説明

沈香の生産方法、及び沈香生成促進剤

【課題】沈香を生成する能力を有する樹木において、沈香成分の生成蓄積を人為的に促進し、効率的に沈香を製造できる方法を提供する。
【解決手段】植物の傷害応答に関わるシグナル成分に注目し、その特定の組合せにより、沈香成分の生成蓄積を促進する。沈香を生成する能力を有する樹木の幹部又は枝部に形成された傷害部に、沈香生成促進剤を施用する工程を含む沈香の生産方法であって、当該沈香生成促進剤が、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む、沈香の生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈香の生産方法、及び当該方法に用いられる沈香生成促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
沈香とは、香木の一種であり、その小片を加熱すると優美な芳香が漂うことから、古来、薫香料として珍重されてきた。日本においては、香りを聞く香道には欠かせない香木であり、また、例えば高級線香等の原料としても用いられている。また、沈香は、特にアラブ諸国においては、日常生活に、あるいは社交上、不可欠の香料であり、高い市場性を有する。さらに、沈香は、制吐作用、鎮静作用、及び消化作用等を有することが知られており、生薬としても用いられる。
【0003】
沈香の香気成分は、主にセスキテルペン類やフェニルエチルクロモン誘導体類からなることが知られている。セスキテルペン類は揮発性が高く、そのままでも芳香を示すが、クロモン誘導体類は、加熱によって分解することで初めて芳香を示す。同じ沈香と呼ばれる香木であっても、含有するセスキテルペン類やクロモン誘導体類の種類や比率の違いにより、沈香全体としての芳香は異なる。例えば、沈香の中でも高級なものは伽羅として知られているが、伽羅は一般的な沈香よりもセスキテルペン類を多く含み、焚かなくとも芳香を示す。また、香木には、他にも白檀等が知られているが、白檀が油分を多く含有するのに対し、沈香は樹脂成分を多く含有する。
【0004】
沈香は、ジンチョウゲ科アクイラリア(Aquilaria)属、ギリノプス(Gyrinops)属、及びラミン(Gonystylus)属樹木から採れる。例えば、アクイラリア属樹木は、インドおよび中国からマレー諸島に約15種が分布するとされているが、そのうち、アクイラリア・アガローチャ(A.agallocha)、アクイラリア・クラスナ(A.crassna)、アクイラリア・マラセニス(A.malaccennis)、アクイラリア・シネンシス(A.sinensis)、アクイラリア・ミクロカルパ(A.microcarpa)、アクイラリア・モシュコフスキー(A.moszkowskii)等から沈香が採れるとされ、中でもアクイラリア・アガローチャが有名である。
【0005】
アクイラリア・アガローチャ等は、樹幹が風雨、病気、害虫等により傷害を受けると、それに応答し、傷害部位において樹脂成分、すなわち沈香の香気成分であるセスキテルペン類やフェニルエチルクロモン誘導体類等が生成蓄積される。このように樹脂成分の生成蓄積が起こった樹木が、倒れ、土中で朽ちた際に、当該樹脂の蓄積した部分は分解されずに残り、それが天然の沈香となる。すなわち、沈香は、様々は外的要因によって生成するものであり、天然の沈香は極めて貴重なものとなっている。また、天然の沈香の生産には、微生物の感染が関わっているとも言われ、植物の病原菌応答シグナルであるサリチル酸の生理作用が沈香成分の生成蓄積に影響を与えている可能性がある。なお、樹脂生産に関与する微生物としては、いわゆるコウジカビであるアスペルギルス(Aspergillus)属真菌類が提唱されているが、その一方で、必ずしも特定の細菌が必要であるというわけではない、との報告もある。
【0006】
近年、森林伐採等による熱帯雨林の減少により、沈香の採取量が減少している。そのため、アクイラリア属、ギリノプス属、ラミン属樹木は、ワシントン条約(CITES)の附属書IIにおいて絶滅のおそれのある種として指定されており、国際的取引は厳しく制限されている。よって、沈香木の栽培、及びそれらを用いた沈香の人為的生産が強く望まれている。
【0007】
例えばタイでは、アクイラリア属樹木等の沈香を生産する樹木が、ゴムやヤシと共にプランテーション栽培されている。タイでは、伝統的に、栽培したアクイラリア属等の樹木を釘やドリルで人為的に傷害し、沈香成分の生成蓄積を誘導する試みがなされているが、わずかに沈香成分の生産が認められるだけで、まとまった沈香を生産するには至っていない。このように生産された沈香成分は、乾留により抽出され芳香成分として利用されている。
【0008】
