説明

油圧ショベルのコントローラ配置構造

【課題】 オペレータの運転居住性が良いと共に、コントローラの異常表示部を視認できるようにする。
【解決手段】 上部旋回車体3の側部外装カバー15における運転室5と対向した側壁30に凹陥部34を形成し、この凹陥部34内にコントローラ31を取付けてカバー35で閉塞する。このカバー35に窓37をコントローラ31の異常表示部31aと対向して形成する。これによって、運転室5内のオペレータがコントローラ31の異常表示部31aを視認できる。運転室5内がコントローラ31で狭隘とならないので運転居住性が良い。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油圧ショベルの上部旋回車体にコントローラを配置する構造に関する。
【0002】
【従来の技術】走行体を備えた下部車体に上部旋回車体を旋回自在に取付け、この上部旋回車体に運転室、エンジン、タンク類、油圧バルブ等を搭載し、前記上部旋回体に作業機ブームを上下揺動自在に取付け、その作業機ブームにバケットを取付けた油圧ショベルが知られている。前述の油圧ショベルにおいて作業機ブームなどをコントローラによって動作制御することが行なわれている。このコントローラはエラーメッセージ(コントローラ異常)等を表示するので、このコントローラの配置は、コントローラ異常を外部から容易に視認できるようにした運転室内の運転席近傍位置又は運転席取付台内の位置に配置しているのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上部旋回車体の旋回半径を走行体の左右幅内に収めるようにした小旋回式の油圧ショベルが知られている。かかる油圧ショベルの場合、上部旋回車体の平面大きさ(搭載スペース)が小さくなる。このために、前述のエンジン、タンク類、油圧バルブ等の搭載及び作業機ブームの取付けによって上部旋回車体の運転室搭載スペースが小さくなり、運転室が小さくなるので、運転席回りのスペースが小さくなる。したがって、従来のように運転室内の運転席近傍にコントローラを配置すると、益々に運転席回りのスペースが犠牲になって狭隘となり、オペレータの運転居住性が悪くなる。
【0004】また、運転室内の環境改善のために運転席取付台内に冷暖房装置を配置することも行われているが、この場合には運転席取付台内にコントローラを配置できずに運転室内の運転席近傍にコントローラを配置することになるので、前述と同様に運転席回りのスペースがコントローラで犠牲によって狭隘になり、オペレータの運転居住性が悪くなる。
【0005】そこで、本発明は前述の課題を解決できるようにした油圧ショベルのコントローラ配置構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するめの手段及び作用・効果】第1の発明は、上部旋回車体3の左右一側部に運転室5を搭載し、左右他側部に油圧機器類に側部外装カバー15を被せた側部機器収納室16を搭載し、前記上部旋回車体3の運転室5と側部機器収納室16の運転室5と対向した側壁30との間に作業機ブーム6を上下揺動自在に取付けた油圧ショベルにおいて、前記側部機器収納室16の運転室5と対向した側壁30にコントローラ31を、その異常表示部31aと対向した窓37を形成が運転室5側から視認可能に配置したことを特徴とする油圧ショベルのコントローラ配置構造である。
【0007】第1の発明によれば、側部機器収納室16を形成する側部外装カバー15の側壁30にコントローラ31が配置してあるので、運転室5内がコントローラ31で狭隘となることがなく、オペレータの運転居住性が良い。また、コントローラ31の異常表示部31aを運転室5側から視認できるので、運転室5内のオペレータが異常表示部31aを視認可能である。また、上部旋回車体3の旋回時にコントローラ31の取付部が外部障害物と衝突することがない。
【0008】第2の発明は、第1の発明において、前記側部機器収納室16の運転室5と対向した側壁30にコントローラ取付用の凹陥部34を形成し、この凹陥部34内にコントローラ31を取付け、その凹陥部34をカバー35で閉塞し、そのカバー35にコントローラ31の異常表示部31aと対向した窓37を形成した油圧ショベルのコントローラ配置構造である。
