沸騰水型原子炉の核バンドルのための曝露強化ゾーン
【課題】強化ゾーンを含む核燃料棒、およびその核燃料棒を使用する燃料バンドルを提供する。
【解決手段】燃料棒300は、燃料棒300の強化ゾーン310に第1の濃縮ウランを含むことができ、強化ゾーン310は、直接、燃料棒300の底部に配置することができる。燃料棒300はまた、燃料棒300の第2ゾーン320に第2の濃縮ウランを含むことができ、第2ゾーン320は、強化ゾーン310の上に配置される。燃料棒300はまた、燃料棒の第3ゾーン330に天然ウランを含むことができ、第3ゾーン330は第2ゾーン320の上に配置される。この燃料棒300では、強化ゾーン310における濃縮ウランの濃縮度のパーセントは少なくとも1パーセントである。
【解決手段】燃料棒300は、燃料棒300の強化ゾーン310に第1の濃縮ウランを含むことができ、強化ゾーン310は、直接、燃料棒300の底部に配置することができる。燃料棒300はまた、燃料棒300の第2ゾーン320に第2の濃縮ウランを含むことができ、第2ゾーン320は、強化ゾーン310の上に配置される。燃料棒300はまた、燃料棒の第3ゾーン330に天然ウランを含むことができ、第3ゾーン330は第2ゾーン320の上に配置される。この燃料棒300では、強化ゾーン310における濃縮ウランの濃縮度のパーセントは少なくとも1パーセントである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ゾーンを含む核燃料棒、およびその核燃料棒を含む燃料バンドル集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、沸騰水型原子炉圧力容器(RPV)10の燃料棒および燃料集合体のための従来の動作環境が、分かりやすくするために部品を破断させた断面図で示されている。原子炉圧力容器10は、全体的に円筒形の形状を有しており、一端が底部ヘッド12により、またその他端が取外し可能な上部ヘッド14により閉じられている。側壁16が、底部ヘッド12から上部ヘッド14へと延びている。側壁16は、上部ヘッド14が取り付けられる上部フランジ18を含む。円筒形に形成された炉心シュラウド20は、炉心22を囲んでいる。シュラウド20は、一端がシュラウド支持体24で支持されており、また対向する取外し可能なシュラウドヘッド26を含む。熱は、燃料バンドル40を含む炉心22内で生成される。燃料バンドル40は、核分裂可能な材料を有する複数の燃料棒を含む。例えば、従来の燃料バンドル40は、10×10の燃料棒マトリックスを含むことができる。
【0003】
図2で示す従来の燃料棒100は、約150インチ(381cm)の長さを有することができるが、約120インチ(304.8cm)、133インチ(337.8cm)、138インチ(350.5cm)、139インチ(353.1cm)、および145インチ(368.3cm)の長さを有することもできる。従来の燃料棒100は、例えば、天然ウランおよび/または濃縮ウランなど、核燃料の焼結されたペレットで充填される。核燃料は、燃料棒100内の異なる領域(ゾーン)が、異なる濃縮度を有する焼結ペレットを含むように、従来の燃料棒内に配置することができる。
【0004】
図2で示す従来の核燃料棒は、3つの異なるゾーン110、120、および130を含む。第1ゾーン110および第3ゾーン130は、燃料棒の最初と最後の約6インチ(15.2cm)の長さであり、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランを含むが、第2ゾーン120は、例えば、重量比で2.4%のU235を有する濃縮ウランを含む。図2で示す従来の燃料棒は2.4%の濃縮度を有する第2ゾーン120を含むが、当業者であれば、従来の燃料棒100の第2ゾーン120は、重量比で最高5%まで濃縮されたウランU235を含みうることが理解されよう。
【0005】
数ヶ月にわたるパワーサイクルを通してパワーを維持するために、炉心には余分の燃料が装荷され、したがって余分の反応度を有することはよく知られている。これを補償するために、可燃性毒物が燃料棒と共に燃料バンドル中に組み込まれる。可燃性毒物は中性子吸収材であり、中性子を吸収することにより、中性子吸収能力の劣る材料へと変換される。よく知られた可燃性毒物はガドリニウムであり、通常、ガドリニアの形態をしている。炉心内の出力分布は、炉心の下側領域に向けて歪みを生じていることもよく知られている。これを補償するために、可燃性毒物が、炉心の下側領域で燃料棒と共に燃料バンドル中に組み込まれる。
【0006】
図3は、ガドリニアを含む従来のロッド200を示している。図2で示す従来の燃料棒100と同様に、ロッド200はまた、3つのゾーン210、220、および230を含む。従来のロッド100と同様に、ロッド200の第1ゾーン210および第3ゾーン230は天然ウランを含む。しかし、第2ゾーン220は、ガドリニアを含有する濃縮ウランで、部分的にまたは完全に充填されうる。第2ゾーン220がガドリニアで部分的に充填される場合、第2ゾーン220の残りの部分は、濃縮ウランで充填される。
【0007】
図4は、従来の燃料バンドル40の例である。図4で示すように、燃料バンドル40は、複数の燃料棒100を封入している。燃料バンドル40内の燃料棒100は、下端で下部タイプレート42により、中央で中間スペーサ44により、かつ上部で上部タイプレート46により支持される。燃料バンドル40はまた、複数の燃料棒100を封入する燃料チャネル50と、燃料バンドル40を移送するための取っ手ハンドル52とを含む。燃料バンドル40の底部には、冷却液が燃料バンドル40中に流入し、かつその中を流れることを可能にする前金具54がある。燃料棒100に加えて、従来の燃料バンドル40は、通常、燃料バンドル40の中心付近にウォータロッドを含み、それは、中性子を減速させるように冷却水を流すことができる。従来の燃料バンドル40はまた、ガドリニアを含むロッド200を含む。
【0008】
図5Aは、燃料バンドル40の横断面図を示しており、それは、従来の燃料棒配列(F1、F2、F3、F4、およびP1)と、ガドリニアを含む燃料棒配列(G1、G2、およびG3)と、2本のウォータロッドとを含む。図5Aで示された燃料バンドル40における各燃料棒およびウォータロッドの側面が図5Bで提供される。例えば、図5Aで、格子点A−1で示される(また図5Bで示される)F1の燃料棒は、図2で示す従来の燃料棒100の第1ゾーン110に対応する天然ウランのブランケットを含む。図5Aおよび5Bでは、前述のブランケットは、燃料棒F1の底部の6インチ(15.2cm)を占める(すなわち、底部の6インチ(15.2cm)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランを含む)。燃料棒F1の中央部分(図2で示す従来の燃料棒100の第2ゾーン120に対応する)は、約138インチ(350.5cm)の長さであり、濃縮ウラン(すなわち、重量比で2.4%のU235を含むウラン)を含む。燃料棒F1の上部の6インチ(15.2cm)(図2で示す従来の燃料棒100の第3ゾーン130に対応する)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランを含む。上記で論じたように、従来のバンドルにおける燃料棒のそれぞれの底部6インチ(15.2cm)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填されている。
