説明

汚濁水浄化システム及び船舶

【課題】本発明は、装置の小型化を図るとともに、磁性マイクロフロック、及び磁性フロックを良好に生成することができる凝集装置を備えた汚濁水浄化システム及び船舶を提供する。
【解決手段】凝集装置14は、急速攪拌槽14A、減速室14C、緩速攪拌槽14Bが同一のケーシング40に組み付けられて一体構造の装置として構成されている。減速室は、急速攪拌槽から流出された速度の早い処理水を減速するために2枚の堰42、44によって迷路状に形成されている。また、凝集装置の急速攪拌槽、減速室、緩速攪拌槽は、空気が抜かれて処理水が満水状態となっている。これにより、この汚濁水浄化システムを船に搭載し、波によって船に揺れが生じても、凝集装置の各槽において処理水は波立つことはなく、急速攪拌槽から減速室を介して緩速攪拌槽に円滑に流動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚濁水浄化システム及び船舶に係り、急速攪拌槽によって原水を高速で攪拌した後、この原水を緩速攪拌槽によって低速で攪拌することにより、原水中に磁性フロックを生成させる凝集装置を備えた汚濁水浄化システム及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
下水や工場排水等の原水中に存在する汚濁物質を除去する装置として、従来から凝集装置、及び磁気分離装置等からなる汚濁水浄化システムが知られている。凝集装置は、原水中に凝集剤と磁性粉を添加し、これらを攪拌することにより汚濁物質を、磁性を帯びた磁性フロックとして原水中に生成する。そして磁気分離装置は、凝集装置で生成された磁性フロックを、多数の磁石を配設した磁気ディスクに吸着して分離除去する。
【0003】
特許文献1には、原水を高速で攪拌する第1攪拌槽と原水を低速で攪拌する第2攪拌槽とを備え、これらの攪拌槽によって原水中に磁性フロックを生成させる凝集装置が開示されている。
【0004】
この凝集装置は、第1攪拌槽と第2攪拌槽とが配管を介して連結されており、第1攪拌槽によって原水を急速攪拌することにより、数百μm程度の大きさの磁気マイクロフロックを生成し、この磁気マイクロフロックを、前記配管を介して第2攪拌槽に原水とともに送水する。そして、第2攪拌槽によって原水を緩速攪拌することにより、前記磁気マイクロフロックを数mm程度の大きさの磁気フロックに生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−218887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の凝集装置は、第1攪拌槽と第2攪拌槽とが配管を介して別体で構成された装置なので、装置自体が大型化するという問題があった。
【0007】
また、特許文献1の凝集装置は、第1攪拌槽と第2攪拌槽とに流入した原水が自由表面を有しているので、船のような揺動する環境下では、この自由表面が揺動することにより、第1攪拌槽内の流れ、及び第2攪拌槽内の流れ(層流)に影響を及ぼし、磁性マイクロフロック、及び磁性フロックを良好に生成できないという問題もあった。
【0008】
更に、特許文献1の凝集装置は、第1攪拌槽からの高速の原水が配管を介して第2攪拌槽に直接流入するので、第2攪拌槽内の原水に乱流が生じ、生成された磁性フロックがその乱流により破壊されるというおそれも問題もあった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、装置の小型化を図るとともに、磁性マイクロフロック、及び磁性フロックを良好に生成することができる凝集装置を備えた汚濁水浄化システム及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、磁性粉と凝集剤とが添加された原水を第1の回転速度で回転する攪拌羽根によって急速攪拌することにより、原水中に磁性マイクロフロックを生成させる急速攪拌槽と、前記急速攪拌槽から流出された原水を所定の流速に減速するとともに、ここで高分子凝集剤が原水中に添加される減速室と、前記減速室から流出された原水を前記第1の回転速度よりも低速の第2の回転速度で回転する攪拌羽根によって低速攪拌することにより、原水中に磁性フロックを生成させる緩速攪拌槽と、からなる凝集装置を備え、前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽は同一のケーシングに組み付けられて一体化されるとともに密閉され、前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水が満水状態で通過する前記凝集装置を、船舶に搭載することを特徴とする汚濁水浄化システムを提供する。
