説明

決済システムおよびその処理方法

【課題】店舗端末を所有する当該店舗の業者に対してETCカードを用いた決済のサービスを提供できる決済システムを提供する。
【解決手段】路側機が、暗号化されたETCカード読取情報を車載器から無線信号により受信して、当該ETCカード読取情報を出力する。また店舗端末が、挿入されたETCカードより読み取ったETCカード読取情報を暗号化して出力する。また外部装置が、ETCカード読取情報を入力して復号するセキュアアプリケーションモジュールを有し、当該復号した結果に基づいて前記ETCカード読取情報を特定するためのカード特定情報を算出して、ETCカード読取情報の出力元の路側機または店舗端末に当該カード特定情報を出力する。そして、決済用計算装置が、路側機から入力したカード特定情報と、店舗端末から入力したカード特定情報とが一致する場合に、所定のサービス処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ETC(Electronic Toll Collection)カードを用いて決済処理を行う決済システムおよびその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の通行料を収受し課金を行うシステムとして、ETCカードを用いたシステムが利用されている。当該ETCカードを用いたシステムでは、ETCカードに記録されているカード番号などの秘匿性の高い情報を扱うため、高度な暗号処理を行って、無線通信により車載器と路側機の間で情報を送受信している。より具体的には、車両に搭載された車載器がETCカードから読み取った情報を高度に暗号化して無線送信する。そして、道路上に設置され車載器から無線送信された暗号化情報を受信する路側機が、その高度に暗号化された暗号化情報の復号処理を行う。なお、本発明の関連技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−257111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなETCカードを用いるシステムでは高度な暗号処理およびその復号処理のために、SAM(セキュリティ・アクセス・モジュール)と呼ばれるハードウェアを搭載している。当該SAMはハードウェアによって暗号処理および復号処理を行うものであるが、ETCカードの情報の安全性を確保するために厳格に管理されており、特定の事業者以外はその利用を行うことが制限されている。そして、復号処理を行うことのできるSAMを備えた路側機などの装置は高価であり、また盗難防止のための措置に高度な技術および費用がかかることから、一般の事業者が復号処理を行うことの出来るSAMを備えた装置を利用することが困難となっている。
しかしながら、多くの事業者がETCカードを利用した料金決済を利用することのできるシステムが求められており、ETCカード読取情報の復号処理を行うことの出来るSAMを備えた装置の使用が一般に広く提供できることが望ましい。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる決済システム、外部装置、処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、暗号化されたETC(Electronic Toll Collection)カード読取情報を車載器から無線信号により受信して、当該ETCカード読取情報を出力する路側機と、挿入されたETCカードより読み取った前記ETCカード読取情報を暗号化して出力する店舗端末と、前記ETCカード読取情報を入力して復号するセキュアアプリケーションモジュールを有し、当該復号した結果に基づいて前記ETCカード読取情報を特定するためのカード特定情報を算出して、ETCカード読取情報の出力元の前記路側機または前記店舗端末に当該カード特定情報を出力する復号装置と、前記路側機から入力したカード特定情報と、前記店舗端末から入力したカード特定情報とが一致する場合に、所定のサービス処理を行うサービス処理装置と、を備えることを特徴とする決済システムである。
【0007】
また本発明は、上述の決済システムにおいて、前記サービス処理装置は、前記路側機から入力したカード特定情報と、前記店舗端末から入力したカード特定情報とが一致する場合に、当該カード特定情報に対応付けて割引をすることを示す割引フラグを記憶部に記憶し、前記路側機から入力した決済処理要求に基づいて当該路側機の備わる駐車場の利用料金の決済時に割引処理を行うことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述の決済システムにおいて、前記復号装置は、前記路側機および前記店舗端末と通信ネットワークを介して接続されることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