また、沈香の製造法としては、アクイラリア属樹木において、木部に人為的な傷を形成し、さらに当該傷を空気にさらすことによって沈香成分の生成蓄積を誘導する沈香の製造法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、アクイラリア属樹木において、表面傷は沈香成分の生成蓄積を誘導しないが、深く貫通する傷は、その傷が開かれたままであれば沈香成分の生成蓄積が誘導されることを開示している(特許文献1、段落0050)。また、特許文献1によれば、傷害部に隣接する柔組織をさらに傷害するような化合物、例えば塩化ナトリウム、ギ酸、亜硫酸水素ナトリウム、塩化第一鉄等が沈香成分の生成蓄積の程度を高める可能性が示されている。その一方で、特許文献1には、サリチル酸は、沈香成分の生成蓄積を誘導することはない、と開示されている(特許文献1、段落0056)。
【0009】
また、アクイラリア属樹木のカルスにサリチル酸を添加することで、あるいは懸濁細胞にジャスモン酸メチルを添加することで、沈香の香気成分のうち、セスキテルペン類の生成が誘導されることが知られている(非特許文献1)。
【0010】
一方、本発明者らは、ヒノキ科樹木であるヒノキアスナロ(マアテ)およびヒノキにおいて、植物ホルモンとして知られるエチレンを生成するエスレル(登録商標)とジャスモン酸メチルあるいはプロヒドロジャスモンを混合して処理することで、傷害樹脂道の形成が誘導されることを見出している(非特許文献2)。また、マアテにおいては、さらにサリチル酸ナトリウムを混合することで傷害樹脂道の形成が促進されるのに対し、ヒノキにおいては、サリチル酸ナトリウムの混合による傷害樹脂道の形成促進は認められないことが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−202051号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】プラント・バイオテクノロジー(Plant Biotechnol) Vol.26、No.3、P.307−315 (2009)
【非特許文献2】山本ら、日本森林学会2009年度大会、要旨集Pc1−47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、沈香を生成する能力を有する樹木において、沈香成分の生成蓄積を人為的に促進し、効率的に沈香を製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、植物の傷害応答に関わるシグナル成分に注目し、その特定の組み合わせにより、沈香を生成する能力を有する樹木において、傷害部位における沈香成分の生成蓄積を促進できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0016】
第1の発明は、沈香を生成する能力を有する樹木の幹部又は枝部に形成された傷害部に、沈香生成促進剤を施用する工程を含む沈香の生産方法であって、当該沈香生成促進剤が、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む、方法である。
【0017】
第1の発明の好ましい態様においては、エチレン関連化合物は、2−クロロエチルホスホン酸、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸、エチレン、およびプロピレンからなる群より選択され、ジャスモン酸関連化合物は、ジャスモン酸メチル、プロヒドロジャスモン、ジャスモン酸イソロイシン、およびジャスモン酸からなる群より選択される。また、第1の発明の好ましい態様においては、沈香生成促進剤は、さらに、サリチル酸関連化合物を含む。また、第1の発明は、その好ましい態様において、さらに前記傷害部を形成する工程を含む。
【0018】
第2の発明は、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む沈香生成促進剤である。
【0019】
第2の発明の好ましい態様においては、エチレン関連化合物は、2−クロロエチルホスホン酸、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸、エチレン、およびプロピレンからなる群より選択され、ジャスモン酸関連化合物は、ジャスモン酸メチル、プロヒドロジャスモン、ジャスモン酸イソロイシン、およびジャスモン酸からなる群より選択される。また、第2の発明の好ましい態様においては、沈香生成促進剤は、さらに、サリチル酸関連化合物を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、沈香を生成する樹木において、沈香成分の生成蓄積を人為的に促進させ、沈香を生産することができる。また、それにより、沈香を確実に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、無水ラノリンを施用した際の、アクイラリア・クラスナの傷害部の写真である。
【図2】図2は、本発明の沈香生成促進剤を施用した際の、アクイラリア・クラスナの傷害部の写真である。