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために、磁性粉と凝集剤とが添加された原水を第1の回転速度で回転する攪拌羽根によって急速攪拌することにより、原水中に磁性マイクロフロックを生成させる急速攪拌槽と、前記急速攪拌槽から流出された原水を所定の流速に減速するとともに、ここで高分子凝集剤が原水中に添加される減速室と、前記減速室から流出された原水を前記第1の回転速度よりも低速の第2の回転速度で回転する攪拌羽根によって低速攪拌することにより、原水中に磁性フロックを生成させる緩速攪拌槽と、からなる凝集装置を備え、前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽は同一のケーシングに組み付けられて一体化されるとともに密閉され、前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水が満水状態で通過する前記凝集装置を搭載することを特徴とする船舶を提供する。
【0012】
本発明によれば、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽を同一のケーシングに組み付けて一体化したため、装置の小型化を図ることができる。また、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽を密閉構造とし、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水を満水状態で通過させたので、原水は急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において気液界面(自由表面)を持たない。これにより、船のような揺動する環境下にあっても、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水は乱れることなく円滑に流れる。これにより、磁性マイクロフロック、及び磁性フロックを良好に生成することができる。
【0013】
本発明の一態様は、前記緩速攪拌槽は、複数段の連続した多段攪拌槽であり、各攪拌槽には攪拌羽根が設けられ、各攪拌羽根の回転速度は、生成された前記磁性フロックが原水の流速によって破壊されないように、原水の上流側から下流側に向けて低速となるように設定されていることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様によれば、緩速攪拌槽の各攪拌槽に設けられた攪拌羽根の回転速度を、生成された磁性フロックが原水の流速によって破壊されないように、原水の上流側から下流側に向けて低速となるように設定した。これにより、緩速攪拌槽において磁性フロックを良好に生成することができる。
【0015】
本発明の一態様は、前記多段攪拌槽は隣接する槽が堰によって仕切られるとともに、上流側の槽の攪拌羽根の周速と該上流側の槽から下流側の槽に流出する原水の速度とが等しくなるように、上流側の槽と下流側の槽とを仕切る堰に形成された原水流出用開口部の大きさが設定されていることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様によれば、緩速攪拌槽の多段攪拌槽は隣接する槽が堰によって仕切られるとともに、上流側の槽の攪拌羽根の周速と該上流側の槽から下流側の槽に流出する原水の速度とが等しくなるように、上流側の槽と下流側の槽とを仕切る堰に形成された原水流出用開口部の大きさが設定されている。これにより、緩速攪拌槽において磁性フロックを良好に生成することができる。
【0017】
急速攪拌槽は、密閉式で、かつ原水を満水になる状態で使用して自由表面を有しないようにエア及び水抜き管を備えることが好ましい。自由表面を有すると、船のような揺動する環境下では、この自由表面が揺動し、それが急速攪拌槽内の原水の流れに影響を及ぼすからである。これに対して本発明の如く、急速攪拌槽を満水密閉状態で使用すれば、揺動環境下であっても、急速攪拌槽内の原水の流れが揺動の影響を受けない。本発明の急速攪拌槽は、原水が連続的に供給される連続攪拌槽であるが、満水密閉状態で使用されるため、内部の原水の流れは、ポンプ由来の圧力勾配、急速攪拌槽内部構造、及び内部の攪拌装置により決定され、その流れは揺動や傾きに依存しない。すなわち、急速攪拌槽、或いは攪拌機からみた座標系からは処理の流れは変化しない。
