説明

油ワニス軽減システム

【課題】油ワニス軽減システムを提供する。
【解決手段】タービンエンジンのための潤滑油ワニス軽減システム200を提供する。潤滑油ワニス軽減システム200は、中に潤滑油230を有する潤滑油回路210と、中に潤滑油300を有する、潤滑油回路210から分離されている油圧オイル回路280とを含んでいてもよい。潤滑油回路210は、潤滑油タンク220を含むことができる。潤滑油回路210は、潤滑油ポンプ240を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全般的にガスタービンエンジンに関し、さらに詳細には、潤滑油ワニスおよびそれにより生じ得るエンジン構成要素への損傷を軽減するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のガスタービンエンジンの保守および維持管理における重大な問題は、潤滑油ワニスの生成である。例えば、油圧回路内の潤滑油が、入口案内翼、ガス制御弁、液体燃料弁等を作動させる複数のサーボに連通している可能性がある。油で濡れた構成要素上でのまたは他の所でのワニスの堆積が、これらのサーボおよび他の構成要素の故障および/または機能不全につながる可能性がある。そのような故障および機能不全は、ガスタービンエンジンのトリッピング(tripping)、および必要な修理のためのダウンタイムに起因する、その後の収益損失を招く。
【0003】
オイルラッカリングは、複雑な一連の事象の結果である可能性がある。具体的には、オイル流中の分子は、化学プロセス、機械プロセス、および/または熱的プロセスにより壊れる可能性がある。例えば、化学プロセスには、オイルの酸化が含まれる可能性がある。酸化は、熱および/またはオイル中の金属微粒子の存在により加速される可能性がある。機械プロセスには、「剪断加工」が含まれる可能性があり、オイル分子は、機械表面間を通過する際に引き裂かれる可能性がある。熱的プロセスには、高圧および高温に起因する圧力誘起ディーゼリングまたは圧力誘起熱劣化が含まれる可能性がある。また、帯電が、局所的熱酸化オイル分解を引き起こす可能性がある。ピーキングモード(peaking mode)または循環モード(cycling mode)で作動しているタービンが、熱サイクルの影響によるオイルラッカリングを起こし易い可能性がある。また、現在まで十分に理解されていないが、他のプロセスおよびその組合せが存在する可能性がある。
【0004】
このように、油ワニスの生成およびそれにより生じる損傷の両方を制限するために、特に内部にサーボを有する油圧回路およびワニス損傷等を受け易い可能性がある他の構成要素に関して、油ワニス軽減システムが所望されている。ワニス損傷を低減することにより、全体的なシステム効率が向上し、必要な保守およびダウンタイムが低減されるはずである。そのようなワニス軽減システムは、既存のガスタービンエンジン内に後付けされてもよく、または新システム内の元来の装置であってもよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】GETIL 1528−3,Varnish,1〜2頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本願は、タービンエンジンのための潤滑油ワニス軽減システムを提供する。潤滑油ワニス軽減システムは、中に潤滑油を有する潤滑油回路と、中に油圧オイルを有する、潤滑油回路から分離されている油圧オイル回路とを含んでいてもよい。
【0007】
本願は、さらに、タービンエンジンのための潤滑油ワニス軽減システムを提供する。潤滑油ワニス軽減システムは、複数のポンプおよびリフトオイル供給源を備えた潤滑油回路と、複数の油圧ポンプを備えた、潤滑油回路から分離されている油圧オイル回路とを含んでいてもよい。
【0008】
いくつかの図面および添付の特許請求の範囲と併用されている場合に以下の詳細な記載を検討すると、本願のこれらのかつ他の特徴および改良点が当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】既知のガスタービンエンジンの概略図である。
【図2】既知の潤滑油システムの概略図である。
【図3】既知の潤滑油システムの代替的実施形態の図である。
【図4】油圧/リフトオイルシステムの場合の、図3の潤滑油システムの概略図である。
【図5】本明細書に記載されている可能性がある潤滑油ワニス軽減システムの概略図である。
