説明

油入電気機器用吸湿呼吸装置

【課題】吸湿呼吸装置のメンテナンス時間を短縮し、外的要因による吸湿剤収納容器の破損を防止した小型軽量の吸湿呼吸装置を提供する。
【解決手段】吸湿剤収納容器4の蓋板10の上面に開口面積の大きい管接続部12を設け、蓋板10の下面にスペーサ13aを介して締付座13を締結させ、前記吸湿剤収納容器4の外周面を保護カバー21で覆い、前記吸湿剤収納容器4内から外部への排気を行わせる排気弁25と、外部から前記吸湿剤収納容器4内への吸気を行わせる吸気弁26とをフレーム7aに取り付けて構成したオイルレスの呼吸用弁機構6aからなる呼吸器6が吸湿剤収納容器4の底板11の下面の凹部11cを下方から気密に塞ぐように配置されて、該呼吸器6がボルト8により底板11に締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入変圧器、油入リアクトル等の油入電気機器に用いる吸湿呼吸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変圧器等の電気機器本体を絶縁油とともにタンク内に収容した油入電気機器においては、機器の温度変化や周囲温度の変化により絶縁油が膨張収縮してタンク内の圧力が変動するため、タンク内の圧力を調整するために呼吸を行なわせる必要がある。呼吸に伴ってタンク内に空気を流入させると、水分の混入や、酸化により絶縁油が劣化し、絶縁性能が低下する。そのため、通常は、タンクの上部にコンサベータを取り付けて、絶縁油の油面を該コンサベータ内に位置させることにより、タンク内の絶縁油に直接空気が接触するのを防いでいる。この場合、油面レベルの変化に伴うコンサベータ内の圧力変動を一定の範囲内に収めるため、コンサベータに吸湿呼吸装置を接続して呼吸を行なわせている。
【0003】
吸湿呼吸装置は、コンサベータ内の絶縁油に湿気が到達するのを防ぐために、吸湿剤を通して呼吸を行わせるものであるが、常時外気が吸湿剤に触れていると、吸湿剤が早期に劣化してしまう。そのため、この種の呼吸装置では、コンサベータ内の圧力が規定の範囲内にあって、呼吸が行われない状態では、吸湿呼吸装置内と外気との間での空気の流通を断っておいて、コンサベータ内の圧力が規定範囲を上回ったときに排気を行わせ、コンサベータ内の圧力が規定範囲を下回ったときに吸気を行わせるようにしておく必要がある。
【0004】
なおコンサベータを設ける代りに、油入電気機器のタンク内の上部に油面の上昇を許容する空間を設けて、該タンクの上部に直接吸湿呼吸装置を接続する場合もある。
【0005】
油入電気機器用の吸湿呼吸装置は、筒状の容器本体と該容器本体の上端及び下端をそれぞれ閉じる蓋板及び底板とを備えて、蓋板に容器本体内に連通した管接続部が設けられ、底板にはその下面から下方に突出した内筒が一体に設けられて該内筒の内側の空間が底板を貫通した通気孔を通して容器本体内に連通している吸湿剤収納容器と、上記内筒を内側に収容した状態で底板に着脱可能に取り付けられて吸湿剤収納容器内の圧力と外気の圧力との差に応じて吸湿剤収納容器内から外部への排気と外部から吸湿剤収納容器内への吸気とを行わせる呼吸器とを備えている。
【0006】
呼吸器としては、吸湿剤収納容器の底板に設けられた内筒を内部に受入れた状態で該吸湿剤収納容器の底板に取り付けられるオイルポットが広く用いられていた。オイルポット内にはシール油が収容され、吸湿剤収納容器の底板に設けられた内筒の下端がシール油中に浸漬されることにより、吸湿剤収納容器内と外気との間の遮断が図られる。
【0007】
ところが、オイルポットを用いた場合には、その内部のシール油の量の点検を定期的に行う必要があるだけでなく、オイルポット内のクリーニングやシール油の交換を定期的に行う必要があるため、保守点検が面倒になるのを避けられなかった。またシール油が漏れて周囲を汚染するおそれがあった。
【0008】
