説明

沈澱制御法を用いて製造された結晶質薬物粒子

本質的に結晶質であり且つ水中に分散した場合に2ミクロン未満の平均粒度を有する薬物粒子を開示する。薬剤物質の平衡溶解度の25〜95%で水性媒体に添加した場合に、薬物粒子は5分未満で、濁度の95%減少によって特徴づけられる完全な溶解を示す。沈澱制御法を用いてこのような薬物粒子を製造することも開示している。このような薬物粒子は、先行技術に記載された方法に従って製造された粒子に比べて増大した溶解速度及び優れた安定性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質薬物粒子(crystalline drug particle)に関し、更に詳しくは、沈澱制御法を用いて製造された結晶質薬物粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
高いバイオアベイラビリティー及び溶解速度は医薬最終製品の望ましい属性である。バイオアベイラビリティーは医薬製品又は薬物が身体への投与後に標的組織によって利用できるようになる程度を意味する用語である。低バイオアベイラビリティーは医薬組成物、特に、水に貧溶性の活性成分を含む医薬組成物の開発において遭遇する深刻な問題である。水に貧溶性の薬物は血液循環に吸収される前に胃腸管から排出される傾向がある。
【0003】
粒状の薬物の溶解速度は粒度の減少によるような表面積の増加と共に増加し得ることが知られている。更に、結晶質(crystalline)薬物粒子は、非晶質(amorphous)粒子とは対照的に、安定性がより大きいために望ましい。医薬組成物中の薬物粒子の粒度及び形態を制御するための取り組みがなされている。最も一般的に使用されている方法は沈澱及び粉砕方法である。
【0004】
特許文献1は酸−塩基沈澱法の使用を教示している。しかし、特許文献1に記載された方法は高濃度の塩を生じ、比較的純粋な薬物粒子を得るためにはそのような塩は透析によって除去しなければならない。
【0005】
溶媒沈澱法の例は特許文献2及び3並びに非特許文献1及び2に記載されている。これらの参考文献に記載された標準的な方法において、結晶化すべき化合物の超飽和溶液は撹拌容器中で適当な「逆溶媒(anti-solvent)」と接触させる。撹拌容器内において、逆溶媒は最初の核生成を開始し、それが結晶形成を引き起こす。しかし、形成される結晶は比較的大きく、これらの参考文献に記載された比較的小さい粒子は非晶質である。比較的大きい結晶粒子に関しては、これらの方法はほとんどの場合、粒子の表面積を増加させ且つそれによってそれらのバイオアベイラビリティーを向上させるために、結晶後の粉砕工程を必要とする。しかし、粉砕には、収量の減少、騒音及びダストなどの欠点がある。特許文献4に記載されたような湿式粉砕法でさえ、粉砕媒体による汚染に関連した問題を生じる。更に、薬剤物質が過剰な機械的剪断応力又は極めて高い温度に暴露されるため、薬物がその活性を失うおそれがある。更に、湿式粉砕法は常に、比較的大きい粒子のフラクションの混入をもたらし、それが粒子が完全に溶解する時間に影響を与える。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,716,642号
【特許文献2】米国特許第4,826,689号
【特許文献3】米国特許第6,221,398 B1号
【特許文献4】米国特許第5,145,684号
【非特許文献1】Hasegawaら,”Supersaturation Mechanism of Drugs from Solid Dispersions with Enteric Coating Agents”,Chem.Pharm.Bull.、Vol.36,No.12,p.4941(1988)
【非特許文献2】Frederic Ruch及びEgon Matijevic,”Preparation of Micrometer Size Budesonide Particles by Precipitation”、Journal of Colloid and Interface Science,229,207−211(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記先行技術に記載された方法に従って製造された粒子に比較して溶解速度の増加した粒子を提供することは、薬物粒子の製造分野において有利であろう。また、このような粒子が性質上、本質的に結晶質であることにより、非晶質粒子の低下した安定性に関連する問題のいくつかを最小限に抑えることができれば有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面において、本発明は薬剤物質を含む粒子であり、前記粒子は、本質的に結晶質であり且つ水に分散した場合に、2ミクロン未満の平均粒度を有し、前記薬物粒子は、薬剤物質の平衡溶解度の25〜95%で水性媒体に添加した場合に5分未満で、濁度の95%の減少によって特徴づけられるような完全な溶解を示す。