【図3】図3は、各種化合物の施用約9ヶ月後における、アクイラリア・クラスナ成木の着色部の上下方向への長さを示すグラフである。グラフ中の各アルファベットはそれぞれ異なる文字間において、P≦0.05で有意差があることを示す(Scheffe's test)。実験は3連で行い、平均値±標準誤差を示した。
【図4】図4は、各種化合物の施用1ヶ月後における、アクイラリア・クラスナ苗木の着色部の上下方向の面積を示すグラフである。グラフ中の各アルファベットはそれぞれ異なる文字間において、P≦0.05で有意差があることを示す(Scheffe's test)。実験は7連で行い、平均値±標準誤差を示した。
【図5】図5は、各種化合物の施用5ヶ月後における、アクイラリア・クラスナ苗木の着色部の上下方向の面積を示すグラフである。グラフ中の各アルファベットはそれぞれ異なる文字間において、P≦0.05で有意差があることを示す(Scheffe's test)。実験は7連で行い、平均値±標準誤差を示した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明の沈香の生産方法は、沈香を生成する能力を有する樹木の幹部又は枝部に形成された傷害部に、沈香生成促進剤を施用する工程を含む。
【0024】
本発明において、沈香の生産には、沈香を生成する能力を有する樹木を特に限定せず用いることができる。沈香を生成する能力を有する樹木としては、例えば、ジンチョウゲ科のアクイラリア(Aquilaria)属樹木、ギリノプス(Gyrinops)属樹木、及びラミン(Gonystylus)属樹木が挙げられ、品質の点からは、アクイラリア属樹木が好ましい。アクイラリア属樹木としては、例えば、アクイラリア・アガローチャ(A.agallocha)、アクイラリア・クラスナ(A.crassna)、アクイラリア・マラセニス(A.malaccennis)、アクイラリア・シネンシス(A.sinensis)、アクイラリア・ミクロカルパ(A.microcarpa)、アクイラリア・モシュコフスキー(A.moszkowskii)が挙げられ、品質の点からは、アクイラリア・アガローチャが好ましい。一般的に、沈香と言えば、アクイラリア・アガローチャから採れるものを指す場合が多いが、本発明においては、それには限られない。また、沈香を生成する能力を有する樹木は、成木であってもよく、苗木であってもよい。
【0025】
本発明において、沈香を生成する能力を有する樹木は、幹部あるいは枝部に、沈香生成促進剤を施用するための傷害部を有する。なお、本発明において、幹部あるいは枝部を樹幹等と称する場合がある。傷害部は、天然に形成された傷害部であってもよく、人為的に傷害して形成された傷害部であってもよい。沈香の生産効率や、生産管理の点から、傷害部は、人為的に傷害して形成されるのが好ましい。すなわち、本発明の沈香の生産方法は、沈香を生成する能力を有する樹木の幹部又は枝部に傷害部を形成する工程を含んでいてもよい。
【0026】
本発明において、傷害の態様は特に限定されないが、傷害部において沈香の生成蓄積が誘導される必要があるため、傷害部が設けられた樹木が、沈香の生成蓄積が十分に進行する前に死滅する程の傷害は望ましくない。傷害の態様は、傷害部を設ける樹木のサイズや設けられる傷害部の個数等の諸条件に応じて適宜決定することができる。傷害の態様としては、傷害部を設ける樹木の樹幹等において、表皮を傷害する態様、師部に達する程度に傷害する態様、木部に達する程度に傷害する態様等が挙げられるが、師部に達する程度に傷害するのが好ましく、木部に達する程度に傷害するのがより好ましい。表皮を傷害する態様としては、例えば、外樹皮を除去することが挙げられる。また、師部や木部に達する程度に傷害する態様としては、師部や木部に達する程度に、樹幹等に穴を開けることが挙げられる。穴を開けることで傷害する場合、その深さは、例えば、5mm〜20cmが好ましく、1cm〜10cmがより好ましく、1.5cm〜5cmが特に好ましい。また、穴を開けることで傷害する場合、その径は、例えば、0.5mm〜10cmが好ましく、1mm〜5cmがより好ましく、3mm〜3cmが特に好ましい。なお、ここでいう穴とは、円形の断面を有するものに限られず、任意の形状の断面を有するものであってよい。例えば、傷害の一態様としては、樹幹等に深さ約2cm、径約1cmの穴を開けることが挙げられる。
【0027】
傷害する位置は、沈香成分を生成蓄積させたい部位や、傷害の態様、傷害部を設ける樹木のサイズ、設けられる傷害部の個数等の諸条件に応じて適宜決定することができる。傷害する位置は、例えば、地上高5cm〜400cmであるのが好ましく、地上高10cm〜300cmであるのがより好ましい。例えば、地上高約70cm、約120cm、及び約170cmの位置において樹幹を傷害することができる。
【0028】
