説明

油中多価アルコール型シート状化粧料

【課題】肌への密着性に優れ、温感効果及び使用後のエモリエント効果にも優れ、さらに経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料を提供すること。
【解決手段】次の成分(a)〜(c);
(a)リン脂質 3〜25質量%
(b)多価アルコール 3〜18質量%
(c)油剤
を含有し、成分(c)と成分(b)の含有質量割合(c)/(b)が4〜16であることを特徴とする油中多価アルコール型組成物を不織布に含浸させて成る油中多価アルコール型シート状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン脂質を用いて、多価アルコールを油剤中に乳化した油中多価アルコール型組成物を不織布に含浸させて成る油中多価アルコール型シート状化粧料に関し、さらに詳細には、使用時の肌への密着性に優れ、温感効果及び使用後のエモリエント効果にも優れ、さらに経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リン脂質は、保湿効果の高い天然界面活性物質であり、一般に水中油型乳化化粧料の乳化剤として用いられており、また、肌なじみに優れるため、化粧品分野では広く利用されている。
【0003】
従来より、リン脂質を用いた化粧料としては、リン脂質、高級アルコール、コラーゲンを用いた水中油型乳化化粧料(特許文献1)や、特定の変性シリコーンとリン脂質、油剤、水を用いた油中水型、油中水中油型乳化化粧料(特許文献2)、あるいはリン脂質、多価アルコール、ショ糖脂肪酸エステルを用いた多価アルコール中油型乳化組成物(特許文献3)などが提案されている。
【0004】
一方、従来より、肌にしっとり感や肌馴染みのよさを与えるために界面活性剤を用いて多価アルコールを油中に乳化させた油中多価アルコール型の油性化粧料が開発されており、多量の多価アルコールを油中に安定分散させるため、界面活性剤を多量に配合するのが一般的であった。そのため、グリセリンの縮合物と、ベヘン酸とエイコサン二酸とのエステル化生成物、グリセリン、パルミチン酸デキストリンを用いて、界面活性剤を比較的少量に抑えた油中多価アルコール型化粧料なども提案されている(特許文献4)。
【0005】
また、温感を感じさせる化粧料としては、水和発熱性無機粉体を用いたクリーム状またはゲル状化粧料(特許文献5)あるいは、グリセリンとグリセリン変性シリコーンを含む1剤と水を含む2剤とを混合し、グリセリンの水への溶解熱を利用したマッサージ料(特許文献6)などが提案されている。
【0006】
一方、シート状化粧料は、化粧水等を不織布等の支持体に含浸させて、肌に長時間作用させることにより、肌に十分な水分や有効成分を与え保湿や美肌効果を付与するものとして利用されており、市場も拡大している。具体的には水溶性高分子と多価アルコールを不織布に含浸してなる、不織布含浸化粧料が提案されている(特許文献7)。
【0007】
また、油性薬効成分を含む油分、親水性非イオン界面活性剤、水溶性溶媒、水を含有する水中油型乳化組成物を含浸させたシート状化粧料(特許文献8)あるいは、特定の油剤を特定量配合したオイルクレンジングシート(特許文献9)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−247776号公報
【特許文献2】特開2006−241038号公報
【特許文献3】特開平4−100535号公報
【特許文献4】特開2008−239550号公報
【特許文献5】特開2009−67721号公報
【特許文献6】特開2006−306843号公報
【特許文献7】特開平10−279429号公報
【特許文献8】特開2004−284960号公報
【特許文献9】特開2006−306780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、リン脂質を用いた乳化は外相が水溶性成分、内相が油溶性成分のとき、最も安定であり、特許文献1のような水中油型もしくは特許文献3のような多価アルコール中油型において用いられる。また、特許文献2のような油中水型では特定の変性シリコーンを用いて安定化させており、リン脂質は用いられていない。また、油中多価アルコール型油性化粧料は特許文献4のように界面活性剤の量や質が検討されているが、界面活性剤としてリン脂質のみを用いた油中多価アルコール型組成物は市場において提案されていない。特許文献5、6のような温感を与える化粧料は、エモリエント効果や使用後の感触について満足できるものではなかった。
【0010】
また、シート状化粧料に関しては、肌に十分な水分や有効成分を与え保湿や美肌効果を付与する目的では特許文献7、8のような化粧水や、水中油型乳化組成物を含浸させたシート状化粧料が提案されているが、貼付中にシートから水分が蒸発するため、気化熱により、肌が冷えてしまうという側面があった。また、特許文献9のような油性クレンジングシート状化粧料が提案されているが、メイクを簡便に除去する目的であり、肌に十分な水分や有効成分を与える効果はなかった。また、油中多価アルコール型組成物を含浸させたシート状化粧料の例は未だ報告されていない。
