説明

油中水型乳化日焼け止め化粧料

【課題】紫外線散乱剤粉末として、疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンを配合した日焼け止め化粧料において、紫外線散乱剤粉末の多配合に基づく使用感の悪さと、紫外線散乱剤粉末配合による洗浄性の悪さを改善すること。
【解決手段】
下記(a)〜(e)を含有することを特徴とする油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタン:10〜30質量%
(b)親油性非イオン界面活性剤:0.5〜5質量%
(c)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上の油分:1〜5質量%
(d)揮発性シリコーン油及び/又は炭化水素油:10〜40質量%
(e)水:5〜30質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。さらに詳しくは、十分な紫外線防御能を発揮する配合量を有する紫外線散乱剤粉末として、疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンを多配合した日焼け止め化粧料において、紫外線散乱剤粉末の多配合に基づく使用感の悪さと、紫外線散乱剤粉末配合による洗浄性の悪さを改善した油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、紫外線散乱剤を配合した油中水型乳化日焼け止め化粧料は周知である。
しかしながら、特許文献1は、多くの油中水型乳化日焼け止め化粧料がそうであるように油中水型乳化組成物であるため、のび広がりがよく耐水性にも優れているという利点を有する一方、きしみや白浮きの原因となる紫外線散乱剤を多量に配合しなくても高いSPF値を達成できる日焼け止め化粧料が開示されており、特許文献1によっても、紫外線散乱剤を多量に配合可能な油中水型乳化日焼け止め化粧料の提供は行われていない。すなわち、紫外線散乱剤を多量に配合するという技術課題を避けており、使用感の観点から紫外線散乱剤の配合量は5質量%以下と制限されている。紫外線散乱剤の配合量が制限される分、紫外防御効果を上げるためには紫外線吸収剤を十分に配合する必要がある。
【0003】
また、特許文献2には、(a)ネオペンタン酸イソデシルと、(b)紫外線吸収剤と、(c)紫外線散乱剤と、(d)シリコーン油を含有する水中油型または油中水型乳化日焼け止め化粧料が開示され、(c)成分が、酸化亜鉛および/または二酸化チタンであること記載されている。特許文献2の発明の目的は、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤が有する、優れた紫外線遮蔽効果を十分に発揮し、かつ皮膚へのなじみがよく、べたつかないといった使用感にも優れ、かつ使用後の皮膚からの化粧料の除去が容易である(洗浄性が良い)日焼け止め化粧料を提供することである。
【0004】
特許文献3には、紫外線散乱剤として、低吸油量、見掛けの比容積が低いという顕著な効果を有する疎水化粉末を、日焼け止め化粧料に安定に配合して、疎水化粉末配合に起因するべたつきを低減し、使用感に優れた乳化日焼け止め化粧料を提供するべく、(a)特定の疎水化処理酸化亜鉛粉末、(b)揮発性シリコーン、(c)特定構造のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、(d)水を含有することを特徴とする油中水型乳化日焼け止め化粧料が開示されている。そして、紫外線散乱剤の疎水性粉末としては酸化チタン、酸化亜鉛が使用されるが、塗布時の透明性の点で屈折率の低い酸化亜鉛が近年多く配合されるようになっていることが記載されている。
【0005】
一方、特許文献4には、衣服に二次付着した汚着が洗濯により容易に除去できる日焼け止め化粧料を提供することを目的とするため、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンからなる紫外線散乱剤を配合しない油中水型又は水中油型日焼け止め化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−126832号公報
【特許文献2】特開2010−222349号公報
【特許文献3】特開2005−232068号公報
【特許文献4】特開2010−059136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、十分な紫外線防御能を発揮する配合量を有する紫外線散乱剤粉末として、疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンを多配合した日焼け止め化粧料において、紫外線散乱剤粉末の多配合に基づく使用感の悪さと、紫外線散乱剤粉末配合による洗浄性の悪さを改善した油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記(a)〜(e)を含有することを特徴とする油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供するものである。
(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタン:10〜30質量%
(b)親油性非イオン界面活性剤:0.5〜5質量%
(c)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上の油分:1〜5質量%
(d)揮発性シリコーン油及び/又は炭化水素油:10〜40質量%
(e)水:5〜30質量%
【0009】
