説明

汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システム

【課題】蒸気の持つ熱エネルギを十分に回収して有効利用することができる汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システムを提供する。
【解決手段】汚泥焼却炉1から排出される高温の排ガスを熱源とするボイラ7により蒸気を発生させ、ボイラ7において発生した蒸気により駆動され動力を取り出す蒸気タービン8と、この蒸気タービン8を通過した蒸気により駆動され圧縮空気を発生させるスチームコンプレッサ9と、このスチームコンプレッサ9を通過した蒸気からさらに排熱を回収する熱交換器とを備える。熱交換器は、白煙防止空気プレヒータ13、汚泥加熱用熱交換器14、復水器15などである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥焼却プラントにおいて発生する蒸気の保有エネルギを無駄なく回収するための汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、下水処理場から大量に発生する下水汚泥の多くは焼却炉で焼却処分されている。焼却炉の焼却温度は地球温暖化係数が大きい亜酸化窒素の発生を抑制する目的で約850℃に設定されているため、焼却炉からは約850℃の高温の排ガスが排出されている。この高温排ガスが保有する熱エネルギを回収するために、従来から特許文献1に示されるような、廃熱ボイラを使用した熱回収システムが採用されている。
【0003】
図1は廃熱ボイラを使用した熱回収システムのより具体的な一例を示す図であり、流動式焼却炉から排出される高温の排ガスはまず流動空気予熱器で流動空気を加熱したうえ、廃熱ボイラに導かれて蒸気を発生させる。図1では発生した蒸気の一部は白煙防止器に導かれて白煙防止用空気を加熱し、残部は排ガス誘引ブロワを駆動したうえ、復水器により復水されて廃熱ボイラに循環する。一方、廃熱ボイラを通過した排ガスはセラミックフィルタなどの集塵装置に送られてダスト分を除去され、排煙処理塔でSOx等を除去されたうえで、白煙防止用空気とともに煙突から放出される。
【0004】
この図1に示された熱回収システムにおいては、発生した蒸気の持つ熱エネルギは、白煙防止用空気の加熱へ利用され、圧力エネルギーは排ガス誘引ブロワの駆動に利用されている。しかしこれらの方法は、大部分が蒸気の持つエネルギの一部である圧力エネルギーを利用したもので、蒸気の持つエネルギ(熱エネルギと圧力エネルギ)の大部分は、復水器で水に戻され、温排水として系外に捨てられることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−213725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、従来は汚泥焼却炉に接続されたボイラにおいて発生した蒸気の持つエネルギは十分に活用されておらず、大部分が系外に捨てられており、系内で有効利用されることが少なかった。従って本発明の目的はこのような従来の問題点を解決し、蒸気の持つ熱エネルギを十分に回収して系内で有効利用することができる汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システムは、汚泥焼却炉から排出される高温の排ガスを熱源とするボイラと、このボイラにおいて発生した蒸気により駆動され動力を取り出す蒸気タービンと、この蒸気タービンを通過した蒸気により駆動され圧縮空気を発生させるスチームコンプレッサと、このスチームコンプレッサを通過した蒸気からさらに排熱を回収する熱交換器とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記熱交換器が白煙防止空気プレヒータまたは汚泥加熱用熱交換器であることが好ましく、また前記熱交換器が、白煙防止空気プレヒータまたは汚泥加熱用熱交換器の他に、復水器を備えたものであることが好ましい。
【0009】
また、前記スチームコンプレッサが、蒸気により駆動されるスチームモータと、スチームモータにより駆動され空気を圧縮する圧縮機とを備えたものであることが好ましい。さらに前記ボイラが、汚泥焼却炉から排出される高温の排ガスにより加熱された白煙防止用空気を加熱流体とするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システムによれば、汚泥焼却炉から排出される高温の排ガスを熱源とするボイラにおいて発生した蒸気の保有するエネルギを、高圧の段階では蒸気タービンにより動力として、中圧の段階ではスチームコンプレッサにより圧縮空気として、低圧の段階では排熱を回収する熱交換器によって熱エネルギとして、それぞれ回収することができる。このため蒸気の持つエネルギを圧力及び温度の両面から徹底的に回収し、系内で有効利用することが可能となる。
【0011】