【0009】
図5Aおよび5Bはまた、ガドリニアを含む従来の燃料棒の例を示している。例えば、格子点D−4に位置する(また図5Bで示す側面を有する)G1は、重量比で0.71%のU235を含む天然ウランの下部ブランケットを有する燃料棒を示している。下部ブランケットは、図3で示す第1ゾーン210に対応する。G1の中央部分は、4.9%の濃縮ウランを含む燃料を含む。中央部分は、図3で示す第2ゾーン220に対応する。図示のように、G1の中央部分は、重量比で8%のガドリニアを含む部分と、ガドリニアを何も含まない部分とを含む。G1の上部6インチ(15.2cm)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填される。この天然ウランの上部ブランケットは、図3で示す第3ゾーン230に対応する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
例示的な実施形態は、新しい燃料棒、およびその燃料棒を使用する燃料バンドルに関する。
【0011】
本発明の例示的な実施形態によれば、燃料棒は、燃料棒の強化ゾーンに第1の濃縮ウランを含むことができ、強化ゾーンは、直接、燃料棒の底部に配置することができる。燃料棒はまた、燃料棒の第2ゾーンに第2の濃縮ウランを含むことができ、第2ゾーンは、強化ゾーンの上に配置される。燃料棒はまた、燃料棒の第3ゾーンに天然ウランを含むことができ、第3ゾーンは、第2ゾーンの上に配置される。この例示的な実施形態では、強化ゾーンにおける濃縮ウランの濃縮度のパーセントは、少なくとも1パーセントである。
【0012】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、燃料バンドルは、第1の燃料棒を含むことができる。第1の燃料棒は、第1の燃料棒の強化ゾーンに第1の濃縮ウランを含むことができ、第1の燃料棒の強化ゾーンは、直接、第1の燃料棒の底部に配置される。燃料棒はまた、第1の燃料棒の第2ゾーンに第2の濃縮ウランを含むことができ、第1の燃料棒の第2ゾーンは、第1の燃料棒の強化ゾーンの上に配置される。燃料棒はまた、第1の燃料棒の第3ゾーンに天然ウランを含むことができ、第1の燃料棒の第3ゾーンは、第1の燃料棒の第2ゾーンの上に配置される。この例示的な実施形態では、第1の燃料棒の強化ゾーンにおける濃縮ウランの濃縮度のパーセントは、少なくとも1パーセントである。
【0013】
本発明の例示的な諸実施形態は、添付の図面と共に以下の詳細な説明を読めばさらに明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】分かりやすくするために除去された断面を有する従来の原子炉圧力容器の図である。
【図2】従来の燃料棒の図である。
【図3】ガドリニアを含む従来の燃料棒の図である。
【図4】従来の燃料バンドルの図である。
【図5A】従来の燃料バンドルの横断面図である。
【図5B】図5Aで示す従来の燃料バンドルに含まれるロッドの様々な側面を示す図である。
【図6】本発明の第1の例示的な実施形態による燃料棒の図である。
【図7】本発明の第2の例示的な実施形態による第2の燃料棒の図である。
【図8A】例示的な実施形態による燃料棒を用いた燃料バンドルの横断面図である。
【図8B】図8Aで示す燃料バンドルに含まれるロッドの様々な側面を示す図である。
【図9】従来の燃料バンドルを用いた炉心のコンピュータシミュレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の例示的な実施形態による燃料棒が組み込まれた燃料バンドルを用いた炉心のコンピュータシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本明細書の例示的な諸実施形態を、例示的な実施形態が示されている添付図面を参照してさらに十分に述べるものとする。しかし、本発明は、様々な形態で実施することができ、本明細書に記載された諸実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。そうではなくて、これらの実施形態は、この開示を十分かつ完全なものとするように、また本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提供される。諸図において、分かりやすくするために、構成要素の寸法を誇張することもある。
【0016】
ある要素または層が、他の要素または層の「上にある」、「(それらに)接続される」、または「結合される」と称される場合、それは、他の要素もしくは層に対して直接的に、あるいは存在する可能性のある介在要素もしくは層上に、存在する、接続される、もしくは結合されうることが理解されよう。反対に、ある要素が、他の要素または層に対して「直接その上にある」、「直接接続される」、または「直接結合される」と称される場合、介在する要素または層は存在しない。本明細書で使用される場合、用語「および(かつ)/または」は、1つまたは複数の関連する列挙された項目のうちの任意の組合せ、およびすべての組合せを含む。
【0017】
第1、第2などの用語を、様々な要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを記述するために本明細書で使用できるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語により限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを、他の要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションから区別するために使用されるに過ぎない。したがって、以下で論ずる第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと称することもできる。
【0018】
「下に(beneath)」、「下に(below)」、「下側(lower)」、「上に(above)」、「上側(upper)」などの空間的な比較用語は、本明細書では、記述を容易にするために、図で示されたある要素または機構の、他の要素(複数可)または機構(複数可)に対する関係を記述するのに使用することができる。空間的な比較用語は、図で示された方向付けに加えて、使用時または動作時に装置の異なる方向付けを包含するように意図されることが理解されよう。例えば、図の装置を上下逆にした場合、他の要素または機構の「下に(below)」または「下に(beneath)」あるとして記述された要素は、他の要素または機構の「上に(above)」方向付けられることになる。したがって、例示的な用語「下に(below)」は、上および下の方向付けの両方を含むことができる。装置は、(90度、または他の方向に回転されるなど)その他の形で方向付けることができるが、本明細書で使用される空間的な比較用語は、それに応じて解釈される。
【0019】