そこで、最近では、オイルポットを用いずに、排気弁と、吸気弁とを備えた機械式の呼吸用弁機構を用いて呼吸を行わせるようにした吸湿呼吸装置が用いられるようになった。図2(a)及び(b)に示したように、この種の吸湿呼吸装置3は、吸湿剤収納容器4と、吸湿剤収納容器4の底板にアダプタ5を介して着脱可能に取り付けられて、吸湿剤収納容器4内の圧力と大気圧との差に応じて吸湿剤収納容器4内から外部への排気と外部から吸湿剤収納容器4内への吸気とを行わせる呼吸器6と、アダプタ5と呼吸器6とを覆う保護筒7とを備えており、呼吸器6は、アダプタ5の底壁部の凹部を下方から気密に塞ぐように配置されて、該呼吸器6がボルト8によりアダプタ5に締結されている。
【0009】
吸湿剤収納容器4は、硬質ガラスまたはアクリル等の透明な材料からなる筒状の容器本体9と、該容器本体9の上端及び下端をそれぞれ閉じる蓋板10及び底板11とを備えている。蓋板10には管接続部12及びネジ孔を有する締付座13が設けられている。底板11には底板を貫通した図示しない連通孔及び底板の下面から下方に突出した円筒状の内筒14が一体に設けられ、また、底板11の上面には通気孔を有する保護蓋17が連通孔を覆うようにして配設されており、内筒14の内側の空間が底板11を貫通した連通孔及び保護蓋17に設けた通気孔を通して容器本体9内に連通させられている。管接続部12の内周縁には、容器本体9内への吸湿材の投入及び容器本体9内からの吸湿材の排出を行なうための吸湿材投入排出孔15が下方に傾斜して設けらて容器本体9内に連通させられている。保護蓋17は吸湿剤収納容器4内に充填されている吸湿剤の粉塵や欠片が連通孔を通って呼吸用弁機構6a側に侵入してその動作を阻害するのを防ぐために必要である。
【0010】
16は容器本体9を締付け固定するロッドであり、一方が締付座13にネジ結合され、他方が保護蓋17及び底板11を貫通され、ロッドに螺合されたナット18を締付けることにより、蓋板10及び底板11が互いに引き寄せられて容器本体9が上下のパッキン19,20により気密にシールされて締付け固定されている。
【0011】
この種の呼吸装置で用いられている呼吸用弁機構においては、呼吸装置内の圧力が外気の圧力よりも第1の設定レベル以上高くなったときに排気弁を開いて呼吸装置内の圧力を開放させ、呼吸装置内の圧力が外気圧よりも第2の設定値以上低くなったときに吸気弁が開いて外気を呼吸装置内に流入させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−54834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
油入電気機器の吸湿呼吸装置のメンテナンスを容易にし、シール油が外部に漏れるのを防ぐためには、オイルポットを用いた既設の吸湿呼吸装置においても、オイルポットに代えて、機械式の呼吸用弁機構を用いるようにすることが好ましい。
【0014】
呼吸用弁機構を用いた従来の吸湿呼吸装置では、吸湿剤収納容器内への吸湿材の投入及び吸湿剤収納容器内からの吸湿材の排出を行なうための吸湿材投入排出孔の開口面積が小さく、また、下方に傾斜して設けらているため、定期的なメンテナンス時の吸湿剤の排出及び投入作業時において、吸湿剤をスムースに排出及び投入することができなく、メンテナンスに長い時間がかかるという問題があった。
【0015】
また、吸湿剤を充填する硬質ガラスまたはアクリル等からなる吸湿剤収納容器がむき出しのため、油入電気機器の輸送時や装柱作業時に外的要因によって吸湿剤収納容器が破損するおそれがあった。
【0016】
更に、底板にはその下面から下方に突出した内筒が設けられているため、吸湿呼吸装置が大型化するという問題があった。
【0017】
更にまた、ロッドと保護蓋との間の隙間から吸湿剤収納容器内に充填されている吸湿剤
の粉塵や欠片が呼吸用弁機構側に侵入するおそれがあり、これにより、排気弁及び吸気弁
の密閉機能が失われるおそれがあった。
【0018】