述の決済システムにおいて、2つの前記復号装置を有し、一方の前記復号装置が前記路側機に備えられ、他方の復号装置が前記店舗端末と通信ネットワークを介して接続されることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述の決済システムにおいて、2つの前記復号装置を有し、一方の復号装置が前記路側機と通信ネットワークを介して接続され、他方の復号装置が前記店舗端末と通信ネットワークを介して接続されることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、決済システムの処理方法であって、前記決済システムの路側機が、暗号化されたETC(Electronic Toll Collection)カード読取情報を車載器から無線信号により受信して、当該ETCカード読取情報を出力し、前記決済システムの店舗端末が、挿入されたETCカードより読み取った前記ETCカード読取情報を出力し、前記決済システムの復号装置が、前記ETCカード読取情報を入力して復号するセキュアアプリケーションモジュールを有し、当該復号した結果に基づいて前記ETCカード読取情報を特定するためのカード特定情報を算出して、ETCカード読取情報の出力元の前記路側機または前記店舗端末に当該カード特定情報を出力し、前記決済システムの決済装置が、前記路側機および前記店舗端末のそれぞれより前記カード特定情報又は当該カード特定情報に紐付けられて前記路側機または前記店舗端末で記憶する決済用情報に基づいて、決済処理を行うことを特徴とする処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、復号化用のSAMを、通信ネットワークを介して接続された外部装置(復号装置)に設けると共に、当該外部装置が路側機や店舗端末と接続されるように構成した。このように路側機と店舗端末のそれぞれが通信ネットワークを介して外部装置と接続することで、店舗端末を所有する当該店舗の業者に対して、ETCカード読取情報を用いた決済のサービスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】決済システムの構成を示すブロック図である。
【図2】決済システム内の車載器と路側機の機能を示すブロック図である。
【図3】決済システム内の店舗端末の機能を示すブロック図である。
【図4】決済システム内の外部装置と決済用計算装置の機能を示すブロック図である。
【図5】決済システムの処理フローを示す第1の図である。
【図6】決済システムの処理フローを示す第2の図である。
【図7】決済システムの処理フローを示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による決済システムを図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による決済システムの構成を示すブロック図である。
この図において、符号1は車載器である。当該車載器1は自家用車などの車両に搭載されており、ETCカードが挿入口に挿入できるような構成となっている。車載器1は、挿入口に挿入されたETCカードから情報を読み取り、当該読み取った情報(以下、ETCカード読取情報と呼ぶ)を暗号化して無線信号により車外の路側機に送信し、またその応答として、当該路側機から課金処理結果等の情報を無線信号により受信する。
また、符号2は路側機である。当該路側機2は道路脇や駐車場等の入口や出口に設置され、車載器1と無線信号により通信を行うと共に、車載器1から受信した暗号化されたETCカード読取情報を、通信ネットワークを介して他の装置へ転送する。また路側機2は、決済額などの情報を一時的に記憶する装置である。
【0015】
また外部装置3(復号装置)は、路側機2や店舗端末から通信ネットワークを介して受信したETCカード読取情報を復号するSAM(セキュアアプリケーションモジュール)を有し、当該復号した結果に基づいてETCカード読取情報を特定するためのカード特定情報を算出して路側機2や店舗端末へ送信する装置である。
また決済用計算装置4(サービス処理装置)は、路側機2や店舗端末から通信ネットワークを介して受信した情報を用いて決済額の算出や、各種サービス処理を行う装置である。決済額としては、例えば駐車場の利用料金や、道路の通行料金などである。
また店舗端末5は、店舗などに設置された決済用の端末であり、ETCカードの挿入口が設けられており、当該ETCカードに記録されている情報を取得する。当該店舗端末5に挿入されるETCカードは、車両に設けられた車載器1から来店者が抜いて持参したものであり、店舗における決済用のカードとして利用される。
【0016】
図2は同実施形態による決済システム内の車載器と路側機の機能を示すブロック図である。