本明細書で述べられる諸実施形態は、理想的な概略図として、平面図および/または横断面図を参照することになる。したがって、図は、製造技術および/または許容範囲に応じて変更することができる。したがって、例示的な諸実施形態は、図で示されたものに限定されるのではなく、製造工程に基づいて形成された構成における変更形態を含む。したがって、諸図で例示された領域は概略の特性を有しており、また図で示された領域の形状は、要素の特有な形状もしくは領域を例示するものであって例示的な実施形態を限定するものではない。
【0020】
上記で論じたように、従来の燃料棒100は、第1ゾーン領域110および第3ゾーン領域130を含み、そのそれぞれが、天然ウランを含む約6インチ(15.2cm)の長さである。しかし、出願人らは、従来の燃料棒100の第1ゾーン110を占める天然ウランを濃縮ウランで置き換えることにより、燃料バンドルの交換が必要になる前に燃料バンドルが動作できるサイクル数を著しく増加させることを発見した。
【0021】
図6は、本発明の例示的な実施形態による燃料棒300を示す。図6で示すように、例示的な燃料棒300は、燃料棒の底部の強化ゾーン310と、第2ゾーン320と、ロッド上部の第3ゾーン330とを含む。第2ゾーン320は、例えば、重量比で0.71%を超えるU235を有するウランなど、濃縮ウランを含むことができる。第3ゾーン330は、約6インチ(15.2cm)の長さとすることができ、天然ウランで充填することができる。しかし、第1ゾーン310も6インチ(15.2cm)の長さLを有することができるが、例示的な実施形態はそれに限定されることなく、例えば、強化ゾーン310の長さLを、6インチ(15.2cm)を超える、等しくする、またはそれより小さくすることができる。
【0022】
強化ゾーン310は、少なくとも1パーセントもの量(重量比で1%のU235)で濃縮された濃縮ウランを含むことができる。図6では、X%が第2ゾーン320におけるU235の重量パーセントを表し、またY%が強化ゾーン310におけるU235の重量パーセントを表す。例示的な実施形態では、Y%は1%以上である。例えば、第2ゾーン320が3%の濃縮ウラン(重量比で3%のU235)を含む場合、強化ゾーン310は、1%またそれを超える濃縮ウラン(Y%≧1%)を有するウランを含むことができる。したがって、図2で示す従来の燃料棒100と、この例示的な実施形態による燃料棒300との間の主な差は、燃料棒300が、燃料棒300の底部に天然ウランの下部ブランケットではなく、燃料棒300の底部に濃縮ウランを含む強化ゾーン310を含むことである。
【0023】
図7は、他の例示的な実施形態による燃料棒400を示す。この例示的な実施形態では、燃料棒400がガドリニアを含む。図6で示す燃料棒300と同様に、ロッド400はまた、3つのゾーンを含むことができる。すなわち、強化ゾーン410、第2ゾーン420、および第3ゾーン430である。ロッド400の第3ゾーン430は、天然ウランを含み、約6インチ(15.2cm)の長さにすることができる。しかし、強化ゾーン410および第2ゾーン420は、ガドリニアを含む濃縮ウランを含むことができる。図7では、A%およびB%は、それぞれ、強化ゾーン410および第2ゾーン420に存在するガドリニアのパーセントを重量比で表している。図7では、X%が第2ゾーン420におけるU235の重量パーセントを表し、またY%は、強化ゾーン410におけるU235の重量パーセントを表している。この例示的な実施形態では、Y%は1%以上である。この例示的な実施形態では、強化ゾーン410のガドリニアの重量パーセントA%は、第2ゾーン420におけるガドリニアの重量パーセントB%未満にする、等しくする、またはそれを超えるようにすることができる。
【0024】
図8Aは、図6で示す燃料棒300の構成を有する燃料棒F1〜F4、および図7で示す燃料棒400の構成を有する燃料棒G1〜G3の配列を含む燃料バンドル40’の横断面図を示す(図8Aを参照のこと)。燃料バンドル40’はまた、ウォータロッドWRも含む。燃料棒のそれぞれの側面は図8Bで提供される。例えば、F1燃料棒は、図8Bで示すように、燃料棒のほぼ全長にわたって濃縮ウラン(重量比で2.4%のU235)を含み、ロッドの上部6インチ(15.2cm)が、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填されている。図6および図8Bを参照すると、F1の濃縮ウランゾーンは、強化ゾーン310および第2ゾーン320を共に表しており、さらに、X%=Y%=2.4%である例を表している。さらに、燃料棒F1の上部6インチ(15.2cm)は、図6で示す第3ゾーン330に対応する。他の例として、F2燃料棒は、8Bで示すように、燃料棒のほぼ全長にわたって濃縮ウラン(重量比で3.2%のU235)を含み、ロッドF2の上部6インチ(15.2cm)が、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填されている。図6を参照すると、F2の濃縮ウランゾーンは、燃料棒300の強化ゾーン310および第2ゾーン320に対応しており、さらに、X%=Y%=3.2%である場合を表している。前の例と同様に、燃料棒F2の上部6インチ(15.2cm)は、図6で示す第3ゾーン330に対応する。
【0025】
図8Bはまた、図7で示すガドリニアを含む燃料棒の例を示している。例えば、G1は、3つのゾーンを有する燃料棒を示す。第1ゾーンは、燃料棒の底部6インチ(15.2cm)を占めており、重量比で4.9%のU235を有する濃縮ウランを含む。このゾーンは、図7で示す強化ゾーン410に対応する。しかし、燃料棒G1の底部6インチ(15.2cm)はまた、重量比で2%のガドリニアを含む。燃料棒G1の次の138インチ(350.5cm)は、重量比で4.9%のU235を有する濃縮ウランを含む。しかし、このゾーンの底部48インチ(121.9cm)だけが重量比で8%のガドリニアを含み、次の90インチ(228.6cm)は、重量比で4.9%のU235を有する濃縮ウランだけを含む。燃料棒G1の上部6インチ(15.2cm)は天然ウランを含む。当業者であれば理解されるように、燃料棒G1は、X%=Y%=4.9%、A%=2%、およびB=8%の場合を表している。
【0026】
ガドリニアを含む燃料棒の他の例として、燃料棒G3は、燃料棒のほぼ第1の底部6インチ(15.2cm)にわたって濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む第1ゾーンを含む。このゾーンはまた、重量比で約2%のガドリニアを含む。ロッドの次の138インチ(350.5cm)は、重量比で8%のガドリニアを有する濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む。燃料棒G3の上部6インチ(15.2cm)は、天然ウランだけを含む。当業者であれば理解されるように、燃料棒G3は、X%=Y%=4.9%、A%=2%、およびB%=8%である場合を示している。
【0027】
