説明

沈下量予測方法及び沈下量予測プログラム

【課題】 トンネル掘進に伴う近接構造物への影響を解析するために、掘進路線周辺の地盤の沈下量を予測する。
【解決手段】 解析対象の地盤と近接構造物の構造を定義するとともに、沈下量を求める解析点を設定する過程と、2次元のFEM解析を使用して得られた掘進路線上の横断方向の沈下量から横断方向沈下曲線データを求める過程と、過去の工事において計測された縦断方向沈下曲線データが予め記憶されている中から、解析対象のトンネル掘進の土質条件、土被り及び工法が類似している工事において計測された縦断方向沈下曲線データを選択する過程と、横断方向沈下曲線データ及び縦断方向沈下曲線データから3次元沈下曲面データを求める過程と、3次元沈下曲面データを掘進路線上を移動させながら、解析点における沈下量を計算する過程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘進に伴う近接構造物への影響を解析する沈下量予測方法及び沈下量予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを掘削する場合、シールド掘進に伴う既設の近接構造物に対する影響を事前に把握し、地盤の改良や影響を受ける構造物に対して対策を立てることが重要になっている。近年、シールド掘進に伴う近接構造物への影響を予測する場合に、2次元FEM解析が用いられることが多く、各種の解析方法が提案されている。
一方、FEM解析を使用せずに、トンネルを掘削するに際して、トンネル掘削に伴う地山挙動やトンネルの変位量等を事前に予測する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−088963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、既設の構造物に近接してシールド掘進を行う場合は2次元FEM解析を用いて、シールド掘進後の最終変位量を求めているのが現状である。2次元FEM解析を用いて、シールド路線に沿ってシールド掘進に伴う地盤沈下を細かく計算するには、解析断面が多くなり時間と手間を要するとともに、シールド路線と地下鉄などの線状近接構造物が斜交する場合では、近接構造物の沈下量を2次元FEM解析で求めることには無理がある。また、シールドの進行に伴い近接構造物とシールドとの位置が変化するようなシールド掘進過程を考慮した沈下計算方法は少ないため、シールド掘進過程を考慮した解析を手軽に行うことは困難であり、多大な手間がかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、シールド掘進による先行隆起から後続沈下、最終沈下を考慮して、シールド掘進の影響範囲内にあるシールド路線に沿った近接構造物位置の地盤挙動を予測することができる沈下量予測方法及び沈下量予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、トンネル掘進に伴う近接構造物への影響を解析するために、掘進路線周辺の地盤の沈下量を予測する沈下量予測方法であって、解析対象の地盤と近接構造物の構造を定義するとともに、沈下量を求める解析点を設定する過程と、2次元のFEM解析を使用して得られた掘進路線上の横断方向の沈下量から横断方向沈下曲線データを求める過程と、過去の工事において計測された縦断方向沈下曲線データが予め記憶されている中から、解析対象のトンネル掘進の土質条件、土被り及び工法が類似している工事において計測された縦断方向沈下曲線データを選択する過程と、前記横断方向沈下曲線データ及び縦断方向沈下曲線データから3次元沈下曲面データを求める過程と、前記3次元沈下曲面データを掘進路線上を移動させながら、前記解析点における沈下量を計算する過程とを有することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記縦断方向沈下曲線データは、シールド掘進路線上の掘進移動過程の沈下量データであることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、トンネル掘進に伴う近接構造物への影響を解析するために、掘進路線周辺の地盤の沈下量を予測する沈下量予測プログラムであって、解析対象の地盤と近接構造物の構造を定義するとともに、沈下量を求める解析点を設定する処理と、2次元のFEM解析を使用して得られた掘進路線上の横断方向の沈下量から横断方向沈下曲線データを求める処理と、過去の工事において計測された縦断方向沈下曲線データが予め記憶されている中から、解析対象のトンネル掘進の土質条件、土被り及び工法が類似している工事において計測された縦断方向沈下曲線データを選択する処理と、前記横断方向沈下曲線データ及び縦断方向沈下曲線データから3次元沈下曲面データを求める処理と、前記3次