説明

沈降シリカ

本発明は、沈降シリカ、特に粉体形状の沈降シリカの製造方法に関する。本発明はまた、得られる沈降シリカ、その使用、特にシリコーンエラストマーマトリックス又はシリコーンペーストをベースとするマトリックスを補強するためのその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈降シリカ、特に粉体形状の沈降シリカの製造方法に関する。本発明はまた、得られる沈降シリカ、その使用、特にシリコーンエラストマーマトリックス又はシリコーンペーストをベースとするマトリックスを補強するためのその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解法シリカ、即ちテトラクロロシランタイプの化合物と水素及び酸素との高温反応から成る方法によって得られるシリカは、シリコーンエラストマー又はシリコーンペーストタイプの組成物中における補強用フィラーとして、以前から用いられてきた。
【0003】
しかしながら、それらが得られる方法故に、熱分解法シリカは一般的に高価である。従って、シリコーンマトリックス補強の用途においては、これらの高価格のシリカの少なくとも一部を、ケイ酸塩のような前駆体から出発して水性媒体中で好適なpH条件においてシリカを沈殿させることによって得られるいわゆる「沈降」シリカに置き換えようとする試みが為されるようになった。と言うのも、これらのシリカはそれほど高価ではなく、しかも必要とされるシリコーンベース(シリコーンをベースとする)マトリックス中における分散性特徴を有することができるからである。
【0004】
従って、長年にわたり、これらの熱分解法シリカの少なくとも一部を低価格の沈降シリカに置き換えようとする試みが為されてきた。非常に様々な沈降シリカ製造方法が存在するが、それらは仏国特許第1352354号明細書に記載されたように、調製の間、温度、反応成分の濃度及びpH値を制御することを必要とする複雑なものである。
【0005】
しかしながら、多くの場合、沈降シリカは水に対して強い親和性を示す。従って沈降シリカは、沈降シリカが加えられるシリコーンマトリックスとの適合性が常に満足できるものであるわけではないので、良好なシリコーンマトリックス補強特性を持たないことがしばしばある。例えば、仏国特許第2611196号明細書には、水分吸収の少ない沈降シリカを調製するために用いられる高温(最低でも700℃)における熱処理が記載されているが、しかしこれらの処理は、高温を採用するために、依然としてエネルギーの点で費用がかかる上に実施するのが複雑である。
【0006】
もっと近年になって、欧州特許公開第1860066号公報には、シリコーンマトリックスの補強について特に興味深い沈降シリカの製造方法が記載されており、この方法は、流動床中での高温(300〜800℃)における熱処理工程を含むものである。しかしながら、この工程はエネルギーの点で費用がかかり、かなりの工業的投資を必要とする。
【0007】
また、好適な表面処理(例えばシラン又はシラザンを用いるもの)によってシリカを疎水性にすることによってシリコーン用途用の補強材としての沈降シリカの品質を改善する試みも為されている。例えば仏国特許第2356596号明細書には、親水性シリカをこの処理によって疎水性にしてシリコーン用途に利用可能にしたことが記載されている。しかしながら、これらの処理もまた、プロセスを比較的費用のかかるものにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許第1352354号明細書
【特許文献2】仏国特許第2611196号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第1860066号公報
【特許文献4】仏国特許第2356596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の本質的な目的は、実施が容易であり、既知の方法と比べて大きな追加の工業的投資や高いエネルギー消費を必要としない沈降シリカの調製方法であって、しかもシリコーンベースマトリックス中に分散可能であり、該マトリックス中にフィラー、特に補強用フィラーとして用いてそれらに良好な機械的特性を付与することができる沈降シリカを得ることを可能にする前記調製方法を提供することにある。
