説明

汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置

【課題】適当な反応条件や反応時間でリンの抽出およびリン酸カルシウムの析出を効率的に実施することができる汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】
汚泥焼却灰とアルカリ性反応液とを混合してリン抽出液を得るリン抽出工程と、リン抽出液とカルシウム化合物とを混合してリン酸カルシウムを析出させるリン酸カルシウム析出工程と、リン酸カルシウムを回収するリン酸カルシウム回収工程と、リン抽出液の電気伝導率を連続的に測定する電気伝導率測定工程と、リン抽出液の電気伝導率を用いてリン抽出操作およびリン酸カルシウム析出操作の少なくとも一方を制御する制御工程とを含むリン酸カルシウムの製造方法である。また、リン抽出液の電気伝導率を連続的に測定する電気伝導率測定手段と、リン抽出制御手段およびリン酸カルシウム析出制御手段の少なくとも一方とを備えるリン酸カルシウムの製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥焼却灰等の汚泥焼却灰からリン酸カルシウムを製造する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場で発生する下水汚泥などを焼却して減量化した際に生じる汚泥焼却灰は、大部分が廃棄物として埋立処分されてきた。
【0003】
しかし、下水汚泥焼却灰などの汚泥焼却灰には多量のリンが含まれているため、近年では、廃棄物である汚泥焼却灰からリンを回収し、世界的に枯渇が危惧されている資源の一つであるリン資源として再利用する手法が注目されている。
【0004】
具体的には、下水汚泥焼却灰に含まれているリンをアルカリ性反応液中に抽出して得たリン抽出液に対し、水酸化カルシウム(消石灰)などのカルシウム化合物をカルシウム源として添加してリン抽出液中に含まれているリンをリン酸カルシウムとして析出させることで、下水汚泥焼却灰中のリンをリン酸カルシウムとして回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
ここで、特に汚泥焼却灰からのリンの抽出およびリン抽出液からのリン酸カルシウムの析出を回分式で実施する場合には、適当な反応条件(例えば、水酸化カルシウム添加量など)や反応時間で効率的にリンの抽出およびリン酸カルシウムの析出を行うために、リン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を連続的に測定することが必要となる。
【0006】
しかし、リン抽出時およびリン酸カルシウム析出時のリン抽出液中の溶解性リン(リン酸態リンなど)の濃度は数千質量ppm〜数十質量ppm(P換算値)の広い範囲で変化すると共に、アルカリ性反応液を用いて汚泥焼却灰からリンを抽出してなるリン抽出液は、pHが非常に高く且つ汚泥焼却灰由来の種々の共存物質を含有している。従って、イオン電極法などの従来用いられている溶解性リン濃度測定法では、リン抽出液中の正確な溶解性リン濃度の変化を連続的に測定することができなかった。
【0007】
そのため、従来は、手分析による溶解性リン濃度の測定結果や経験則に基づいてリン抽出時およびリン酸カルシウム析出時の反応条件や反応時間を決定しており、適当な反応条件・反応時間でリンの抽出やリン酸カルシウムの析出を効率的に実施してリン酸カルシウムを効率的に製造することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−229576号公報
【特許文献2】特開2004−203641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、リン抽出液中のリン酸態リンなどの溶解性リンの濃度の変化を連続的に測定し、測定した溶解性リン濃度の変化に基づいて適当な反応条件・反応時間でリンの抽出やリン酸カルシウムの析出を効率的に実施することができる汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った。そして、本発明者は、リン抽出液の電気伝導率とリン抽出液中の溶解性リン濃度との間には所定の相関関係が存在しており、リン抽出液中の電気伝導率を測定することでリン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を把握し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、汚泥焼却灰とアルカリ性反応液とを混合し、前記汚泥焼却灰に含まれているリンを前記アルカリ性反応液中に抽出してリン抽出液を得るリン抽出工程と、前記リン抽出液とカルシウム化合物とを混合して、リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出工程と、前記リン酸カルシウムを回収するリン酸カルシウム回収工程と、リン抽出液の電気伝導率を連続的に測定する電気伝導率測定工程と、前記電気伝導率測定工程で測定したリン抽出液の電気伝導率を用いて、前記リン抽出工程におけるリン抽出操作と、前記リン酸カルシウム析出工程におけるリン酸カルシウム析出操作との少なくとも一方を制御する制御工程とを含むことを特徴とする。このように、電気伝導率測定工程でリン抽出液の電気伝導率を連続的に測定すれば、電気伝導率の変化からリン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を把握することができるので、リンの抽出操作やリン酸カルシウムの析出操作を溶解性リン濃度の変化に基づいて適当な反応条件・反応時間で効率的に実施することができる。従って、効率的にリン酸カルシウムを製造することができる。