ガドリニアを含む燃料棒のさらに他の例として、燃料棒G2は、ほぼ燃料棒の第1の底部6インチ(15.2cm)にわたって濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む第1ゾーンを含む。このゾーンは、燃料棒G1およびG3の対応するゾーンとは異なり、濃縮ウランだけを含む。燃料棒G2の次の138インチ(350.5cm)は、重量比で8%のガドリニアを有する濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む。燃料棒G2の上部6インチ(15.2cm)は、天然ウランを含むだけである。当業者であれば理解されるように、燃料棒G2は、X%=Y%=4.9%、A%=0%、およびB%=8%である場合を示している。
【0028】
図9および10は、800個の燃料バンドルを含む炉心のシミュレーション結果を表す。対称性により、炉心の四分の一だけがモデル化されている。より具体的には、図9および10は、従来の、かつ新たに開発された燃料およびバンドルのロッド設計を用いた炉心の平衡サイクルを表す。例えば、図9は、図5Aおよび5Bで示す燃料バンドル40を使用する炉心の平衡サイクルを表しており、また図10は、例示的な実施形態による燃料棒設計300および400、ならびにバンドル40’を用いる炉心の平衡サイクルを表す。
【0029】
図9で分かるように、従来のバンドル40が炉心で使用された場合、平衡サイクルにおける新しいバンドル(格子中の符号「0」で特定される)、1回燃焼させたバンドル(格子中の符号「1」で示される)、および2回燃焼させたバンドル(格子中の符号「2」で示される)の数は、それぞれ、384、384、および32である。しかし例示的な実施形態による燃料バンドル40(図10を参照)が炉心に装荷された場合、新しいバンドル、1回燃焼させたバンドル、および2回燃焼させたバンドルの数は、それぞれ、356、356、および88である。簡単に言うと、従来の燃料バンドル40ではなく例示的な実施形態による燃料バンドル設計40’を使用した場合、2回燃焼させたバンドルの数が、約175%増加し、新しいバンドルおよび1回燃焼させたバンドルの数が7%減少する。これらの結果は、新たに開発した燃料棒300および400を用いて新たに開発した燃料バンドル設計40’が、従来技術に対して著しい改善を提供することを示している。
【0030】
簡単に言うと、バンドルの底部にある天然ウランのブランケットを取り除くことにより、正味の効率増加が実現される程度にまで、バッチサイズ(新しい燃料バンドルの数)を減少させることが可能になる。そうすべきであるかどうかは自明なものではなく、実際に直感とは異なっている。当業者であれば、中性子漏洩が最も高い炉心の底部に、多量の、数値が高く高反応度のウランを直接配置することは、効率を損なう結果になると予測するはずである。しかし、十分な調査結果によると、底部ブランケットを取り除くことによる効率的な損失は、得られたバッチサイズの減少による効率増加により相殺されてなお余りがある。
【0031】
例示的な諸実施形態が詳細に示され、かつその例示的な実施形態を参照して述べられてきたが、当業者であれば、添付の請求項の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および細部における様々な変更を諸実施形態に行えることが理解されよう。
【符号の説明】
【0032】
10 原子炉圧力容器
12 原子炉圧力容器の底部ヘッド
14 原子炉圧力容器の上部ヘッド
16 原子炉圧力容器の側壁
18 原子炉圧力容器の上部フランジ
20 炉心シュラウド
22 炉心
24 シュラウド支持体
26 シュラウドヘッド
40 従来の燃料バンドル
42 下部タイプレート
44 スペーサ
46 上部タイプレート
50 燃料チャネル
52 取っ手ハンドル
54 前金具
100 従来の燃料棒
110 天然ウランを含む従来の燃料棒ゾーン
120 濃縮ウランを含む従来の燃料棒ゾーン
130 天然ウランを含む従来の燃料棒ゾーン
200 ガドリニアを含むロッド
210 天然ウランを含むロッドゾーン
220 濃縮ウランおよびガドリニアを含むロッドゾーン
230 天然ウランを含むロッドゾーン
300 例示的な実施形態による燃料棒
310 強化ゾーン
320 第2ゾーン
330 第3ゾーン
400 例示的な実施形態による燃料棒
410 強化ゾーン
420 第2ゾーン
430 第3ゾーン
L 長さ
X% 第2ゾーンにおけるU235の重量パーセント
Y% 強化ゾーンにおけるU235の重量パーセント
A% 強化ゾーンにおけるガドリニアの重量パーセント
B% 第2ゾーンにおけるガドリニアの重量パーセント
F1 従来の燃料棒
F2 従来の燃料棒
F3 従来の燃料棒
F4 従来の燃料棒
P1 従来の燃料棒
G1 ガドリニアを含む燃料棒
G2 ガドリニアを含む燃料棒
G3 ガドリニアを含む燃料棒
WR ウォータロッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ゾーンを含む核燃料棒、およびその核燃料棒を含む燃料バンドル集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、沸騰水型原子炉圧力容器(RPV)10の燃料棒および燃料集合体のための従来の動作環境が、分かりやすくするために部品を破断させた断面図で示されている。原子炉圧力容器10は、全体的に円筒形の形状を有しており、一端が底部ヘッド12により、またその他端が取外し可能な上部ヘッド14により閉じられている。側壁16が、底部ヘッド12から上部ヘッド14へと延びている。側壁16は、上部ヘッド14が取り付けられる上部フランジ18を含む。円筒形に形成された炉心シュラウド20は、炉心22を囲んでいる。シュラウド20は、一端がシュラウド支持体24で支持されており、また対向する取外し可能なシュラウドヘッド26を含む。熱は、燃料バンドル40を含む炉心22内で生成される。燃料バンドル40は、核分裂可能な材料を有する複数の燃料棒を含む。例えば、従来の燃料バンドル40は、10×10の燃料棒マトリックスを含むことができる。
【0003】
図2で示す従来の燃料棒100は、約150インチ(381cm)の長さを有することができるが、約120インチ(304.8cm)、133インチ(337.8cm)、138インチ(350.5cm)、139インチ(353.1cm)、および145インチ(368.3cm)の長さを有することもできる。従来の燃料棒100は、例えば、天然ウランおよび/または濃縮ウランなど、核燃料の焼結されたペレットで充填される。核燃料は、燃料棒100内の異なる領域(ゾーン)が、異なる濃縮度を有する焼結ペレットを含むように、従来の燃料棒内に配置することができる。
【0004】
図2で示す従来の核燃料棒は、3つの異なるゾーン110、120、および130を含む。第1ゾーン110および第3ゾーン130は、燃料棒の最初と最後の約6インチ(15.2cm)の長さであり、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランを含むが、第2ゾーン120は、例えば、重量比で2.4%のU235を有する濃縮ウランを含む。図2で示す従来の燃料棒は2.4%の濃縮度を有する第2ゾーン120を含むが、当業者であれば、従来の燃料棒100の第2ゾーン120は、重量比で最高5%まで濃縮されたウランU235を含みうることが理解されよう。
【0005】
