説明

油回収装置

【課題】回収装置の構成を簡略化するとともに、液体上に浮遊する油を付着させる捕捉体および捕捉体に付着した油を分離回収する分離手段の耐久性および油の回収効率の向上を図った油回収装置を提供する。
【解決手段】一定の長さを有する捕捉体7を鉛直方向に上下動させ、捕捉体7を下降させて液体の浮遊油を捕捉体7に付着させ、捕捉体7を液体面の上方に上昇させて、付着した浮遊油を分離手段11で離脱させて回収する油回収装置であって、前記捕捉体7を液体面の上方に上昇させるときは、捕捉体7に分離手段11の分離部材を接触させて付着した浮遊油を回収し、捕捉体7を下降させるときは、捕捉体7と分離部材を離して非接触とすることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面部に浮遊する油を液体と分離して回収する油回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下土壌中へ流出、漏洩した原油、重油、軽油等の油は、土壌中の地下水帯を介して拡散し、これらによる汚染が広がる恐れがあり、簡略化された装置で効率的に回収することが望まれている。また、加工機械での使用時に切削液と加工油が用いられるが、これらを例えば床下や地下のタンクに貯留し、加工油を分離回収する必要がある。従来これらの課題の解決手段として下記のものが知られている。
【0003】
汚染物質の除去装置で、帯状吸着体と、走行駆動部と、離脱回収部とを有している。帯状吸着体は、複数のローラ間に無端状に捲回されていて、掘削孔の下端側と地上との間に循環走行するようになっている。走行駆動部は、地上側に設置され、トップローラに軸連結されたモータと、モータの駆動源とを備えている。離脱回収部は、地上側に設置され、挟圧ローラと、回収槽とから構成されている。挟圧ローラは、トップローラの下方に設置され、トップローラとともに循環走行する吸着体を挟圧して、吸着体の吸着マットに吸着保持されている油類を絞ることにより離脱させる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、移動用車輪を備えて床の上を移動可能な台車に、無端ベルトを回転自在な状態で吊り下げ、この台車に無端ベルトを回転させる回転装置と無端ベルトに付着したオイルを無端ベルトから回収する回収装置とを設けるとともに、無端ベルトを使用しない時には無端ベルトを台車上に引き上げて収容するベルト収容装置を設ける。タンク内の液面のレベルはタンク毎に異なる場合があるので、テンションプーリが液面の下に沈むようにアジャストローラの上下位置を調整する。アジャストローラの上下位置は、レベル調整ハンドルを掛ける溝を替えることで調整する。すなわち、これらアジャストローラ、レベル調整ハンドル及び複数の溝により、ベルトが台車から垂れ下がる深さを調整する調整装置が構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
回転駆動自在な駆動ローラと、この駆動ローラによって駆動されるベルトを介して駆動ローラに吊下されたウエイトローラと、当該ベルトの下降側軌道においてその掻き取り部がベルトと接触する掻き取り部材とを備え、前記ベルトのウエイトローラ側を第1液体に浸した状態で駆動ローラを回転させて、第1液体表面に浮上している第2液体を前記ベルトに付着させ、さらにこのベルトに付着した第2液体を前記掻き取り部材によって掻き取る如く構成した浮上油の除去装置において、前記ベルトに付着した第2液体を毛細管現象により吸引する吸引体が前記掻き取り部材に設けられている。ベルトに付着した第2液体を毛細管現象により吸引する吸引体が掻き取り部材に設けられているので、その第2液体が低粘度の液体であっても第2液体の表面張力および毛細管現象により吸引されてベルトから分離される。油タンクの側壁に、適宜の補助取付板を介して、取付用ステイをボルト、ナット等の固定部材で固定する。この場合、取付用ステイの長孔を利用して取り付け高さの調節を行い、ウエイトローラ切削油内に没するようにする(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
一定の長さを有する捕捉体を鉛直方向に上下動させる。この捕捉体が下降したときには、液体の浮遊油を捕捉体に付着させる。そして、この捕捉体が液体面の上方に上昇したときには、付着した浮遊油を分離手段で離脱させて回収する(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平10−314714号公報