【0009】第2の発明によれば、コントローラ31は凹陥部34内に取付けられ、その凹陥部34はカバー35で閉塞してあるので、塵埃、雨水等からコントローラ31を保護できるし、エンジンの熱からもコントローラ31を保護できる。また、カバー35にコントローラ31の異常表示部31aを目視できる窓37があり、その窓37は運転室5と対向しているので、運転室5内のオペレータがコントローラ31の異常表示部31aを視認することが可能である。
【0010】第3の発明は、上部旋回車体3の左右一側部に運転室5を搭載し、左右他側部に機器に側部外装カバー15を被せた側部機器収納室16を搭載し、前記上部旋回車体3の運転室5と側部機器収納室16との間に作業機ブーム6を上下揺動自在に取付けた油圧ショベルにおいて、前記側部機器収納室16内に機器を載置する機器載置台40を、その機器載置台40の下方に空間部Aを形成して取付け、その空間部Aにコントローラ31を配置し、前記機器載置台40に覗き見穴80をコントローラ31の異常表示部31aと対向して形成し、前記側部外装カバー15の一部分を開放することで外部から覗き見穴80を透してコントローラ31の異常表示部31aを視認可能とした油圧ショベルのコントローラ配置構造である。
【0011】第3の発明によれば、側部機器収納室6内に取付けた機器載置台40の下方の空間部Aにコントローラ31が配置してあるので、運転室5内がコントローラ31で狭隘となることがなく、オペレータの運転居住性が良い。また、機器載置台40にコントローラ31の異常表示部31aを目視できる覗き見窓80があり、側部外装カバー15の一部分を開放することで、覗き見窓80からオペレータがコントローラ31の異常表示部31aを視認することが可能である。
【0012】第4の発明は、第3の発明において、前記コントローラ31を窓64を備えた取付箱60内に取付け、この取付箱60を前記空間部A内に水平に対して斜めに配置し、その取付箱60の斜め下端側の底に水抜き穴72を形成した油圧ショベルのコントローラ配置構造である。
【0013】第4の発明によれば、コントローラ31は取付箱60内に取付けてあるので、塵埃・雨水等からコントローラ31を保護できるし、エンジンの熱からもコントローラ31を保護できる。
【0014】また、取付箱60内に浸入した雨水等は水抜き穴72から排水され、取付箱60内に雨水等が溜らまらないので、コントローラ31が雨水等で故障することがない。
【0015】
【発明の実施の形態】図1に示すように、走行体1を備えた下部車体2に上部旋回車体3が旋回機構4で旋回自在に取付けてある。この上部旋回車体3に運転室5が搭載してあると共に、作業機ブーム6が上下揺動自在に取付けてあり、その作業機ブーム6にアーム7が上下揺動自在に取付けられ、このアーム7にバケット8が上下揺動自在に取付けられて油圧ショベルを形成している。
【0016】図2と図3に示すように、上部旋回車体3は底部フレーム10の前部寄りで左右中間部に左右一対のブームフートピンブラケット11,11が固着してあり、この左右一対のブームフートピンブラケット11,11間に作業機ブーム6がブームフートピン12で上下揺動自在に取付けられる。前記底部フレーム10の左右一方のブームフートピンブラケット11よりも左右一方側に下部外装カバー13が取付けられて下部機器収納室14を形成している。この下部機器収納室14内には燃料タンクなどの機器が搭載してある。前記下部外装カバー13の上方に前記運転室5が搭載してあり、この運転室5の側壁5aは左右一方のブームフートピンブラケット11と近接している。
【0017】前記底部フレーム10の左右他方のブームフートピンブラケット11よりも左右他方側に側部外装カバー15が取付けられて側部機器収納室16を形成し、この側部機器収納室16内に作動油タンク17、油圧バルブ18、バッテリ19等の機器が搭載してある。つまり、側部外装カバー15で油圧機器類を被って側部機器収納室16を搭載している。前記側部外装カバー15の上面部15aは開閉可能で、内部の機器を保守・点検できるようにしてある。