また、本発明は、親油性非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体であることを特徴とする上記の油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
(1)紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンを多配合することによって、十分な紫外線防御能を発揮する油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供できる。従って、紫外線吸収剤を配合する必要はなく、このことは本発明の大きな特徴と利点になっている。仮に、紫外線吸収剤を配合するとしても少量の配合で十分であり、難溶性の紫外線吸収剤の少量配合に適している。
(2)紫外線散乱剤粉末の多配合に基づく使用感の悪さを改善できる。
(3)紫外線散乱剤粉末配合による洗浄性の悪さを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は実施例1と実施例4の吸光度スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳述する。
【0013】
(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタン
十分な紫外線防御能を有する紫外線散乱剤として酸化亜鉛及び酸化チタンの粉末が本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料に配合される。本発明においては、平均一次粒子径が10nm〜100nm、より好ましくは10nm〜50nmの微粒子酸化チタン及び微粒子酸化亜鉛が特に好ましい。平均粒子径は透過電子顕微鏡写真の画像解析による個数平均径などの常法によって測定される。
【0014】
疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンは、酸化亜鉛及び酸化チタンの粉末を疎水化処理して得られる。疎水化処理された当該粉末分は、油中水型乳化日焼け止め化粧料の油中に分散して存在することになる。疎水化処理剤の種類としては制限されないが、例えば、脂肪酸、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、トリグリセライド、エステル、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素化合物が挙げられる。
本発明に好ましく用いる疎水化処理剤は、アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、パーフルオロアルキルリン酸、(アクリル酸アルキル/ジメチルシリコーン)コポリマー、パルミチン酸デキストリン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、メチコン、ジメチコン、高分子シリコーン、アクリロイルジメチルタウレートナトリウム/メタクリルアミドラウリル酸コポリマーなどが挙げられる。
特に、酸化亜鉛には、オクチルトリメトキシシラン処理、シリコーン(ジメチコン・ハイドロジメチコン)処理が好ましい。
また、酸化チタンには、特に、アクリロイルジメチルタウレートナトリウム/メタクリルアミドラウリル酸コポリマー処理、ステアリン酸・酸化アルミニウム処理が好ましい。
疎水化処理の方法は特に限定されず常法に従って表面処理される。例えば、オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサン中にて酸化亜鉛を、一定時間、混合攪拌し、これをろ過することによって、オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛を製造することが出来る。なお、ジメチルポリシロキサンは疎水化処理可能な液状のものを用いる。
【0015】
(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンの配合量は、両者の合計で、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、10〜30質量%であり、好ましくは、12〜25質量%である。
【0016】
(b)親油性非イオン界面活性剤
本発明に用いる親油性非イオン界面活性剤は、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリン脂肪酸エステル類やポリグリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α'-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);POE-ヒマシ油・POE-硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体等が挙げられる。
本発明においては、特に、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を使用することが安定な乳化物を提供する上で好ましい。ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体は、商品名「KF−6028」の信越化学工業株式会社製の市販品を好適に使用できる。
【0017】
(b)親油性非イオン界面活性剤の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.5〜5質量%であり、好ましくは、0.5〜3質量%である。
【0018】
(c)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上の油分