本発明の目的は、吸湿剤の排出及び投入作業をスムースに行なえるようにし、定期的なメンテナンスの作業時間を短縮させることができるようにした吸湿呼吸装置を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、油入電気機器の輸送時や装柱作業時に外的要因によって吸湿剤収納容器が破損するのを防止することができるようにした吸湿呼吸装置を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、内筒を廃して、呼吸用弁機構を用いた吸湿呼吸装置の信頼性を低下させることなく、小型軽量化を図ることができるようにした吸湿呼吸装置を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、吸湿剤の粉塵や欠片により排気弁及び吸気弁の密閉機能が喪失するのを防ぐことができるようにして、信頼性を向上させた吸湿呼吸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、筒状の容器本体と該容器本体の上端及び下端をそれぞれ閉じる蓋板及
び底板とを備えて、蓋板の上面側にはその上面から上方に突出して容器本体内に連
通した開口面積の大きい管接続部が設けられ、底板には底板を貫通した連通孔を通
して容器本体内に連通させられた吸湿剤収納容器と、底板を貫通した連通孔覆うよ
うに底板の上面に配設された通気孔を有する保護蓋と、上記底板に着脱可能に取り
付けられて吸湿剤収納容器内の圧力と大気圧との差に応じて吸湿剤収納容器内から
外部への排気と外部から吸湿剤収納容器内への吸気を行なわせる呼吸器とを備え、
吸湿剤収納容器内に吸湿剤が収納されて、上記管接続部に接続された通気管が油入
電気機器のタンクに直接またはコンサベータを介して接続される油入電気機器用吸
湿呼吸装置を対象とする。
【0023】
本発明においては、蓋板の下面側にネジ孔を有する締付座がスペーサを介して取
り付けられ、底板の下面に下方に開口した凹部が形成され、底板を貫通した連通孔
を通して吸湿剤収納容器内と凹部内とが連通され、連通孔が位置する底板の上面側
には通気孔を有する保護蓋が配設されている。吸湿剤収納容器は、一方が締付座に
ネジ結合され、他方が保護蓋及び底板を貫通して底板の下面に下方に開口した凹部
内に位置するロッドと、該ロッドに設けられているネジ山に螺合されたナットとに
より蓋板及び底板が互いに引き寄せられ、パッキンにより気密にシールされて締付
け固定され、ロッドの下方側にはシール用のゴムパッキンが保護蓋に密着するよう
にして嵌合され、容器本体の外周が周方向の一部に開口部を有する円柱状の保護カ
バーで覆われるように構成されている。
【0024】
また呼吸器は、吸湿剤収納容器内から外部への排気を行わせる排気弁と、外部か
ら吸湿剤収納容器内への吸気を行わせる吸気弁とをフレームに取り付けて構成した
呼吸用弁機構からなっていて、該呼吸用弁機構のフレームが吸湿剤収納容器の底板
の凹部を下方から気密に塞ぐように配置されてネジにより底板に直接締結され、呼
吸用弁機構が、容器本体の底板の凹部内を通して排気及び吸気を行うように構成さ
れている。
【0025】
上記のように、管接続部の開口面積を大きくし、スペーサにより吸湿剤収納容器
の蓋板の下面と締付座の上端面との間に隙間を設けるようにすると、吸湿剤収納
容器内への吸湿材の投入及び吸湿剤収納容器内からの吸湿材の排出がスムースに
できるため、吸湿呼吸装置のメンテナンスを短時間で行なうことができる。
【0026】
また上記のように、容器本体の外周を周方向の一部に開口部を有する保護カバー
で覆うようにすると、油入電気機器の輸送時や装柱作業時に外的要因による吸湿剤
収納容器の破損を防止することができる。
【0027】
更に上記のように、内筒を廃し、呼吸用弁機構のフレームを吸湿剤収納容器の底
板の凹部を下方から気密に塞ぐように配置してネジにより底板に直接締結するよう
にすると、吸湿呼吸装の小型軽量化を図ることができる
【0028】
更にまた上記のように、ロッドにシール用のゴムパッキンを嵌合させるとともに
、ゴムパッキンを保護蓋に密着させるようにすると、ロッドと保護蓋との間の隙間
から吸湿剤収納容器内に充填されている吸湿剤の粉塵や欠片が呼吸用弁機構側に侵
入するのを防止することができ、排気弁及び吸気弁の密閉機能が喪失するのを防い
で、信頼性を向上させることができる。
【0029】
