説明

油中水型油脂組成物及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、風味、コクに優れ、特に後味の広がりに優れた油中水型油脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】油中水型油脂組成物は、乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物を含有し、さらに、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上の合計量を0.005重量%以上0.5重量%以下含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味、コクに優れ、特に後味の広がりに優れた油中水型油脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マーガリン等の油中水型油脂組成物は、バターと異なり主に植物性油脂を使用するため、健康面や価格面で優れているが、バターのような風味を有しない。このため、フレーバーを添加して香りづけすることが一般的である。しかしながら、従来のフレーバーではバターのような独特の風味やコクを付与することはできない。このため、風味等を改善するために、フレーバーの改良等の試みがなされているが、加熱後の風味持続や後味の広がり等の点で充分ではなかった。
【0003】
例えば、乳等の膜分離透過液を蛋白質分解酵素で処理することを特徴とする風味等改善剤が開示されている(特許文献1)。当該改善剤では、パーム油脂の風味のマスキング効果が高いものの後味の広がりの点で充分ではなかった。
【0004】
また、ラクトン類と、脂肪酸類、油脂加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上からなる成分を含有する乳系香料組成物が開示されている(特許文献2)。しかしながら、当該組成物には、バター様フレーバーを有するものの、当該組成物をマーガリンに添加した実施例の記載はない。したがって、本組成物をマーガリンに添加した際の後味の広がりについての開示も示唆もなく、さらに、後述する比較例で示したようにフレーバーのみでは、後味の広がりを充分に得ることはできない。
【0005】
このように、風味、コクに優れ、特に後味の広がりに優れた油中水型油脂組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−81502号公報
【特許文献2】特開2005−15685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、風味、コクに優れ、特に後味の広がりに優れた油中水型油脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物、並びに、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上を含有させることで、風味、コク、そして、特に後味の広がりに優れた油中水型油脂組成物を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物を含有し、かつγ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上の合計量を、0.005重量%以上0.5重量%以下含有する油中水型油脂組成物である。
【0010】
前記組成物は、さらに、δ−トリデカラクトン及び/又はδ−テトラデカラクトンを含有することが好ましい。
【0011】
前記組成物は、さらに、脱脂粉乳を含有することが好ましい。
【0012】
前記組成物は、さらに、ホエイパウダー、乳脂肪分解物、及び、乳タンパク分解物のいずれか1種又は2種以上を含有することが好ましい。
【0013】
前記組成物は、さらに、前記乳酸発酵組成物を0.3重量%以上20重量%以下含有することが好ましい。
【0014】
前記組成物は、さらに、前記脱脂粉乳を0.02重量%以上10重量%以下含有することが好ましい。
【0015】
前記組成物は、さらに、前記乳酸発酵組成物を水相中に含有することが好ましい。
【0016】
前記組成物は、さらに、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンラクトンのいずれか1種又は2種以上を油相中に含有することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物を溶解した水相とγ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上を溶解した油相とを、前記ラクトン類が0.005重量%以上0.5重量%以下となるように混合することを含む、油中水型油脂組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、風味、コクに優れ、特に後味の広がりに優れた油中水型油脂組成物を得ることができ、さらに本油脂組成物で調理した食品に充分なコクを付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に用いられる油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
本発明の油中水型油脂組成物の油相は、好ましくは30重量%以上85重量%以下であり、より好ましくは50重量%以上85重量%以下であり、さらに好ましくは70重量%以上85重量%以下である。調理に使用した場合の作業性の点においては、油相の含量を高くすることが好ましい。
【0021】
本発明で用いられる乳清とは、乳から乳脂肪分やカゼイン等を除いた水溶液のことであり、ホエイ(whey)とも呼ばれる。また、クリームとは、乳から遠心分離等で取り出した乳脂肪のことである。乳は、牛、ヤギ、羊、水牛、ロバ等の動物から得られたものを使用できるが、好ましくは牛から得られたものである。
