説明

油中水型乳化化粧料

【課題】保存安定性、使用特性に優れた油中水型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】架橋型ポリエーテル変性シリコーンを0.5〜3.0質量%、精製水を60.0〜90.0質量%含有し、30℃における粘度が30,000mPa・s以上である油中水型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化化粧料に関し、詳しくは、保存安定性、使用特性に優れた油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋型ポリエーテル変性シリコーンを乳化剤として用い、水相成分を60質量%以上含有する油中水型乳化組成物は、べたつきのなさや清涼感などの利点により知られている(例えば特許文献1、2参照)。しかしこれらは粘度の低いものであり、保存安定性の点で十分満足の得られる結果とはなっていない。
【0003】
【特許文献1】 特開2001−58917号公報
【特許文献2】 特開2001−139424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的とするところは、保存安定性、使用特性に優れる油中水型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、架橋型ポリエーテル変性シリコーンを0.5〜3.0質量%、精製水を60.0〜90.0質量%含有し、30℃における粘度が30,000mPa・s以上である油中水型乳化化粧料により達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の油中水型乳化化粧料は、保存安定性、使用特性に特に優れているが、清涼感、化粧持ち、艶、安全性といった利点も持っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる架橋型ポリエーテル変性シリコーンとして、例えば信越化学工業社製のKSG−21(架橋型ポリエーテル変性シリコーンを約27質量%、6csジメチルシリコーンを約73質量%含有)、KSG−210(架橋型ポリエーテル変性シリコーンを約25質量%、6csジメチルシリコーンを約75質量%含有)等が挙げられる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。その配合量は0.5〜3.0質量%であり、好ましくは1.0〜2.5質量%である。
【0008】
本発明に用いられる精製水の配合量は60.0〜90.0質量%であり、好ましくは65.0〜85.0質量%である。精製水としては、化粧料に一般に用いられるものであれば特に限定されるものではない。
【0009】
本発明の油中水型乳化化粧料は、30℃における粘度が30,000mPa・s以上である。粘度が30,000mPa・s未満では保存安定性の点で満足な結果が得られない。
【0010】
本発明品の一般的な製造方法を詳述する。架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含む油相成分を均一に混合する。これに水相成分を徐々に加えながら、プロペラミキサー、ディスパーミキサー等の衝撃力を主体とする機械により混合する。水相成分の約4割以上をこの方法で乳化させた後、ホモミキサー等の剪断力を主体とする機械により混合しながら残りの水相成分を加える。強い剪断力を加えることにより内相液滴がより小さくなり、30℃における粘度が30,000mPa・s以上となる。最初からホモミキサーのみで油相成分と水相成分を混合すると、乳化しない場合がある。
【0011】
本発明の油中水型乳化化粧料には、上記の必須成分に加えて、必要に応じて油性成分、保湿剤、乳化剤、香料、紫外線吸収剤、防腐剤、植物エキス、顔料等を配合することが出来る。
【実施例】
【0012】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0013】
実施例1(スキンケアクリーム)
(質量%)
1.架橋型ポリエーテル変性シリコーン混合物 *1 4.0
2.架橋型ジメチルシリコーン混合物 *2 1.0
3.5量体環状シリコーン 5.0
4.ポリメチルシルセスキオキサン *3 1.0
5.ジプロピレングリコール 3.5
6.パラベン 0.1
7.クエン酸ナトリウム 0.3
8.紅茶エキス 0.1
9.精製水 85.0
*1;KSG−21(架橋型ポリエーテル変性シリコーンを約27質量%、6csジメチルシリコーンを約73質量%含有、信越化学工業社製)
*2;KSG−16(架橋型ジメチルシリコーンを約25質量%、6csジメチルシリコーンを約75質量%含有、信越化学工業社製)
*3;トスパール145(GE東芝シリコーン社製)
【0014】
・製造方法
油相成分1〜4をプロペラミキサーにより混合攪拌させながら、水相成分5〜9を溶解させたものを徐々に加えた。全て混合させた後ホモミキサーにより分散させスキンケアクリームを調製した。
【0015】
比較例1
実施例1のホモミキサーによる分散を行わずスキンケアクリームを調製した。
【0016】
比較例2
実施例1の成分1を1.0質量%、成分3を8.0%とし、実施例1と同様の製造方法を用いたが、水相成分全てを油相成分中に乳化させることが出来なかった。
【0017】
実施例2(ハンドクリーム)
(質量%)
1.架橋型ポリエーテル変性シリコーン混合物 *4 6.0
2.6量体環状シリコーン 16.0
3.流動パラフィン 3.0
4.ローズヒップ油 0.1
5.マルチトール 3.0