また、従来の油中多価アルコール型組成物を肌に直接塗付するだけでは、肌に長時間作用させることが難しく、効果の持続性向上が望まれていた。
【0011】
本発明は、リン脂質を用いて経時安定性に優れる油中多価アルコール型組成物を開発し、また、それを不織布に含浸させて得られるシート状化粧料に関し、さらに詳細には肌密着性が高く、高い温感と使用後のエモリエント効果が感じられ、経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる実情において、本発明者は鋭意研究した結果、多価アルコールをリン脂質を用いて油剤中に分散することで、経時安定性に優れる油中多価アルコール型組成物が得られ、さらにそれを不織布に含浸させることにより、肌への密着性に優れ、温感効果及び使用後のエモリエント効果にも優れ、さらに経時安定性に優れた油中多価アルコール型シート状化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)リン脂質 3〜25質量%
(b)多価アルコール 3〜18質量%
(c)油剤
を含有し、成分(c)と成分(b)の含有質量割合(c)/(b)が4〜16であることを特徴とする油中多価アルコール型組成物を不織布に含浸させて成る油中多価アルコール型シート状化粧料を提供するものである。
【0014】
成分(a)のリン脂質がフォスファチジルコリンを25〜42質量%、フォスファチジルエタノールアミンを25〜42質量%を含有することを特徴とする前記油中多価アルコール型シート状化粧料を提供するものである。
【0015】
成分(c)の油剤が25℃において液状であることを特徴とする前記油中多価アルコール型シート状化粧料を提供するものである。
【0016】
さらに成分(d)としてエチルアルコールを含有することを特徴とする前記油中多価アルコール型シート状化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の油中多価アルコール型シート状化粧料は、肌への密着性に優れ、温感効果及び使用後のエモリエント効果にも優れ、さらに経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(a)のリン脂質は、本発明において乳化剤として用いられるものであり、リン脂質の種類としては通常化粧料に用いられるものであれば特に制限は無いが、例えば、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質等が挙げられる。これらリン脂質は、一般にフォスファチジルコリン(以下、PCと略す)、フォスファチジルエタノールアミン(以下、PEと略す)、フォスファチルジイノシトール(以下、PIと略す)等の混合物であり、リン脂質の起源によりその組成は異なるが、本発明で用いるリン脂質は、PCを25〜42質量%(以下「%」と略す)、PEを25〜42%含有するものが好ましい。PC、PEの組成が前記範囲にあるものであれば、油剤との相溶性が良く、本発明中の乳化剤としてよく機能する。成分(a)は、1種または2種以上用いることが可能である。このような成分(a)の具体的な商品としては、日光ケミカルズ社より提供されるレシノールS−10、レシノールPIE等が挙げられる。
【0019】
成分(a)の含有量は、3〜25%であり、6〜10%が好ましい。含有量が3%未満では乳化安定性、保存安定性が悪くなり、また、25%を超えると伸び広がりが悪くなったり、リン脂質独特の匂いが強くなる。3〜25%の範囲であれば、乳化安定性に優れ、肌密着性が高く、高い温感が感じられ、経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料を得ることができる。
【0020】
本発明に用いられる成分(b)の多価アルコールは、本発明おいて肌密着性や温感効果を高めるものであり、通常化粧料に用いられる物であれば特に制限はないが、例えば、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリオキシエチレングリセリン等が挙げられる。この成分(b)は、1種又は2種以上用いることができる。このような成分(b)の具体的な商品としては、イワキ社より提供される1,3−ブチレングリコール、PALMOLEO社より提供されるPALMERA G 9091などが挙げられる。
【0021】
成分(b)の含有量は、3〜18%であり、5〜15%がより好ましい。3〜18%の範囲であれば、肌密着性が高く、温感効果や使用後のエモリエント効果に優れ、経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料を得ることができる。含有量が3%未満であると温感効果や使用後のエモリエント効果に乏しく、18%を超えると経時安定性が悪くなる。
