説明

油圧ショベルのバケット装置

【課題】 油圧ショベルにおいてバケットの開口部を塞ぐ保持部材を設けた際に、保持部材とバケットとの間の部材を破壊したり、保持部材の開閉機構を破壊したりすることがないようにする。
【解決手段】 駆動ギヤ31の回動を規制するストッパ32を設ける。バケット12と保持部材13との間に障害物がないときには、バケットシリンダ14が伸縮すると、リンク機構15によりバケットシリンダ14の伸縮運動がバケット12の揺動運動となると共に、ストッパ32により駆動ギヤ31の回動が規制され、リンク機構15のジョイント23の回動が駆動ギヤ31、従動ギヤ33を介して保持部材13に伝えられ、保持部材13が揺動する。障害物41があると、ストッパ32がフリーになり、保持部材13が障害物から受ける反力M2に対して、駆動ギヤ31が空転して、反力M2を逃がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホーとして使用する油圧ショベルのバケット装置に関するもので、特に、バケットに保持部材を取り付けたものに関する。
【背景技術】
【0002】
バックホーとして使用される油圧ショベルにおいて、バケットの開口部を塞ぐ保持部材を設けたものが提案されている。このような保持部材の開閉機構としては、例えば、特許文献1に示されるように、バケットシリンダの伸縮をリンク機構によりバケットの揺動運動に変換すると共に、このリンク機構の運動をギヤを介して保持部材に伝達し、保持部材を開閉させるものが知られている。
【0003】
図6及び図7は、特許文献1に記載されているような従来の油圧ショベルのバケット装置を示すものである。図6及び図7において、アーム101の先端には、バケット102が回動自在に装着される。このバケット102は、リンク機構104を介してバケットシリンダ103に連接される。バケットシリンダ103は油圧シリンダである。
【0004】
バケットシリンダ103が伸縮すると、その動きがリンク機構104によりバケット102の揺動運動に変換される。ここで、図7に示すように、バケットシリンダ103が矢印A101方向に伸張すると、バケット102が矢印B101方向に回動していく。これと共に、バケットシリンダ103の動きがギヤ107に伝えられ、ギヤ107が矢印C101方向に回動する。ギヤ106が矢印C101方向に回動すると、その動きがギヤ107、106を介して保持部材105に伝えられ、ギヤ106が矢印D101方向に回動し、保持部材105が矢印E101方向に回動する。これにより、図7に示すように、保持部材105がバケット102の開口側を閉塞する。ここで、保持部材105とバケット102との間に部材Pがあると、この部材Pは、保持部材105とバケット102との間に挟持される。
【特許文献1】実開昭53−135902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来の油圧ショベルのバケット装置では、バケットシリンダ103が伸張されて、バケット102が回動すると、その回動をギヤ107、106を介して保持部材105に伝えて、保持部材105を回動させる構成とされている。ところが、このような従来の油圧ショベルのバケット装置では、バケットシリンダ103の伸張力がギヤ107、106を介して保持部材105に直接伝わるため、保持部材105とバケット102との間の部材Pに強い力が加わり、部材Pを破壊してしまう危険性がある。
【0006】
また、部材Pが固い部材の場合には、保持部材105とバケット102との間に部材Pを挟持する際に、部材Pからの反力を受けて、ギヤ106、107が壊れてしまう危険性がある。
【0007】
本発明は、上述の課題を鑑み、バックホーとして使用される油圧ショベルにおいてバケットの開口部を塞ぐ保持部材を設けた際に、保持部材とバケットとの間の部材を破壊したり、保持部材の開閉機構を破壊したりすることがないようにした油圧ショベルのバケット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明は、アームの先端に回動自在に装着されたバケットと、アームに並設されたバケットシリンダと、バケットシリンダの伸縮運動をバケットの揺動運動に変換するリンク機構と、リンク機構のジョイントの回動軸に設けられた駆動ギヤと、駆動ギヤの回動範