説明

汚泥掻寄装置

【課題】汚泥中で使用されるシリンダ駆動方式で発生しがちなシール性の問題を改善することができる汚泥掻寄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】沈澱池1に配置される汚泥掻寄装置であって、牽引芯材28に取り付けられたピストン27と、前後に密封接続部を備えた駆動シリンダ15により構成される機体18と、機体18に取り付けられた汚泥スクレーパ37と、機体18の前進時に汚泥スクレーパ37を掻寄姿勢に切り換え、後退時に非掻寄姿勢に切り換える姿勢切換手段と、駆動シリンダ15の前側に取り付けられる処理部17であって、内部に処理室17aを有すると共に、牽引芯材28の延びた部分が処理室17aを貫通するように配置される処理部17と、を備え、流体制御手段による駆動シリンダ15内への水の注入・排出によって、機体18を牽引芯材28に沿って前進・後退方向に移動可能に構成すると共に、機体18の移動時に、処理室17a内への水の注入・排出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短辺を前後の端壁とし、長辺を左右の側壁とすると共に底壁を備え、この底壁の汚泥掻寄方向である前側の端壁側に汚泥ピットを備えている矩形沈澱池に配置される汚泥掻寄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、矩形沈澱池に流入される汚水は、池内で沈降してゆき、底壁上に堆積する。その堆積した沈澱物は、汚泥掻寄装置により底壁一端のピットまで掻き寄せられて落とし込まれ、外部に排除されるようになっている。
【0003】
そうした汚泥掻寄装置には各種のものがあり、その一つに水シリンダを駆動源としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−131627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の図39ないし図41に開示された汚泥掻寄装置は、水シリンダそのものを機体とし、その先端からロッドが伸びている。機体の前端や中間などには汚泥スクレーパが設けられていて、機体が水シリンダにより前進する際は垂直な掻寄姿勢になり、機体が後退する際は持ち上がった非掻寄姿勢になる。
【0006】
この水シリンダ駆動方式の汚泥掻寄装置は、ロッドをシリンダ前端の孔から前方へ長く伸ばしているため、例えば、前進する際はロッドがシリンダ内に引き込まれるように作動し、その作動時に前記沈澱物である汚泥をも一緒に引き込んでパッキンやロッドなどを傷めてしまったり、水循環経路中に汚泥を持ち込んでトラブルの原因になっていた。そのため、図41のようなベローズをシリンダの先側に付して汚泥を遮断するようにしているが、このベローズは、汚泥が堆積し水圧が作用する環境下で繰返し伸縮するため、汚泥が咬み合って真直ぐなまま伸縮せずロッドと擦れ合ったり、さらには繰返し運動に耐えられず早期交換を要するなど耐久性に大きな課題が出てきた。また、ベローズは力を支えるものではないため、シリンダから長く伸びるロッドに撓みを許し、その結果、シール性に問題が出てきた。
【0007】
本発明は、上記問題を解決しようとするものであり、悪条件である堆積汚泥中で使用されるシリンダ駆動方式において発生しがちなシール性に係る問題を効果的に改善することができる汚泥掻寄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため本発明に係る汚泥掻寄装置は、
短辺を前後の端壁とし、長辺を左右の側壁とすると共に底壁を備え、この底壁の汚泥掻寄方向である前側の端壁側に汚泥ピットを備えている矩形沈澱池に配置され、
前記底壁の上側で、かつ、左右側壁間である池幅中央に沿って前後方向に進退するように配置される汚泥掻寄装置であって、
前記底壁上における池幅中央に沿って配置されたガイドレールと、
ロッドあるいはロッド状部材により形成され、前記池幅中央に沿って軸中心が設定されるように、前記底壁の上側に配置される牽引芯材と、
前記牽引芯材の途中に取り付けられたピストンと、
前後に密封接続部を備えた筒状体として形成され、その内部に前記ピストンを内蔵した駆動シリンダにより構成される機体であって、前記牽引芯材が前後の密封接続部を貫通して前後に延びるように設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられ、前記ガイドレールに沿って走行可能な走行輪と、
前記機体に複数取り付けられ、互いに連動可能な汚泥スクレーパと、
前記機体の前進時に前記汚泥スクレーパを掻寄姿勢に切り換え、後退時に非掻寄姿勢になるように切り換えるための姿勢切換手段と、
前記駆動シリンダの少なくとも前記汚泥掻寄方向である前側に、前記密封接続部を介して取り付けられる処理部であって、内部に処理空間を有すると共に、前記牽引芯材の延びた部分が前記処理空間を貫通するように配置される処理部と、を備え、
流体制御手段による前記駆動シリンダ内への流体の注入・排出によって、前記機体を前記牽引芯材に沿って前進・後退方向に移動可能に構成すると共に、
前記機体の移動時に、前記処理空間内への流体の注入・排出を行うように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
この構成による汚泥掻寄装置の作用・効果は、次の通りである。牽引芯材に沿って機体が前進するときには、汚泥スクレーパは掻寄姿勢にあり、汚泥を掻き寄せて、汚泥ピットの方向に移動させる。牽引芯材に沿って機体が後退する時は、汚泥スクレーパは非掻寄姿勢にある。機体を構成する駆動シリンダ内への流体の注入・排出により機体を前後方向に移動させることができる。さらに、駆動シリンダの前後には密封接続部が備えられ、この密封接続部を介して処理部が設けられる。駆動シリンダとその前後に設けられる処理部は、一体的に前後方向に移動可能である。処理部内には、処理空間が設けられ、牽引芯材はこの処理空間を貫通する形で前後方向に延びた形状を有する。機体が移動する時は、流体制御手段により、処理空間内へも流体の注入・排出が行われる。処理部を設けることで、駆動シリンダ内への汚泥の侵入防止に資することができる。また、密封接続部の近傍や処理空間内の汚泥の除去を行うことができる。その結果、悪条件である堆積汚泥中で使用されるシリンダ駆動方式において発生しがちなシール性に係る問題を効果的に改善することができる。
【0010】
本発明に係る支持部は、補助シリンダであり、前記密封接続部が設けられる側とは反対側の端部に封止部が設けられ、前記牽引芯材が封止部を貫通するように取り付けられ、前記封止部には、補助シリンダの内部と外部を連通させるための貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0011】