【0010】
より特定的には、本発明の別の目的は、シリコーンベースマトリックス中に分散可能であり、該マトリックス中にフィラー、特に補強用フィラーとして用いてそれらに良好な機械的特性を付与することができる沈降シリカを提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、前記の分散可能な(以下、分散性とも言う)沈降シリカを含むシリコーンエラストマー前駆体オルガノポリシロキサン組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、前記の分散性沈降シリカを含むシリコーンエラストマーを得ることにある。
【0013】
本発明の最後の目的は、得られる沈降シリカをタイヤ、練り歯磨き、化粧品組成物、食料品組成物、製薬組成物、シリコーン組成物及びエラストマー中に用いることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらのすべての目的及び他の目的は、本発明によって達成される。本発明は、分散性であり且つ改善された補強特性を有する沈降シリカXの製造方法であって、次の工程:
(a)少なくとも1種のケイ酸塩と少なくとも1種の酸性化剤とを反応させて沈降シリカの懸濁液Aを得る工程;
(b)前記の沈降シリカの懸濁液Aを濾過し且つ洗浄して濾過ケークBを得る工程;
(c)前記濾過ケークBを乾燥させて沈降シリカCの粉体を得る工程;及び
(d)前記沈降シリカCを粉砕し且つ乾燥させて(これら2つの操作は、機械式粉砕ミルZを用いて50〜190℃の範囲、好ましくは60〜150℃の範囲、より一層好ましくは65〜130℃の範囲の温度において同時に実施される)前記沈降シリカXを回収する工程:
を含む前記方法に関する。
【0015】
「機械式粉砕ミル」とは、機械的手段(例えばジョークラッシャー、ハンマーミル又はナイフミル)によって粒子の縮小が行われる装置を意味する。この用語には、エアージェット粉砕ミルのような流体ジェット粉砕ミル(これらにおいては、粒子に数多くの衝撃が加えられるように設計された容器中に粒子がエアージェットによって連行される)は含まれない。
【0016】
機械式粉砕ミルの利点の1つは、流体ジェット粉砕ミルでは流体の温度がその流量に影響を及ぼしてその結果として粉砕ミルの性能に影響を及ぼしてしまうのとは対照的に、粉砕が行われる温度が得られる粒子寸法に対して非常に僅かな影響しか及ぼさないということである。
【発明の効果】
【0017】
この目的を達成するために、本発明者らは、驚くべきことに、そして予期しなかったことに、粉砕工程及び乾燥工程を機械式粉砕ミル中で同時に実施するシリカ沈降方法によって、シリコーンベースマトリックスの補強用に用いるのに特に適した分散性、密度及び湿分レベルの特徴を有する沈降シリカを得ることができるということを示すことができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に従う方法の工程(a)、(b)及び(c)は、先行技術に充分に記載されており、当業者に周知である。一般的に、沈降シリカは、アルカリ金属ケイ酸塩(例えばケイ酸ナトリウム)のようなケイ酸塩の酸性化剤(例えば硫酸)による沈降(沈殿形成)反応によって、調製される。シリカは、任意の方法によって:特にボトムの(un pied de cuve de)ケイ酸塩に酸性化剤を加えることによって、又はボトムの水若しくはケイ酸塩に酸性化剤及びケイ酸塩を全部若しくは一部同時に加えることによって:沈降させることができる(工程(a))。これらの操作の終わりに、シリカパルプ(粥状物(bouillie))が得られ、これを次いで分離する(液体−固体分離)。この分離は濾過から成るのが一般的であり、これは任意の好適な方法に従って、例えばフィルタープレス又はバンドフィルター又は回転式真空フィルターによって実施することができ、この濾過は「濾過ケーク」をもたらす。得られた濾過ケークは、1回以上の洗浄操作(一般的に水によるもの)に付して、その塩含有率を低下させる(工程(b))。随意に、乾燥工程の前に解凝集(砕壊(delitage))操作に付すこともできる。濾過ケークの乾燥(工程(c))は、噴霧乾燥によって実施するのが好ましい。この目的のためには、任意の好適なタイプの噴霧器、特にタービン噴霧器、ノズル式噴霧器、液圧式又は2流体噴霧器を用いることができる。一般的には、こうして分離し、濾過し、随意に洗浄し且つ乾燥させた沈降シリカを、所望の粒子寸法を得るために、さらなる粉砕に付すことができる。様々なタイプの粉砕機、例えばエアージェット粉砕ミルや機械式粉砕ミルを用いることができる。