囲を規制するストッパと、バケットの開口部に対向して回動自在に装着された保持部材と、駆動ギヤと歯合され、駆動ギヤの回動を保持部材に伝える従動ギヤとからなり、バケットと保持部材との間に障害物がないときには、バケットシリンダが伸縮すると、リンク機構によりバケットシリンダの伸縮運動がバケットの揺動運動となると共に、ストッパにより駆動ギヤの回動が規制され、リンク機構のジョイントの回動が駆動ギヤ、従動ギヤを介して保持部材に伝えられ、保持部材が揺動し、バケットと保持部材との間に障害物があると、ストッパがフリーになり、保持部材が障害物から受ける反力に対して、駆動ギヤが空転して、反力を逃がすことを特徴とする油圧ショベルのバケット装置である。
【0009】
好ましくは、ストッパは、駆動ギヤと連動して動き、駆動ギヤが配設されるリンクの側面に当接して、駆動ギヤの回動を規制するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アームの先端に回動自在に装着されたバケットと、アームに並設されたバケットシリンダと、バケットシリンダの伸縮運動をバケットの揺動運動に変換するリンク機構と、リンク機構のジョイントの回動軸に設けられた駆動ギヤと、駆動ギヤの回動範囲を規制するストッパと、バケットの開口部に対向して回動自在に装着された保持部材と、駆動ギヤと歯合され、駆動ギヤの回動を保持部材に伝える従動ギヤとからなり、バケットと保持部材との間に障害物がないときには、バケットシリンダが伸縮すると、リンク機構によりバケットシリンダの伸縮運動がバケットの揺動運動となると共に、ストッパにより駆動ギヤの回動が規制され、リンク機構のジョイントの回動が駆動ギヤ、従動ギヤを介して保持部材に伝えられ、保持部材が揺動し、バケットと保持部材との間に障害物があると、ストッパがフリーになり、保持部材が障害物から受ける反力に対して、駆動ギヤが空転して、反力を逃がすようにしているので、従動ギヤや駆動ギヤ、リンク機構を保護することができる。また、バケットと保持部材との間の障害物に対して、大きな力が加わることがなくなり、障害物を破損させることがなくなる。
【0011】
また、本発明によれば、ストッパは、駆動ギヤと連動して動き、駆動ギヤが配設されるリンクの側面に当接して、駆動ギヤの回動を規制するようにしているので、保持部材が障害物から受ける反力に対して、駆動ギヤが空転して、反力を逃がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態のバケット駆動装置を示すものである。図1において、11はアーム、12はバケット、13は保持部材である。アーム11には、バケットシリンダ14が並設されている。バケットシリンダ14としては、油圧シリンダが用いられる。
【0013】
アーム11の先端には、リンク機構15を介して、バケット12が回動自在に装着される。リンク機構15は、バケットシリンダ14のシリンダ軸16の伸縮運動をバケット12の揺動運動に変換するものである。リンク機構15は、リンク17及び18と、ジョイント21〜24を有し、バケットシリンダ14のシリンダ軸16の先端をジョイント21でリンク17の一端及びリンク18の一端に枢着し、リンク17の他端をジョイント22でバケット12の取付片19に枢着し、リンク18の他端をジョイント23でアーム11の側面に枢着し、アーム11の先端をジョイント24でバケット12の取付片19に枢着して構成される。
【0014】
また、ジョイント23の回動軸には、駆動ギヤ31が設けられる。駆動ギヤ31に対して、駆動ギヤ31の回動を規制するストッパ32が設けられる。
【0015】
図2は、ストッパ32の構成を示すものである。図2に示すように、ストッパ32は、駆動ギヤ31に固定され、駆動ギヤ31と連動して回動する。図2(A)に示すように、ストッパ32がリンク18の側面から離れているときには、駆動ギヤ31は、矢印G1と矢印G2との双方向に回動可能である。ここで、図2(A)に示す状態から、矢印G1方向に駆動ギヤ31を回動させると、図2(B)に示すように、ストッパ32がリンク18の側面に当接する。図2(B)に示すように、ストッパ32がリンク18の側面に当接すると、矢印G1方向には回動できなくなり、その位置で駆動ギヤ31の回動が規制される。これに対して、駆動ギヤ31を矢印G2方向に回動させると、ストッパ32がリンク18の側面から外れる。このため、矢印G2方向には、回動可能である。
