説明

油中水型乳化化粧料

【課題】揮発速度の速い揮発性油分を配合して使用感に優れた安定な油中水型乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)、(B):
(A)鎖状シリコーン油又は炭化水素油からなる高揮発性油分;
(B)ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体;
を含有することを特徴とする、乳化安定性及び保存安定性の高い、肌に対して滑らかで密着感のある、さっぱりとした感触を与える油中水型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性油分を配合した油中水型乳化化粧料は、肌に対して滑らかで密着感があり、さっぱりとした感触を与える化粧料として、多くの化粧品に活用され商品化されている。従来、前記化粧料において、デカメチルシクロペンタシロキサン(以下、「D5」という。)等の環状ポリシロキサンが安全性面の点から優れた揮発性油分として用いられてきていた(例えば、特許文献1〜8参照。)。しかしながら、この揮発性油分を主成分として配合した場合、揮発速度が充分でなく、肌に対する滑らかさ、密着感、さっぱりとした感触等の使用感が充分に得られず、揮発速度の限界が故に感触面で処方の限界があった。そのため、D5よりも揮発速度が速く、安全な揮発性油分が求められていた。現在までに種々の油分が研究されてきているが、揮発速度が速い揮発性油分を主成分として配合した場合、油中水型乳化化粧料を調製するときに通常使用される従来の乳化剤、特にシリコーン系のHLBの低い乳化剤を用いても合一や分離が起こりやすくなり、安定な優れた乳化状態のものが得られず、化粧品製品とすることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−148121号公報
【特許文献2】特開平06−100413号公報
【特許文献3】特開平07−277922号公報
【特許文献4】特開平09−136821号公報
【特許文献5】特開2001−187711号公報
【特許文献6】特開2002−220320号公報
【特許文献7】特開2004−018415号公報
【特許文献8】特開2004−067628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、揮発速度の速い揮発性油分を配合して使用感に優れた安定な油中水型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、揮発速度の速い鎖状シリコーン油又は炭化水素油からなる高揮発性油分と水を特定構造のシリコーン系乳化剤で乳化して油中水型乳化化粧料とすることにより、乳化安定性の高い、肌に対して滑らかで密着感のある、さっぱりとした感触を与える油中水型乳化化粧料を得ることができ、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、第一発明は、次の成分(A)、(B):
(A)鎖状シリコーン油又は炭化水素油からなる高揮発性油分;
(B)ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体;
を含有する油中水型乳化化粧料である。
【0007】
また、第二発明は、さらに、粉体を含有することを特徴とする前記油中水型乳化化粧料である。
【0008】
本発明において、高揮発性油分とは、揮発速度の速い油分であり、常圧での沸点(以下、単に「沸点」という。)が200℃以下のものが該当するが、単に「高揮発性油分」と表記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定構造のシリコーン系乳化剤を用いて鎖状シリコーン油又は炭化水素油からなる高揮発性油分を乳化したので、乳化粒子の状態のよい乳化物が得られ、保存安定性に優れ、肌に対して滑らかで密着感のある、さっぱりとした感触を与える油中水型乳化化粧料が得られる。さらに、該油中水型乳化化粧料に粉体を配合することにより、本発明の前記効果が奏される特徴のあるファンデーション、日焼け止め化粧料等の粉体入り化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0011】
本発明における油中水型乳化化粧料は、特定構造のシリコーン系乳化剤によって鎖状シリコーン油又は炭化水素油からなる高揮発性油分(以下、これらの高揮発性油分を、単に「高揮発性油分」ともいう。)と水を含む混合成分を乳化することによって製造される。
【0012】
本発明においては、肌に対して滑らかで密着感のある、さっぱりとした感触を与える油中水型乳化化粧料を得るために、高揮発性油分が必須油分として用いられる。さらに、好ましい高揮発性油分の沸点は190℃以下である。上記沸点の下限は、特に限定されないが、化粧料の安定性の観点から、130℃以上が好ましい。さらに、好ましくは、150℃以上である。
【0013】
本発明における高揮発性油分は、構造が鎖状シリコーン油と炭化水素油に限定されたものである。鎖状シリコーン油は、アルキル基を任意で含む鎖状シリコーンであり、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。例えば、メチルトリメチコン、ジメチルシリコーンオイル、メチルエチルシリコーンオイル等が挙げられる。また、前記炭化水素油は鎖状であることが好ましい。
【0014】
具体的な高揮発性油分としては、例えば、メチルトリメチコン(沸点;190℃)、ヘプタメチルエチルトリシロキサン(沸点173℃)、オクタメチルトリシロキサン(沸点;150℃)、デカメチルテトラシロキサン(沸点;190℃)、イソドデカン(2,2,4,6,6−ヘプタメチルペンタン)(沸点;177℃)等が挙げられる。
【0015】
本発明における前記高揮発性油分は1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0016】
本発明において高揮発性油分は鎖状シリコーン油が好ましく、特にメチルトリメチコンが好ましい。メチルトリメチコンは、後述する好ましい乳化剤として用いられる、市販品FZ2233((東レ・ダウコーニング株式会社製)と相性がよく、他の高揮発性油分に比べて乳化粒子の状態がよく、すなわち、乳化粒子の粒子径が均一で、乳化粒子が細かく(小さく)なり、乳化安定性、使用性に優れるため、より好ましい。
