説明

沸騰水型原子炉

【課題】蒸気乾燥器の支持構造の耐震性向上を図ることができ、この耐震性向上に要する作業の工数を低減できる沸騰水型原子炉を提供する。
【解決手段】沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器内に蒸気乾燥器を設置する。蒸気乾燥器は、サポートリング19を有し、切欠き部22を形成した複数の耐震ブロック21をサポートリング19の外面に溶接している。サポートリング19には複数の切欠き溝23が形成される。切欠き部22及び切欠き溝23は、サポートリング19の半径方向において一直線に配置される。切欠き部22及び切欠き溝23のそれぞれの上端面は、同じ高さに存在する。縦断面が矩形の複数の支持ブラケット26が、原子炉圧力容器の内面に設けられる。この支持ブラケット26が切欠き部22及び切欠き溝23に嵌め込まれ、支持ブラケット26の上面26Aがサポートリング19及び耐震ブロック21を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に係り、特に、原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器の耐震性を向上させるのに好適な沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器内に、複数の燃料集合体を装荷した炉心が配置されている。これらの燃料集合体内に供給された冷却水が、それぞれの燃料集合体に含まれる核燃料物質の核分裂で発生した熱によって加熱され、加熱された冷却水の一部が蒸気になる。冷却水及び蒸気を含む気液二相流が、原子炉圧力容器内で炉心の上方に配置された気水分離器内に導かれる。気水分離器において冷却水が分離され、気水分離器から排出された蒸気が、原子炉圧力容器内で気水分離器の上方に配置された蒸気乾燥器内に導かれる。蒸気に含まれる水分が、蒸気乾燥器で除去される。
【0003】
水分が除去された蒸気は、原子炉圧力容器から、原子炉圧力容器に接続された主蒸気配管に排出され、主蒸気配管を通してタービンに供給される。タービンは、蒸気によって回転され、タービンに連結された発電機を回転させる。発電機の回転により電力が発生する。タービンから排気された蒸気は、復水器で凝縮され、水になる。この水は、給水として、給水配管を通って原子炉圧力容器内に供給される。
【0004】
蒸気乾燥器に設けられたサポートリングを原子炉圧力容器の内面に設けられた複数の支持ブラケットで支持することによって、蒸気乾燥器が原子炉圧力容器に設置される。この蒸気乾燥器の原子炉圧力容器への支持構造の一例が、特開昭62−84202号公報の第3図及び第4図に記載されている。複数の耐震ブロックが、蒸気乾燥器のサポートリングの周方向でサポートリングの外面に溶接にて取り付けられている。これらの耐震ブロックは、下方に向かって開放された逆U字状をしている。原子炉圧力容器の内面に設けられた各支持ブラケットが、逆U字状の各耐震ブロックに別々に嵌め込まれ、サポートリングの下面及び耐震ブロックが各支持ブラケットの上面に載せられる。これにより、蒸気乾燥器が原子炉圧力容器に支持される。支持ブラケットが蒸気乾燥器の自重を支え、各耐震ブロックは地震時における水平方向の荷重を支える。
【0005】
また、蒸気乾燥器の原子炉圧力容器への支持構造の他の例が、特開昭62−217191号公報に記載されている。特開昭62−217191号公報に記載された蒸気乾燥器のサポートリングは、複数のサポートリングセグメント及び複数の逆U字状の耐震ブロックを有し、各サポートリングセグメント及び各耐震ブロックを周方向に配置してそれらを互いに接続している。耐震ブロックは、サポートリングセグメントの間に配置され、隣り合う各サポートリングセグメントに溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−84202号公報
【特許文献2】特開昭62−217191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
地震が発生時において蒸気乾燥器が水平方向に揺れたとき、蒸気乾燥器の荷重は、サポートリング及び耐震ブロックに伝えられ、原子炉圧力容器に設けられた支持ブラケットにより支えられる。このような蒸気乾燥器の支持構造の耐震性をさらに向上させることが望まれる。
【0008】