6.ジプロピレングリコール 6.0
7.ウーロン茶エキス 0.1
8.パラベン 0.2
9.精製水 65.6
*4;KSG−21(架橋型ポリエーテル変性シリコーンを約27質量%、6csジメチルシリコーンを約73質量%含有、信越化学工業社製)
【0018】
製造方法
油相成分1〜4をディスパーミキサーにより混合攪拌させながら、水相成分5を加え、さらに水相成分6〜9を溶解させたものを徐々に加えた。全て混合させた後ホモミキサーにより分散させハンドクリームを調製した。
【0019】
比較例3
実施例2のホモミキサーによる分散を行わず、ハンドクリームを調製した。
【0020】
比較例4
実施例2の成分1を1.5質量%、成分2を20.5質量%とした他は実施例2と同様にしてハンドクリームを調製した。
【0021】
実施例3(化粧下地)
(質量%)
1.架橋型ポリエーテル変性シリコーン混合物 *5 5.0
2.架橋型ジメチルシリコーン混合物 *6 1.0
3.ポリエーテル変性シリコーン混合物 *7 1.0
4.5量体環状シリコーン 7.0
5.架橋型シリコーン末混合物 *8 3.0
6.1,3−プチレングリコール 7.0
7.クエン酸ナトリウム 0.5
8.精製水 65.5
9.エタノール 10.0
*5;KSG−210(架橋型ポリエーテル変性シリコーン約25質量%、6csジメチルシリコーンを約75質量%含有、信越化学工業社製)
*6;KSG−15(架橋型ジメチルシリコーンを約5質量%、5量体環状シリコーンを約95質量%含有、信越化学工業社製)
*7;BY22−008M(ポリエーテル変性シリコーンを10質量%、5量体環状シリコーンを約88質量%、精製水を約2%含有、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
*8;特開平9−71509で開示されている粉砕溶液(架橋型シリコーン末を約20質量%、5量体環状シリコーンを約80質量%含有)
【0022】
製造方法
油相成分1〜5をプロペラミキサーにより混合攪拌させながら、水相成分6を加え、さらに水相成分7と水相成分8の内の30質量%を溶解させたものを徐々に加えた。この混合物をホモミキサーにより分散させながら水相成分8の残り35.5質量%を加え、さらに水相成分9を加え化粧下地を調製した。
【0023】
実施例4(ファンデーション)
(質量%)
1.架橋型ポリエーテル変性シリコーン混合物 *9 10.0
2.分岐型ポリエーテル変性シリコーン *10 1.0
3.5量体環状シリコーン 2.0
4.6csジメチルシリコーン 2.0
5.ラウロイルリジン被覆酸化チタン 8.0
6.ラウロイルリジン被覆ベンガラ 0.2
7.ラウロイルリジン被覆黄酸化鉄 0.7
8.ラウロイルリジン被覆黒酸化鉄 0.1
9.ラウロイルリジン被覆タルク 1.0
10.ジプロピレングリコール 2.0
11.マルチトール 2.0
12.スイカズラエキス 0.1
13.クエン酸ナトリウム 0.5
14.パラベン 0.2
15.精製水 70.2
*9;KSG−210(架橋型ポリエーテル変性シリコーン約25質量%、6csジメチルシリコーンを約75質量%含有、信越化学工業社製)
*10;KF−6028(信越化学工業社製)
【0024】
製造方法
混合粉砕された顔料5〜9を、ディスパーミキサーにより油相成分1〜4と共に混合攪拌しながら、溶解した水相成分10〜15を徐々に加えた。全て混合させた後、ホモミキサーにより分散させファンデーションを調製した。
【0025】
比較例5
実施例4の成分1を14.0質量%、成分15を66.2質量%とした他は実施例4と同様にしてファンデーションを調製した。
【0026】
本発明で使用した(1)保存安定性試験、(2)使用特性評価試験の各試験方法は下記の通りである。
【0027】
(1)保存安定性試験
試料を0℃、25℃、45℃の恒温槽内で3ヶ月間保存し、水相成分と油相成分の分離が起こるかどうかを調べた。
どの温度で保存しても分離しない :◎
25℃以下の保存では分離せず、45℃保存では分離する :○
25℃以下での保存でも分離する :×
【0028】
(2)使用特性評価試験
女性パネルメンバー20名に、実施例、比較例の各試料を塗布してもらい、「滑らかである」と回答した人数に従って使用特性を評価した。
【0029】
実施例1〜4、比較例1〜5の各試料に上記試験を行った結果を以下に示す。


【0030】
本発明の実施例の試料は保存安定性、使用特性の総合評価において比較例の試料より優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の油中水型乳化化粧料は、保存安定性、使用特性(滑らかさ)に特に優れているが、清涼感、化粧持ち、艶、安全性といった長所も備えている。そのため整肌および美容の為に用いる医薬品、医薬部外品または化粧品の分野での応用が可能であり、産業上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋型ポリエーテル変性シリコーンを0.5〜3.0質量%、精製水を60.0〜90.0質量%含有し、30℃における粘度が30,000mPa・s以上である油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2006−1918(P2006−1918A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207933(P2004−207933)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【Fターム(参考)】