【特許文献2】特開2004−8964号公報
【特許文献3】登録実用新案第3005712号公報
【特許文献4】特開2006−289314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した特許文献1、2、3に記載されたものは、無端状のベルト(吸着体)を用い、複数のローラで支持し、循環走行するよう回転駆動されている。従って構造が複雑で、大型となる。また循環走行することによって騒音が大きくなりやすく、無端状のベルトの耐久性、駆動動力が大きくなる課題がある。さらに油が浮遊する液面と無端状のベルトから油を分離、離脱させる手段との距離は、状況によって様々であり、これに対応させることが困難である。すなわち無端状のベルトの長さを変えるために都度交換する必要があり、汎用性、メンテナンス性に課題がある。さらに特許文献2ではアジャストローラの上下位置を調整して、前記した距離を変更するようにし、また特許文献3では、駆動ローラ2を固定する取付用ステイの高さをボルト、ナットで変更するようにしたものであるが、段階的であり、大きく調整することができない。
【0008】
さらに特許文献1、2、3に記載されたものは、無端状のベルトに分離、離脱させる手段を常に接触させた状態で油の回収運転を行うため、前記無端状のベルト、分離、離脱させる手段の耐久性、駆動手段の電力消費による省エネルギー性に課題がある。
【0009】
また、特許文献4に記載されたものは、一定の長さを有する捕捉体を鉛直方向に上下動させる。この捕捉体が下降したときには、液体の浮遊油を捕捉体に付着させる。そして、この捕捉体が液体面の上方に上昇したときには、付着した浮遊油を分離手段で離脱させて回収するものである。これによって、回収装置の構成を簡略化して低騒音、耐久性の向上を図るとともに、油が浮遊する液面の位置等の様々な状況に任意に対応させることができる。
【0010】
しかしながら、捕捉体に分離手段を常に接触させて回収運転を行うため、特許文献1、2、3に記載されたものと同様に、捕捉体、分離手段の耐久性に課題がある。さらに捕捉体を下降させるとき、この捕捉体表面に残っている油が分離手段により周囲に飛散しやすく、装置内の一部に付着して定期的なメンテナンスを必要としていた。
【0011】
また、捕捉体を下降させるとき、捕捉体と分離手段が接触していることによる摺動抵抗により、捕捉体の下降速度を一定以上に早めることができない。したがって捕捉体の上下動のサイクル数を多くすることに限界があり、単位時間当たりの油の回収効率に課題がある。捕捉体に設けた錘の質量を大きくして捕捉体の下降をよりスムーズにする手段もあるが、捕捉体を上昇させるときの駆動力が増加し、省エネルギー性に課題がある。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、回収装置の構成を簡略化するとともに、液体上に浮遊する油を付着させる捕捉体および捕捉体に付着した油を分離回収する分離手段の耐久性および油の回収効率の向上を図った油回収装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の油回収装置は、一定の長さを有する捕捉体を鉛直方向に上下動させ、捕捉体を下降させて液体の浮遊油を捕捉体に付着させ、捕捉体を液体面の上方に上昇させて、付着した浮遊油を分離手段で離脱させて回収する油回収装置であって、前記捕捉体を液体面の上方に上昇させるときは、捕捉体に分離手段の分離部材を接触させて付着した浮遊油を回収し、捕捉体を下降させるときは、捕捉体と分離部材を離して非接触とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の油回収装置によれば、回収装置の構成を簡略化するとともに、液体上に浮遊する油を付着させる捕捉体および捕捉体に付着した油を分離回収する分離手段の耐久性および油の回収効率、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、一定の長さを有する捕捉体を鉛直方向に上下動させ、捕捉体を下降させて液体の浮遊油を捕捉体に付着させ、捕捉体を液体面の上方に上昇させて、付着した浮遊油を分離手段で離脱させて回収する油回収装置であって、前記捕捉体を液体面の上方に上昇させるときは、捕捉体に分離手段の分離部材を接触させて付着した浮遊油を回収し、捕捉体を下降させるときは、捕捉体と分離部材を離して非接触とすることを特徴とする油回収装置としたものである。
