説明

油入電気機器

【課題】油温検出装置の落下を防止し、油温検出装置を常に温度測定点に安定して位置させることができるようにした油入電気機器を提供する。
【解決手段】油入電気機器1のタンク2内に充填された絶縁油の油温とほぼ同等である放
熱器3の外表面を被温度測定部とし、この被温度測定部の最高温度位置である前記放熱器
3の上端部に油温検出装置取付け金具14を用いて一端に被温度測定部に接触する感温部
6を有する温度センサ7と、該温度センサ7の他端が接続されて被温度測定部の温度を表
示する温度表示部8と、被温度測定部に磁着する永久磁石9とを備えた油温検出装置4が
懸装され、被温度測定部である前記放熱器3の外表面に油温検出装置4の感温部6が当接
した状態で永久磁石9により磁着させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入電気機器における絶縁油の油温を監視する油温検出装置の取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油入電気機器のタンク内部に充填された絶縁油の温度は、電気機器本体内の状態を知る上で重要である。このため、油温を監視するためにタンク側面あるいはカバー上面に油温検出装置が取り付けられている。
【0003】
油温検出装置としては、温度監視を行なう装置として最も一般的なダイヤル温度計がよく用いられており、絶縁油中に位置させられる温度センサと、一端が前記温度センサに接続されて絶縁油の温度の情報を伝達する導管と、該導管の他端に接続されて絶縁油の温度を表示する温度表示部とにより構成されている。前記油温検出装置は、タンク側面あるいはカバーに設けられている取付け孔に前記導管の一端に接続されている温度センサを挿通させてタンク内の絶縁油中に位置させ、ガスケットを介して取付け金具により気密に固定されているが、油温検出装置を取り付けるには、タンク側面あるいはカバーに油温検出装置取付け孔をあける孔あけ加工や、該取付け孔部に油温検出装置取付け座やスタッドボルト等を溶着するという作業が必要であった。
【0004】
そこで、特許文献2に示されているように、油入電気機器のタンク側板面を被温度測定部とし、この被温度測定部に磁着させる永久磁石と熱電対からなる温度センサ部と、この温度センサの出力により温度のデジタル表示と過温度時のランプ表示を行なう表示部を有するとともに、太陽電池を制御用電源とする制御部を内装する表示器本体を油入電気機器周辺部に取付け、前記温度センサ部と前記表示器本体をフレキシブル導管で接続し構成した油温検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−250608号公報
【特許文献2】実開平3−53811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示された油温検出装置においては、被温度測定部に温度センサ部を単に磁着させているだけであり、油入電気機器運転時の振動あるいは外力等あるいは経年により永久磁石の磁力が衰えた場合に温度センサ部が落下したり、被温度測定部である油入電気機器のタンク側板面の温度測定点からずれるおそれがあり、温度センサ部を常に温度測定点に安定させて位置させることができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、油温検出装置の落下を防止し、油温検出装置を常に温度測定点に安定して位置させることができるようにした油入電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、油温検出装置が、装置ケースと、放熱器の外表面の一部を被温度測定部とし、該被温度測定部に接触するように前記装置ケース内に配置されて、前記被温度測定部の温度に対応する温度情報を伝達する接触式の温度センサと、前記温度センサから伝達される温度情報に基づいて、前記被温度測定部の温度を表示させる温度表示部と、前記装置ケースに固定されており、且つ前記温度センサが前記被温度測定部に接触するように前記放熱器の外表面に磁着する永久磁石と、を備えており、上端側の先端部が下方に折り曲げられて垂下する板状の係止部が設けられていて、所定位置に取付け孔を有する油温検出装置取付け金具の前記取付け孔に前記油温検出装置が嵌着させられ、前記油温検出装置取付け金具の前記係止部を前記被温度測定部である前記放熱器の上端に係合させて懸装させたことを特徴とするものである。
【0009】
第2の発明は、前記取付け孔は、前記油温検出装置取付け金具の高さ方向に所定間隔で複数個設けられており、この取付け孔に夫々油温検出装置が嵌着させられていることを特徴とするものである。
【0010】
第3の発明は、前記油温検出装置取付け金具の前記係止部が、内側に傾斜されていることを特徴とするものである。