【0012】
ここで、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、リン抽出液中の溶解性リン濃度と電気伝導率との関係から予め検量線を作成する検量線作成工程を更に含み、前記制御工程において、前記検量線を用いて前記電気伝導率からリン抽出液中の溶解性リン濃度を算出し、該溶解性リン濃度を用いて前記リン抽出操作と前記リン酸カルシウム析出操作との少なくとも一方を制御することが好ましい。予め作成しておいた検量線を用いて電気伝導率から溶解性リン濃度(P換算値)を算出し、算出した溶解性リン濃度を用いてリンの抽出操作やリン酸カルシウムの析出操作を制御すれば、例えばリン酸カルシウム析出工程におけるカルシウム化合物の添加量などをより正確かつ容易に制御することができるからである。
【0013】
また、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、前記制御工程において、前記リン酸カルシウム析出工程における前記リン抽出液と前記カルシウム化合物との混合時間を制御することが好ましい。電気伝導率測定工程で測定したリン抽出液の電気伝導率を用いてリン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を把握し、リン酸カルシウム析出工程におけるリン抽出液とカルシウム化合物との混合時間を制御すれば、リン抽出液中のリンがリン酸カルシウムとして十分に析出したタイミングで効率的にリン酸カルシウム析出工程からリン酸カルシウム回収工程へと移ることができるからである。
【0014】
更に、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、前記制御工程において、前記リン酸カルシウム析出工程における前記リン抽出液へのカルシウム化合物の添加量を制御することが好ましい。電気伝導率測定工程で測定したリン抽出液の電気伝導率を用いてリン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を把握し、リン酸カルシウム析出工程におけるカルシウム化合物の添加量を制御すれば、カルシウム化合物の添加量が不足してリン抽出液からのリン酸カルシウムの析出が不十分になるのを防止することができるからである。また、カルシウム化合物の過剰添加により、未反応のカルシウム化合物が残存して、リン酸カルシウム回収工程で回収したリン酸カルシウムの純度が低下するのを防止することができるからである。
【0015】
そして、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、前記制御工程において、前記リン抽出工程における前記汚泥焼却灰と前記アルカリ性反応液との混合比を制御することが好ましい。電気伝導率測定工程で測定したリン抽出液の電気伝導率を用いてリン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を把握し、リン抽出工程における汚泥焼却灰とアルカリ性反応液との混合比を制御すれば、リン酸カルシウム析出工程で効率的にリン酸カルシウムを析出させるのに適した溶解性リン濃度のリン抽出液を得ることができるからである。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置は、汚泥焼却灰供給手段およびアルカリ性反応液供給手段を有し、前記汚泥焼却灰供給手段を用いて供給した汚泥焼却灰と、前記アルカリ性反応液供給手段を用いて供給したアルカリ性反応液とを混合して汚泥焼却灰に含まれているリンを前記アルカリ性反応液中に抽出し、リン抽出液を得るリン抽出槽と、リン抽出液供給手段およびカルシウム化合物供給手段を有し、前記リン抽出液供給手段を用いて前記リン抽出槽から供給した前記リン抽出液と、前記カルシウム化合物供給手段を用いて供給したカルシウム化合物とを混合してリン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出槽と、前記リン酸カルシウム析出槽からリン酸カルシウムを回収するリン酸カルシウム回収手段と、前記リン抽出槽中のリン抽出液および前記リン酸カルシウム析出槽中のリン抽出液の少なくとも一方の電気伝導率を連続的に測定する電気伝導率測定手段と、前記電気伝導率測定手段で測定した前記リン抽出槽中のリン抽出液の電気伝導率を用いて、前記汚泥焼却灰供給手段を用いた汚泥焼却灰の供給を制御するリン抽出制御手段、並びに、前記電気伝導率測定手段で測定した前記リン酸カルシウム析出槽中のリン抽出液の電気伝導率を用いて、前記カルシウム化合物供給手段を用いたカルシウム化合物の供給および前記リン酸カルシウム回収手段を用いたリン酸カルシウムの回収の少なくとも一つを制御するリン酸カルシウム析出制御手段の少なくとも一方とを備えることを特徴とする。