説明

油中水型乳化化粧料

【課題】
みずみずしく、べたつきのないさっぱりとした使用感を有しながらも、肌へ厚みを維持しながら伸び広がることでマッサージ行為の持続性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れる油中水型乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】
次の成分(a)〜(e):
成分(a):アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子
成分(b):電解質
成分(c):水性成分
成分(d):油性成分
成分(e):シリコーン系界面活性剤
を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する特定のアクリル系水溶性高分子、電解質、水性成分、シリコーン系界面活性剤を含有する油中水型乳化化粧料に関し、さらに詳細にはみずみずしく、べたつきのないさっぱりとした使用感を有しながらも、肌へ厚みを維持しながら伸び広がることでマッサージ行為の持続性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れる油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化化粧料は、その分散型によって、水中油型と油中水型とに一般的に大別される。水中油型乳化化粧料は、みずみずしい使用感が特徴であることに対して、油中水型乳化化粧料は、肌表面を油膜で被覆し、水分の蒸散を防ぎ、肌を乾燥から保護することで、エモリエント効果や保湿効果等を付与する効果が高いことが特徴である。これらの油中水型乳化化粧料としては、コクのある伸び広がりや、肌への密着性などの使用感と、経時安定性の両方を満たすために、さまざまな工夫がなされている。
【0003】
例えば、キサンタンガムのような水溶性高分子を用いる技術(例えば、特許文献1参照)や水溶性高分子電解質を用いる技術(例えば、特許文献2参照)や、外相である油性成分にワックスなどの高融点の固形油を配合する技術(特許文献3、4参照)がある。その他にも、べたつかずさっぱりとした使用感と乳化安定性との両立のために、架橋型ポリエーテル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンなどの、シリコーン系界面活性剤を用いる油中水型乳化化粧料の技術(特許文献5、6参照)などがある。
【特許文献1】特開2006−160714号公報
【特許文献2】特開2002−348210号公報
【特許文献3】特開2008−24630号公報
【特許文献4】特開2002−255738号公報
【特許文献5】特開2001−2520号公報
【特許文献6】特開平2003−113016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の技術の場合、使用される水溶性高分子によっては、使用時に肌への馴染みが悪く、塗布時にずるつき感を感じる場合があった。また、特許文献3、4の技術を用いた場合は、外相に高融点の固形油を配合することで、使用時の肌への厚みのある伸び広がりや密着性、乳化安定性は向上するものの、使用時のみずみずしさに欠ける場合や、塗布後の肌に膜感を感じる場合などがあった。また、特許文献5、6の技術を用いた場合は、架橋型ポリエーテル変性シリコーンの特性より肌馴染みが悪く、さらに極性油などエモリエント効果の高い油剤に対して乳化安定性が保つことが難しいなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する特定のアクリル系水溶性高分子、電解質、水性成分からなるゲル相を内水相とし、シリコーン系界面活性剤を用いた油中水型乳化化粧料とすることにより、みずみずしく、べたつきのないさっぱりとした使用感を有しながらも、肌へ厚みを維持しながら伸び広がることでマッサージ行為の持続性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れる油中水型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわり、本発明は、次の成分(a)〜(e):
成分(a):アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子
成分(b):電解質
成分(c):水性成分
成分(d):油性成分
成分(e):シリコーン系界面活性剤
を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0007】
また、成分(a)の含有量が、0.01〜5.0質量%であることを特徴とする前記油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0008】
さらに、成分(e)のシリコーン系界面活性剤が、下記一般式(1)であることを特徴とする、前記油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、あるいは、−C2m−O−(CO)(CO)で表される有機基から選択される同種又は異種の有機基であり、Rは−C2m−O−(CO)(CO)−Rで表されるポリオキシアルキレン基、Rは下記一般式(2)
【0011】
【化2】

【0012】
で表されるオルガノシロキサンであって、Rは炭素数4〜30の炭化水素基又はR−(CO)−で示される有機基、Rは水素原子若しくは炭素数1〜30の炭化水素基又はR−(CO)−で示される有機基、Rは炭素数1〜30の炭化水素基である。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5であり、d、eはそれぞれ0≦d≦50、0≦e≦50の整数であり、f、gはそれぞれ2≦f≦200、0≦g≦200、かつf+gが3〜200の整数である。また、mは0≦m≦15の整数、hは0≦h≦500の整数であり、nは1≦n≦5の整数である。]さらに、成分(f):ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンを含有することを特徴とする前記油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0013】
さらに、マッサージ化粧料であることを特徴とする前記油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0014】
さらに、成分(a)が、(メタ)アクリル酸95.42〜97.48質量%、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル2.43〜4.30質量%およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%である(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることを特徴とする油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る油中水型乳化化粧料は、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する特定のアクリル系水溶性高分子、電解質、水性成分からなるゲル相を内水相とし、シリコーン系界面活性剤を用いて乳化することで、みずみずしく、べたつきのないさっぱりとした使用感を有しながらも、肌へ厚みを維持しながら伸び広がることでマッサージ行為の持続性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、それぞれの構成成分について、詳細に説明する。