【0022】
乳清及びクリームの混合比は、好ましくは20:80〜80:20であり、より好ましくは25:75〜80:20であり、さらに好ましくは25:75〜75:25である
【0023】
乳清及びクリームの混合物を酵素処理するに際して、酵素としては蛋白質分解酵素、リパーゼ等を使用する。好ましくは、蛋白質分解酵素及び/又はリパーゼである。
【0024】
前記蛋白質分解酵素は、市販されているものを用いることも可能である。例えば、オリエンターゼONS、オリエンターゼ20A、オリエンターゼ90N、オリエンターゼ10NL、ヌクレイシン(以上、阪急バイオインダストリー社製)、トリプシン、フレーバーザイム1,000L、アルカラーゼ2.4L、ニュートラーゼ0.5L(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製)、コクラーゼP(三共社製)、パパインW−40、ブロメラインF、プロレザー、パンクレアチンF、プロテアーゼM「アマノ」、プロテアーゼA「アマノ」、プロテアーゼN「アマノ」、プロテアーゼP「アマノ」、ウマミザイムG、ヌクレアーゼ「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、ビオプラーゼSP−15FG、パパイン、デナチームAP、デナプシン10P(以上、ナガセケムテックス社製)、プロチンAY−10、プロチンNY−10、サモアーゼY−10(大和化成社製)等が挙げられる。特にペプチダーゼ、中でもエキソペプチダーゼが好ましい。
【0025】
また、蛋白質分解酵素は単独でも用いられるが、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0026】
前記リパーゼは、特に制限はなく、その起源は特に制限されるものではない。また、市販されているものを使用することができる。
【0027】
本発明では、前記の乳清及びクリームの混合物の酵素処理物を乳酸発酵した組成物を使用する。ここで乳酸発酵は、通常の方法でおこなうことができる。また、乳酸菌の菌種は特に限定されない。乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物の市販の例としては、製品名:OMテイストアップ、オーム乳業株式会社製が挙げられる。
【0028】
油中水型油脂組成物の前記乳酸発酵組成物の含量は、好ましくは0.3重量%以上20重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以上10重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以上8重量%以下である。含量が少なすぎると風味が充分でない場合があり、多すぎると異風味が生じる場合がある。
【0029】
また、本発明で使用されるγ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ―ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上の油中水型油脂組成物中における合計含有量は、0.005重量%以上0.5重量%以下である。前記ラクトン類の油中水型油脂組成物中の合計含有量は、好ましくは0.005重量%以上0.3重量%以下であり、より好ましくは、0.008重量%以上0.1重量%以下であり、さらに好ましくは、0.008重量%以上0.05重量%以下である。所定量より少ないと充分な風味が得られない場合があり、多いと異風味を生じるおそれがある。
【0030】
また、δ−デカラクトンの含有量は、油中水型油脂組成物中に、好ましくは0.0005重量%以上0.05重量%以下、より好ましくは、0.0008重量%以上0.03重量%以下である。また、δ−ドデカラクトンの含有量は、油中水型油脂組成物中に、好ましくは0.0005重量%以上0.05重量%以下、より好ましくは、0.001重量%以上0.03重量%以下である。所定量より少ないと充分な風味が得られない場合があり、多いと異風味を生じるおそれがある。
【0031】
また、本発明では、さらに、δ−トリデカラクトン及び/又はδ−テトラデカラクトンを含有することで風味等の効果、特に後味の広がりの効果が向上する。δ−トリデカラクトン及びδ−テトラデカラクトンの合計含有量は、好ましくは0.00002重量%以上0.1重量%以下であり、より好ましくは0.00008重量%以上0.05重量%以下である。
【0032】
また、δ−トリデカラクトンの含有量は、好ましくは0.00002重量%以上0.08重量%以下であり、より好ましくは0.00008重量%以上0.05重量%以下である。また、δ−テトラデカラクトンの含有量は、好ましくは0.0001重量%以上0.1重量%以下であり、より好ましくは0.0005重量%以上0.08重量%以下である。所定量添加することとで、特に後味の広がりの効果が向上する。
【0033】
本発明では、さらに、脱脂粉乳を添加すると、風味等の効果が向上する。ここで、脱脂粉乳とは、生乳又は乳の乳脂肪分を除去したものから水分をほとんど除去した粉末状のものであり、スキムミルク(skimmed milk)とも呼ばれる。乳は、牛、ヤギ、羊、水牛、ロバ等の動物から得られたものを使用できるが、好ましくは牛から得られたものである。
【0034】
前記脱脂粉乳は、油中水型油脂組成物中に、好ましくは0.02重量%以上10重量%以下、より好ましくは0.05重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以上3重量%以下である。所定量加えることで、風味を効果的に向上させることが可能である。
【0035】
本発明では、さらに、ホエイパウダー、乳脂肪分解物、及び、乳タンパク分解物のいずれか1種又は2種以上添加することで、一層の風味等の向上ができる。好ましくは、上記3種すべてを添加する。
【0036】
