油中水型乳化化粧料の製造方法
【課題】外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーで使用感が良く、保存安定性に優れた油中水型乳化化粧料の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法は、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法である。本発明の製造方法は、管状のケーシング41内に、駆動軸42と、該駆動軸42に取り付けられた攪拌羽根43とからなる攪拌体44を備え、該駆動軸42が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置40を用い、該振動式攪拌混合装置40内を通過させることで流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法である。
【解決手段】本発明の製造方法は、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法である。本発明の製造方法は、管状のケーシング41内に、駆動軸42と、該駆動軸42に取り付けられた攪拌羽根43とからなる攪拌体44を備え、該駆動軸42が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置40を用い、該振動式攪拌混合装置40内を通過させることで流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス等の油性成分に水性成分を添加した油中水型乳化化粧料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品は、一般に人の身体の外観を美しくするために用いられる。特にファンデーションのような化粧品は、シミ、ソバカス、色むら、毛穴などの肌の欠点を、粉体などによってカバーし、肌を美しく見せることを目的として用いられる。中でも油中水型乳化ファンデーションは、高いカバー力を有し、肌なじみが良く、撥水性、耐水性、耐汗性が得られやすいことが知られている。
【0003】
近年、化粧持続性をさらに向上させるため、ワックス等の油性成分の配合量が増加する傾向にあり、ワックス等の油性成分を配合する場合、加熱下で配合する必要がある。例えば、特許文献1には、加熱溶融した油性成分に、水性成分を添加して乳化した後、プロペラで撹拌しながら冷却後、ホモミキサーを用いて撹拌する技術が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、加熱下で乳化分散して得られた流動体を、プロペラで撹拌しながら冷却する工程において、より質の高い化粧品の製造に求められる性能として不十分であった。
【0005】
特許文献2には、乳化分散したエマルジョンの製造の際に使用する振動式攪拌混合装置に関する技術が記載されている。特許文献2に記載の振動式攪拌混合装置は、ケーシングの内側に熱交換パイプを備え、該ケーシング内を通過させることでエマルジョンを均一に冷却することができることについて記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2には、一般的なエマルジョンについて記載されているに過ぎず、具体的な油中水型乳化化粧料の製造方法について何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−176825号公報
【特許文献2】特開2002−139296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、上述した問題を解消し、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーで使用感が良く、保存安定性に優れた油中水型乳化化粧料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、該振動式攪拌混合装置内を通過させることで前記流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散し、それによって得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、前記水性成分及び加熱された前記油性成分を前記振動式攪拌混合装置に供給して乳化分散させながら該振動式攪拌混合装置内を通過させ、乳化分散して得られた前記流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を連続的に冷却しても、冷却工程中において乳化滴の合一が抑制され、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感で、保存安定性の優れた油中水型乳化化粧料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の製造方法を実施する好適な装置を示す概略図である。
【図2】図1に示す振動式攪拌混合装置の縦断面の模式図である。
【図3】図1に示す振動式攪拌混合装置における攪拌体の要部拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態の製造方法を実施する好適な装置を示す概略図である。
【図6】本発明の第1実施形態又は第2実施形態の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【図7】実施例1〜4の4及び比較例1で得られたクリームファンデーションにおける総振動量と乳化粒径との関係を示した図である。
【図8】実施例1〜4の4及び比較例1で得られたクリームファンデーションにおける総振動量と粘度との関係を示した図である。
【図9】実施例1〜4の4及び比較例1で得られたクリームファンデーションにおける総振動量と明度との関係を示した図である。
【図10】(a)は、実施例3で得られたクリームファンデーションを25℃に冷却した際の乳化滴の光学顕微鏡像であり、(b)は、比較例1で得られたクリームファンデーションを25℃に冷却した際の乳化滴の光学顕微鏡像である。
【図11】(a)は、実施例3で得られたクリームファンデーションを室温で1ヶ月静置保存後の乳化滴の光学顕微鏡像であり、(b)は、比較例1で得られたクリームファンデーションを室温で1ヶ月静置保存後の乳化滴の光学顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の第1実施形態に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図1に示す装置10は、加熱混合部20及び冷却部30に大別される。加熱混合部20には、目的とする化粧料の配合原料のすべて又は一部が充填され、充填された原料を加熱下に混合するために用いられるものである。冷却部30は、加熱混合された混合物を冷却し、目的とする化粧料を得るために用いられるものである。
【0014】
加熱混合部20は高速剪断混合装置21を備えている。高速剪断混合機21は混合タンク22を備えている。混合タンク22は、ジャケット23によって加熱され、所定温度に調整される。混合タンク22内には攪拌翼24が複数個設置されている。複数個の攪拌翼24は、シャフト25の上下方向に間欠的に配されている。攪拌翼24は、シャフト25を介して混合タンク22外に設置されたモータ26に接続されており、回転可能になっている。混合タンク22の底部には、該タンク22内で混合された流動体を取り出すための管27が接続されている。管27は弁を介してモーノポンプ(商品名 兵神装備(株)製)等からなる定量ポンプ28に接続されている。定量ポンプ28は、管29を通じて流動体を冷却部30に定量供給するために用いられる。
【0015】
以上のとおりの構成を有する高速剪断混合装置21としては、プライミクス(株)製のTKコンビミックス(商品名)、プライミクス(株)製のTKアヂホモミクサ(商品名)等が挙げられる。これらの撹拌装置は、主に単独で使用するが、場合によっては2種以上を組み合わせて適宜使用してもよい(図4参照)。
【0016】
冷却部30は、振動式攪拌混合装置40を備えている。振動式攪拌混合装置40は、略筒状の構造を有し、その一端側に、管29に接続された流入口31を有し、他端側に吐出口32を有している。吐出口32は吐出用管33に接続されている。加熱混合部20から供給された流動体は、流入口31を通じて振動式攪拌混合装置40内に供給され、該装置40内を通過し、吐出口32を通じて吐出用管33の端部から吐出される。該流動体は、振動式攪拌混合装置40内を通過する間に、更に混合されると共に連続的に冷却される。連続的な冷却を行うために、振動式攪拌混合装置には、冷却水の循環する冷却ジャケットを備えていることが好ましく、振動式攪拌混合装置40には、流入口31側から吐出口32側に向けて4つのジャケット34,35,36,37がこの順で取り付けられている。各ジャケットにはそれぞれ冷却水が循環するようになっている。冷却水の温度は、適宣設定することが可能であり、これらのジャケットによって、流動体を流入口31側から吐出口32側に向けて連続的又は段階的に冷却することができる。
【0017】
図2には、振動式攪拌混合装置40の縦断面の模式図が示されている。装置40は、管状のケーシング41内に、駆動軸42と、該駆動軸42に取り付けられた攪拌羽根43とからなる攪拌体44を備えている。駆動軸42は、バイブレータ45aに接続されており、バイブレータ45aによって軸方向に沿って上下振動するようになされている。
【0018】
ケーシング41は、その横断面が円形である管状のものであり、その下部付近に流入口31が設けられている。ケーシング41の上部付近には吐出口32が設けられている。流入口31から流入した混合物は、ケーシング41内を通り、吐出口32から吐出される。
【0019】
ケーシング41内には、上述の攪拌体44が配されている。攪拌体44の駆動軸42は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に延びている。駆動軸42の上端は、ジョイント45bを介してバイブレータ45aに接続されている。バイブレータ45aは、モータ(図示せず)とその出力軸に接続された公知のカム機構(図示せず)を備えている。カム機構は、回転部(図示せず)と揺動部(図示せず)からなる。回転部は、モータの出力軸に対して偏心して取り付けられている。揺動部は、回転部の偏心回転によって揺動するようになっている。そして、揺動部の揺動が駆動軸42に上下振動として伝達される。
【0020】
ケーシング41の内壁には、円環状の仕切部46が複数設けられている。仕切部46は何れも同形であり、ケーシング41の内壁から水平方向へ突出している。仕切部46の中央に形成された円孔には、駆動軸42が挿入される。この円孔の直径は、駆動軸42の直径よりも大きくなっている。隣り合う2つの仕切部によってケーシング41の内部は複数の混合室47が画成される。混合室47は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に沿って直列配置される。
【0021】
図3(a)及び(b)には、攪拌体44の要部拡大図が示されている。攪拌体44は、駆動軸42とその周面に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根43とを備えている。同図においては、攪拌羽根43は3周の螺旋状に取り付けられている。この状態の攪拌体44を一組として、ケーシング内には、各混合室47内に攪拌体44が配されている。したがって攪拌体44の組数は、混合室47の数と同じになっている。それぞれの組の攪拌体44において、攪拌羽根43の螺旋の方向は同じになっている。
【0022】
それぞれの組の攪拌体44における攪拌羽根43には1個以上の開孔48及び/又は1個以上の切り欠き49が設けられている。開孔48及び切り欠き49は、 攪拌体44を駆動軸42の軸心方向からみたときに(図3(a)参照)、上下で隣り合う攪拌羽根どうしで形成位置が一致しないように設けられている。この理由は、軸方向での短絡流の発生を防止して、攪拌混合効果を高めるためである。
【0023】
以上のとおりの構成を有する振動式攪拌混合装置40としては、例えば特開平4−235729号公報に記載のもの等を用いることができる。また振動式攪拌混合装置40として市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えば冷化工業(株)製のバイブロミキサー(登録商標)に冷却ジャケットを備えた装置が挙げられる。
【0024】
以上の構成を有する装置10を用いた油中水型乳化化粧料の製造方法について説明すると、先ず高速剪断混合装置21の混合タンク22内に目的とする化粧料の配合原料のすべて又は一部を充填する。化粧料の配合原料の一部を充填する場合には、該配合原料の残部は、後述するように、振動式攪拌混合装置40の途中から供給することができる。
【0025】
高速剪断混合装置21を2種以上設けた場合(図4参照)には、上流側の高速剪断混合装置21に化粧料の配合原料のすべてを充填してもよいし、各高速剪断混合装置21に、化粧料の配合原料を一部ずつ充填してもよい。例えば、一部ずつ充填することにより配合原料の各成分の混合条件等をそれぞれ別個に適切に調整することができる。