【0022】
本発明に用いられる成分(c)の油剤は、通常の化粧料に使用されるものであり、液状、ペースト状、固形状の油剤のいずれも使用することができる。具体的には、液状油としては、植物油、炭化水素油、合成または半合成エステル油、シリコーン油等があり、具体的には植物油としてはアボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、綿実油、ヤシ油等があげられ、炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン等が挙げられる。合成または半合成エステル油としては、ラノリンアルコール、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、2−ヘキシルデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセライド、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセライド、モノステアリン酸グリセライド、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、スクワラン等があげられ、シリコーン油としてはメチルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0023】
またペースト油としては、植物油ではカカオ脂、シアバター、ヒマシ油等、半合成または合成油としては硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、合成ラノリン、モノステアリン酸硬化ヒマシ油、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、炭化水素油ではワセリン等が挙げられる。
【0024】
また固形油としては、植物油では、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウが挙げられ、炭化水素油としてはセレシン、パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられ、半合成・合成油としては12−ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸セチル、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、トリベヘン酸グリセリル等が挙げられ、これらの油剤は必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。
【0025】
中でも、常温で液状油が好ましく、全油剤中における液状油の配合割合が60%以上である場合、肌への密着性が良く、使用後のエモリエント効果が優れる油中多価アルコール型シート状化粧料を得ることができる。
【0026】
これらの中でも、流動パラフィン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルが乳化安定性、使用後のエモリエント効果、経時安定性の点で好ましい。このような成分(c)の具体的な商品としては、カネダ社より提供されるハイコール K−230等が挙げられる。
【0027】
成分(c)と成分(b)の含有量は、質量割合(c)/(b)が4〜16であり、4.5〜7.5%がより好ましい。質量割合(c)/(b)が4〜16の範囲であれば、肌密着性が高く、高い温感と使用後のエモリエント効果が感じられ、経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料を得ることができる。質量割合(c)/(b)が4未満であると経時安定性が悪くなり、16を超えると肌密着性や温感効果が不十分となる。
【0028】
本発明の油中多価アルコール型シート状化粧料には温感効果を向上させる目的から、さらに成分(d)としてエチルアルコールを含有することが好ましい。このような成分(d)の具体的な商品としては、信和アルコール産業社より提供される一般アルコール95度合成等が挙げられる。
従来、エチルアルコールは蒸発する際に周囲から熱を奪うため、冷却作用があるが、本発明においては、エチルアルコールを配合することで油中多価アルコール型組成物の肌への密着性が増し、前記組成物の浸透性が向上するため、温感効果をさらに高めることができる。
【0029】
本発明の成分(d)の含有量は、3〜15%が好ましく、特に5〜10%がより好ましい。3〜15%の範囲であれば、高い温感が感じられ、経時安定性に優れる油中多価アルコール型シート状化粧料を得ることができる。
【0030】