【0017】
本発明における高揮発性油分は、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、TMF−1.5(メチルトリメチコン、沸点;190℃)(信越化学工業株式会社製)、SILSOFT ETS(ヘプタメチルエチルトリシロキサン、沸点173℃)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、SH200 C Fluid 1CS(オクタメチルトリシロキサン、直鎖状ジメチルの3量体99%以上のシリコーンオイル、沸点;150℃)(東レ・ダウコーニング株式会社製)、KF−96A−1cs(オクタメチルトリシロキサン、沸点;150℃)(信越化学工業株式会社製)、SH200 Fluid 1.5CS(デカメチルテトラシロキサン、直鎖状ジメチルの4量体97%以上のシリコーンオイル、沸点;190℃)(東レ・ダウコーニング株式会社製)、KF−96L−1.5cs(デカメチルテトラシロキサン、沸点;190℃)(信越化学工業株式会社製)、2−1184 Fluid(直鎖状ジメチルの3〜5量体を主成分とするシリコーンオイル、沸点;190℃)(東レ・ダウコーニング株式会社製)、マルカゾールR(イソドデカン、2,2,4,6,6−ヘプタメチルペンタン、沸点;177℃)(丸善石油化学株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
高揮発性油分の含有量は、油中水型乳化化粧料全量中1.0〜30.0質量%が好ましい。含有量がこの範囲において充分に肌に対して滑らかで密着感のある、さっぱりとした感触を与える安定な油中水型乳化化粧料を得ることができる。さらに好ましい含有量は、油中水型乳化化粧料全量中5.0〜30.0質量%である。なお、高揮発性油分は、油相成分(油溶性界面活性剤を含む。)の水相成分に対する配合割合を0.1倍〜1.0倍(質量)(以下、単に「倍」という。)にする範囲内での配合が好ましい。
【0019】
本発明において用いられるポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体は、ポリオキシアルキレン単位とオルガノポリシロキサン単位が交互に結合した交互ブロック共重合体である。該交互ブロック共重合体のHLBは、油中水型の乳化物が得られれば特に限定されないが、HLB4.0以下のものが好ましい。HLBの下限は好ましくは1.0以上である。
【0020】
本発明においては、前記ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体が交互ブロック構造を有することが重要であり、前記交互ブロック共重合体は、高揮発性油分と水を乳化して安定な油中水型乳化化粧料を製造することができる特殊の乳化剤である。
【0021】
本発明におけるポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体は公知の高分子であり、例えば、特開平04−234307号公報に記載の方法によって得ることができる。具体的には、例えば、メタアリル基を両末端に有するポリオキシアルキレン化合物とジヒドロオルガノポリシロキサンとの反応によって得られる。より具体的には、例えば、同公報に記載の合成例1の方法に準じて製造される。すなわち、ジメタアリルポリオキシアルキレンをトルエン等の溶媒にクロル白金酸等の触媒とともに溶解した溶液中に、加熱下でジヒドロポリジメチルシロキサンを添加して製造する。
【0022】
ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体を構成するポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等が挙げられ、本発明においては、ポリオキシエチレン単独あるいはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの共重合体であるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)が好ましい。特に、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)が好ましい。
【0023】
ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体の構造式は下記一般式(1)のように表される。なお、一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基等のアルキル基、AOはアルキレンオキシド基を示し、a、m、nはいずれも正の整数である。
【0024】
【化1】

【0025】
本発明において特に好ましい、ポリオキシアルキレンがポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)のものは、一般式(1)中の(AO)が(CO)(CO)となったものであり、ここで、bは正の整数であり、cは0または正の整数である。
【0026】
ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体は、このうち、特にポリオキシアルキレン単位とオルガノポリシロキサン単位の存在割合、さらにポリオキシアルキレン単位のポリオキシエチレン単位、ポリオキシプロピレン単位等の存在割合でHLBが決まるが、本発明においては好ましいHLB範囲になるように構造が決定される。
【0027】
本発明におけるポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体は、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、FZ−2233(ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)共重合タイプ、HLB2.5)(東レ・ダウコーニング株式会社製)、FZ−2231(ポリオキシエチレン共重合タイプ、HLB4)(東レ・ダウコーニング株式会社製)、FZ−2250(HLB1)(東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。これらのうちでは、FZ−2233が最も好ましい。
【0028】
ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体の含有量は、油中水型乳化化粧料全量中1.0〜10.0質量%が好ましい。含有量がこの範囲において充分に安定な油中水型乳化化粧料を得ることができる。さらに好ましい含有量は油中水型乳化化粧料全量中2.0〜8.0質量%である。
【0029】
本発明においては、乳化剤として、ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体以外のポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン共重合体を配合することができる。そのような共重合体としては、例えば、オルガノポリシロキサン鎖の側鎖にポリオキシアルキレン基を導入した側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(以下、単に「側鎖型ポリエーテル変性シリコーン」という。)が挙げられる。側鎖型ポリエーテル変性シリコーンは公知の乳化剤である。該側鎖型ポリエーテル変性シリコーンをポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体と併用することにより、乳化安定性はさらに向上する。側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのHLBとしては、ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体と併用して油中水型の乳化物が得られれば特に限定されないが、HLBが8以下のものが好ましい。
【0030】
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンを構成するオルガノポリシロキサンは直鎖であっても分岐していてもよく、分岐してもよいジメチルポリシロキサンが好ましい。また、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンを構成するポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等が挙げられ、本発明においては、ポリオキシエチレンあるいはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの共重合体であるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)が好ましい。特に、ポリオキシエチレンが好ましい。
【0031】
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンは、オルガノポリシロキサン単位とポリオキシアルキレン単位の存在割合、さらにポリオキシアルキレン単位のポリオキシエチレン単位、ポリオキシプロピレン単位等の存在割合でHLBが決まるが、本発明においては前記HLB範囲になるように構造が決定される。
【0032】
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンは、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、KF−6015(PEG−3ジメチコン(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体))(HLB4.5)、KF−6016(PEG−9メチルエーテルジメチコン(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体))(HLB4.5)、KF−6017(PEG−10ジメチコン(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体))(HLB4.5)、KF−6028(PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)(HLB4.0)、KF−6038(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)(HLB3.0)(以上、いずれも、信越化学工業株式会社製)、SH3772M(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体)(HLB6)、SH3773M(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体)(HLB8)、SH3775M(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体)(HLB5)(以上、いずれも、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンを併用する場合、その含有量は、油中水型乳化化粧料全量中0.1〜2.0質量%が好ましい。含有量がこの範囲において充分に乳化安定性を向上させる効果を得ることができる。
【0034】
本発明の油中水型乳化化粧料には、さらに任意配合成分として粉体を配合することができる。粉体の配合により、本発明の、肌に対して滑らかで密着感があり、さっぱりとした感触を与えるという効果が奏される特徴のある粉体入り化粧料を調製することができる。該化粧料としては、例えば、ファンデーション等のメーキャップ化粧料が挙げられる。さらに、紫外線散乱効果を有する粉体を配合することにより、肌に対して滑らかで密着感のある、さっぱりとした感触を与えるという効果が奏されるサンケア製品(日焼け止め化粧料)を調製することができる。さらに、粉体の配合により、高揮発性油分の少量配合でも安定な油中水型乳化化粧料を調製することができる。粉体の配合量は、特に限定されないが、油中水型乳化化粧料全量中1〜40質量%が好ましい。
【0035】
粉体としては、特に限定されないが、例えば、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト(絹雲母)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン(酸化チタンコーテッドマイカ)、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス、窒化ホウ素、有機色素(赤色226号、青色404号等)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、セルロース粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等が挙げられる。