本発明の好ましい態様では、上記呼吸用弁機構のフレームに、容器本体の底板側に上端が開口した排気弁収容穴及び吸気弁収容穴が形成され、排気弁収容穴の底部及び吸気弁収容穴の底部にそれぞれ排気用弁座及び吸気用弁座が設けられて、該排気用弁座及び吸気用弁座とともに排気弁及び吸気弁を構成する排気用弁体及び吸気用弁体が排気弁収容穴内及び吸気弁収容穴内に挿入される。また排気弁収容穴の上端の開口部を気密に閉じて排気弁収容穴と底板の下面の凹部との間を仕切る蓋体が設けられる。更にフレーム内には、排気弁収容穴内の排気用弁体よりも下方の空間をフレーム内を通して底板の下面の凹部内アダプタの凹部内に連通させる第1の排気孔と、排気用弁体の周囲の空間をフレーム内を通して外部に連通させる第2の排気孔と、吸気弁収容穴内をフレーム内を通して外部に連通させる吸気孔とが設けられ、底板の下面の凹部内の圧力が大気圧よりも第1の設定値以上高くなったときに排気弁が開き、板の下面の凹部内の圧力が大気圧よりも第2の設定値以上低くなったときに吸気弁が開くように、排気用弁体及び吸気用弁体の質量が設定される。
【0030】
本発明の他の好ましい態様では、吸気孔の吸気弁収容穴と反対側の開口部及び第2の排気孔の排気弁収容穴と反対側の開口部がともに下方に開口するように設けられ、吸気孔の下方に開口した開口部及び第2の排気孔の下方に開口した開口部をそれぞれ塞ぐ第1のフィルタ及び第2のフィルタがフレームに取り付けられている。
【発明の効果】
【0031】
上記のように、本発明においては、管接続部の開口面積を大きくし、スペーサにより吸湿剤収納容器の蓋板の下面と締付座の上端面との間に隙間を設けるようにしたので、吸湿剤収納容器内への吸湿材の投入及び吸湿剤収納容器内からの吸湿材の排出がスムースにできるため、吸湿呼吸装置のメンテナンスを短時間で行なうことができる。
【0032】
また本発明においては、容器本体の外周を周方向の一部に開口部を有する保護カ
バーで覆うようにしたので、油入電気機器の輸送時や装柱作業時に外的要因によ
る吸湿剤収納容器の破損を防止することができる。
【0033】
更に本発明においては、内筒を廃し、呼吸用弁機構のフレームを吸湿剤収納容器
の底板の凹部を下方から気密に塞ぐように配置してネジにより底板に直接締結する
ようにしたので、吸湿呼吸装の小型軽量化を図ることができる。
【0034】
更にまた本発明においては、ロッドにシール用のゴムパッキンを嵌合させるとと
もに、ゴムパッキンを保護蓋に密着させるようにすると、ロッドと保護蓋との間の
隙間から吸湿剤収納容器内に充填されている吸湿剤の粉塵や欠片が呼吸用弁機構側
に侵入するのを防止することができ、排気弁及び吸気弁の密閉機能が喪失するのを
防いで、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係わる吸湿呼吸装置を油入電気機器のタンクの上部に取り付けられた接続管に接続した状態を断面して示した正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる吸湿呼吸装置の構成を示したものであり、(A)は上面図、(B)は断面図である。
【図3】本実施形態で用いる呼吸用弁機構の拡大断面図である。
【図4】従来の吸湿呼吸装置の構成を示したものであり、(A)は上面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1において、1は油入変圧器のタンク、2はタンク1の上部に一端が接続され、他端が下方に開口した逆J字形の接続管、3は接続管2の他端に接続された吸湿呼吸装置である。
【0037】
吸湿呼吸装置3は、吸湿剤収納容器4と、該吸湿剤収納容器4の底板に着脱可能に取り付けられて、吸湿剤収納容器4内の圧力と大気圧との差に応じて吸湿剤収納容器4内から外部への排気と外部から吸湿剤収納容器4内への吸気とを行わせる呼吸器6とを備えている。
【0038】
吸湿剤収納容器4は、硬質ガラスまたはアクリル等の透明な材料からなる筒状の容器本体9と、該容器本体の上端及び下端をそれぞれ閉じる蓋板10及び底板11とを備えている。蓋板10の上面側に容器本体9内に連通した開口面積の大きい管接続部12が設けられており、下面側にネジ孔を有する締付座13がスペーサ13aを介してネジ13bにより蓋板10に締結されている。底板11には呼吸器6を覆う円筒状の保護筒部11aがその下面から下方に突出して一体に設けられ、底板11の上面には図示しない通気孔を有する保護蓋17が連通孔11bを上方から覆うようにして配設されており、また、底板11の下面には下方に開口した凹部11cが形成され、底板11を貫通した連通孔11b及び保護蓋17に設けた通気孔を通して容器本体9内に連通させられている。