本発明の油中多価アルコール型シート状組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で通常化粧料等に配合される任意成分、すなわち、成分(a)以外の界面活性剤成分、(b)以外の水溶性成分、有機変性粘土鉱物、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、保湿剤等を配合することができる。
【0031】
本発明の油中多価アルコール型シート状化粧料は前記組成物を不織布に含浸させることで、油中多価アルコール組成物を効果的に肌に長時間作用させ、温感効果に優れ、使用後に高いエモリエント効果を得ることができる。
【0032】
本発明の油中多価アルコール型シート状化粧料で用いる不織布としては、天然繊維、合成繊維等の繊維を織らずに、絡み合わせたシートであり、湿式製造法、乾式製造法等の何れの製造方法により得られた不織布でもよい。不織布に用いられる繊維としては、コットン、羊毛、麻、パルプ、絹、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維等が挙げられ、これらを必要に応じて一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。これら中でも、安定性や肌への密着性の点でコットンが好ましい。
【0033】
本発明の油中多価アルコール型シート状化粧料の製造方法は、特に限定されないが、混合溶解により製造した油中多価アルコール型ゲル状組成物を不織布に含浸させることで製造することが好ましい。例えば、成分(a)、成分(c)を混合し、75℃に加熱溶解し、成分(b)を添加し、冷却後、必要により成分(d)を混合し得られたゲル状の油中多価アルコール型組成物を調製した。これを不織布に含浸させることにより、経時安定性が良好な油中多価アルコール型シート状化粧料とすることができる。成分(a)と成分(c)の混合溶解時における温度は70℃以上80℃以下の範囲が好ましく、70℃未満であると成分(a)リン脂質の油性成分への分散性が低下する場合があり、また80℃を超えると成分(a)リン脂質の変質・変臭が生じる場合があるため好ましくない。この温度範囲において混合溶解したものを室温まで冷却することにより、油中多価アルコール型組成物とすることが可能である。また、不織布へ含浸させる方法としては、特に制限されないが、例えば、不織布を充填した袋状容器に不織布の質量に対して5〜30倍量の前記組成物を添加し、袋状容器を密閉し、一晩以上静置させることが好ましい。上記の方法で不織布に含浸させることにより、油中多価アルコール型シート状化粧料を得ることができる。
【0034】
本発明の油中多価アルコール型シート状化粧料としては、スキンケア用等の化粧料が挙げられる。より具体的には、パック料等が挙げられる。またその使用法は、特に限定されるものではないが、肌に直接貼付して使用する方法等があり、全顔への使用や目元、首、手足への部分使用が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0036】
実施例
発明品1〜8及び比較品1〜6:油中多価アルコール型シート状化粧料
表1及び表2に示す組成および下記製法にて油中多価アルコール型シート状化粧料を調製し、「経時安定性」、「肌への密着性」、「温感効果」、「使用後のエモリエント効果」について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定を行い、結果を併せて表1および表2に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を80℃に加熱する。
B:Aに成分(6)〜(8)を加え、ディスパーミキサーにて70〜80℃で混合撹拌する。
C:Bを室温まで冷却し、成分(9)を加え、油中多価アルコール型組成物とする。
D:コットン製不織布を入れたポリエチレンテレフタレート製の袋状容器にCを充填・封入し、油中多価アルコール型シート状化粧料を得た。
【0040】
(評価方法:経時安定性)
実施例および比較例の油中多価アルコール型組成物を50℃の恒温槽に1ヶ月放置し、外観の変化(分離や排液の度合い)を目視によって評価を行い、下記の4段階絶対判定基準で判定した。
4段階絶対判定基準
(評 価) :(判定)
全く分離・排液が見らない : ◎
わずかに分離・排液が見られるが問題ないレベル : ○
やや分離・排液が見られる : △
明らかに分離。排液が見られる : ×
【0041】
(評価方法:肌への密着性、温感効果、使用後のエモリエント効果)
20〜40代女性の化粧品評価パネル20名に、実施例および比較例の油中多価アルコール型シート状化粧料を全顔に15分間使用し、「肌への密着性」、「温感効果」、「使用後のエモリエント効果」を以下の5段階評価基準について評価を得た。更に全パネルの評点の平均値を以下の4段階判定基準を用いて判定した。
【0042】
(肌への密着性)
5段階評価基準
(評 価) :(評点)
非常によい : 5点
よい : 4点
普通 : 3点
悪い : 2点
非常に悪い : 1点
【0043】
(温感効果、使用後のエモリエント効果)