元沈下曲面データを掘進路線上を移動させながら、前記解析点における沈下量を計算する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記縦断方向沈下曲線データは、シールド掘進路線上の掘進移動過程における沈下量データであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2次元のFEM解析を使用して得られた横断方向沈下曲線データと、解析対象のトンネル掘進の土質条件、土被り及び工法が類似している工事において計測された縦断方向沈下曲線データとを使用して、シールド掘進過程を考慮した3次元沈下曲面データ生成し、この3次元沈下曲面データを掘進路線上を移動させながら、解析点における沈下量を計算するようにしたため、シールド掘進による先行隆起から後続沈下、最終沈下を考慮して、シールド掘進の影響範囲内にあるシールド路線に沿った近接構造物位置の地盤挙動を簡単な処理によって予測することができ、事前検討を迅速に行うことできるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による沈下量予測方法を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。符号1は、コンピュータ等で構成される解析処理部であり、構造定義部11、2次元FEM解析部12、3次元沈下曲面生成部13及び沈下量算出部14から構成される。構造定義部11は、解析対象の地盤と近接構造物の構造を定義するとともに、沈下量を求める解析点を設定する。2次元FEM解析部12は、公知の2次元のFEM解析手法を使用してシールド掘進路線上の横断方向の沈下量を求め、求めた沈下量から横断方向沈下曲線データを求める。3次元沈下曲面生成部13は、横断方向沈下曲線データと、解析対象のトンネル掘進の土質条件、土被り及び工法が類似している工事において計測された縦断方向沈下曲線データとを使用して、シールド掘進過程を考慮した3次元沈下曲面データを生成する。沈下量算出部14は、3次元沈下曲面データを掘進路線上を移動させながら、解析点における沈下量を計算する。
【0011】
符号2は、キーボードやマウスから構成する入力部である。符号3は、ディスプレイ装置等から構成される表示部である。符号4は、構造定義部11において定義された解析対象の地盤と近接構造物の構造及び沈下量を求める解析点のデータを記憶する構造データ記憶部である。符号5は、2次元FEM解析部12において求めた横断方向沈下曲線データを記憶する横断方向沈下曲線データ記憶部である。符号6は、過去の工事において計測された縦断方向沈下曲線データが、土質条件、土被り及び工法毎に分類されて予め記憶されている縦断方向沈下曲線データ記憶部である。符号7は、3次元沈下曲面生成部13が生成した3次元沈下曲面データを記憶する3次元沈下曲面データ記憶部である。符号8は、構造定義部11において定義された解析点における沈下量データを記憶する沈下量データ記憶部である。
【0012】
次に、図1に示す装置によって各解析点における沈下量を計算する動作を説明する。沈下量の計算は、横断方向2次元FEM解析により求められる横断方向沈下曲線データと、実施工で計測されたシールド掘進による先行隆起、後続沈下を含む縦断方向の沈下曲線データとに基づいて3次元の沈下曲面データを求め、この沈下曲面データをシールド路線に沿って移動させることにより、シールド掘進の影響範囲内にある近接構造物位置の地盤挙動を求めることによって行う。
【0013】
ここで、図2を参照して、計算動作の概要を説明する。まず、解析対象の構造を定義し、解析点を設定する(ステップS1)。次に、主要近接構造物部や代表部分を含むようにシールド路線を幾つかの部分に区分し、区分毎に典型的な横断面で横断方向2次元FEM解析を行い、横断方向沈下曲線を求める(ステップS2)。土質条件、土被りおよびシールド形式、シールド径などが類似しているシールド工事の縦断方向沈下計測データから縦断方向沈下曲線を選択する(ステップS3)。
【0014】
次に、横断面の2次元FEM解析による沈下曲線データと類似工事の沈下計測結果から選択した縦断方向沈下曲線データをもとに3次元の沈下曲面データを求める(ステップS4)。このようにして求めた3次元の沈下曲面データをシールド掘進を模擬してシールド路線に沿って移動させ、移動ステップ毎に影響範囲内にある近接構造物の隆起量および沈下量を計算する(ステップS5)。このとき、3次元の沈下曲面データは、沈下計算の対象となる近接構造物などへの先行隆起の影響が始まるときからシールド掘進による沈下が収束するまで移動させることによって、シールド掘進路線上の掘進移動過程も再現して、沈下量の計算を行う。
【0015】
次に、図3〜図9を参照して、図2に示す計算動作の詳細を説明する。ここでは、地下鉄などの線状近接構造物の直下をシールドが曲線掘進しながら斜めに交差する場合を例にして説明する。