【0036】
本発明の油中水型乳化化粧料には、前記成分の他に、化粧料、医薬部外品等に通常用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、前記以外の油分、前記以外の界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、増粘剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、非水溶性高分子、油ゲル化剤、染料、低級アルコール、糖類、紫外線吸収剤、アミノ酸類、ビタミン類、美白剤,皮膚賦活剤,血行促進剤,抗炎症剤等の薬剤、植物抽出物、有機酸、有機アミン、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、収斂剤、清涼剤、香料等を挙げることができる。
【0037】
本発明の油中水型乳化化粧料は前記成分を配合して常法にしたがって調製することができる。
【0038】
本発明の油中水型乳化化粧料は、医薬部外品、化粧料等の形態に広く適用可能である。適用例としては、例えば乳液,クリーム等の基礎化粧料、化粧下地,ファンデーション等のメーキャップ化粧料、芳香化粧品、サンケア製品(日焼け止め化粧料),ハンドケア製品等のボディ化粧料等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0040】
1.使用テスト
20名の専門パネルによる使用テストを行い、肌に対する滑らかさ、肌への密着感、肌のさっぱりとした感触の評価項目それぞれについて、下記の評価点基準に基づいて評価した。次いで、各人がつけた評価点の平均点を計算し、下記評価基準に基づいて評価した。
【0041】
[評価点基準]
(肌に対する滑らかさ)
4点:肌に対する滑らかさが非常に優れている。
3点:肌に対する滑らかさが優れている。
2点:普通(どちらともいえない。)。
1点:肌に対する滑らかさが劣る。
0点:肌に対する滑らかさが非常に劣る。
【0042】
[評価点基準]
(肌への密着感)
4点:肌への密着感が非常に優れている。
3点:肌への密着感が優れている。
2点:普通(どちらともいえない。)。
1点:肌への密着感が劣る。
0点:肌への密着感が非常に劣る。
【0043】
[評価点基準]
(肌のさっぱりとした感触)
4点:肌のさっぱりとした感触が非常に優れている。
3点:肌のさっぱりとした感触が優れている。
2点:普通(どちらともいえない。)。
1点:肌のさっぱりとした感触が劣る。
0点:肌のさっぱりとした感触が非常に劣る。
【0044】
[評価基準]
◎:平均点が3点を超える。
○:平均点が2点超3点以下である。
△:平均点が1点以上2点以下である。
×:平均点が1点未満である。
【0045】
2.油中水型乳化化粧料の乳化粒子の状態
油中水型乳化化粧料製造直後の乳化粒子を光学顕微鏡で観察し、粒子状態を下記の評価基準によって評価した。乳化粒子の状態は乳化安定性、使用性に影響を与え、乳化粒子の粒子径が均一なものは乳化安定性がよく、さらに、乳化粒子が細かい(小さい)ほど乳化安定性はよくなる。また、粒子径が不均一なものは、乳化安定性が悪い。なお、使用性はそれぞれ独特のものが得られる。
【0046】
[評価基準]
◎:乳化粒子が極細かく(小さく)、粒子径が均一で、乳化状態が極めてよい。
○:乳化粒子が細かく(小さく)、粒子径が均一で、乳化状態がよい。
×:粒子径が均一だが乳化粒子が大きい、または粒子径が不均一であり、乳化状態が悪い。
【0047】
3.油中水型乳化化粧料の保存安定性
油中水型乳化化粧料を50℃、40℃、25℃、−5℃の恒温槽及び室温下にそれぞれ保存し、1ヶ月後の外観変化を下記の評価基準によって評価した。
【0048】
[評価基準]
○:いずれの条件下でも系の分離現象等何らの変化も見られず安定である。
×:いずれかの条件下で系の分離現象等何らかの変化が見られ不安定である。
【0049】
[実施例1〜6]
表1に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の油中水型乳化化粧料を以下の方法で調製した。
【0050】
(調製法)
(1)〜(5)の油相を混合溶解し、それに(6)〜(10)の水相の混合溶解物を加え、乳化し、乳化組成物を調製した。
【0051】
【表1】

【0052】
上記実施例1〜6の油中水型乳化化粧料につき効果試験を行い、その評価結果を同じ表1に示した。
【0053】
[比較例1〜5]
表2に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の油中水型乳化化粧料を以下の方法で調製した。
【0054】
(調製法)
(1)〜(5)の油相を混合溶解し、それに(6)〜(10)の水相の混合溶解物を加え、乳化し、乳化組成物を調製した。
【0055】
【表2】

【0056】
上記比較例1〜5の油中水型乳化化粧料につき効果試験を行い、その評価結果を同じ表2に示した。
【0057】
[実施例7〜8]
表3に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の油中水型乳化化粧料を以下の方法で調製した。
【0058】
(調製法)
(1)〜(4)の油相を混合溶解し、それに(5)〜(9)の水相の混合溶解物を加え、乳化し、乳化組成物を調製した。
【0059】
【表3】

【0060】
上記実施例7〜8の油中水型乳化化粧料につき効果試験を行い、その評価結果を同じ表3に示した。
【0061】
[実施例9〜10]
表4に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の油中水型乳化化粧料(ファンデーション)を以下の方法で調製した。
【0062】
(調製法)
(A)a成分にb成分を加え、乳化する。
(B)c成分にd成分を加え、ロール処理する。
次いで、(A)に(B)を加え、混合し、油中水型乳化化粧料(ファンデーション)とする。
【0063】
【表4】

【0064】
上記実施例9〜10の油中水型乳化化粧料につき効果試験を行い、その評価結果を同じ表4に示した。
【0065】
なお、上記表1〜4中、(注1)〜(注7)は以下のとおりである。