5段階評価基準
(評 価) :(評点)
非常に感じる : 5点
やや感じる : 4点
普通 : 3点
あまり感じない : 2点
感じない : 1点
【0044】
4段階判定基準
(全パネルの評点の平均値) :(判定)
平均点4.5以上 : ◎
平均点3.5以上4.5未満 : ○
平均点2.5以上3.5未満 : △
平均点2.5未満 : ×
【0045】
表1および表2の結果から明らかなように、本発明品1〜8の油中多価アルコール型シート状化粧料は、経時安定性、肌への密着性、温感効果、使用後のエモリエント効果に優れたものであった。それに対して、水素添加大豆リン脂質の含有量が2%と少ない比較品1は安定性が悪く、肌への密着性が悪かった。水素添加大豆リン脂質を含有しない比較品2は経時安定性が悪く、肌への密着性が悪く、肌上でシートが滑り動いてしまった。乳化剤としてリン脂質の代わりにパルミチン酸デキストリンを用いた比較品3は、経時安定性の悪いものであった。また、多価アルコールを含有しない比較品4においては温感が感じられなかった。多価アルコールの含有量が20%と多い比較品5はシートの安定性が悪かった。シートに含浸させていない状態の比較品6においては、温感効果や使用後のエモリエント効果が乏しいものであった。
【0046】
実施例9:目元用シート
(成分) (%)
1.水素添大豆リン脂質(注1) 6.0
2.流動パラフィン(注5) 25.0
3.イソノナン酸イソトリデシル 5.0
4.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 残量
5.モノオレイン酸ソルビタン 1.0
6.フェノキシエタノール 0.2
7.ポリオキシエチレングリセリン(26E.O) 5.0
8.1,3−ブチレングリコール 5.0
9.エチルアルコール 10.0
10.香料 適量
(注5)ハイコール K-350 (カネダ社製)
【0047】
(製造方法)
A:成分(1)〜(6)を80℃に加熱する。
B:Aに成分(7)〜(8)を加え、ディスパーミキサーにて70〜80℃で混合撹拌する。
C:Bを室温まで冷却し、成分(9)〜(10)を加え、油中多価アルコール型組成物とする。
D:Cを容器に充填し、コットン製不織布を含浸させ、目元用シートを得た。
【0048】
実施例9の目元用シートは、肌への密着性が高く、温感効果や使用後のエモリエント効果に優れ、経時安定性に優れたものであった。
【0049】
実施例10:全顔用シート
(成分) (%)
1.水素添大豆リン脂質(注6) 6.0
2.流動パラフィン(注5) 28.0
3.イソノナン酸イソトリデシル 4.0
4.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 残量
5.セスキオレイン酸ソルビタン 1.0
6.オレイン酸エチル 0.5
7.フェノキシエタノール 0.2
8.ポリオキシエチレン(26モル)グリセリン 5.0
9.1,3−ブチレングリコール 7.0
10.グリセリン 3.0
11.エチルアルコール 6.0
12.香料 適量
(注6)レシノール S−10 (日光ケミカルズ社製)
【0050】
(製造方法)
A:成分(1)〜(7)を80℃に加熱する。
B:Aに成分(8)〜(10)を加え、ディスパーミキサーにて70〜80℃で混合撹拌する。
C:Bを室温まで冷却し、成分(11)〜(12)を加え、油中多価アルコール型組成物とする。
D:Cを容器に充填し、コットン製不織布を含浸させ、全顔用シートを得た。
【0051】
実施例10の全顔用シートは、肌への密着性が高く、温感効果や使用後のエモリエント効果に優れ、経時安定性に優れたものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)リン脂質 3〜25質量%
(b)多価アルコール 3〜18質量%
(c)油剤
を含有し、成分(c)と成分(b)の含有質量割合(c)/(b)が4〜16であることを特徴とする油中多価アルコール型組成物を不織布に含浸させて成る油中多価アルコール型シート状化粧料。
【請求項2】
成分(a)のリン脂質がフォスファチジルコリンを25〜42質量%、フォスファチジルエタノールアミンを25〜42質量%を含有することを特徴とする請求項1記載の油中多価アルコール型シート状化粧料。
【請求項3】
成分(c)の油剤が25℃において液状であることを特徴とする請求項1または2記載の油中多価アルコール型シート状化粧料。
【請求項4】
さらに成分(d)としてエチルアルコールを含有することを特徴とする請求項1〜3記載の油中多価アルコール型シート状化粧料。

【公開番号】特開2011−213668(P2011−213668A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84109(P2010−84109)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】