この図で示すように、車載器1は、挿入口に挿入されたETCカード10内のメモリに記録されているETCカード情報を読み取る読取部11と、ETCカード読取情報を暗号化するSAM(Secure Application Module)12と、車載器1の各処理部を制御する制御部13と、暗号化されたETCカード読取情報を無線信号により送信する無線通信部14とを備えている。なお、読取部11によるETCカード10のメモリに記録されている情報の読み取りは、SAM12によって制御される。このとき当該SAM12は所定の規則によってETCカード10に記録されている情報を読み取る制御を読取部11に対して行う。つまりSAM12による所定の規則に基づく処理でなければETCカード10に記録されている情報が読み取れない構成となっている。
【0017】
また路側機2は、車載器1と無線信号により情報を送受信する無線通信部21と、各処理部を制御する制御部22と、決済額を管理する決済額管理部23と、課金処理要求の送信を行う課金処理要求部24と、外部装置3や決済用計算装置4と有線の通信ネットワークを介して情報を送受信する有線通信部25と、処理に利用する各種情報を記憶する記憶部26と、を備えている。
【0018】
図3は同実施形態による決済システム内の店舗端末の機能を示すブロック図である。
この図が示すように、店舗端末5は、挿入口に挿入されたETCカード10内のメモリに記録されているETCカード情報(ETCカード読取情報)を読み取る読取部51と、ETCカード読取情報を暗号化するSAM57と、決済アプリケーションなどのアプリケーション処理を行うアプリケーション部52と、店舗端末5内の各処理部を制御する制御部53と、外部装置3や決済用計算装置と通信処理を行う通信処理部54と、キーボードやテンキー、バーコード読取装置、店舗端末5に備えられたタッチパネルセンサ等の入力装置からの情報を入力する入力部55と、モニタなどの表示部56と、各種情報を記憶する記憶部58と、を備えている。なお、読取部51によるETCカード10のメモリに記録されている情報の読み取りは、SAM57によって制御される。このとき当該SAM57は所定の規則によってETCカード10に記録されている情報を読み取る制御を読取部51に対して行う。つまりSAM57による所定の規則に基づく処理でなければETCカード10に記録されている情報が読み取れない構成となっている。
【0019】
図4は同実施形態による決済システム内の外部装置と決済用計算装置の機能を示すブロック図である。
この図が示すように、外部装置3は、路側機2や店舗端末5と通信する通信処理部31、外部装置3内の各処理部を制御する制御部32、路側機2や店舗端末5より受信した暗号化されたETCカード読取情報を復号するSAM33、復号したETCカード読取情報を用いてカード特定情報を算出するカード特定情報算出部34、カード会社サーバと通信して課金処理を行う課金処理部35と、処理に利用する各種情報を記憶する記憶部36と、を備えている。
また決済用計算装置4は、路側機2と通信する通信処理部41、および決済処理を行う決済処理部42、各種情報を記憶する記憶部43を備えている。
【0020】
ここで、本実施形態による決済システムは、図1〜図4で示すように路側機2に備わっていた復号化用のSAMを、通信ネットワークを介して接続された外部装置3に設けると共に、当該外部装置3が路側機2や店舗端末5と接続されるように構成した。このように路側機2と店舗端末5のそれぞれが通信ネットワークを介して外部装置3と接続することで、店舗端末5を所有する当該店舗の業者に対して、ETCカード読取情報を用いた決済のサービスを提供することが可能となる。
また、復号化用のSAM33を備えた外部装置3を1箇所で管理することにより、高価で厳重なセキュリティ管理が必要であることにより特定の事業者以外が利用できなかった、ETCカード読取情報の復号化処理を行うことのできるSAM33を備えた外部装置3の使用を、一般の多くの事業者に提供することができる。
【0021】
図5は決済システムの処理フローを示す第1の図である。
図6は決済システムの処理フローを示す第2の図である。
図7は決済システムの処理フローを示す第3の図である。
次に、決済システムの処理フローについて説明する。
以下の例では、路側機2が店舗の駐車場の入口や出口に備えられており、店舗端末5が店舗内の会計場所等に設置されている。また車載器1が車内に設置されている車両を、来店者が駐車場に駐車し、当該来店者が店舗内で会計を行った場合にサービス処理を行う場合の例を用いて説明する。
【0022】
まず車載器1にETCカードが挿入されている。車載器1の搭載された車両が移動し、路側機2の備えられた店舗の駐車場に接近する。そして、車両が路側機2との通信可能エリアに進入すると、路側機2は車載器1とDSRC(Dedicated Short Range Communication)通信を行うとともに、路側機2の制御部13と車載器1制御部22の間において認証処理が行われる(ステップS101)。