本発明の成分(a)特定のアクリル系水溶性高分子は、油中水型乳化化粧料の内水相をゲル化する目的で配合され、経時安定性及びマッサージ行為の持続性を向上させる効果がある。特に後述する電解質を含有することにより、従来の油中水型乳化粧料に比べ経時安定性を良好にすることに加え、内水相をゲル化できることから、乳化滴の平均粒径を大きいままで安定化することを可能とする。この場合の乳化滴の平均粒径は、各種必須成分の配合量、配合成分等から種々コントロール可能であるが、マッサージ効果の点からは好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上とするものである。この範囲の平均粒径であると、厚みを持った状態で十分な時間マッサージ行為を続けることが可能となる。
【0017】
本発明における成分(a)は、アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子である。
【0018】
成分(a)の構成成分の一つであるアクリル酸又はメタアクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」と称する。)の成分(a)における構成比は、その特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、95.42質量%(以下、単に「%」とする。)以上97.48%以下が好ましく、95.47%以上97.46%以下がより好ましく、95.97%以上96.94%以下が更に好ましい。
【0019】
成分(a)の構成成分の一つであるアクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステル(以下「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する。)の種類は、成分(a)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、アルキル基の炭素数が、18以上24以下であることが好ましい。アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステル及び(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
この中でも、本発明においては特に、成分(a)を含む後述する中和粘稠水溶液、及び電解質存在下における該中和粘稠水溶液の粘度特性や質感を考慮すると、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、及びメタクリル酸テトラコサニルが好ましく、少なくともメタクリル酸ベヘニルを50%以上含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。なお、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの成分(a)における構成比は、その特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、2.43%以上4.3%以下が好ましく、2.91%以上3.84%以下がより好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの成分(a)におけるより詳しい構成比としては、アルキル基の炭素数が18以上24以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43%以上4.3%以下含有させることが好ましい。より具体的には、例えば、アルキル基の炭素数が18以上24以下の1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43%以上4.3%以下含有させてもよく、アルキル基の炭素数が18以上24以下の2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合体を2.43%以上4.3%以下含有させてもよい。
【0023】
成分(a)の構成成分の一つであるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の種類は、成分(a)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、例えば、エチレン性不飽和基がアリル基である化合物を好適に用いることができる。具体的には、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリトリトールアリルエーテルや、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル並びにポリアリルサッカロースが特に好ましい。なお、これらエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0024】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の成分(a)における構成比は、その特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、0.08%以上0.29%以下が好ましく、0.11%以上0.24%以下がより好ましく、0.15%以上0.19%以下が更に好ましい。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の成分(a)における構成比が0.08%未満の場合、製剤中において、十分な粘度が得られず、経時での廃液の原因になる場合がある。
【0025】
本発明に係る油中水型乳化化粧料に含有する成分(a)は、以上説明したアクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなる。重合方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法から自由に選択して用いることができる。例えば、これらの構成成分を不活性ガス雰囲気下、溶媒中で攪拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等の通常の方法を用いることができる。
【0026】
重合に用いる不活性ガス雰囲気を得るための不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を挙げることができる。
【0027】