まず、解析作業者は、入力部2を操作して、シールド路線および近接構造物の平面座標の定義を行い、相互の位置関係を定義する。次に、解析作業者は、入力部2を操作して、シールド路線に沿って沈下計算格子点(解析点)を設ける(ステップS1)。これを受けて、構造定義部11は、設定された構造データを構造データ記憶部4へ書き込む。構造定義部11が行う構造定義及び解析点の設定は、公知の図形定義手段等を用いるため、詳細動作の説明は省略する。
【0016】
解析点間隔はシールド掘進方向(縦断方向)には1〜2リングピッチ程度とし、シールド路線直角方向(横断方向)は沈下量が大きくなるシールド中心部に近い範囲は1〜2m程度と細かく、シールド路線から離れて沈下量が小さくなる範囲では5mピッチ程度とする。図3に沈下計算格子点(解析点)を設定した例を示す。図3においては、説明のために粗いピッチで図示しているが、実際の計算ではシールド掘進方向には2mピッチ、シールド路線直角方向はシールド中心から15mまでは1mピッチ、15m以遠では5mピッチとしている。
【0017】
次に、解析作業者は、入力部2を操作して、主要近接構造物部や代表部分を含むようにシールド路線を幾つかの部分に区分し、区分毎に典型的な断面を選択して、シールド路線に直交した断面の2次元FEM解析を行うための2次元FEM解析モデルを定義する。このとき、各区分の2次元FEM解析モデルではシールド路線から解析モデル境界までの水平距離を一致させる。これを受けて、2次元FEM解析部12は、構造データ記憶部4に記憶されている構造データを読み出し、2次元FEM解析用のモデルを生成する。図4は縦併設シールドトンネルの2次元FEM解析モデルを定義した例であり、トンネルの土被りおよび線状近接構造物とシールドトンネルとの位置関係はシールド路線に沿って変化する。そして、2次元FEM解析部12は、2次元FEM解析モデルを使用して、FEM解析を実行し、地盤沈下量を計算する。2次元FEM解析部12が行うFEM解析処理は、公知の解析手段等を用いるため、詳細動作の説明は省略する。
【0018】
次に、2次元FEM解析部12は、シールド掘進による影響を求めたい主要近接構造物の下端深さでの地盤沈下量を2次元FEM解析結果から抽出し、補間ないし回帰により横断方向沈下曲線を求める(ステップS2)。そして、横断方向沈下曲線からシールド路線直角方向の格子点間隔で沈下量を求める。図5に、図4に示すFEM解析モデルにおいて上側シールドを先行させたときの上側シールド掘進完了時の近接構造物下端での横断方向沈下曲線データを求めた例を示す。2次元FEM解析部12は、ここで得られた横断方向沈下曲線データを横断方向沈下曲線データ記憶部5へ記憶する。
【0019】
次に、3次元沈下曲面生成部13は、解析対象の土質条件、土被りおよびシールド形式、シールド径などが類似しているシールド工事の縦断方向沈下計測データを、縦断方向沈下曲線データ記憶部6から選択して読み出す(ステップS3)。縦断方向沈下曲線データ記憶部6に予め記憶されている縦断方向沈下曲線データは、シールド径、土被りなどが沈下計算を行おうとする工事のものと異なる場合があるため、シールド径および最終沈下量で無次元化されて記憶されている。また、採用する地中変位は、近接構造物の下端とシールド路線の位置関係を考慮して決定する。このとき3次元沈下曲面生成部13は、解析対象の条件に類似または一致するデータを縦断方向沈下曲線データ記憶部6から選択することができない場合は、解析作業者に縦断方向沈下曲線データ記憶部6に記憶されているデータの中から選択させ、選択された縦断方向沈下曲線データを読み出す。
【0020】
次に、3次元沈下曲面生成部13は、無次元化された縦断方向の計測データを補間ないし回帰による縦断方向沈下曲線データを求めるために、沈下計算を行おうとする工事で用いるシールド径をもとに、無次元化した縦断方向の計測データの縦断距離を実距離に換算し、縦断方向の格子点間隔で沈下量を求める。図6に縦断方向沈下曲線データの一例を示す。この縦断方向沈下曲線データは、今回の計算例とシールド径、地盤条件などが類似している実測値を処理したものである。図6において、δoは各位置での実測沈下量、δmaxは実測最大沈下量、Hは土被り、Dはシールド外径であり、横幅は切羽からの距離を表し、シールド外径を乗ずることにより実距離となる。これに基づいて、縦断方向の沈下量を計算した例を図7に示す。図7に示すデータが沈下量解析に用いる縦断方向沈下曲線データとなる。
【0021】