【0026】
混合タンク22に充填される第1の配合原料には、25℃において固体である油性成分が含まれていることが好ましい。油性成分は第1の配合原料中に1種類以上含まれていることが好ましい。配合原料のすべてを充填する場合には、混合タンク22に油性成分を1種以上含む第1の配合原料の充填が完了したら、混合タンク22をジャケット23により加熱して第1の配合原料中に含まれている油性成分を溶融状態にする。加熱温度は、油性成分の融点に応じて適宜設定することができる。一般的には最も融点の高い油性成分の融点よりも10℃程度高めに設定することが好ましい。加熱によって油性成分が溶融混合した状態下に、水性成分が含まれている第2の配合原料を添加し、この状態下において攪拌翼24を回転させることで攪拌し、全配合原料を十分に乳化分散させて得られたものが流動体となる。得られた流動体は、油中水型(W/O型)乳化物である。
【0027】
混合タンク22内で、第1の配合原料と第2の配合原料を混合することに代えて、第1の配合原料及び第2の配合原料を、予めディスパーやホモミキサー等を用いて加熱下で混合乳化して流動体となし、その流動体を混合タンク22に導入してもよい。
【0028】
全配合原料が十分に乳化分散したら、混合タンク22の底部に取り付けられた弁を開き、混合タンク22内の流動体を取り出す。流動体は定量ポンプ28に導入され、その一定量が振動式攪拌混合装置40に供給される。また、定量ポンプ28には、該流動体が振動式攪拌混合装置40内を通過するための押し出し圧力源としての働きもある。振動型攪拌装置40へ導入される流動体の粘度は、導入される温度において、せん断速度が100S-1のとき、1〜10000mPa・s、特に10〜1000mPa・sであることが好ましい。
【0029】
また、図1に示すように、混合タンク22で得られた流動体を直接に振動式攪拌混合装置40へ供給することに加えて、振動式攪拌混合装置40へ供給する前に、定量ポンプ28でインラインホモミキサーやマイルダー等の連続式分散装置50に更に供給し、連続的に再度乳化分散を行った後に振動式攪拌混合装置40へ供給してもよい。このように再乳化分散を行うことにより油性成分が一層微細に分散した流動体を得ることができる。
【0030】
また、図4に示すように、高速剪断混合装置21を2種設けた場合には、一方の高速剪断混合装置21に油性成分が含まれている第1の配合原料を充填し、他方の高速剪断混合装置21’に水性成分が含まれている第2の配合原料を充填し、一方の高速剪断混合装置21の油性成分及び他方の高速剪断混合装置21’の水性成分それぞれを、それぞれの定量ポンプ28,28’で連続式分散装置50に供給して、乳化分散させ、得られた流動体を振動式攪拌混合装置40へ供給してもよい。このように油性成分と水性成分を別々の高速剪断混合装置21,21’で予め混合したものを連続式分散装置50に供給して連続的に乳化分散することによって、顔料が配合されている場合、顔料凝集が抑えられ、外観の明度が向上する。
【0031】
振動式攪拌混合装置40には、上述のとおり冷却ジャケットとして4つのジャケット34,35,36,37が取り付けられている。冷却ジャケットは、図2に示す筒状のケーシング41を覆うように配置されていることが好ましく、4つのジャケット34,35,36,37は、図1、図2に示すように、筒状のケーシング41を覆うようにケーシング41の外側に配置されている。それぞれのジャケットには、所定温度の冷却水が循環しており、流動体をケーシング41内に通過させることにより、冷却のための熱交換が行われる。このようにジャケットをケーシング41の外側に配置することにより、流動体を効率良く冷却可能であり、得られる乳化物の品質も良く、また、振動式攪拌混合装置の分解洗浄も簡便である。
【0032】
第1の配合原料が25℃において固体である油性成分を含んでいる流動体の場合には、振動式攪拌混合装置40内を通過する間に、流動体が更に混合されると共に、25℃において固体である油性成分の固化温度以下まで冷却されることが好ましく、例えば、ジャケット34には熱水が循環し約90℃に保たれており、ジャケット35は約45〜50℃に保たれている。残りの二つのジャケット36,37は何れも0〜10℃に保たれている。つまり振動式攪拌混合装置40には、その流入口31側から吐出口32側に向けて低下する温度勾配が設けられている。
【0033】
振動式攪拌混合装置40においては、攪拌体44がその軸方向に沿って上下に振動することで、ケーシング41内を通過する流動体が攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合される。ジャケット34に対応する位置に存在する流動体は、該ジャケット34が約90℃に保たれていることから流動性が高い状態になっているので、攪拌体44の振動によって混合が促進されて、上述の混合タンク22内での混合に引き続き再分散が行われる。
【0034】
次いで流動体は、ジャケット35に対応する位置まで押し出される。この位置の温度は、ジャケット34に対応する位置の温度よりも低いので、流動体は冷却されて、その流動性が低下する。この場合、流動体は、攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合されながら冷却されるので、冷却むらが生じにくくなる。また振動式攪拌混合装置40内にはデッドスペースが殆ど存在しないので、攪拌むらが生じにくい。振動式攪拌混合装置40は、流動体の流動性が高い場合でも低い場合でも良好な攪拌混合を行うことができる。振動式攪拌混合装置40は、発熱量が小さいので、油性成分の粒子を良好に分散させることが可能である。発熱量が小さいことは、温度制御が容易であるという点からも有利である。
【0035】
ジャケット35に対応する位置で冷却された流動体は、次いでジャケット36,37に対応する位置へ順次押し出され、当該位置で更に冷却される。このようにして、流動体は連続的に冷却されるので、冷却工程中において乳化滴の合一が抑制され、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感で、特に、25℃で固体の油性成分を含んでいる場合、保存安定性の優れた油中水型乳化化粧料を製造することができる。目的とする化粧料は、振動式攪拌混合装置40の吐出口32を経て吐出用管33から吐出される。この状態での化粧料の温度は約30℃となる。振動型攪拌装置40から吐出される化粧料の粘度は、吐出される温度において、せん断速度が100S-1のとき100〜500000mPa・s、特に1000〜100000mPa・sであることが好ましい。振動型攪拌装置40へ導入される流動体の粘度に対する吐出される化粧料の粘度比(吐出粘度/導入粘度)は、10〜10000であることが好ましい。
【0036】
なお、目的とする化粧料中に熱に弱い成分が含まれている場合や、熱により化粧料に悪影響を与える成分が含まれている場合には、当該成分を混合タンク22へ充填せず、振動式攪拌混合装置40の途中の位置から該装置40内に供給することで、熱に起因する不都合を回避することが可能である。例えば、ジャケット35に対応する位置においては、流動体はある程度冷却されているので、定量ポンプを用いて当該位置に、熱に弱い成分や熱により化粧料に悪影響を与える成分を供給することで、熱に起因する不都合を回避できる。振動式攪拌混合装置40による流動体の攪拌混合は、ほぼピストンフローなので、該装置40の途中から前記の成分を供給しても、該成分と流動体との混合を首尾良く行うことができる。前記の成分としては、例えば、後述する第1の配合原料に含まれる、ある種の活性剤、揮発成分、ラテックス、香料、植物性エキス、ワックス微分散物などの、温度変化しやすい成分が挙げられる。かかる成分の供給のために、振動式攪拌混合装置40の途中に補助注入口を1ヶ所又は複数設けることができる。
【0037】
振動式攪拌混合装置40を用いた冷却においては、平均冷却速度を0.1〜5℃/secに設定することが好ましく、特に0.2〜2.5℃/secに設定することが好ましい。平均冷却速度は、振動式攪拌混合装置40に流動体が入ったときの温度と出たときの温度の差を滞留時間で除した値である。また、振動式攪拌混合装置40の振動数は5〜30ストローク/secの範囲が好ましく、特に、10〜30ストローク/secの範囲が好ましい。振動式攪拌混合装置40の振幅は4〜15mmであることが好ましい。更に、振動式攪拌混合装置40で冷却される間に与えられる総振動量は、50〜100000ストローク、特に200〜20000ストロークであることが好ましい。
【0038】
このようにして得られた化粧料は、W/Oエマルジョンからなる乳化化粧料であり、その乳化粒径は、10μm未満であることが好ましく特に、5μm以下であることが好ましい。10μm以下であれば、乳化粒が微細に分散されているので、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感で、保存安定性の優れた油中水型乳化化粧品となる。
【0039】
次に、本発明で製造される化粧料の原料について説明する。第1の配合原料は、上述のとおり、25℃において固体である油性成分を少なくとも1種以上含んでいることが好ましい。25℃において固体である油性成分の総含有量は、使用感と化粧持ちの観点から全配合原料中に、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%含有されていることが好ましい。加熱下で溶融混合した油性成分に添加される水性成分は、使用感の観点から全配合原料中に、1〜80質量%、特に、30〜60質量%含有されていることが好ましい。
【0040】
第1の配合原料に含まれる油性成分としては、一般に化粧料に使用される液状、半固体及び固体状の何れでもよく、また合成及び天然由来の何れでもよい。例えば、炭化水素油、エステル油、動植物油、脂肪酸、高級アルコール、エーテル油、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。
【0041】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等が挙げられる。脂肪酸エステル油としては、オクタン酸イソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジグリセライド等が挙げられる。植物油としては、オリーブ油、大豆油、ヒマシ油等が挙げられる。動物性油としては、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。高級アルコールとしては、セタノール、ステアリルアルコール等が挙げられる。シリコーン油としては、揮発性及び不揮発性のシリコーン油が含まれ、例えばジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アクリルシリコーン等が挙げられる。更に、フッ素油としては、フッ素エーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素変性シリコーンなどが挙げられる。
【0042】
第1の配合原料に含まれる、25℃において固体である油性成分としては、ワックス、長鎖の疎水性脂肪酸やそのエステル等のワックス代用品が挙げられる。本発明においては、このワックス又はワックス代用品を1種以上含んでいることが好ましく、全配合原料中に含有されるワックス又はワックス代用品を含めた油性成分の量は、10〜80質量%、特に20〜60質量%、更に25〜55質量%であることが好ましい。
【0043】
ワックスとしては、固体/液体の可逆変化をし、30〜150℃の融点を有するものを広く包含する。ワックスの融点は、好ましくは45〜150℃、特に好ましくは50〜150℃である。ワックスの例としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、セレシン、カル ナウバロウ、ライスワックス、ホホバワックス、キャンデリラロウ、鯨ロウ、天然又は合成の蜜蝋(例えばリポケミカル社のリポワックス6138G(登録商標))、雪ロウ等が挙げられる。
【0044】
ワックス代用品としては、例えばC18〜C36脂肪酸(例えばクロダケミカル社のシンクロワックスAW1C(登録商標))、C10〜C36脂肪酸トリグリセリド(例えばオクタン酸/ドデカン酸‐トリグリセリド)、硬化ココ脂肪酸グリセリド(例えばヒェールスAG社のソフチサン100(登録商標))、グリセリルトリベヘネート(例えばクロダケミカル社のシンクロワックスHRC(登録商標))、脂肪酸エステル混合物(例えばヘンケルKGaA社のクチナBW(登録商標))、並びにこれらの混合物等が挙げられる。特に好ましいものとしては、ホホバ油、脂肪酸エステル、パラフィン油、脂肪酸エステルとパラフィン油から成る配合物、並びに脂肪酸エステル及び/又はパラフィン油とワセリンとから成る配合物等が挙げられる。
【0045】