ホエイパウダーは、乳清を粉末化したものである。ホエイパウダーの原料となる乳は、牛、ヤギ、羊、水牛、ロバ等の動物から得られたものを使用できるが、好ましくは牛から得られたものである。前記ホエイパウダーの添加量は、油中水型油脂組成物中に、好ましくは0.005重量%以上1重量%以下、より好ましくは0.008重量%以上1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以上0.8重量%以下である。所定量加えることで、風味を効果的に向上させることが可能である。
【0037】
乳脂肪分解物は、クリームやバター脂等の乳脂肪を酵素等で分解して得られる。乳脂肪の原料となる乳は、牛、ヤギ、羊、水牛、ロバ等の動物から得られたものを使用できるが、好ましくは牛から得られたものである。乳脂肪を分解する方法は、当業者が通常使用する方法でおこなうことができる。また、市販しているものを用いることもできる。前記乳脂肪分解物の添加量は、油中水型油脂組成物中に、好ましくは0.005重量%以上5重量%以下、より好ましくは0.008重量%以上2重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以上1重量%以下である。所定量加えることで、風味を効果的に向上させることが可能である。
【0038】
乳タンパク分解物は、乳タンパクを酵素等で分解したものである。乳タンパクの原料となる乳は、牛、ヤギ、羊、水牛、ロバ等の動物から得られたものを使用できるが、好ましくは牛から得られたものである。乳タンパクを分解する方法は、当業者が通常使用する方法でおこなうことができる。また、市販しているものを用いることもできる。前記乳タンパク分解物の添加量は、油中水型油脂組成物中に、好ましくは0.001重量%以上5重量%以下、より好ましくは0.005重量%以上2重量%以下、さらに好ましくは0.008重量%以上1重量%以下である。所定量加えることで、風味を効果的に向上させることが可能である。
【0039】
本発明の組成物は、乳化剤を含有することができる。乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、等の合成乳化剤や、例えば、植物レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン、等の天然乳化剤が挙げられる。好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はレシチンである。また、乳化剤の含有量は、特に制限はないが、本発明の油中水型油脂組成物中、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%である。
【0040】
本発明の組成物には、必要によりその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、増粘安定剤、クエン酸、乳酸等の酸味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0041】
本発明のマーガリン等の油中水型油脂組成物の製造方法は、油中水型油脂組成物の配合を除き、当業者が通常用いることのできる方法で製造することができる。例えば、連続式冷却混練装置を用いて製造する。
【0042】
本発明の油中水型油脂組成物を製造するに当たって、予め、水相と油相を調製する。油相を予め50℃から70℃に加熱した後、撹拌しながら、水相を加える。5分から30分程度混合することで予備乳化物を得る。得られた予備乳化物を通常の方法に従い混練することで油中水型油脂組成物を製造する。
【0043】
前記水相に、前記乳酸発酵組成物を溶解させる。通常、2℃から15℃の水に撹拌しながら加えて溶解する。前記乳酸発酵組成物の水相への添加量は、好ましくは1重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは2重量%以上20重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以上15重量%以下である。
【0044】
前記水相には、脱脂粉乳を含有することが好ましい。前記脱脂粉乳の水相への添加量は、好ましくは0.1重量%以上25重量%以下であり、より好ましくは0.25重量%以上25重量%以下であり、さらに好ましくは0.25重量%以上15重量%以下である。
【0045】
さらに、前記水相には、ホエイパウダー、乳脂肪分解物、及び、乳タンパク分解物のいずれか1種又は2種以上を含有することが好ましく、特に3種すべてを含有することがより好ましい。前記ホエイパウダーの水相への添加量は、好ましくは0.005重量%以上5重量%以下であり、より好ましくは0.01重量%以上3重量%以下である。
【0046】
前記乳脂肪分解物の水相への添加量は、好ましくは0.005重量%以上5重量%以下であり、より好ましくは0.008重量%以上3重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%以上2重量%以下である。また、前記乳タンパク分解物の水相への添加量は、好ましくは0.001重量%以上5重量%以下であり、より好ましくは0.005重量%以上3重量%以下であり、さらに好ましくは0.005重量%以上2重量%以下である。
【0047】
前記油相は、40℃から70℃に保温した油脂にγ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ―ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上を添加し、その合計量が、0.0055重量%以上1.0重量%以下になるように溶解して調製する。γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンの油相中の合計量は、好ましくは0.007重量%以上0.2重量%以下であり、より好ましくは0.009重量%以上0.12重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%以上0.1重量%以下である。