数ヶ月にわたるパワーサイクルを通してパワーを維持するために、炉心には余分の燃料が装荷され、したがって余分の反応度を有することはよく知られている。これを補償するために、可燃性毒物が燃料棒と共に燃料バンドル中に組み込まれる。可燃性毒物は中性子吸収材であり、中性子を吸収することにより、中性子吸収能力の劣る材料へと変換される。よく知られた可燃性毒物はガドリニウムであり、通常、ガドリニアの形態をしている。炉心内の出力分布は、炉心の下側領域に向けて歪みを生じていることもよく知られている。これを補償するために、可燃性毒物が、炉心の下側領域で燃料棒と共に燃料バンドル中に組み込まれる。
【0006】
図3は、ガドリニアを含む従来のロッド200を示している。図2で示す従来の燃料棒100と同様に、ロッド200はまた、3つのゾーン210、220、および230を含む。従来のロッド100と同様に、ロッド200の第1ゾーン210および第3ゾーン230は天然ウランを含む。しかし、第2ゾーン220は、ガドリニアを含有する濃縮ウランで、部分的にまたは完全に充填されうる。第2ゾーン220がガドリニアで部分的に充填される場合、第2ゾーン220の残りの部分は、濃縮ウランで充填される。
【0007】
図4は、従来の燃料バンドル40の例である。図4で示すように、燃料バンドル40は、複数の燃料棒100を封入している。燃料バンドル40内の燃料棒100は、下端で下部タイプレート42により、中央で中間スペーサ44により、かつ上部で上部タイプレート46により支持される。燃料バンドル40はまた、複数の燃料棒100を封入する燃料チャネル50と、燃料バンドル40を移送するための取っ手ハンドル52とを含む。燃料バンドル40の底部には、冷却液が燃料バンドル40中に流入し、かつその中を流れることを可能にする前金具54がある。燃料棒100に加えて、従来の燃料バンドル40は、通常、燃料バンドル40の中心付近にウォータロッドを含み、それは、中性子を減速させるように冷却水を流すことができる。従来の燃料バンドル40はまた、ガドリニアを含むロッド200を含む。
【0008】
図5Aは、燃料バンドル40の横断面図を示しており、それは、従来の燃料棒配列(F1、F2、F3、F4、およびP1)と、ガドリニアを含む燃料棒配列(G1、G2、およびG3)と、2本のウォータロッドとを含む。図5Aで示された燃料バンドル40における各燃料棒およびウォータロッドの側面が図5Bで提供される。例えば、図5Aで、格子点A−1で示される(また図5Bで示される)F1の燃料棒は、図2で示す従来の燃料棒100の第1ゾーン110に対応する天然ウランのブランケットを含む。図5Aおよび5Bでは、前述のブランケットは、燃料棒F1の底部の6インチ(15.2cm)を占める(すなわち、底部の6インチ(15.2cm)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランを含む)。燃料棒F1の中央部分(図2で示す従来の燃料棒100の第2ゾーン120に対応する)は、約138インチ(350.5cm)の長さであり、濃縮ウラン(すなわち、重量比で2.4%のU235を含むウラン)を含む。燃料棒F1の上部の6インチ(15.2cm)(図2で示す従来の燃料棒100の第3ゾーン130に対応する)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランを含む。上記で論じたように、従来のバンドルにおける燃料棒のそれぞれの底部6インチ(15.2cm)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填されている。
【0009】
図5Aおよび5Bはまた、ガドリニアを含む従来の燃料棒の例を示している。例えば、格子点D−4に位置する(また図5Bで示す側面を有する)G1は、重量比で0.71%のU235を含む天然ウランの下部ブランケットを有する燃料棒を示している。下部ブランケットは、図3で示す第1ゾーン210に対応する。G1の中央部分は、4.9%の濃縮ウランを含む燃料を含む。中央部分は、図3で示す第2ゾーン220に対応する。図示のように、G1の中央部分は、重量比で8%のガドリニアを含む部分と、ガドリニアを何も含まない部分とを含む。G1の上部6インチ(15.2cm)は、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填される。この天然ウランの上部ブランケットは、図3で示す第3ゾーン230に対応する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
例示的な実施形態は、新しい燃料棒、およびその燃料棒を使用する燃料バンドルに関する。
【0011】
本発明の例示的な実施形態によれば、燃料棒は、燃料棒の強化ゾーンに第1の濃縮ウランを含むことができ、強化ゾーンは、直接、燃料棒の底部に配置することができる。燃料棒はまた、燃料棒の第2ゾーンに第2の濃縮ウランを含むことができ、第2ゾーンは、強化ゾーンの上に配置される。燃料棒はまた、燃料棒の第3ゾーンに天然ウランを含むことができ、第3ゾーンは、第2ゾーンの上に配置される。この例示的な実施形態では、強化ゾーンにおける濃縮ウランの濃縮度のパーセントは、少なくとも1パーセントである。
【0012】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、燃料バンドルは、第1の燃料棒を含むことができる。第1の燃料棒は、第1の燃料棒の強化ゾーンに第1の濃縮ウランを含むことができ、第1の燃料棒の強化ゾーンは、直接、第1の燃料棒の底部に配置される。燃料棒はまた、第1の燃料棒の第2ゾーンに第2の濃縮ウランを含むことができ、第1の燃料棒の第2ゾーンは、第1の燃料棒の強化ゾーンの上に配置される。燃料棒はまた、第1の燃料棒の第3ゾーンに天然ウランを含むことができ、第1の燃料棒の第3ゾーンは、第1の燃料棒の第2ゾーンの上に配置される。この例示的な実施形態では、第1の燃料棒の強化ゾーンにおける濃縮ウランの濃縮度のパーセントは、少なくとも1パーセントである。
【0013】
本発明の例示的な諸実施形態は、添付の図面と共に以下の詳細な説明を読めばさらに明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】分かりやすくするために除去された断面を有する従来の原子炉圧力容器の図である。
【図2】従来の燃料棒の図である。
【図3】ガドリニアを含む従来の燃料棒の図である。
【図4】従来の燃料バンドルの図である。
【図5A】従来の燃料バンドルの横断面図である。
【図5B】図5Aで示す従来の燃料バンドルに含まれるロッドの様々な側面を示す図である。
【図6】本発明の第1の例示的な実施形態による燃料棒の図である。
【図7】本発明の第2の例示的な実施形態による第2の燃料棒の図である。
【図8A】例示的な実施形態による燃料棒を用いた燃料バンドルの横断面図である。
【図8B】図8Aで示す燃料バンドルに含まれるロッドの様々な側面を示す図である。