【0018】
また、急速攪拌槽においては、急速攪拌槽の攪拌機の軸に対し、急速攪拌槽の平均流れの方向が平行になるように、急速攪拌槽の出入り口の法線方向を攪拌機の軸と垂直に配置した構造とすることが好ましい。出入り口の法線方向と攪拌機の軸の方向を垂直に配置することにより、急速攪拌槽内の平均的な流れの方向は軸流方向に一致する。これにより、攪拌羽根の回転による大型の回転型循環による流路の短絡が生じ難くなる。加えて、軸周りの攪拌機の回転に沿った流れが生じ、水理学的滞留時間の理想値に近い実滞留時間を実現することができる。
【0019】
更に、急速攪拌槽においては、急速攪拌槽の入口の法線方向に対し、攪拌羽根の面が入口近傍に移動する際、攪拌羽根の前面法線が流入流体法線と対向するように配置することが好ましい。入口の法線方向と、攪拌羽根の面が入口に接近する際、入口の法線方向流れに対し、攪拌羽根の面前面からの吐き出し流れが抗するため、急速攪拌槽に流入する流れの短絡を回避できる。
【0020】
更にまた、急速攪拌槽においては、密閉角型槽の構造とすることが好ましい。急速攪拌槽を角型攪拌槽とすることにより、内部に攪拌混合反応に必要な乱れを促進するための邪魔板等の構造物を設置する必要が無くなる。
【0021】
緩速攪拌槽においても同様に、密閉式で、かつ原水を満水になる状態で使用して自由表面を有しないようにエア及び水抜き管を備えることが好ましい。これにより、緩速攪拌槽が満水状態で気液界面(自由表面)を持たないため、自由表面による流れへの影響が現れない。具体的には、船の揺動する環境にあっては、この自由表面が移動し、それが緩速攪拌槽内の流れに影響を及ぼす。しかしながら、緩速攪拌槽を満水状態で使用することにより、揺動環境下であっても、緩速攪拌槽内の流れが揺動の影響を受けない。これに対して、攪拌槽内に空気層があり自由表面を有する場合、攪拌槽が揺動すると内部の水(空気も含めて)が運動する。発明の緩速攪拌槽は、水の連続的な出入りのある連続攪拌槽であるが、満水密閉状態で使用されるため、内部の水の流れは、ポンプ由来の圧力勾配、緩速攪拌槽内部構造、及び内部の攪拌装置により決定され、その流れは揺動や傾きに依らない。すなわち、緩速攪拌槽、或いは攪拌機からみた座標系からは流れが変化しない。
【0022】
また、急速攪拌槽と緩速攪拌槽との中間位置で、かつ緩速攪拌槽の一部として、迂流構造を有する減速室を設け、磁性フロック生成手段に流入する水の流速を段階的に低下させる構造を有している。急速攪拌槽と緩速攪拌槽とは別の攪拌槽であるが、これらは直列配置される一連の連続攪拌反応槽であるため、流路配管によって連結される。急速攪拌槽と緩速攪拌槽との中間部に減速室を設け、かつ減速室内の流路を迂流式にすることにより、減速室の大型化を回避しつつ、原水の速度を減速することが可能となる。これにより、緩速攪拌槽へ流入する流れが短絡することを回避できる。
【0023】
また、緩速攪拌槽においても、緩速攪拌槽の攪拌機の軸に対し、緩速攪拌槽の平均流れの方向が平行になるように、緩速攪拌槽の出入り口の法線方向を攪拌機の軸と垂直に配置した構造とすることが好ましい。出入り口の法線方向と攪拌機の軸の方向を垂直に配置することにより、緩速攪拌槽内の平均的な流れの方向は軸流方向に一致する。これにより、攪拌羽根の回転による大型の回転型循環による流路の短絡が生じ難くなる。加えて、軸周りの攪拌機の回転に沿った流れが生じ、水理学的滞留時間の理想値に近い実滞留時間を実現することができる。
【0024】
更に、緩速攪拌槽においても、緩速攪拌槽の入口の法線方向に対し、攪拌羽根の面が入口近傍に移動する際、攪拌羽根の前面法線が流入流体法線と対向するように配置することが好ましい。入口の法線方向に対し、攪拌羽根の面が入口に接近する際、入口の法線方向流れに対し、攪拌羽根の面前面からの吐き出し流れが抗するため、緩速攪拌槽に流入する流れの短絡を回避できる。
【0025】