【0009】
第2の側面において、本発明は、(a)薬剤物質を溶媒に溶解させ;そして(b)工程(a)の生成物を水に添加して、沈澱薬物粒子を形成する工程を含む方法に従って製造した薬物粒子であり;前記薬物粒子は、本質的に結晶質であり且つ2ミクロン未満の平均粒度を有し、前記薬物粒子は、薬剤物質の平衡溶解度の25〜95%において水性媒体に添加した場合に5分未満で完全な溶解を示す。
【0010】
本発明の粒子は、先行技術に記載された方法に従って製造された粒子よりも速い溶解速度を示す。本発明の粒子はまた、性質上本質的に結晶質であり、その結果、性質上非晶質である粒子に比べて保存寿命が長く且つ再分散性が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の粒子は薬剤物質を含む。一実施態様において、薬剤物質は水に貧溶性である。適当な薬剤物質は、例えば以下のものを含む種々の公知の類の薬物から選ぶことができる。
鎮痛剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質(ペニシリン類を含む)、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗ヒスタミン剤、血圧降下剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗新生物剤、免疫抑制剤、抗甲状腺剤、抗ウィルス剤、抗不安鎮静剤(睡眠剤及び神経安定剤)、収斂剤、β−アドレナリン受容体遮断剤、血液製剤及び代用血液、カーディアックイノトロピック・エージェント(cardiacinotropic agent)、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤(去痰剤及び粘液溶解剤)、診断用薬、画像診断用薬剤、利尿剤、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン病薬)、止血剤、免疫剤、脂質調節剤、筋肉弛緩剤、副交感神経興奮剤、副甲状腺カルシトニン及びビホスホネート、プロスタグランジン、放射性薬剤、性ホルモン(ステロイドを含む)、抗アレルギー剤、興奮剤及び食欲抑制剤、交感神経興奮剤、甲状腺製剤、血管拡張剤及びキサンチン。好ましい薬剤物質としては、経口投与用の薬剤物質が挙げられる。これらの類の薬物についての説明及び各類内の種の一覧は、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,Twenty−ninth Edition、The Pharmaceutical Press,London,1989に記載されている。
【0012】
本発明の薬物粒子は本質的に結晶質である。本明細書中で使用する用語「本質的に結晶質」とは、X線回折法によって測定した場合に粒子が少なくとも90%結晶質であることを意味するもの定義する。
【0013】
本発明の粒子は、比較的小さく、水に分散した後には特にそうである。好ましくは、本発明の粒子は、水に分散した場合に2ミクロン未満、より好ましくは1.5ミクロン未満、更に好ましくは1.0ミクロン未満の平均粒度を有する。
【0014】
本発明の粒子は、比較的速い溶解速度を示す。本発明の粒子に関する溶解速度を測定する好ましい方法は濁度法である。濁度は、薬物粒子へのエネルギー伝達をもたらす吸収相互作用によって及び薬物粒子中における光学的不均一性による散乱によって引き起こされる、薬物粒子の懸濁液を通過する光の強さの変化の定量的測定値を与える。「吸光度」もまた、濁度と同義で使用される用語である。
【0015】
本発明の粒子に関する溶解物質のパーセントを測定するのに有用な濁度法は、以下の工程を含む。液体媒体中に懸濁された薬物粒子の初期濃度(i)の測定;液体媒体中の薬物粒子の動的固体濃度(d)の測定;及び式:[(i−d)/i]×100による溶解物質パーセントの計算。濁度測定値を用いて、(i)及び(d)を求める。
【0016】
液体媒体が可視光において透明であり且つ固体物質とは充分に異なる屈折率を有して光を散乱するならば、任意の液体媒体を使用できる。液体媒体は液体媒体中の薬物粒子の平衡溶解度が5〜500mg/Lとなるように選ばなければならない。本明細書中において、用語「平衡溶解度」は、この方法を用いて液体媒体中で120分以内に完全に溶解させることができる薬物粒子の最大量を意味するものと定義する。濁度測定値を用いて溶解速度を求めるためには、使用薬物粒子に関する濁度対既知濃度を示す検量線の作成が必要であろう。次いで、比色計のような、一般に入手できる光散乱装置を用いて、液体媒体中に薬物粒子が溶解するに従って、試験される薬物粒子の濁度が経時的に測定されるであろう。次に、濁度の測定値に基づいて検量線からi及びdが計算されるであろう。濁度を用いて溶解速度を測定するためのこのような方法は、本件と同時出願した、本発明者らの同時係属米国特許出願により詳細に記載してある。