第1の配合原料には、上記油性成分以外に、乳化剤として化粧品一般に用いられる、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を含めることができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、セチルジメチコンコポリオール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンセスキオレエート、モノオレイン酸ジグリセリル等を挙げることができる。界面活性剤は、全配合原料中に、0.1〜10質量%、特に0.2〜5質量%含有されていることが好ましい。
【0046】
第1の配合原料には、更に、色素、着色剤、高分子ポリマー等を含めることができる。色素や着色剤等を含有した流動体を振動式攪拌混合装置40によって撹拌することにより、色素や着色剤等が均一に分散するため、製造された化粧料は、外観色の彩度が高くなる。前記着色剤としては、化粧料に通常使用される成分、例えば、コンジョウ、群青、ベンガラ、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、カーボンブラック、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイトなどの無機粉体;雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体などが挙げられる。これらの粉体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
第2の配合原料に含まれる水性成分としては、水を主成分とするものであり、水以外の水性成分としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールのほか、通常化粧料に用いられる水溶性の成分等が挙げられる。
【0048】
更に、本発明においては、第1の配合原料又は第2の配合原料に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、糖類、アミノ酸類、セラミド類及びセラミド類似構造物質等の保湿剤;ビタミン類、核酸類、植物抽出物等の生理活性成分;増粘剤、分散剤、安定化剤、着香剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等を含有させることができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法について、図5に基づいて説明する。
第2実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法については、第1実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法と同様であり、第1実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法の説明が適宜適用される。
【0050】
図5には、本発明の第2実施形態の方法に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図5に示す装置10は、加熱混合部20及び冷却部30に大別される。第2実施形態の方法における加熱混合部20には、油性成分を含む第1の配合原料のみが供給され、水性成分を含む第2の配合原料は、加熱混合部20とは別の加熱混合機60で加熱混合される。冷却部30の備える振動式攪拌混合装置40は、加熱混合部20と管29で繋がっており、加熱混合機60と管29’で繋がっている。振動式攪拌混合装置40には、溶融状態にした油性成分が管29を通って流入口31から供給されると共に、水性成分が管29’を通って流入口31から供給される。
【0051】
以上の構成を有する装置10を用いた油中水型乳化化粧料の製造方法について説明すると、加熱混合部20の備える高速剪断混合装置21の混合タンク22内に油性成分を含む第1の配合原料のみを充填する。第1の配合原料の充填が完了したら、混合タンク22をジャケット23により加熱して第1の配合原料中に含まれている油性成分を溶融状態にする。第1の配合原料が十分に溶融したら、混合タンク22の底部に取り付けられた弁を開き、定量ポンプ28に導入し、その一定量を管29を通して振動式攪拌混合装置40に供給する。
【0052】
加熱混合部20とは別の加熱混合機60に、水性成分が含まれている第2の配合原料を充填し加熱混合しておき、油性成分を振動式攪拌混合装置40の流入口31に供給すると共に、第2の配合原料の一定量を定量ポンプ28’により管29’を通して流入口31に供給し、振動式攪拌混合装置40の内部で乳化分散させながら振動式攪拌混合装置40内を通過させ、得られた流動体を連続的に冷却する。具体的には、加熱状態の油性成分と、水性成分とを振動式攪拌混合装置40のケーシング41内に流入口31から供給し、ケーシング41のジャケット34に位置する混合室47内で乳化分散し、得られた流動体を、上下に振動する攪拌体44によりジャケット35,36,37に対応する位置へ順次押し上げ、ケーシング41内を通過させることで連続的に冷却する。このようにして、流動体は連続的に冷却されるので、冷却工程中において乳化滴の合一が抑制され、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感の油中水型乳化化粧料を製造することができる。
【0053】
なお、第2実施形態の方法においては、油性成分及び水性成分を、ケーシング41のジャケット34側に位置する共通の流入口31からケーシング41内に供給しているが、油性成分及び水性成分それぞれを、ジャケット34に位置する別々の流入口からケーシング41内に供給してもよい。
【0054】
以上の第1実施形態及び第2実施形態の方法によって製造された化粧料は、油中水型乳化ファンデーションとして用いられ、シミ、ソバカス、色むら、毛穴などの肌の欠点に対して高いカバー力を有し、肌なじみが良く、撥水性、耐水性、耐汗性等の使用感がよく、保存安定性がよいものである。
【0055】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、振動式攪拌混合装置40を一台用いたが、これに代えて、図6に示すように、振動型攪拌混合装置40、40'を2台以上直列に連結して使用することができる。この場合、下流側に位置する2台目の振動型攪拌混合装置40'の途中から、熱に弱い成分等を供給することで、ワックスが固化するまでの攪拌条件と該成分の混合条件等をそれぞれ別個に適切に選択することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0057】
〔実施例1〜実施例4〕
表1の組成を有するクリームファンデーションを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜9の成分を80℃で加熱混合した後、14〜19の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。10〜13の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化し、W/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表2に示す振動数であった。振動式攪拌混合装置の総振動量も、各実施例で異なっており、表2に示す総振動量であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
〔実施例4の2〕
表3の組成を有するクリームファンデーションを、図1に示す装置を用いて調製した。1〜8の成分を80℃で加熱混合した後、13〜18の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。9〜12の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物を得た。このW/O乳化物を更に連続式ホモミキサーへ定量ポンプで供給し、連続的に再乳化分散を行った。そのW/O乳化物を、そのまま連続的に振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0061】
〔実施例4の3〕
表3の組成を有するクリームファンデーションを、図4に示す装置を用いて調製した。1〜8の成分を80℃で加熱混合した後、13〜18の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜18の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に9〜12の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、連続式ホモミキサーへ定量ポンプで供給し、連続的に乳化分散を行いW/O乳化物を得た。このW/O乳化物を、そのまま連続的に振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0062】
〔実施例4の4〕
表3の組成を有するクリームファンデーションを、図5に示す装置を用いて調製した。1〜8の成分を80℃で加熱混合した後、13〜18の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜18の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に9〜12の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、共通の流入口31から振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで直接供給し、連続的に装置内で乳化分散を行いながら、そのまま連続的に装置内で攪拌しながら30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット34の温度は80℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.5℃/secであった。
【0063】
【表3】
【0064】
〔比較例1〕
前記表1の組成を有するクリームファンデーションを調製した。1〜9の成分を80℃で加熱混合した後、14〜19の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。10〜13の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をホモミキサーで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0065】
〔評価〕
(乳化粒径)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションを、スライドガラスに滴下し、乳化滴を潰さないようにカバーガラスで挟み、光学顕微鏡で観察し、ノギスを用いて乳化粒径を測定し、n=100の平均値を求めた。得られた結果を表2に示す。また、振動式攪拌混合装置の総振動量と乳化粒径との関係を図7に示す。
【0066】
(使用感)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションについて、実際に使用してもらい、クリーミーな使用感について評価した。評価基準は以下の通りである。得られた結果を表2に示す。
◎:非常に良い
○:良い
△:普通
×:悪い
【0067】
(明度)
実施例1〜実施例4の4で得られたクリームファンデーションについて、色差計(日本電色工業(株) NF333)を用いて、明度(L*値)を測定した。n=5の平均値を求め、得られた結果を表2に示す。また、振動式攪拌混合装置の総振動量と明度(L*値)との関係を図9に示す。
【0068】
(粘度)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションについて、振動式攪拌混合装置の導入前の温度での粘度と吐出後のクリームファンデーションの30℃における粘度を測定した。レオメーター(PHYSICA社製 MCR300)を用いて、剪断速度:100S-1での粘度を測定した結果を表2に示す。また、振動式攪拌混合装置の総振動量と粘度との関係を図8に示す。
【0069】
(安定性)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションを蓋付きのガラス容器で保存し、室温で1ヶ月静置保存後の様子を、以下の基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:全く離水していない
○:若干離水している
×:離水している
また、実施例3及び比較例1で得られたクリームファンデーションを25℃に冷却した際の乳化滴の光学顕微鏡像を図10(a)及び図10(b)に示す。また、実施例3及び比較例1で得られたクリームファンデーションを室温で1ヶ月静置保存後の乳化滴の光学顕微鏡像を図11(a)及び図11(b)に示す。
【0070】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜実施例4の4で得られたクリームファンデーションは、比較例1で得られたものよりも、乳化粒子が小さく、またクリームファンデーションとしての特性に優れていることが判る。図7及び図8の結果から、総振動量が大きくなるほど、乳化粒径が小さく、粘度が高くなり、クリーミーな感触が得られることが判る。図9の結果から、総振動量が大きくなるほど、明度(L*値)が高くなり、明るい外観色が得られることが判る。図10及び図11の結果から、実施例3で得られたクリームファンデーションでは、冷却中の乳化滴の合一を抑制することができ、1ヶ月経過後の安定性が良いことが判る。(図示していないが、実施例1、2、4〜4の4においても、1ヶ月保存後の乳化滴の合一が抑制できていた。)