【0019】
シリカ製造方法においては、粉砕の前に乾燥を実施するのが好ましい。実際、粉砕の際に、沈降シリカの密度がかなり小さくなり、その結果として、乾燥させて輸送するべき粉体の体積がかなり増大する。さらに、微細粒度の粉体の取扱いは、衛生、安全及び環境についての厳しい要求を満たさなければならない。従って、沈降シリカの製造方法においては、粉砕工程をできるだけ後に実施するのが工業的に重要である。
【0020】
好ましい実施形態に従えば、粉砕及び乾燥を同時に実施する方法の1つは、工程(d)において機械式粉砕ミルZ中の温度を、50〜190℃の範囲、好ましくは60〜150℃の範囲、さらにより一層好ましくは65〜130℃の範囲の温度に加熱した空気を供給することによって、調節するものである。この温度は、加熱された不活性流体(例えば窒素又はアルゴン)を供給することによって調節することもできるが、しかしこの別態様は運転コストの高騰をもたらす。
【0021】
さらにより一層好ましい実施形態に従えば、工程(d)の粉砕は、機械式粉砕ミルZを用いてアトリション(磨砕)によって、より特定的には機械式粉砕ミルZを用いて回転子及び固定子を備えた粉砕チャンバー中でのアトリションによって、実施される。
【0022】
アトリションによる機械式粉砕用のミルにおいて、粒子の粉砕は回転子と固定子との間において行われる。粒子の細分化(fragmentation)は、粉砕媒体と粒子との間の衝突の蓋然性に依存する。従って、ある粒子は数回粉砕され、別のある粒子は全く粉砕されないということもある。結果として、得られる生成物は広い粒度分布を有する。粒子寸法がよりよく制御された生成物を得るため、エネルギー効率を高めるため及び過剰粉砕を避けるために、機械式粉砕ミルに空気式粒子分別システムを具備させることができる。
【0023】
本発明の好ましい別形態に従えば、工程(d)において機械式粉砕ミルZに、沈降シリカXの粒子を回収するための一体型粒子分別システムを具備させる。
【0024】
本発明の別の好ましい形態に従えば、工程(d)において機械式粉砕ミルZに、沈降シリカXの粒子を回収するための独立型粒子分別システムを連結する。
【0025】
如何なる態様においても特定の理論に縛られることは望まないが、粉砕及び乾燥を同時に実施することによって、粉砕によって得られる微粒子の即座の乾燥をもたらすことができ、従ってその後に再凝集する傾向が少なくなり、よりよい分散性を示すこととなる。
【0026】
本発明の別の実施形態に従えば、工程(d)は、大気圧下で行われる。
【0027】
沈降シリカは通常、以下に詳述する方法及び測定に従って特徴付けられる;
・BET比表面積:これは、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)」、第60巻、第309頁(1938年2月)に記載されたBRUNAUER-EMMET-TELLER法によって測定される。
・CTAB比表面積:これは、NF規格T45007(1987年11月)に従って決定される。
・pH:これは、ISO規格787/9(水中5%懸濁液のpH)に従って決定される。
・湿分レベル(又は残留含水率):これは、105℃において2時間の熱処理後に測定した重量損失から決定される(重量%)。
・充填(詰込み)密度(densite tapee)即ち圧縮状態における充填密度(densite de remplissage a l'etat tasse)(DRT):これはNF規格T30−042に従って決定される。
【0028】