【0016】
これによって、回収装置の構成を簡略化するとともに、液体上に浮遊する油を付着させる捕捉体および捕捉体に付着した油を分離回収する分離手段の耐久性および油の回収効率、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、分離手段は、捕捉体に接触する少なくとも二つの分離部材を有し、捕捉体を下降させるときは、少なくとも一方の分離部材を前記捕捉体から離れる方向に移動させて、捕捉体と分離部材を非接触とすることを特徴とする油回収装置としたものである。
【0018】
これによって、簡単な構成により捕捉体と分離部材を非接触とすることができる。
【0019】
第3の発明は、第1または第2の発明において、分離手段の分離部材は、捕捉体の上昇にともなって回転することを特徴とする油回収装置としたものである。
【0020】
これによって、捕捉体と分離手段の分離部材の摺動抵抗を減少させ、捕捉体を上昇させるときの駆動力を少なくしてより省エネルギー化を図ることができる。
【0021】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、分離手段の分離部材は、捕捉体に接触する圧力を調節可能としたことを特徴とする油回収装置としたものである。
【0022】
これによって、捕捉体を上昇させるときの駆動力および分離手段の分離部材による捕捉体からの油の分離能力を最適条件に設定することができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の一実施例の油回収装置を図1〜図7を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例の油回収装置の一部側断面図、図2(a)(b)は図1中の捕捉体と分離手段部の要部側断面図、図3、図4、図5、図6は他の捕捉体の構成を示す斜視図、図7は本発明の他の油回収装置の一部側断面図である。
【0024】
図1、図2において、筺体1の内部に固定板2を有し、固定板2上には巻取部3aを有する回転体3を設け、回転体3はギアードモータ(駆動手段)5によって正逆に回転駆動されるものである。回転体3に対向して、回転体3の回転数または回転角度を検出する近接センサ、磁気センサ、光センサ等を用いた検出手段4を設け、前記検出手段4とギアードモータ(駆動手段)5を接続した制御手段6を設けている。制御手段6により回転体3の正逆の回転駆動制御を行う。巻取部3aに捕捉体である屈曲性を有するワイヤー(捕捉体)7の一端が連設され、他端部には錘8が装着されている。前記回転体3、ギアードモータ(駆動手段)5で上下動手段を構成しているものである。なお前記駆動手段であるギアードモータ5は、ステッピングモータであってもよい。
【0025】
筺体1の筒状体9の内側に通路10を構成し、この通路10に捕捉体であるワイヤー7が挿入されている。またワイヤー7に付着した油を離脱させる分離手段11を固定板2上に固定している。分離手段11は、回転軸13を有する断面が円形状の分離部材12、分離部材12と対向する位置に回転軸15を有する断面が円形状の分離部材14、分離部材14の回転軸15の両端部に連接した連結部材16、連結部材16を介して分離部材14を移動させる制御手段6に接続したソレノイド17(分離部材移動手段)、分離部材12の回転軸13の両端部およびソレノイド17を支持する保持部材(図示せず)を備えている。また分離部材12、14の間にワイヤー7を位置させている。分離部材12、14はワイヤー7の全周に圧接して接触するように、少なくとも表面部をゴム等の弾性を有する材料で構成している。
【0026】
図2(a)は、ソレノイド17を非通電として分離部材12と分離部材14とを所定寸法離して、分離部材12、14とワイヤー7が非接触な状態を示す。また図2(b)は、ソレノイド17に通電し、連結部材16を介して分離部材14を移動させワイヤー7に分離部材12、14が接触した状態を示す。
【0027】
分離部材12、14の下方には、分離部材12、14で離脱させた落下する油を受けて案内筒20に導く固定板2に固定したガイド19を設けている。案内筒20から回収容器21に油を回収して貯留する。
【0028】