【図9】従来の燃料バンドルを用いた炉心のコンピュータシミュレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の例示的な実施形態による燃料棒が組み込まれた燃料バンドルを用いた炉心のコンピュータシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本明細書の例示的な諸実施形態を、例示的な実施形態が示されている添付図面を参照してさらに十分に述べるものとする。しかし、本発明は、様々な形態で実施することができ、本明細書に記載された諸実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。そうではなくて、これらの実施形態は、この開示を十分かつ完全なものとするように、また本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提供される。諸図において、分かりやすくするために、構成要素の寸法を誇張することもある。
【0016】
ある要素または層が、他の要素または層の「上にある」、「(それらに)接続される」、または「結合される」と称される場合、それは、他の要素もしくは層に対して直接的に、あるいは存在する可能性のある介在要素もしくは層上に、存在する、接続される、もしくは結合されうることが理解されよう。反対に、ある要素が、他の要素または層に対して「直接その上にある」、「直接接続される」、または「直接結合される」と称される場合、介在する要素または層は存在しない。本明細書で使用される場合、用語「および(かつ)/または」は、1つまたは複数の関連する列挙された項目のうちの任意の組合せ、およびすべての組合せを含む。
【0017】
第1、第2などの用語を、様々な要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを記述するために本明細書で使用できるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語により限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを、他の要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションから区別するために使用されるに過ぎない。したがって、以下で論ずる第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと称することもできる。
【0018】
「下に(beneath)」、「下に(below)」、「下側(lower)」、「上に(above)」、「上側(upper)」などの空間的な比較用語は、本明細書では、記述を容易にするために、図で示されたある要素または機構の、他の要素(複数可)または機構(複数可)に対する関係を記述するのに使用することができる。空間的な比較用語は、図で示された方向付けに加えて、使用時または動作時に装置の異なる方向付けを包含するように意図されることが理解されよう。例えば、図の装置を上下逆にした場合、他の要素または機構の「下に(below)」または「下に(beneath)」あるとして記述された要素は、他の要素または機構の「上に(above)」方向付けられることになる。したがって、例示的な用語「下に(below)」は、上および下の方向付けの両方を含むことができる。装置は、(90度、または他の方向に回転されるなど)その他の形で方向付けることができるが、本明細書で使用される空間的な比較用語は、それに応じて解釈される。
【0019】
本明細書で述べられる諸実施形態は、理想的な概略図として、平面図および/または横断面図を参照することになる。したがって、図は、製造技術および/または許容範囲に応じて変更することができる。したがって、例示的な諸実施形態は、図で示されたものに限定されるのではなく、製造工程に基づいて形成された構成における変更形態を含む。したがって、諸図で例示された領域は概略の特性を有しており、また図で示された領域の形状は、要素の特有な形状もしくは領域を例示するものであって例示的な実施形態を限定するものではない。
【0020】
上記で論じたように、従来の燃料棒100は、第1ゾーン領域110および第3ゾーン領域130を含み、そのそれぞれが、天然ウランを含む約6インチ(15.2cm)の長さである。しかし、出願人らは、従来の燃料棒100の第1ゾーン110を占める天然ウランを濃縮ウランで置き換えることにより、燃料バンドルの交換が必要になる前に燃料バンドルが動作できるサイクル数を著しく増加させることを発見した。
【0021】
図6は、本発明の例示的な実施形態による燃料棒300を示す。図6で示すように、例示的な燃料棒300は、燃料棒の底部の強化ゾーン310と、第2ゾーン320と、ロッド上部の第3ゾーン330とを含む。第2ゾーン320は、例えば、重量比で0.71%を超えるU235を有するウランなど、濃縮ウランを含むことができる。第3ゾーン330は、約6インチ(15.2cm)の長さとすることができ、天然ウランで充填することができる。しかし、第1ゾーン310も6インチ(15.2cm)の長さLを有することができるが、例示的な実施形態はそれに限定されることなく、例えば、強化ゾーン310の長さLを、6インチ(15.2cm)を超える、等しくする、またはそれより小さくすることができる。
【0022】
強化ゾーン310は、少なくとも1パーセントもの量(重量比で1%のU235)で濃縮された濃縮ウランを含むことができる。図6では、X%が第2ゾーン320におけるU235の重量パーセントを表し、またY%が強化ゾーン310におけるU235の重量パーセントを表す。例示的な実施形態では、Y%は1%以上である。例えば、第2ゾーン320が3%の濃縮ウラン(重量比で3%のU235)を含む場合、強化ゾーン310は、1%またそれを超える濃縮ウラン(Y%≧1%)を有するウランを含むことができる。したがって、図2で示す従来の燃料棒100と、この例示的な実施形態による燃料棒300との間の主な差は、燃料棒300が、燃料棒300の底部に天然ウランの下部ブランケットではなく、燃料棒300の底部に濃縮ウランを含む強化ゾーン310を含むことである。
【0023】
図7は、他の例示的な実施形態による燃料棒400を示す。この例示的な実施形態では、燃料棒400がガドリニアを含む。図6で示す燃料棒300と同様に、ロッド400はまた、3つのゾーンを含むことができる。すなわち、強化ゾーン410、第2ゾーン420、および第3ゾーン430である。ロッド400の第3ゾーン430は、天然ウランを含み、約6インチ(15.2cm)の長さにすることができる。しかし、強化ゾーン410および第2ゾーン420は、ガドリニアを含む濃縮ウランを含むことができる。図7では、A%およびB%は、それぞれ、強化ゾーン410および第2ゾーン420に存在するガドリニアのパーセントを重量比で表している。図7では、X%が第2ゾーン420におけるU235の重量パーセントを表し、またY%は、強化ゾーン410におけるU235の重量パーセントを表している。この例示的な実施形態では、Y%は1%以上である。この例示的な実施形態では、強化ゾーン410のガドリニアの重量パーセントA%は、第2ゾーン420におけるガドリニアの重量パーセントB%未満にする、等しくする、またはそれを超えるようにすることができる。
【0024】