牽引芯材は、例えばパッキン等を介して密封接続部や封止部を貫通するように設けられる。仮に、密封接続部あるいは封止部の近傍に汚泥が侵入してきたとしても、処理空間内への流体の注入・排出により、貫通孔から除去させることができる。
【0012】
上記支持部は、先端側に行くほど小径になるように形成されていることが好ましい。これにより、汚泥が先端部分に滞留しないようにすることができる。
【0013】
本発明において、駆動シリンダ内への流体の注入・排出を行う流路を途中で分岐させて前記処理空間への流体の注入・排出を行う分岐流路を構成していることが好ましい。これにより、流路の構成を簡素化することができる。
【0014】
また、前記分岐流路には流路絞りが設けられていることが好ましい。これにより、駆動シリンダ内への流量を確保することができ、機体の前後方向の移動を支障なく行うことができる。
【0015】
本発明において、前記牽引芯材の前後端部において牽引芯材を軸方向に移動可能に受け止める受止部材と、
前記牽引芯材の前端部側の前記受止部材よりも更に前側と、前記牽引芯材の後端部側の前記受止部材よりも更に後側に、それぞれ設けられるストッパーと、を備え、
掻寄時に前側のストッパーが前側の受止部材に当接し、非掻寄時に後側のストッパーが後側の受止部材に当接することで、前記牽引芯材の移動範囲を規制していることが好ましい。
【0016】
掻寄時と非掻寄時において、機体が牽引芯材に沿って移動する時、牽引芯材を完全に固定しておくと、牽引芯材に圧縮力が作用する。このような圧縮力は、牽引芯材に座屈を生じさせることになり、機体の移動に対して支障が生じる。そこで、牽引芯材を「遊び」の分だけ前後方向に移動を許容することで、上記の問題を解消することができる。
【0017】
上記問題を解決するため本発明に係る別の汚泥掻寄装置は、
短辺を前後の端壁とし、長辺を左右の側壁とすると共に底壁を備え、この底壁の汚泥掻寄方向である前側の端壁側に汚泥ピットを備えている矩形沈澱池に配置され、
前記底壁の上側で、かつ、左右側壁間である池幅中央に沿って前後方向に進退するように配置される汚泥掻寄装置であって、
前記底壁上における池幅中央に沿って配置されたガイドレールと、
ロッドあるいはロッド状部材により形成され、前記池幅中央に沿って軸中心が設定されるように、前記底壁の上側に配置される牽引芯材と、
前記牽引芯材の途中に取り付けられたピストンと、
前後に密封接続部を備えた筒状体として形成され、その内部に前記ピストンを内蔵した駆動シリンダにより構成される機体であって、前記牽引芯材が前後の密封接続部を貫通して前後に延びるように設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられ、前記ガイドレールに沿って走行可能な走行輪と、
前記機体に複数取り付けられ、互いに連動可能な汚泥スクレーパと、
前記機体の前進時に前記汚泥スクレーパを掻寄姿勢に切り換え、後退時に非掻寄姿勢になるように切り換えるための姿勢切換手段と、
前記牽引芯材の前後端部において牽引芯材を軸方向に移動可能に受け止める受止部材と、
前記牽引芯材の前端部側の前記受止部材よりも更に前側と、前記牽引芯材の後端部側の前記受止部材よりも更に後側に、それぞれ設けられるストッパーと、を備え、
流体制御手段による前記駆動シリンダ内への流体の注入・排出によって、前記機体を前記牽引芯材に沿って前進・後退方向に移動可能に構成すると共に、
掻寄時に前側のストッパーが前側の受止部材に当接し、非掻寄時に後側のストッパーが後側の受止部材に当接することで、前記牽引芯材の移動範囲を規制していることを特徴とするものである。
【0018】
この構成による汚泥掻寄装置の作用・効果は、次の通りである。牽引芯材に沿って機体が前進するときには、汚泥スクレーパは掻寄姿勢にあり、汚泥を掻き寄せて、汚泥ピットの方向に移動させる。牽引芯材に沿って機体が後退する時は、汚泥スクレーパは非掻寄姿勢にある。機体を構成する駆動シリンダ内への流体の注入・排出により機体を前後方向に移動させることができる。牽引芯材の前後端部には、牽引芯材を受け止める受止部材が設けられ、牽引芯材に設けられたストッパーにより、牽引芯材の前後方向の移動範囲を規制する。掻寄時と非掻寄時において、機体が牽引芯材に沿って移動する時、牽引芯材を完全に固定しておくと、牽引芯材に圧縮力が作用する。このような圧縮力は、牽引芯材に座屈を生じさせることになり、機体の移動に対して支障が生じる。そこで、牽引芯材を「遊び」の分だけ前後方向に移動を許容することで、上記の問題を解消することができる。
【0019】
上記問題を解決するため本発明に係るさらに別の汚泥掻寄装置は、
短辺を前後の端壁とし、長辺を左右の側壁とすると共に底壁を備え、この底壁の汚泥掻寄方向である前側の端壁側に汚泥ピットを備えている矩形沈澱池に配置され、
前記底壁の上側で、かつ、左右側壁間である池幅中央に沿って前後方向に進退するように配置される汚泥掻寄装置であって、
前記底壁上における池幅中央に沿って配置されたガイドレールと、
ロッドあるいはロッド状部材により形成され、前記池幅中央に沿って軸中心が設定されるように、前記底壁の上側に配置される牽引芯材と、
前記牽引芯材の途中に取り付けられたピストンと、
前後に密封接続部を備えた筒状体として形成され、その内部に前記ピストンを内蔵した駆動シリンダにより構成される機体であって、前記牽引芯材が前後の密封接続部を貫通して前後に延びるように設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられ、前記ガイドレールに沿って走行可能な走行輪と、
前記機体に複数取り付けられ、互いに連動可能な汚泥スクレーパと、
前記機体の前進時に前記汚泥スクレーパを掻寄姿勢に切り換え、後退時に非掻寄姿勢になるように切り換えるための姿勢切換手段と、を備え、
流体制御手段による前記駆動シリンダ内への流体の注入・排出によって、前記機体を前記牽引芯材に沿って前進・後退方向に移動可能に構成し、流体の注入・排出流路は、前記牽引芯材内部に形成され、前記牽引芯材の端部と前記駆動シリンダ内を連通するように形成されていることを特徴とする汚泥掻寄装置。
【0020】
この構成による汚泥掻寄装置の作用・効果は、次の通りである。牽引芯材に沿って機体が前進するときには、汚泥スクレーパは掻寄姿勢にあり、汚泥を掻き寄せて、汚泥ピットの方向に移動させる。牽引芯材に沿って機体が後退する時は、汚泥スクレーパは非掻寄姿勢にある。機体を構成する駆動シリンダ内への流体の注入・排出により機体を前後方向に移動させることができる。また、駆動シリンダ内への流体の注入・排出は、牽引芯材の内部を介して行われる。牽引芯材を流路の一部として構成することができ、流路構成を簡素化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示す図2の汚泥掻寄装置平面図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】図2のIII−III線断面図