【0018】前記底部フレーム10の後部に後部外装カバー20が取付けられてエンジン収納室21を形成し、このエンジン収納室21内にエンジン22が搭載してある。前記後部外装カバー20の上面部20aは開閉可能でエンジン22を保守・点検できるようにしてある。
【0019】前記側部外装カバー15(側部機器収納室16)の運転室5側壁5aと対向した側壁30にコントローラ31が取付けてある。具体的には図4、図5に示すように、前記側壁30に開口部32が形成され、この開口部32の開口縁内側面に箱体33が固着されてコントローラ取付用の凹陥部34を形成している。前記コントローラ取付用の凹陥部34内にコントローラ31が取付けてあり、前記開口部32の開口縁外側面にカバー35がボルト36で着脱自在に取付けてある。このカバー35に透光パネルで覆われた目視用の窓37が形成してあり、この窓37からコントローラ31の異常表示部31aを目視できる。
【0020】このようであるから、運転室5内のオペレータは側壁5aの窓38から窓37を見ることでコントローラ異常表示部31aを見てコントローラ異常を視認できる。また、コントローラ31は側壁30の凹陥部34内に取付けられてカバー35で覆われているので、コントローラ31を塵埃、雨水から保護することができる。しかも、コントローラ31とエンジン22は離隔しているから、エンジン熱からコントローラ31を保護できる。
【0021】なお、窓を有する取付箱内にコントローラをその異常表示部が窓と対向して取付け、その取付箱を側壁30に取付けても良い。
【0022】次に第2の実施の形態を説明する。図6に示すように、側部機器収納室16内に機器載置台40を取付け、この機器載置台40の上面に機器、例えばバッテリ19と燃料タンク23を取付ける。この機器載置台40の下方にコントローラ31を取付け、側部外装カバー15の上面部15aを開放することで外部からコントローラ31の異常表示部31aを視認できるようにしてある。
【0023】具体的には、図7と図8に示すように、機器載置台40は横板41の上面前部寄りに下向きコ字状のバッテリ置台42を固着した形状で、そのバッテリ置台42の上横片42aにバッテリ19が載置してある。前記横板41はブームフートピンブラケット11に固着した横材41aと底部フレーム10に固着した縦片41bで支持され、この横板41と底部フレーム10との間に空間部Aを形成している。
【0024】前記バッテリ19の後面は後部支持部43に接し、バッテリ19の上面と前面のコーナー部にL字状の押え部材44が接している。前記後部支持部43に上下揺動自在に連結した横連結ボルト45が押え部材44の上向片46を挿通してナット47が螺合してある。前記横板41に縦片48が固着され、この縦片48に係脱自在に係止した縦連結ボルト49が前記押え部材44の横向片50を挿通してナット51が螺合してある。これによって、バッテリ19はバッテリ置台42上に強固に支持される。横連結ボルト45と縦連結ボルト49を外すことでバッテリ19を外すことができる。
【0025】前記コントローラ31はコントローラの取付箱60内に取付けてある。このコントローラ取付箱60は上面を開口した箱体61と、この箱体61に着脱自在に取付けた蓋62を備え、その箱体61にコントローラ31がボルト63で固着してある。箱体61の底面とコントローラ31の下面との間には隙間がある。蓋62には窓64、例えば開口部をアクリル板で閉塞した窓が形成してあり、この窓64はコントローラ31の異常表示部31aと対向している。
【0026】前記箱体61の前面に前部取付縦片65がボルト66で固着され、この前部取付縦片65は横板41に固着したブラケット67にボルト68で固着してある。前記箱体61の底面に複数の側部取付縦片69が固着してあり、この各側部取付縦片69が横板41の下面に固着した取付材70にボルト71で固着してある。これによって、箱体61が水平に対して斜めの姿勢で取付けられる。この箱体61の底壁における斜め方向下部寄りに水抜き穴72が形成してあり、箱体61内に浸入した雨水等が水抜き穴72から排水されて箱体61内に溜らないようにしてある。