【0039】
吸湿剤収納容器4は、一方が締付座13にネジ結合され、他方が保護蓋17及び
底板11を貫通して底板の下面の凹部11c内に位置するロッド16と、該ロッド
に設けられているネジ山に螺合されたナット18とにより蓋板10及び底板11が
互いに引き寄せられ、パッキン19及び20により気密にシールされて締付け固定
され、その外周が周方向の一部に開口部を有する円柱状の保護カバー21で覆われ
ている。保護カバー21は、吸湿剤収納容器4の上方から嵌合させ、保護カバー21に取付けられている取付金具21aとビス21bとで蓋板10の上面に係止されている。ロッド16の下方側にはシール用のゴムパッキン22が保護蓋17に密着
するようにして嵌合されている。ゴムパッキン22の外周には溝22aが周設され
ており、該溝内に保護蓋17の内周端を挿嵌させることにより保護蓋17が底板1
1の上面に係止される。
【0040】
吸湿剤収納容器4内にはシリカゲル等の吸湿剤が収納され、管接続部12がネジ結合により接続管2の他端に接続されている。吸湿剤収納容器4内は、変圧器のタンク1内の上部に形成された油面上方の空間に接続管2を通して連通させられている。
【0041】
呼吸器6を構成する呼吸用弁機構6aは、底板11の下面に設けられた凹部11
cを下方から気密に塞ぐ状態で底板11の下面に着脱可能に直接取り付けられて凹
部11c内と連通孔11bとを通して排気及び吸気を行わせるように構成される。
【0042】
呼吸用弁機構6aは、底板11の下面に設けられた凹部11cを下方から塞ぐよ
うに配置されて底板11の下面に着脱可能な状態で接続されたフレーム7aと、凹
部11c内を外部に連通させるようにしてフレーム7a内に形成された排気通路2
3及び吸気通路24と、フレーム7aに支持されて凹部11c内の圧力が外部の圧
力よりも高くなったときに排気通路23を開き、凹部11c内の圧力が外部の圧力
よりも低くなったときに排気通路23を閉じる排気弁25と、フレーム7aに支持
されて凹部11c内の圧力が外部の圧力よりも高くなったときに吸気通路24を閉
じ、凹部11c内の圧力が外部の圧力よりも低くなったときに吸気通路24を開く
吸気弁26とを備えている。
【0043】
更に詳細に説明すると、フレーム7aは、板厚方向を上下方向に向けた円板状の部材からなっていて、その上端側の外周部にはフランジ7bが形成され、このフランジには、4個の取付け孔7cが等角度間隔で設けられている。フレーム7aの上端の端面には、円形の溝7dが形成されていて、この溝内にパッキン7eが収容されている。
【0044】
フレーム7aの凹部11cに臨む上部には、該フレームの上端面に開口させて断面が円形を呈する排気弁収容穴27と吸気弁収容穴28とが並べて形成されている。排気弁収容穴27の底部には排気用弁座29が取り付けられ、排気弁収容穴27内に上下動自在に挿入された円柱状の金属ブロックからなる排気弁25が弁座29の上に載せられている。また吸気弁収容穴28の底部に吸気用弁座30が取り付けられ、吸気弁収容穴28内に上下動自在に挿入された円柱状の金属ブロックからなる吸気弁26が、弁座30の上に載せられている。
【0045】
フレーム7aにはまた、排気弁収容穴27内の側方の位置でフレーム7aの上端に開口した第1の縦孔部23aと、この縦孔部23aの下端から排気弁収容穴27の真下の位置まで延びる横孔部23bと、横孔部23bの縦孔部23aと反対側の端部から直角に立ち上がって排気弁収容穴27内に開口した第2の縦孔部23cとが形成され、縦孔部23aと横孔部23bと縦孔部23cとにより、排気弁収容穴27内の排気弁25よりも下方の空間をフレーム7a内を通して凹部11c内に連通させる第1の排気孔31が構成されている。フレーム7a内にはまた、排気弁25の周囲の空間をフレーム7a内を通して外部に連通させる第2の排気孔32が形成され、第1の排気孔31と、排気弁収容穴27と、第2の排気孔32とにより、フレーム7a内を通して凹部11c内を外部に連通させる前記排気通路23が構成されている。第2の排気孔32の排気弁収容穴27と反対側の開口部は下方に開口している。