このように、電気伝導率測定手段でリン抽出液の電気伝導率を測定すれば、リン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を把握することができるので、リン抽出制御手段やリン酸カルシウム析出制御手段を用いて適当な反応条件・反応時間で効率的にリンの抽出やリン酸カルシウムの析出を実施することができる。従って、効率的にリン酸カルシウムを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置によれば、リン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を連続的に測定し、測定した溶解性リン濃度の変化に基づいて適当な反応条件・反応時間でリンの抽出やリン酸カルシウムの析出を効率的に実施して、リン酸カルシウムを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従う代表的なリン酸カルシウム製造方法を用いて汚泥焼却灰からリン酸カルシウムを製造する際の操作フローである。
【図2】本発明に従う代表的なリン酸カルシウム製造装置の構成を示す説明図である。
【図3】下水汚泥焼却灰A〜Cからリンを抽出して得たリン抽出液中の溶解性リン濃度と電気伝導率との関係を用いて作成した検量線を示すグラフである。
【図4】下水汚泥焼却灰A〜Cからリン酸カルシウムを製造する際のリン酸カルシウム析出工程におけるリン抽出液中の電気伝導率および溶解性リン濃度の経時変化を示すグラフである。
【図5】本発明のリン酸カルシウムの製造方法を用いて下水汚泥焼却灰D,Eからリン酸カルシウムを製造した際のリン酸カルシウム析出工程におけるリン抽出液中の電気伝導率および溶解性リン濃度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置は、リン抽出液の電気伝導率がリン抽出液中の溶解性リン濃度と良好な相関関係を有していることを利用し、リン抽出液の電気伝導率を用いてリン抽出操作やリン酸カルシウム析出操作を制御することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法の一例では、図1に操作フローチャートを示すように、下水汚泥焼却灰等のリン(P)を含有する汚泥焼却灰に対し、リン抽出工程(S1)および固液分離工程(S2)を順次実施して、リン抽出液と処理灰とを得る。次に、リン抽出液と、カルシウム化合物とを用いてリン酸カルシウム析出工程(S3)を実施し、リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させる。そして最後に、リン酸カルシウム回収工程(S4)で反応液中からリン酸カルシウムを回収し、リン酸カルシウムと回収反応液とを得る。なお、この一例では、リン抽出工程(S1)、固液分離工程(S2)、リン酸カルシウム析出工程(S3)およびリン酸カルシウム回収工程(S4)の各工程は、回分式(バッチ)操作で実施される。
【0021】
ここで、この一例のリン酸カルシウムの製造方法では、リン抽出工程(S1)においてリン抽出液の電気伝導率を測定し(第1の電気伝導率測定工程)、測定した電気伝導率に基づいてアルカリ性反応液に対する汚泥焼却灰の添加量(アルカリ性反応液と汚泥焼却灰との混合比)等を制御している(第1の制御工程)。また、リン酸カルシウム析出工程(S3)においてもリン抽出液の電気伝導率を測定し(第2の電気伝導率測定工程)、測定した電気伝導率に基づいてリン抽出液に対するカルシウム化合物の添加量およびリン抽出液とカルシウム化合物との混合時間(即ち、リン酸カルシウム析出工程(S3)からリン酸カルシウム回収工程(S4)へと移るタイミング)を制御している(第2の制御工程)。
【0022】
なお、このリン酸カルシウムの製造方法では、固液分離工程(S2)で得た処理灰に対しアルカリ性反応液を添加して処理灰から更にリンを抽出し、得られたリン抽出液をリン酸カルシウムの製造に用いても良い。また、リン酸カルシウム回収工程(S4)で得たリン酸カルシウムは、リン鉱石代替原料等として利用することができ、回収反応液は、循環させてアルカリ性反応液として再利用することができる。
【0023】
ここで、リン抽出工程(S1)は、汚泥焼却灰と、アルカリ性反応液とを例えばリン抽出槽内で撹拌混合し、汚泥焼却灰に含まれているリンをアルカリ性反応液中に抽出することで、抽出されたリンを含有するアルカリ性反応液からなるリン抽出液と、含有するリンの一部が抽出された汚泥焼却灰からなる処理灰との混合物を得る工程である。そして、このリン抽出工程(S1)では、汚泥焼却灰からのリンの抽出により、例えば3000〜5000質量ppm(P換算値)のリン酸を含有するリン抽出液を得ることができる。なお、汚泥焼却灰に含まれているリンのアルカリ性反応液中への抽出は、汚泥焼却灰にPなどの形態で含まれているリンが、例えば下記反応式(1)に示すような反応によりアルカリ性反応液中へ溶出することで起きると推察されている。