図8Aは、図6で示す燃料棒300の構成を有する燃料棒F1〜F4、および図7で示す燃料棒400の構成を有する燃料棒G1〜G3の配列を含む燃料バンドル40’の横断面図を示す(図8Aを参照のこと)。燃料バンドル40’はまた、ウォータロッドWRも含む。燃料棒のそれぞれの側面は図8Bで提供される。例えば、F1燃料棒は、図8Bで示すように、燃料棒のほぼ全長にわたって濃縮ウラン(重量比で2.4%のU235)を含み、ロッドの上部6インチ(15.2cm)が、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填されている。図6および図8Bを参照すると、F1の濃縮ウランゾーンは、強化ゾーン310および第2ゾーン320を共に表しており、さらに、X%=Y%=2.4%である例を表している。さらに、燃料棒F1の上部6インチ(15.2cm)は、図6で示す第3ゾーン330に対応する。他の例として、F2燃料棒は、8Bで示すように、燃料棒のほぼ全長にわたって濃縮ウラン(重量比で3.2%のU235)を含み、ロッドF2の上部6インチ(15.2cm)が、重量比で0.71%のU235を有する天然ウランで充填されている。図6を参照すると、F2の濃縮ウランゾーンは、燃料棒300の強化ゾーン310および第2ゾーン320に対応しており、さらに、X%=Y%=3.2%である場合を表している。前の例と同様に、燃料棒F2の上部6インチ(15.2cm)は、図6で示す第3ゾーン330に対応する。
【0025】
図8Bはまた、図7で示すガドリニアを含む燃料棒の例を示している。例えば、G1は、3つのゾーンを有する燃料棒を示す。第1ゾーンは、燃料棒の底部6インチ(15.2cm)を占めており、重量比で4.9%のU235を有する濃縮ウランを含む。このゾーンは、図7で示す強化ゾーン410に対応する。しかし、燃料棒G1の底部6インチ(15.2cm)はまた、重量比で2%のガドリニアを含む。燃料棒G1の次の138インチ(350.5cm)は、重量比で4.9%のU235を有する濃縮ウランを含む。しかし、このゾーンの底部48インチ(121.9cm)だけが重量比で8%のガドリニアを含み、次の90インチ(228.6cm)は、重量比で4.9%のU235を有する濃縮ウランだけを含む。燃料棒G1の上部6インチ(15.2cm)は天然ウランを含む。当業者であれば理解されるように、燃料棒G1は、X%=Y%=4.9%、A%=2%、およびB=8%の場合を表している。
【0026】
ガドリニアを含む燃料棒の他の例として、燃料棒G3は、燃料棒のほぼ第1の底部6インチ(15.2cm)にわたって濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む第1ゾーンを含む。このゾーンはまた、重量比で約2%のガドリニアを含む。ロッドの次の138インチ(350.5cm)は、重量比で8%のガドリニアを有する濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む。燃料棒G3の上部6インチ(15.2cm)は、天然ウランだけを含む。当業者であれば理解されるように、燃料棒G3は、X%=Y%=4.9%、A%=2%、およびB%=8%である場合を示している。
【0027】
ガドリニアを含む燃料棒のさらに他の例として、燃料棒G2は、ほぼ燃料棒の第1の底部6インチ(15.2cm)にわたって濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む第1ゾーンを含む。このゾーンは、燃料棒G1およびG3の対応するゾーンとは異なり、濃縮ウランだけを含む。燃料棒G2の次の138インチ(350.5cm)は、重量比で8%のガドリニアを有する濃縮ウラン(重量比で4.9%のU235)を含む。燃料棒G2の上部6インチ(15.2cm)は、天然ウランを含むだけである。当業者であれば理解されるように、燃料棒G2は、X%=Y%=4.9%、A%=0%、およびB%=8%である場合を示している。
【0028】
図9および10は、800個の燃料バンドルを含む炉心のシミュレーション結果を表す。対称性により、炉心の四分の一だけがモデル化されている。より具体的には、図9および10は、従来の、かつ新たに開発された燃料およびバンドルのロッド設計を用いた炉心の平衡サイクルを表す。例えば、図9は、図5Aおよび5Bで示す燃料バンドル40を使用する炉心の平衡サイクルを表しており、また図10は、例示的な実施形態による燃料棒設計300および400、ならびにバンドル40’を用いる炉心の平衡サイクルを表す。
【0029】
図9で分かるように、従来のバンドル40が炉心で使用された場合、平衡サイクルにおける新しいバンドル(格子中の符号「0」で特定される)、1回燃焼させたバンドル(格子中の符号「1」で示される)、および2回燃焼させたバンドル(格子中の符号「2」で示される)の数は、それぞれ、384、384、および32である。しかし例示的な実施形態による燃料バンドル40(図10を参照)が炉心に装荷された場合、新しいバンドル、1回燃焼させたバンドル、および2回燃焼させたバンドルの数は、それぞれ、356、356、および88である。簡単に言うと、従来の燃料バンドル40ではなく例示的な実施形態による燃料バンドル設計40’を使用した場合、2回燃焼させたバンドルの数が、約175%増加し、新しいバンドルおよび1回燃焼させたバンドルの数が7%減少する。これらの結果は、新たに開発した燃料棒300および400を用いて新たに開発した燃料バンドル設計40’が、従来技術に対して著しい改善を提供することを示している。
【0030】
簡単に言うと、バンドルの底部にある天然ウランのブランケットを取り除くことにより、正味の効率増加が実現される程度にまで、バッチサイズ(新しい燃料バンドルの数)を減少させることが可能になる。そうすべきであるかどうかは自明なものではなく、実際に直感とは異なっている。当業者であれば、中性子漏洩が最も高い炉心の底部に、多量の、数値が高く高反応度のウランを直接配置することは、効率を損なう結果になると予測するはずである。しかし、十分な調査結果によると、底部ブランケットを取り除くことによる効率的な損失は、得られたバッチサイズの減少による効率増加により相殺されてなお余りがある。
【0031】
例示的な諸実施形態が詳細に示され、かつその例示的な実施形態を参照して述べられてきたが、当業者であれば、添付の請求項の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および細部における様々な変更を諸実施形態に行えることが理解されよう。
【符号の説明】
【0032】
10 原子炉圧力容器
12 原子炉圧力容器の底部ヘッド
14 原子炉圧力容器の上部ヘッド
16 原子炉圧力容器の側壁
18 原子炉圧力容器の上部フランジ
20 炉心シュラウド
22 炉心
24 シュラウド支持体
26 シュラウドヘッド
40 従来の燃料バンドル
42 下部タイプレート
44 スペーサ
46 上部タイプレート
50 燃料チャネル
52 取っ手ハンドル
54 前金具
100 従来の燃料棒
110 天然ウランを含む従来の燃料棒ゾーン
120 濃縮ウランを含む従来の燃料棒ゾーン
130 天然ウランを含む従来の燃料棒ゾーン
200 ガドリニアを含むロッド
210 天然ウランを含むロッドゾーン
220 濃縮ウランおよびガドリニアを含むロッドゾーン
230 天然ウランを含むロッドゾーン
300 例示的な実施形態による燃料棒
310 強化ゾーン
320 第2ゾーン
330 第3ゾーン
400 例示的な実施形態による燃料棒
410 強化ゾーン
420 第2ゾーン
430 第3ゾーン
L 長さ