【図4】図2の水シリンダの拡大断面図
【図5】水シリンダの他の実施形態を示す断面図
【図6】処理部を省いた水シリンダの実施形態を示す断面図
【図7】処理部についての他の実施形態を示す平面図
【図8】図7のVIII−VIII線断面図
【図9】流体給排制御手段の他の実施形態を示す説明図
【図10】駆動シリンダをピニオンラック駆動方式で進退させる例を示す側断面図
【図11】ねじ送り方式で駆動シリンダを進退させる例を示す側断面図
【図12】非常時安全避難方法についての付加的な提案例を示す斜視図
【図13】ガードフレームの他の実施形態を示す正面図
【図14】災害弱者避難方法の他の実施形態を示す斜視図
【図15】災害弱者避難方法の他の実施形態を示す正面図
【図16】タワーから高台への避難方式を示す側面図
【図17】低地から高所への避難方式を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を説明する。各実施形態で説明する構成は、他の実施形態においても適用することができる。
【0023】
図1〜図4において、1は矩形の沈澱池で、矩形の長辺である左右の側壁2と、短辺である前後の端壁3とを有するとともに、図2において左向きに極く緩やかに下がり傾斜する底壁4とを有し、底壁4の左側一端(掻寄方向である前側一端)には汚泥ピット5を備えている。6は汚水の流入部に設けられた整流板である。沈澱池1の図1,2の左側が上流、右側が下流であり、その中間付近の水面7上には、スカム除去装置8が池幅を横断するように固定設置されていて、定期的に水面7上のスカムを呑み込むように作動する。9は下流側に配置される越流堰である。底壁には、基板(不図示)が設けられている。
【0024】
12はガイドレールで、図3に示すように、基板上にアングル(あるいは溝形鋼など)による左右一対のレール本体を備えたもので、図1のように池幅の中央を通るように、図2のように底壁4から汚泥ピット5上に亘るように固定して設けられている。尚、前記基板は、汚泥ピット5上を塞がないように同ピット5上に対応する部分には設けられていない。13は支持部材で、汚泥ピット5内から突設されガイドレール12を下から支えている(図2参照)。
【0025】
15は水(水圧)駆動式の駆動シリンダで、その前後方向の中間に位置するシリンダ本体(シリンダチューブ)16と、その前後に位置するシリンダ型の処理部17と、により1つのシリンダを構成する。これらシリンダ本体16および処理部17は、汚泥掻寄装置の機体18を構成する。これらシリンダ本体16および処理部17が共にシリンダ型であって、これらにより簡略な構造の機体18が構成されているだけでなく、その一部である処理部17が汚泥の侵入防止と除去のために機能する有効な構成になっている。
【0026】
尚、前記駆動シリンダ15はエアーシリンダあるいは油圧シリンダに代替してもよい。駆動シリンダ15を駆動するための流体は、水、エアー、油等を用いることができる。
【0027】
シリンダ本体16および前後に位置する処理部17は、共に同径(180mm前後)の円筒体で形成される。そのうちのシリンダ本体16は、図2に示すストロークSを確保できる程度に長いもの(S+α)とされるとともに、その前後端にはパッキン付きシリンダヘッドである第1フランジ(密封接続部)19が固着されている。シリンダ本体16は、短いもの2本あるいは3本など複数本を溶接一体化して形成してもよい。その場合、短寸の接続スリーブをシリンダ相互間に装着して溶接一体化することもできる。20は前側導水口、21は後側導水口である。
【0028】
処理部17は、第1フランジ19に対する第2フランジ22と端フランジ(封止部)23を備え、これらのフランジ22,23には、外部の汚泥や汚水などが逆浸入しないようなパッキン24を装備する。処理部17の内部は処理室(処理空間)17aとされ、また、端フランジ23には、排水口(貫通孔)25が開けられている。第1および第2フランジ19,22は図示しない止着具により互いに接合されている。処理部17は、図4では2m前後の長いものになっているが、数十cm程度の短いものにしてもよい。この場合、図7に示すような長いフレーム200を別途取り付けて、これを機体18の一部として構成することができる。
【0029】
27は駆動シリンダ15の構成要素であるピストンで、図4のようにシリンダ本体16の前端にあるときが、図1および図2の掻寄(前進)姿勢に入ったときに対応する。図4の破線で示す状態、即ち、処理部17の後端にピストン27があるときが、掻寄姿勢から非掻寄(後退)姿勢に切り換わったときに対応する。なお、実際にはピストン27が移動するのではなく、シリンダ本体16及び処理部17の方が移動する。
【0030】
28は駆動シリンダの構成要素である金属(SUS製)ロッドである牽引芯材で、同牽引芯材28の軸心方向の途中にピストン27が固定される。牽引芯材28は、駆動シリンダ15の内部から第1フランジ19、第2フランジ22のパッキン24を介して処理部17内の処理室17aに延びている。さらに、牽引芯材28は、処理室17aから端フランジ23のパッキン24を介して、前後方向に延びている。
【0031】
この牽引芯材28の前端部と後端部は、ガイドレール12上に突設して配置された固定ブラケット(受止部材)29の通孔29aに通されて、軸方向に移動可能に支持されている。牽引芯材28の前後端にストッパ30を装備することにより、このストッパ30が固定ブラケット29に当たることにより、前進・後退時にそれぞれ牽引力を受けるようになっている。前側のストッパー30は、前側の固定ブラケット29よりも更に前側に設けられ、後側のストッパー30は、後側の固定ブラケット29よりも更に後側に設けられる。
【0032】