重合に用いる溶媒も特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解するが、得られる水溶性高分子を溶解しないものであって、当該重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサン等の炭化水素溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも特に、n−ヘキサン、及びn−へプタンを好適に用いることができる。また、これら炭化水素溶媒は、ケトン、エステル、エーテル、及び飽和アルコール等の有機溶媒と組み合わせて使用することもできる。好ましい有機溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、プロピオン酸ブチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0028】
重合に用いる前記溶媒の量は、攪拌操作性を向上させる観点及び経済性の観点から、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、300〜5000質量部であることが好ましい。
【0029】
重合に用いる重合開始剤も特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。具体例としては、α,α’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル及び2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等を挙げることができる。これらの中でも特に、高分子量の水溶性高分子(a)を得るためには、2,2’−アゾビスメチルイソブチレートを用いることが好ましい。
【0030】
重合に用いる前記重合開始剤の量は、重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00003〜0.002モルであることが好ましい。重合開始剤の使用量が0.00003モル未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。逆に、重合開始剤の使用量が0.002モルを超える場合、重合が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。
【0031】
重合における反応温度は、目的の成分(a)が得られれば、特に限定されないが、50℃以上90℃以下で行うのが好ましく、55℃以上75℃以下で行うのがより好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応溶液の粘度が上昇し、均一に攪拌することが困難になるおそれがある。逆に、反応温度が90℃を超える場合、反応が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。反応時間は、反応温度によって適宜設定することができるが、通常、0.5〜5時間で行うことが好ましい。
【0032】
反応終了後、反応溶液を例えば80℃以上130℃以下で加熱して前記溶媒を揮散除去することにより、本発明に係る油中水型乳化化粧料に含有する成分(a)を得ることができる。加熱温度が80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる成分(a)の水への溶解性を損なうおそれがあるからである。
【0033】
本発明に用いられる成分(a)は、水に膨潤したゲル状組成物に電解質を添加することにより、粘度増加を生じるものである。例えば、成分(a)類似のポリアクリル酸アクリル酸アルキルコポリマーであるカーボポール1342(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)1%を含む中和粘稠水溶液は、塩化ナトリウム1%を添加することにより水溶液の粘度が低下するが、成分(a)の水溶液では逆に粘度が増加する性質がある。これは、前者は塩化ナトリウムの添加によって高分子の凝集・収縮が生じ、系全体の粘度が低下するのに対し、成分(a)は高分子中に導入されたアルキル基が、水溶液中で会合体を形成するため、増粘性が増しているものと推察される。
【0034】
また、本発明に用いられる成分(a)は、後述する電解質と共存させることにより増粘性を示す特性があり、更に以下に示す電解質濃度の変化に対して粘度値の変化が少ないという特性がある。具体的には、成分(a)1%及び塩化ナトリウム1%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、成分(a)1%及び塩化ナトリウム0.5%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、油中水型乳化化粧料に用いた際に、電解質濃度の異なる種々の配合処方に活用しやすいという観点から、0.7以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.0以下であることがより好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられる成分(a)は、後述する電解質と共存させることにより増粘性を示す特性があるが、更に温度変化に対しての粘度値の変化が少ないという特性がある。具体的には、成分(a)1%及び塩化ナトリウム1%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、50℃における粘度が、油中水型乳化化粧料に用いた際に、温度変化の影響を受けにくいという観点から、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。
【0036】
これは、成分(a)に導入されたアルキル基が、水溶液中で疎水性相互作用により会合体を形成することにより増粘性が増しているものと推察される。また、成分(a)に導入されたエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、架橋剤として作用して粘度を増加させると共に、疎水性相互作用の自由度が低下して温度の影響を低減させているものとも推察される。
【0037】
成分(a)の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、0.01%以上5.0%以下であることが好ましく、0.1%以上2.5%以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の成分(b)電解質は、通常油中水型乳化化粧料の安定性を向上させるために配合されるが、本発明においては、成分(a)と相互作用することで、より内水相の粘度を増粘させる目的で配合される。内水相を増粘させることで、乳化滴の平均粒径を大きいままで安定に配合することが可能になり、その結果、みずみずしく、べたつきのないさっぱりとした使用感を有しながらも、肌へ厚みを維持しながら伸び広がることでマッサージ行為の持続性に優れ、なお且つ、経時安定性を向上させることが出来る。
【0039】