+6OH → 2PO3−+3HO ・・・(1)
【0024】
このリン抽出工程(S1)で使用するアルカリ性反応液としては、水酸化ナトリウム水溶液や、水酸化カリウム水溶液などを用いることができるが、コスト低減の観点からは水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましく、リンの抽出率を向上する観点からは濃度3質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。また、リン抽出工程(S1)におけるアルカリ性反応液と汚泥焼却灰との混合条件(温度、時間など)は、汚泥焼却灰中のリンが十分に抽出される範囲で適宜変更することができ、アルカリ性反応液と汚泥焼却灰とは、例えば温度60℃で30分間混合することができる。
【0025】
ここで、この一例のリン酸カルシウムの製造方法では、このリン抽出工程(S1)で汚泥焼却灰からアルカリ性反応液へとリンを抽出する間、リン抽出液(リン抽出中のアルカリ性反応液)の電気伝導率をJIS K0102等に従い電気伝導率計などで連続的に測定する(第1の電気伝導率測定工程)。そして、測定した電気伝導率に基づき、汚泥焼却灰の添加量などを制御する(第1の制御工程)。
【0026】
具体的には、汚泥焼却灰中のリンを含む様々な物質がアルカリ性反応液中に抽出される際には上記反応式(1)に示すようにアルカリ性反応液中の水酸化物イオンが消費されてアルカリ性反応液(リン抽出液)の電気伝導率が低下し、抽出反応が終了して定常状態になると電気伝導率が一定になることを利用して、以下のようにしてリンの抽出時間や汚泥焼却灰の添加量などを制御することができる。
【0027】
まず、リンの抽出時間は、リン抽出液の電気伝導率が一定になった状態をリンの抽出反応が終了した状態(リン抽出反応終点)とみなし、電気伝導率が一定となった直後に固液分離工程(S2)を実施することで、制御することができる。なお、このようにすれば、リンの抽出反応が平衡に達した直後に固液分離を行うことができるので、処理灰とリン抽出液との混合物を平衡状態で無駄に混合させ続ける時間を短くして、効率的にリン酸カルシウムを製造することができる。
【0028】
また、汚泥焼却灰の添加量は、同様の組成を有する汚泥焼却灰からリンを抽出した場合には、そのリン抽出液の電気伝導率と溶解性リン濃度との相関関係がほぼ同じになることを利用し、リン抽出液の電気伝導率が所定の電気伝導率となるように汚泥焼却灰を添加することで、制御することができる。具体的には、リン酸カルシウムの製造に使用する汚泥焼却灰からリンを抽出し、リン酸カルシウム析出工程(S3)においてリン酸カルシウムを析出させるのに適した溶解性リン濃度のリン抽出液の電気伝導率を予め測定しておき、リン抽出工程(S1)において最初に適用した汚泥焼却灰とアルカリ性反応液との混合比では所望の電気伝導率に達しない場合、即ちリン抽出液中の溶解性リン濃度が所望の濃度まで達しない場合には、所望の電気伝導率に達するように汚泥焼却灰を追加して更にリンを抽出させることができる。そして、このようにすれば、汚泥処理設備等の運転状況の変化により汚泥焼却灰の性状が経時的に変化しても、リン抽出液中の溶解性リン濃度が大きく変化するのを防止することができる。よって、リン酸カルシウムの析出に適した溶解性リン濃度を有するリン抽出液を得て、効率的にリン酸カルシウムを製造することができる。
【0029】
固液分離工程(S2)は、リン抽出工程(S1)で得たリン抽出液と処理灰との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてリン抽出液と処理灰とに分離する工程である。
【0030】
リン酸カルシウム析出工程(S3)は、固液分離工程(S2)で得たリン抽出液と、カルシウム源としてのカルシウム化合物とを、例えばリン酸カルシウム析出槽中において撹拌混合し、リン抽出液中のリン(リン酸態リン)とカルシウム化合物由来のカルシウムとを反応させてリン酸カルシウムを析出させる工程である。そして、このリン酸カルシウム析出工程(S3)では、リン抽出液中のリンとカルシウム化合物由来のカルシウムとが反応して生成したリン酸カルシウムと、リン抽出液中のリンがリン酸カルシウムとして析出した後に残る、溶解性リン濃度がP換算で例えば10〜500質量ppmの溶液(回収反応液)との混合物が得られる。なお、リン抽出液とカルシウム化合物との反応条件は、リン酸カルシウムが十分に析出し得る範囲で適宜変更することができる。
【0031】
このリン酸カルシウム析出工程(S3)で使用するカルシウム化合物としては、特に限定されることなく、固体状態またはスラリー状態の水酸化カルシウム(Ca(OH))等を挙げることができる。
【0032】
ここで、この一例のリン酸カルシウムの製造方法では、このリン酸カルシウム析出工程(S3)でリン抽出液からリン酸カルシウムを析出させる間、リン抽出液の電気伝導率をJIS K0102等に従い電気伝導率計などで連続的に測定する(第2の電気伝導率測定工程)。そして、測定した電気伝導率に基づき、リン抽出液とカルシウム化合物との混合時間(反応時間)や、カルシウム化合物の添加量などを制御する(第2の制御工程)。