本発明に使用する油分は、N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであり、油中水型乳化日焼け止め化粧料の外相の油相を構成する油分である。これらの油分は市販品を使用することができる。
特に、N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)が好ましい。
本発明においては、詳しい原理は分からないが、当該(c)成分の油分と(d)揮発性シリコーン油及び炭化水素油が、油中水型乳化日焼け止め化粧料に配合され、油相を構成し、当該油相中に、(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンの紫外線散乱剤が分散して存在することによって、当該紫外線散乱剤粉末の多配合に基づく使用感の悪さと、紫外線散乱剤粉末配合による洗浄性の悪さを改善できるものと推測される。
【0019】
(c)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上の油分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、1〜5質量%であり、好ましくは、1〜3質量%である。
【0020】
(d)揮発性シリコーン油及び/又は炭化水素油
本発明に用いる揮発性シリコーン油は、例えば、低重合ジメチルポリシロキサンや環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)を使用できる。
また、本発明に用いる炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、スクワレン、ワセリン等が挙げられる。
本発明においては、揮発性シリコーン油又は炭化水素油のいずれか一つを使用しても良いし、両者を使用しても良い。また、二種以上の揮発性シリコーン油、二種以上の炭化水素油を使用しても良い。
当該油分は、油中水型乳化日焼け止め化粧料の油相を構成する油分である。
【0021】
(d)揮発性シリコーン油及び/又は炭化水素油の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、10〜40質量%であり、好ましくは、20〜40質量%である。
【0022】
なお、油中水型乳化日焼け止め化粧料の油相を構成する油分は、上記の(c)成分と(d)成分のみでもよいが、その他の任意の油分を配合することも可能である。
例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油などを適宜配合することが可能である。
【0023】
(e)水
本発明に使用する水は、油中水型乳化日焼け止め化粧料の内相の水相を構成する成分である。その配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、5〜30質量%程度である。
なお、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料において、水相(水に溶解している水溶性成分も含む)と油相(油分に溶解又は分散している成分も含む)の質量比は、水相:油相=2:8〜1:9の範囲である。
【0024】
(f)紫外線吸収剤
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、紫外線散乱剤の多配合により、紫外線吸収剤を配合しなくても十分な紫外線防御能を発揮することが特徴であり、利点でもある。一方、任意の紫外線吸収剤を配合することも勿論可能である。なお、本発明は十分な紫外線防御能を有するため、紫外線吸収剤を少量配合する場合であれば、難溶性の紫外線吸収剤を安定に配合できるという利点をも有する。
紫外線吸収剤としては、(1)安息香酸系紫外線吸収剤、(2)アントラニル酸系紫外線吸収剤、(3)サリチル酸系紫外線吸収剤、(4)ケイ皮酸系紫外線吸収剤、(5)トリアジン系紫外線吸収剤、(6)その他の紫外線吸収剤を具体的に配合可能である。
【0025】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、上記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、保湿剤、増粘剤、粉末、アルコール、天然高分子、合成高分子、糖類、酸化防止剤、緩衝剤、各種抽出液、安定化剤、防腐剤、色素、香料等の通常化粧料に配合される成分を適宜配合することができる。
【0026】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は常法によって製造できる。通常は、(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンを、当該粉末の分散性が良い(d)揮発性シリコーン油及び/又は炭化水素油と、(c)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上と、(b)親油性非イオン界面活性剤とを、HMミキサー等を使用して混合攪拌して、分散体パーツを調製する。そして、その他の油分や油性成分(親油性の紫外線吸収剤を配合する場合等)を配合する場合は別パーツで調製し、この別パーツと分散体パーツとを混合して、油相とする。
一方、(e)水と、エタノールや増粘剤や保湿剤などの水性成分を混合して水相とする。最後に、水相と油相を常法により乳化して、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料が得られる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0028】
「表1」及び「表2」に示す処方にて、常法により、油中水型乳化日焼け止め化粧料である乳液を製造し、以下の評価を行った。




