【0017】
平衡溶解度の25〜95%の濃度で液体媒体に添加する場合には、本発明の粒子は、前記濁度法によって測定した場合に5分未満で完全な溶解を示す。用語「平衡溶解度」は前述の通りである。より好ましくは、薬物粒子は、平衡溶解度の40〜80%の濃度で液体媒体中に添加でき、やはり5分未満で完全な溶解を維持する。本明細書中で使用する用語「完全な溶解」とは、濁度の95%減少によって示されるように粒子の95%が溶解されることを意味する。
【0018】
場合によっては、本発明の粒子の表面中又は表面上には1種又はそれ以上の安定剤が存在する。安定剤は、本質的に結晶質の粒子の実質的な成長を阻害するために使用でき、その結果、安定剤の存在下で製造される粒子は一般に、安定剤を用いずに製造される粒子よりも小さい。
【0019】
1種又はそれ以上の安定剤の選択は薬物分子によって異なるであろう。一般に、ポリマー安定剤が好ましい。粒子安定剤の例としては、リン脂質、界面活性剤、ポリマー界面活性剤、ベシクル、コポリマー及びホモポリマー並びに生体高分子を含むポリマー、更に/又は分散助剤が挙げられる。適当な界面活性剤としては以下のものが挙げられる。ゼラチン、カゼイン、レシチン、(ホスファチド)、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール1000、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば市販のTween類、ポリエチレングリコ−ル、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)コポリマー、例えば市販のPoloxomer類若しくはPluronic類、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化珪素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロールカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質セルロース、マグネシウムアルミニウムシリケート、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸、並びに他の陰イオン、陽イオン、両性イオン及び非イオン界面活性剤。他の適当な安定剤は、the American Pharmaceutical Association及びThe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同出版されたthe Handbook of Pharmaceutical Excipients,the Pharmaceutical Press,1986に詳述されている。このような安定剤は市販され、且つ/又は当業界で知られた方法によって製造できる。
【0020】
場合によっては、本発明の粒子は、薬物の投与を促進するために薬物粒子に添加される1種又はそれ以上の追加の賦形剤を含む。適当な追加の賦形剤としては、ポリマー、吸収促進剤、溶解度改良剤、溶解速度改良剤、生体接着剤及び徐放剤が挙げられる。更に詳しくは、適当な賦形剤としては、セルロースエーテル、アクリル酸ポリマー及び胆汁酸塩が挙げられる。他の適当な賦形剤は、the American Pharmaceutical Association及びThe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同出版されたthe Handbook of Pharmaceutical Excipients,the Pharmaceutical Press,1986に記載されている。このような賦形剤は市販されており、且つ/又は当業界で知られた方法によって製造することができる。
【0021】
本発明の粒子は、水に貧溶性の薬剤物質の小さい粒子を生成するのに適当な任意の方法を用いて製造できる。本発明の一側面において、粒子は沈澱制御法によって調製する。本明細書中で、「沈澱制御法」は、以下の工程を含む方法を意味するものと定義する。(a)溶媒への薬剤物質の溶解;及び工程(a)の生成物を水に添加することによる、沈澱薬物粒子の形成。好ましい実施態様においては、前述した賦形剤のような賦形剤を溶媒中、水中又は溶媒と水の両方の中に存在させる。
【0022】