上記した地震時における荷重伝達経路を考慮した場合、特開昭62−84202号公報の第3図及び第4図に記載された蒸気乾燥器の支持構造において耐震性を向上させるためには、サポートリングと耐震ブロックの溶接部の強化、及び耐震ブロックの、支持ブラケットの側面に対向している部分のせん断面積の増加が必要となる。サポートリングと耐震ブロックの溶接部の強化は、その溶接部に対して追加の溶接を実施することによって可能である。また、耐震ブロックの、支持ブラケットの側面に対向している部分のせん断面積の増加には、耐震ブロックのその部分の横断面積を大きくしなければならない。このため、原子炉圧力容器内に設置されている蒸気乾燥器のサポートリングに取り付けられている耐震ブロックを取り外し、耐震ブロックの、支持ブラケットの側面に対向する部分の横断面積を大きくしたより大きな新しい耐震ブロックをサポートリングに取り付ける必要がある。
【0009】
運転中の原子炉の原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器は放射化されているため、作業者が、蒸気乾燥器に接近し、蒸気乾燥器のサポートリングに取り付けられている耐震ブロックをサポートリングから取り外すことは困難である。このため、運転を経験した原子炉の原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器のサポートリングから耐震ブロックを取り外して、この耐震ブロックを耐震性が優れた大きな耐震ブロックに交換するための作業は、原子炉圧力容器内から取り出した蒸気乾燥器を原子炉建屋内の水を張った機器仮置きプール内に搬送し、機器仮置きプール内の水中に蒸気乾燥器を置いた状態で行われる。その作業を行うためには、新しい耐震ブロックを製造する必要があり、さらに、その作業においては、耐震ブロックの取り外し作業、新しい耐震ブロックの溶接による取り付け作業、及び新しい耐震ブロックとサポートリングの溶接部の非破壊検査の実施を行う必要がある。耐震ブロックの取り外し作業、新しい耐震ブロックの製造、新しい耐震ブロックの取り付け作業、及び新しい耐震ブロックとサポートリングの溶接部の非破壊検査のそれぞれの実施は、蒸気乾燥器の支持構造の耐震性向上のための作業の工数を増大させることになる。
【0010】
特開昭62−217191号公報に記載された蒸気乾燥器のように、複数のサポートリングセグメント及び複数の逆U字状の耐震ブロックを周方向に一列に配置して、隣り合う耐震ブロックとサポートリングセグメントを溶接により接続してサポートリングを用い、原子炉圧力容器に設けられた各支持ブラケットをそれらの耐震ブロックに別々に嵌め込んで構成された蒸気乾燥器の支持構造は、特開昭62−84202号公報の第3図及び第4図に記載された蒸気乾燥器の支持構造よりも耐震性が向上する。特開昭62−217191号公報に記載された蒸気乾燥器のサポートリングは、新規に製作する蒸気乾燥器に容易に適用することができる。
【0011】
しかしながら、特開昭62−217191号公報に記載された蒸気乾燥器のサポートリングを、運転を経験した原子炉の原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器に適用する場合には、この蒸気乾燥器の基本構造を変更することとなり、蒸気乾燥器の改造のための工数が大きくなることは避けられない。また,運転を経験した原子炉の原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器のサポートリングから各耐震ブロックを取り外し、このサポートリングに、特開昭62−217191号公報に記載されたサポートリングの耐震ブロックに形成された支持ブラケットを嵌め込む切欠き部を設けて耐震性を向上させようとした場合には、切欠き部の側面は少なくとも運転を経験した原子炉で用いられている耐震ブロックと支持ブラケットの接触面積程度を確保する必要がある。この接触面積を確保するためにサポートリングの切欠き部を深くした場合、サポートリング自体の強度を損なう懸念がある。
【0012】
本発明の目的は、蒸気乾燥器の支持構造の耐震性向上を図ることができ、この耐震性向上に要する作業の工数を低減することができる沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉圧力容器内に配置された蒸気乾燥器が複数の耐震ブロックを原子炉圧力容器の周方向に間隔をおいて外面に取り付けたサポートリングを有し、下方に向かって開放される切欠き部がそれぞれの耐震ブロックに形成され、原子炉圧力容器の半径方向に伸びて下方に向かって開放される複数の溝が、原子炉圧力容器の周方向において、サポートリングに形成され、溝が原子炉圧力容器の半径方向において切欠き部につながっており、複数の支持ブラケットが原子炉圧力容器の内面に設けられ、支持ブラケットが、つながった溝及び切欠き部内に嵌め込まれて蒸気乾燥器を支持していることにある。