【0046】
フレーム7aにはまた、吸気弁収容穴28の真下で該フレームの下端に開口したフィルタ収容凹部33が設けられ、フィルタ収容凹部33の下方への開口部の周辺に環状のフィルタ押え板収容凹部34が形成されている。フィルタ収容凹部33と吸気弁収容穴28との間に、吸気弁収容穴28内をフレーム7a内を通して外部に連通させる吸気孔35が形成され、吸気孔35の吸気弁収容穴28と反対側の開口部は下方に開口させられている。この例では、吸気孔35と吸気弁収容穴28とにより、フレーム7a内を通して凹部11c内を外部に連通させる吸気通路24が構成されている。
【0047】
フレーム7aの上端の端面にはまた、排気弁収容穴27の開口部を囲むようにして、フレーム7aの上面に開口した溝36が形成され、この溝内にパッキン37が収容されている。そしてパッキン37の上に配置された蓋体38がネジ39によりフレーム7aに締結され、この蓋体38により、排気弁収容穴27の上端の開口部が気密に閉じられて、排気弁収容穴27と凹部11cとの間が仕切られている。
【0048】
この例では、凹部11c内の圧力が外気の圧力よりも第1の設定値以上高くなったときに排気弁25が開き、凹部11c内の圧力が外気の圧力よりも第2の設定値以上低くなったときに吸気弁26が開くように、排気弁25及び吸気弁26の質量が設定されている。ここで、第1の設定値及び第2の設定値は異なっていてもよいが、通常は等しく設定しておくのが好ましい。
【0049】
外部から呼吸用弁機構内に塵埃が侵入するのを防ぐため、フィルタ収容凹部33内に通気性を有する第1のフィルタ40が収容されている。フィルタ収容凹部33を下方から塞ぐことができる大きさを有して中央に通気孔41aが形成された第1のフィルタ押え板41が凹部34内に配置され、このフィルタ押え板41が、ネジによりフレーム7aに締結されて、第1のフィルタ40が押えられている。
【0050】
また第2の排気孔32の下端の開口部と凹部34とを下方から覆うように通気性を有する第2のフィルタ42が配置され、この第2のフィルタを下方から押えるように、通気孔43aを有する第2のフィルタ押え板43が配置されている。第2のフィルタ押え板43は、ネジ44によりフレーム7aに締結され、このフィルタ押え板43によりフィルタ42が下方から押えられて、フレーム7aに固定されている。
【0051】
フレーム7aに第1及び第2のフィルタ40及び42を取り付け、排気弁収容穴27内及び吸気弁収容穴28内にそれぞれ排気弁25及び吸気弁26を収容した後、フレーム7aを、凹部11cを下方から塞ぐ状態で底板11の下面に当接させ、取り付け孔7cに挿入したボルト8を底板11に設けられたネジ穴にねじ込むことにより、フレーム7aを底板11に締結する。
【0052】
上記の吸湿呼吸装置3において、変圧器のタンク1内の圧力と大気圧との差が設定値以下で、吸湿剤収納容器4内の圧力と大気圧との差が設定値以下のときには、排気弁25及び吸気弁26がそれぞれ自重により排気用弁座29及び吸気用弁座30に接触している(排気弁25及び吸気弁26が共に閉じている)ため、呼吸用弁機構6aによる呼吸は行われず、吸湿剤収納容器4内は密閉状態に保たれる。
【0053】
油入変圧器のタンク1内の絶縁油の温度が上昇して該絶縁油が膨張し、タンク1内の油面レベルが上昇すると、吸湿剤収納容器4内の圧力が上昇する。吸湿剤収納容器4内の圧力が大気圧よりも第1の設定値以上高くなると(吸湿剤収納容器内の圧力と大気圧との差圧が第1の設定値以上になると)、排気弁25が上方に押し上げられて排気弁25が開き、吸湿剤収納容器4内の空気が凹部11cと排気弁25とを通して外部に流出して吸湿剤収納容器4内の圧力が開放される。吸湿剤収納容器4内の圧力と大気圧との差が第1の設定値未満になると排気弁25が自重により排気用弁座29に接触して、排気弁25が閉じ、吸湿剤収納容器4内を密閉する。
【0054】