【0033】
具体的には、一例として、カルシウム化合物として固体の水酸化カルシウムを使用した場合について説明すると、下記反応式(2)に示すようにリン抽出液中のリン酸が水酸化カルシウムと反応してリン酸カルシウムが析出すると、リン抽出液中から2molのリン酸イオンが減る一方で6molの水酸化物イオンが生じるので、リン抽出液中のイオンの量が次第に増加してリン抽出液の電気伝導率が上昇し、リン酸カルシウムの析出反応が終了して定常状態になる(即ち、リン酸カルシウムの析出反応が平衡に達する)と電気伝導率が一定になることを利用して、以下のようにしてリン抽出液と水酸化カルシウムとの混合時間や水酸化カルシウムの添加量などを制御することができる。なお、リン酸カルシウムの析出反応(リン抽出液中のリン酸と水酸化カルシウムとの反応)は選択的に進むので、リン抽出液中の共存イオン等による電気伝導率への影響は殆ど無視することができる。
2PO3−+3Ca(OH) → Ca(PO+6OH ・・・(2)
【0034】
より具体的には、リン抽出液と水酸化カルシウムとの混合時間は、リン抽出液の電気伝導率が一定になった状態をリン酸カルシウムの析出が終了した状態(リン酸カルシウム析出反応終点)とみなし、電気伝導率が一定となった直後にリン酸カルシウム回収工程(S4)を実施することで、制御することができる。そして、このようにすれば、リン酸カルシウムの析出反応が平衡に達した直後に固液分離を行うことができるので、回収反応液とリン酸カルシウムとの混合物を平衡状態で無駄に混合させ続ける時間を短くして、効率的にリン酸カルシウムを製造することができる。
【0035】
また、水酸化カルシウムの添加量は、同じカルシウム化合物を用いて同条件でリン酸カルシウムを析出させた際のリン抽出液の電気伝導率の挙動が互いにほぼ等しくなることを利用し、様々な電気伝導率のリン抽出液についてリン酸カルシウムの析出反応が平衡に達するまでに必要な水酸化カルシウムの量を予め求めておき、測定したリン抽出液の電気伝導率に応じて水酸化カルシウムの添加量を決定することにより、制御することができる。更に、水酸化カルシウムの添加量は、リン抽出液の電気伝導率が一定になるまで、即ちリン酸カルシウム析出反応終点に達するまで水酸化カルシウムを連続的に添加することによっても、制御することができる。そして、このようにすれば、カルシウム化合物として水酸化カルシウムを過不足なく添加することができるので、カルシウム化合物の添加量が不足してリン抽出液からのリン酸カルシウムの析出が不十分になるのを防止すると共に、カルシウム化合物の過剰添加により、未反応のカルシウム化合物が残存して、リン酸カルシウム回収工程で回収したリン酸カルシウムの純度が低下するのを防止することができる。
【0036】
リン酸カルシウム回収工程(S4)は、リン酸カルシウム析出工程(S3)で得たリン酸カルシウムと回収反応液との混合物からリン酸カルシウムを回収する工程である。そして、リン酸カルシウム回収工程(S4)では、例えば沈降分離やろ過などの手段を用いてリン酸カルシウムと回収反応液とが分離され、リン資源として再利用可能なリン酸カルシウムが回収される。なお、回収反応液は、循環してアルカリ性反応液として使用することができる。
【0037】
そして、上記一例のリン酸カルシウムの製造方法によれば、リン抽出液の電気伝導率を連続的に測定し、電気伝導率の変化からリン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を把握してリンの抽出操作やリン酸カルシウムの析出操作を制御することができる。従って、適当な反応条件・反応時間で効率的にリン酸カルシウムを製造することができる。
【0038】
なお、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、上記一例に限定されることはなく、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法には、適宜変更を加えることができる。
【0039】
具体的には、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法では、下水処理場等から排出される汚泥焼却灰の性状が通常は殆ど経時変化しないことを利用し、予め作成した検量線を用いてリン抽出液の電気伝導率から溶解性リン濃度を求めてリン抽出操作やリン酸カルシウム析出操作を制御しても良い。より詳細には、リン酸カルシウムの製造に使用する汚泥焼却灰と同様の汚泥焼却灰を用いてリン抽出液を調製し、該リン抽出液からリン酸カルシウムを析出させた際の溶解性リン濃度と電気伝導率との関係を予め測定しておくことにより、図3に示すような検量線を作成し(検量線作成工程)、検量線を用いて電気伝導率から求めた溶解性リン濃度に基づき制御を実施するようにしても良い。このようにすれば、リン酸カルシウム析出工程において添加すべきカルシウム化合物の量などを正確かつ容易に決定することができる。なお、リン抽出液中の溶解性リン濃度(P換算値)は、固形分をろ過分離したのち、JIS K0102に準拠してモリブデン青吸光光度法で測定することにより求めることができる。
【0040】