【0027】前記横板41の前部寄りとバッテリ置台42の前部縦片42bにおける前記窓64と対向した位置に覗き見穴80がそれぞれ形成してある。このようであるから、側部外装カバー15の上面部15aを側面部15bに対してヒンジ81を中心として前方側に回動して開放すると側部外装カバー15の外部から矢印aで示すように覗き見穴80から窓64を透してコントローラ31の異常表示部31aを視認できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】上部旋回車体の平面図である。
【図3】上部旋回車体の前面図である。
【図4】コントローラ取付部の拡大縦断面図である。
【図5】コントローラ取付部の拡大側面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す上部旋回車体の平面図である。
【図7】コントローラ取付部の拡大前面図である。
【図8】図7のB−B断面図である。
【符号の説明】
3…上部旋回車体
5…運転室
6…作業機ブーム
10…底部フレーム
11…ブームフートピンブラケット
15…側部外装カバー
15a…上面部
15b…側面部
16…側部機器収納室
17…作動油タンク
18…油圧バルブ
19…バッテリ
20…後部外装カバー
22…エンジン
30…側壁
31…コントローラ
31a…異常表示部
34…凹陥部
35…カバー
37…窓
40…機器載置台
41…横板
42…バッテリ置台
60…取付箱
64…窓
72…水抜き穴
80…覗き見穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上部旋回車体(3)の左右一側部に運転室(5)を搭載し、左右他側部に油圧機器類に側部外装カバー(15)を被せた側部機器収納室(16)を搭載し、前記上部旋回車体(3)の運転室(5)と側部機器収納室(16)の運転室(5)と対向した側壁(30)との間に作業機ブーム(6)を上下揺動自在に取付けた油圧ショベルにおいて、前記側部機器収納室(16)の運転室(5)と対向した側壁(30)にコントローラ(31)を、その異常表示部(31a)が運転室(5)側から視認可能に配置したことを特徴とする油圧ショベルのコントローラ配置構造。
【請求項2】 前記側部機器収納室(16)の運転室(5)と対向した側壁(30)にコントローラ取付用の凹陥部(34)を形成し、この凹陥部(34)内にコントローラ(31)を取付け、その凹陥部(34)をカバー(35)で閉塞し、そのカバー(35)にコントローラ(31)の異常表示部(31a)と対向した窓(37)を形成した請求項1記載の油圧ショベルのコントローラ配置構造。
【請求項3】 上部旋回車体(3)の左右一側部に運転室(5)を搭載し、左右他側部に機器に側部外装カバー(15)を被せた側部機器収納室(16)を搭載形成し、前記上部旋回車体(3)の運転室(5)と側部機器収納室(16)との間に作業機ブーム(6)を上下揺動自在に取付けた油圧ショベルにおいて、前記側部機器収納室(16)内に機器を載置する機器載置台(40)を、その機器載置台(40)の下方に空間部(A)を形成して取付け、その空間部(A)にコントローラ(31)を配置し、前記機器載置台(40)に覗き見穴(80)をコントローラ(31)の異常表示部(31a)と対向して形成し、前記側部外装カバー(15)の一部分を開放することで外部から覗き見穴(80)を透してコントローラ(31)の異常表示部(31a)を視認可能とした油圧ショベルのコントローラ配置構造。
【請求項4】 前記コントローラ(31)を窓(64)を備えた取付箱(60)内に取付け、この取付箱(60)を前記空間部(A)内に水平に対して斜めに配置し、その取付箱(60)の斜め下端側の底に水抜穴(72)を形成した請求項3記載の油圧ショベルのコントローラ配置構造。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−170219(P2000−170219A)
【公開日】平成12年6月20日(2000.6.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−348352
【出願日】平成10年12月8日(1998.12.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】