通孔29aは、牽引芯材28に上下の移動を許すように、上下に長い長孔やバカ孔等により形成されている。また、図4に示す掻寄時には、牽引芯材28の左側(前側)が引っ張られて前側のストッパー30が前側の固定ブラケット29に当たる一方、牽引芯材28の右側(後側)は、ストッパー30を固定ブラケット29に当てると圧縮作用が働くため、それを防ぐため右方向に自由に動いて牽引芯材28に座屈が発生しないようにしてある。そのため、図4の右側にeで示すように、固定ブラケット29とストッパー30との間には、移動による隙間(遊び)が設けられている。ピストン27が図4の破線の状態、即ち、非掻寄(後退)を開始するときは、後側のストッパー30が後側の固定ブラケット29に当たり、牽引芯材28の左側はフリーな状態となる。これにより、牽引芯材28には、常に単純な引張力が作用するのみであるので、座屈が作用しないことになる。尚、各ストッパー30は牽引芯材28に止め付けられているが、移動調節可能としておけば好適な隙間eを得ることができるようになる。固定ブラケット29とストッパー30との前記構成は、それのみで独立した発明を構成するものである。そのことから固定ブラケット29とストッパー30の構成は、図6に示すように、処理部17を備えない駆動シリンダ15に対しても適用することができる。
【0033】
機体18の前後方向における端部と中間部において、機体18の各両側には、図1および図2に示すように、取付台33が一体化されている。これら取付台33を介して前後3組をなすように走行輪34が取り付けられていてガイドレール12上で転動するようになっている。尚、ガイドレール12を省略して走行輪34を直接底壁4上で転動させるようにしてもよい。取付台33の他の個所には軸受35が左右一対固定され、これらの軸受35を介して回転自在に挿通されたスクレーパ軸36には、汚泥スクレーパ37が取り付けられている。
【0034】
この汚泥スクレーパ37は前後に3枚設けられ、その前後の間隔はLに設定されるとともに、実線で示すように垂直な掻寄(前進)姿勢と、破線で示すように前上がりの非掻寄(後退)姿勢とに切換自在となっている。前記間隔Lは、ピストン27とシリンダ本体16によるストロークSよりは短く設定されている。これら3つの汚泥スクレーパ37は、図2に示す連動レバー38と連動リンク39とによって連動するようになっている。汚泥スクレーパ37と連動レバー38は、スクレーパ軸36周りに一体的に回転可能である。
【0035】
40は前ストッパ(姿勢切換手段の一つ)で、前端の汚泥スクレーパ37が前進して最後の段階になった際に、連動レバー38と当たって、汚泥スクレーパ37を持ち上げて水平な非掻寄姿勢に切り換える。41は後ストッパ(姿勢切換手段の一つ)で、後端の汚泥スクレーパ37が後退して最後の段階になった際に、連動レバー38と当たって、汚泥スクレーパ37を垂直な掻寄姿勢に戻すように作用する。前記連動レバー38あるいは連動リンク39には、掻寄姿勢と非掻寄姿勢への切り換え動作と切換後の各姿勢を安定に保持するためのバランサあるいはスプリングを姿勢切換手段の一つとして組み合わせることができる。
【0036】
尚、この汚泥掻寄装置は、図1ないし図4に示す掻寄姿勢では、汚泥スクレーパ37が垂直になっており、その状態から前側導水口20に水が注入されると、シリンダ本体16および処理部17が前向きに動き、ストロークSの手前までくると前ストッパ40により汚泥スクレーパ37が持ち上がって非掻寄姿勢に切り換えられる。図2の実線の掻寄姿勢の状態時のスクレーパ軸36の位置がA,B,Cとすると、破線の非掻寄姿勢の状態時のスクレーパ軸36の位置はA1,B1,C1のようになる。従って、先端のスクレーパ軸36(A1)は汚泥ピット5上にきて、汚泥スクレーパ37により汚泥を汚泥ピット5に掻き落とす。一方、2本目のスクレーパ軸36(B1)と3本目のスクレーパ軸36(C1)は、それぞれ先端のスクレーパ軸36(A)および2本目のスクレーパ軸36(B)の前方にきて、そこまで汚泥を掻き寄せたことになる。すなわち、その掻き寄せた汚泥は、復帰して図2のようになった汚泥スクレーパ37により、次の段階において前方へ掻き寄せられることになる。このことは特開2006−205147号公報や特開2005−131627号公報においても開示されているように、短いストロークSであっても後方の汚泥を汚泥ピット5まで確実に掻き寄せられる点で有効な方式とされる。なお、長さSは、長さLよりも少し長くなるように設定されている。
【0037】
掻寄姿勢で前進している状態及び方向は図2に矢印Xで示し、汚泥スクレーパ37が持ち上がって非掻寄姿勢で後退している状態及び方向は図2に矢印Yで示す。前記汚泥スクレーパ37が持ち上がったあと、後側導水口21から水が注入されると、シリンダ本体16および処理部17は右向きに作動し、その後退端において、連動レバー38が後ストッパー41に当接することにより前方回転されると、汚泥スクレーパ27は垂直な掻寄姿勢に切り換えられる。
【0038】
シリンダ本体16の前寄り両側には支柱架台44が立設されている。この支柱架台44の上に立設された支柱45は水面7よりも上に突き出し、その上端には、図3に示すようなパイプ製の横架材46が取り付けられている。この横架材46には、ノズル47が配備されてスカム送りのための水噴射が一定のタイミング(横架材46が図2の右方向に移動する際)でなされるようになっている。勿論、ノズル47からの水噴射は、往復全ての行程においてなされるようにしてもよい。
【0039】
横架材45の一方の端部には、図3のような切換弁48が設置され、その一側にはローラー付き切換レバー49が付設されている。この切換レバー49は、第1切換位置と第2切換位置の2つの位置を保持し得る方式のものである。この切換レバー49に対する当り片50は、側壁2の面から突設されている。図1、図2に示すように当り片50は前後の2箇所に設けられている。
【0040】
51は流体給排制御手段である。同制御手段51において52はフィルター、53は制御装置付き水ポンプであり、水処理施設内を流れあるいは貯留される汚水あるいは浄水をポンプアップして次のフレキシブルタイプの送水チューブ54に送るとともに、配管ステー55内を通じて前記切換弁48のポートへ給水するようになっている。尚、スカム除去装置8は、独自の電動あるいは水シリンダなどの駆動手段57にチェーン58などを介して駆動アーム59により堰60を押下げて水面7上の浮遊スカムを呑みこむようにしてある。そのため、手動アーム61による操作が駆動手段57側とは独立してできるようになっているが、前記支柱45側の接近により堰60が下がり連動するようにし、堰60の浮力で復帰自在に構成してもよい。
【0041】