さらに、沈降シリカは一般的に、少なくとも痕跡量で、用いたケイ酸塩に対して実施した酸性化剤の作用の結果として生じる塩を含有する。例えば、本発明の方法が特にシリカ前駆体としてケイ酸アルカリを用い且つ酸性化剤として硫酸を用いた場合には、沈降シリカは硫酸アルカリを含有する。一般的に、得られるシリカ中の硫酸アルカリの含有量は比較的低く、大抵の場合、存在する硫酸イオンの質量が乾燥物質の総質量に対して最大でも1重量%を占めるのが一般的である。ある種の用途については、沈降シリカ中の硫酸塩(硫酸イオン)の濃度を調節することが重要である。例えば、沈降シリカ中の硫酸塩のレベルが0.7重量%より高いと、シリカを含有させたエラストマーの変色(黄変)がもたらされる。さらに、高い硫酸塩レベルはかなりの水分吸収を促進することが知られており、従って硫酸塩のレベルをできるだけ低く保つのが有益である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態に従えば、工程(c)における沈降シリカCは次の特徴を有する:
・50〜300m2/gの範囲のBET表面積、
・50〜300m2/gの範囲のCTAB表面積、
・50m2/g未満のBET−CTAB値、
・4〜10重量%の範囲の湿分レベル、
・4〜8の範囲のpH、
・1.2重量%未満の硫酸塩SO4-レベル、及び
・100g/リットル超の充填密度。
【0030】
本発明のより一層好ましい実施形態に従えば、工程(c)における沈降シリカCは次の特徴を有する:
・130〜250m2/gの範囲のBET表面積、
・130〜250m2/gの範囲のCTAB表面積、
・30m2/g未満のBET−CTAB値、
・4〜9重量%の範囲の湿分レベル、
・4.5〜7.5の範囲のpH、
・0.7重量%未満の硫酸塩SO4-レベル、及び
・150g/リットル超の充填密度。
【0031】
本発明のさらにより一層好ましい実施形態に従えば、工程(c)における沈降シリカCは次の特徴を有する:
・155〜185m2/gの範囲のBET表面積、
・155〜185m2/gの範囲のCTAB表面積、
・15m2/g未満のBET−CTAB値、
・4〜8重量%の範囲の湿分レベル、
・5〜6.5の範囲のpH、
・0.5重量%未満の硫酸塩SO4-レベル、及び
・200g/リットル超の充填密度。
【0032】
好ましくは、沈降シリカCは、Rhodia社より販売されているシリカZ160(登録商標)や、Degussa社より販売されているシリカUltrasil(登録商標)、PPG社より販売されているシリカDRX190(登録商標)のような、分散性シリカである。
【0033】
沈降シリカCの特徴の内のいくつかは、同時に粉砕−乾燥を実施する方法の工程(d)の間に変化しないということに注目することが重要である。これは例えばCTAB、BET、pH及び硫酸塩レベルに当てはまる。しかしながら、本発明の方法の工程(d)は、沈降シリカCの湿分レベルを下げ、粒子寸法を小さくし、充填密度を低下させることによってその特性を改善することを可能にする。
【0034】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られる沈降シリカXにも関し、この沈降シリカXは、次の特徴を有する:
・20μm以下の平均粒子寸法Dv50、
・5重量%以下の湿分レベル、及び
・100g/リットル以下の充填密度。
【0035】
沈降シリカの粒子寸法は、レーザー粒度計(Malvern 2000装置)を用いて測定される。分布値は累積体積で表される。例えば、Dv10値は10体積%の粒子がその値より小さい寸法を有していることを示し、Dv50値は50体積%の粒子がその値より低い寸法を有していることを示し、Dv90値は90体積%の粒子がその値より小さい寸法を有していることを示す。
【0036】
本発明の好ましい実施形態に従えば、本発明の方法によって得られる沈降シリカXは、次の特徴を有する:
・14μm以下の平均粒子寸法Dv50、
・4重量%以下の湿分レベル、及び
・80g/リットル以下の充填密度。
【0037】
本発明のさらにより一層好ましい実施形態に従えば、本発明の方法によって得られる沈降シリカXは、次の特徴を有する:
・14μm以下の平均粒子寸法Dv50、
・3重量%以下の湿分レベル、及び
・80g/リットル以下の充填密度。
【0038】
本発明に従う沈降シリカXは、好ましくは12μm未満のDv10を有し、より一層好ましくは8μm未満のDv10を有する。