筺体1の下部の地下土壌22、地下水帯23を掘削してこの掘削穴に筒状体24を挿入し、通路25を構成させている。なお地下水帯23に位置する筒状体24の下部は地下水、浮遊油が十分入り込み、また通過できるように多数の孔、スリット(図示なし)が形成されている。筒状体9の内側に通路10と、筒状体24の内側の通路25は同軸状になるように設置されているものである。ワイヤー7は、通路10、通路25のほぼ中央部に位置させている。通路10、通路25の内径は例えば約50ミリメートルでよい。
【0029】
また、図3は前記捕捉体であるワイヤー7を複数本で構成した例を示し、図4は多数の円筒体または球状体26をワイヤー7に通して捕捉体を構成したものである。図5はワイヤー7に植毛等の手段により線状付着体27を付加させたもので、図6は一定の巾を有するシート28で捕捉体を構成したものである。
【0030】
次に、本実施例における油回収運転の基本的な動作を説明する。駆動手段であるギアードモータ5を駆動し回転体3を回転させて、回転体3の巻取部3aに巻き取られている捕捉体であるワイヤー7を、通路10、通路25に錘8を下端として地下水帯23に到達するよう鉛直方向に下降させ吊り下げる。このとき地下水帯23の液面に浮遊している油に接触して、ワイヤー7の表面に浮遊油が付着する。
【0031】
錘8が地下水帯23の下部に到達した位置を制御手段6で記憶し、設置条件として設定する。またワイヤー7を下降させるときは、ソレノイド17を非通電として分離部材12と分離部材14とを所定寸法離して、分離部材12、14とワイヤー7が非接触な状態となっている。
【0032】
次に、回転体3を逆回転させて巻取部3aにワイヤー7を巻取り、上方に移動させる。このときにもワイヤー7が地下水帯23の液面に浮遊している油に順次接触して、ワイヤー7の表面に浮遊油が付着する。回転体3を逆回転させてワイヤー7を上昇させると同時に、ソレノイド17に通電し、連結部材16を介して分離部材14を移動させワイヤー7に分離部材12、14を接触させる。なお分離部材14をソレノイド17により移動させるようにしたが分離部材12、14の両方を移動するようにしてもよい。
【0033】
なお、分離手段11の分離部材12、14は、回転軸13、15を中心として回転自在に構成されている。これによってワイヤー7の上昇にともない分離部材12、14が回転するものである。また分離部材14は、ソレノイド17に通電時、連結部材16を介して分離部材12側に移動させワイヤー7に分離部材12、14を接触させるが、ソレノイド17による連結部材16の移動距離または連結部材16の長さを調節することで、分離部材14の分離部材12への押圧力を変え、少なくとも表面部をゴム等の弾性を有する材料で構成した分離部材12、14がワイヤー7に接触する圧力を調節可能とするものである(図示なし)。
【0034】
ワイヤー7の上昇により、ワイヤー7に付着した油は、分離部材12、14で削ぎ落とされワイヤー7から分離して落下する。これを傾斜したガイド19で受けて案内筒20に流動させ、回収容器21に油を回収する。このワイヤー7の下降と上昇の上下動のサイクルを繰り返し、浮遊油を回収するものである。
【0035】
従来技術においては、油を付着させる無端状のベルトを複数のローラで支持し、循環走行するよう回転駆動されている。したがって構造が複雑で大型となり、コスト高となる。また循環走行することによって騒音が大きく、ベルトの耐久性、必要な駆動動力が大きくなる等の点でも課題がある。これに対して本発明の実施例においては、捕捉体であるワイヤー7を鉛直方向に上下動させるので、回収装置の構成を簡略化させるとともに、低騒音化、耐久性の向上を図ることができる。
【0036】
また、捕捉体であるワイヤー7を回転体3に巻装し、前記回転体3の駆動手段であるギアードモータ5を正逆回転に制御することによって、前記ワイヤー7を簡単な手段で精度よく上下動させさせることができ、さらに回転体3の回転速度を変えることでワイヤー7の上下動の周期を調節することもできる。
【0037】
さらに、油の浮遊する液面と油を分離、離脱させる分離手段との距離は、状況によって様々であり、これに対応させるため従来は、ベルトの交換、または機構的な手段による上下距離の調節を行っていたが、都度メンテナンスが必要で、上下距離の調節巾も大きく取れない。これに対して本実例によれば、回転体3の駆動手段の正逆の回転方向への回転数または回転角度を制御することによって、捕捉体であるワイヤー7の上下動させる移動距離を簡単に設定することができ、地上から地下水帯23部までの距離差、すなわち油の浮遊する液面と油を分離、離脱させる分離手段11との距離の差の状況に簡単に対応せるこができる。