図1ないし図4の状態は非掻寄(後退)状態から復帰し掻寄(前進)状態に切り換わったタイミングを示す。切換レバー49は、図2のように後側の当り片50に当たって切換弁48を図3のストレート回路に切り換える。それに伴い、支柱45内を通された支柱内(支柱外でもよい)配管63を通じて前側導水口20に矢印aのように注水され、また後側導水口21からは矢印aのように排水されて供給源に戻される。この注水により、機体18は図2の矢印X方向に前進する。先行する連動レバー38が前ストッパー40に当たると、汚泥スクレーパ37は水平な非掻寄姿勢に切り換えられる。これと同時に水面上では切換レバー49が前側の当り片50に当って切り換えられる。これにより、切換弁48は図3のクロス回路に切り換えられる。従って、図4における後側導水口21に矢印bのように注水がなされ、前側導水口20から矢印bのように内部の水が排出されて戻される。この戻される水は、図4のbのようにスカム送りとして使われる。汚泥スクレーパ37が持ち上がったままシリンダ本体16および処理部17は後退し、最も後の連動レバー38が後ストッパー41に当接して、前向きに切り換えられることにより掻寄姿勢になる。ノズル47からの水噴射は、図4の戻り水を利用しているが、水ポンプ53から切換弁48を通じて直接噴射するようにしてもよい。
【0042】
前後の処理部17には、牽引芯材28の撓みを防止する機能があるが、パッキン24の個所での摺動は前記したように摩耗の原因になり好ましくない。その原因は外部汚泥や汚水の流入によるものであるが、その流入を防止するため、処理部17内に前記とは別配管によって注水をして内部洗浄をして解決する方法の他に、図4に示すように、前側導水口20および後側導水口21に通じる絞り64付きバイパス管65を通じて注水し、排水口25から排水することにより常時内部洗浄するようにしてもよい。絞り64を設けることで、処理部17内への流量を抑制し、駆動シリンダ15への流量を確保することができる。
【0043】
排水口25からの排水は圧水であるので、牽引芯材28周りのパッキン24の前に相当する個所に噴射すると堆積汚泥が処理室17a内に侵入するのを阻止することができる。そのことから、排水口25は、図5の左下欄に示すように、端フランジ23の中央寄りに開設することがある。また、処理部17の先端形状については、牽引芯材28に直角な平坦面でなく、図5の左下欄に破線で示すように半球状のものにしておけば、前方からの汚泥が球面に沿った形で排除されるようになり、処理室17a内への侵入を阻止することが可能になる。
【0044】
尚、前記ガイドレール12は、底壁4との間に介装した防振ゴムなどの緩衝材により地震対策をすることができる。また、前記汚泥スクレーパ37は垂直と水平に切り換えられるが、従来は、装置を池の内に設置して走行テストをした際に、池の上からその切り換え状態を確認できなかった。従って、その確認のため、汚泥スクレーパ37が切り換わった際に、そのことを池の上に知らせるため、例えば、エアーを水中に噴射したり水上で音を発生させるようにしてもよい。
【0045】
また、前記シリンダ本体16は、その内周にホーニング仕上げがなされるのが一般的であるが、現状ではそのホーニング長さは4m前後が限度となっている。シリンダ本体16としては、図4に示すように4mをかなり越えて、例えば、9mや10mといった長いものが必要となるのが通例であるが、そうした場合には、前記のようにホーニング済みの短いものを溶接で接いで長いシリンダ16に仕上げることができる。また、その他、図5に示すように、4m前後の短い長さLa、Lbのシリンダ本体16a、16bを複数本、フランジ65で接合してホーニング済みの1本シリンダ本体16とするようにしてもよい。この場合、3本のシリンダ本体16a、16b、16bを接いでいるが、その本数はこれに限定されず、2本であったり、4本以上であることもある。
【0046】
さらに、前記牽引芯材28の他の実施形態としては、その全体あるいは一部をカーボンシャフトとして実用化されている炭素繊維(炭素繊維強化炭素複合材料を含む)やその他ナイロン繊維などを基材として成形されたロッド状部材とすることができる。この場合、表面にコーティングを施して滑り性能等を改善することができる。
【0047】
また、前記牽引芯材28は、中実状のものであったが、流体制御手段の一部として牽引芯材28を流体通路を有するパイプ状の水あるいはエアーの配管用として構成することができる。牽引芯材28をパイプにする場合、図4において、前後端に切換弁48からの配管(チューブも可能)67を接続し、牽引芯材28の左側端部を通じてピストン27の左側注入域に水あるいはエアーを導入可能とする。一方、牽引芯材28の右側端部を通じてピストン27の右側注入域に水あるいはエアーを導入可能とすることができ、構造の簡易化が可能になる。この場合、切換弁48は池の上の定位置に設置しておき、その切り換え機構は、支柱45の前後進の端に対向する検知スイッチとそれに連動するバルブ切換手段(ソレノイド等)により簡易に構成される。このように牽引芯材28をパイプ状とすることによって、給水チューブ54や移動式支柱45などの可動な手段により流体制御手段を構成していたものが、図3のように支柱45を利用することなく、全て定置式の装置および配管でもって流体の注入・排出ができるようになる。この場合、機体18の前進端および後退端に対向するように検知スイッチを配備して切換弁48を切換連動させるようにすれば流体の注入・排出制御が可能となる。
【0048】
<処理部の別実施形態>
図7および図8は処理部17についての他の実施形態を示す。同実施形態は、駆動シリンダ15の前端に備えた密封接続部19の更に前側に設けた処理部17を先端に行くほど細くなった砲丸殻形として形成した。これにより、汚泥が処理部17の先端に滞留しないように排除できるようにしたものである。さらに、その先端口は噴出口として機能し、牽引芯材28周りに水噴射できるようにすることで汚泥の侵入を阻止するとともに、仮に侵入しても排出できるように構成してある。この処理部17は、図8の下欄に示すように円錐殻状にしてもよい。いずれにせよ、先端に行くほど小径になるように構成すればよい。
【0049】
尚、この処理部17はその形状および長さを考慮すると、機体18を構成しない。この場合は、駆動シリンダ15側から前方へ突き出すようなフレーム200を取り付けて機体18の一部とし、このフレーム200を介して走行輪34や図示しない汚泥スクレーパ37などを取り付けるものとする。このフレーム200の先端は半円形あるいは山形としておくことで前方からの汚泥を切り分けて処理部17の方へ汚泥が入らないようにすることができる。フレーム200は、板状の部材により形成され、図8における側面視では牽引芯材28を覆っているが、図7に示す平面視では、牽引芯材28が露出した状態になる。
【0050】
<流路の別実施形態>