(注1)TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)
(注2)SH200 Fluid 1.5CS(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注3)SILSOFT ETS(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
(注4)FZ−2233(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注5)KF−6038(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、HLB;3.0)(信越化学工業株式会社製)
(注6)KF−6028(PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、HLB;4.0)(信越化学工業株式会社製)
(注7)マルカゾールR(丸善石油化学株式会社製)
【0066】
表1〜4から分かるように、本発明に係る高揮発性油分及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体を配合した実施例1〜10の油中水型乳化化粧料は、いずれも肌に対する滑らかさ、密着感が優れ、さっぱりとした感触があり、使用感にすぐれたものであった。また、乳化粒子の粒子径が均一で、乳化粒子も小さく、乳化粒子の状態が優れ、乳化安定性、使用性のよいものであった。さらに、保存安定性もよく、実施例1〜10の油中水型乳化化粧料は優れた効果を有するものであった。
【0067】
特に、メチルトリメチコン及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体を配合した油中水型乳化化粧料は、乳化粒子の粒子径が均一で、乳化粒子も極小さく、乳化粒子の状態が非常に優れ、乳化安定性、使用性の非常によいものであった。また、乳化剤としてポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体と側鎖型ポリエーテル変性シリコーンを併用して配合した油中水型乳化化粧料は、保存安定性がさらに優れたものとなった。さらに、粉体を配合することにより、肌に対して滑らかで密着感があり、さっぱりとした感触の使用感を有する粉体入り化粧料を得ることができた。
【0068】
これらに対して、従来から汎用されているシリコーン系の乳化剤の側鎖型ポリエーテル変性シリコーンを乳化剤として、本発明の高揮発性油分を乳化すると、乳化粒子の状態が悪く、乳化安定性、保存安定性のよいものが得られなかった(比較例1)。また、D5を乳化したものは、乳化粒子の状態が悪く、肌に対して滑らかさも密着感も劣り、肌のさっぱりとした感触も劣ることが分かる(比較例2)。また、オクタメチルシクロテトラシロキサンを乳化したものは、乳化状態は悪く、肌に対して滑らかさも密着感も劣り、肌のさっぱりとした感触も劣ることが分かる(比較例4)。
【0069】
さらに、本発明のポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体を乳化剤として用いても、D5及びオクタメチルシクロテトラシロキサンを乳化したものは、肌に対して滑らかさも密着感も劣り、肌のさっぱりとした感触も劣ることが分かる(比較例3及び5)。以上、いずれの比較例の油中水型乳化化粧料も本発明の効果を発揮し得ないものであった。
【0070】
以下、さらに本発明の油中水型乳化化粧料の実施例を示す。なお、製造は実施例1〜10の方法に準じて行った。また、前記効果試験をこれらにおいて行ったところ、いずれも優れた効果が得られた。
【0071】
〔実施例11〕クリーム
成分 配合量(質量%)
(1)メチルトリメチコン(注1) 15.0
(2)イソドデカン(注2) 5.0
(3)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注3) 3.5
(4)精製水 残量
(5)硫酸マグネシウム 0.5
(6)1,3−BG 9.0
(7)グリセリン 6.0
(8)フェノキシエタノール 0.4
合計 100.0
【0072】
(注1)TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)
(注2)マルカゾールR(丸善石油化学株式会社製)
(注3)FZ−2233(東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0073】
〔実施例12〕クリーム
成分 配合量(質量%)
(1)メチルトリメチコン(注1) 18.5
(2)オクタメチルトリシロキサン(注2) 0.8
(3)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注3) 3.5
(4)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(注4) 0.7
(5)精製水 残量
(6)硫酸マグネシウム 0.5
(7)1,3−BG 9.0
(8)グリセリン 6.0
(9)フェノキシエタノール 0.4
合計 100.0
【0074】
(注1)TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)
(注2)SH200 C Fluid 1CS(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注3)FZ−2233(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注4)KF−6038(信越化学工業株式会社製)
【0075】
〔実施例13〕クリーム
成分 配合量(質量%)
(1)メチルトリメチコン(注1) 17.5
(2)オクタメチルトリシロキサン(注2) 0.8
(3)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注3) 4.0
(4)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(注4) 2.0
(5)精製水 残量
(6)硫酸マグネシウム 0.5
(7)1,3−BG 9.0
(8)グリセリン 6.0
(9)フェノキシエタノール 0.4
合計 100.0
【0076】