【0029】
【表1】

【0030】
「UV防御能」
市販のPMMA板(5cm×5cm)上にそれぞれの処方により作製した製剤を1平方センチメートルあたり0.75mg塗布した。分光光度計(「U−4100」:(株)日立ハイテクノロージーズ製)によって、290nm〜500nmの範囲で吸光度を測定し、実施例と比較例の吸光度スペクトルの比較を行った。
<評価基準>
○:実施例1と同量の紫外線散乱剤を含有し(合計14質量%)、実施例1と同様の吸光度スペクトルを示した。よって、実施例1と同様にUV防御能に優れている。
×:紫外線散乱剤の含有量が10質量%未満であり、UV防御能に劣っている。
<結果>
実施例1の吸光度スペクトルを「図1」に示す。
実施例2〜3及び比較例1〜6の吸光度スペクトルは、実施例1の吸光度スペクトルと同様であって、実施例1〜3及び比較例1〜6の何れの評価も「○」であり、UV防御能に等しく優れていることが判明した。
すなわち、「表1」のいずれの実施例及び比較例も、(a)紫外線散乱剤の粉末(オクチルトリメトキシシラン処理酸化亜鉛とアクリロイルジメチルタウレートナトリウム/メタクリルアミドラウリル酸コポリマー処理酸化チタン)が合計14質量%と十分に配合されており、高い吸光度を示すスペクトルを示した。
したがって、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、極めて高いUV防御能を示すことが分かる。本発明では、紫外線吸収剤を配合しなくても優れたUV防御能を発揮するという優れた利点を有することが分かる。
【0031】
「使用感」
専門パネル10名で実使用試験を行い(実施例及び比較例の日焼け止め化粧料を上腕に塗布する)、粉末のざらつきがなく、さらっとしていて、総合的に優れた使用感か否かを評価した。
<評価基準>
◎:10名中7名以上が優れた使用感と答えた。
○:10名中5名以上7名未満が優れた使用感と答えた。
△:10名中3名以上5名未満が優れた使用感と答えた。
×:10名中2名以下が優れた使用感と答えた。
<結果>
実施例1〜3及び比較例1は、紫外線散乱剤粉末を合計で14質量%も多配合したにもかかわらず、比較例2〜6に比べて、いずれも優れた使用感を示すことが判明した。
さらに(c)成分に、N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)を使用した実施例1は、特に優れた使用感を有することが判明した。
【0032】
「洗浄性」
専門パネル10名で実使用試験を行った。各パネルの上腕の3cm×3cmの枠内に18mgの実施例及び比較例の日焼け止め化粧料を塗布後、よくなじませ30分乾燥させる。その後、市販の手洗い用洗浄料(石鹸)で塗布部位の洗浄を行う。洗浄後15分で、肌を触り残存感を確認する。
<評価基準>
○:10名中6名以上が残存感を感じなかった
△:10名中3名以上が残存感を感じなかった
×:10名中2名以下が残存感を感じなかった
<結果>
実施例1〜3は、比較例1〜6に比べて何れも洗浄性に優れることが判明した。比較例1は、(c)成分のN−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)の配合量は0.5質量%であるため、その洗浄性は実施例1〜3よりも劣ることが判明した。





【0033】
【表2】

【0034】
「安定性」
製造直後の乳液をサンプル管に充填し、50℃で1ヶ月放置して目視にて観察した。
<評価基準>
○:油相が相溶しており、無色透明で、安定した状態である。
×:油相が互いに交じり合わず、白濁し安定した状態ではない。
<結果>
実施例4〜6及び比較例8〜11は安定性に優れることが判明した。また、(c)成分のN−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)の配合量が7質量%である比較例7のみが、安定性に劣ることが判明した。
なお、比較例7は、安定性に劣り安定した状態ではなかったので、下記のUV防御能、使用感、洗浄性の試験は実施しなかった。
【0035】
「UV防御能」
市販のPMMA板(5cm×5cm)上にそれぞれの処方により作製した製剤を1平方センチメートルあたり0.75mg塗布した。分光光度計(「U−4100」:(株)日立ハイテクノロージーズ製)によって、290nm〜500nmの範囲で吸光度を測定し、実施例と比較例の吸光度スペクトルの比較を行った。
<評価基準>
○:実施例4と同量の紫外線散乱剤を含有し(合計19質量%)、実施例4と同様の吸光度スペクトルを示した。よって、実施例4と同様にUV防御能に優れている。
×:紫外線散乱剤の含有量が10質量%未満であり、UV防御能に劣っている。
<結果>
実施例4の吸光度スペクトルを「図1」に示す。
実施例5〜6及び比較例8〜11はいずれも実施例4の吸光度スペクトルと同様であって、実施例4〜6及び比較例8〜11の何れの評価も「○」であり、UV防御能に等しく優れていることが判明した。
すなわち、「表2」のいずれの実施例及び比較例も、(a)紫外線散乱剤の粉末(ステアリン酸・酸化アルミニウム処理酸化チタンとジメチコン・ハイドロジメチコン処理酸化亜鉛が合計19質量%と十分に配合されており、高い吸光度を示すスペクトルを示した。
したがって、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、極めて高いUV防御能を示すことが分かる。本発明では、紫外線吸収剤を配合しなくても優れたUV防御能を発揮するという優れた利点を有することが分かる。
【0036】
「使用感、洗浄性」
上記「表1」の場合と同一の試験を行い、同様に評価した。