図9は他の実施形態を示す。沈澱池202など水処理施設内を流れる水、あるいは貯留の水源からの水はそのままでは駆動シリンダ15の駆動用としては圧力不足である。そのため、水源の水を圧力水とする必要がある。図9はそのための方法を示す。203は駆動モーター、204は水ポンプ、205は第2フィルタ、206は水源207内の第1フィルタで、水ポンプ204が駆動されると水源207からの貯留水が、給水配管208に送られるようになっている。209はアキュムレータ、210は第3フィルタであり、切換弁211を通じて配管212に通じている。切換弁211は2ポジション弁タイプであり、図示は掻寄のためにストレート切換ポジションになっている。213はチェック弁付き絞り弁で、配管214側にも同じく設けられている。215はリミットスイッチで、機体18が図の左端と右端に来た時にそれぞれ作動するように対向配置され、このスイッチ215により切換弁211がポジション切換されるようになっている。切換弁211は、停止ポジションのある3ポジション弁タイプとすることもある。
【0051】
前記水ポンプ204を駆動するには、ソーラー発電装置216による方法と、風力発電装置217による方法と、水源利用型の水車218により発電する方法とがある。これらの方法はそのうちの1つでもよく組み合わせてもよい。219はバッテリである。水車218による方法は、クランク220を介してシリンダ221を駆動し水源からの水を圧水に変換して水ポンプ204に供給する方法にしてもよい。これらのいずれか、あるいは併合して水ポンプ204を駆動する。
【0052】
図9には、掻寄時において、配管212から送り込まれた水は、牽引芯材28の前端を介して牽引芯材28の内部流路を通り、ピストン27と密封接続部19の間の空間に注入される。空間に注入するために、牽引芯材28の表面には不図示の孔が形成される。非掻寄時においては、逆のルートで配管212から水が排出される。牽引芯材28の後端に接続される配管214に関しても、同様の作用をする。
【0053】
尚、図9の下欄に掻寄姿勢終了際の様子として示す汚泥掻寄装置は、前記実施形態とは一部異なる構成とされている。同装置は、底壁4における池幅中央に丸ロッド状あるいは丸パイプ状をした左右一対からなるガイドレール12を平行になるように固定配置し、そのガイドレール12上に機体230側の走行輪231を転動させることで前進・後退運動を可能としてある。走行輪231は、ガイドレール12に略適合する半円状断面の外周溝を有するもので、ガイドレール12に対応した左右一対のものを前後複数対(図例では4対)機体230の両側を介して配備したものある。ガイドレール12は外周が丸く形成されているので、汚泥が上面に溜まらずに落ちる傾向となる。その結果、その上を転動する走行輪231も常に汚泥溜まりのない状態で走行可能となるため、機体230は後述する駆動シリンダ234を含めて安定走行し、汚泥スクレーパ238までも左右振れの少ない安定姿勢を保ち、掻き残しを少なくして安定確実に汚泥を掻き寄せることができる。
【0054】
このことは図7および図8に示す実施形態でも同様に言える。機体230は、前後に密封接続部233を備えた駆動シリンダ234を池幅中央における底壁4より少し上側を通るようにして備え、この例では駆動シリンダ234が前部の機体部分を構成している。このように駆動シリンダ234を機体230の前部として構成した場合、機体230の前部が重くなるので、機体230が安定走行し、汚泥スクレーパ238も掻き残しが少なく、確実な掻き寄せ運動をすることができる。
【0055】
しかし、同駆動シリンダ234は、機体230の後側に配置して機体の後部を構成するものとしてもよい。駆動シリンダ234を機体230の後部として構成すると、駆動シリンダ234の前側の密封接続部233は、汚泥沈降量の少ないところを進退するので、密封接続部233からの汚泥の侵入のおそれを少なくすることができる。235は前端ブラケットで、上からみると前方に伸びた左右一対の部材とからなり、この前端ブラケット235を介して前端の走行輪231を装備し、また軸受236を介してスクレーパ軸237および汚泥スクレーパ238を取り付けてある。239は連動レバー、240は連動リンクである。第2段目の走行輪231や汚泥スクレーパ238などは、駆動シリンダ234の後寄りの外周を介して装備してある。
【0056】
242は駆動シリンダ234よりも小さい径で長いパイプとした接続ボディで、機体230の後部を構成し、その前端は駆動シリンダ230の後部である密封接続部233の上部位置にフランジを介して密閉状にかつ脱着自在に接続される。接続ボディ242の後端は密閉されている。この接続ボディ242の外周を介して第3段目、第4段目となる走行輪231やスクレーパ軸237、汚泥スクレーパ238および連動レバー239などを装備する。前後の連動レバー239は、連動リンク240により連動自在に連結されている。前方に配置した前ストッパ244に連動レバー239と連動リンク240の連結部が当たることで、図示した掻寄姿勢から前上がりの非掻寄姿勢に切り換わり、後方に復帰した際には図示しない後ストッパに後部の連結部が当たることで掻寄姿勢に戻されるようになっている。
【0057】
各連動レバー239は、図示しない水圧シリンダにより同時作動可能にして汚泥スクレーパ238を掻寄姿勢と非掻寄姿勢に切換可能にすることがある。しかし、連動レバー239にバランサを付して前後に切り換える方式の方が構造を簡略化することができ、しかも、トラブルの発生も少なくなる。246はロッド状の牽引芯材であり、前後の固定受材247に軸方向に移動可能に受け留められると共に、前述のように、ナットなどのストッパ248により座屈しないように構成されている。249はピストンで、牽引芯材246における駆動シリンダ234内に相当する位置に内蔵して設けられている。この牽引芯材246は、前端からピストン249の手前に開通する流体通路を備えて前記配管212に連通する一方、後端からピストン246の後側まで開通する流体通路を備えて他方の配管214に連通するようにしてある。この牽引芯材246を通じての連通方式に代えて、図9に破線で示すように前側導水口250および後側導水口251に配管212,214をそれぞれ連通させる方式としてもよい。
【0058】
尚、切換弁211の戻りポートからはタンクなどの容器にシリンダ水が廃棄あるいは貯留されるようになっているが、水ポンプ204にシリンダ水を戻し、内循環させる方式としてもよい。このことは他の実施形態でも適用できる。
【0059】
また、図9の流体給排制御手段は、図2に示す汚泥掻寄装置と組み合わせて構成することができる。
【0060】
<水シリンダ以外の実施形態>