【0071】
〔実施例5〜実施例8〕
表4の組成を有する化粧下地を、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜6の成分を75℃で加熱混合した後、7〜14の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。15〜17の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、化粧下地を得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は75℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表5に示す振動数であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
〔比較例2〕
前記表4の組成を有する化粧下地を調製した。1〜6の成分を75℃で加熱混合した後、7〜14の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。15〜17の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、化粧下地を得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0075】
〔評価〕
実施例5〜実施例8並びに比較例2で得られた化粧下地について、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価した。得られた結果を表5に示す。
【0076】
(仕上がり)
実施例5〜実施例8並びに比較例2で得られた化粧下地について、実際に使用してもらい、仕上がり具合について評価した。評価基準は以下の通りである。得られた結果を表5に示す。
◎:非常に良い
○:良い
△:普通
×:悪い
【0077】
表5に示す結果から明らかなように、実施例5〜実施例8で得られた化粧下は、比較例2で得られたものよりも、化粧下地としての特性に優れていることが判る。また、振動数が大きくなるほど、その傾向が優れていることが判る。
【0078】
〔実施例9〜実施例12〕
表6の組成を有する液状乳化アイシャドウを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜7の成分を75℃で加熱混合した後、8〜11の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。12〜15の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、液状乳化アイシャドウを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は75℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表7に示す振動数であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
〔比較例3〕
前記表6の組成を有する液状乳化アイシャドウを調製した。1〜7の成分を75℃で加熱混合した後、8〜11の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。12〜15の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、液状乳化アイシャドウを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0082】
〔評価〕
実施例9〜実施例12並びに比較例3で得られた液状乳化アイシャドウについて、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価し、実施例5と同様に、仕上がりについて評価した。得られた結果を表7に示す。
【0083】
表7に示す結果から明らかなように、実施例9〜実施例12で得られた液状乳化アイシャドウは、比較例3で得られたものよりも、液状乳化アイシャドウとしての特性に優れていることが判る。また、振動数が大きくなるほど、その傾向が優れていることが判る。
【0084】
〔実施例13〜実施例16〕
表8の組成を有する乳液状日焼け止めを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜6の成分を80℃で加熱混合した後、7〜8の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。9〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、乳液状日焼け止めを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は5℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表9に示す振動数であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
〔比較例4〕
前記表8の組成を有する乳液状日焼け止めを調製した。1〜6の成分を80℃で加熱混合した後、7〜8の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。9〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、乳液状日焼け止めを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0088】
〔評価〕
実施例13〜実施例16並びに比較例4で得られた乳液状日焼け止めについて、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価した。得られた結果を表9に示す。
【0089】
表9に示す結果から明らかなように、実施例13〜実施例16で得られた乳液状日焼け止めは、比較例4で得られたものよりも、乳液状日焼け止めとしての特性に優れていることが判る。また、振動数が大きくなるほど、その傾向が優れていることが判る。
【0090】
〔実施例17〕
表10の組成を有する化粧クリームを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。8〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、化粧クリームを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は5℃、ジャケット36の温度は5℃、ジャケット37の温度は5℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0091】
〔実施例18〕
表10の組成を有する化粧クリームを、図4に示す装置を用いて調製した。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜17の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に8〜11の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、連続式ホモミキサーへ定量ポンプで供給し、連続的に乳化分散を行いW/O乳化物を得た。このW/O乳化物を、そのまま連続的に振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、化粧クリームを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0092】
〔実施例19〕
表10の組成を有する化粧クリームを、図5に示す装置を用いて調製した。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜17の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に8〜11の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、共通の流入口31から振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで直接供給し、連続的に装置内で乳化分散を行いながら、そのまま連続的に装置内で攪拌しながら30℃以下まで冷却し、化粧クリームを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット34の温度は80℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.6℃/secであった。
【0093】
【表10】
【0094】
【表11】
【0095】
〔比較例5〕
表10の組成を有する化粧クリームを調製した。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。8〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、化粧クリームを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0096】
〔評価〕
実施例17〜実施例19並びに比較例5で得られた化粧クリームについて、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価した。得られた結果を表11に示す。
【0097】
表11に示す結果から明らかなように、実施例17〜実施例19で得られた化粧クリームは、比較例5で得られたものよりも、化粧クリームとしての特性に優れていることが判る。
【符号の説明】
【0098】
10 装置
20 加熱混合部
30 冷却部
40 振動式攪拌混合装置
41 ケーシング
42 駆動軸
43 攪拌羽根
44 攪拌体
50 連続式分散装置
60 加熱混合機
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス等の油性成分に水性成分を添加した油中水型乳化化粧料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品は、一般に人の身体の外観を美しくするために用いられる。特にファンデーションのような化粧品は、シミ、ソバカス、色むら、毛穴などの肌の欠点を、粉体などによってカバーし、肌を美しく見せることを目的として用いられる。中でも油中水型乳化ファンデーションは、高いカバー力を有し、肌なじみが良く、撥水性、耐水性、耐汗性が得られやすいことが知られている。
【0003】
近年、化粧持続性をさらに向上させるため、ワックス等の油性成分の配合量が増加する傾向にあり、ワックス等の油性成分を配合する場合、加熱下で配合する必要がある。例えば、特許文献1には、加熱溶融した油性成分に、水性成分を添加して乳化した後、プロペラで撹拌しながら冷却後、ホモミキサーを用いて撹拌する技術が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、加熱下で乳化分散して得られた流動体を、プロペラで撹拌しながら冷却する工程において、より質の高い化粧品の製造に求められる性能として不十分であった。
【0005】
特許文献2には、乳化分散したエマルジョンの製造の際に使用する振動式攪拌混合装置に関する技術が記載されている。特許文献2に記載の振動式攪拌混合装置は、ケーシングの内側に熱交換パイプを備え、該ケーシング内を通過させることでエマルジョンを均一に冷却することができることについて記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2には、一般的なエマルジョンについて記載されているに過ぎず、具体的な油中水型乳化化粧料の製造方法について何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−176825号公報