傷害部の個数は、特に限定されず、傷害部を設ける樹木のサイズや設けられる傷害部の態様等の諸条件に応じて適宜変更することができる。傷害部は、一本の樹木当たり1個設
けられてもよいが、沈香の生産効率の点から、一本の樹木当たり複数設けられるのが好ましい。傷害部の個数としては、例えば、一本の樹木当たり好ましくは2〜200個、より好ましくは5〜100個、特に好ましくは10〜50個である。
【0029】
上記のように、天然にあるいは人為的に傷害された部位を、本発明においては傷害部と称する。
【0030】
本発明の沈香生成促進剤は、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む。
【0031】
本発明において、エチレン関連化合物とは、樹木に施用された際にエチレンと同様の生理活性を示す化合物をいう。エチレン関連化合物としては、エチレン、プロピレン、化学反応によりエチレンが発生する化合物、およびエチレンが植物体内で合成される過程の中間体である化合物が挙げられる。化学反応によりエチレンが発生する化合物としては、2−クロロエチルホスホン酸(エテホン)が挙げられる。エテホンは、加水分解によりエチレンを発生する化合物である。エテホンとしては、例えば、エテホンを含有する市販の試薬であるエスレル(登録商標)を用いることができる。エチレンが植物体内で合成される過程の中間体である化合物としては、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸(ACC)が挙げられる。これらのエチレン関連化合物は、単独で沈香生成促進剤に含まれていてもよく、任意の組み合わせで含まれていてもよい。
【0032】
本発明において、ジャスモン酸関連化合物としては、ジャスモン酸およびジャスモン酸誘導体が挙げられる。なお、ジャスモン酸には、フリー体のジャスモン酸およびジャスモン酸の塩が含まれる。ジャスモン酸の塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。ジャスモン酸誘導体としては、ジャスモン酸メチル、プロヒドロジャスモン、およびジャスモン酸のアミノ酸誘導体が挙げられる。ジャスモン酸のアミノ酸誘導体としては、ジャスモン酸イソロイシンが挙げられる。これらのジャスモン酸関連化合物は、単独で沈香生成促進剤に含まれていてもよく、任意の組み合わせで含まれていてもよい。
【0033】
本発明の沈香生成促進剤は、さらに、サリチル酸関連化合物を含むのが好ましい。本発明において、サリチル酸関連化合物としては、サリチル酸およびサリチル酸誘導体が挙げられる。なお、サリチル酸には、フリー体のサリチル酸およびサリチル酸の塩が含まれる。サリチル酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩が挙げられ、ナトリウム塩が好ましく用いられる。サリチル酸誘導体としては、サリチル酸のエステルおよびサリチル酸の配糖体が挙げられる。サリチル酸のエステルとしては、サリチル酸のアルキルエステルが挙げられる。サリチル酸のアルキルエステルとしては、メチルエステルおよびエチルエステルが挙げられ、メチルエステルが好ましく用いられる。サリチル酸の配糖体としては、サリチル酸グルコシドが挙げられる。これらのサリチル酸関連化合物は、単独で沈香生成促進剤に含まれていてもよく、任意の組み合わせで含まれていてもよい。
【0034】
本発明の沈香生成促進剤に含まれるエチレン関連化合物、ジャスモン酸関連化合物、及びサリチル酸関連化合物は、いずれも公知の化合物であり、常法により製造することができる。また、本発明の沈香生成促進剤に含まれるエチレン関連化合物、ジャスモン酸関連化合物、及びサリチル酸関連化合物としては、市販品を好適に用いることができる。
【0035】
本発明の沈香生成促進剤は、沈香の生成を促進する作用を損なわない限り、さらに、任意の固体担体、液体担体、安定剤、希釈剤、又は界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。本発明の沈香生成促進剤は、液体状でもよく、固体状でもよく、気体状でもよく、また、ゲルやゾル等、その他の任意の形態であってよい。本発明の沈香生成促進剤は、例え
ば、ペースト状あるいは液状であることが好ましい。
【0036】
固体担体としては、種々の無機物質、セルロース等の有機物質、樹脂類、ミツロウ等のワックス類、ラノリン等のグリース類、脂肪酸エステル類等を用いることができる。液体担体としては、水、液体油、パラフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、エーテル類、エステル類等を用いることができる。
【0037】
本発明の沈香生成促進剤の調製方法は特に限定されるものではなく、沈香生成促進剤は公知の手法により調製することができる。例えば、エスレル、ジャスモン酸メチル、無水ラノリン、及び必要によりその他の成分を混合することにより、エスレル及びジャスモン酸メチルを含有するペースト状の沈香生成促進剤が調製できる。調製されたペースト状の沈香生成促進剤は、そのまま、沈香を生成する能力を有する樹木の傷害部に施用することができる。