工程(a)において薬物を溶解させる溶媒は、薬物を充分に溶解する任意の有機溶媒又は水/有機溶媒ブレンドであることができる。一般に、溶媒中の薬物の溶解度が高いほど、プロセスの効率は高い。溶媒は水に混和性でなければならない。好ましくは、選択された溶媒は、工程(b)において水に添加した場合に溶液が水全体に瞬時に分散されるように水と理想的な混合挙動を示す。適当な有機溶媒としては以下のものが挙げられるがこれらに限定されない。メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、トリフルオロエタノール、多価アルコール、例えばプロピレングリコール、PEG400、及び1,3−プロパンジオール、アミド、例えばn−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、プロピオンアルデヒド、アセトン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸、蟻酸、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ヘキサフルオロイソプロパノール並びにそれらの組合せ。
【0023】
工程(a)において溶媒に溶解される薬物の濃度は、好ましくは室温における溶媒の溶解度限界に可能な限り近い。このような濃度は、選択された薬物及び溶媒によって異なるであろうが、典型的には0.1〜20.0重量%の範囲である。
【0024】
好ましい実施態様において、沈澱制御法は工程(b)の生成物を混合する工程を更に含む。水中において薬物/溶媒を強力に混合する任意の外部装置を使用できる。本明細書中で、「強力に混合する」とは、粒子の核生成前に、均一に過飽和された混合物を形成することを意味するものと定義する。新しい粒子成長が起こる前に薬物/溶媒溶液を水全体にほとんど瞬時に分散するように、混合は充分に強力でなければならない。このような強力な混合は、溶媒及び液体混合物中に薬物材料を過飽和させ、その結果、結晶構造を有する小さい粒子の形態で薬物を沈殿させる。工程(b)の生成物の混合に使用できる装置の例としては、撹拌棒、撹拌機、ホモジナイザー及びコロイドミルが挙げられる。
【0025】
場合によっては、沈澱制御法は更に、沈澱薬物粒子を回収する工程を含む。一実施態様において、薬物粒子の回収は、最初に溶媒を除去し、続いて水を除去することを含む。あるいは、溶媒及び水を粒子から同時に除去することもできる。その選択は、溶媒の濃度及び水を除去するために選ばれた方法によって異なるであろう。溶媒の除去は、蒸発、透析などを含む任意の望ましい手段を用いて実施できる。水の除去は、噴霧乾燥、噴霧凍結、ゲル化(粒子をポリマーによってゲル化することと定義される)、凍結乾燥又は濾過を含む任意の望ましい手段を用いて実施できる。溶媒の除去及び水の除去の方法は、得られる粉末が水に分散された場合に、溶媒及び水の除去前と同じ粒度及び形態を粒子が有するように選ばなければならない。
【0026】
工程(b)において有機溶媒中の薬物を水に添加する際には、工程(b)の生成物の温度は、低下した温度において最適に制御する。好ましくは温度は65℃未満に、より好ましくは30℃未満に、更に好ましくは23℃未満に、最も好ましくは10℃未満に制御する。分散液の温度の下限は0℃、即ち水の凝固点である。温度が高すぎると、不所望な粒子成長が起こるおそれがある。
【実施例】
【0027】
以下の実施例において以下の物質を使用する。
「PVP」は、分子量29,000のポリビニルピロリドンを意味する。
【0028】
実施例1及び2
沈澱制御法によって製造したDanazolの粒子
以下の方法を用いて、沈澱制御法によって粒子を製造する。表Iは、実施例1及び2に関する使用材料及び結果を示す。水中安定剤150g(実施例1に関しては0.5重量%,実施例2に関しては1.0重量%)を再循環ループに通し、4℃に冷却した。この水溶液に、メタノールに溶解した0.5重量%の薬物30gを添加した、これを18回繰り返した。次いで、合した生成物を2回、40℃及び圧力26mmHgのワイプト・フィルムエバポレーターに通した。次いで、得られたスラリーを噴霧乾燥して、粉末にした。次に、粉末を水に再分散させて固形分を2%とし(次に、ボルテックス撹拌を10秒間行った)、Coulter LS 230粒度分析機で分析した。X線回折パターンは、サンプルが全て、本質的に結晶質であることを示している。走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、実施例1及び2のサンプルが本質的に結晶質であることを裏付け、粒子が狭い粒度分布を有し、2ミクロンより大きい粒子が観察されないことを示している。実施例1に関するSEMを図1に示す。
【0029】
実施例1及び2のそれぞれに関して、完全な溶解のための時間を求めるために、濁度測定値を用いる以下の方法に従う。撹拌棒及び光ファイバー濁度プローブ(450nm光源フィルター及び2cmの光路を有するBrinkmann ColorimeterモデルPC−910)を装着した200mlのプラスチックビーカー中の脱イオン水150ml中に、各サンプル5.1mgを添加した。Danazolの水へ溶解度は、約1mg/リットルであるので、水150mlには各サンプル約0.22mgが溶解すると予測されるであろう。サンプルを高撹拌速度で150秒間分散させた後、撹拌速度を100rpmに下げ、20%ドデシル硫酸ナトリウム2.25gを添加した。この量のドデシル硫酸ナトリウムの添加により、Danazolの平衡溶解度は約45mg/lまで上昇する。このレベルにおいて、存在する各サンプルの量は、この媒体中に溶解できるDanazolの最大量の50.3%に相当する。次いで、溶解を濁度の低下によって監視する。図3は、以下の実施例4に比較した実施例1の結果を示す。