【特許文献2】特開2002−139296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、上述した問題を解消し、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーで使用感が良く、保存安定性に優れた油中水型乳化化粧料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、該振動式攪拌混合装置内を通過させることで前記流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散し、それによって得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、前記水性成分及び加熱された前記油性成分を前記振動式攪拌混合装置に供給して乳化分散させながら該振動式攪拌混合装置内を通過させ、乳化分散して得られた前記流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を連続的に冷却しても、冷却工程中において乳化滴の合一が抑制され、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感で、保存安定性の優れた油中水型乳化化粧料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の製造方法を実施する好適な装置を示す概略図である。
【図2】図1に示す振動式攪拌混合装置の縦断面の模式図である。
【図3】図1に示す振動式攪拌混合装置における攪拌体の要部拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態の製造方法を実施する好適な装置を示す概略図である。
【図6】本発明の第1実施形態又は第2実施形態の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【図7】実施例1〜4の4及び比較例1で得られたクリームファンデーションにおける総振動量と乳化粒径との関係を示した図である。
【図8】実施例1〜4の4及び比較例1で得られたクリームファンデーションにおける総振動量と粘度との関係を示した図である。
【図9】実施例1〜4の4及び比較例1で得られたクリームファンデーションにおける総振動量と明度との関係を示した図である。
【図10】(a)は、実施例3で得られたクリームファンデーションを25℃に冷却した際の乳化滴の光学顕微鏡像であり、(b)は、比較例1で得られたクリームファンデーションを25℃に冷却した際の乳化滴の光学顕微鏡像である。
【図11】(a)は、実施例3で得られたクリームファンデーションを室温で1ヶ月静置保存後の乳化滴の光学顕微鏡像であり、(b)は、比較例1で得られたクリームファンデーションを室温で1ヶ月静置保存後の乳化滴の光学顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の第1実施形態に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図1に示す装置10は、加熱混合部20及び冷却部30に大別される。加熱混合部20には、目的とする化粧料の配合原料のすべて又は一部が充填され、充填された原料を加熱下に混合するために用いられるものである。冷却部30は、加熱混合された混合物を冷却し、目的とする化粧料を得るために用いられるものである。
【0014】
加熱混合部20は高速剪断混合装置21を備えている。高速剪断混合機21は混合タンク22を備えている。混合タンク22は、ジャケット23によって加熱され、所定温度に調整される。混合タンク22内には攪拌翼24が複数個設置されている。複数個の攪拌翼24は、シャフト25の上下方向に間欠的に配されている。攪拌翼24は、シャフト25を介して混合タンク22外に設置されたモータ26に接続されており、回転可能になっている。混合タンク22の底部には、該タンク22内で混合された流動体を取り出すための管27が接続されている。管27は弁を介してモーノポンプ(商品名 兵神装備(株)製)等からなる定量ポンプ28に接続されている。定量ポンプ28は、管29を通じて流動体を冷却部30に定量供給するために用いられる。
【0015】
以上のとおりの構成を有する高速剪断混合装置21としては、プライミクス(株)製のTKコンビミックス(商品名)、プライミクス(株)製のTKアヂホモミクサ(商品名)等が挙げられる。これらの撹拌装置は、主に単独で使用するが、場合によっては2種以上を組み合わせて適宜使用してもよい(図4参照)。
【0016】
冷却部30は、振動式攪拌混合装置40を備えている。振動式攪拌混合装置40は、略筒状の構造を有し、その一端側に、管29に接続された流入口31を有し、他端側に吐出口32を有している。吐出口32は吐出用管33に接続されている。加熱混合部20から供給された流動体は、流入口31を通じて振動式攪拌混合装置40内に供給され、該装置40内を通過し、吐出口32を通じて吐出用管33の端部から吐出される。該流動体は、振動式攪拌混合装置40内を通過する間に、更に混合されると共に連続的に冷却される。連続的な冷却を行うために、振動式攪拌混合装置には、冷却水の循環する冷却ジャケットを備えていることが好ましく、振動式攪拌混合装置40には、流入口31側から吐出口32側に向けて4つのジャケット34,35,36,37がこの順で取り付けられている。各ジャケットにはそれぞれ冷却水が循環するようになっている。冷却水の温度は、適宣設定することが可能であり、これらのジャケットによって、流動体を流入口31側から吐出口32側に向けて連続的又は段階的に冷却することができる。
【0017】
図2には、振動式攪拌混合装置40の縦断面の模式図が示されている。装置40は、管状のケーシング41内に、駆動軸42と、該駆動軸42に取り付けられた攪拌羽根43とからなる攪拌体44を備えている。駆動軸42は、バイブレータ45aに接続されており、バイブレータ45aによって軸方向に沿って上下振動するようになされている。
【0018】
ケーシング41は、その横断面が円形である管状のものであり、その下部付近に流入口31が設けられている。ケーシング41の上部付近には吐出口32が設けられている。流入口31から流入した混合物は、ケーシング41内を通り、吐出口32から吐出される。
【0019】
ケーシング41内には、上述の攪拌体44が配されている。攪拌体44の駆動軸42は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に延びている。駆動軸42の上端は、ジョイント45bを介してバイブレータ45aに接続されている。バイブレータ45aは、モータ(図示せず)とその出力軸に接続された公知のカム機構(図示せず)を備えている。カム機構は、回転部(図示せず)と揺動部(図示せず)からなる。回転部は、モータの出力軸に対して偏心して取り付けられている。揺動部は、回転部の偏心回転によって揺動するようになっている。そして、揺動部の揺動が駆動軸42に上下振動として伝達される。
【0020】
ケーシング41の内壁には、円環状の仕切部46が複数設けられている。仕切部46は何れも同形であり、ケーシング41の内壁から水平方向へ突出している。仕切部46の中央に形成された円孔には、駆動軸42が挿入される。この円孔の直径は、駆動軸42の直径よりも大きくなっている。隣り合う2つの仕切部によってケーシング41の内部は複数の混合室47が画成される。混合室47は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に沿って直列配置される。
【0021】
図3(a)及び(b)には、攪拌体44の要部拡大図が示されている。攪拌体44は、駆動軸42とその周面に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根43とを備えている。同図においては、攪拌羽根43は3周の螺旋状に取り付けられている。この状態の攪拌体44を一組として、ケーシング内には、各混合室47内に攪拌体44が配されている。したがって攪拌体44の組数は、混合室47の数と同じになっている。それぞれの組の攪拌体44において、攪拌羽根43の螺旋の方向は同じになっている。
【0022】
それぞれの組の攪拌体44における攪拌羽根43には1個以上の開孔48及び/又は1個以上の切り欠き49が設けられている。開孔48及び切り欠き49は、 攪拌体44を駆動軸42の軸心方向からみたときに(図3(a)参照)、上下で隣り合う攪拌羽根どうしで形成位置が一致しないように設けられている。この理由は、軸方向での短絡流の発生を防止して、攪拌混合効果を高めるためである。
【0023】
以上のとおりの構成を有する振動式攪拌混合装置40としては、例えば特開平4−235729号公報に記載のもの等を用いることができる。また振動式攪拌混合装置40として市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えば冷化工業(株)製のバイブロミキサー(登録商標)に冷却ジャケットを備えた装置が挙げられる。
【0024】
以上の構成を有する装置10を用いた油中水型乳化化粧料の製造方法について説明すると、先ず高速剪断混合装置21の混合タンク22内に目的とする化粧料の配合原料のすべて又は一部を充填する。化粧料の配合原料の一部を充填する場合には、該配合原料の残部は、後述するように、振動式攪拌混合装置40の途中から供給することができる。
【0025】
高速剪断混合装置21を2種以上設けた場合(図4参照)には、上流側の高速剪断混合装置21に化粧料の配合原料のすべてを充填してもよいし、各高速剪断混合装置21に、化粧料の配合原料を一部ずつ充填してもよい。例えば、一部ずつ充填することにより配合原料の各成分の混合条件等をそれぞれ別個に適切に調整することができる。
【0026】
混合タンク22に充填される第1の配合原料には、25℃において固体である油性成分が含まれていることが好ましい。油性成分は第1の配合原料中に1種類以上含まれていることが好ましい。配合原料のすべてを充填する場合には、混合タンク22に油性成分を1種以上含む第1の配合原料の充填が完了したら、混合タンク22をジャケット23により加熱して第1の配合原料中に含まれている油性成分を溶融状態にする。加熱温度は、油性成分の融点に応じて適宜設定することができる。一般的には最も融点の高い油性成分の融点よりも10℃程度高めに設定することが好ましい。加熱によって油性成分が溶融混合した状態下に、水性成分が含まれている第2の配合原料を添加し、この状態下において攪拌翼24を回転させることで攪拌し、全配合原料を十分に乳化分散させて得られたものが流動体となる。得られた流動体は、油中水型(W/O型)乳化物である。
【0027】
混合タンク22内で、第1の配合原料と第2の配合原料を混合することに代えて、第1の配合原料及び第2の配合原料を、予めディスパーやホモミキサー等を用いて加熱下で混合乳化して流動体となし、その流動体を混合タンク22に導入してもよい。
【0028】
全配合原料が十分に乳化分散したら、混合タンク22の底部に取り付けられた弁を開き、混合タンク22内の流動体を取り出す。流動体は定量ポンプ28に導入され、その一定量が振動式攪拌混合装置40に供給される。また、定量ポンプ28には、該流動体が振動式攪拌混合装置40内を通過するための押し出し圧力源としての働きもある。振動型攪拌装置40へ導入される流動体の粘度は、導入される温度において、せん断速度が100S-1のとき、1〜10000mPa・s、特に10〜1000mPa・sであることが好ましい。
【0029】
また、図1に示すように、混合タンク22で得られた流動体を直接に振動式攪拌混合装置40へ供給することに加えて、振動式攪拌混合装置40へ供給する前に、定量ポンプ28でインラインホモミキサーやマイルダー等の連続式分散装置50に更に供給し、連続的に再度乳化分散を行った後に振動式攪拌混合装置40へ供給してもよい。このように再乳化分散を行うことにより油性成分が一層微細に分散した流動体を得ることができる。
【0030】
また、図4に示すように、高速剪断混合装置21を2種設けた場合には、一方の高速剪断混合装置21に油性成分が含まれている第1の配合原料を充填し、他方の高速剪断混合装置21’に水性成分が含まれている第2の配合原料を充填し、一方の高速剪断混合装置21の油性成分及び他方の高速剪断混合装置21’の水性成分それぞれを、それぞれの定量ポンプ28,28’で連続式分散装置50に供給して、乳化分散させ、得られた流動体を振動式攪拌混合装置40へ供給してもよい。このように油性成分と水性成分を別々の高速剪断混合装置21,21’で予め混合したものを連続式分散装置50に供給して連続的に乳化分散することによって、顔料が配合されている場合、顔料凝集が抑えられ、外観の明度が向上する。
【0031】
振動式攪拌混合装置40には、上述のとおり冷却ジャケットとして4つのジャケット34,35,36,37が取り付けられている。冷却ジャケットは、図2に示す筒状のケーシング41を覆うように配置されていることが好ましく、4つのジャケット34,35,36,37は、図1、図2に示すように、筒状のケーシング41を覆うようにケーシング41の外側に配置されている。それぞれのジャケットには、所定温度の冷却水が循環しており、流動体をケーシング41内に通過させることにより、冷却のための熱交換が行われる。このようにジャケットをケーシング41の外側に配置することにより、流動体を効率良く冷却可能であり、得られる乳化物の品質も良く、また、振動式攪拌混合装置の分解洗浄も簡便である。
【0032】
第1の配合原料が25℃において固体である油性成分を含んでいる流動体の場合には、振動式攪拌混合装置40内を通過する間に、流動体が更に混合されると共に、25℃において固体である油性成分の固化温度以下まで冷却されることが好ましく、例えば、ジャケット34には熱水が循環し約90℃に保たれており、ジャケット35は約45〜50℃に保たれている。残りの二つのジャケット36,37は何れも0〜10℃に保たれている。つまり振動式攪拌混合装置40には、その流入口31側から吐出口32側に向けて低下する温度勾配が設けられている。
