説明

油再生処理装置

【課題】処理効果の大きい微細な粉体の処理剤を用い処理能力を低下することなく利用可能とし、処理能力が優れ、経済的な油再生処理装置を提供する。
【解決手段】油槽1に処理すべき廃食用油を収容し、処理剤2を充填したフィルタ3を配置した隔壁4を油槽上端から油槽下端へ移動自在に嵌合した油再生処理装置において、フィルタ3の内部に浮遊エリア5を設けて処理剤2がフィルタ3の内部を自在に移動できる構造にし、処理剤2の粒径10μmから150μmを利用可能にすることにより、処理剤の重量を増やす事無く処理剤の吸着表面積大きくし再生処理能力をあげることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油の再生処理装置に関するものであり、油再生処理の処理剤として、より微細な粉体の処理剤を利用可能にする技術に関する。
【0002】
また特に原動機を利用しない自然ろ過装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0003】
従来の油再生処理装置は、処理する油の収納容器を2個以上持ち、上部に配置された収納容器の底もしくは下部に配置された収納容器の口にフィルタを配置し、上部より処理する油を流し込み、そのフィルタを通って落ちることによりろ過され下の容器に溜まっていく構造を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
他の油再生処理装置は油処理剤を充填した隔壁を移動自在に配置した油槽内に処理すべき油を収納し、概隔壁を油槽の一端部から他端へ向けて前記油中において移動せしめることを特徴とする油再生処理装置であって、処理効果を上げる為に原動機にて処理する油を強制的にフィルタを通過せしめる機構であった(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−810号公報(第9頁、図12・図13)
【特許文献2】特開昭56−24497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、処理される廃食油が処理剤を通過する間隙は一定で処理が進むにつれて処理剤の間隙が狭くなり処理能力が低下する。当該間隙を確保する為、大きな粒径の処理剤を選択しなくてはならず、処理する表面積が小さくなり処理能力が低くなるという課題を有していた。また、ろ過に使用する処理剤を利用可能にするには粒度を一定の範囲になるように、粉砕、篩い分け、増粒する工程が必要であった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、処理効果の大きい微細な粉体の処理剤を用い処理能力を低下することなく利用可能とし、処理能力が優れ、経済的な油再生処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の油再生処理装置は、処理すべき廃食用油を収容する油槽と、処理剤を充填したフィルタを配置した隔壁と、前記隔壁を前記油槽上端から油槽下端へ移動自在に嵌合し、フィルタの内部に浮遊エリアを設けて処理剤がフィルタの内部を自在に移動できる構造にした事を特徴としたものである。
【0008】
さらに、本発明は前記処理剤は粒径10μmから150μmであることを特徴としたものである。
【0009】
さらに、本発明は前記隔壁は自重により下端へ移動することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油再生処理装置によれば、原動機を使用せず10μmから150μm粉体の処理剤を利用可能にし、処理剤の重量を増やす事無く、処理剤吸着表面積を大きくする事により効果的に廃食用油のろ過をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の油再生処理装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における油再生処理装置の断面図を示すものである。
【0013】
図1において、油槽1に上下自在に移動できる隔壁4を勘合配置され、当該油槽1を二室に分離しかつ移動可能な隔壁4であって、自重により下降可能となっている。
【0014】
隔壁4は図2に断面図で示すように、中央部に処理される油が通過する開口部6aを有し、パッキン7は油槽1を二室にする。
【0015】
図2のウエイト8はフィルタ3を固定すると共に自重を増減することにより、油再生処理する速度を調節可能とする機能を有している。さらに、処理された油が通過する開口部6bを有している。
【0016】
フィルタ3は図3に断面図で示すように、無孔の側壁9と上下にろ紙、ろ布、不織布、フェルト等のいずれか一種または組み合わせてなるろ過材10a、10bにより中空形成された内部に処理剤2例えば活性白土、酸性白土、セピオライト、酸化マグネシウム等またはそれ以外吸着剤の混合物を上部に浮遊エリア5を設けて充填されてからなる。