更にまた、緩速攪拌槽においても、密閉角型多段槽の構造とすることが好ましい。緩速攪拌槽を角型攪拌槽とすることにより、内部に攪拌混合反応に必要な乱れを促進するための邪魔板等の構造物を設置する必要が無くなる。また、緩速攪拌槽を多段直列構造にし易い。攪拌回転数は、上流側から下流側へ移るに従い、段階的に小さくし、生成した磁性フロックの破壊を回避し、成長を促進することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る汚濁水浄化システム及び船舶によれば、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽を同一のケーシングに組み付けて一体化したため、装置の小型化を図ることができる。また、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽を密閉構造とし、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水を満水状態で通過させたので、原水は急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において自由表面を持たない。これにより、船のような揺動する環境下にあっても、急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水は乱れることなく円滑に流れるので、磁性マイクロフロック、及び磁性フロックを良好に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態の凝集装置を組み込んだ汚濁水浄化システムのブロック図
【図2】汚濁水浄化システムを構成する装置の概念図
【図3】図2に示した凝集装置の内部を透視した斜視図
【図4】凝集装置の他の実施の形態を示した模式図
【図5】凝集装置の他の実施の形態を示した模式図
【図6】凝集装置の他の実施の形態を示した模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明に係る汚濁水浄化システム及び船舶の好ましい実施の形態について詳説する。
【0029】
図1は、実施の形態の凝集装置14を、汚濁水浄化システム10に組み込んだフローを説明するブロック図である。また、図2は、汚濁水浄化システム10を構成する凝集装置14、磁気分離装置20、フィルタ分離装置24の概念図である。
【0030】
図1に示す汚濁水浄化システム10では、原水が原水ポンプ12によって、凝集装置14の急速攪拌槽14Aに送水される。また、原水ポンプ12と急速攪拌槽14Aとを連結する配管の中途部に、磁性粉を添加する磁性粉添加装置16と、凝集剤を添加する凝集剤添加装置18とが設けられ、磁性粉及び凝集剤が配管内を流れる原水中に添加される。磁性粉としては、例えば四三酸化鉄を好ましく用いることができる。また、凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム、塩化鉄、硫酸第二鉄等の水溶性の無機凝集剤を好ましく用いることができる。なお、図示していないが、原水中に磁性粉や凝集剤を添加する前段にストレーナを設け、このストレーナによって、数mm程度の大きさの比較的大きなゴミを除去しておくことが好ましい。
【0031】
急速攪拌槽14Aでは、原水と、添加した磁性粉及び凝集剤とを高速回転する攪拌羽根19により急速攪拌する。これにより、数十μm程度の大きさの微小な磁性マイクロフロックが、急速攪拌槽14A内で生成される。攪拌羽根19の先端部における回転周速としては、1〜2m/秒程度で行うことが好ましい。磁性マイクロフロックには磁性粉、原水中の固形浮遊粒子、バクテリア、プランクトン等が取り込まれる。
【0032】
磁性マイクロフロックを含有する原水は、凝集装置14の減速室14Cを介して緩速攪拌槽14Bに送水される。また、急速攪拌槽14Aと緩速攪拌槽14Bとを連通する減速室14Cの近傍には、高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加装置21が設けられ、減速室14Cを流れる原水中に高分子凝集剤が添加される。高分子凝集剤としては、アニオン系及びノニオン系のものを好適に用いることができる。
【0033】
