構造、およびフィンランドのフィンチェーン社で開発され、駆動ホイールに取り付けられたピンをノッチチェーンの凹状のノッチ部に噛み合わせてチェーンを回転駆動させるノッチチェーンの構造が知られている。
そこで、本出願人は、従来のスプロケットの歯部であってもノッチ型に対応したピン式であっても、1種類のチェーンでいずれにも噛み合ってチェーンを回転することができる泥掻き寄せ装置のチェーン装置として特許第4245186号を提案し、相応の成果を収めている。
一方、従来のチェーン駆動装置として使用される合成樹脂製の従動ホイール30は、図8に示すように、回転軸を挿入する中央の孔部31aに沿って設けられたボス部31から径方向に延びるフランジ部32を介してチェーンと衝合する外輪部33を支持する構造からなっており、外輪部33には中央に突出する第1輪部34とその左右に延びる小径の第2輪部35を有する構造や、図9に示すように外輪部33に左右両側に突出する一対の大径の外輪部34’とその中間に設けられた小径の第2輪部35’を有する構造、あるいは図示しないが外輪部34’間に金属製のピンを通して固着する構造が知られている。
しかし、上記構成では、チェーンが循環動する場合に、図8の従動ホイール30では第1輪部34がチェーンの隙間に嵌合して横幅方向(従動輪の軸方向)の動きを規制することはできるが回転方向には力が作用せず、図9の従動ホイール30では第1輪部34’間にチェーン全体が嵌合するためスリップを生じるおそれがある。
そして、スリップが生じた結果、第2輪部35または35’とこれに接触するチェーンのサイドリンクの下端面とが、それぞれ部分的に摩耗し、ひいては変形するという不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4245186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は更に、鋭意研究の結果、上記のようなチェーンに適用して、正転時だけでなく逆転時にもチェーンと従動ホイール間のスリップを防止してチェーンの循環動を正確に行わせることができる従動ホイールを開発し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
合成樹脂製のノッチチェーンを駆動ホイールに連動して循環動させる従動ホイールを備えた汚泥掻き寄せ装置において、
汚泥掻き寄せ装置の駆動ホイールに噛合する合成樹脂製のチェーンのセグメントが、チェーン進行方向と直交する方向に対峙する一対のサイドリンク間の間隔の一方を幅狭部とし他方を幅広部とし、各サイドリンクの底面にノッチ部を設けてなり、一方のセグメントの幅狭部を他方のセグメントの幅広部内に嵌合し、双方のセグメントの重なった個所を連結軸で枢着して無端のチェーンを形成しており、
前記駆動ホイールに連動する従動ホイールが、
従動ホイールの外周面で軸方向の中央で突出する大径の第1輪部と、該第1輪部の左右両側に段差部を介して左右一対に連設される同心小径の第2輪部とからなり、
該一対の第2輪部の外周面上で、従動ホイールの軸線と平行する同一線上に沿って略横倒円柱状の補助ピン部を幅方向に左右一対に設け、該補助ピン部は、第2輪部の外周面に沿って、ノッチチェーンのセグメントのピッチ間隔と同一または複数倍の間隔で等間隔に配置されていることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記補助ピン部は、ノッチ部が外嵌した際にノッチ部との間に隙間が生じる大きさに設定されていることを特徴とする。
また、請求項3の発明では、
前記従動ホイールが合成樹脂からなっており、合成樹脂製のノッチチェーンの従動ホイールとして用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明は上記のように、従動ホイールが、中央の第1輪部と左右に設けた小径の第2輪部とからなり、該第2輪部にチェーンのノッチ部のピッチに合わせて補助ピン部を設けているので、前記チェーンが駆動ホイールの駆動力により正転およびまたは逆転方向に循環する際に、従動輪は、チェーンのセグメントを連結する連結軸を第1輪部の外周面に衝合させ、各セグメントの下端を第2輪部の外周面に衝合させ、セグメントのノッチ部に補助ピン部を嵌合させて駆動ホイールによる循環動の障害とならない程度にノッチ部に僅かに掛止めさせることで、駆動輪に倣った循環動を確実に行わせることができる。
このように前記チェーンと従動ホイール間のスリップの発生を抑えることで、特に、従動ホイールの第2輪部とこれに接触するチェーンのサイドリンクの下端面の変形を防止することができ、信頼性及び耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従動ホイールの斜視図である。
【図2】同側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】セグメントを連結した無端状のチェーンの一部を示す側面図である。
【図5】一方の無端チェーンの一部を示す平面図である。
【図6】従動ホールにチェーンが捲回された状態を示す側面図である。
【図7】同断面図である。
【図8】従来の従動ホイールを示す図で(a)は側面図(b)は断面図である。