【0030】
所定の時間における濁度を、ドデシル硫酸ナトリウム添加直前の10秒間における平均濁度と比較することによって、濁度値を溶解パーセントに変換することができる。これを行い且つドデシル硫酸ナトリウム添加時にタイムスケールをゼロ秒に調節すると、図4に示した溶解曲線が得られる。
【0031】
結果を、以下の表Iに示す。
【0032】
実施例3
沈澱制御法を用いて製造したNaproxenの粒子
2℃において激しく撹拌しながら、メタノール中6.69重量%Naproxen 29.95gを、2重量%PVP水溶液150.4g中に注入した。溶媒を、得られたスラリーからストリップし、凍結乾燥して、粉末を生成した。粒度及び完全な溶解までの時間を、実施例1及び2と同様にして測定した。結果を、以下の表Iに示す。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例4〜6
以下の湿式粉砕法を用いて、実施例4〜6のサンプルを製造した。表IIは、使用物質と結果を示す。表IIに示した安定剤を水に溶解させ、広口瓶に入れた。これに、以下の表IIに示した薬物及び表IIに示した一定量の1mm ZrO粉砕ビーズを添加した。次いで、広口瓶を回転ボールミル上に置き、表IIに示した時間、粉砕した。広口瓶を取り除き、粉砕ビーズを濾去し、得られたスラリーを噴霧乾燥して粉末にし、次に水に再分散させて固形分を2%とし(次いで、10秒間ボルテックス撹拌した)、Coulter LS 230粒度分析機で分析した。得られた粒度を表IIに示す。実施例4に関する走査型電子顕微鏡検査(SEM)の結果を図2に示す。これは、粒子が本質的に結晶質であることが裏付けるが、2ミクロンより大きい粒子が若干存在することも示している。
【0035】
完全な溶解までの時間を、実施例1〜3に関して記載したのと同様にして測定した。結果を表IIに示す。
【0036】
【表2】

【0037】
図3は、実施例1及び4の薬物粒子が溶解していくに従って経時的に吸光度を比較するグラフである。図4は、実施例1及び4に関して対応する溶解物質%を経時的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1において製造した粒子に関する走査型電子顕微鏡検査の結果を示す写真である。
【図2】実施例4において製造した粒子に関する走査型電子顕微鏡検査の結果を示す写真である。
【図3】実施例1の粒子に関する吸光度対時間を表すグラフである。
【図4】実施例1及び4の粒子に関する、溶解材料のパーセントを経時的に表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤物質を含んでなる粒子であって、前記粒子が本質的に結晶質であり且つ水に分散された場合に約2ミクロン未満の平均粒度を有し、前記薬剤物質が、前記薬剤物質の平衡溶解度の25〜95%で水性媒体中に添加した場合に5分未満で完全な溶解を示す粒子。
【請求項2】
前記水性媒体が前記薬剤物質の平衡溶解度が5〜500mg/Lとなるように選択する請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
完全な溶解が濁度の95%減少によって特徴づけられる請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記粒子が安定剤を更に含む請求項1に記載の粒子。
【請求項5】
前記安定剤がリン脂質、界面活性剤、ポリマー界面活性剤、ベシクル、ポリマー、コポリマー、ホモポリマー、生体高分子、分散助剤又はそれらの組合せである請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
前記粒子が賦形剤を更に含む請求項1に記載の粒子。
【請求項7】
前記賦形剤がポリマー、吸収促進剤、溶解度改良剤、溶解速度改良剤、生体接着剤、徐放剤又はそれらの組合せである請求項6に記載の粒子。
【請求項8】
前記薬剤物質が水に貧溶性である請求項1に記載の粒子。
【請求項9】