図10は同じくシリンダ(筒体)を使用するもので水シリンダ以外の他の駆動方式による実施形態を示す。底壁4上に敷設されたガイドレール12上には、前後対向状をなす固定受材29が突設され、これらの間には、牽引芯材であるラック部材70が渡されている。このラック部材70は丸軸あるいは角軸などでなり、その上側一部には、ラック71が形成されている。ラック部材70の外周には、丸あるいは四角筒状で機体を兼ねるシリンダ72が設けられているとともに、このシリンダ72は、その前後端に備えたガイドローラー73を介して前後に進退可能になっている。シリンダ72の後側(図の右側)上部には窓口を介して駆動ピニオン74が回転自在に支持され、このピニオン74が、矢印x、y方向に回転駆動されることでそれに噛み合うラック71を固定側としてシリンダ72を掻寄方向Xあるいは非掻寄方向Yに進退させるようになっている。ピニオン74の上はカバー75で密閉されている。カバー75の外部には、減速機構つき水中モーターである駆動手段76が装備されている。駆動手段76の配電コードについては図示省略されている。
【0061】
図10は装置が後退したあとこれから掻寄を始める状態を示す。駆動手段76によりピニオン74が矢印x方向に駆動されると、ラック71は固定されているので、その反作用でシリンダ72は前進し、汚泥スクレーパ37により掻寄がなされる。前進端においては、連動レバー38が前ストッパ40に当たることで汚泥スクレーパ37は持ち上がり、非掻寄姿勢(後退姿勢)となる。ピニオン74がy方向に回転されると、汚泥スクレーパ37が持ち上がったまま後退してゆき、最後に後の連動レバー38が後ストッパ41に当ることで図10の掻寄姿勢に戻される。尚、シリンダ72の前後には前記のような処理部を設けることができる。
【0062】
図11は他の実施形態を示す。同実施形態において79は牽引芯材であるねじ軸で、全体はロッド状であるがその一部にねじ80が形成されている。このねじ軸79は、前後を固定受材29により固定されている。81はシリンダで、その一部に開けられた開口はカバー82で閉止され、同カバー82内には、減速機付きモーターである駆動手段83により回転駆動される駆動ギア84が設けられている。同ギア84には、ねじ80に螺合しつつ軸方向にシフトするシフトギア85が噛み合っている。両ギア84,85は、常に同列の関係を保つ。
【0063】
駆動ギア84が一方向に回転駆動されることでシフトギア85は回転しながら矢印X方向にシフトし、これにより、シリンダ81もX方向である掻寄方向に前進してゆく。同装置も図10のような掻寄状態から非掻寄状態への切換えがなされ、そのあと駆動ギア84が前記とは逆方向に回転駆動されることでシフトギア85は前記とは逆方向に回転しながら矢印Y方向へシフトし、これにより、シリンダ81を非掻寄方向へ後退させてゆく。後退後、図10と同様の切換がなされて非掻寄状態から掻寄状態へ戻される。
【0064】
図12は付加的な提案例で、津波や洪水などが襲ってきた場合に狭い住宅路地100から近くの高台101まで安全に避難できるようにする避難方式である。津波や洪水などの非常事態にあって近隣の人が高台101まで逃げて避難しようとすると、その間、家屋102や塀、ブロック103、電柱104などが倒れていたり、あるいは瓦が落ちていたりする。また、避難路が地割れしていたり水道管やガス管などが損壊して噴出していたりするため、非常に危険である。
【0065】
そのためには避難路が安全であるように確保することが必要である。そこで、図12の安全避難路構造に示すように、固定基板106付きで鉄骨アーチ型の主ガードフレーム107…を多数用意して、固定基板106へのアンカー固定により、これらフレーム107…を路地100に沿って間隔をおいて立設配備し、これらの主ガードフレーム107…の頂部やその両脇部には、上部ガードフレーム108が長手方向に連続するようにして連結一体化するとともに、さらに側面部には、一部を残して側面ガードフレーム109を連結一体化して、家屋102や電柱104、ブロック103などが脇から倒れ掛かってきても避難する人がそれから防護されるようにしてある。
【0066】
側面ガードフレーム108の一部が切れているのは、その近くの人がそこから入れるようにしているためで、その切れている個所には開閉自在なガードフレームを装備しておけばより安全が確保される。また、瓦などの落下物に対応するため、この防護装置の上面その他の面には、耐熱製防護メッシュ110が覆われている。これらの装置は近隣の家屋で発生する火災に対応する必要があり、そのため、路地100近くには、非常用水タンク112を常備しておき、そこからバルブ113を通じて配管に兼用した上部ガードフレーム108の1本を通じて放水可能にしてある。装置の側面はX形補強材114で補強する方法もある。尚、115は「避難路」などの標識プレート、116は避難路内のLED照明を示し、装置に付した(図示省略)ソーラー発電で照明を可能にする。
【0067】
前記装置は図13に示すような逆V字形をした主ガードフレーム118にしてもよい。この場合、頂部は、同図右欄のように一体折り曲げ構造にしてもよい。さらに、コの字形主ガードフレーム119にしてもよい。
【0068】
図14は老齢者などの災害弱者122を安全避難路構造内を利用して椅子123に座ったまますべり避難させるようにした一例を示す。124は主ガードフレーム、125は上部ガードフレーム、126は天面防護メッシュ、127は側面ガードフレームで、側面ガードフレーム127を利用してローラー128付き椅子123を移動可能に装備し、この椅子123を牽きロープ129により引っ張ることで安全な空間を通じて高台まで避難できるようにしてある。椅子123はバッテリ走行式にしてもよい。この方式は、路地以外に高台へ至る傾斜面にも適用できる。
【0069】
また、椅子123を備えた台車130を、図15に示すように、路地131上に敷設したガイドレール132上に走行輪133で移動可能にして避難できるようにしてもよい。この場合も引っ張る方式とバッテリ自走式を選択できる。この方式は、路地以外に高台へ至る傾斜面にも適用できる。台車130には車椅子を載せることもできる。
【0070】
図16は津波・洪水時の避難システムについての付加的な提案例を示し、135は一次避難タワーで、近隣にも他のタワー135が複数基立設されている。このタワー135は、本体136と上部の第1避難部137および昇降手段(簡易エレベータ)138とが設けられている。階段やスロープなどの他の昇降手段を設けることもできる。第1避難部137には、縦軸周りに回転する第1ホイール139が設けられている。
【0071】
一方、山や丘などの高台の第2避難部140にも縦軸周りに回転する第2ホイール141が設けられ、前記第1、第2ホイール139,141間には手動操作あるいはバッテリなど電動で循環動する避難ワイヤ142が掛け渡されている。このワイヤ142には、第1、第2避難部137,140に到着した際に乗り込むことのできるゴンドラ143が吊り掛けられてワイヤ142に同調して移動可能になっている。
避難者はまず一次避難タワー135に登って避難が可能である他、同避難部137からゴンドラ143に乗ってより安全な第2避難部140まで避難することができる。
【0072】