【0014】
支持ブラケットが耐震ブロックに形成された切欠き部及びサポートリングに形成された溝に嵌め込まれているので、蒸気乾燥器の支持構造の耐震性を向上させることができる。支持ブラケットを嵌め込む溝をサポートリングに形成し、耐震ブロックに形成された切欠き部の高さを高くするので、上記の耐震性向上に要する作業の工数を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原子炉圧力容器内に配置された蒸気乾燥器の支持構造の耐震性向上を図ることができ、この耐震性向上に要する作業の工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子炉に適用された蒸気乾燥器の支持構造の斜視図である。
【図2】図1に示す支持ブラケットを蒸気乾燥器のサポートリングに形成された切欠き溝及び耐震ブロックの切欠き部に嵌め込む状態を示す説明図である。
【図3】図1に示す蒸気乾燥器の支持構造が適用された沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図4】図3に示す蒸気乾燥器の拡大斜視図である。
【図5】特開昭62−84202号公報に記載された蒸気乾燥器の従来の支持構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者らは、特開昭62−84202号公報の第3図及び第4図に記載された蒸気乾燥器の支持構造における耐震性の向上について検討した。この検討を、図5を用いて説明する。
【0018】
図5は、特開昭62−84202号公報の第3図及び第4図に記載された、蒸気乾燥器の従来の支持構造の一部を示している。蒸気乾燥器は、サポートリング19A及び複数の耐震ブロック21Aを有する支持構造を備えている。耐震ブロック21Aは、下方に向かって開放された切欠き部22Aを形成して逆U字状になっており、サポートリング19Aの外面に溶接されている。原子炉圧力容器の内面に設けられた、縦断面が矩形の支持ブラケット26が、耐震ブロック21Aの切欠き部22A内に嵌め込まれる。サポートリング19Aの下面及び切欠き部22Aの上面が、支持ブラケット26の上面に置かれる。この状態で、サポートリング19Aが支持ブラケット26によって支持される。
【0019】
このような状態で、蒸気乾燥器が支持ブラケット26に支持されているとき、地震が発生し、この地震により図5に示された矢印29の方向において、蒸気乾燥器に水平方向の加速度が作用したことを想定する。この地震によって、サポートリング19Aから、サポートリング19Aと耐震ブロック21Aの溶接部を通して耐震ブロック21Aに伝達された、蒸気乾燥器の荷重は、耐震ブロック21Aの切欠き部22Aの側面と支持ブラケット26の側面との接触面27で支持ブラケット26に伝えられ、最終的には原子炉圧力容器で支持される。
【0020】
以上に述べた、地震時における蒸気乾燥器の荷重の伝達経路を考慮すると、蒸気乾燥器の水平方向におけるその荷重の支持において耐震性を向上させるためには、サポートリング19Aと耐震ブロック21Aの溶接部の強化、及び耐震ブロック21Aの、切欠き部22Aの側面を形成して下方に向かって伸びている部分の横断面積(せん断面積)28の増加が必要である。
【0021】
耐震ブロック21Aの横断面積28を増加するためには、耐震ブロック21Aを横断面積28がより大きい新たに製作した耐震ブロックと交換する必要があり、前述したように、蒸気乾燥器の支持構造の耐震性向上のための作業の工数が大幅に増加する。
【0022】
そこで、発明者らは、蒸気乾燥器の支持構造の耐震性向上を図ることができ、この耐震性向上に要する作業の工数を低減できる対策を検討した。この検討により、サポートリング19Aと耐震ブロック21Aを溶接した状態で、耐震ブロック21Aに形成した切欠き部22Aの深さをさらに深くしてサポートリング19Aの下端部にも切欠き溝を形成する対策を、発明者らは新たに見出した。
【0023】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0024】
本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子炉を、図1、図3及び図4を用いて説明する。
【0025】