【0023】
そして、認証処理が完了すると、車載器1のSAM12が読取部11を介してETCカード10のメモリから情報(ETCカード読取情報)を取得する(ステップS102)。SAM12はそのETCカード読取情報を暗号化し(ステップS103)、当該暗号化したETCカード読取情報を制御部13へ出力する。制御部13は、メモリ等に記録されている車両情報(ナンバープレート情報や車種等)や車載器情報を読み取って、当該車両情報や車載器情報と、暗号化されたETCカード読取情報とを無線通信部14へ出力する。そして無線通信部14は、DSRC通信により、車両情報や車載器情報と、暗号化されたETCカード読取情報を路側機2へ送信する(ステップS104)。
【0024】
次に路側機2の無線通信部21が、車載器1から送信された車両情報や車載器情報と、暗号化されたETCカード読取情報とを受信する。そして制御部22がそれらの情報を入力する。すると制御部22は暗号化されたETCカード読取情報を有線通信部25へ出力し、当該有線通信部25が、当該ETCカード読取情報を外部装置3へ転送する(ステップS105)。他方、制御部22は、受信した車両情報や車載器情報を一時的にメモリに記録する。
【0025】
次に外部装置3の通信処理部31が、路側機2から送信された、暗号化されたETCカード読取情報を受信して、制御部32が当該暗号化されたETCカード読取情報を取得する。そして制御部32は暗号化されたETCカード読取情報をSAM33へ出力する。SAM33は暗号化されたETCカード読取情報を復号してカード特定情報算出部34へ出力する(ステップS106)。カード特定情報算出部34はETCカード読取情報に基づいて、当該ETCカード読取情報を特定できるカード特定情報を算出する(ステップS107)。例えば所定の関数f(x,α)に、ETCカード読取情報に含まれるETCカード番号(x)と、固定値のパラメータ(α)を代入して、その結果をカード特定情報と算出する。カード特定情報算出部34は、ETCカード読取情報とカード特定情報を対応付けて記憶部36に記録する。
【0026】
そして、カード特定情報算出部34は、算出したカード特定情報を制御部32へ出力し、制御部32が通信処理部31を介してETCカード読取情報の送信元の路側機2へ、カード特定情報を送信するよう制御する。そして通信処理部31が、カード特定情報を送信すると(ステップS108)、ETCカード読取情報の送信元の路側機2の有線通信部25が当該カード特定情報を受信する。そして制御部22はそのカード特定情報を取得し、一時的にメモリに格納した車両情報や車載器情報と対応付けて記憶部26に記録し、取得したカード特定情報を含む決済額管理要求を決済額管理部23に対して出力する。
【0027】
路側機2の決済額管理部23は、決済額管理要求を入力すると、その情報からカード特定情報を読み取って、当該カード特定情報に対応付けられて記憶部26に記録されている車両情報や車載器情報を読み取る。そして決済額管理部23は、読み取った車両情報や車載器情報を決済用計算装置4へ送信するよう制御部22へ要求する。すると、制御部22は、決済額管理部23から入力した車両情報や車載器情報を含む決済処理要求を、有線通信部25を介して決済用計算装置4へ送信する制御を行う(ステップS109)。またこのとき、決済額管理部23は制御部22に対し、カード特定情報を含んだ決済処理要求を送信するように要求し、制御部22が、カード特定情報と車両情報や車載器情報との組合せを含む決済処理要求を、有線通信部25を介して決済用計算装置4へ送信する制御を行うようにしてもよい。
【0028】
そして、決済用計算装置4は、車両情報や車載器情報を含む決済処理要求、またはカード特定情報と車両情報や車載器情報との組合せを含む決済処理要求を、通信処理部41にて受信する。ここで、決済用計算装置4は駐車場の利用料金を算出する場合には、1台の車両について入口に設置されている路側機2と、出口に設置されている路側機2のそれぞれより、2回の決済処理要求を受信する。従って、決済処理部42は、今回受信した決済処理要求が、1回目の決済処理要求か2回目の決済処理要求かを判定する(ステップS110)。具体的には、決済処理部42は、過去に受信した決済処理要求に含まれる情報を、その決済処理要求の受信時刻にハードディスクやメモリ等の記憶部43に記憶している。そして、決済処理部42は、今回受信した決済処理要求から車載器情報やカード特定情報を読み取って、過去に受信した決済処理要求に含まれている車載器情報やカード特定情報と一致するかを、自装置の記憶部43に記憶されている情報と比較して判定する。
【0029】