図17は他の付加的な提案例を示す。145はホイールフレームで、低地と高台のそれぞれに設置され、同フレーム145には、縦軸周りに設けたホイール146にギア147が取り付られ、同ギア147を回転駆動するためのピニオン148も装備されている。これらホイール146間に掛けられたワイヤ147にはゴンドラ149が吊り掛けられている。ピニオン148は、手動で回したり電動で回したりすることができる。
この装置によれば、低地から高台へ安全に避難することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 沈澱池
2 側壁
3 端壁
4 底壁
5 汚泥ピット
12 ガイドレール
15 駆動シリンダ
16 シリンダ本体
17 処理部
17a 処理室
18 機体
19 第1フランジ
20 前側導水口
21 後側導水口
27 ピストン
28 牽引芯材
29 固定ブラケット
30 ストッパー
37 汚泥スクレーパ
38 連動レバー
40 ストッパー
48 切換弁
49 切換レバー
50 当り片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺を前後の端壁とし、長辺を左右の側壁とすると共に底壁を備え、この底壁の汚泥掻寄方向である前側の端壁側に汚泥ピットを備えている矩形沈澱池に配置され、
前記底壁の上側で、かつ、左右側壁間である池幅中央に沿って前後方向に進退するように配置される汚泥掻寄装置であって、
前記底壁上における池幅中央に沿って配置されたガイドレールと、
ロッドあるいはロッド状部材により形成され、前記池幅中央に沿って軸中心が設定されるように、前記底壁の上側に配置される牽引芯材と、
前記牽引芯材の途中に取り付けられたピストンと、
前後に密封接続部を備えた筒状体として形成され、その内部に前記ピストンを内蔵した駆動シリンダにより構成される機体であって、前記牽引芯材が前後の密封接続部を貫通して前後に延びるように設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられ、前記ガイドレールに沿って走行可能な走行輪と、
前記機体に複数取り付けられ、互いに連動可能な汚泥スクレーパと、
前記機体の前進時に前記汚泥スクレーパを掻寄姿勢に切り換え、後退時に非掻寄姿勢になるように切り換えるための姿勢切換手段と、
前記駆動シリンダの少なくとも前記汚泥掻寄方向である前側に、前記密封接続部を介して取り付けられる処理部であって、内部に処理空間を有すると共に、前記牽引芯材の延びた部分が前記処理空間を貫通するように配置される処理部と、を備え、
流体制御手段による前記駆動シリンダ内への流体の注入・排出によって、前記機体を前記牽引芯材に沿って前進・後退方向に移動可能に構成すると共に、
前記機体の移動時に、前記処理空間内への流体の注入・排出を行うように構成したことを特徴とする汚泥掻寄装置。
【請求項2】
短辺を前後の端壁とし、長辺を左右の側壁とすると共に底壁を備え、この底壁の汚泥掻寄方向である前側の端壁側に汚泥ピットを備えている矩形沈澱池に配置され、
前記底壁の上側で、かつ、左右側壁間である池幅中央に沿って前後方向に進退するように配置される汚泥掻寄装置であって、
前記底壁上における池幅中央に沿って配置されたガイドレールと、
ロッドあるいはロッド状部材により形成され、前記池幅中央に沿って軸中心が設定されるように、前記底壁の上側に配置される牽引芯材と、
前記牽引芯材の途中に取り付けられたピストンと、
前後に密封接続部を備えた筒状体として形成され、その内部に前記ピストンを内蔵した駆動シリンダにより構成される機体であって、前記牽引芯材が前後の密封接続部を貫通して前後に延びるように設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられ、前記ガイドレールに沿って走行可能な走行輪と、
前記機体に複数取り付けられ、互いに連動可能な汚泥スクレーパと、
前記機体の前進時に前記汚泥スクレーパを掻寄姿勢に切り換え、後退時に非掻寄姿勢になるように切り換えるための姿勢切換手段と、
前記牽引芯材の前後端部において牽引芯材を軸方向に移動可能に受け止める受止部材と、
前記牽引芯材の前端部側の前記受止部材よりも更に前側と、前記牽引芯材の後端部側の前記受止部材よりも更に後側に、それぞれ設けられるストッパーと、を備え、
流体制御手段による前記駆動シリンダ内への流体の注入・排出によって、前記機体を前記牽引芯材に沿って前進・後退方向に移動可能に構成すると共に、
掻寄時に前側のストッパーが前側の受止部材に当接し、非掻寄時に後側のストッパーが後側の受止部材に当接することで、前記牽引芯材の移動範囲を規制していることを特徴とする汚泥掻寄装置。
【請求項3】
短辺を前後の端壁とし、長辺を左右の側壁とすると共に底壁を備え、この底壁の汚泥掻寄方向である前側の端壁側に汚泥ピットを備えている矩形沈澱池に配置され、
前記底壁の上側で、かつ、左右側壁間である池幅中央に沿って前後方向に進退するように配置される汚泥掻寄装置であって、
前記底壁上における池幅中央に沿って配置されたガイドレールと、
ロッドあるいはロッド状部材により形成され、前記池幅中央に沿って軸中心が設定されるように、前記底壁の上側に配置される牽引芯材と、
前記牽引芯材の途中に取り付けられたピストンと、
前後に密封接続部を備えた筒状体として形成され、その内部に前記ピストンを内蔵した駆動シリンダにより構成される機体であって、前記牽引芯材が前後の密封接続部を貫通して前後に延びるように設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられ、前記ガイドレールに沿って走行可能な走行輪と、
前記機体に複数取り付けられ、互いに連動可能な汚泥スクレーパと、
前記機体の前進時に前記汚泥スクレーパを掻寄姿勢に切り換え、後退時に非掻寄姿勢になるように切り換えるための姿勢切換手段と、を備え、
流体制御手段による前記駆動シリンダ内への流体の注入・排出によって、前記機体を前記牽引芯材に沿って前進・後退方向に移動可能に構成し、流体の注入・排出流路は、前記牽引芯材内部に形成され、前記牽引芯材の端部と前記駆動シリンダ内を連通するように形成されていることを特徴とする汚泥掻寄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−66882(P2013−66882A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175102(P2012−175102)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(594100838)フジワラ産業株式会社 (51)