また、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法では、リン抽出操作とリン酸カルシウム析出操作との双方を制御することが好ましいが、リン抽出工程におけるリン抽出液の電気伝導率の変化のみを測定し、リン抽出操作のみを制御しても良いし、リン酸カルシウム析出工程におけるリン抽出液の電気伝導率の変化のみを測定し、リン酸カルシウム析出操作のみを制御しても良い。
【0041】
そして、上記一例のリン酸カルシウムの製造方法は、特に限定されることなく、例えば図2に示すようなリン酸カルシウム製造装置1を用いて実施することができる。
【0042】
ここで、このリン酸カルシウム製造装置1は、リン抽出工程(S1)、固液分離工程(S2)、第1の電気伝導率測定工程および第1の制御工程を実施するリン抽出部10と、リン酸カルシウム析出工程(S3)、リン酸カルシウム回収工程(S4)、第2の電気伝導率測定工程および第2の制御工程を実施する析出反応部20とで構成されている。
【0043】
リン抽出部10は、下部に沈降部12が形成されたリン抽出槽11と、リン抽出槽11内を撹拌する撹拌機13と、リン抽出槽11内に汚泥焼却灰を供給する汚泥焼却灰供給手段としてのスクリューフィーダ14と、リン抽出槽11内にアルカリ性反応液を供給するアルカリ性反応液供給手段としてのアルカリ性反応液供給ポンプ15と、リン抽出槽11の内部からリン抽出液を吸引する吸引ポンプ18と、下部抜き出しバルブ19とを備えている。また、リン抽出部10には、リン抽出槽11内のリン抽出液の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段としての電気伝導率計16と、電気伝導率計16で測定したリン抽出液の電気伝導率に基づきスクリューフィーダ14を制御してリン抽出槽11への汚泥焼却灰の添加量を制御するリン抽出制御手段としての制御装置17とが設けられている。
【0044】
ここで、このリン抽出部10では、まず、スクリューフィーダ14から供給した汚泥焼却灰と、アルカリ性反応液供給ポンプ15から供給したアルカリ性反応液とをリン抽出槽11内で混合することにより、汚泥焼却灰に含まれているリンをアルカリ性反応液中に抽出して、リン抽出液と処理灰との混合物を得ることができる(リン抽出工程)。なお、汚泥焼却灰に含まれているリンをアルカリ性反応液中に抽出する際には、電気伝導率計16がリン抽出液の電気伝導率を測定し(第1の電気伝導率測定工程)、リン抽出液中の溶解性リン濃度がリン酸カルシウムを析出させるのに適したリン濃度となるように(即ち、リン抽出液の電気伝導率が所定の電気伝導率となるように)、制御装置17がスクリューフィーダ14を制御して汚泥焼却灰の添加量を制御する(第1の制御工程)。
【0045】
そして、次に、沈降部12に処理灰を沈降させた後、吸引ポンプ18で槽内のリン抽出液を抜き出すと共に、下部抜き出しバルブ19を開いて沈降した処理灰を抜き出すことにより、リン抽出液と処理灰との混合物を固液分離することができる(固液分離工程)。
【0046】
また、析出反応部20は、下部に沈降部22が形成されたリン酸カルシウム析出槽21と、リン酸カルシウム析出槽21内を撹拌する撹拌機23と、リン酸カルシウム析出槽21内にカルシウム化合物を供給するカルシウム化合物供給手段としてのホッパー24と、リン酸カルシウム析出槽21の内部から回収反応液を吸引する吸引ポンプ27と、下部抜き出しバルブ28とを備えている。更に、析出反応部20には、リン酸カルシウム析出槽21内のリン抽出液の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段としての電気伝導率計25と、電気伝導率計25で測定したリン抽出液の電気伝導率に基づき、ホッパー24を制御してリン酸カルシウム析出槽21へのカルシウム化合物の添加量を制御すると共に、下部抜き出しバルブ28の開閉を制御してリン酸カルシウム析出槽21内でのリン抽出液とカルシウム化合物との反応時間を制御するリン酸カルシウム析出制御手段としての制御装置26とが設けられている。なお、この析出反応部20では、沈降部22および下部抜き出しバルブ28がリン酸カルシウム析出槽21からリン酸カルシウムを回収するリン酸カルシウム回収手段として機能する。
【0047】
ここで、この析出反応部20では、まず、リン抽出液供給手段として機能する吸引ポンプ18がリン抽出槽11から供給したリン抽出液と、ホッパー24から供給したカルシウム化合物とをリン酸カルシウム析出槽21内で混合することにより、リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させ、リン酸カルシウムと回収反応液との混合物を得ることができる(リン酸カルシウム析出工程)。なお、リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させる際には、電気伝導率計25がリン抽出液の電気伝導率を測定し(第2の電気伝導率測定工程)、カルシウム化合物が過不足なく供給されるように(即ち、リン抽出液の電気伝導率が所定の電気伝導率となるように)、制御装置26がホッパー24を制御してカルシウム化合物の添加量を制御する(第2の制御工程)。