【0038】
また、地上から地下水帯23に達するように掘削して通路を形成し、前記通路内で捕捉体であるワイヤー7を鉛直方向に上下動させ、地下水の浮遊油を回収することによって、回収装置を簡略化させるとともに、低騒音化、耐久性の向上を図ることができる。特に、騒音を著しく低下させ、さらに回転体3の大きな駆動動力を必要とせず、耐久性にも優れていることで、昼夜運転しても騒音公害を引き起こさず、また省エネルギー化を図ることができる。
【0039】
また、従来は液中に無端ベルトを常時挿入し、かつ無端ベルトの下端部に回転ローラを設ける必要があり、これによって、前記ローラの挿入、他への接触防止のために通路のサイズを大きくする必要がある。従って地中の掘削に大きな動力、設備および手間を要する課題がある。これに対して本実施例によれば、捕捉体であるワイヤー7の下端部には回転ローラを設ける必要がない。これによって通路10の径を小さくでき地中の掘削に大きな動力、設備を必要とせず作業を簡単に行うことができる。
【0040】
また、図3に示した前記捕捉体は、ワイヤー7を複数本で構成したもの、図4に示した多数の円筒体または球状体26をワイヤー7に通して構成したもの、図5に示したワイヤー7に植毛等の手段により線状付着体27を付加させたもので構成してもよく、この場合には通路10、通路25の径を大きくすることなく、浮遊油をより多く付着させて回収効率を向上させることがでる。
【0041】
図6に示した前記捕捉体は、一定の巾を有するシート28で捕捉体を構成したもので、特に地下水帯23まで細長状の穴、比較的大きな井戸を掘削可能な場合に用いることによって、浮遊油をより多く付着させて回収効率を向上させることがでる。前記したシート28は、屈曲性を有する板、繊維で編組したもの等で構成すればよい。従来技術においては、無端状のベルトを複数のローラで支持し、循環走行するよう回転駆動されているため、ローラに接触しない側のベルトの片面に油を付着させる必要がある。これに対して本発明の実施例においては、一定の巾を有するシート28の両面に浮遊油を付着させ、付着した浮遊油を分離手段11で離脱させて回収するものであり、従来技術に比べ回収効率を著しく向上させることがでる。またワイヤー7、シート28の捕捉体は、屈曲性を有し下端部に錘を設けたことによって、常に鉛直方向を維持して安定した上下動をさせることができる。
【0042】
さらに、前記したように従来は、捕捉体であるワイヤー7に分離手段11の分離部材12、14を常に接触させて回収運転を行うため、ワイヤー7、分離手段11の分離部材12、14の耐久性、捕捉体を鉛直方向に上下動させる駆動手段の電力消費による省エネルギー性に課題がある。さらに捕捉体を下降させるとき、このワイヤー7の表面に残っている油が分離手段11の分離部材12、14により周囲に飛散しやすく、装置内の一部に付着して定期的なメンテナンスを必要としていた。
【0043】
また、ワイヤー7を下降させるとき、ワイヤー7と分離手段11の分離部材12、14が接触していることによる摺動抵抗により、ワイヤー7の下降速度を一定以上に早めることができない。したがってワイヤー7の上下動のサイクル数を多くすることに限界があり、単位時間当たりの油の回収効率に課題がある。ワイヤー7に設けた錘の質量を大きくしてワイヤー7の下降をよりスムーズにする手段もあるが、ワイヤー7を上昇させるときの駆動力が増加し、省エネルギー性に課題がある。
【0044】
これに対して本発明の実施例においては、ワイヤー7を液体面の上方に上昇させるときは、ワイヤー7に分離手段11の分離部材12、14を接触させて付着した浮遊油を回収し、ワイヤー7を下降させるときは、ワイヤー7と分離部材12、14を離して非接触とするものである。
【0045】
これによって、ワイヤー7と分離部材12、14との接触時間を半減させ、液体上に浮遊する油を付着させるワイヤー7およびワイヤー7に付着した油を分離回収する分離手段11の分離部材12、14の耐久性の向上を図ることができる。
【0046】
また、ワイヤー7を下降させるとき、ワイヤー7と分離手段11の分離部材12、14は接触していないので摺動抵抗が無く、ワイヤー7の下降速度を早めることができる。したがってワイヤー7の上下動のサイクル数を多くすることができ、単位時間当たりの油の回収効率を向上させることができる。