【図9】別の従来の従動ホイールを示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明は、従動ホイールの外輪部の下段に配置された第2輪部に小径の補助ピン部を設けることで、従動ホイールにより循環するチェーンのノッチ部に僅かな掛止力を作用させて、ノッチ部を有するチェーンの正逆の循環動の確実性を実現した。
以下に、この発明の汚泥掻き寄せ装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
[汚泥掻き寄せ装置]
汚泥掻き寄せ装置は、図示しないが、左右一対の無端チェーンと、該一対の無端チェーンを同期して循環動させるために沈殿槽の側壁側に対向して設けられる複数の一対の従動ホイールと、同じく対向して設けられる一対の駆動駆動ホイールと、前記一対の無端チェーンに一定間隔を置いて掛け渡される複数の掻寄板(フライト)(図4参照)とから構成されており、前記無端チェーンは、双方が同じ軌道を採るようにそれぞれのホイールに巻き掛けられる公知の基本構成からなっている。
【0010】
[チェーンのセグメント]
ここで、使用するチェーンの一例は、前記特許第4245186号公報に準じる構成であって、同一形状のセグメント1を多数連結して構成されている。
このセグメント1は、図4および図5に示すように、一方を幅狭とし、他方を幅広となるように離間して対峙する左右一対のサイドリンク2、2を有している。
該一対のサイドリンク2、2は、本実施例の場合、略中央位置まで幅狭間隔で平行に延びる幅狭部21と、該幅狭部21の端部から漸次幅広に拡開する拡開部22と、該拡開部22の端部の幅広間隔を維持して平行に延びる幅広部23とからなっている。
【0011】
前記幅狭部21では、筒状の第1連結部3によってサイドリンク2、2が連結されている。
そして、第1連結部3の中空と幅狭部21のサイドリンク2、2間を貫通する第1孔部3aが形成されて、第1の軸受形成孔となっている。
次に、前記幅広部23には、各サイドリンク2に一体に形成されて外方へ突出するボス状の第2連結部4がそれぞれ形成されている。
そして、上記第2連結部4と幅広部23には、これらを一連に貫通すると共に、前記第1孔部3aと同径の孔からなる第2孔部4aが形成されて、第2の軸受形成孔となっている。
【0012】
各サイドリンク2、2に形成された第2孔部4aは、同一軸線上に配置されている。
従って、一方のセグメント1の第2孔部4a間に、他方のセグメントの第1孔部3aを同軸線状に揃えることで、第1の軸受形成孔と第2の軸受形成孔が整合して、後述の連結軸5の軸受孔が形成される。
前記幅狭部21の横幅(チェーン進行方向と直交する方向)の外形寸法は、幅広部23の対峙するサイドリンク2、2間の内側寸法より僅かに短く設定されている。
そこで、一方のセグメント1の幅広部23のサイドリンク間の隙間24に他方のセグメント1の幅狭部21を挿入して、一方のセグメント1の第2孔部4a間に、他方のセグメントの第1孔部3aを整合して、連結軸5を通してその両端を第2連結部4側に固定して、セグメント1、1相互を屈曲可能に連結する。
【0013】
連結軸5は、例えば、頭部を有する柱体とし、第2連結部4から抜け出た先端には抜け止めリングを嵌め込んで固定するなどの公知の構成を用いることができる。
上記のようにセグメント1、1同士が連結されることで、各セグメント1には前記第1連結部3から、第2連結部4に連結された他のセグメントの第1連結部3にいたるまで、即ち、幅狭部21の中途位置から拡開部22を含む間隙部Sが設定される。
この間隙部Sは、その横幅が、少なくとも幅狭部21のサイドリンク2、2間の内側寸法を有しており、この間隙部Sを用いて駆動ホイールの歯部(図示せず)を噛み合わせることができる。
【0014】
次に、拡開部22には各サイドリンク2の下方で外方へ突出する厚肉の突出片部7が形成されており、該突出片部7の底面を幅広面にして一連に延びる略凹溝状のノッチ部8が形成されている。
これにより、前記間隙部Sを確保しながら所定幅を有するノッチ部8を形成してノッチ部8と駆動ホイールのピン(図示せず)との接触面積を広げることができる。
従って、駆動ホイールがピンホイールの場合には、上記ノッチ部8にピンを噛み合わせてチェーンを駆動させることができる。
【0015】
上記セグメント1を無端状に多数連結したチェーンは、公知の駆動ホイールと後述の従動ローラ10によって、循環動させることができる。
駆動ホイールは、歯車式でもよいし、前記チェーンのノッチ部8と係合するピン式であってもよい。
【0016】
[従動ホイール]
従動ホイール10は合成樹脂製からなっており、図1〜3に示すように、中央に回転軸を取り付ける孔11aとボス部11を有し、該ボス部11から放射状に延びる複数(図示例では11本)のスポーク部12と、該スポーク部12に支持される円環状の外輪部13とからなっている。
ここでスポーク部12は横断面十字形状からなっている。
【0017】
[外輪部]
外輪部13は、外輪部13の外周面で、軸方向の中央で突出する大径の第1輪部14と、該第1輪部14の左右両側に段差部を介して平行に左右一対に連設される同心小径の第2輪部15とからなっている。
【0018】
[第1輪部]
前記第1輪部14は、その外周面が外輪部13の頂面14aとなり、該頂面14aは平坦な表面からなる縦断面円形状からなっている。