(注1)TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)
(注2)SH200 C Fluid 1CS(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注3)FZ−2233(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注4)KF−6028(信越化学工業株式会社製)
【0077】
〔実施例14〕乳液
成分 配合量(質量%)
(1)メチルトリメチコン(注1) 25.0
(2)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注2) 3.0
(3)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注3) 4.0
(4)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(注4) 0.2
(5)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(注5) 0.1
(6)精製水 残量
(7)硫酸マグネシウム 0.5
(8)1,3−BG 9.0
(9)グリセリン 6.0
(10)フェノキシエタノール 0.4
合計 100.0
【0078】
(注1)TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)
(注2)FZ−2233(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注3)FZ−2231(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注4)KF−6038(信越化学工業株式会社製)
(注5)KF−6028(信越化学工業株式会社製)
【0079】
〔実施例15〕ファンデーション
成分 配合量(質量%)
(1)メチルトリメチコン(注1) 13.0
(2)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注2) 3.0
(3)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(注3) 0.8
(4)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(注4) 0.2
(5)(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー 3.0
(6)1,3−BG 6.0
(7)フェノキシエタノール 0.4
(8)グリセリン 4.0
(9)精製水 残量
(10)硫酸マグネシウム 0.5
(11)トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 8.0
(12)イソステアリン酸ソルビタン 1.0
(13)トコフェロール 0.1
(14)シリコーン処理ベンガラ 0.4
(15)シリコーン処理黄酸化鉄 2.2
(16)シリコーン処理黒酸化鉄 0.2
(17)シリコーン処理タルク 2.2
(18)シリコーン処理チタン 7.0
(19)シリコーン処理水酸化Al被覆マイカ 2.0
(20)シリコーン処理微粒子酸化チタン 5.0
合計 100.0
【0080】
(注1)TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)
(注2)FZ−2233(東レ・
ダウコーニング株式会社製)
(注3)KF−6028(信越化学工業株式会社製)
(注4)KF−6015(信越化学工業株式会社製)
【0081】
〔実施例16〕日焼け止め化粧料
成分 配合量(質量%)
(1)メチルトリメチコン(注1) 16.0
(2)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注2) 4.0
(3)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体(注3) 1.0
(4)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(注4) 0.8
(5)トリメチルシロキシケイ酸 4.0
(6)1,3−BG 7.0
(7)フェノキシエタノール 0.4
(8)グリセリン 4.0
(9)精製水 残量
(10)硫酸マグネシウム 0.5
(11)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 10.0
(12)イソステアリン酸ソルビタン 1.0
(13)トコフェロール 0.1
(14)シリコーン処理微粒子酸化チタン 15.0
(15)シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 5.0
(16)メタクリル酸メチルクロスポリマー 5.0
合計 100.0
【0082】
(注1)TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)
(注2)FZ−2233(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注3)FZ−2231(東レ・ダウコーニング株式会社製)
(注4)KF−6038(信越化学工業株式会社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B):
(A)鎖状シリコーン油又は炭化水素油からなる高揮発性油分;
(B)ポリオキシアルキレン−オルガノポリシロキサン交互ブロック共重合体;
を含有する油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
さらに、粉体を含有することを特徴とする請求項1記載の油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2010−159222(P2010−159222A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1942(P2009−1942)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)
【Fターム(参考)】