次に、3次元沈下曲面生成部13は、2次元FEM解析により求め、横断方向沈下曲線データ記憶部5に記憶されている横断方向沈下曲線データと、この横断方向沈下曲線データを最終沈下量とする縦断方向沈下曲線データとをそれぞれ読み出し、この横断方向沈下曲線データと縦断方向沈下曲線データとから3次元沈下曲面データを生成する(ステップS4)。図8に、ステップS2とステップS4において得られた横断方向沈下曲線データと縦断方向沈下曲線データとに基づいて生成した3次元沈下曲面データを示す。図8に示す3次元沈下曲面データは、先行隆起の影響が始まるときから後続沈下が収束するまでが示されているが、実際には後続沈下の後方に最終沈下曲面がこの3次元沈下曲面につながる。この3次元沈下曲面データの格子点の座標値とこの格子点における沈下量が沈下データセットとなる。すなわちシールド掘進による先行隆起の影響が始まるときから、後続沈下が収束後までの3次元の沈下分布が沈下データセットに反映していることになる。3次元沈下曲面生成部13は、ここで得られた3次元沈下曲面データに基づく沈下データセットを3次元沈下曲面データ記憶部7へ記憶する。シールド路線を区分した結果、複数の横断面2次元FEM解析を行った場合は沈下データセットが複数得られることとなる。
【0022】
次に、沈下量算出部14は、3次元沈下曲面データ記憶部7から沈下データセットを読み出し、この沈下データセットを縦断方向の格子点ピッチでシールド路線に沿って移動させ、格子点ピッチ毎に、全ての解析点における沈下量を計算する(ステップS5)。近接構造物の沈下量は近接格子点の沈下量を補間して求める。シールド路線を区分し複数の横断面2次元FEM解析を行った場合は、解析断面毎にシールド路線方向における適用範囲を決定し、それぞれの適用範囲では該当する沈下データセットを読み出して使用する。
【0023】
そして、沈下量算出部14は、シールド掘進による影響を求めたい近接構造物位置の沈下量が最終沈下量になるまで、すなわち、後続沈下が収束するまで、沈下データセットを移動させながら近接構造物の沈下量を求める。複数の横断面2次元FEM解析結果がある場合、沈下量算出部14は、それぞれの適用範囲の境界部で沈下量を摺り付け処理を行う。沈下量算出部14は、ここで得られた各解析点の沈下量データを沈下量データ記憶部8へ記憶するとともに、表示部3へ表示する。この処理動作により、任意のシールド切羽位置におけるシールド掘進時の近接構造物の沈下量が求められたことになる。
【0024】
次に、図1に示す解析処理部1を使用した沈下量予測例を説明する。
(1)線状近接構造物の縦断方向の沈下量計算
併設シールドの場合について、線状近接構造物の縦断方向の地盤沈下量を計算した。この場合先行シールドによる沈下量に後続シールドの沈下量を加算することになる。図4に示す2次元FEM解析モデルで上側シールド掘進後に下側シールドを上側シールドとは反対方向に掘進する上下併設シールドの場合の計算例の一部を図9〜図11に示す。下側シールドの掘進方向は格子点番号が減少する方向である。図に示すように先行シールドによる沈下量に後続シールドの先行隆起、後続沈下量が加わわり沈下量が増加していることがわかる。
【0025】
(2)線状近接構造物の横断方向の不同沈下量計算
線状近接構造物の幅を考慮し、左右の側壁位置での地盤沈下量を計算することにより線状構造物の横断方向の不同沈下量を求めた。線状近接構造物に斜交してシールド掘進を行った場合の最終沈下状態の計算例を図12に示す。線状近接構造物とシールド路線の交差角度が小さいときには、左右の側壁部での最大地盤沈下量発生位置のずれが大きくなるとともに沈下量の差(不同沈下量)も大きくなることがわかる。
【0026】
(3)平面積が大きい近接構造物の沈下量計算
平面積が大きい近接構造物では、構造物の四隅の地盤沈下量を計算することにより構造物の不同沈下状況を把握できた。
【0027】
近年は重要な近接構造物の掘進に先立ちトライアル掘進区間を設け、掘進管理方法のチェックおよび沈下予測の精度の向上を図ることが行われているが、本発明による沈下量予測方法を用いることにより、シールド掘進による先行隆起の影響が始まるときから後続沈下が収束するまでの近接構造物の挙動を詳細に予測することができる。また、シールド路線と近接構造物の位置の変化を考慮した計算ができるので、計測データとの対比も容易に行うことができる。
【0028】
このように、横断方向2次元FEM解析により求められる沈下曲線データと、実施工で計測された縦断方向の沈下曲線データをもとに生成した3次元の沈下曲面データをシールド路線に沿って移動させることにより、シールド掘進の影響範囲内にある近接構造物位置の地盤沈下量を簡単に求めることができる。
この予測方法を用いれば、シールド路線が直線、曲線に拘わらずシールド掘進に伴う近接構造物の沈下量を算出することができ、シールド路線に沿って、近接構造物とシールド路線の位置関係が変化しても近接構造物の沈下量を計算することができる。
また、横断方向2次元FEM解析には公知の2次元FEM解析手法を用い、縦断方向の沈下曲線は解析対象地盤、シールド径などの施工条件に類似した計測データを利用するようにしたため、信頼性の高い予測結果を得ることが可能である。