【0017】
以下に実施形態1において10μm粒径の処理剤2を使用した時の本発明について具体的に説明する。
【0018】
図6は隔壁4とフィルタ3の総重量が変化することにより、10μm処理剤一個、高さ方向2299個を持ち上げようとする圧力変化を表したものである。さらに図4・図5は処理剤2に加わる圧力関係を断面図で示す。
【0019】
図7は図6の計算式、図8は図7の計算の諸条件を表したものである。
図6に示されるように、隔壁4とフィルタ3の総重量aが増加するにつれて、底面にある処理剤1個分(10μm)の面積に持ち上げようとする力cが増加し、隔壁4とフィルタ3総重量aが2000gにて底面にある処理剤1個分(10μm)の面積に持ち上げようとする力cが底面にある処理剤1個、高さ方向2299個が沈もうとする力dより大きくなり、処理剤2が浮上する。
【0020】
また、処理剤2を浮上させ効果的に処理を行うためには処理剤上部の浮遊エリア5が少なすぎると目詰まりを起こし、処理剤上部の浮遊エリア5が多すぎると処理剤に接触する事無くフィルタ3を通過してしまう為、処理剤2の容積の50%から100%の容積を浮遊エリア5として設けることで、10μmの微細な処理剤でも目詰まりする事無く濾過することが可能になる。
【0021】
以上のように、実施の形態1においてはフィルタ3に浮遊エリア5を設けることにより、10μmから150μm粉体の処理剤2を利用可能にし、処理剤2の重量を増やす事無く、処理剤吸着表面積大きくする事により効果的に廃食用油のろ過をすることができる。
(試験例)
実施の形態1の構成にて、処理剤2として水澤化学工業社製(FG−1)0.8リットル、粒径50μmから150μmを使用し、130℃から150℃に加温し使用済みの劣化した食用油18リットルを濾過した後、酸価値、透明度について調査した。
【0022】
酸価値の測定はJIS K 0070(中和滴定法)にしたがって行い、透明度は未使用の油を光透過率100%とし光透過率を測定し、色調は目視にて行い得られた結果を図9に示す。
【0023】
図9に示されるように、使用済み食用油は褐色で不透明、揚げカスも浮遊していたが、本発明によってろ過することにより、僅かに黄色みを帯びた透明の油として再生できた。
透過率も酸価値も大幅に改善された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかる油再生処理装置は、使用済みの食用油を還元処理して再び使用できる良好な状態の食用油に再生する機能を有し、業務用のフライヤ等で食品を揚げるために使用された使用済みの食用油の再生処理等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1における油再生処理装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における隔壁の断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるフィルタの断面図
【図4】本発明の実施の形態1における図6の処理剤に加わる圧力の説明断面図
【図5】本発明の実施の形態1における図4の拡大断面図
【図6】処理剤に加わる圧力変化を表す図
【図7】図6の計算式を表す図
【図8】図7の計算の諸条件を表す図
【図9】試験結果を表す図
【符号の説明】
【0026】
1 油槽
2 処理剤
3 フィルタ
4 隔壁
5 浮遊エリア
6a、6b 開口部
7 パッキン
8 ウエイト
9 側壁
10a、10b ろ過材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食用油を収容する油槽と、
油処理剤を充填したフィルタと、
前記フィルタを配置した隔壁とを有し、
前記隔壁は前記油槽上端から油槽下端へ移動自在に嵌合し、
前記フィルタは内部に浮遊エリアを設けて油処理剤がフィルタの内部を自在に移動できる構造にしたことを特徴とする油再生処理装置。
【請求項2】
前記油処理剤は粒径10μmから150μmであることを特徴とする請求項1に記載の油再生処理装置。
【請求項3】
前記隔壁は自重により下端へ移動することを特徴とする請求項1に記載の油再生処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−73907(P2009−73907A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243230(P2007−243230)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】