【0047】
さらに、ワイヤー7を下降させるとき、このワイヤー7表面に残っている油が分離手段11の分離部材12、14により周囲に飛散せず、装置内の油の拭き取り等のメンテナンスを必要としない。
【0048】
また、分離手段11のワイヤー7に接触させる分離部材12、14の少なくとも一方の分離部材14をワイヤー7から離れる方向に移動させて、ワイヤー7と分離部材12、14を非接触とすることができる。これによって、簡単な構成によりワイヤー7と分離部材を非接触状態とすることができる。
【0049】
また、分離手段11の分離部材12、14は、ワイヤー7の上昇にともなって回転するようにすることによって、ワイヤー7と分離手段11の分離部材12、14の摺動抵抗を減少させ、ワイヤー7を上昇させるときの駆動力を少なくしてより省エネルギー化を図ることができる。
【0050】
さらに、分離手段11の分離部材12、14は、ワイヤー7に接触する圧力を調節可能とすることによって、ワイヤー7を上昇させるときの駆動力および分離手段11の分離部材12、14によるワイヤー7からの油の分離能力を最適条件に設定することができる。
【0051】
なお、屈曲性を有する捕捉体であるワイヤー7、シート28の下端部が地下水帯、井戸、容器等の区画領域の底部に接触した後も、さらにワイヤー7、シート28を一定距離下降させてから上昇させるようにしてもよく、これによってワイヤー7、シート28の油の付着する長さを増加させてより効率的な回収を図ることができる。また、分離手段11は断面が円形状としたが、これに限定されるものではなく板状体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
液体上に分離して浮遊する付着性物質を回収する分野への用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例の油回収装置の一部側断面図
【図2】(a)(b)図1中の捕捉体と分離手段部の要部側断面図
【図3】他の捕捉体の構成を示す斜視図
【図4】他の捕捉体の構成図
【図5】他の捕捉体の構成図
【図6】他の捕捉体の構成図
【符号の説明】
【0054】
1 筺体
2 固定板
3 回転体
3a 巻取部
4 検出手段
5 ギアードモータ(駆動手段)
6 制御手段
7 ワイヤー(捕捉体)
8 錘
9 筒状体
10 通路
11 分離手段
12 分離部材
13 回転軸
14 分離部材
15 回転軸
16 連結部材
17 ソレノイド(分離部材移動手段)
19 ガイド
20 案内筒
21 回収容器
22 地下土壌
23 地下水帯
24 筒状体
25 通路
26 球状体(捕捉体)
27 線状付着体(捕捉体)
28 シート(捕捉体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の長さを有する捕捉体を鉛直方向に上下動させ、捕捉体を下降させて液体の浮遊油を捕捉体に付着させ、捕捉体を液体面の上方に上昇させて、付着した浮遊油を分離手段で離脱させて回収する油回収装置であって、前記捕捉体を液体面の上方に上昇させるときは、捕捉体に分離手段の分離部材を接触させて付着した浮遊油を回収し、捕捉体を下降させるときは、捕捉体と分離部材を離して非接触とすることを特徴とする油回収装置。
【請求項2】
分離手段は、捕捉体に接触する少なくとも二つの分離部材を有し、捕捉体を下降させるときは、少なくとも一方の分離部材を前記捕捉体から離れる方向に移動させて、捕捉体と分離部材を非接触とすることを特徴とする請求項1に記載の油回収装置。
【請求項3】
分離手段の分離部材は、捕捉体の上下動にともなって回転することを特徴とする請求項1または2に記載の油回収装置。
【請求項4】
分離手段の分離部材は、捕捉体に接触する圧力を調節可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の油回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−136828(P2009−136828A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318153(P2007−318153)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】