緩速攪拌槽14Bは、磁性マイクロフロックと高分子凝集剤とを低速回転する攪拌羽根19を有する。この攪拌羽根19によって磁性マイクロフロックと高分子凝集剤とが緩やかに攪拌されることにより、数百μm〜数mm程度の大きな磁性フロックFが生成される。図2に示すように、緩速攪拌槽14Bは、3段の連続した多段攪拌槽(A、B、C)として構成されている。この場合、上流側の攪拌槽Aから下流側の攪拌槽Cに向うに従って、各々に設けられた攪拌羽根19の回転速度が低速になるように設定されている。これにより、上流側の攪拌槽Aから下流側の攪拌槽Cに向うに従って、磁性マイクロフロックが大きく成長していくとともに、成長した磁性フロックFが攪拌羽根19で破壊されるのを防止できる。例えば、攪拌羽根19の先端部における回転周速としては、攪拌槽Aが0.5〜1m/秒程度、攪拌槽Bが0.3〜0.7m/秒程度、攪拌槽Cが0.1〜0.3m/秒程度であることが好ましい。
【0034】
凝集装置14は図2の如く、急速攪拌槽14A、減速室14C、緩速攪拌槽14Bが同一の横型ケーシング40に組み付けられて一体構造の装置として構成されている。減速室14Cは、急速攪拌槽14Aから流出された速度の早い原水を減速するために2枚の堰42、44によって迷路状に形成されている。
【0035】
また、凝集装置14の急速攪拌槽14A、減速室14C、緩速攪拌槽14Bは、空気が抜かれて原水が満水状態となっている。これにより、この汚濁水浄化システム10を船に搭載し、波によって船に揺れが生じても、凝集装置14の各槽14A、14C、14Bにおいて原水は揺動する(波立つ)ことはなく、急速攪拌槽14Aから減速室14Cを介して緩速攪拌槽14Bに円滑に流動する。図2中符号46は、各層(急速攪拌槽14A、緩速攪拌槽14Bの多段攪拌槽(A、B、C))の上部に設けられた空気抜きバルブである。
【0036】
所定の大きさに成長した磁性フロックFを含有する処理水は、磁気分離装置20に送水される。磁気分離装置20は、処理水中の磁性フロックFを磁性力によって吸着分離するものであり、この磁気分離装置20によって、処理水中の磁性フロックFの約95%が分離除去される。
【0037】
磁気分離装置20によって除去された磁性フロックFは、遠心分離機やベルトプレス機等の脱水装置25によって、含水率80%程度まで低減された後、埋め立て処分場や焼却場、又は堆肥製造工場等にトラック等に搬送されて処理される。
【0038】
一方、磁気分離装置20で処理された処理水は、フィルタ分離装置24に送水される。
【0039】
フィルタ分離装置24では、処理水が処理水供給管32を介して回転するドラム型フィルタ26の内側に供給される。ドラム型フィルタ26の内側に供給された処理水は、ドラム型フィルタ26を内側から外側に流出することにより濾過され、処理水に残存する磁性フロックF等の捕集物がドラム型フィルタ26の約25μmのメッシュ状フィルタによって除去される。これにより、ゴミ、固形浮遊粒子、バクテリア、プランクトン等の汚濁物質が含まれる処理水が浄化される。
【0040】
ドラム型フィルタ26の内側に付着した磁性フロックF等の捕集物は、ドラム型フィルタ26の上方に配設されたスプレーノズル28から水がドラム型フィルタ26に向けて噴射されることによって、ドラム型フィルタ26内のホッパ34に落下し、捕集物排出管36を介してフィルタ分離装置24の外に排出される。この場合、ドラム型フィルタ26によって浄化された処理水の一部が、循環ポンプ29によってスプレーノズル28に戻され、スプレーノズル28から噴射される水として利用されている。また、磁性フロックF等の捕集物とスプレーノズル28から噴射された水は、捕集物排出管36に連結されたポンプ30によって原水ポンプ12の前段に戻される。
【0041】
次に、凝集装置14の構成、及び特徴について詳述する。
【0042】
この凝集装置14は、図2、図3に示すように急速攪拌槽14A、減速室14C、及び緩速攪拌槽14Bを同一のケーシング40に組み付けて一体化している。このため、急速攪拌槽と緩速攪拌槽とを配管を介して連結した従来の凝集装置と比較して、装置の小型化が図られている。
【0043】
また、急速攪拌槽14A、減速室14C、及び緩速攪拌槽14Bを密閉構造とし、急速攪拌槽14A、減速室14C、及び緩速攪拌槽14Bにおいて原水を満水状態で通過させたので、原水は急速攪拌槽14A、減速室14C、及び緩速攪拌槽14Bにおいて自由表面を持たない。これにより、船のような揺動する環境下にあっても、急速攪拌槽14A、減速室14C、及び緩速攪拌槽14Bにおいて原水は乱れることなく層流状に円滑に流れる。これにより、磁性マイクロフロック、及び磁性フロックFを良好に生成することができる。