本発明における成分(b)電解質とは、水その他の溶媒に溶かした時その溶液が電気伝導性を持つようになる物質であり、化粧料として通常用いられるものであれば、有機・無機を問わず用いることができる。具体的には、アミノ酸、乳酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸等の有機化合物と、それらのカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の無機塩やL−アラニン、β−アラニン、L−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、L−アスパラギン一水和物、L−アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、L−シトルリン、L−システイン、L−システイン塩酸塩一水和物、L−シスチン、L−ドーパ、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸塩酸塩、L−グルタミン、ポリグルタミン酸、グリシン、トリメチルグリシン、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩一水和物、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−リジン塩酸塩、L−メチオニン、L−オルニチン塩酸塩、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン等のアミノ酸及びその誘導体や塩類、またアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グルコシド等とそれらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩等の水溶性アスコルビン酸類が挙げられる。さらに、グリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸塩、サリチル酸塩、トラネキサム酸塩、尿素、ミョウバンや海洋深層水、温泉水等、これら電解質を含む天然由来の水溶液も挙げられ、さらには海洋深層水、温泉水等、これら電解質を含む天然由来の水溶液も挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いる事が出来る。これらの電解質の中でも、アルカリ金属塩あるいはアミン類を含む電解質が好ましく、特に好ましくは、塩化ナトリウム、アスコルビン酸、乳酸、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、グリチルリチン酸、及びこれらの水溶性誘導体、並びにこれらの塩類が挙げられる。
【0040】
成分(b)の含有量は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、25℃における内水相の電気伝導度(TOA社製 EC METER CM−60Gにて測定)が50〜2500mS/m、更に好ましくは80〜2000mS/mであることがより好ましい。
【0041】
本発明における成分(c)水性成分は、油中水型乳化化粧料の水相を構成する成分であると共に、伸び広がりの軽さ、べたつきの軽減、さっぱり感等の使用感や、保湿感等の肌効果を得ることを目的として配合される。具体的には、精製水、グリセリン、プロピレグリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール、エタノール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。一般的には、精製水又は、精製水と多価アルコールやエタノールとを組み合わせたものが用いられる。
【0042】
成分(c)の含有量は、他の必須成分に応じて適宜決められるが、概ね20〜90%である。
【0043】
本発明における成分(d)は、油中水型乳化化粧料の油相を構成する成分であると共に、滑らかさ等の使用感やエモリエント感等の肌効果を得ることを目的として配合される。本発明の成分(d)としては、化粧品一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、親油性界面活性剤類、油溶性紫外線吸収剤類等を配合することができる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、モクロウ等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、ホホバ油等のロウ類、イソプロピルパルミテ−ト、イソプロピルミリステ−ト、イソプロピルステアレ−ト、イソブチルステアレ−ト、2−エチルヘキシルステアレ−ト、イソプロピルイソステアレ−ト、ブチルイソステアレ−ト、デシルイソステアレ−ト、ラウリルイソステアレ−ト、イソデシルイソデカノエ−ト、イソデシルイソノナノエ−ト、イソトリデシルイソノナノエ−ト、イソノニルイソノナノエ−ト、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコ−ル、ジ−2−エチルヘキサン酸プロピレングリコ−ル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリルジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸等の高級脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、アミノ安息香酸エチル、メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等の油溶性紫外線吸収剤類等、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン,メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・メチルフェニルポリシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度のシリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状シリコーン油、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられ、これらの一種又は二種を適宜選択して使用することができる。
これらのなかでも、エモリエント効果に優れ、経時安定性良好であるという観点から、分子内に分岐を2個以上有するイソトリデシルイソノナノエ−ト、イソノニルイソノナノエ−ト、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコ−ル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等を挙げる事ができる。これらは、必要に応じて一種、又は二種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0044】