【0011】
第4の発明は、前記被温度測定部である前記放熱器の外表面と前記油温検出装置取付け金具の内壁面との間にゴム等の弾性材が介在されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、前記油温検出装置が、装置ケースと、放熱器の外表面の一部を被温度測定部とし、該被温度測定部に接触するように前記装置ケース内に配置されて、前記被温度測定部の温度に対応する温度情報を伝達する接触式の温度センサと、前記温度センサから伝達される温度情報に基づいて、前記被温度測定部の温度を表示させる温度表示部と、前記装置ケースに固定されており、且つ前記温度センサが前記被温度測定部に接触するように前記放熱器の外表面に磁着する永久磁石とを備え、上端側の先端部が下方に折り曲げられて垂下する板状の係止部が設けられていて、所定位置に取付け孔を有する油温検出装置取付け金具の前記取付け孔に嵌着されており、前記油温検出装置取付け金具の前記係止部を前記被温度測定部である前記放熱器の上端に係合させて懸装させるようにしたので、電気機器運転時の振動あるいは外力等による油温検出装置の落下を防止することができる。
【0013】
上記第2の発明によれば、上記の効果に加えて、前記取付け孔が、前記油温検出装置取付け金具の高さ方向に所定間隔で複数個設けられており、この取付け孔に夫々油温検出装置が嵌着させられているため、前記放熱器の外表面における最高温度位置である上端部から最低温度位置である下端部に至るまでの前記被温度測定部における測定点を増やすことができ、前記被温度測定部である前記放熱器の外表面の上下方向の温度分布や平均温度を容易に把握することができる。
【0014】
上記第3の発明によれば、上記の効果に加えて、前期油温検出装置取付け金具の前記係止部が内側に傾斜されているため、油温検出装置取付け金具を放熱器の上端に係合させる際に、係止部を外側に拡げた状態で係合させることにより、拡げられた係止部が発生する反発力により係止部を付勢して被温度測定部である放熱器に強く係合させることができ、経年により永久磁石の磁力が衰えた場合でも、油温検出装置を常に前記被温度測定部である前記放熱器の外表面の温度測定点に安定して位置させることができる。
【0015】
上記第4の発明によれば、上記の効果に加えて、前記被温度測定部である前記放熱器の
外表面と前記油温検出装置取付け金具の内壁面との間にゴム等の弾性材が介在させるよう
にしたので、放熱器の外表面と弾性材との摩擦力により油温検出装置取付け金具の横ずれ
を防止することができ、油温検出装置を常に前記被温度測定部である前記放熱器の外表面
の温度測定点により安定して位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態における油温検出装置取付け金具を用いて放熱器に油温検出装置を取付けた状態の要部を示した正面図、(B)は同図(A)を右から見て示した側面図、(C)は同図(A)を左から見て示した側面図である。
【図2】(A)は本発明の第2の実施形態における油温検出装置取付け金具を用いて放熱器に複数個の油温検出装置を取付けた状態の要部を示した正面図、(B)は同図(A)を右から見て示した側面図、(C)は同図(A)を左から見て示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
図1および図2を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。本実施形態の油入電気機器1は、上方にカバー(図示せず)を有し、内部に絶縁油(図示せず)が充填されるタンク2と、このタンク2内に格納される電気機器本体(図示せず)と、タンク2の側壁から外方に突設され、絶縁油が自由に出入りできるように形成されている磁性体からなる放熱器3と、この放熱器3の外表面に当接させて取り付けられて絶縁油の温度を監視する油温検出装置4とを備えている。
【0018】
油温検出装置4は、装置ケース5内の中央部に固設され一端に被温度測定部に接触して温度情報を伝達する感温部6を有する温度センサ7と、この温度センサ7の他端が接続されて被温度測定部の温度を表示する温度表示部8と、前記温度センサ7の周囲の周方向に間欠的に配設されて接着剤で固着された複数個の永久磁石9と、装置ケース5の底部に嵌合された円形状の蓋板10とにより構成されている。
【0019】
蓋板10には、温度センサ7及び永久磁石9の一端部が挿通される挿通孔11S及び挿
通孔12Jが温度センサ7及び永久磁石9に対応した位置に設けられていて、温度センサ7及び永久磁石9の一端部が蓋板10から若干外方に突出させられるともに、突出させられた温度センサ7及び永久磁石9の端面が同一面となるようにして固設されている。
【0020】
図1(A),(B),(C)は、本発明の第1の実施形態を示している。本実施形態に