【0016】
図1において、保持部材13は、バケット12の開口側12aに対向するように、アーム11に回動自在に配設される。この保持部材13は、バケット12に対する蓋体として機能する。保持部材13には取付片35が設けられる。取付片35には、従動ギヤ33が形成される。アーム11には支持片34が設けられる。保持部材13の取付片35と、アーム11の支持片34とがジョイント25で枢支される。駆動ギヤ31と、従動ギヤ33と歯合される。
【0017】
図1は、バケット12の開口側12aが上方を向き、保持部材13が閉じられているときの状態を示す。この状態から、図3に示すように、開口側12aが下方を向き、保持部材13が開くようになるときの動作について説明する。
【0018】
図3に示すように、バケットシリンダ14を縮ませ、シリンダ軸16を矢印A1方向に動かすと、ジョイント21の部分が上方に動かされる。このため、ジョイント24を回動軸としてバケット12が矢印B1方向に回動し、バケット12の開口側12aの向きが下方に向くようになる。
【0019】
また、シリンダ軸16が矢印A1方向に動くと、ジョイント23を回動軸として、リンク18が矢印C1方向に回動する。このとき、保持部材13の自重M1により、従動ギヤ33が矢印E2に示す方向に回動しようとし、駆動ギヤ31が矢印D2方向に回動しようとする。しかしながら、このとき、ストッパ32がリンク18の側面に当接するため、その回動が規制される。このため、リンク18が矢印C1方向に回動すると、ジョイント23を回動軸として、リンク18が矢印D1方向に回動し、駆動ギヤ31は回動が規制されたまま、リンク18が回動した角度だけ、矢印D1方向に回動する。駆動ギヤ31が矢印D1方向に回動すると、従動ギヤ33は、矢印E1方向に回動する。その結果、保持部材13がジョイント25を回動軸として、矢印F1に示す方向に回動し、図3に示すように、保持部材13が開いた状態となる。
【0020】
図3に示すように、保持部材13が開き、バケット12の開口側が下方を向くような状態のときには、保持部材13の自重M1が生じ、従動ギヤ33が矢印E2に示す方向に回動しようとし、駆動ギヤ31が矢印D2方向に回動しようとする。駆動ギヤ31が矢印D2方向に回動しようとすると、ストッパ32がリンク18の側面に当接する。このため、駆動ギヤ31の矢印D2方向への回動は、ストッパ32により規制される。これにより、保持部材13は開いたままの状態に保持される。
【0021】
次に、バケット12の開口側12aを上方に向け、バケット12の開口側12aを保持部材13で閉塞させる(図3の状態から図1の状態に戻す)ときの動作について説明する。
【0022】
図4に示すように、バケットシリンダ14を伸張して、シリンダ軸16を矢印A2方向に動かすと、ジョイント21の部分が下方に動かされ、ジョイント24を回動軸として、バケット12が矢印B2方向に回動され、バケット12の開口側12aが上方を向くように、バケット12が動いていく。
【0023】
また、シリンダ軸16を矢印A2方向に動かすと、ジョイント23を回動軸としてリンク18が矢印C2方向に回動される。このとき、保持部材13の自重M1により、従動ギヤ33が矢印E2に示す方向に回動しようとし、駆動ギヤ31が矢印D2方向に回動しようとする。駆動ギヤ31が矢印D2方向に回動しようとすると、ストッパ32がリンク18の側面に当接する。このため、駆動ギヤ31の矢印D2方向への回動は、ストッパ32により規制される。したがって、リンク18が矢印C2方向に回動すると、駆動ギヤ31は回動が規制されたまま、リンク18が回動した角度だけ、矢印D2方向に回動する。駆動ギヤ31が矢印D2方向に回動すると、従動ギヤ33は、矢印E2方向に回動する。その結果、保持部材13がジョイント25を回動軸として、矢印F2に示す方向に回動し、バケット12の開口側12aを閉じるように動いていく。
【0024】
ここで、図5に示すように、バケット12に、障害物41が入っているとする。保持部材13が閉じていくと、やがて、保持部材13が障害物41に当接する。
【0025】