更にこれらの中でも、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーン油及び、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコ−ル及びトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリルから選択される、分子内に分岐を2個以上有する脂肪酸エステルのうち、少なくとも2種以上を混合して含有する油性成分が更に好ましい。
【0045】
成分(d)の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、5.0〜50.0%であることが好ましく、更に好ましくは10.0〜30.0%がより好ましい。
【0046】
本発明に係る油中水型乳化化粧料に用いることができる成分(e)シリコーン系界面活性剤は、油中水型乳化化粧料を安定に乳化することを目的に配合され、その目的を逸脱しない範囲で以下のいずれを用いても良い。
【0047】
本発明における成分(e)は、シロキサン鎖を必須骨格とし、親油基として、長鎖アルキル基、長鎖アルケニル基、長鎖アルコキシ基等を含有し、親水基としてポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等のポリオキシアルキレン基、グリセリン骨格、ポリグリセリン骨格等を含有する化合物であれば、特に限定されない。なお、本発明に用いるシリコーン系界面活性剤は、油中水型乳化化粧料の経時安定性の観点より、HLB6以下の化合物が好ましい。
【0048】
本発明における成分(e)の具体例としては、成分(e)のシリコーン系界面活性剤が、一般式(1)であることを特徴とする、前記油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0049】
【化3】

【0050】
[式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、あるいは、−C2m−O−(CO)(CO)で表される有機基から選択される同種又は異種の有機基であり、Rは−C2m−O−(CO)(CO)−Rで表されるポリオキシアルキレン基、Rは一般式(2)で表されるオルガノシロキサンであって、Rは炭素数4〜30の炭化水素基又はR−(CO)−で示される有機基、Rは水素原子若しくは炭素数1〜30の炭化水素基又はR−(CO)−で示される有機基、Rは炭素数1〜30の炭化水素基である。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5であり、d、eはそれぞれ0≦d≦50、0≦e≦50の整数であり、f、gはそれぞれ2≦f≦200、0≦g≦200、かつf+gが3〜200の整数である。また、mは0≦m≦15の整数、hは0≦h≦500の整数であり、nは1≦n≦5の整数である。]
【0051】
【化4】

【0052】
また、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン及び/又はアルキル変性ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(3)、(4)で表されるものが挙げられ、分子中にポリオキシアルキレン基を5〜40%含有しかつ分子量が2000以上のものが使用され、これらを1種又は2種以上用いることができる。市販品としては、例えば、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとしては、ABIL EM97(EVONIC GOLDSCHMIDT GMBH社製)、KF−6012、KF−6015、KF−6016、KF−6017(信越化学工業社製)等が挙げられる。アルキル変性ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとしては、ABIL EM90(EVONIC GOLDSCHMIDT GMBH社製)等が挙げられる。
【0053】
【化5】

【0054】
[式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を示す。Rは、−Q−O−(CO)−(CO)−R12又は−(CO)−(CO)−R12で示され、Qは炭素数1〜5の2価の炭化水素基を示し、R12は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。aは1〜50の整数、bは0〜50の整数である。G、Gは同一でも異なってもよく、それぞれR又はRを示す。jは0〜150の整数、kは0〜50の整数である。ただし、k=0の時、G又はGの少なくとも一方はRである。]
【0055】
【化6】

【0056】
[式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を示す。R11は、−Q−O−(CO)−(CO)−R13で示され、Qは炭素数1〜5の2価の炭化水素基を示し、R13は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。cは1〜50の整数、dは0〜50の整数である。R10は−(CO)−R14で示され、eは0〜5の整数、R14は炭素数6〜18のアルキル基である。lは5〜150の整数、mは5〜40の整数、nは2〜40の整数である。]
【0057】
また、ポリグリセリン変性シリコーンとして、下記一般式(5)で表されるポリグリセリン変性シリコーンが挙げられる。
【0058】
【化7】

【0059】
[式中R15は炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、アミノ置換アルキル基、カルボキシル置換アルキル基あるいは下記一般式(6)で示される有機基から選択される同種または異種の有機基である。
式中a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5]
【0060】
【化8】

【0061】
[式中d、e、fはそれぞれ0≦d≦15、0≦e≦50、0≦f≦50の整数
16は下記一般式(7)及び/又は(8)で示されるポリグリセリン誘導体である。]
【0062】
【化9】

【0063】
【化10】

【0064】
[式中R18は水素基あるいは炭素数1〜30のアルキル基、又はR19−(CO)−で示される有機基、R19は炭素数1〜30の炭化水素基である。Qはエーテル結合又はエステル結合を含有しても良い炭素数3〜20の二価炭化水素基を示し、sは2〜20の整数、tは1〜20の整数である。R17は下記一般式(9)で示されるケイ素含有基である。]
【0065】
【化11】

【0066】
[gは1≦g≦5の整数であり、hは0≦h≦500の整数]
本発明のポリグリセリン変性シリコーンとしては、例えば、特開2004−169105号公報等に記載の方法等により合成することができ、市販品としては、KF−6100、KF−6105(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0067】