前記薬剤物質が、鎮痛剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質(ペニシリン類を含む)、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗ヒスタミン剤、血圧降下剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗新生物剤、免疫抑制剤、抗甲状腺剤、抗ウィルス剤、抗不安鎮静剤(睡眠剤及び神経安定剤)、収斂剤、β−アドレナリン受容体遮断剤、血液製剤及び代用血液、カーディアックイノトロピック・エージェント(cardiacinotropic agent)、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤(去痰剤及び粘液溶解剤)、診断用薬、画像診断用薬剤、利尿剤、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン病薬)、止血剤、免疫剤、脂質調節剤、筋肉弛緩剤、副交感神経興奮剤、副甲状腺カルシトニン及びビホスホネート、プロスタグランジン、放射性薬剤、性ホルモン(ステロイドを含む)、抗アレルギー剤、興奮剤及び食欲抑制剤、交感神経興奮剤、甲状腺製剤、血管拡張剤、キサンチン並びにそれらの組合せからなる群から選ばれる請求項8に記載の粒子。
【請求項10】
前記薬剤物質が経口投与用である請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
(a)薬剤物質を溶媒に溶解させ;そして(b)工程(a)の生成物を水に添加して、沈澱薬物粒子を形成する工程を含む方法に従って製造された薬物粒子であり;前記薬物粒子は、本質的に結晶質であり且つ水中に分散された場合に約2ミクロン未満の平均粒度を有し、前記薬物粒子が薬剤物質の平衡溶解度の25〜95%で水性媒体に添加した場合に5分未満で完全な溶解を示す薬物粒子。
【請求項12】
前記水性媒体が前記薬剤物質の平衡溶解度が5〜500mg/Lとなるように選ばれる請求項11に記載の薬物粒子。
【請求項13】
完全な溶解が濁度の95%減少によって特徴づけられる請求項11に記載の薬物粒子。
【請求項14】
1種又はそれ以上の安定剤が溶媒中、水中又は溶媒と水の両方に存在する請求項11に記載の薬物粒子。
【請求項15】
前記安定剤がリン脂質、界面活性剤、ポリマー界面活性剤、ベシクル、ポリマー、コポリマー、ホモポリマー、生体高分子、分散助剤又はそれらの組合せである請求項14に記載の薬物粒子。
【請求項16】
1種又はそれ以上の賦形剤が溶媒中、水中又は溶媒と水の両方に存在する請求項11に記載の薬物粒子。
【請求項17】
前記賦形剤がポリマー、吸収促進剤、溶解度改良剤、溶解速度改良剤、生体接着剤、徐放剤又はそれらの組合せである請求項16に記載の薬物粒子。
【請求項18】
前記薬剤物質が水に難溶性である請求項11に記載の薬物粒子。
【請求項19】
前記薬剤物質が鎮痛剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質(ペニシリン類を含む)、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗ヒスタミン剤、血圧降下剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗新生物剤、免疫抑制剤、抗甲状腺剤、抗ウィルス剤、抗不安鎮静剤(睡眠剤及び神経安定剤)、収斂剤、β−アドレナリン受容体遮断剤、血液製剤及び代用血液、カーディアックイノトロピック・エージェント(cardiacinotropic agent)、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤(去痰剤及び粘液溶解剤)、診断用薬、画像診断用薬剤、利尿剤、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン病薬)、止血剤、免疫剤、脂質調節剤、筋肉弛緩剤、副交感神経興奮剤、副甲状腺カルシトニン及びビホスホネート、プロスタグランジン、放射性薬剤、性ホルモン(ステロイドを含む)、抗アレルギー剤、興奮剤及び食欲抑制剤、交感神経興奮剤、甲状腺製剤、血管拡張剤、キサンチン並びにそれらの組合せからなる群から選ばれる請求項18に記載の薬物粒子。
【請求項20】
前記方法が工程(b)の生成物を混合する工程を更に含む請求項11に記載の薬物粒子。
【請求項21】
前記方法が沈澱薬物粒子を乾燥させる工程を更に含む請求項11に記載の薬物粒子。
【請求項22】
前記工程(b)を約65℃未満の温度で実施する請求項11に記載の薬物粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−505518(P2006−505518A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526106(P2004−526106)
【出願日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/021884
【国際公開番号】WO2004/012711
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】