そして、決済処理部42は、自装置の記憶部43に記憶されている情報の中に、今回受信した決済処理要求に含まれる車載器情報やカード特定情報と一致する情報が存在しない場合には、今回受信した決済処理要求を1回目の決済処理要求と判定する。そして、決済処理部42は、1回目の決済処理要求に含まれる情報を、その受信時刻に対応付けて記憶部43の駐車場テーブルに記録する。なおこの時、決済処理部42は、路側機2から当該路側機2の設置されている駐車場を示す駐車場番号等を受信し、当該駐車場番号を、決済処理要求に含まれていた情報に対応付けて記憶部43に記録するようにしてもよい。そして、決済処理部42は、1回目の決済処理要求に対応して、処理完了を路側機2に通知する(ステップS111)。路側機2は処理完了を車載器1転送して、入口における車載器1と路側機2の通信が完了する。
【0030】
なお決済用計算装置4が決済処理を行うにあたりカード特定情報を用いる場合には、路側機2はカード特定情報を含む決済処理要求を、決済用計算装置4へ送信する。決済用計算装置4が決済処理を行うにあたりカード特定情報を用いない場合には、路側機2はカード特定情報を含まない決済処理要求を、決済用計算装置4へ送信する。
【0031】
ここで店舗は会計時の決済にETCカードを利用できる店舗である。つまり、車両を店舗の駐車場に駐車させた来店者(ETCカードのユーザ)は、当該店舗の会計時にETCカードを利用することができる。来店者は会計時にETCカードを利用した決済を行いたい場合、車載器1に差し込まれているETCカードを抜き、店内に持参する。そして、会計時に会計場所の店員にETCカードを渡して会計を依頼する。すると店員はETCカードを店舗端末5の挿入口に挿入し、店舗端末5に会計処理時の一連の操作を入力する。当該操作時において店舗端末5の入力部55は、バーコード読取装置から商品情報を入力して、当該商品情報に基づいてPOSサーバから価格情報を取得し制御部53へ出力する。また制御部53は、取得した商品情報や価格情報をアプリケーション部52へ出力する。そしてアプリケーション部52は、制御部53を介して、表示部56に商品情報や価格情報を表示する。また店員の操作に基づいてSAM57が読取部51を介してETCカード10のメモリから情報(ETCカード読取情報)を取得する。するとSAM57はETCカード読取情報を暗号化して、当該暗号化したETCカード読取情報を制御部53へ出力する。そして、制御部53は暗号化されたETCカード読取情報を、通信処理部54を介して外部装置3へ送信する(ステップS112)。
【0032】
次に外部装置3の通信処理部31が、店舗端末5から送信された、暗号化されたETCカード読取情報を受信して、制御部32が当該暗号化されたETCカード読取情報を取得する。そして制御部32は暗号化されたETCカード読取情報をSAM33へ出力する。SAM33は暗号化されたETCカード読取情報を復号してカード特定情報算出部34へ出力する(ステップS113)。カード特定情報算出部34はETCカード読取情報に基づいて、当該ETCカード読取情報を特定できるカード特定情報を算出する(ステップS114)。例えば所定の関数f(x,α)に、ETCカード読取情報に含まれるETCカード番号(x)と、固定値のパラメータ(α)を代入して、その結果をカード特定情報と算出する。カード特定情報算出部34は、ETCカード読取情報とカード特定情報を対応付けて記憶部36に記録する。
【0033】
そして、カード特定情報算出部34は、復号化したETCカード読取情報と、算出したカード特定情報を制御部32へ出力し、制御部32が通信処理部31を介してETCカード読取情報の送信元の店舗端末5へ、ETCカード読取情報とカード特定情報を送信するよう制御する。そして通信処理部31が、ETCカード読取情報とカード特定情報を送信すると(ステップS115)、ETCカード読取情報の送信元の店舗端末5の通信処理部54が当該ETCカード読取情報とカード特定情報を受信する。そして制御部53はそのETCカード読取情報とカード特定情報を取得し、当該ETCカード読取情報とカード特定情報と来店者が購入する商品情報やその価格情報を対応付けて記憶部58に記録する。また制御部53は、取得したETCカード読取情報とカード特定情報と、商品情報と、価格情報と、を含むサービス処理要求を、通信処理部54を介して決済用計算装置4へ送信する(ステップS116)。
【0034】
次に決済用計算装置4の通信処理部41がサービス処理要求を受信し、決済処理部42に当該サービス処理要求のデータを転送する。すると決済処理部42はサービス処理要求に含まれる商品情報、価格情報、ETCカード読取情報、カード特定情報を取得し、サービス処理の1つである商品決済処理を開始する(ステップS117)。ここで、サービス処理要求にETCカード読取情報が含まれる場合、決済処理部42は当該ETCカード読取情報からETCカード番号を判定し、カード会社への与信の問い合わせを行う商品決済処理や、商品情報に基づいて在庫消し込み等を含む商品決済処理を行う。また決済処理部42は、サービス処理の1つである駐車料金割引サービス処理を行う。たとえば決済処理部42は、サービス処理要求から取得したカード特定情報が記憶部43内の駐車情報テーブルに記録されているかを判定する(ステップS118)。事前に、路側機2より1回目の決済処理要求を受信している場合には、当該決済処理要求に含まれるカード特定情報が記憶部43に記録されている。従って、決済処理部42は、サービス処理要求より取得したカード特定情報が、駐車場テーブルに記録されている場合、当該カード特定情報に対応付けて記録される割引フラグをOFFからONに更新する(ステップS119)。ここで割引フラグがONの場合には、駐車料金が割引される。