その他にも、ジメチルハイドロジェンポリシロキサンを両末端に不飽和基を有するポリオキシエチレンで架橋させた、架橋型ポリエーテル変性シリコーンであるシリコーンKSG−20、21や、側鎖に長鎖アルキル基を有するジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンを、両末端に不飽和基を有するポリオキシエチレンで架橋させたKSG−30(いずれも信越化学工業社製)なども用いることが出来る。
【0068】
さらに好ましくは、成分(e)のシリコーン系界面活性剤が、一般式(1)であることを特徴とする、前記油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0069】
成分(e)の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、0.01〜5.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.5%より好ましい。
【0070】
本発明における成分(f)ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンは、経時安定性及びマッサージ行為の持続性を向上させる目的で配合される。成分(f)を用いて水性成分を乳化することによって、肌に伸び広げる際にも、厚みを持った状態で十分なマッサージ行為を可能にし、なお且つ経時安定性に優れる油中水型乳化化粧料を提供することができる。
【0071】
成分(f)は、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)に塩化チオニル等のハロゲン化剤を反応させて調製した酸クロライドとポリエチレングリコールを、アルカリ存在下で、反応させることにより得ることができる。この時、酸クロライドの量を多めにするとジポリエステルが得られるし、この量が少なければモノエステル等のアシル化率の低いものが得られる。本発明の成分(f)に用いる場合、ポリエチレングリコールは、平均分子量で400〜6000が好ましい。一方、他方の構成要素である、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)は、この必須成分中で疎水基となる部分で、その重合度としては平均分子量1000〜3000であることが好ましい。この様なジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンの中には既に市販されているものがあり、本発明ではその様な市販品を利用することもできる。この様な市販品の内、特に好ましいものは、「アラセルP−135」(クローダ社製)である。これは、ポリエチレングリコール(平均分子量1500)のポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)のジエステルであり、その平均分子量は約5000である。本発明の油中水型乳化化粧料においては、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンは唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもできる。
【0072】
成分(f)の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、0.01〜5.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.5%がより好ましい。
【0073】
成分(a)〜(f)を含有させることで、本発明に係る油中水型乳化化粧料は、内水相の粒径を大きく保つことが可能となるため、みずみずしく、べたつきのないさっぱりとした使用感を有しながらも、肌へ厚みを維持しながら伸び広がることでマッサージ行為の持続性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れる油中水型乳化化粧料を得ることが出来る。
【0074】
本発明の油中水型乳化化粧料は、上記成分に加え、さらに通常の化粧料に用いられる成分、例えば、成分(e)、(f)以外の界面活性剤、高分子成分、保湿成分、美容成分、殺菌剤、防腐剤、無機紛体、有機紛体、酸化防止剤、色素、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0075】
本発明の製造方法としては、成分(c)の水に、成分(a)の水溶性高分子、成分(b)電解質を加えてT.K.HOMODISPER(TOKUSHU KIKA社製)を用い、攪拌・膨潤させる。これらを、成分(d)油性成分、成分(e)シリコーン系界面活性剤、さらに必要により成分(f)ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンを油相中に添加しながら分散乳化工程により得ることができる。
【0076】
本発明の油中水型乳化化粧料の用途は、乳液、クリーム、マッサージ化粧料、ハンドクリーム、ボディクリ−ム、日焼け止め料等のスキンケア化粧料、ファンデーション、メークアップ下地、コントロ−ル料等のメークアップ化粧料、ヘア乳液、ヘアクリーム等の頭髪化粧料等を例示することができ、その使用法は、手で使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0077】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら制約されるものではない。まず最初に本発明の成分(a)の合成例を挙げ、具体的に説明する。本発明の成分(a)は何らこれらの合成例に制約されるものではない。
【0078】
[合成例1]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mLの四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製:メタクリル酸ステアリルが10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物)1.80g、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.05g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一に攪拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体43gを得た。
【0079】
[合成例2]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.58gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体44gを得た。
【0080】
[合成例3]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.45gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体45gを得た。
【0081】