【0038】
なお、エチレン関連化合物、ジャスモン酸関連化合物、及び必要によりサリチル酸関連化合物(以下、「有効成分」と称する場合がある)は混合されて沈香生成促進剤に含有されていてもよく、混合されていなくてもよい。本発明においては、例えば、エチレン関連化合物を含む沈香生成促進剤A、ジャスモン酸関連化合物を含む沈香生成促進剤B、及び必要によりサリチル酸関連化合物を含む沈香生成促進剤Cを併せて、本発明の沈香生成促進剤とみなしてもよい。すなわち、本発明の沈香生成促進剤とは、各有効成分を混合して含有するものであってもよく、各有効成分を必要に応じて別個に分けて含む複数の沈香生成促進剤を含むものであってもよい。したがって、本発明において、沈香生成促進剤を施用する工程とは、結果的に各有効成分が施用される限り、各有効成分を混合して含有する沈香生成促進剤を施用する工程であってもよく、各有効成分をそれぞれ別個に含有する複数の沈香生成促進剤、例えば上記沈香生成促進剤A、B、およびCをそれぞれ施用する工程であってもよい。
【0039】
本発明の沈香生成促進剤におけるエチレン関連化合物の濃度は、沈香生成促進剤の形態等の諸条件にも依存するが、好ましくは0.1%〜30%、より好ましくは0.2%〜10%、特に好ましくは0.5%〜5%である。また、本発明の沈香生成促進剤におけるジャスモン酸関連化合物の濃度は、沈香生成促進剤の形態等の諸条件にも依存するが、好ましくは0.1%〜30%、より好ましくは0.2%〜10%、特に好ましくは0.5%〜5%である。本発明の沈香生成促進剤におけるサリチル酸関連化合物の濃度は、沈香生成促進剤の形態等の諸条件にも依存するが、好ましくは0.01%〜30%、より好ましくは0.1%〜10%、特に好ましくは0.2%〜5%である。また、使用時に希釈および/または混合等の操作を行う場合は、結果的に傷害部において各有効成分が上記の好ましい濃度範囲になるよう、本発明の沈香生成促進剤における濃度を設定してもよい。例えば、本発明の沈香生成促進剤が複数の沈香生成促進剤、例えば上記沈香生成促進剤A、B、およびCを含む場合には、沈香生成促進剤A、B、およびCにおける各有効成分の濃度は、沈香生成促進剤A、B、およびCのそれぞれが施用される際に、結果的に傷害部において各有効成分が上記の好ましい濃度範囲になるよう調整されるのが好ましい。なお、本発明において、濃度を示す%は、重量%である。
【0040】
本発明において、沈香生成促進剤は、傷害部に施用することで使用される。施用する工程は、本発明の沈香生成促進剤の態様や傷害部の態様等に応じて適当な方法で行えばよく、例えば、傷害部に塗布、注入、あるいは噴霧する等の方法で行うことができる。なお、結果的に傷害部に施用されるのであれば、傷害部以外の部位を含む範囲、例えば樹木全体にまとめて噴霧等してもよい。沈香生成促進剤を施用した傷害部は、任意の部材により被覆されるのが好ましい。例えば、沈香生成促進剤を施用した傷害部は、ガムテープで被覆されてもよく、アルミホイルで被覆され、その上からさらにガムテープで被覆されてもよ
い。
【0041】
施用回数は、特に限定されず、1回であってもよく、複数回であってもよい。施用回数は、施用期間、用いる樹種、傷害の態様等に応じて適宜設定することが可能である。複数回施用する場合には、施用回数は、例えば、1年毎の施用となるよう調整してもよく、半年毎の施用となるよう調整してもよい。なお、複数回施用する場合に、各回の施用間の時期的間隔は一定でもよく、一定でなくともよい。また、施用は、例えば、同一の傷害部に対して複数回行ってもよく、一本の樹木に設けられた複数の傷害部に対して同時にあるいは時期を違えて行ってもよい。また、施用は、複数の傷害部に対して、それぞれ異なる回数行ってもよい。また、複数回施用する場合や複数箇所に施用する場合には、沈香生成促進剤中の有効成分の濃度、沈香生成促進剤の施用量、および施用方法等の諸条件は、各回および/または各箇所で同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
施用時期は、特に限定されず、用いる樹種、傷害の態様等に応じて適宜設定することが可能である。施用時期としては、少なくとも1回は、沈香の採取予定の10年前から採取時までの間に施用するのが好ましく、採取予定の5年前から1ヶ月までの間に施用するのがより好ましく、採取予定の2年前から半年前までの間に施用するのが特に好ましい。
【0043】