X% 第2ゾーンにおけるU235の重量パーセント
Y% 強化ゾーンにおけるU235の重量パーセント
A% 強化ゾーンにおけるガドリニアの重量パーセント
B% 第2ゾーンにおけるガドリニアの重量パーセント
F1 従来の燃料棒
F2 従来の燃料棒
F3 従来の燃料棒
F4 従来の燃料棒
P1 従来の燃料棒
G1 ガドリニアを含む燃料棒
G2 ガドリニアを含む燃料棒
G3 ガドリニアを含む燃料棒
WR ウォータロッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料棒(300、400)であって、
前記燃料棒(300、400)の強化ゾーン(310、410)中の第1の濃縮ウランであり、前記強化ゾーン(310、410)が、直接、前記燃料棒(300、400)の底部に配置される、第1の濃縮ウランと、
前記燃料棒(300、400)の第2ゾーン(320、420)中の第2の濃縮ウランであり、前記第2ゾーン(320、420)が、前記強化ゾーン(310、410)の上に配置される、第2の濃縮ウランと、
前記燃料棒(300、400)の第3ゾーン(330、430)中の天然ウランであり、前記第3ゾーン(330、430)が、前記第2ゾーン(320、420)の上に配置される、天然ウランと
を含み、前記強化ゾーン(310、410)中の前記第1の濃縮ウランの濃縮度のパーセントが、少なくとも1パーセントである、燃料棒(300、400)。
【請求項2】
前記第3ゾーン(330、430)が、約6インチ(15.2cm)の長さを有する、請求項1記載の燃料棒。
【請求項3】
前記第2ゾーン(320、420)が、直接、前記強化ゾーン(310、410)の上にある、請求項1記載の燃料棒。
【請求項4】
前記第2ゾーン(420)が可燃性毒物をさらに含む、請求項1記載の燃料棒。
【請求項5】
前記強化ゾーン(410)が可燃性毒物を含む、請求項4記載の燃料棒。
【請求項6】
前記強化ゾーン(410)中の前記可燃性毒物の重量パーセントが、前記第2ゾーン(420)中の前記可燃性毒物の重量パーセント未満である、請求項5記載の燃料棒。
【請求項7】
前記強化ゾーン(310)が可燃性毒物を含まない、請求項4記載の燃料棒。
【請求項8】
前記第2ゾーン(420)の一部分が前記可燃性毒物を含み、また前記第2ゾーン(420)の他の部分が前記可燃性毒物を含まない、請求項4記載の燃料棒。
【請求項9】
前記可燃性毒物がガドリニアである、請求項4記載の燃料棒。
【請求項10】
第1の燃料棒(300、400)を備える燃料バンドルであって、
前記第1の燃料棒(300、400)が、
前記第1の燃料棒の強化ゾーン(310、410)中の第1の濃縮ウランであり、前記第1の燃料棒(300、400)の前記強化ゾーン(310、410)が、直接、前記第1の燃料棒(300、400)の底部に配置される、第1の濃縮ウランと、
前記第1の燃料棒(300、400)の第2ゾーン(320、420)中の第2の濃縮ウランであり、前記第1の燃料棒(300、400)の前記第2ゾーン(320、420)が、前記第1の燃料棒(300、400)の前記強化ゾーン(310、410)の上に配置される、第2の濃縮ウランと、
前記第1の燃料棒(300、400)の第3ゾーン(330、430)中の天然ウランであり、前記第1の燃料棒(300、400)の前記第3ゾーン(330、430)が、前記第1の燃料棒(300、400)の前記第2ゾーン(320、420)の上に配置される、天然ウランと
を含み、前記第1の燃料棒(300、400)の前記強化ゾーン(310、410)中の前記第1の濃縮ウランの濃縮度のパーセントが、少なくとも1パーセントである、燃料バンドル。
【請求項1】
燃料棒(300、400)であって、
前記燃料棒(300、400)の強化ゾーン(310、410)中の第1の濃縮ウランであり、前記強化ゾーン(310、410)が、直接、前記燃料棒(300、400)の底部に配置される、第1の濃縮ウランと、
前記燃料棒(300、400)の第2ゾーン(320、420)中の第2の濃縮ウランであり、前記第2ゾーン(320、420)が、前記強化ゾーン(310、410)の上に配置される、第2の濃縮ウランと、
前記燃料棒(300、400)の第3ゾーン(330、430)中の天然ウランであり、前記第3ゾーン(330、430)が、前記第2ゾーン(320、420)の上に配置される、天然ウランと
を含み、前記強化ゾーン(310、410)中の前記第1の濃縮ウランの濃縮度のパーセントが、少なくとも1パーセントである、燃料棒(300、400)。
【請求項2】
前記第3ゾーン(330、430)が、約6インチ(15.2cm)の長さを有する、請求項1記載の燃料棒。
【請求項3】
前記第2ゾーン(320、420)が、直接、前記強化ゾーン(310、410)の上にある、請求項1記載の燃料棒。
【請求項4】
前記第2ゾーン(420)が可燃性毒物をさらに含む、請求項1記載の燃料棒。
【請求項5】
前記強化ゾーン(410)が可燃性毒物を含む、請求項4記載の燃料棒。
【請求項6】
前記強化ゾーン(410)中の前記可燃性毒物の重量パーセントが、前記第2ゾーン(420)中の前記可燃性毒物の重量パーセント未満である、請求項5記載の燃料棒。
【請求項7】
前記強化ゾーン(310)が可燃性毒物を含まない、請求項4記載の燃料棒。
【請求項8】
前記第2ゾーン(420)の一部分が前記可燃性毒物を含み、また前記第2ゾーン(420)の他の部分が前記可燃性毒物を含まない、請求項4記載の燃料棒。
【請求項9】
前記可燃性毒物がガドリニアである、請求項4記載の燃料棒。
【請求項10】
第1の燃料棒(300、400)を備える燃料バンドルであって、
前記第1の燃料棒(300、400)が、
前記第1の燃料棒の強化ゾーン(310、410)中の第1の濃縮ウランであり、前記第1の燃料棒(300、400)の前記強化ゾーン(310、410)が、直接、前記第1の燃料棒(300、400)の底部に配置される、第1の濃縮ウランと、
前記第1の燃料棒(300、400)の第2ゾーン(320、420)中の第2の濃縮ウランであり、前記第1の燃料棒(300、400)の前記第2ゾーン(320、420)が、前記第1の燃料棒(300、400)の前記強化ゾーン(310、410)の上に配置される、第2の濃縮ウランと、
前記第1の燃料棒(300、400)の第3ゾーン(330、430)中の天然ウランであり、前記第1の燃料棒(300、400)の前記第3ゾーン(330、430)が、前記第1の燃料棒(300、400)の前記第2ゾーン(320、420)の上に配置される、天然ウランと
を含み、前記第1の燃料棒(300、400)の前記強化ゾーン(310、410)中の前記第1の濃縮ウランの濃縮度のパーセントが、少なくとも1パーセントである、燃料バンドル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−221016(P2011−221016A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82341(P2011−82341)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)
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