かくして得られた成分(a)は、そのまま化粧料に含有して用いてもよいが、あらかじめ水に膨潤して用いることもできる。例えば、脱イオン水等の純水に分散し、ホモミキサー3000〜5000回転で1時間膨潤させた膨潤物をクレンジング化粧料に配合することができる。以下に上記合成例を用いた本発明品であるクレンジング化粧料の実施例、比較例について説明する。
【0082】
実施例1〜10及び比較例1〜6 油中水型乳化化粧料
下記表1〜表3に記載の油中水型乳化化粧料を以下に示す製造方法により製造し1)みずみずしい使用感、2)べたつきのなさ、3)マッサージの持続性、4)経時安定性の4項目に関して評価した。結果を表1〜表3に示した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
[製造方法]
1.成分(1)〜(13)(22)を均一に混合溶解・膨潤する。
2.成分(14)〜(21)、(23)、(24)を均一に混合溶解する。
3.2に1を添加し、分散乳化することで、目的である油中水型乳化化粧料を得た。なお、乳化滴は平均粒子径5μmに調整した。
【0087】
[評価方法]
表1〜表3記載の処方により調整した油中水型乳化化粧料を以下に示す方法にて評価した。専門パネル20名により、前記油中水型乳化化粧料2gを両頬に乗せ、両手で円を描きながらマッサージ行為を行い使用評価した。各評価に対する評価内容及び評点は以下のとおりとした。
【0088】
[評価1]みずみずしい使用感
4点:非常にみずみずしかった。
3点:みずみずしかった。
2点:あまりみずみずしくなかった。
1点:みずみずしくなかった。
【0089】
[評価2]べたつきのなさ
4点:全くべたつかなかった。
3点:ほとんどべたつかなかった。
2点:べたついた。
1点:非常にべたついた。
【0090】
[評価3]マッサージ行為の持続性
4点:6分以上マッサージを持続することができた。
3点:4分以上マッサージを持続することができた。
2点:2分以上マッサージを持続することができた。
1点:マッサージを持続することができなかった。
【0091】
各評価に対する評価結果の点数をそれぞれ合計し、以下に示す評価基準に従って評価した。なお、本発明では、80点満点の評価に対して50点以上であるB以上の評価が好ましいものとした。
【0092】
[評価基準]
(評価) :(点数)
AA :70点以上
A :60点以上69点以下
B :50点以上59点以下
C :40点以上49点以下
D :30点以上39点以下
E :29点以下
【0093】
[評価4]経時安定性
表1〜表3の油中水型乳化化粧料を広口規格ビン(PS−No.6)に40mL注ぎ、キャップを閉め、50℃恒温槽に、1ヶ月間静置し、分離を目視にて観察し、以下の基準に従って判定を行った。
(判定基準) :(判定)
分離は全く認められない : ◎
分離した層が1mm未満であり問題ないレベル : ○
分離した層が1mm以上5mm以下であり問題となるレベル : △
分離した層が5mm以上である : ×
【0094】
表1〜表3の評価結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜10は、みずみずしく、べたつきのないさっぱりとした使用感を有しながらも、肌へ厚みを維持しながら伸び広がることでマッサージ行為の持続性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れる効果を得た。それに対し、比較例1は内水相の水溶性高分子が電解質によって凝集・収縮することによりマッサージ行為の持続性に欠け、比較例2、3、4配合の水溶性高分子に関してはその傾向が更に顕著となるために経時安定性が不十分であった。また、比較例5、6ではキサンタンガムやカルボキシメチルセルロース特有のべたつきが存在していた。また、比較例7は、成分(a)の経時安定性に優れず、また増粘が不十分であったために、マッサージ効果に劣るものであった。
【0095】
実施例11 固形状油中水型ファンデーション
(成分) (%)
1.有機変性スメクタイト 1.0
2.エタノール 5.0
3.1,3−ブチレングリコール 5.0
4.合成例1の水溶性高分子(a) 1.0
5.塩化ナトリウム 0.5
6.クエン酸 適量
7.クエン酸ナトリウム 適量
8.香料 適量
9.精製水 残量
10.防腐剤 適量
11.硫酸バリウム被覆雲母チタン 1.5
12.シリコーン被覆酸化チタン 7.5
13.シリコーン被覆黄酸化鉄 0.4
14.シリコーン被覆ベンガラ 0.07
15.シリコーン被覆黒酸化鉄 0.01
16.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン ※3 2.0
17.ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレン※6 1.0
18.オクタメチルシクロテトラシロキサン 7.0
19.イソノナン酸イソノニル 0.0
20.イソノナン酸イソトリデシル 3.0
21.ショ糖脂肪酸エステル 1.0
22.キャンデリラワックス 4.0
23.マイクロクリスタリンワックス 2.0
24.酢酸トコフェロール 0.05
※6 アラセルP−135(クローダ社製)
【0096】
(製造方法)
A:成分1〜10を70℃にて均一に溶解する。
B:成分11〜24を70℃にて均一に混合する。
C:BにAを加え乳化する。
D:70℃にて容器に流し込み充填後放冷する。
【0097】
以上のようにして得られた本発明の実施例11の固形状油中水型ファンデ−ションは、みずみずしく、べたつきもなく、良好なメーキャップ効果をもち、経時安定性も良好なものであった。
【0098】
実施例12 美容液
(成分) (%)
(1)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン※7 1.5
(2)アルキル変性ポリオキシアルキレン変性
オルガノポリシロキサン※4 1.0
(3)セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.5
(4)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
(5)イソミリスチン酸イソノニル 8.0
(6)パーフルオロポリエーテル 0.5
(7)パラオキシ安息香酸メチル 適量
(8)香料 適量
(9)デキストリン脂肪酸エステル 1.0
(10)精製水 残量
(11)合成例3の水溶性高分子(a) 2.0
(12)グリセリン 3.0
(13)プロピレングリコール 10.0
(14)アスコルビン酸2−グルコシド 2.0
(15)クエン酸 適量
(16)クエン酸ナトリウム 適量
※6 KF−6015(信越化学工業社製)
【0099】
(製造方法)
A.成分(1)〜(9)を室温で混合分散する。
B.成分(10)〜(16)を室温で混合分散する。
C.AにBを徐々に注入して乳化後、脱泡して美容液を得た。
【0100】
この美容液は、みずみずしく、べたつきもなく、美容効果の持続に優れ、また経時安定性も良好なものであった。
【0101】
実施例13 保湿パック料
(成分) (%)
(1)アルキル変性ポリオキシアルキレン変性