【0039】
本発明に従う沈降シリカXは、好ましくは25μm未満のDv90を有し、より一層好ましくは22μm未満のDv90を有する。
【0040】
本発明はまた、本発明に従う沈降シリカX又は本発明に従う方法によって得られた沈降シリカXを含むシリコーンエラストマー前駆体のオルガノポリシロキサン組成物にも関する。
【0041】
沈降シリカXを含むオルガノポリシロキサン組成物の例としては、高温加硫エラストマー(HVE)及び低温加硫エラストマー(CVE)を得るための組成物、LSR(「液状シリコーンゴム」)を得るための組成物、並びに1成分型(例えばマスチック及びコールドグルー)及び2成分型RTV(「室温加硫型」)組成物を挙げることができる。
【0042】
一般的に、本発明に従うHVEを得るためのオルガノポリシロキサン組成物は、以下のものを含む(重量部):
(a)25℃において100万mPa・s超の粘度を有する少なくとも1種のジオルガノポリシロキサンゴム(1)100部、
(b)有機ペルオキシド(2)0.1〜7部、
(c)本発明に従う沈降シリカ(3)5〜150部、及び
(d)25℃において最大5000mPa・sの粘度を有する少なくとも1種のジオルガノポリシロキサンオイル(4)0〜15部。
【0043】
25℃において100万mPa・s超の粘度を有するジオルガノポリシロキサンゴム(1)は、例えば式R2SiO2/2のシロキシル単位の鎖の各末端を式R3SiO1/2のシロキシル単位及び/又は式OR'の基でブロックされたものであることができる。これらの式中、記号Rは同一であっても異なっていてもよく、メチル、エチル、n−プロピル、フェニル、ビニル又は3,3,3−トリフルオロプロピル基を表し、これらの基の少なくとも60%はメチルであり、多くとも3%がビニルであり、記号R'は水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はβ−メトキシエチル基を表す。
【0044】
25℃において最大5000mPa・sの粘度を有するジオルガノポリシロキサンオイル(4)は、式R''2SiO2/2のシロキシル単位の鎖の各末端を式OR'の基でブロックされたものから成ることができる。これらの式中、記号R''は同一であっても異なっていてもよく、メチル、フェニル又はビニル基を表し、これらの基の少なくとも40%がメチルであり、記号R'は前記の意味を持つ。
【0045】
式R2SiO2/2及びR3SiO1/2のシロキシル単位並びに式OR'の基の具体例としては、次の式のものを挙げることができる:
(CH3)2SiO2/2、CH3(CH2=CH)SiO2/2、CH3(C65)SiO2/2、(C65)2SiO2/2、CH3(C25)SiO2/2、(CH3CH2CH2)CH3SiO2/2、CH3(n−C37)SiO2/2、(CH3)(C65)(CH2=CH)Si1/2、−OH、−OCH3、−OC25、−O−n−C37、−O−イソ−C37、−O−n−C49、−OCH2CH2OCH3
【0046】
ジオルガノポリシロキサンオイル(4)は、ゴム(1)100部当たり0〜15部、好ましくは0.3〜12部の割合で、存在させることができる。この/これらのオイルは、25℃において最大5000mPa・s、好ましくは25℃において最大4000mPa・sの比較的低粘度の線状ポリマーであり、そのジオルガノポリシロキサン鎖は前記の式R''2SiO2/2の単位から本質的に成り、この鎖の各末端が前記の式OR'の基でブロックされたものである。基R''の少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%がメチル基である。記号R''及びR'の意味は上で説明した。
【0047】
好ましくは、以下のものを用いる:
・鎖の各末端をヒドロキシル、メトキシ又はβ−メトキシエトキシ基でブロックされた、25℃において10〜200mPa・sの範囲の粘度を有するジメチルポリシロキサンオイル;
・CH3(C65)SiO2/2単位から成り、鎖の各末端をヒドロキシル及び/又はメトキシ基でブロックされた、25℃において40〜2000mPa・sの粘度を有するメチルフェニルポリシロキサンオイル。
【0048】