【図6】本明細書に記載されている可能性がある潤滑油ワニス軽減システムの代替的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、いくつかの図を通じて同様の数字が同様の要素を指す図面を参照すると、図1は、既知のガスタービンエンジン10の概略図を示す。ガスタービンエンジン10は、圧縮機15を含んでいてもよい。圧縮機15は、流入する空気流20を圧縮する。圧縮機15は、圧縮された空気流20を燃焼器25へ送達する。燃焼器25は、圧縮された空気流20を圧縮された燃料流30と混合し、その混合物を点火して、燃焼ガス流35を生成する。燃焼器25が1つだけ示されているが、ガスタービンエンジン10は、任意の数の燃焼器25を含んでいてもよい。燃焼ガス流35は、タービン40に送達される。燃焼ガス流35は、機械的作用を生み出すためにタービン40を駆動する。タービン40で生み出される機械的作用は、圧縮機15と発電機等の外部負荷45とを駆動する。
【0011】
ガスタービンエンジン10は、天然ガス、様々な種類の合成ガス、および/または他の種類の燃料を使用してもよい。ガスタービンエンジン10は、Fクラス(F−Class)ガスタービンエンジンなどの、Schenectady、New York所在のGeneral Electric Companyが提供する、任意の数の異なるガスタービンエンジンの1つであってもよい。ガスタービンエンジン10は、他の構成を有していてもよく、他の種類の構成要素を使用してもよい。また、本明細書において、他の種類のガスタービンエンジンが用いられてもよい。また、本明細書において、複数のガスタービンエンジン10、他の種類のタービン、および他の種類の発電装置が、一緒に用いられてもよい。
【0012】
図2は、ガスタービンエンジン10等で使用するための既知の潤滑油システム50のハイレベル図(high level view)を示す。潤滑油システム50は、Schenectady、New York所在のGeneral Electric Companyが提供するFクラスガスタービンエンジンおよび類似の種類のガスタービンエンジン10で使用されてきた可能性がある。潤滑油システム50は、中に大量の潤滑油60を有する潤滑油タンク55を含む。潤滑油タンク55は、潤滑油ポンプ65と連通していてもよい。潤滑油ポンプ65は、潤滑油供給源70、油圧オイルポンプ80経由で油圧オイル供給源75、リフトオイルポンプ90経由でリフトオイル供給源85等と連通していてもよい。また、本明細書において、他の構成および他の種類の構成要素が用いられてもよい。
【0013】
図示の通り、潤滑油タンク55は、油圧オイル供給源75およびリフトオイル供給源85の両方に役立つ。潤滑油60は、このように、タービン40の構成要素を通って、かつ潤滑油が高い圧力、応力、温度、摩損等に晒される可能性がある他のシステム構成要素を通って流動する。潤滑油60は、さらに、静的変化を引き起こす可能性がある多数のフィルタを通って流動する可能性があり、温度が上昇して、やはりオイルの分解およびワニスの蓄積をもたらす可能性がある。
【0014】
図3は、既知の潤滑油システム95の代替的実施形態を示す。この潤滑油システム95もまた、中に潤滑油60を有する潤滑油タンク55を含む。潤滑油タンク55は、潤滑油ポンプ65と連通している。潤滑油ポンプ65は、やはり、潤滑油供給源70、油圧オイル供給源75、リフトオイル供給源85等と連通している。しかし、本実施形態では、単一の油圧オイルポンプ/リフトオイルポンプ100が使用されてもよい。複合型油圧/リフトオイルポンプ100は、どのシステムが使用中の可能性があるかによって供給圧力を調節するために、2つの異なる設定で作動する能力を有していてもよい。換言すれば、油圧オイル供給源75とリフトオイル供給源85とは、異なる圧力で作動し得る。また、本明細書において、他の構成および他の種類の構成要素が用いられてもよい。
【0015】
図4は、拡張型油圧回路105およびリフトオイル供給源85の場合の、潤滑油システム95の使用を示す。潤滑油システム95および類似のシステムは、現在使用中の可能性がある。この例では、油圧回路105は、油圧マニホルドまたは油圧ユニット110を含んでいてもよい。油圧ユニット110は、油圧/リフトポンプ100の1つまたは複数と連通していてもよい。前述の通り、油圧/リフトポンプ100は、所望の圧力および所望の使用中の回路によって、複数の設定を有していてもよい。この例では、余剰油圧/リフトポンプ100が示されている。
【0016】
油圧ユニット110は、燃料ガスシステム115への油圧供給源、入口案内翼システム120への油圧供給源、液体燃料システム125への油圧供給源、および他の構成要素と連通していてもよい。油圧ユニット110はまた、リフトオイル供給源85と連通していてもよい。これらの供給源の1つまたは複数は、前述のようにワニス損傷を被る可能性があるサーボおよび他の種類の内部構成要素を含んでいてもよい。また、本明細書において、他の構成および他の種類の構成要素が用いられてもよい。