【0044】
また、この凝集装置14の緩速攪拌槽14Bは、3段の連続した多段攪拌槽であり、緩速攪拌槽14Bの各攪拌槽A、B、Cには攪拌羽根19、19、19が設けられている。そして、各攪拌羽根19、19、19の回転速度は前述の如く、生成された磁性フロックFが原水の流速によって破壊されないように、原水の上流側から下流側に向けて低速となるように設定されている。これにより、緩速攪拌槽14Bの各攪拌槽A、B、Cにおいて磁性フロックFを良好に生成することができる。
【0045】
更に、緩速攪拌槽14Bの隣接する攪拌槽Aと攪拌槽Bとは堰48によって仕切られるとともに、隣接する攪拌槽Bと攪拌槽Cとが堰50によって仕切られている。そして、上流側の攪拌槽Aの攪拌羽根19の周速(0.5〜1m/秒程度)と、この攪拌槽Aから下流側の攪拌槽Bに流出する原水の速度とが等しくなるように、上流側の攪拌槽Aと下流側の攪拌槽Bとを仕切る堰48に形成された原水流出用開口部48Aの大きさが設定されている。同様に、上流側の攪拌槽Bの攪拌羽根19の周速(0.3〜0.7m/秒程度)と、この攪拌槽Bから下流側の攪拌槽Cに流出する原水の速度とが等しくなるように、上流側の攪拌槽Bと下流側の攪拌槽Cとを仕切る堰50に形成された原水流出用開口部50Aの大きさが設定されている。そして、攪拌槽Cの攪拌羽根19の周速(0.1〜0.3m/秒程度)と、この攪拌槽Cから下流側の磁気分離装置20に流出する原水の速度とが等しくなるように、攪拌槽Cと磁気分離装置20とを凝集装置14の一方の壁面52に形成された原水流出用開口部52Aの大きさが設定されている。これにより、緩速攪拌槽14Bの各攪拌槽A、B、Cにおいて磁性フロックFを良好に生成することができる。
【0046】
なお、凝集装置14において原水は、凝集装置14の他方の壁54に形成された円形開口部54Aから急速攪拌槽14Aに流入し、図3上で反時計回り方向に回転する急速攪拌槽14Aの攪拌羽根19によって高速で攪拌される。そして、この原水は3枚の堰42、43、44からなる迷路状の減速室14Cに、堰42に形成された円形開口部42Aから入ることにより、減速室14C内でその速度が減速される。減速された原水は、堰44の下部右側に形成された原水流出用開口部44Aから、緩速攪拌槽14Bの攪拌槽Aに流入する。この時、攪拌槽Aに流入する原水の速度と、攪拌槽Aを流れる原水の速度とが等しくなるように、原水流出用開口部44Aの大きさが設定されている。そして、攪拌槽Aに流入した原水は、図3上で時計回り方向に回転する攪拌槽Aの攪拌羽根19によって低速で攪拌され、堰48の上部右側に形成された原水流出用開口部48Aから攪拌槽Bに流入する。そして、攪拌槽Bに流入した原水は、図3上で時計回り方向に回転する攪拌槽Bの攪拌羽根19によって低速で攪拌され、堰50の下部に形成された原水流出用開口部50Aから攪拌槽Cに流入する。この後、攪拌槽Cに流入した原水は、図3上で反時計回り方向に回転する攪拌槽Cの攪拌羽根19によって低速で攪拌され、壁52の上部に形成された原水流出用開口部52Aから磁気分離装置20に流入する。
【0047】
また、原水の上流側から下流側に向うに従って原水の流速が遅くなるように設定されていることから、前述した原水流出用開口部44A、48A、50A、52Bの大きさは、原水の上流側から下流側に向うに従って開口面積が大きくなるように設定されている。
【0048】
なお、実施の形態では、水平方向に各槽が連結された凝集装置14について説明したが、この形態に限定されるものではなく、図4で示す凝集装置15Aのように各槽を水平方向で四角形形状に連結したものでもよく、図5で示す凝集装置15Bのように鉛直方向に直列で連結したものでもよく、図6で示す凝集装置15Cのように鉛直方向で四角形形状に連結したものでもよい。すなわち、凝集装置の設置場所のスペースに応じて形態を変更すればよい。図4〜6の矢印は原水の流入方向、流出方向、及び攪拌羽根の回転方向をそれぞれ示している。
【0049】
なお、図4〜図6において、図3に示した凝集装置14と同一又は類似の部材については同一の符号を付しているので、ここではその説明を省略する。また、図6の凝集装置15Cでは、原水流出用開口部48Aから流出した原水を、その槽の上部まで案内するための堰49が設けられ、前記原水は堰49の上部に形成された原水流出用開口部49Aから次槽に流出する。
【符号の説明】
【0050】