本実施例の沸騰水型原子炉1は、原子炉圧力容器2、炉心4、炉心シュラウド6、気水分離器14及び蒸気乾燥器15を備えている。上蓋3が原子炉圧力容器2の上端に取り外し可能に取り付けられている。炉心4、炉心シュラウド6、気水分離器14及び蒸気乾燥器15は、原子炉圧力容器2内に配置される。主蒸気配管29及び給水配管30が原子炉圧力容器2に接続される。炉心シュラウド6は、複数の燃料集合体5が装荷された炉心4を取り囲んでいる。炉心シュラウド6に取り付けられた炉心支持板7が、炉心4の下端部に配置される。炉心4の上端部に配置されて炉心シュラウド6に取り付けられた上部格子板8が、それぞれの燃料集合体5の上端部を支持する。複数の制御棒駆動機構ハウジング13が、原子炉圧力容器2の底部に設けられる。燃料集合体5の相互間に出し入れされる複数の制御棒11が、各制御棒駆動機構ハウジング13内に設置された制御棒駆動機構(図示せず)にそれぞれ連結される。複数の制御棒案内管12が、炉心4の下方で原子炉圧力容器2内に設置される。炉心4から引き抜かれた制御棒11が、制御棒案内管12内に収納される。
【0026】
複数のジェットポンプ9が、原子炉圧力容器2と炉心シュラウド6の間に形成される環状領域であるダウンカマ内に配置される。シュラウドヘッド10が炉心シュラウド6の上端に取り付けられ、シュラウドヘッド10の上方に配置された気水分離器14がシュラウドヘッド10に取り付けられる。蒸気乾燥器15が気水分離器14の上方に配置されている。
【0027】
蒸気乾燥器14は、並列に配置された複数の蒸気乾燥器ユニット16、サポートリング19及び円筒状のスカート部20を有する。各蒸気乾燥器ユニット16は、フードプレート17及び波板部18を含んでいる。フードプレート17は、波板部18の上流側に配置され、波板部18の前面を覆っている。波板部18には、湿分を除去する複数の波板が並列に配置されている。サポートリング19は、各蒸気乾燥器ユニット16に取り付けられ、蒸気乾燥器ユニット16の下方に配置される。スカート部20は、上端がサポートリング19に取り付けられ、サポートリング19から下方に向かって伸びている。
【0028】
複数の耐震ブロック21が、サポートリング19の周方向に所定の間隔で配置され、溶接部24でサポートリング19の外面に接合される(図2参照)。各耐震ブロック21は、逆U字状をしており、下方に向かって開放された切欠き部22を形成している。周方向における切欠き部22の幅と同じ幅を有する切欠き溝23が、サポートリング19の下端部に形成されている。切欠き溝23も、切欠き部22と同様に、下方に向かって開放されている。切欠き部22及び切欠き溝23は、サポートリング19の半径方向において一直線に配置され、これらは互いにつながっている。切欠き部22及び切欠き溝23のそれぞれの上端面は、同じ高さに存在する。切欠き部22の高さは、切欠き溝23の高さだけ従来の耐震ブロック21Aに形成された切欠き部22Aの高さよりも高くなっている。
【0029】
耐震ブロック21と同じ個数の支持ブラケット26が原子炉圧力容器2の内面に取り付けられる。各支持ブラケット26が、対応する耐震ブロック21の切欠き部22及び切欠き溝23内に嵌め込まれる。切欠き部22及び切欠き溝23のそれぞれの上端面が、支持ブラケット26の上面26Aに接触し、サポートリング19が支持ブラケット26によって支持される(図1参照)。この状態で、切欠き部22及び切欠き溝23のそれぞれの2つの側面が支持ブラケット26の2つの側面にそれぞれ接触している。本実施例では、切欠き溝23の形成により、サポートリング19側の部材(本実施例では、サポートリング19及び耐震ブロック21)と支持ブラケット26の側面との接触面25(図1参照)の面積が、図5に示す、蒸気乾燥器の従来の支持構造におけるサポートリング19A側の部材(サポートリング19A及び耐震ブロック21A)と支持ブラケット26の側面との接触面27(図5参照)の面積よりも大きくなっている。
【0030】
運転を経験した原子炉の原子炉圧力容器2内に設置されている蒸気乾燥器15のサポートリングへの切欠き溝23の形成及び切欠き部22Aよりも高さが高い切欠き部22の形成について説明する。
【0031】
或るサイクルの運転サイクルに対する原子炉の運転が停止され、原子炉に対する定期検査を実施する際に、切欠き溝23等の加工が行われる。原子炉の運転が停止された後、上蓋3が取り外され、原子炉圧力容器2内に設置された蒸気乾燥器15が取り外さる。この蒸気乾燥器15が天井クレーンを用いて水が張ってある機器仮置きプール内に搬送され、蒸気乾燥器15のスカート部20の下端が機器仮置きプールの底に置かれる。機器仮置きプール内において、蒸気乾燥器15は、放射線を遮へいするために水中に置かれる。