【0033】
振動式攪拌混合装置40においては、攪拌体44がその軸方向に沿って上下に振動することで、ケーシング41内を通過する流動体が攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合される。ジャケット34に対応する位置に存在する流動体は、該ジャケット34が約90℃に保たれていることから流動性が高い状態になっているので、攪拌体44の振動によって混合が促進されて、上述の混合タンク22内での混合に引き続き再分散が行われる。
【0034】
次いで流動体は、ジャケット35に対応する位置まで押し出される。この位置の温度は、ジャケット34に対応する位置の温度よりも低いので、流動体は冷却されて、その流動性が低下する。この場合、流動体は、攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合されながら冷却されるので、冷却むらが生じにくくなる。また振動式攪拌混合装置40内にはデッドスペースが殆ど存在しないので、攪拌むらが生じにくい。振動式攪拌混合装置40は、流動体の流動性が高い場合でも低い場合でも良好な攪拌混合を行うことができる。振動式攪拌混合装置40は、発熱量が小さいので、油性成分の粒子を良好に分散させることが可能である。発熱量が小さいことは、温度制御が容易であるという点からも有利である。
【0035】
ジャケット35に対応する位置で冷却された流動体は、次いでジャケット36,37に対応する位置へ順次押し出され、当該位置で更に冷却される。このようにして、流動体は連続的に冷却されるので、冷却工程中において乳化滴の合一が抑制され、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感で、特に、25℃で固体の油性成分を含んでいる場合、保存安定性の優れた油中水型乳化化粧料を製造することができる。目的とする化粧料は、振動式攪拌混合装置40の吐出口32を経て吐出用管33から吐出される。この状態での化粧料の温度は約30℃となる。振動型攪拌装置40から吐出される化粧料の粘度は、吐出される温度において、せん断速度が100S-1のとき100〜500000mPa・s、特に1000〜100000mPa・sであることが好ましい。振動型攪拌装置40へ導入される流動体の粘度に対する吐出される化粧料の粘度比(吐出粘度/導入粘度)は、10〜10000であることが好ましい。
【0036】
なお、目的とする化粧料中に熱に弱い成分が含まれている場合や、熱により化粧料に悪影響を与える成分が含まれている場合には、当該成分を混合タンク22へ充填せず、振動式攪拌混合装置40の途中の位置から該装置40内に供給することで、熱に起因する不都合を回避することが可能である。例えば、ジャケット35に対応する位置においては、流動体はある程度冷却されているので、定量ポンプを用いて当該位置に、熱に弱い成分や熱により化粧料に悪影響を与える成分を供給することで、熱に起因する不都合を回避できる。振動式攪拌混合装置40による流動体の攪拌混合は、ほぼピストンフローなので、該装置40の途中から前記の成分を供給しても、該成分と流動体との混合を首尾良く行うことができる。前記の成分としては、例えば、後述する第1の配合原料に含まれる、ある種の活性剤、揮発成分、ラテックス、香料、植物性エキス、ワックス微分散物などの、温度変化しやすい成分が挙げられる。かかる成分の供給のために、振動式攪拌混合装置40の途中に補助注入口を1ヶ所又は複数設けることができる。
【0037】
振動式攪拌混合装置40を用いた冷却においては、平均冷却速度を0.1〜5℃/secに設定することが好ましく、特に0.2〜2.5℃/secに設定することが好ましい。平均冷却速度は、振動式攪拌混合装置40に流動体が入ったときの温度と出たときの温度の差を滞留時間で除した値である。また、振動式攪拌混合装置40の振動数は5〜30ストローク/secの範囲が好ましく、特に、10〜30ストローク/secの範囲が好ましい。振動式攪拌混合装置40の振幅は4〜15mmであることが好ましい。更に、振動式攪拌混合装置40で冷却される間に与えられる総振動量は、50〜100000ストローク、特に200〜20000ストロークであることが好ましい。
【0038】
このようにして得られた化粧料は、W/Oエマルジョンからなる乳化化粧料であり、その乳化粒径は、10μm未満であることが好ましく特に、5μm以下であることが好ましい。10μm以下であれば、乳化粒が微細に分散されているので、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感で、保存安定性の優れた油中水型乳化化粧品となる。
【0039】
次に、本発明で製造される化粧料の原料について説明する。第1の配合原料は、上述のとおり、25℃において固体である油性成分を少なくとも1種以上含んでいることが好ましい。25℃において固体である油性成分の総含有量は、使用感と化粧持ちの観点から全配合原料中に、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%含有されていることが好ましい。加熱下で溶融混合した油性成分に添加される水性成分は、使用感の観点から全配合原料中に、1〜80質量%、特に、30〜60質量%含有されていることが好ましい。
【0040】
第1の配合原料に含まれる油性成分としては、一般に化粧料に使用される液状、半固体及び固体状の何れでもよく、また合成及び天然由来の何れでもよい。例えば、炭化水素油、エステル油、動植物油、脂肪酸、高級アルコール、エーテル油、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。
【0041】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等が挙げられる。脂肪酸エステル油としては、オクタン酸イソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジグリセライド等が挙げられる。植物油としては、オリーブ油、大豆油、ヒマシ油等が挙げられる。動物性油としては、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。高級アルコールとしては、セタノール、ステアリルアルコール等が挙げられる。シリコーン油としては、揮発性及び不揮発性のシリコーン油が含まれ、例えばジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アクリルシリコーン等が挙げられる。更に、フッ素油としては、フッ素エーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素変性シリコーンなどが挙げられる。
【0042】
第1の配合原料に含まれる、25℃において固体である油性成分としては、ワックス、長鎖の疎水性脂肪酸やそのエステル等のワックス代用品が挙げられる。本発明においては、このワックス又はワックス代用品を1種以上含んでいることが好ましく、全配合原料中に含有されるワックス又はワックス代用品を含めた油性成分の量は、10〜80質量%、特に20〜60質量%、更に25〜55質量%であることが好ましい。
【0043】
ワックスとしては、固体/液体の可逆変化をし、30〜150℃の融点を有するものを広く包含する。ワックスの融点は、好ましくは45〜150℃、特に好ましくは50〜150℃である。ワックスの例としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、セレシン、カル ナウバロウ、ライスワックス、ホホバワックス、キャンデリラロウ、鯨ロウ、天然又は合成の蜜蝋(例えばリポケミカル社のリポワックス6138G(登録商標))、雪ロウ等が挙げられる。
【0044】
ワックス代用品としては、例えばC18〜C36脂肪酸(例えばクロダケミカル社のシンクロワックスAW1C(登録商標))、C10〜C36脂肪酸トリグリセリド(例えばオクタン酸/ドデカン酸‐トリグリセリド)、硬化ココ脂肪酸グリセリド(例えばヒェールスAG社のソフチサン100(登録商標))、グリセリルトリベヘネート(例えばクロダケミカル社のシンクロワックスHRC(登録商標))、脂肪酸エステル混合物(例えばヘンケルKGaA社のクチナBW(登録商標))、並びにこれらの混合物等が挙げられる。特に好ましいものとしては、ホホバ油、脂肪酸エステル、パラフィン油、脂肪酸エステルとパラフィン油から成る配合物、並びに脂肪酸エステル及び/又はパラフィン油とワセリンとから成る配合物等が挙げられる。
【0045】
第1の配合原料には、上記油性成分以外に、乳化剤として化粧品一般に用いられる、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を含めることができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、セチルジメチコンコポリオール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンセスキオレエート、モノオレイン酸ジグリセリル等を挙げることができる。界面活性剤は、全配合原料中に、0.1〜10質量%、特に0.2〜5質量%含有されていることが好ましい。
【0046】
第1の配合原料には、更に、色素、着色剤、高分子ポリマー等を含めることができる。色素や着色剤等を含有した流動体を振動式攪拌混合装置40によって撹拌することにより、色素や着色剤等が均一に分散するため、製造された化粧料は、外観色の彩度が高くなる。前記着色剤としては、化粧料に通常使用される成分、例えば、コンジョウ、群青、ベンガラ、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、カーボンブラック、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイトなどの無機粉体;雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体などが挙げられる。これらの粉体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
第2の配合原料に含まれる水性成分としては、水を主成分とするものであり、水以外の水性成分としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールのほか、通常化粧料に用いられる水溶性の成分等が挙げられる。
【0048】
更に、本発明においては、第1の配合原料又は第2の配合原料に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、糖類、アミノ酸類、セラミド類及びセラミド類似構造物質等の保湿剤;ビタミン類、核酸類、植物抽出物等の生理活性成分;増粘剤、分散剤、安定化剤、着香剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等を含有させることができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法について、図5に基づいて説明する。
第2実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法については、第1実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法と同様であり、第1実施形態の油中水型乳化化粧料の製造方法の説明が適宜適用される。
【0050】
図5には、本発明の第2実施形態の方法に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図5に示す装置10は、加熱混合部20及び冷却部30に大別される。第2実施形態の方法における加熱混合部20には、油性成分を含む第1の配合原料のみが供給され、水性成分を含む第2の配合原料は、加熱混合部20とは別の加熱混合機60で加熱混合される。冷却部30の備える振動式攪拌混合装置40は、加熱混合部20と管29で繋がっており、加熱混合機60と管29’で繋がっている。振動式攪拌混合装置40には、溶融状態にした油性成分が管29を通って流入口31から供給されると共に、水性成分が管29’を通って流入口31から供給される。
【0051】
以上の構成を有する装置10を用いた油中水型乳化化粧料の製造方法について説明すると、加熱混合部20の備える高速剪断混合装置21の混合タンク22内に油性成分を含む第1の配合原料のみを充填する。第1の配合原料の充填が完了したら、混合タンク22をジャケット23により加熱して第1の配合原料中に含まれている油性成分を溶融状態にする。第1の配合原料が十分に溶融したら、混合タンク22の底部に取り付けられた弁を開き、定量ポンプ28に導入し、その一定量を管29を通して振動式攪拌混合装置40に供給する。
【0052】