請求項2のように、排熱を回収する熱交換器として白煙防止空気プレヒータまたは汚泥加熱用熱交換器を用いれば、回収熱を汚泥焼却プラントの系内で有効利用することができる。また請求項3のように、白煙防止空気プレヒータまたは汚泥加熱用熱交換器の他に、復水器を備えたものとしておけば、蒸気を完全に復水させてボイラに戻すことができる。また請求項4のように、蒸気により駆動されるスチームモータと、スチームモータにより駆動され空気を圧縮する圧縮機とを備えたスチームコンプレッサを用いれば、蒸気の圧力を動力原として圧縮空気を得ることができる。さらに請求項5のように、ボイラの加熱流体として汚泥焼却炉から排出される高温の排ガスにより加熱された白煙防止用空気を用いれば、ボイラが排ガス中のダストにより閉塞するおそれがなく、また汚泥焼却を継続しつつボイラの点検作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】廃熱ボイラを使用した従来の熱回収システムの説明図である。
【図2】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図3】スチームコンプレッサの概念的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図2において1は下水処理場に設置される汚泥焼却炉であり、例えば流動式焼却炉である。前記したようにこの汚泥焼却炉1からは約850℃の高温の排ガスが排出されるが、この高温の排ガスは、流動空気予熱器2で流動空気と熱交換が行われ、さらに白煙防止器3に導かれて白煙防止用空気との間で熱交換を行い、白煙防止用空気を例えば400℃に加熱する。このように汚泥焼却炉1が流動式焼却炉である場合には、白煙防止器3の前段に流動空気予熱器2を配置し、高温に加熱された流動用空気を炉内に吹き込むことが好ましい。
【0014】
白煙防止器3を通過した排ガスは、従来と同様にセラミックフィルタあるいはバグフィルタなどの集塵機4でダスト分を除去され、さらに排煙処理塔5でSOx等を除去されたうえで煙突6から排出される。このような排ガスの処理システム自体は従来と大きく変わるものではない。
【0015】
白煙防止器3により約400℃に加熱された白煙防止用空気は、ボイラ7に送られる。ボイラ7は白煙防止用空気を加熱流体とし、例えば200℃、1.5MPaの高温高圧の蒸気を発生する。なおボイラ7を通過した約170℃の白煙防止用空気は煙突6に送られ、排煙処理塔5で冷やされた排ガスを加熱して白煙の発生を防止する。このように白煙防止用空気をボイラ7の加熱流体として用いれば、従来の廃熱ボイラとは異なり、ボイラ7が排ガス中のダストにより閉塞するおそれがない。またボイラ7が排ガス処理のメインラインとは別に設置されているので、ダンパ18,19,20を操作することで、汚泥焼却を継続しつつボイラ7の点検作業を行なうことができる利点がある。
【0016】
ボイラ7で発生した高温高圧の蒸気は、先ず蒸気タービン8に送られて動力に変換される。この動力を発電に利用することが一般的であるが、例えば下水処理場で使用される曝気用空気を得るためのブロワの補助動力として利用することもできる。このように、ボイラ7で発生した高温高圧の蒸気の圧力が動力に変換される。これが蒸気エネルギの第1の利用である。なお本発明で用いられる蒸気タービン8は背圧タービンであり、蒸気タービン8を通過した蒸気は例えば160℃、0.5MPaの中圧蒸気である。また本実施形態では、ボイラ7で発生した蒸気で発電せず、蒸気タービン8の動力およびスチームコンプレッサにより圧縮空気に変換する方式である。このため、ボイラ7は、厚生労働省管轄のボイラとなり電力変換するボイラと比較して、ボイラの仕様や検査など設置の負担が大幅に軽減される効果もある。
【0017】
この中圧蒸気は、次にスチームコンプレッサ9に送られる。スチームコンプレッサ9は、蒸気を駆動源として空気あるいは蒸気を加圧する装置であり、この実施形態では図3に示すように蒸気により駆動されるスチームモータ10と、このスチームモータ10により駆動され空気を圧縮する圧縮機11(図2においてはターボ圧縮機11)とを備えたものである。スチームモータ10及び圧縮機11はねじ式の回転羽根を備え、供給された蒸気はスチームモータ10の内部を膨張しつつ進行しながら駆動用シャフト12を駆動し、ターボ圧縮機11はこの駆動用シャフト12によりねじ式の回転羽根を回転させ、空気を圧縮する。このようにして中圧蒸気の持つ圧力はスチームコンプレッサ9から圧縮空気として取り出され、例えば汚泥焼却プラントの各種計装機器の空気源、集塵機の逆洗用空気源、焼却灰の輸送用空気源などとして利用することができる。これが蒸気エネルギの第2の利用である。なおこのような構造のスチームコンプレッサ9は、蒸気駆動エアコンプレッサとして市販されているものを使用することができる。
【0018】