また、線状近接構造物の縦断方向の沈下量を予測することができるとともに、線状近接構造物の横断方向の不同沈下量や平面積が大きい近接構造物の不同沈下量を予測することができるため、躯体の補強が必要な場合、補強範囲を事前に検討することが可能である。
また、沈下計算の解析点を地表面として沈下曲線を設定することにより地表面沈下量を予測することもできる。さらに、近接構造物の最終沈下量のみならず、任意のシールド位置における沈下量が計算可能であり、シールド通過時の近接構造物への影響度を把握することができる。すなわち、近接構造物の挙動を詳細に予測することができるので、情報化施工への利用、計測データとの対比も行いやすい。
【0029】
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより沈下量予測処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0030】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】沈下量を算出する動作を示すフローチャートである。
【図3】掘進路線と解析点の関係を示す説明図である。
【図4】2次元FEM解析のモデルを示す説明図
【図5】横断方向沈下曲線の一例を示す説明図である。
【図6】縦断方向沈下曲線の一例を示す説明図である。
【図7】縦断方向の沈下量を計算した結果を示す図である。
【図8】3次元沈下曲面の一例を示す説明図である。
【図9】沈下量の計算結果を示す図である。
【図10】沈下量の計算結果を示す図である。
【図11】沈下量の計算結果を示す図である。
【図12】沈下量の計算結果を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・解析処理部、11・・・構造定義部、12・・・2次元FEM解析部、13・・・3次元沈下曲面生成部、14・・・沈下量算出部、2・・・入力部、3・・・表示部、4・・・構造データ記憶部、5・・・横断方向沈下曲線データ記憶部、6・・・縦断方向沈下曲線データ記憶部、7・・・3次元沈下曲面データ記憶部、8・・・沈下量データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘進に伴う近接構造物への影響を解析するために、掘進路線周辺の地盤の沈下量を予測する沈下量予測方法であって、
解析対象の地盤と近接構造物の構造を定義するとともに、沈下量を求める解析点を設定する過程と、
2次元のFEM解析を使用して得られた掘進路線上の横断方向の沈下量から横断方向沈下曲線データを求める過程と、
過去の工事において計測された縦断方向沈下曲線データが予め記憶されている中から、解析対象のトンネル掘進の土質条件、土被り及び工法が類似している工事において計測された縦断方向沈下曲線データを選択する過程と、
前記横断方向沈下曲線データ及び縦断方向沈下曲線データから3次元沈下曲面データを求める過程と、
前記3次元沈下曲面データを掘進路線上を移動させながら、前記解析点における沈下量を計算する過程と
を有することを特徴とする沈下量予測方法。
【請求項2】
前記縦断方向沈下曲線データは、シールド掘進路線上の掘進移動過程の沈下量データであることを特徴とする請求項1に記載の沈下量予測方法。
【請求項3】
トンネル掘進に伴う近接構造物への影響を解析するために、掘進路線周辺の地盤の沈下量を予測する沈下量予測プログラムであって、
解析対象の地盤と近接構造物の構造を定義するとともに、沈下量を求める解析点を設定する処理と、
2次元のFEM解析を使用して得られた掘進路線上の横断方向の沈下量から横断方向沈下曲線データを求める処理と、
過去の工事において計測された縦断方向沈下曲線データが予め記憶されている中から、解析対象のトンネル掘進の土質条件、土被り及び工法が類似している工事において計測された縦断方向沈下曲線データを選択する処理と、
前記横断方向沈下曲線データ及び縦断方向沈下曲線データから3次元沈下曲面データを求める処理と、
前記3次元沈下曲面データを掘進路線上を移動させながら、前記解析点における沈下量を計算する処理と
をコンピュータに行わせることを特徴とする沈下量予測プログラム。
【請求項4】
前記縦断方向沈下曲線データは、シールド掘進路線上の掘進移動過程における沈下量データであることを特徴とする請求項3に記載の沈下量予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−22600(P2006−22600A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203303(P2004−203303)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】