またタンク1内の絶縁油の温度が低下して油面レベルが下降すると、吸湿剤収納容器4内の圧力が低下する。吸湿剤収納容器4内の圧力が大気圧よりも第2の設定値以上低くなると、吸気弁26が上方に押し上げられて吸気弁26が開き、外部から吸気弁26と凹部11cとを通して吸湿剤収納容器4内に空気が流入する。これにより吸湿剤収納容器4内の圧力が上昇する。吸湿剤収納容器4内の圧力と大気圧との差が第2の設定値未満になると吸気用弁26が自重により吸気用弁座30に接触して吸気弁26が閉じ、吸湿剤収納容器4を密閉する。
【0055】
本発明においては、呼吸用弁機構6aを、吸湿剤収納容器4の底板11の下面に着脱可能に取り付けるので、呼吸用弁機構6aの着脱を簡単に行うことができ、その保守点検を容易に行なうことができる。
【0056】
更に、上記のように、排気通路と外気との間及び吸気通路と外気との間に介在して空気室内に外部から粉塵が侵入するのを阻止する通気性のフィルタ40及び42を設けておくと、外部から到来する粉塵が排気弁25及び吸気弁26に侵入するのを防ぐことができるため、外部から到来する粉塵によりが排気弁25及び吸気弁26の密閉機能が喪失するのを防いで信頼性を向上させることができる。
【0057】
外部からの粉塵の侵入は、特に吸気弁が開いた際に起こりやすい。上記の実施形態では、第2の排気孔32の開口部を塞ぐ第2のフィルタ42を吸気孔35の開口部を塞ぐ第1のフィルタ40よりも下方に配置して、該第2のフィルタ42で第1のフィルタ40を覆うことにより、吸気孔35を二重に覆うようにしている。このように構成した場合には、吸気弁内に外部から粉塵が侵入するのを確実に防ぐことができる。
【0058】
なお本発明は、上記のように第1のフィルタ及び第2のフィルタを配置する場合に限定されるものではなく、例えば、第2のフィルタ42を、第2の排気孔32の開口部のみを覆うように設けることができる。また吸気孔35の下方に開口した開口部及び第2の排気孔の下方に開口した開口部を塞ぐ一つのフィルタ(吸気孔及び排気孔に共通なフィルタ)をフレームに取り付けるようにしてもよい。
【0059】
本発明では、呼吸用弁機構6aが、底板11の下面の凹部11cを下方から塞ぐように取り付けられるので、吸湿剤収納容器4内から吸湿剤を回収することなく、吸湿呼吸装置3を接続管2に接続したままの状態で、呼吸用弁機構6a着脱を簡単に行なうことができる。従って、呼吸用弁機構6aの保守点検を容易に行なうことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 変圧器のタンク
2 接続管
3 吸湿剤呼吸装置
4 吸湿剤収納容器
5 アダプタ
6 呼吸器
6a 呼吸用弁機構
7 保護筒
7a フレーム
7b フランジ
7c 取付け孔
7d 溝
7e パッキン
8 ボルト
9 容器本体
10 蓋板
11 底板
11a 保護筒部
11b 連通孔
11c 凹部
12 管接続部
13 締付座
13a スペーサ
13b ネジ
14 内筒
15 吸湿剤投入排出孔
16 ロッド
17 保護蓋
18 ナット
19,20 パッキン
21 保護カバー
21a 取付金具
21b ビス
22 ゴムパッキン
22a 溝
23 排気通路
23a 第1の縦孔部
23b 横孔部
23c 第2の縦孔部
24 吸気通路
25 排気弁
26 吸気弁
27 排気弁収容穴
28 吸気弁収容穴
29 排気用弁座
30 吸気用弁座
31 第1の排気孔
32 第2の排気孔
33 フィルタ収容凹部
34 フィルタ押え板収容凹部
35 吸気孔
36 溝
37 パッキン
38 蓋板
39 ネジ
40 第1のフィルタ
41 第1のフィルタ押え板
41a 通気孔
42 第2のフィルタ
43 第2のフィルタ押え板
43a 通気孔