【0032】
機器仮置きプール内に搬送された蒸気乾燥器15は、図5に示す複数の耐震ブロック21Aを取り付けたサポートリング19Aを有する。機器仮置きプールの水中において、フライスを用いてサポートリング19Aの下端部にサポートリング19Aの半径方向に伸びる切欠き溝23を加工する。このような加工によって、切欠き溝23が、サポートリング19Aの周方向において複数個所でサポートリング19Aに形成され、複数の切欠き溝23を有するサポートリング19が製作される。フライスを用いて切欠き溝23を加工する際に、サポートリング19Aに取り付けられた耐震ブロック21Aの、切欠き部22Aの上端面よりも上方の部分がそのフライスにより加工され、切欠き部22Aよりも高さが高い切欠き部22を有する耐震ブロック21が製作される。
【0033】
定期検査期間において、原子炉圧力容器2内の保守点検及び燃料集合体5の交換が終了した後、気水分離器14が取り付けられたシュラウドヘッド10が、原子炉圧力容器2内に搬入され、炉心シュラウド6に取り付けられる。さらに、切欠き溝23が形成されたサポートリング19及び切欠き部22が形成された耐震ブロック21を有する蒸気乾燥器15が、原子炉圧力容器2内に搬入され、支持ブラケット26がサポートリング19の切欠き溝23及び耐震ブロック21の切欠き部22内に嵌め込まれて支持ブラケット26で支持される。その後、上蓋3が原子炉圧力容器2の上端に取り付けられる。
【0034】
原子炉の定期検査が終了した後、原子炉が再起動される。沸騰水型原子炉1の運転時において、ダウンカマ内の冷却水がジェットポンプ9により炉心4の各燃料集合体5内に供給される。これらの燃料集合体5内に供給された冷却水が、それぞれの燃料集合体5に含まれる核燃料物質の核分裂で発生した熱によって加熱され、加熱された冷却水の一部が蒸気になる。冷却水及び蒸気を含む気液二相流が、各燃料集合体5から排出され、気水分離器14内に導かれる。気水分離器14において冷却水が分離され、冷却水から分離された蒸気が気水分離器14から排出され、蒸気乾燥器15内に導かれる。この蒸気は、蒸気乾燥器14のフードプレート17内に流入し、さらに、波板部18内に導かれる。蒸気は波板部18内において波板相互間を流れ、蒸気に含まれる湿分が波板によって除去される。
【0035】
水分が除去されて蒸気乾燥器15から排出された蒸気は、原子炉圧力容器2から主蒸気配管29に排出され、主蒸気配管29を通してタービン(図示せず)に供給される。タービンは、蒸気によって回転され、タービンに連結された発電機(図示せず)を回転させる。発電機の回転により電力が発生する。タービンから排気された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮され、水になる。この水は、給水として、給水配管30を通って原子炉圧力容器2内に供給される。
【0036】
地震が発生したときには、水平方向に揺れ、蒸気乾燥器15に水平方向の加速度が作用する。この地震によって、蒸気乾燥器15の荷重は、サポートリング19から、サポートリング19と耐震ブロック21の溶接部24を通して耐震ブロック21に伝達され、さらに、耐震ブロック21の切欠き部22の側面からこの側面と接触する支持ブラケット26に伝えられる。また、その地震時における蒸気乾燥器15の荷重は、サポートリング19の切欠き溝23の側面からこの側面と接触する支持ブラケット26に伝えられる。このように、地震時に水平方向の加速度が蒸気乾燥器15に作用した場合には、蒸気乾燥器15の荷重は、耐震ブロック21に形成された切欠き部22の両側面だけでなく、サポートリング19に形成された切欠き溝23の両側面からも支持ブラケット26に伝えられ、原子炉圧力容器2で支持される。
【0037】
本実施例では、サポートリング19に形成された切欠き溝23及び耐震ブロック21に形成された高さが高い切欠き部22に支持ブラケット26が嵌め込まれているので、支持ブラケット26の側面と接触する、切欠き部22及び切欠き溝23の接触面25の面積が、図5に示す、蒸気乾燥器の従来の支持構造において、支持ブラケット26の側面と接触する、切欠き部22Aの接触面27の面積よりも大きくなる。このため、本実施例で用いられる、蒸気乾燥器15の支持構造の耐震性を向上させることができる。特に、地震時において水平方向の加速度が作用したとき、蒸気乾燥器15の荷重を切欠き溝23の側面を介してサポートリング19で受けることができ、その耐震性の向上を図ることができる。本実施例における蒸気乾燥器15の支持構造は、切欠き溝23を形成したサポートリング19、このサポートリング19に取り付けられた、切欠き部22を形成した耐震ブロック21、及び原子炉圧力容器2の半径方向においてつながっている切欠き部22及び切欠き溝23に嵌め込まれた支持ブラケット26によって構成される。