加熱混合部20とは別の加熱混合機60に、水性成分が含まれている第2の配合原料を充填し加熱混合しておき、油性成分を振動式攪拌混合装置40の流入口31に供給すると共に、第2の配合原料の一定量を定量ポンプ28’により管29’を通して流入口31に供給し、振動式攪拌混合装置40の内部で乳化分散させながら振動式攪拌混合装置40内を通過させ、得られた流動体を連続的に冷却する。具体的には、加熱状態の油性成分と、水性成分とを振動式攪拌混合装置40のケーシング41内に流入口31から供給し、ケーシング41のジャケット34に位置する混合室47内で乳化分散し、得られた流動体を、上下に振動する攪拌体44によりジャケット35,36,37に対応する位置へ順次押し上げ、ケーシング41内を通過させることで連続的に冷却する。このようにして、流動体は連続的に冷却されるので、冷却工程中において乳化滴の合一が抑制され、外観色の明度が高く、乳化粒径が細かくクリーミーな使用感の油中水型乳化化粧料を製造することができる。
【0053】
なお、第2実施形態の方法においては、油性成分及び水性成分を、ケーシング41のジャケット34側に位置する共通の流入口31からケーシング41内に供給しているが、油性成分及び水性成分それぞれを、ジャケット34に位置する別々の流入口からケーシング41内に供給してもよい。
【0054】
以上の第1実施形態及び第2実施形態の方法によって製造された化粧料は、油中水型乳化ファンデーションとして用いられ、シミ、ソバカス、色むら、毛穴などの肌の欠点に対して高いカバー力を有し、肌なじみが良く、撥水性、耐水性、耐汗性等の使用感がよく、保存安定性がよいものである。
【0055】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、振動式攪拌混合装置40を一台用いたが、これに代えて、図6に示すように、振動型攪拌混合装置40、40'を2台以上直列に連結して使用することができる。この場合、下流側に位置する2台目の振動型攪拌混合装置40'の途中から、熱に弱い成分等を供給することで、ワックスが固化するまでの攪拌条件と該成分の混合条件等をそれぞれ別個に適切に選択することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0057】
〔実施例1〜実施例4〕
表1の組成を有するクリームファンデーションを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜9の成分を80℃で加熱混合した後、14〜19の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。10〜13の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化し、W/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表2に示す振動数であった。振動式攪拌混合装置の総振動量も、各実施例で異なっており、表2に示す総振動量であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
〔実施例4の2〕
表3の組成を有するクリームファンデーションを、図1に示す装置を用いて調製した。1〜8の成分を80℃で加熱混合した後、13〜18の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。9〜12の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物を得た。このW/O乳化物を更に連続式ホモミキサーへ定量ポンプで供給し、連続的に再乳化分散を行った。そのW/O乳化物を、そのまま連続的に振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0061】
〔実施例4の3〕
表3の組成を有するクリームファンデーションを、図4に示す装置を用いて調製した。1〜8の成分を80℃で加熱混合した後、13〜18の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜18の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に9〜12の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、連続式ホモミキサーへ定量ポンプで供給し、連続的に乳化分散を行いW/O乳化物を得た。このW/O乳化物を、そのまま連続的に振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0062】
〔実施例4の4〕
表3の組成を有するクリームファンデーションを、図5に示す装置を用いて調製した。1〜8の成分を80℃で加熱混合した後、13〜18の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜18の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に9〜12の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、共通の流入口31から振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで直接供給し、連続的に装置内で乳化分散を行いながら、そのまま連続的に装置内で攪拌しながら30℃以下まで冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット34の温度は80℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.5℃/secであった。
【0063】
【表3】
【0064】
〔比較例1〕
前記表1の組成を有するクリームファンデーションを調製した。1〜9の成分を80℃で加熱混合した後、14〜19の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。10〜13の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をホモミキサーで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、W/O乳化ファンデーションを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0065】
〔評価〕
(乳化粒径)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションを、スライドガラスに滴下し、乳化滴を潰さないようにカバーガラスで挟み、光学顕微鏡で観察し、ノギスを用いて乳化粒径を測定し、n=100の平均値を求めた。得られた結果を表2に示す。また、振動式攪拌混合装置の総振動量と乳化粒径との関係を図7に示す。
【0066】
(使用感)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションについて、実際に使用してもらい、クリーミーな使用感について評価した。評価基準は以下の通りである。得られた結果を表2に示す。
◎:非常に良い
○:良い
△:普通
×:悪い
【0067】
(明度)
実施例1〜実施例4の4で得られたクリームファンデーションについて、色差計(日本電色工業(株) NF333)を用いて、明度(L*値)を測定した。n=5の平均値を求め、得られた結果を表2に示す。また、振動式攪拌混合装置の総振動量と明度(L*値)との関係を図9に示す。
【0068】
(粘度)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションについて、振動式攪拌混合装置の導入前の温度での粘度と吐出後のクリームファンデーションの30℃における粘度を測定した。レオメーター(PHYSICA社製 MCR300)を用いて、剪断速度:100S-1での粘度を測定した結果を表2に示す。また、振動式攪拌混合装置の総振動量と粘度との関係を図8に示す。
【0069】
(安定性)
実施例1〜実施例4の4並びに比較例1で得られたクリームファンデーションを蓋付きのガラス容器で保存し、室温で1ヶ月静置保存後の様子を、以下の基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:全く離水していない
○:若干離水している
×:離水している
また、実施例3及び比較例1で得られたクリームファンデーションを25℃に冷却した際の乳化滴の光学顕微鏡像を図10(a)及び図10(b)に示す。また、実施例3及び比較例1で得られたクリームファンデーションを室温で1ヶ月静置保存後の乳化滴の光学顕微鏡像を図11(a)及び図11(b)に示す。
【0070】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜実施例4の4で得られたクリームファンデーションは、比較例1で得られたものよりも、乳化粒子が小さく、またクリームファンデーションとしての特性に優れていることが判る。図7及び図8の結果から、総振動量が大きくなるほど、乳化粒径が小さく、粘度が高くなり、クリーミーな感触が得られることが判る。図9の結果から、総振動量が大きくなるほど、明度(L*値)が高くなり、明るい外観色が得られることが判る。図10及び図11の結果から、実施例3で得られたクリームファンデーションでは、冷却中の乳化滴の合一を抑制することができ、1ヶ月経過後の安定性が良いことが判る。(図示していないが、実施例1、2、4〜4の4においても、1ヶ月保存後の乳化滴の合一が抑制できていた。)
【0071】
〔実施例5〜実施例8〕
表4の組成を有する化粧下地を、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜6の成分を75℃で加熱混合した後、7〜14の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。15〜17の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、化粧下地を得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は75℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表5に示す振動数であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
〔比較例2〕
前記表4の組成を有する化粧下地を調製した。1〜6の成分を75℃で加熱混合した後、7〜14の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。15〜17の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、化粧下地を得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0075】
〔評価〕
実施例5〜実施例8並びに比較例2で得られた化粧下地について、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価した。得られた結果を表5に示す。
【0076】
(仕上がり)
実施例5〜実施例8並びに比較例2で得られた化粧下地について、実際に使用してもらい、仕上がり具合について評価した。評価基準は以下の通りである。得られた結果を表5に示す。
◎:非常に良い
○:良い
△:普通
×:悪い
【0077】
表5に示す結果から明らかなように、実施例5〜実施例8で得られた化粧下は、比較例2で得られたものよりも、化粧下地としての特性に優れていることが判る。また、振動数が大きくなるほど、その傾向が優れていることが判る。
【0078】
〔実施例9〜実施例12〕
表6の組成を有する液状乳化アイシャドウを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜7の成分を75℃で加熱混合した後、8〜11の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。12〜15の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、液状乳化アイシャドウを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は75℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表7に示す振動数であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
〔比較例3〕
前記表6の組成を有する液状乳化アイシャドウを調製した。1〜7の成分を75℃で加熱混合した後、8〜11の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。12〜15の成分を75℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を75℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、液状乳化アイシャドウを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0082】
〔評価〕