有機ペルオキシド(2)は、ゴム(1)100部当たり0.1〜7部、好ましくは0.2〜5部の割合で、用いられる。これらは当業者によく知られており、過酸化ベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化ジクミル、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、過安息香酸t−ブチル、ペルオキシ炭酸t−ブチルイソプロピル、過酸化ジ−t−ブチル、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン。これらの各種ペルオキシドは、時として異なる温度及び速度で分解する。これらは、所望の条件に関連して選択され、その量を調節される。
【0049】
本発明はさらに、本発明に従う沈降シリカX又は本発明の方法によって得られた沈降シリカXを含むシリコーンエラストマーにも関する。
【0050】
本発明は最後に、本発明に従う沈降シリカX又は本発明に従う方法によって得られた沈降シリカXをタイヤ、練り歯磨き、化粧品組成物、食料品組成物、製薬組成物、シリコーン組成物及びエラストマー中に使用することにも関する。
【0051】
実際、シリコーンベースマトリックス中のフィラーとしてのそれらの用途に加えて、本発明の沈降シリカは、有機ポリマーをベースとするマトリックス中、特に1種以上の天然又は合成エラストマーをベースとするマトリックス中、特にゴムをベースとするマトリックス中、より特定的には天然又は合成ゴム、特にSBRタイプ又はブチルゴムタイプのゴムをベースとするマトリックス中の補強用フィラーとして有利に用いることができる。実際、本発明の方法に従って得られるシリカは、ポリマー及びエラストマーマトリックス中において良好な分散特性及び補強特性を有し、特にそれらマトリックス中で耐摩耗性を高めることができ、このことはタイヤの製造において有利であることができる。
【0052】
本発明の沈降シリカはまた、有機又は水性媒体中、好ましくは水性媒体中、特に練り歯磨き中の増粘剤としても、有利に用いることができる。
【0053】
さらに、本発明に従って得られるシリカは、もちろん、沈降シリカの他の多くの通常の利用分野、例えば塗料や紙の製造において有用であり得る。これらシリカは、食料品や化粧品組成物中の基材として特に興味深いことがわかった。
【0054】
本発明の方法に従って得られるシリカはさらに、製薬分野において特に好適なシリカである。例えば、本発明のシリカは、製薬組成物中のフィラー、キャリヤー及び/又は賦形剤として、特に好適である。
【0055】
本発明の目的及び利点は、以下に示した様々な非限定的実施例からさらにより一層明らかになるだろう。
【実施例】
【0056】
下記の表1に、本発明に従うシリカを得るために用いた市販のシリカを記載する。
【表1】

v すべての例について、体積による粒子の分布
【0057】
粉砕されていない市販のシリカ1、2及び3を次いで、
・Hosokawa社から供給されるACM粉砕ミル(粒子分別システムを具備したもの)を用い、70℃の高温空気を供給して本発明に従って同時粉砕乾燥させて(即ち粉砕及び乾燥を同時に行って)、本発明に従うシリカ(シリカS1、S2及びS3)を回収するか、又は
・標準的な粉砕ミル(粉砕専用)を用いて従来通りに粉砕して、比較例C1、C2及びC3を得る。
【0058】
結果を下記の表2に示す。
【表2】

【0059】
様々な市販の沈降シリカの同時粉砕−乾燥は、異なる等級のシリカから出発しても、再現性ある品質の沈降シリカを与える。平均粒子寸法Dv50は9〜12.5μmの範囲であり、湿分レベルは5重量%より低い。
【0060】
本発明の方法に従って得られた同時粉砕乾燥したシリカ(S1〜S3)、並びに従来通りに粉砕したもの、即ち同時乾燥を行わなかったもの(比較用シリカC1〜C3)を、2種の高温加硫性シリコーン組成物中で補強用フィラーとして用いた。
【0061】
シリコーン組成物A(すべての部は重量による)
【0062】
下記の表3に示した化合物を、Zアーム式ニーダーミキサーに入れる。それらを30分間混合する。次いで1時間でミキサーの温度を150℃に上昇させ、次いで150℃に1時間保つ。次いで加熱を停止し、混合を1時間続ける。ミキサーを常に窒素で軽くパージする。