使用感は、実施例4〜6は、紫外線散乱剤粉末を合計で19質量%も多配合したにもかかわらず、比較例8〜11に比べて、いずれも優れた使用感を示すことが判明した。さらに(c)成分に、N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)を使用した実施例4は、特に優れた使用感を有することが判明した。
洗浄性は、実施例4〜6は、比較例8〜11に比べて何れも洗浄性に優れることが判明した。
【0037】
以下に、本発明のその他の実施例を示す。いずれも、安定性、UV防御能、使用感、洗浄性に優れる油中水型乳化日焼け止め化粧料である。
【0038】
実施例7:W/O日焼け止め化粧料(乳液)
配合成分 質量%
(1)グリセリン 5
(2)1,3−ブチレングリコール 5
(3)有機変性粘土鉱物
(商品名:ベントン38VCG:NLインダストリー社) 0.3
(4)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(商品名:KF−6028:信越化学工業株式会社) 2
(5)セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
(6)イソステアリン酸 0.5
(7)シクロメチコン 38
(8)トリエチルヘキサノイン 2
(9)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル 5
(10)ジメチコン(6cs) 1
(11)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)
2
(12)オクチルトリメトキシシラン処理酸化亜鉛(20nm) 10
(13)ステアリン酸・酸化アルミニウム処理酸化チタン(10-30n) 4
(14)ポリメタクリル酸メチル 4
(15)ポリメチルシルセスキオキサン 1
(16)フェノキシエタノール 0.5
(17)メタリン酸Na 0.1
(18)精製水 残余
<製造方法>
(4)〜(11)を混合して油相とする。次に、(2)に(16)を湿潤させ、(1)とともに、(17)を溶解した(18)と混合する(水相)。油相に(3)を加えディスパーで分散させた後、同じく(12)〜(15)を油相内でディスパー分散させる。最後に油相と水相を混合させ、乳化機にて乳化処理を行う。
【0039】
実施例8:W/O日焼け止め化粧料(乳液)
配合成分 質量%
(1)グリセリン 5
(2)ジプロピレングリコール 7
(3)PEG/PPG-17/4-ジメチルエーテル 3
(4)ポリエーテル変性シリコーン(商品名:シリコーンSC0938B) 0.6
(5)セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.5
(6)トリエタノールアミン 1.5
(7)シクロメチコン 18
(8)イソドデカン 5
(9)イソステアリン酸 0.3
(10)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)
1.5
(11)エチルヘキサン酸セチル 3
(12)ジメチコン(6cs) 5
(13)ポリプロピレングリコール 2
(14)パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル 7.5
(15)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 2.5
(16)アクリロイルジメチルタウレートナトリウム/メタクリル
アミドラウリル酸コポリマー処理酸化チタン(10-30nm) 5
(17)ジメチコン・ハイドロジメチコン処理酸化亜鉛(20nm) 15
(18)ポリメタクリル酸メチル 3
(19)ポリメチルシルセスキオキサン 2
(20)タルク 3
(21)EDTA 0.2
(22)精製水 残余
<製造方法>
(7)〜(14)を混合したものに(4)(5)を加え油相とする。次に、(22)に(21)を溶解させる。そこに(6)を入れた後、(15)を溶解させ、(1)〜(3)を加える(水相)。
油相に(16)〜(20)を加えディスパーで分散させた後、水相を混合させ、乳化機にて乳化処理を行う。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、紫外線防御能に優れ、優れた使用感と洗浄性を有する新規有用な発明である。
本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料は、日焼け止め乳液や日焼け止めクリームとして好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)を含有することを特徴とする油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタン:10〜30質量%
(b)親油性非イオン界面活性剤:0.5〜5質量%
(c)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上の油分:1〜5質量%
(d)揮発性シリコーン油及び/又は炭化水素油:10〜40質量%
(e)水:5〜30質量%
【請求項2】
親油性非イオン界面活性剤がポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
であることを特徴とする請求項1記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2013−43875(P2013−43875A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184241(P2011−184241)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】