実施例9〜実施例12並びに比較例3で得られた液状乳化アイシャドウについて、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価し、実施例5と同様に、仕上がりについて評価した。得られた結果を表7に示す。
【0083】
表7に示す結果から明らかなように、実施例9〜実施例12で得られた液状乳化アイシャドウは、比較例3で得られたものよりも、液状乳化アイシャドウとしての特性に優れていることが判る。また、振動数が大きくなるほど、その傾向が優れていることが判る。
【0084】
〔実施例13〜実施例16〕
表8の組成を有する乳液状日焼け止めを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜6の成分を80℃で加熱混合した後、7〜8の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。9〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、乳液状日焼け止めを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は5℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、各実施例で異なっており、表9に示す振動数であった。尚、振動式攪拌混合装置の振幅は、共通しており、5mmであった。
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
〔比較例4〕
前記表8の組成を有する乳液状日焼け止めを調製した。1〜6の成分を80℃で加熱混合した後、7〜8の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。9〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、乳液状日焼け止めを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0088】
〔評価〕
実施例13〜実施例16並びに比較例4で得られた乳液状日焼け止めについて、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価した。得られた結果を表9に示す。
【0089】
表9に示す結果から明らかなように、実施例13〜実施例16で得られた乳液状日焼け止めは、比較例4で得られたものよりも、乳液状日焼け止めとしての特性に優れていることが判る。また、振動数が大きくなるほど、その傾向が優れていることが判る。
【0090】
〔実施例17〕
表10の組成を有する化粧クリームを、図1に示す装置を用いて調製した(但し、連続式分散装置50は具備していない)。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。8〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、化粧クリームを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は5℃、ジャケット36の温度は5℃、ジャケット37の温度は5℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0091】
〔実施例18〕
表10の組成を有する化粧クリームを、図4に示す装置を用いて調製した。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜17の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に8〜11の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、連続式ホモミキサーへ定量ポンプで供給し、連続的に乳化分散を行いW/O乳化物を得た。このW/O乳化物を、そのまま連続的に振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ供給し、装置内で攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、化粧クリームを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。
【0092】
〔実施例19〕
表10の組成を有する化粧クリームを、図5に示す装置を用いて調製した。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。1〜17の成分を添加したホモミキサーとは別の加熱混合機に8〜11の成分を供給し80℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とをそれぞれ、共通の流入口31から振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで直接供給し、連続的に装置内で乳化分散を行いながら、そのまま連続的に装置内で攪拌しながら30℃以下まで冷却し、化粧クリームを得た。振動式攪拌混合装置において、ジャケット34の温度は80℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.6℃/secであった。
【0093】
【表10】
【0094】
【表11】
【0095】
〔比較例5〕
表10の組成を有する化粧クリームを調製した。1〜7の成分を80℃で加熱混合した後、16〜17の成分を添加しホモミキサーで分散して油相とした。8〜11の成分を80℃で加熱混合し水相とした。油相に水相を80℃で攪拌しながら添加しホモミキサーで乳化しW/O乳化物の流動体を得た。この流動体をプロペラで攪拌しながら冷却し、30℃以下まで攪拌しながら冷却し、最後にホモミキサー(2000rpm、5分)で攪拌して、化粧クリームを得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。
【0096】
〔評価〕
実施例17〜実施例19並びに比較例5で得られた化粧クリームについて、実施例1と同様に、使用感、安定性について評価した。得られた結果を表11に示す。
【0097】
表11に示す結果から明らかなように、実施例17〜実施例19で得られた化粧クリームは、比較例5で得られたものよりも、化粧クリームとしての特性に優れていることが判る。
【符号の説明】
【0098】
10 装置
20 加熱混合部
30 冷却部
40 振動式攪拌混合装置
41 ケーシング
42 駆動軸
43 攪拌羽根
44 攪拌体
50 連続式分散装置
60 加熱混合機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、該振動式攪拌混合装置内を通過させることで前記流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項2】
加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散する工程と、それによって得られた流動体を冷却する工程とを有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、前記水性成分及び加熱された前記油性成分を前記振動式攪拌混合装置に供給して乳化分散させながら該振動式攪拌混合装置内の一部を通過させ、乳化分散して得られた前記流動体を該振動式攪拌混合装置内の他の一部を通過させることで連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記油性成分が、25℃において固体の成分を含み、
前記流動体が、前記油性成分を1種以上含む第1の配合原料を加熱下で溶融させ、その状態下に、水性成分を含む第2の配合原料を添加させ、乳化分散させてなされたものであって、
前記冷却する工程において、前記流動体を25℃において固体である油性成分の固化温度以下まで冷却する請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記振動式攪拌混合装置が、前記ケーシングの外側に冷却水の循環する冷却ジャケットを備え、前記流動体を前記ケーシング内に通過させることで冷却する請求項1〜3の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項5】
25℃において固体の前記油性成分を、全配合原料中に、0.1〜50質量%含む前記流動体を用いる請求項1〜4の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記水性成分を、全配合原料中に、1〜80質量%含む前記流動体を用いる請求項1〜5の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項7】
製造される前記油中水型乳化化粧料の乳化粒径が、10μm未満である請求項1〜6の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記振動式攪拌混合装置を用いた冷却工程における平均冷却速度を0.1〜5℃/secとする請求項1〜7の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項9】
前記振動式攪拌混合装置の振動数が、5〜30ストローク/secである請求項1〜8の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の製造方法で得られた油中水型乳化化粧料。
【請求項1】
加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散して得られた流動体を冷却する工程を有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、該振動式攪拌混合装置内を通過させることで前記流動体を連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項2】
加熱下で油性成分に水性成分を添加し、乳化分散する工程と、それによって得られた流動体を冷却する工程とを有する油中水型乳化化粧料の製造方法であって、
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、前記水性成分及び加熱された前記油性成分を前記振動式攪拌混合装置に供給して乳化分散させながら該振動式攪拌混合装置内の一部を通過させ、乳化分散して得られた前記流動体を該振動式攪拌混合装置内の他の一部を通過させることで連続的に冷却する油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記油性成分が、25℃において固体の成分を含み、
前記流動体が、前記油性成分を1種以上含む第1の配合原料を加熱下で溶融させ、その状態下に、水性成分を含む第2の配合原料を添加させ、乳化分散させてなされたものであって、
前記冷却する工程において、前記流動体を25℃において固体である油性成分の固化温度以下まで冷却する請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記振動式攪拌混合装置が、前記ケーシングの外側に冷却水の循環する冷却ジャケットを備え、前記流動体を前記ケーシング内に通過させることで冷却する請求項1〜3の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項5】
25℃において固体の前記油性成分を、全配合原料中に、0.1〜50質量%含む前記流動体を用いる請求項1〜4の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記水性成分を、全配合原料中に、1〜80質量%含む前記流動体を用いる請求項1〜5の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項7】
製造される前記油中水型乳化化粧料の乳化粒径が、10μm未満である請求項1〜6の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記振動式攪拌混合装置を用いた冷却工程における平均冷却速度を0.1〜5℃/secとする請求項1〜7の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項9】
前記振動式攪拌混合装置の振動数が、5〜30ストローク/secである請求項1〜8の何れかに記載の油中水型乳化化粧料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の製造方法で得られた油中水型乳化化粧料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−77114(P2010−77114A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189504(P2009−189504)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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