10…汚濁水浄化システム、12…原水ポンプ、14…凝集装置、14A…急速攪拌槽、14B…緩速攪拌槽、14C…減速室、16…磁性粉添加装置、18…凝集剤添加装置、19…攪拌羽根、20…磁気分離装置、24…フィルタ分離装置、25…脱水装置、26…ドラム型フィルタ、28…スプレーノズル、29…循環ポンプ、30…ポンプ、32…処理水供給管、33…流出孔、34…ホッパ、36…捕集物排出管、40…ケーシング、42、43、44、48、50…堰、46…空気抜きバルブ、F…磁性フロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉と凝集剤とが添加された原水を第1の回転速度で回転する攪拌羽根によって急速攪拌することにより、原水中に磁性マイクロフロックを生成させる急速攪拌槽と、前記急速攪拌槽から流出された原水を所定の流速に減速するとともに、ここで高分子凝集剤が原水中に添加される減速室と、前記減速室から流出された原水を前記第1の回転速度よりも低速の第2の回転速度で回転する攪拌羽根によって低速攪拌することにより、原水中に磁性フロックを生成させる緩速攪拌槽と、からなる凝集装置を備え、
前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽は同一のケーシングに組み付けられて一体化されるとともに密閉され、前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水が満水状態で通過する前記凝集装置を、船舶に搭載することを特徴とする汚濁水浄化システム。
【請求項2】
前記緩速攪拌槽は、複数段の連続した多段攪拌槽であり、各攪拌槽には攪拌羽根が設けられ、各攪拌羽根の回転速度は、生成された前記磁性フロックが原水の流速によって破壊されないように、原水の上流側から下流側に向けて低速となるように設定されている請求項1に記載の汚濁水浄化システム。
【請求項3】
前記多段攪拌槽は隣接する槽が堰によって仕切られるとともに、上流側の槽の攪拌羽根の周速と該上流側の槽から下流側の槽に流出する原水の速度とが等しくなるように、上流側の槽と下流側の槽とを仕切る堰に形成された原水流出用開口部の大きさが設定されている請求項2に記載の汚濁水浄化システム。
【請求項4】
磁性粉と凝集剤とが添加された原水を第1の回転速度で回転する攪拌羽根によって急速攪拌することにより、原水中に磁性マイクロフロックを生成させる急速攪拌槽と、前記急速攪拌槽から流出された原水を所定の流速に減速するとともに、ここで高分子凝集剤が原水中に添加される減速室と、前記減速室から流出された原水を前記第1の回転速度よりも低速の第2の回転速度で回転する攪拌羽根によって低速攪拌することにより、原水中に磁性フロックを生成させる緩速攪拌槽と、からなる凝集装置を備え、
前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽は同一のケーシングに組み付けられて一体化されるとともに密閉され、前記急速攪拌槽、減速室、及び緩速攪拌槽において原水が満水状態で通過する前記凝集装置を搭載することを特徴とする船舶。
【請求項5】
前記緩速攪拌槽は、複数段の連続した多段攪拌槽であり、各攪拌槽には攪拌羽根が設けられ、各攪拌羽根の回転速度は、生成された前記磁性フロックが原水の流速によって破壊されないように、原水の上流側から下流側に向けて低速となるように設定されている請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記多段攪拌槽は隣接する槽が堰によって仕切られるとともに、上流側の槽の攪拌羽根の周速と該上流側の槽から下流側の槽に流出する原水の速度とが等しくなるように、上流側の槽と下流側の槽とを仕切る堰に形成された原水流出用開口部の大きさが設定されている請求項5に記載の船舶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−49056(P2013−49056A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233653(P2012−233653)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2007−256403(P2007−256403)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】