【0017】
図5は、本明細書に記載されている可能性がある潤滑油ワニス軽減システム200の例を示す。前述の構成と同様に、潤滑油ワニス軽減システム200は、潤滑油回路210を含んでいてもよい。潤滑油回路210は、中に大量の潤滑油230を有する潤滑油タンク220を含んでいてもよい。潤滑油タンク220は、潤滑油ポンプ240と連通していてもよい。潤滑油ポンプ240は、潤滑油供給源250、リフトオイルポンプ270経由でリフトオイル供給源260等と連通していてもよい。潤滑油回路210は、前述の潤滑油システム50と類似した方法で機能してもよい。また、本明細書において、他の構成および他の種類の構成要素が用いられてもよい。
【0018】
潤滑油ワニス軽減システム200はまた、油圧回路280を含んでいてもよい。油圧回路280は、中に大量の油圧オイル300を有する油圧オイルタンク290を含んでいてもよい。油圧オイル300は、グループII(Group II)基油等の特殊オイルであってもよい。本明細書において、他の種類の油圧オイル300が用いられてもよい。油圧オイルタンク290は、油圧オイルポンプ310と連通していてもよい。油圧オイルポンプ310は、油圧オイル供給源320等と連通していてもよい。また、本明細書において、他の構成および他の種類の構成要素が用いられてもよい。
【0019】
潤滑油回路210と油圧オイル回路280とを分離することにより、油圧オイル300は、潤滑油230に一般的に認められる高い圧力、温度、および応力に晒されない可能性がある。したがって、油圧オイル300は、ラッカリングを生じ(varnish)ない可能性があり、したがって、サーボ等の油圧回路280内の構成要素へのワニス損傷を生じない可能性がある。さらに、油圧オイル300は、現在使用中の潤滑油230と比較して、顕著により長い寿命を有する可能性がある。
【0020】
前述の潤滑油システム95と比較した通り、付加的な油圧オイルポンプ310は、油圧回路280内で必要とされる可能性がある。しかし、この油圧オイルポンプ310は、油圧/リフトポンプ100では2つの設定が必要とされるのとは対照的に、必要とされる可能性がある圧力設定が1つだけであるという点で、簡略化されている可能性がある。同様に、付加的な油圧オイルタンク290はまた、油圧オイル300の別量を保持しなければならない可能性がある。しかし、既存の潤滑油タンク220は、ここでは寸法がより小さい可能性がある。
【0021】
図6は、潤滑油ワニス軽減システム330の代替的実施形態を示す。この例では、潤滑油ワニス軽減システム330は、やはり、前述のものに類似した潤滑油回路210と、前述のものに類似した油圧オイル回路280とを含んでいてもよい。潤滑油回路210は、複数の余剰リフトオイルポンプ270を含んでいてもよい。同様に、油圧オイル回路280も、複数の余剰油圧オイルポンプ310を含んでいてもよい。潤滑油ワニス軽減システム330内の潤滑油回路210および油圧オイル回路280はどちらも、このように、前述の潤滑油システム95内に示されているように、余剰ポンプを含む。前述の単一のポンプ240、310もまた使用され得るように、そのような冗長性は必要とされない。また、本明細書において、他の構成および他の種類の構成要素が用いられてもよい。
【0022】
油圧回路280はまた、油圧オイル供給源320と連通している油圧マニホルド340を含んでいてもよい。油圧オイル供給源320または油圧マニホルド340は、燃料ガスシステム115への油圧供給源、入口案内翼システム120への油圧供給源、液体燃料システム125への油圧供給源、および他の構成要素と連通していてもよい。
【0023】
本明細書に記載されている潤滑油ワニス軽減システム100は、このように、必要な保守、ダウンタイム、および潜在的収益損失を低減しながら、全体的なガスタービンの信頼性を向上させている。中に油圧オイル300を有する別個の油圧回路280の使用は、この回路の構成要素のオイルラッカリング等に関連する問題を大いに排除する。潤滑油ワニス軽減システム100は、新しい部品装置を後付けした機器または元来の機器であってもよい。
【0024】
上述は本願の特定の実施形態にのみ関すること、および多数の変更および修正が、以下の特許請求の範囲およびその等価物により定められる本発明の一般的な精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において当業者により施されてもよいことが明らかであるべきである。