【0038】
本実施例では、地震時において水平方向の加速度が作用したときにおいて、蒸気乾燥器15の荷重を、切欠き部22の側面及び切欠き溝23の側面を介して支持ブラケット26に伝えることができるので、サポートリング19に形成される切欠き溝23の高さを、耐震ブロックをサポートリングに取り付けない状態で、切欠き溝をサポートリングに形成した場合よりも低くすることができる。このため、切欠き溝23の加工に要する時間を短縮することができる。
【0039】
また、耐震ブロックをサポートリングに取り付けない状態で切欠き溝をサポートリングに形成する場合には、この切欠き溝に挿入された支持ブラケットの側面とサポートリングの接触面積を図1に示す接触面25の面積と同程度に確保しようとすれば、サポートリングに形成する切欠き溝の高さを図1に示す切欠き溝23の高さよりも高くする必要がある。このため、サポートリングの強度が損なわれる可能性がある。本実施例では、前述したように、耐震ブロック21をサポートリング19に取り付けた状態で、サポートリング19に切欠き溝23を形成しているので、切欠き溝23の高さを低く押さえることができる。したがって、本実施例では、サポートリング19の必要な強度が損なわれることを防止できる。
【0040】
本実施例では、切欠き溝23の形成により、支持ブラケット26の側面とサポートリング19及び耐震ブロック21との接触面25の面積の増大を図っている。このような接触面25の面積の増大は、従来例におけるサポートリング19Aと耐震ブロック21Aの溶接部の強化に比べて横断面積28を効率的に増加することができ、蒸気乾燥器15の支持構造物(切欠き部22を形成した耐震ブロック21、切欠き溝23を形成したサポートリング19及び支持ブラケット26を含む)の耐震性を効果的に向上させることができる。
【0041】
本実施例では、サポートリング19に切欠き溝23を加工するために工数が増大するが、この工数の増大は、耐震ブロック21Aを前述した耐震性が優れた大きな耐震ブロックに交換する場合における工数の増大よりも非常に少なくなる。本実施例に用いる上記の蒸気乾燥器15の支持構造における耐震性向上に要する作業の工数を低減することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…沸騰水型原子炉、2…原子炉圧力容器、4…炉心、5…燃料集合体、6…炉心シュラウド、10…シュラウドヘッド、14…気水分離器、15…蒸気乾燥器、19…サポートリング、21…耐震ブロック、22…切欠き部、23…切欠き溝、26…支持ブラケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内に配置されている炉心の上方に配置された蒸気乾燥器とを備え、
前記蒸気乾燥器が複数の耐震ブロックを前記原子炉圧力容器の周方向に間隔をおいて外面に取り付けたサポートリングを有し、
下方に向かって開放される切欠き部がそれぞれの前記耐震ブロックに形成され、
前記原子炉圧力容器の半径方向に伸びて下方に向かって開放される複数の溝が、前記原子炉圧力容器の周方向において、前記サポートリングに形成され、
前記溝が前記原子炉圧力容器の半径方向において前記切欠き部につながっており、
複数の支持ブラケットが前記原子炉圧力容器の内面に設けられ、
前記支持ブラケットが、つながった前記溝及び前記切欠き部内に嵌め込まれて前記蒸気乾燥器を支持していることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
前記切欠き部の上端面及び前記溝の上端面が前記支持ブラケットの上面に接触している請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項3】
前記切欠き部の対向する側面及び前記溝の対向する側面が、前記支持ブラケットの両側面にそれぞれ接触している請求項1または2に記載の沸騰水型原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113754(P2013−113754A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261217(P2011−261217)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)