図5に示すように、保持部材13が障害物41に当たると、保持部材13に対して反力M2が生じる。この反力M2により、従動ギヤ33を矢印E1方向に回動させ、駆動ギヤ31を矢印D1方向に回動させる力が働く。駆動ギヤ31が矢印D1方向に回動された場合には、ストッパ32がリンク18の側面から外れ、ストッパ32により規制が解除される。このため、駆動ギヤ31は、リンク18からフリーになった状態で矢印D1方向に空転する。駆動ギヤ31が空転することで、保持部材13が障害物41に当たったことによる反力M2を逃がすことができ、従動ギヤ33や駆動ギヤ31、リンク機構15を保護することができる。また、バケット12と保持部材13との間の障害物41に対して、大きな力が加わることがなくなり、障害物41を破損させることがなくなる。
【0026】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、バックホー等、油圧ショベルのバケット装置を備える工事用車両に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態の油圧ショベルのバケット装置の一例の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の油圧ショベルのバケット装置におけるストッパの説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の油圧ショベルのバケット装置の動作説明に用いる側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の油圧ショベルのバケット装置の動作説明に用いる側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の油圧ショベルのバケット装置の動作説明に用いる側面図である。
【図6】従来の油圧ショベルのバケット装置の一例の側面図である。
【図7】従来の油圧ショベルのバケット装置の動作説明に用いる側面図である。
【符号の説明】
【0029】
11アーム
12バケット
13保持部材
14バケットシリンダ
15リンク機構
16シリンダ軸
17,18リンク
18リンク
19取付片
21〜25ジョイント
31駆動ギヤ
32ストッパ
33従動ギヤ
34支持片
35取付片
41障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端に回動自在に装着されたバケットと、
前記アームに並設されたバケットシリンダと、
前記バケットシリンダの伸縮運動を前記バケットの揺動運動に変換するリンク機構と、
前記リンク機構のジョイントの回動軸に設けられた駆動ギヤと、
前記駆動ギヤの回動範囲を規制するストッパと、
前記バケットの開口部に対向して回動自在に装着された保持部材と、
前記駆動ギヤと歯合され、前記駆動ギヤの回動を前記保持部材に伝える従動ギヤとからなり、
前記バケットと前記保持部材との間に障害物がないときには、前記バケットシリンダが伸縮すると、前記リンク機構により前記バケットシリンダの伸縮運動が前記バケットの揺動運動となると共に、前記ストッパにより前記駆動ギヤの回動が規制され、前記リンク機構のジョイントの回動が前記駆動ギヤ、前記従動ギヤを介して前記保持部材に伝えられ、前記保持部材が揺動し、
前記バケットと前記保持部材との間に障害物があると、前記ストッパがフリーになり、前記保持部材が前記障害物から受ける反力に対して、前記駆動ギヤが空転して、前記反力を逃がす
ことを特徴とする油圧ショベルのバケット装置。
【請求項2】
前記ストッパは、前記駆動ギヤと連動して動き、前記駆動ギヤが配設されるリンクの側面に当接して、前記駆動ギヤの回動を規制するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベルのバケット装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−19405(P2009−19405A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182396(P2007−182396)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(597028287)埼玉八栄工業株式会社 (8)
【出願人】(591172537)太平洋ソイル株式会社 (14)
【Fターム(参考)】