本発明により、沈香成分の生成蓄積が促進される。沈香成分とは、沈香の香気成分であり、主にセスキテルペン類やフェニルエチルクロモン誘導体類を含む。なお、本発明においては、これら沈香の香気成分から選択される1またはそれ以上の成分の生成が促進されればよい。すなわち、本発明においては、一般的な沈香に含まれる全ての成分の生成蓄積が促進されてもよく、そうでなくともよい。本発明において、沈香生成促進剤が施用された傷害部を中心に、フェノール成分が重合し蓄積した暗色部位が上下に広がって形成される。ここで、当該暗色部位を傷害心材と称する。沈香成分は、傷害心材の辺縁部に生成蓄積し、その蓄積量は傷害心材の量と正の相関を示す。すなわち、本発明において、沈香成分の生成蓄積量は、傷害心材の体積、面積、あるいは長さに基づき比較できる。本発明においては、傷害部の上下に広がる傷害心材の長さや面積に基づき、沈香成分の生成蓄積量を推定するのが簡便で好ましい。
【0044】
本発明の方法により沈香成分が生成蓄積した樹木から、沈香を採取することができる。沈香の採取は、沈香成分が蓄積した部位を採取することにより行うことができる。沈香の採取は、沈香成分が蓄積した部位のみを採取することには限定されず、沈香成分が蓄積した部位を含む任意の部位を採取することより行われてもよい。それらの部位を採取する方法は特に限定されず、例えば人為的に切り取ることにより行うことができる。また、沈香成分が生成蓄積した樹木を土中に埋設し、分解が進行した後に、分解されずに残った沈香成分が蓄積した部位あるいは当該部位を含む任意の部位を回収することにより、沈香を採取してもよい。得られた沈香は、香木として天然の沈香と同様に使用することができる。また、本発明の方法により得られた沈香から、香気成分を抽出することができる。香気成分とは、主にセスキテルペン類やフェニルエチルクロモン誘導体類であり、香気成分の抽出は、乾留等の任意の手法で行うことができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
〔実施例1〕アクイラリア・クラスナ(成木)における沈香の生成促進
沈香を生成する能力を有する樹木としてアクイラリア・クラスナを用い、本発明の沈香生成促進剤について沈香の生成促進効果を評価した。実験は、タイ王国トラート(Trat)県の8年生アクイラリア・クラスナ(成木)のプランテーションにおいて行った。沈
香生成促進剤による処理期間は約9ヶ月とし、2009年3月10日に沈香生成促進剤を施用し、同年12月22日に試料を採取した。
【0047】
沈香生成促進剤の有効成分としては、エチレン関連化合物としてエスレル、ジャスモン酸関連化合物としてジャスモン酸メチル、サリチル酸関連化合物としてサリチル酸ナトリウムを用いた。これらの成分を、試験成分と称する。各試験成分は、単独あるいは任意の組み合わせで、それぞれ1%となるよう無水ラノリンに混合して、試験ペーストを調製した。
【0048】
アクイラリア・クラスナの樹幹の地上高70cm、120cm、170cmの位置において、深さ2cm、径1cmの穴を開け、傷害部を形成した。形成した傷害部に、各試験成分を単独あるいは任意の組み合わせで含む試験ペーストを0.5gずつ封入し、ガムテープにより被覆した。
【0049】
無水ラノリンのみを封入した群を対照群(Lanolin)、1%エスレルを封入した群を比較群(Et)、1%ジャスモン酸メチルを封入した群を比較群(MJ)、1%サリチル酸ナトリウムを封入した群を比較群(NS)とした。また、1%エスレルまたは1%ジャスモン酸メチルと、1%サリチル酸ナトリウムとを混合して施用した群をそれぞれ比較群(Et+NS)または比較群(MJ+NS)とした。また、1%エスレルと1%ジャスモン酸メチルを混合して施用した群を試験群(Et+MJ)とし、さらに1%サリチル酸ナトリウムを混合して施用した群を試験群(Et+MJ+NS)とした。すなわち、例えば、試験群(Et+MJ+NS)とは、各傷害部に、エスレル、ジャスモン酸メチル、及びサリチル酸ナトリウムがそれぞれ1%の濃度となるよう無水ラノリンに混合して調製された試験ペースト0.5gを封入した群である。なお、各処理群につき、3本のアクイラリア・クラスナ樹木(成木)を用いた。
【0050】
試験ペーストの封入後、約9ヶ月経過時点で、それぞれの処理部から、幅約10cm、長さ10〜40cm、深さ約2cmの木部片を切り取り、70%エタノールにより表面殺菌して試料とした。試料は、日本に輸送し、組織解剖学的に解析を行った。
【0051】
結果を図1〜3に示す。図1は、対照群(Lanolin)の傷害部の写真であり、図2は、試験群(Et+MJ+NS)の傷害部の写真である。図1によれば、対照群(Lanolin)では、暗色部分はほぼ円形であり、傷害心材の上下方向への広がりが少ないことが認められる。一方、図2によれば、試験群(Et+MJ+NS)では、傷害部を中心に暗色部分が上下に大きく広がっており、傷害心材の形成が促進されたことが認められる。図3は傷害部の上下に形成された傷害心材の上下方向それぞれへの長さを表すグラフである。沈香成分は、傷害心材の辺縁部に蓄積している。傷害心材の量と沈香成分の蓄積量との間には正の相関が認められるため、本実施例においては、傷害心材の長さによって沈香成分の蓄積量の比較を行った。得られた結果はScheffe's testにより統計解析を行い、P≦0.05の場合に有意差があるものとした。