スチームコンプレッサ9を通過した蒸気は、例えば110℃、0.05MPaの低圧蒸気となる。本発明ではこの低圧蒸気の持つ熱エネルギから、さらに熱交換器により排熱を回収する。これが蒸気エネルギの第3の利用である。この排熱回収用の熱交換器としては様々な機器を使用できるが、図2では白煙防止空気プレヒータ13と汚泥加熱用熱交換器14である。白煙防止空気プレヒータ13は前記した白煙防止器3に供給される空気を予熱する熱交換器である。また汚泥加熱用熱交換器14は、汚泥焼却炉1に投入される下水汚泥を加熱し、脱水機での脱水時に低含水化するための装置である。これらの装置は汚泥焼却プラントにおいて用いられるものであり、かつ低圧蒸気の持つ熱エネルギを有効利用するのに適している。
【0019】
このように、白煙防止空気プレヒータ13により白煙防止器3に供給される空気を予熱するようにすれば、白煙防止器3において白煙防止用空気を加熱するに要する熱量が削減され、より多くのエネルギをボイラ7により回収できるようになる。また汚泥加熱用熱交換器14により下水汚泥を加温し脱水することで汚泥焼却炉1に投入される汚泥の含水率を低下させれば、汚泥焼却炉1からさらに多量のエネルギを取り出すことが可能となる。
【0020】
低圧蒸気はこれらの熱交換機器13,14を通過する間に冷却され、復水してボイラ7に戻される。しかし、蒸気量は汚泥焼却炉1の運転状況や汚泥処理量により異なるため、白煙防止空気プレヒータ13と汚泥加熱用熱交換器14の有効利用による復水だけでは、蒸気量の変動に対して、確実に復水させるのが難しい場合がある。このため実設備としては、蒸気量が変動した場合においても完全に復水が出来るように図2に示すような白煙防止空気プレヒータ13や汚泥加熱用熱交換器14の他に、復水器15を備えておくことが好ましい。なお図2では復水器15をこれらの熱交換器と並列に配置したが、直列に配置することも可能である。復水は給水ポンプ16によりボイラ7に戻される。その温度は例えば100℃未満、圧力は大気圧以下である。
【0021】
以上に説明したように、本発明によれば蒸気の持つエネルギを圧力及び温度の両面から徹底的に回収することが可能となる。例えば下水汚泥処理規模:250t/日の汚泥焼却プラントに本発明を適用した場合、蒸気タービン8によるブロワ動力のアシストすることにより約80kW、スチームコンプレッサ9で圧縮空気を製造することにより約150kW、白煙防止空気プレヒータ12で空気を予熱することにより約800kWのエネルギが回収できる。従って、全体として1000kW以上のエネルギ回収が可能となる利点がある。
【符号の説明】
【0022】
1 汚泥焼却炉
2 流動空気予熱器
3 白煙防止器
4 集塵機
5 排煙処理塔
6 煙突
7 ボイラ
8 蒸気タービン
9 スチームコンプレッサ
10 スチームモータ
11 ターボ圧縮機
12 シャフト
13 白煙防止空気プレヒータ
14 汚泥加熱用熱交換器
15 復水器
16 ドレンタンク
17 給水ポンプ
18 ダンパ
19 ダンパ
20 ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥焼却炉から排出される高温の排ガスを熱源とするボイラと、このボイラにおいて発生した蒸気により駆動され動力を取り出す蒸気タービンと、この蒸気タービンを通過した蒸気により駆動され圧縮空気を発生させるスチームコンプレッサと、このスチームコンプレッサを通過した蒸気からさらに排熱を回収する熱交換器とを備えたことを特徴とする汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システム。
【請求項2】
前記熱交換器が、白煙防止空気プレヒータまたは汚泥加熱用熱交換器であることを特徴とする請求項1記載の汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システム。
【請求項3】
前記熱交換器が、白煙防止空気プレヒータまたは汚泥加熱用熱交換器の他に、復水器を備えたものであることを特徴とする請求項2記載の汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システム。
【請求項4】
前記スチームコンプレッサが、蒸気により駆動されるスチームモータと、スチームモータにより駆動され空気を圧縮する圧縮機とを備えたものであることを特徴とする請求項1記載の汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システム。
【請求項5】
前記ボイラが、汚泥焼却炉から排出される高温の排ガスにより加熱された白煙防止用空気を加熱流体とするものであることを特徴とする請求項1記載の汚泥焼却プラントにおける蒸気利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251679(P2012−251679A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123058(P2011−123058)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】