【0048】
そして、次に、リン酸カルシウムの析出反応が平衡に達し、リン抽出液(回収反応液)の電気伝導率が一定値となったら、析出したリン酸カルシウムを沈降部22に沈降させた後、吸引ポンプ27で槽内の回収反応液を抜き出すと共に、制御装置26が下部抜き出しバルブ28を開いて沈降したリン酸カルシウムを抜き出すことにより、回収反応液とリン酸カルシウムとの混合物を固液分離することができる(リン酸カルシウム回収工程)。なお、吸引ポンプ27で抜き出した回収反応液は、アルカリ性反応液としてリン抽出部10でのリン抽出に再利用することができる。
【0049】
このように、この一例のリン酸カルシウム製造装置1によれば、リン抽出制御手段やリン酸カルシウム析出制御手段を用いて適当な反応条件・反応時間で効率的にリンの抽出やリン酸カルシウムの析出を実施し、効率的にリン酸カルシウムを製造することができる。
【0050】
なお、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置は、上記一例に限定されることなく、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置には、適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0052】
(試験例1)
水酸化ナトリウム水溶液を用いて下水汚泥焼却灰Aからリンを抽出し、固液分離してリン抽出液を得た。そして、得られたリン抽出液に対し、水酸化カルシウムを添加してリン酸カルシウムを析出させた。なお、水酸化カルシウムの添加およびリン酸カルシウムの析出は、電気伝導率計(東亜DKK製)でリン抽出液の電気伝導率を連続的に測定すると共に、所定時間毎にリン抽出液中の溶解性リン濃度をJIS K0102に準拠してモリブデン青吸光光度法で測定しながら行った。具体的には、リン抽出液中の溶解性リン濃度の測定は、リン抽出液をろ過した後、JIS K0102に準拠して、ろ過後のリン抽出液中のリン成分を前処理により全てオルトリン酸にし、得られた溶液中のオルトリン酸濃度をモリブデン青吸光光度法で測定することにより行った。
リン抽出液の溶解性リン濃度(P換算値)および電気伝導率の経時変化を表1および図4に示す。また、溶解性リン濃度(P換算値)と電気伝導率との関係を図3に示す。
【0053】
(試験例2〜3)
下水汚泥焼却灰B,Cを用いた以外は試験例1と同様にしてリン抽出液を調製し、リン酸カルシウムを析出させた。そして、試験例1と同様にしてリン抽出液の溶解性リン濃度および電気伝導率の経時変化を測定した。
リン抽出液の溶解性リン濃度(P換算値)および電気伝導率の経時変化を表1および図4に示す。また、溶解性リン濃度(P換算値)と電気伝導率との関係を図3に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
図3より、リン抽出液の電気伝導率とリン抽出液中の溶解性リン濃度(P換算値)との間には良好な相関関係が存在することが分かる。また、図4より、リン酸カルシウムの析出反応の終点は、電気伝導率が一定になる点と殆ど同じであるとみなせることが分かる。
【0056】
(実施例1)
水酸化ナトリウム水溶液を用いて下水汚泥焼却灰Dからリンを抽出し、固液分離してリン抽出液を得た。そして、得られたリン抽出液に対し、水酸化カルシウムを反応当量の1.3倍添加してリン酸カルシウムを析出させ、析出したリン酸カルシウムを回収した。
なお、リン酸カルシウムの析出は、電気伝導率計(東亜DKK製)でリン抽出液の電気伝導率を連続的に測定しながら実施し、リン酸カルシウムの析出反応の終点(即ち、析出したリン酸カルシウムを回収するタイミング)は、電気伝導率の経時変化が一定(1時間当たり±50mS/m以下)となった時点とした。なお、反応終点(リン酸カルシウムの析出開始から9時間目)におけるリン抽出液中の溶解性リン濃度をJIS K0102に準拠してモリブデン青吸光光度法で測定したところ、300mg−P/Lであった。リン抽出液の電気伝導率の経時変化を、所定時間毎にJIS K0102に準拠してモリブデン青吸光光度法で測定したリン抽出液中の溶解性リン濃度と共に図5に示す。
【0057】
(実施例2)
下水汚泥焼却灰Eを用いた以外は実施例1と同様にしてリン抽出液を調製し、リン酸カルシウムを析出させ、析出したリン酸カルシウムを回収した。なお、リン酸カルシウム析出の反応終点は実施例1と同様にして判断した。
そして、実施例1と同様にして反応終点(リン酸カルシウムの析出開始から13時間目)におけるリン抽出液中の溶解性リン濃度を測定したところ、280mg−P/Lであった。リン抽出液の電気伝導率の経時変化を、所定時間毎にJIS K0102に準拠してモリブデン青吸光光度法で測定したリン抽出液中の溶解性リン濃度と共に図5に示す。
【0058】