【0035】
そして、店舗でのショッピング等が終了した来店者は、駐車場に戻り、車両に搭載されている車載器1へ再びETCカードを挿入する。そして、車両を運転して駐車場の出口から車両を出庫させる。このとき車載器1は、出口に設置されている路側機2とDSRC通信を行う。このとき、車両が駐車場の入口に進入した際の処理と同様の処理が行われる。そして、このとき決済用計算装置4の決済処理部42は、自装置の記憶部43に記憶されている情報の中に、今回受信した決済処理要求に含まれる車載器情報やカード特定情報と一致する情報が存在する場合には、今回受信した決済処理要求を2回目の決済処理要求と判定する。この場合、決済処理部42は、1回目の決済処理要求に対応付けられて記憶部に記録されている当該決済処理要求の受信時刻と割引フラグとを、カード特定情報や車載器情報に基づいて記憶部から読み取る。そして、決済処理部42は、1回目の決済処理要求の受信時刻と、今回受信した2回目の決済処理要求の受信時刻との差を、駐車時間と算出する(ステップS120)。なお、決済処理部42は、受信した決済処理要求に含まれる車種情報に応じた決済額を算出するようにしてもよい。
【0036】
ここで、決済処理部42は、例えば30分経過する度に増加する駐車料金を、30分間隔の駐車時間に対応付けて記憶部に記憶している。そして、決済処理部42は、「算出した駐車時間÷30」の小数点以下を省略した整数に対応付けられた駐車料金を記憶部から読み取り、その駐車料金を決済額と特定する(ステップS121)。または、他の算出方法としては、決済処理部42は、「算出した駐車時間÷30」の小数点以下を省略した整数に30分毎に加算される駐車料金を乗じて得た値を決済額と算出するようにしてもよい。また決済処理部42は、割引フラグがONであるかを判定する。そして、割引フラグがONである場合には駐車料金を割引処理する。例えば、所定の額を駐車料金の決済額から減じる。そして、決済処理部42は、算出した決済額を含む決済額算出結果を、決済額算出要求の送信元の路側機2へ通信処理部41を介して送信する(ステップS122)。
【0037】
次に、路側機2において決済額算出結果を受信すると、制御部22が、決済額算出要求に応じて受信した当該決済額算出結果に含まれる決済額を読み取り、決済額管理部23へ出力する。すると決済額管理部23は、決済額算出要求で送信した車載器情報や、カード特定情報に対応付けて、記憶部26に決済額を書き込む。すると、課金処理要求部24は、記憶部26に書き込まれた決済額と、その決済額に対応付けて記録されているカード特定情報を含む課金処理要求を生成し、当該課金処理要求を外部装置3に通知するよう制御部22に指示する。すると制御部22は、課金処理要求を有線通信部25を介して外部装置3へ送信する(ステップS123)。
【0038】
外部装置3は通信処理部31において課金処理要求を受信する。すると制御部32は当該課金処理要求の情報を課金処理部35に出力する。また課金処理部35は、課金処理要求から決済額とカード特定情報を読み取る。そして、課金処理部35は、読み取ったカード特定情報に対応付けられて記憶部36に記録されているETCカード読取情報を取得し、当該ETCカード読取情報と、課金処理要求から取得した決済額とを含む課金処理要求を生成する。そして、課金処理部35は、新たに生成した課金処理要求をカード会社サーバへ送信するよう、制御部32に指示する。そして、制御部32は課金処理要求をカード会社サーバへ送信する(ステップS124)。
【0039】
ここで、カード会社サーバにおいては、課金処理要求を受信し、当該課金処理要求に含まれるETCカード読取情報と決済額とを取得して、課金処理を行う。より具体的には、ETCカード読取情報からETCカード番号を得て、そのETCカード番号に対する決済額の課金の処理を行う。そして、課金処理完了通知を外部装置3へ送信する。外部装置3は、課金処理完了通知を受信すると(ステップS125)、制御部32はその課金処理完了通知を通信処理部31を介して路側機2へ送信する(ステップS126)。そして、路側機2の制御部22は、無線通信部21を介して車載器1に課金処理完了を送信する(ステップS127)。これにより、出口における路側機2と車載器1の通信が完了する。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述の決済システムによれば、路側機2に備わっていた復号化用のSAMを、通信ネットワークを介して接続された外部装置3に設けると共に、当該外部装置3が路側機2や店舗端末5と接続されるように構成した。このように路側機2と店舗端末5のそれぞれが通信ネットワークを介して外部装置3と接続することで、店舗端末5を所有する当該店舗の業者に対して、ETCカード読取情報を用いた決済のサービスを提供することが可能となる。