44 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の容器本体と該容器本体の上端及び下端をそれぞれ閉じる蓋板及び底板とを備えて、前記蓋板に前記容器本体内に連通した管接続部と締付座が設けられ、前記底板の上面には通気孔を有する保護蓋が配設され、下面には凹部が設けられ、前記底板を貫通した孔を通して前記容器本体内に連通させられた吸湿剤収納容器と、前記内筒を内側に収容した状態で前記底板に着脱可能に取り付けられて前記吸湿剤収納容器内の圧力と大気圧との差に応じて前記吸湿剤収納容器内から外部への排気と外部から前記吸湿剤収納容器内への吸気を行わせる呼吸器とを備え、前記吸湿剤収納容器は一方が前記締付座にネジ結合されたロッドと該ロッドに螺合したナットとにより上下のパッキンを介して気密に締付け固定され、前記吸湿剤収納容器内に吸湿剤が収納されて、前記管接続部に接続された接続管が油入り電気機器のタンクに直接またはコンサベータを介して接続される油入り電気機器用吸湿呼吸装置において、
前記容器本体内に連通した管接続部は、開口面積の大きい連通孔を有し、
前記呼吸器は、前記吸湿剤収納容器内から外部への排気を行わせる排気弁と、外部から前記吸湿剤収納容器内への吸気を行わせる吸気弁とをフレームに取り付けて構成した呼吸用弁機構からなっていて、該呼吸用弁機構のフレームが前記底板の下面の凹部を下方から気密に塞ぐように配置されてネジにより前記底板に締結され、
前記呼吸用弁機構が、前記底板の下面の凹部内を通して前記排気及び吸気を行うように構成されていること、
を特徴とする油入電気機器用吸湿呼吸装置。
【請求項2】
前記呼吸用弁機構のフレームには、上端が前記凹部内に開口した排気弁収容穴及び吸気弁収容穴が形成され、
前記排気弁収容穴の底部及び吸気弁収容穴の底部にそれぞれ排気用弁座及び吸気用弁座が設けられて、該排気用弁座及び吸気用弁座とともに前記排気弁及び吸気弁を構成する排気用弁体及び吸気用弁体が前記排気弁収容穴内及び吸気弁収容穴内に挿入され、
前記排気弁収容穴の上端の開口部を気密に閉じて前記排気弁収容穴と前記底板の下面の凹部との間を仕切る蓋体が設けられ、
前記フレーム内には、前記排気弁収容穴内の前記排気用弁体よりも下方の空間を前記フレーム内を通して前記底板の下面の凹部内に連通させる第1の排気孔と、前記排気用弁体の周囲の空間を前記フレーム内を通して外部に連通させる第2の排気孔と、前記吸気弁収容穴内を前記フレーム内を通して外部に連通させる吸気孔とが設けられ、
前記底板の下面の凹部内の圧力が大気圧よりも第1の設定値以上高くなったときに前記排気弁が開き、前記底板の下面の凹部内の圧力が大気圧よりも第2の設定値以上低くなったときに前記吸気弁が開くように、前記排気用弁体及び吸気用弁体の質量が設定されていること、
を特徴とする請求項1に記載の油入電気機器用吸湿呼吸装置。
【請求項3】
前記吸気孔の前記吸気弁収容穴と反対側の開口部及び前記第2の排気孔の前記排気弁収容穴と反対側の開口部はともに下方に開口するように設けられ、
前記吸気孔の下方に開口した開口部及び前記第2の排気孔の下方に開口した開口部をそれぞれ塞ぐ第1のフィルタ及び第2のフィルタが前記フレームに取り付けられている請求項2に記載の油入電気機器用吸湿呼吸装置。
【請求項4】
前記底板には、前記呼吸器のフレームの外周を覆う円筒状の保護筒部が前記底板の下面から下方に突出して一体に設けられ、
前記保護筒部の内側に前記呼吸用弁機構が配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の油入電気機器用吸湿呼吸装置。
【請求項5】
前記容器本体の外周は、周方向の一部に開口部を有する円柱状の保護カバーで覆われていることを特徴とする請求項2ないし3に記載の油入電気機器用吸湿呼吸装置。
【請求項6】
前記締付座は、スペーサを介して前記蓋板に締結されていることを特徴とする請求項2ないし5に記載の油入電気機器用吸湿呼吸装置。
【請求項7】
前記ロッドの下方側には、その外周に溝が周設されているシール用のゴムパッキンが嵌合され、前記溝内に前記保護蓋の内周端を挿嵌させることにより前記保護蓋が前記底板の上面に係止させられることを特徴とする請求項2ないし6に記載の油入電気機器用吸湿呼吸装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−74553(P2012−74553A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218466(P2010−218466)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】