【符号の説明】
【0025】
10 ガスタービンエンジン
15 圧縮機
20 空気流
25 燃焼器
30 燃料流
35 燃焼ガス流
40 タービン
45 外部負荷
50、95 潤滑油システム
55、220 潤滑油タンク
60、230 潤滑油
65、240 潤滑油ポンプ
70、250 潤滑油供給源
75、320 油圧オイル供給源
80、310 油圧オイルポンプ
85、260 リフトオイル供給源
90、270 リフトオイルポンプ
100 油圧/リフトオイルポンプ、潤滑油ワニス軽減システム
105 拡張型油圧回路
110 油圧マニホルド、油圧ユニット
115 燃料ガスシステム
120 入口案内翼システム
125 液体燃料システム
200、330 潤滑油ワニス軽減システム
210 潤滑油回路
280 油圧オイル回路
290 油圧オイルタンク
300 油圧オイル
340 油圧マニホルド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン(10)のための潤滑油ワニス軽減システム(200)であって、
潤滑油回路(210)であり、中に潤滑油(230)を含む、潤滑油回路(210)と、
前記潤滑油回路(210)から分離されている油圧オイル回路(280)であり、中に潤滑油(300)を有する、油圧オイル回路(280)と
を含む、潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項2】
前記潤滑油回路(210)は潤滑油タンク(220)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項3】
前記潤滑油回路(210)は潤滑油ポンプ(240)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項4】
前記潤滑油回路(210)はリフトオイルポンプ(270)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項5】
前記潤滑油回路(210)は複数のリフトオイルポンプ(270)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項6】
前記潤滑油回路(210)は潤滑油供給源(250)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項7】
前記潤滑油回路(210)はリフトオイル供給源(260)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項8】
前記油圧オイル回路(280)は油圧オイルタンク(290)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項9】
前記油圧オイル回路(280)は油圧オイルポンプ(310)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項10】
前記油圧オイル回路(280)は複数の油圧オイルポンプ(310)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項11】
前記油圧オイル回路(280)は油圧オイル供給源(320)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項12】
前記油圧オイル回路(280)は油圧オイルマニホルド(340)を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項13】
前記油圧オイル回路(280)は、燃料ガスシステム(115)への油圧供給源を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項14】
前記油圧オイル回路(280)は、入口案内翼システム(120)への油圧供給源を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。
【請求項15】
前記油圧オイル回路(280)は、液体燃料システム(125)への油圧供給源を含む、請求項1記載の潤滑油ワニス軽減システム(200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−62889(P2012−62889A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200364(P2011−200364)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】