また、復号化用のSAM33を備えた外部装置3を1箇所で管理することにより、高価で厳重なセキュリティ管理が必要であることにより特定の事業者以外が利用できなかった、ETCカード読取情報の復号化処理を行うことのできるSAM33を備えた外部装置3の使用を、一般の多くの事業者に提供することができる。
【0041】
なお、上述の処理においては、店舗端末5からのサービス処理要求に基づいて、決済用計算装置4が駐車料金割引のためのサービス処理を行う場合の例について説明した。しかしながら駐車料金割引のサービス処理の代わりに、クーポン発行のサービス処理を行うようにしてもよい。この場合、決済用計算装置4は、店舗端末5から受信したサービス処理要求に基づいて記憶部43に1回目の決済処理要求の情報が記録されているかを判定し、1回目の決済処理要求の情報が記録されている場合には、商品決済処理の終了後、店舗端末5にクーポン出力要求を送信する。すると店舗端末5のアプリケーション部52は、レシート印字処理時にクーポン情報を共に印字処理する。これにより、レシートに印字されたクーポンに基づいて、例えば、来店者に対して、次回来店時にクーポンに基づく割引のサービスを行うことができる。
【0042】
またこの他、立体駐車場サービスに利用することもできる。例えば、決済用計算装置4は、店舗端末5から受信したサービス処理要求に基づいて記憶部43に1回目の決済処理要求の情報が記録されているかを判定する。そして決済用計算装置4の決済処理部42は、1回目の決済処理要求の情報が記録されている場合には、1回目の決済処理要求時にカード特定情報や車載器情報などに対応付けて登録された立体駐車位置番号を記憶部43から取得する。そして決済処理部42は決済処理の終了後、取得した立体駐車位置番号を店舗端末5に送信する。すると店舗端末5のアプリケーション部52は、レシート印字処理時に立体駐車位置番号を共に印字処理する。これにより、レシートに印字された立体駐車位置番号を来店者は容易に把握することができるようになる。つまり、来店者に対して、立体駐車位置番号を覚えておかなくてよいといったサービスを提供することが可能となる。
【0043】
また、荷物預かりサービスに利用することもできる。当該荷物預かりサービスは、来店者に販売した商品を一旦来店者から預かって、店舗から離れている駐車場まで配達するサービスである。この場合、例えば決済用計算装置4は、店舗端末5から受信したサービス処理要求に基づいて記憶部43に1回目の決済処理要求の情報が記録されているかを判定する。そして決済用計算装置4の決済処理部42は、1回目の決済処理要求の情報が記録されている場合には、1回目の決済処理要求時にカード特定情報や車載器情報などに対応付けて登録された駐車場番号を記憶部43から取得する。そして決済処理部42は販売商品の決済処理の終了後、取得した駐車場番号を店舗端末5に送信する。すると店舗端末5のアプリケーション部52は、駐車場番号を表示部56に表示する。そして店舗の担当者が当該表示部56に表示された駐車場番号をメモし、来店者に販売した商品を、駐車場番号で特定される駐車場まで配達する。このようなサービスによって、来店者は購入した商品を持ち歩きながら他の商品を購入するために店舗内を歩き回る必要がなくなり、サービスを向上させることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述の決済システムの構成によれば、ETCカード読取情報を復号処理するSAMの機能を備えた外部装置に店舗端末を通信接続させた。これにより、ETCカード読取情報を復号処理するSAMを備えない安価な店舗端末を所有する業者に対して、ETCカード読取情報を用いた決済のサービスのできる環境を提供することが可能となる。
また、決済用計算装置において、駐車場等に備えた路側機2から受信した決済処理要求に含まれるカード特定情報と、店舗端末5から受信したサービス処理要求に含まれるカード特定情報が一致する場合には、所定のサービス処理を行う。このような仕組みにより、ETCカードのユーザに対する様々なサービスを提供することが可能となる。
【0045】
なお、図1で示した決済システムの構成によれば、1つの外部装置3が路側機2と店舗端末5のそれぞれに接続されている。しかしながら、外部装置3と同様の機能を路側機2内部に備え、別途決済システムに外部装置3を備えて、当該外部装置3と店舗端末5とが通信ネットワークを介して接続された構成としてもよい。
【0046】