おいては、油入電気機器1のタンク2内に充填された絶縁油の油温とほぼ同等である放熱
器3の外表面を被温度測定部とし、この被温度測定部の最高温度位置である前記放熱器3
の上端部に油温検出装置取付け金具14を用いて油温検出装置4が懸装され、被温度測定
部である前記放熱器3の外表面に油温検出装置4の感温部6が当接させられた状態で永久
磁石9により磁着されている。電気機器本体を冷却して油入電気機器1のタンク2内に充
填された絶縁油の温度が上昇すると温度センサ7の感温部6が被温度測定部である放熱器
3の外表面の温度を検知し、温度センサ7の他端が接続されている温度表示部8へ温度情
報を伝達し、温度表示部8の指針13の先端が目盛を指示して絶縁油の油温とほぼ同等で
ある放熱器3の外表面の温度を表示させる。
【0021】
油温検出装置取付け金具14は、その上端側の先端部が下方に向かって直角に折り曲げ
られて垂下する板状の係止部15を有しており、所定位置に設けられている取付け孔16
には油温検出装置4が嵌着されている。また、油温検出装置取付け金具14の内壁面17
と放熱器3の外表面との間にはゴム等の弾性材18が介在されている。この弾性材18は
油温検出装置取付け金具14の内壁面17の上端部に接着剤により貼設されている。
【0022】
油温検出装置4が嵌着されている油温検出装置取付け金具14は、係止部15を被温度
測定部である放熱器3の上端に係合させることにより、油温検出装置4の感温部6が被温
度測定部である放熱器3の外表面に当接させられた状態で永久磁石9により磁着されて放
熱器3に懸装される。
【0023】
上記第1の実施形態では、油温検出装置取付け金具14に油温検出装置4を1個のみ嵌
着させるようにしたが、図4(A),(B),(C)に示すように油温検出装置取付け金
具14の高さ方向に複数個の取付け孔16を並べて設けておき、この取付け孔16にそれ
ぞれ油温検出装置4を嵌着させるようにしてもよい。
【0024】
なお、油温検出装置取付け金具14の上端側の係止部15は予め油温検出装置取付け金
具14の内壁面17側(内側)に傾斜させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 油入電気機器
2 タンク
3 放熱器
4 油温検出装置
5 装置ケース
6 感温部
7 センサ
8 温度表示部
9 永久磁石
10 蓋板
11 挿通孔S
12 挿通孔J
13 指針
14 油温検出装置取付け金具
15 係止部
16 取付け孔
17 内壁面
18 弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方にカバーが取付けられ、内部に電気機器本体を収納して絶縁油が充填されたタンク
と、該タンクの側壁から外方に突設されて前記絶縁油が自由に出入りできるように形成さ
れている磁性体からなる放熱器と、前記絶縁油の油温を検出する油温検出装置とを備えた油入電気機器において、
前記油温検出装置は、
装置ケースと、
前記放熱器の外表面の一部を被温度測定部とし、該被温度測定部に接触するように前記装置ケース内に配置されて、前記被温度測定部の温度に対応する温度情報を伝達する接触式の温度センサと、
前記温度センサから伝達される温度情報に基づいて、前記被温度測定部の温度を表示させる温度表示部と、
前記装置ケースに固定されており、且つ前記温度センサが前記被温度測定部に接触するように前記放熱器の外表面に磁着する永久磁石とを備えており、
上端側の先端部が下方に折り曲げられて垂下する板状の係止部が設けられていて、所定位置に取付け孔を有する油温検出装置取付け金具の前記取付け孔に嵌着させられ、
前記油温検出装置取付け金具の前記係止部を前記被温度測定部である前記放熱器の上端に係合させて懸装させたこと
を特徴とする油入電気機器。
【請求項2】
前記取付け孔は、前記油温検出装置取付け金具の高さ方向に所定間隔で複数個設けられており、この取付け孔に夫々油温検出装置が嵌着させられていること
を特徴とする請求項1に記載の油入電気機器。
【請求項3】
前記油温検出装置取付け金具の前記係止部は、内側に傾斜されていること
を特徴とする請求項1または2に記載の油入電気機器。
【請求項4】
前記被温度測定部である前記放熱器の外表面と前記油温検出装置取付け金具の内壁面との間には、ゴム等の弾性材が介在されていること
を特徴とする請求項1,2または3に記載の油入電気機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−216569(P2011−216569A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81538(P2010−81538)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)