この頂面14aは、チェーンのセグメント1相互を連結する連結軸5の底面が衝合するように高さが設定されている。
【0019】
[第2輪部]
第2輪部15は、外輪部13の底面を構成するもので、前記第1輪部14の内周面14bと一連となる左右一対の内周面15bを有している。
また、第2輪部15の外周面15aは、平坦な表面で、前記台1輪部の頂面14aより小径の縦断面円形状からなっている。
【0020】
[補助ピン部]
前記一対の第2輪部15の外周面15a上には、従動ホイール10の軸線と平行する同一線上に沿って補助ピン部16が同軸線上で左右一対に設けられている。
図示例の場合、前記スポーク部12と同様に11個の補助ピン部16が、左右の第2輪部15に揃って固着されている。
該補助ピン部16は、図示例の場合、中空を有する円筒状からなっており、該補助ピン部16の軸線が従動ホイール10の軸線と平行となるように、横倒状に配置している。
【0021】
本実施例では、上記補助ピン部16は、その上端が前記第1輪部14の頂面14aとほぼ同じ位置で、ノッチ部8の空間よりは小さい径となるように大きさが設定されている。
そして、補助ピン部16は、従動ホイール10にチェーンを捲回した際に、連結されたセグメント1のノッチ部8と整合するように、第2輪部15の外周面15aに沿って、前記ノッチ部8のピッチ間隔と同一または複数倍の間隔で等間隔に配置されている
【0022】
上構成からなっているので、従動ホイール10にチェーンが捲回されると、セグメント1を連結する連結軸5は前記第1輪部14の頂面14aと衝合し、セグメント1の下端は第2輪部15の外周面15aと接し、セグメントのノッチ部8内には前記補助ピン部16がチェーンの回転方向およびノッチ部8の頂部との間にスペースを有して嵌合された状態となる。
【0023】
そこで、駆動ホイールによって循環駆動するチェーンは、従動ホイール10によってセグメント1の下端および連結軸15がそれぞれ第1輪部14の頂面14aと第2輪部15の外周面15aと衝合し、小さな補助ピン部16はノッチ部8内に配置されるので、ノッチ部8は補助ピン部16とのスペースの分だけ規制されることなく自由に移動でき、その範囲を超えると回転方向に規制されることになる。
従って、チェーンの回転方向が正転時に限らず、逆転時においてもノッチ部8に補助的に掛止力を生じさせて、チェーンの循環動をスムーズに行わせることができる。
【0024】
この発明で、ノッチ式チェーンのセグメントの形状は上記実施例に限定されるものではない。またチェーンは正転用、正逆転用のいすれでもよい。
その他、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 セグメント
2 サイドリンク
3 第1連結部
3a 中空孔
4 第2連結部
4a 貫通孔
5 連結軸
5b 金属製の芯棒
7 突出片部
7a ガイド片部
8 ノッチ部
10 従動ホイール
11 ボス部
12 スポーク部
13 外輪部
14 第1輪部
14a 頂面
14b 内周面
15 第2輪部
15a 外周面
15b 内周面
16 補助ピン部
30 従来の従動ホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のノッチチェーンを駆動ホイールに連動して循環動させる従動ホイールを備えた汚泥掻き寄せ装置において、
汚泥掻き寄せ装置の駆動ホイールに噛合する合成樹脂製のチェーンのセグメントが、チェーン進行方向と直交する方向に対峙する一対のサイドリンク間の間隔の一方を幅狭部とし他方を幅広部とし、各サイドリンクの底面にノッチ部を設けてなり、一方のセグメントの幅狭部を他方のセグメントの幅広部内に嵌合し、双方のセグメントの重なった個所を連結軸で枢着して無端のチェーンを形成しており、
前記駆動ホイールに連動する従動ホイールが、
従動ホイールの外周面で軸方向の中央で突出する大径の第1輪部と、該第1輪部の左右両側に段差部を介して左右一対に連設される同心小径の第2輪部とからなり、
該一対の第2輪部の外周面上で、従動ホイールの軸線と平行する同一線上に沿って略横倒円柱状の補助ピン部を幅方向に左右一対に設け、該補助ピン部は、第2輪部の外周面に沿って、ノッチチェーンのセグメントのピッチ間隔と同一または複数倍の間隔で等間隔に配置されていることを特徴とする汚泥掻き寄せ装置。
【請求項2】
補助ピン部は、ノッチ部が外嵌した際にノッチ部との間に隙間が生じる大きさに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の汚泥掻き寄せ装置。
【請求項3】
従動ホイールが合成樹脂からなっており、合成樹脂製のノッチチェーンの従動ホイールとして用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の汚泥掻き寄せ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−115714(P2011−115714A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275005(P2009−275005)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(301003702)アサヒ機装株式会社 (8)
【Fターム(参考)】