【0063】
【表3】

(a)すべての例について、Viはビニルを示す。
【0064】
こうして得られた組成物を、2本ローラーミキサーに入れ、シリコーンオイル中50重量%に希釈した過酸化2,4−ジクロロベンゾイル1.25部を触媒として加える。ミキサー中に得られた均質塊フラクションを、ポリオルガノシロキサン組成物の高温加硫の結果として得られるシリコーンエラストマーの機械的特性を測定するために、用いる。この目的で、採取した均質塊フラクションを次いで厚さ2mmのプレートを得るために好適な成形型を用いて115℃において8分間プレス加硫させる。こうして未アニーリング(UA)状態のプレートが得られる。これらのプレートを次いで200℃において4時間アニーリング又はエージングに付す。次いでこれらのすべてのプレートから標準化サンプルを採取し、次の特性を測定する:
【0065】
・AFNOR規格NF−T46−004に従うショアーA硬度(SHA)
・AFNOR規格NF−T46−002に従う破壊強さ(BS)(MPa)
・AFNOR規格NF−T46−002に従う破断点伸び(EB)(%)
・ASTM規格D412に従う100%弾性率(EM)(MPa)
・ASTM規格D624−73に従う引裂強さ(TS)(kN/m)
・ASTM規格D395−03方法B(25%、177℃、22時間)に従う残留圧縮歪み(RCS)(%)
【0066】
下記の表4に、本発明に従う方法によって同時粉砕乾燥したシリカを用いて得られたシリコーンエラストマー(シリカS1〜S3を用いた例A1〜A3)及び従来通りに、即ち同時乾燥を行わずに粉砕したシリカを用いて得られたシリコーンエラストマー(シリカC1〜C3を用いた比較例AC1〜AC3)の機械的特性を示す。
【0067】
【表4】

【0068】
これらの結果は、本発明の方法に従って同時粉砕乾燥したシリカを用いて配合したエラストマー(例A1、A2及びA3)は、従来通りに即ち同時乾燥をせずに粉砕したシリカを用いて配合したエラストマー(比較例AC1、AC2及びAC3)よりはるかに高い破壊強さ(BS)及び破断点伸び(EB)を有することを示している。
【0069】
シリコーン組成物B(すべての部は重量による)
【0070】
下記の表5に示した化合物を、Zアーム式ニーダーミキサーに入れる。それらを30分間混合する。次いで1時間でミキサーの温度を150℃に上昇させ、次いで150℃に1時間保つ。次いで加熱を停止し、混合を1時間続ける。ミキサーを常に窒素で軽くパージする。
【0071】
【表5】

【0072】
こうして得られた組成物を、2本ローラーミキサーに入れ、シリコーンオイル中75重量%に希釈した2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン0.6部を触媒として加える。ミキサー中に得られた均質塊フラクションを、ポリオルガノシロキサン組成物の高温加硫の結果として得られるシリコーンエラストマーの機械的特性を測定するために、用いる。この目的で、採取した均質塊フラクションを次いで厚さ2mmのプレートを得るために好適な成形型を用いて170℃において10分間プレス加硫させる。こうして未アニーリング(UA)状態のプレートが得られる。これらのプレートを次いで200℃において4時間アニーリング又はエージングに付す。次いでこれらのすべてのプレートから標準化サンプルを採取し、シリコーン組成物Aについてのものと同じ特性を測定する。
【0073】
下記の表6に、本発明に従う方法によって同時粉砕乾燥したシリカを用いて得られたシリコーンエラストマー(シリカS1〜S3を用いた例B1〜B3)及び従来通りに、即ち同時乾燥を行わずに粉砕したシリカを用いて得られたシリコーンエラストマー(シリカC1〜C3を用いた比較例BC1〜BC3)の機械的特性を示す。
【0074】
【表6】

【0075】
これらの結果は、本発明に従って粉砕乾燥したシリカを用いて配合したエラストマー(例B1、B2及びB3)は、供給元によって粉砕されたシリカを用いて配合したエラストマー(比較例BC1、BC2及びBC3)よりはるかに高い破壊強さ(BS)、破断点伸び(EB)及び残留圧縮歪み(RCS)を有することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散性であり且つ改善された補強特性を有する沈降シリカXの製造方法であって、次の工程:
(a)少なくとも1種のケイ酸塩と少なくとも1種の酸性化剤とを反応させて沈降シリカの懸濁液Aを得る工程;
(b)前記の沈降シリカの懸濁液Aを濾過し且つ洗浄して濾過ケークBを得る工程;
(c)前記濾過ケークBを乾燥させて沈降シリカCの粉体を得る工程;及び
(d)前記沈降シリカCを粉砕し且つ乾燥させて(これら2つの操作は、機械式粉砕ミルZを用いて50〜190℃の範囲、好ましくは60〜150℃の範囲、より一層好ましくは65〜130℃の範囲の温度において同時に実施される)前記沈降シリカXを回収する工程:
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記工程(d)において機械式粉砕ミルZの温度を、50〜190℃の範囲、好ましくは60〜150℃の範囲、さらにより一層好ましくは65〜130℃の範囲の温度に加熱した空気を供給することによって、調節する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(d)を機械式粉砕ミルZを用いたアトリションによって実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(d)を機械式粉砕ミルZを用いた回転子及び固定子を備えた粉砕チャンバー中でのアトリションによって実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(d)において機械式粉砕ミルZに沈降シリカXの粒子を回収するための一体型粒子分別装置を具備させる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記工程(d)において機械式粉砕ミルZに沈降シリカXの粒子を回収するための独立型粒子分別装置を連結する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(d)を大気圧下で行う、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(c)における沈降シリカCが次の特徴:
・50〜300m2/gの範囲のBET表面積、
・50〜300m2/gの範囲のCTAB表面積、
・50m2/g未満のBET−CTAB値、
・4〜10重量%の範囲の湿分レベル、
・4〜8の範囲のpH、
・1.5重量%未満の硫酸塩SO4-レベル、及び
・100g/リットル超の充填密度:
を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって得られ、次の特徴:
・20μm以下の平均粒子寸法Dv50、
・5重量%以下の湿分レベル、及び
・100g/リットル以下の充填密度:
を有する、沈降シリカX。
【請求項10】
請求項9に記載の沈降シリカX又は請求項1〜8のいずれかに記載の方法に従って得られた沈降シリカXを含む、シリコーンエラストマー前駆体オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の沈降シリカX又は請求項1〜8のいずれかに記載の方法に従って得られた沈降シリカXを含む、シリコーンエラストマー。
【請求項12】
タイヤ、練り歯磨き、化粧品組成物、食料品組成物、製薬組成物、シリコーン組成物又はシリコーンエラストマー中における、請求項9に記載の沈降シリカX又は請求項1〜8のいずれかに記載の方法に従って得られる沈降シリカXの使用。

【公表番号】特表2013−515661(P2013−515661A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545265(P2012−545265)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070204
【国際公開番号】WO2011/076716
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーンズ・フランス (62)
【Fターム(参考)】