または決済システムが2つの外部装置3を備え、一方の外部装置3が路側機2と通信ネットワークを介して接続され、他方の外部装置3が店舗端末5と通信ネットワークを介して接続された構成としてもよい。
【0047】
なお、上述の決済システムにおける各装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0048】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1・・・車載器
2・・・路側機
3・・・外部装置
4・・・決済用計算装置
5・・・店舗端末
11・・・読取部
12・・・SAM
13・・・制御部
14・・・無線通信部
21・・・無線通信部
22・・・制御部
23・・・決済額管理部
25・・・有線通信部
26・・・記憶部
31・・・通信処理部
32・・・制御部
33・・・SAM
34・・・カード特定情報算出部
35・・・課金処理部
36・・・記憶部
41・・・通信処理部
42・・・決済処理部
43・・・記憶部
51・・・読取部
52・・・アプリケーション部
53・・・制御部
54・・・通信処理部
55・・・入力部
56・・・表示部
57・・・SAM
58・・・記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗号化されたETC(Electronic Toll Collection)カード読取情報を車載器から無線信号により受信して、当該ETCカード読取情報を出力する路側機と、
挿入されたETCカードより読み取った前記ETCカード読取情報を暗号化して出力する店舗端末と、
前記ETCカード読取情報を入力して復号するセキュアアプリケーションモジュールを有し、当該復号した結果に基づいて前記ETCカード読取情報を特定するためのカード特定情報を算出して、ETCカード読取情報の出力元の前記路側機または前記店舗端末に当該カード特定情報を出力する復号装置と、
前記路側機から入力したカード特定情報と、前記店舗端末から入力したカード特定情報とが一致する場合に、所定のサービス処理を行うサービス処理装置と、
を備えることを特徴とする決済システム。
【請求項2】
前記サービス処理装置は、
前記路側機から入力したカード特定情報と、前記店舗端末から入力したカード特定情報とが一致する場合に、当該カード特定情報に対応付けて割引をすることを示す割引フラグを記憶部に記憶し、
前記路側機から入力した決済処理要求に基づいて当該路側機の備わる駐車場の利用料金の決済時に割引処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の決済システム。
【請求項3】
前記復号装置は、前記路側機および前記店舗端末と通信ネットワークを介して接続される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の決済システム。
【請求項4】
2つの前記復号装置を有し、一方の前記復号装置が前記路側機に備えられ、他方の復号装置が前記店舗端末と通信ネットワークを介して接続される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の決済システム。
【請求項5】
2つの前記復号装置を有し、一方の復号装置が前記路側機と通信ネットワークを介して接続され、他方の復号装置が前記店舗端末と通信ネットワークを介して接続される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の決済システム。
【請求項6】
決済システムの処理方法であって、
前記決済システムの路側機が、暗号化されたETC(Electronic Toll Collection)カード読取情報を車載器から無線信号により受信して、当該ETCカード読取情報を出力し、
前記決済システムの店舗端末が、挿入されたETCカードより読み取った前記ETCカード読取情報を暗号化して出力し、
前記決済システムの復号装置が、前記ETCカード読取情報を入力して復号するセキュアアプリケーションモジュールを有し、当該復号した結果に基づいて前記ETCカード読取情報を特定するためのカード特定情報を算出して、ETCカード読取情報の出力元の前記路側機または前記店舗端末に当該カード特定情報を出力し、
前記決済システムのサービス処理装置が、前記路側機から入力したカード特定情報と、前記店舗端末から入力したカード特定情報とが一致する場合に、所定のサービス処理を行う
ことを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73337(P2013−73337A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210714(P2011−210714)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】