オルガノポリシロキサン※4 3.0
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
(3)イソノナン酸イソトリデシル 15.0
(4)流動パラフィン 1.0
(5)マイクロクリスタリンワックス 0.5
(6)パラオキシ安息香酸メチル 適量
(7)香料 適量
(8)シリコーン処理酸化チタン 5.0
(9)シリコーン処理酸化鉄 0.2
(10)ナイロン粉末 1.0
(11)エタノール 3.0
(12)精製水 残量
(13)合成例2の水溶性高分子(a) 3.0
(14)ジグリセリン 3.0
(15)1,3−ブチレングリコール 15.0
(16)乳酸ナトリウム 1.0
(17)赤色106号 適量
【0102】
(製法)
A.成分(1)〜(10)を60℃にて混合分散する。
B.成分(11)〜(17)60℃にて混合分散する。
C.AにBを徐々に注入して乳化後、冷却脱泡して保湿パック料を得た。
【0103】
この保湿パック料は、みずみずしく、べたつきもなく、使用後の保湿効果に優れ、また経時安定性も良好なものであった。
【0104】
実施例14 サンスクリーン
(成分) (%)
(1)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン※6 1.0
(2)ジメチルポリシロキサン 5.0
(3)オクタメチルシクロテトラシロキサン 20.0
(4)トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 5.0
(5)オクチルメトキシシンナメート 5.0
(6)パラオキシ安息香酸メチル 適量
(7)香料 適量
(8)シリコーン処理微粒子酸化チタン 10.0
(9)シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 10.0
(10)トリメチルシロキシケイ酸 0.5
(11)エタノール 10.0
(12)精製水 残量
(13)合成例3の水溶性高分子(a) 1.0
(14)1,2−ペンタンジオール 1.0
(15)塩化ナトリウム 0.2
【0105】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を室温にて混合分散する。
B.成分(11)〜(15)を室温にて混合分散する。
C.AにBを徐々に注入して乳化後、脱泡してサンスクリーンローションを得た。
【0106】
このサンスクリーンローションは、みずみずしく、べたつきもなく、また経時安定性も良好なものであった。
【0107】
実施例15 クリームアイシャドウ
(成分) (%)
(1)ポリグリセリン変性シリコーン※8 1.0
(2)ジメチルポリシロキサン 7.0
(3)オクタメチルシクロテトラシロキサン 10.0
(4)イソノナン酸イソステアリル 6.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 適量
(6)セタノール 0.5
(7)ミツロウ 1.0
(8)香料 適量
(9)パルミチン酸処理酸化チタン 2.0
(10)パルミチン酸処理酸化鉄 0.2
(11)パルミチン酸処理雲母チタン 10.0
(12)エタノール 8.0
(13)精製水 残量
(14)合成例1の水溶性高分子(a) 3.0
(15)ジプロピレングリコール 3.0
(16)塩化ナトリウム 2.0
※8 KF−6105(信越化学工業社製)
【0108】
(製造方法)
A.成分(1)〜(11)を50℃にて混合分散する。
B.成分(12)〜(16)を50℃にて混合分散する。
C.AにBを徐々に注入して乳化後、冷却脱泡してクリームアイシャドウを得た。
【0109】
このクリームアイシャドウは、
みずみずしく、べたつきもなく、更にメーキャップ効果に優れ、また経時安定性も良好なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(e):
成分(a):アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子
成分(b):電解質
成分(c):水性成分
成分(d):油性成分
成分(e):シリコーン系界面活性剤
を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(a)の含有量が、0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(e)のシリコーン系界面活性剤が、下記一般式(1)で表される請求項1又は2の項記載の油中水型乳化化粧料。
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、あるいは、−C2m−O−(CO)(CO)で表される有機基から選択される同種又は異種の有機基であり、Rは−C2m−O−(CO)(CO)−Rで表されるポリオキシアルキレン基、Rは下記一般式(2)
【化2】

で表されるオルガノシロキサンであって、Rは炭素数4〜30の炭化水素基又はR−(CO)−で示される有機基、Rは水素原子若しくは炭素数1〜30の炭化水素基又はR−(CO)−で示される有機基、Rは炭素数1〜30の炭化水素基である。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5であり、d、eはそれぞれ0≦d≦50、0≦e≦50の整数であり、f、gはそれぞれ2≦f≦200、0≦g≦200、かつf+gが3〜200の整数である。また、mは0≦m≦15の整数、hは0≦h≦500の整数であり、nは1≦n≦5の整数である。]
【請求項4】
さらに成分(f):ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンを含む、請求項1〜3の何れかの項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項5】
マッサージ化粧料であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかの項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項6】
成分(a)が、(メタ)アクリル酸95.42〜97.48質量%、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル2.43〜4.30質量%およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%である(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることを特徴とする請求項1〜5の何れかの項記載の油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2010−235469(P2010−235469A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83150(P2009−83150)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】