【0052】
各試験成分を単独で封入した比較群(Et、MJ、NS)では、無水ラノリンのみを施用した対照群(Lanolin)に対し、上下方向のいずれについても傷害心材の長さに有意差が認められなかった。よって、各試験成分は、単独では、有意な沈香の生成促進効果を示さないことが明らかとなった。
【0053】
また、エスレルまたはジャスモン酸メチルと、サリチル酸ナトリウムとを混合した比較群(Et+NS、MJ+NS)でも、対照群(Lanolin)に対し、上下方向のいずれについても傷害心材の長さに有意差が認められなかった。よって、サリチル酸ナトリウムと、エスレル及びジャスモン酸メチルのいずれかを組み合わせただけでは、有意な沈香
の生成促進効果を示さないことが明らかとなった。
【0054】
一方、エスレルとジャスモン酸メチルを混合した試験群(Et+MJ)では、傷害心材の長さが増大する傾向が認められ、特に、下方向について、対照群(Lanolin)と比較して傷害心材の長さが有意に増大していた。また、試験群(Et+MJ)では、ジャスモン酸メチルを単独で施用した比較群(MJ)以外の全比較群に対し、下方向について傷害心材の長さが有意に増大していた。よって、エスレルとジャスモン酸メチルを組み合わせて傷害部に施用することで、傷害心材の形成が促進され、沈香成分の生成蓄積が促進されることが明らかとなった。
【0055】
また、エスレルとジャスモン酸メチルに加えて、さらに、サリチル酸ナトリウムを混合した試験群(Et+MJ+NS)では、傷害心材の顕著な増大が認められ、対照群(Lanolin)および全ての比較群に対し、上下方向のいずれについても傷害心材の長さが有意に増大していた。また、サリチル酸ナトリウムを混合した試験群(Et+MJ+NS)とサリチル酸ナトリウムを含まない試験群(Et+MJ)との間では有意差が認められなかったが、試験群(Et+MJ+NS)では、試験群(Et+MJ)と比較して、さらに傷害心材の長さが増大する傾向が認められた。以上より、エスレル、ジャスモン酸メチル、及びサリチル酸ナトリウムを組み合わせて傷害部に施用することで、傷害心材の形成が促進され、沈香成分の生成蓄積が促進されることが明らかとなった。また、エスレルとジャスモン酸メチルに加えて、さらに、サリチル酸ナトリウムを加えることで、傷害心材の形成及び沈香成分の生成蓄積がさらに促進されることが示唆された。
【0056】
〔実施例2〕アクイラリア・クラスナ(苗木)における沈香の生成促進
沈香を生成する能力を有する樹木として2年生アクイラリア・クラスナ(苗木)を用い、地上高10cmの位置に径1.5mmの穴を開け、傷害部を形成した。実施例1と同様に各種化合物を施用し、本発明の沈香生成促進剤について沈香の生成促進効果を評価した。沈香の生成は、各種薬剤の施用後、1ヶ月および5ヶ月時点で傷害部の着色領域の面積、すなわち傷害心材の面積を測定することで評価した。なお、各処理群につき、7本のアクイラリア・クラスナ樹木(苗木)を用いた。
【0057】
施用1ヶ月後の結果を図4に示す。各試験成分を単独で封入した比較群(Et、MJ、NS)およびエスレルとサリチル酸ナトリウムを混合した比較群(Et+NS)では、無水ラノリンのみを施用した対照群(Lanolin)に対し、上下方向のいずれについても着色面積に有意差が認められなかった。一方、エスレルとジャスモン酸メチルを混合した試験群(Et+MJ)では、着色面積が増大する傾向が認められ、特に、下方向について、対照群(Lanolin)と比較して着色面積が有意に増大していた。また、エスレルとジャスモン酸メチルに加えて、さらに、サリチル酸ナトリウムを混合した試験群(Et+MJ+NS)では、上下方向のいずれについても、対照群と比較して着色面積が有意に増大していた。なお、サリチル酸ナトリウムを混合した試験群(Et+MJ+NS)では、サリチル酸ナトリウムを含まない試験群(Et+MJ)に対し、着色面積が増大する傾向が認められ、特に、下方向について着色面積が有意に増大していた。
【0058】
施用5ヶ月後の結果を図5に示す。比較群(Et、MJ、NS、Et+NS)では、対照群(Lanolin)に対し、一部の結果で有意差が認められた。一方、各試験群(Et+MJ、Et+MJ+NS)では、対照群(Lanolin)に対し、上下方向のいずれについても着色面積が有意に増大していた。また、各試験群(Et+MJ、Et+MJ+NS)では、各比較群に対し、着色面積が増大する傾向あるいは有意な増大が認められた。
【0059】
また、エスレルに替えてACC(1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸)を用い
た群(ACC+MJ+NS)においても、対照群(Lanolin)に対し、上下方向のいずれについても着色面積が有意に増大していた。なお、ACCを用いた群(ACC+MJ+NS)とエスレルを用いた群(Et+MJ+NS)との間には有意差は認められなかった。