図5より、電気伝導率の変化に基づき反応終点を判断した実施例1および2では、使用した下水汚泥焼却灰の違いに起因してリン酸カルシウムの析出挙動(即ち、電気伝導率の変化)が異なっていても、最適な時間で反応を終了させ得ることが分かる。なお、実施例1および2共に反応終点におけるリン抽出液中の溶解性リン濃度は十分に低下しており、リン酸カルシウムは十分に析出している。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置によれば、リン抽出液中の溶解性リン濃度の変化を連続的に測定し、測定した溶解性リン濃度の変化に基づいて適当な反応条件や反応時間でリンの抽出およびリン酸カルシウムの析出を効率的に実施してリン酸カルシウムを製造することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 リン酸カルシウム製造装置
10 リン抽出部
11 リン抽出槽
12 沈降部
13 撹拌機
14 スクリューフィーダ
15 アルカリ性反応液供給ポンプ
16 電気伝導率計
17 制御装置
18 吸引ポンプ
19 下部抜き出しバルブ
20 析出反応部
21 リン酸カルシウム析出槽
22 沈降部
23 撹拌機
24 ホッパー
25 電気伝導率計
26 制御装置
27 吸引ポンプ
28 下部抜き出しバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥焼却灰とアルカリ性反応液とを混合し、前記汚泥焼却灰に含まれているリンを前記アルカリ性反応液中に抽出してリン抽出液を得るリン抽出工程と、
前記リン抽出液とカルシウム化合物とを混合して、リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出工程と、
前記リン酸カルシウムを回収するリン酸カルシウム回収工程と、
リン抽出液の電気伝導率を連続的に測定する電気伝導率測定工程と、
前記電気伝導率測定工程で測定したリン抽出液の電気伝導率を用いて、前記リン抽出工程におけるリン抽出操作と、前記リン酸カルシウム析出工程におけるリン酸カルシウム析出操作との少なくとも一方を制御する制御工程と、
を含むことを特徴とする、汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
【請求項2】
リン抽出液中の溶解性リン濃度と電気伝導率との関係から予め検量線を作成する検量線作成工程を更に含み、
前記制御工程において、前記検量線を用いて前記電気伝導率からリン抽出液中の溶解性リン濃度を算出し、該溶解性リン濃度を用いて前記リン抽出操作と前記リン酸カルシウム析出操作との少なくとも一方を制御することを特徴とする、請求項1に記載の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
【請求項3】
前記制御工程において、前記リン酸カルシウム析出工程における前記リン抽出液と前記カルシウム化合物との混合時間を制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
【請求項4】
前記制御工程において、前記リン酸カルシウム析出工程における前記リン抽出液へのカルシウム化合物の添加量を制御することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
【請求項5】
前記制御工程において、前記リン抽出工程における前記汚泥焼却灰と前記アルカリ性反応液との混合比を制御することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
【請求項6】
汚泥焼却灰供給手段およびアルカリ性反応液供給手段を有し、前記汚泥焼却灰供給手段を用いて供給した汚泥焼却灰と、前記アルカリ性反応液供給手段を用いて供給したアルカリ性反応液とを混合して汚泥焼却灰に含まれているリンを前記アルカリ性反応液中に抽出し、リン抽出液を得るリン抽出槽と、
リン抽出液供給手段およびカルシウム化合物供給手段を有し、前記リン抽出液供給手段を用いて前記リン抽出槽から供給した前記リン抽出液と、前記カルシウム化合物供給手段を用いて供給したカルシウム化合物とを混合してリン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出槽と、
前記リン酸カルシウム析出槽からリン酸カルシウムを回収するリン酸カルシウム回収手段と、
前記リン抽出槽中のリン抽出液および前記リン酸カルシウム析出槽中のリン抽出液の少なくとも一方の電気伝導率を連続的に測定する電気伝導率測定手段と、
前記電気伝導率測定手段で測定した前記リン抽出槽中のリン抽出液の電気伝導率を用いて、前記汚泥焼却灰供給手段を用いた汚泥焼却灰の供給を制御するリン抽出制御手段、並びに、前記電気伝導率測定手段で測定した前記リン酸カルシウム析出槽中のリン抽出液の電気伝導率を用いて、前記カルシウム化合物供給手段を用いたカルシウム化合物の供給および前記リン酸カルシウム回収手段を用いたリン酸カルシウムの回収の少なくとも一つを制御するリン酸カルシウム析出制御手段の少なくとも一方と、
を備えることを特徴とする、汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111643(P2012−111643A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259383(P2010−259383)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】