説明

油吸収材および油吸収器

【目的】 熱または圧力によって固定された油が、再び流動化することのない油吸収材および油吸収器を提供すること。
【構成】 乾燥・顆粒状にした製紙スラッジ1に対してゼオライト2を混合し、製紙スラッジの表面にゼオライトを吸着させて油吸収材を作製し、これを容器内に入れた油吸収器。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製紙スラッジとゼオライトを主成分とする油吸収材および油吸収器に関する。
【0002】
【従来の技術】使用済の油は、そのまま若しくは乳化し廃棄されると地球環境汚染につながる。特に家庭などから排出される食用油(てんぷら油)の廃油は、1年間で数10万トン以上で、回収されるものはその3割にも満たないと考えられている。下水に放出された廃油は生活水域の汚染につながる。そこで、従来はこの油をつぎのような方法で処理し廃棄されている。この方法には大きく3通りのタイプに大別される。その一つは、パームやしオイルまたはパラフィン等の熱可逆性の固形物質を、熱した油に添加し、その後冷却過程において油を固形化する方法である。他の一つは、適当な容器に紙等の繊維質を層状もしくは丸めた状態にし油を吸い取らせる方法である。さらに他の一つは、カセイソーダを添加し鹸化させ、石鹸の形でリサイクルさせる方法が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の油固化もしくは吸い取らせ、回収し廃棄する方法にあってはつぎのような欠点を有している。従来の技術の一つであるパームやしオイルまたはパラフィン等を用いて油を固化する方法では、熱による可逆性を利用している。回収・廃棄場がアスファルト,コンクリート等で舗装されている場合、夏期においては60℃〜80℃に及ぶこともある。そのため、熱せられ固化した油が溶けだし液状化することがあった。また、他の一つの方法である吸収材を使った方法では、吸収後圧力により油が流れだすことがあった。従って、どちらの方法においても完全に回収することができなく、油が液状となって流れだし、環境汚染を招くことになることがあった。また、他の一つの方法である石鹸にする方法は、品質の観点から排出された水のCOD値が高くなり、環境保全の観点からあまり好ましい手段とは言えない。本発明は上記の欠点を改善するために提案されたもので、その目的は固定された油が熱あるいは圧力により再び流れ出したりすることのない油吸収材および油吸収器を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は乾燥・顆粒状にした製紙スラッジに対してゼオライトを添加混合したことを特徴とする油吸収材を発明の要旨とするものである。さらに、本発明は乾燥・顆粒状にした製紙スラッジに対してゼオライトを添加混合して作製した油吸収材と、これを収容する容器とからなることを特徴とする油吸収器を発明の要旨とするものである。換言すれば、本発明の第1の特徴として、製紙工場等から発生する泥状の製紙スラッジを乾燥させて顆粒状にさせる。この乾燥・顆粒状の製紙スラッジにゼオライトと呼ばれる鉱物を吸着させることからなる吸収材である。本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴における吸収材が、体積比で乾燥・顆粒状に施した製紙スラッジ1に対してゼオライト0.4〜0.6の割合で配合し、所定の箱に収容した油吸収器である。
【0005】
【作用】本発明の油吸収材に油を吸わせると、始めに乾燥・顆粒状に施した製紙スラッジが油を吸油する。この乾燥・顆粒状に施した製紙スラッジを油吸収材に配合することにより、油を粗方吸収できるほか油の広がりを容易にすることができる。最終段階において油はゼオライトにより吸油され、その流動性を固定化する。ゼオライトは、分子結晶格子構造であるため、油の連鎖構造がその格子に引っ掛かり固定化する。このようにして固定された油は、熱または圧力により再び流動化することはない。
【0006】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。図1は本発明の油吸収材を拡大した模式断面図である。図において、1は乾燥した顆粒状製紙スラッジ、2はゼオライトを示す。本発明の油吸収材を製造するためには、つぎのような方法で製紙スラッジを乾燥・顆粒状製紙スラッジにする。このようにして得られた乾燥・顆粒状製紙スラッジ1にゼオライト2を添加し十分混合すると、乾燥・顆粒状製紙スラッジの表面にゼオライトが吸着され、油吸収材3ができあがる。乾燥・顆粒状製紙スラッジ1とゼオライト2の配合体積比は、乾燥・顆粒状製紙スラッジの粒径にもよるが、およそ体積比で乾燥・顆粒状製紙スラッジ1に対してゼオライト0.4〜0.6程度とすることが好ましい。ゼオライトの比率をこれより大きくすると、容器にこの吸収材を収容した場合、油の浸透時間が多く必要である。小さくすると、油を吸収した後、圧力により容易に溶出することがあり、所定の目的を達することができない。
【0007】図2は本発明の油吸収器の断面図を示す。図において、3は油吸収材、4は容器を示す。この油吸収材3を適当な容器4に収納すれば、油吸収器が作製される。この容器には、新規に製作してもよいが廃品の紙箱、例えば、牛乳パック容器などを利用することもできる。油吸収材は、食用油と機械油の両廃油に適用でき、固形燃料になる。特に、食用油に適用したものは有機質肥料になる。なお、使用するゼオライトは、天然産のものでも合成もしくは人工のものでも構わない。
【0008】
【発明の効果】叙上のように、本発明によれば、油を分子格子に閉じ込めるために、従来品のように熱により流動化したり、圧力により再び油が流れだしたりすることはない。また、吸収済の吸収材は団子状になり、高カロリーの固形燃料としてリサイクルすることができる。(食用油に適用した吸収材は、有機肥料としてリサイクルできる。)さらに、産業廃棄物である製紙スラッジを有効に利用することができ、廃棄物により廃棄物を処理することができ、経済的にも地球環境保全の観点からも優れた有用性を発揮する。なお、火力発電所などから排出されるフライアッシュや製紙スラッジを焼却した灰を使って合成したゼオライトを用いれば、発明の効果を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油吸収材を拡大した模式断面図である。
【図2】本発明の油吸収器の断面図である。
【符号の説明】
1 乾燥・顆粒状製紙スラッジ
2 ゼオライト
3 油吸収材
4 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 乾燥・顆粒状にした製紙スラッジに対してゼオライトを添加混合したことを特徴とする油吸収材。
【請求項2】 乾燥・顆粒状にした製紙スラッジに対してゼオライトを添加混合して作製した油吸収材と、これを収容する容器とからなることを特徴とする油吸収器。

【図1】
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【図2】
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