【0060】
以上より、エスレルとジャスモン酸メチルを組み合わせて傷害部に施用することで、傷害心材の形成が促進され、沈香成分の生成蓄積が促進されることが再度確認された。また、エスレルとジャスモン酸メチルに加えて、さらに、サリチル酸ナトリウムを加えることで、傷害心材の形成及び沈香成分の生成蓄積がさらに促進されることが再度示唆された。また、エスレルに替えて、エチレンが植物体内で合成される過程の中間体として知られるACC(1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸)を用いた場合にも、エスレルを用いた場合と同様に傷害心材の形成が促進され、沈香成分の生成蓄積が促進されることが明らかとなった。
【0061】
本実施例1および2の結果より、エチレン関連化合物とジャスモン酸関連化合物を組み合わせて傷害部に施用することで、人為的に沈香の生産を行うことができると明らかになった。また、サリチル酸関連化合物は、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物が示す沈香の生成促進作用を、さらに向上させることが示唆された。
【0062】
エチレン及びジャスモン酸メチルは、傷害応答に関わる植物ホルモンとして知られている。すなわち、エチレン及びジャスモン酸メチルは、外敵による摂食などの傷害を受けた際に外敵に抵抗する遺伝子を発現させるシグナル物質として機能する。エチレン及びジャスモン酸メチルは互いに協奏的に働くとされているが、単独では有意な促進効果を示さないエスレルとジャスモン酸メチルが、それらを組み合わせることで顕著な沈香の生成促進作用を示すことは、予想できない結果であった。また、サリチル酸は、病原菌の感染に応答して生成される生理活性物質であり、病原菌に対する抵抗性を示すための遺伝子の発現を誘導する作用を有するとされている。ここで、サリチル酸は、エチレン及びジャスモン酸メチルに対し拮抗的に働くとされていることから、ジャスモン酸メチル及びエチレンと組み合わせることで沈香の生成促進作用をさらに向上させることが示唆されたのは、予想できない結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の沈香生成促進剤を、沈香を生成する能力のある樹木の傷害部に施用することにより、沈香成分の生成蓄積を人為的に促進することができ、沈香を効率的に生産できる。生産した沈香は、天然の沈香と同様に使用することができる。また、生産した沈香から香気成分を抽出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈香を生成する能力を有する樹木の幹部又は枝部に形成された傷害部に、沈香生成促進剤を施用する工程を含む沈香の生産方法であって、
前記沈香生成促進剤が、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む、方法。
【請求項2】
前記エチレン関連化合物が、2−クロロエチルホスホン酸、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸、エチレン、およびプロピレンからなる群より選択され、前記ジャスモン酸関連化合物が、ジャスモン酸メチル、プロヒドロジャスモン、ジャスモン酸イソロイシン、およびジャスモン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈香生成促進剤が、さらに、サリチル酸関連化合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記傷害部を形成する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む沈香生成促進剤。
【請求項6】
前記エチレン関連化合物が、2−クロロエチルホスホン酸、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸、エチレン、およびプロピレンからなる群より選択され、前記ジャスモン酸関連化合物が、ジャスモン酸メチル、プロヒドロジャスモン、ジャスモン酸イソロイシン、およびジャスモン酸からなる群より選択される、請求項5に記載の沈香生成促進剤。
【請求項7】
さらに、サリチル酸関連化合物を含む、請求項5又は6に記載の沈香生成促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28677(P2013−28677A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164427(P2011−164427)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】