【0048】
さらに好ましくは、前記油相中にδ−トリデカラクトン及び/又はδ−テトラデカラクトンを溶解する。δ−トリデカラクトン及びδ−テトラデカラクトンの油相中の合計量は、好ましくは0.000022重量%以上0.2重量%以下であり、より好ましくは0.0001重量%以上0.1重量%以下である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0050】
以下において、使用油脂等は、次の物を使用した。
パームステアリン(ヨウ素価32)(株式会社J−オイルミルズ製)
パーム核油(株式会社J−オイルミルズ製)
菜種油(株式会社J−オイルミルズ製)
レシチン(株式会社J−オイルミルズ製 レシチンFA)
グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製 エマルジーMS)
乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物(製品名:OMテイストアップ、オーム乳業株式会社製)
脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)
ホエイパウダー(森永乳業株式会社製)
乳脂肪分解物(オーム乳業株式会社製)
乳タンパク分解物(オーム乳業株式会社製)
【0051】
〔エステル交換油の調製〕
パームステアリン70重量部とパーム核油30重量部を配合した油脂に、触媒としてナトリウムメチラート0.5重量部添加して、80℃、30分間のランダムエステル交換を行った。通常の方法で精製をしてエステル交換油を得た。
【0052】
〔乳化剤含有油脂の調製〕
エステル交換油19.5重量部、菜種油80.0重量部、グリセリン脂肪酸エステル0.3重量部、およびレシチン0.2重量部を約60℃で混合した。
【0053】
〔油中水型油脂組成物の調製〕
表1及び表2に示す配合で、油相及び水相をそれぞれ調製した。次に、約60℃に保温した油相に水相を攪拌しながら投入した。約10分間、混合攪拌し、油中水型の予備乳化物を得た。
この予備乳化物を、連続式冷却混練装置で混練し、油中水型油脂組成物を得た。
【0054】
得られた油中水型油脂組成物の風味、コク、後味の広がり、使用した料理(きのこ炒め:油中水型油脂組成物10gできのこ100gを炒め、少量のしょうゆで調味)のコクを専門パネラー10名による官能検査により評価した。評価基準は以下のとおりである。結果を表1及び表2に示す。
◎:非常に良好
○:良好
△:やや良好
×:弱い
【0055】
【表1】

適量※1:水相が20重量%になる量
適量※2:油相が80重量%になる量

【0056】
【表2】

適量※1:水相が20重量%になる量
適量※2:油相が80重量%になる量

【0057】
実施例1〜6に示すように本発明品は、風味とコクに優れた。本発明品は、特に、後味の広がりの点で、比較例では得られない効果があった。また、調理した料理にも、充分なコクを付与することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物を含有し、かつγ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上の合計量を0.005重量%以上0.5重量%以下含有する油中水型油脂組成物。
【請求項2】
さらに、δ−トリデカラクトン及び/又はδ−テトラデカラクトンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の油中水型油脂組成物。
【請求項3】
さらに、脱脂粉乳を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の油中水型油脂組成物。
【請求項4】
さらに、ホエイパウダー、乳脂肪分解物、及び、乳タンパク分解物のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項3に記載の油中水型油脂組成物。
【請求項5】
前記乳酸発酵組成物を、0.3重量%以上20重量%以下含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型油脂組成物。
【請求項6】
前記脱脂粉乳を、0.02重量%以上10重量%以下含有することを特徴とする、請求項3に記載の油中水型油脂組成物。
【請求項7】
前記乳酸発酵組成物を、水相中に含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の油中水型油脂組成物。
【請求項8】
前記γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上を、油相中に含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の油中水型油脂組成物。
【請求項9】
乳清及びクリームの混合物の酵素処理物の乳酸発酵組成物を溶解した水相とγ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、及び、δ−ドデカラクトンのいずれか1種又は2種以上を溶解した油相とを、前記ラクトン類が0.005重量%以上0.5重量%以下となるように混合することを含む、油中水型油脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−74904(P2013−74904A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−12955(P2013−12955)
【出願日】平成25年1月28日(2013.1.28)
【分割の表示】特願2012−547403(P2012−547403)の分割
【原出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【出願人】(302042678)株式会社J−オイルミルズ (75)
【Fターム(参考)】