説明

油圧ショベルの動力伝達装置

【課題】コンパクト化を図ることが可能な油圧ショベルの動力伝達装置を提供する。
【解決手段】油圧アクチュエータ16に作動油を圧送するための油圧ポンプ(第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50)と、電力が供給されることにより前記油圧ポンプを駆動し、またはエンジン9に駆動されることにより発電するモータジェネレータ90と、エンジン9から前記油圧ポンプおよびモータジェネレータ90へと伝達される動力を断接するクラッチ60と、を具備し、エンジン9および/またはモータジェネレータ90により前記油圧ポンプを駆動する油圧ショベル1の動力伝達装置20であって、前記油圧ポンプおよびモータジェネレータ90を並列に配置し、前記油圧ポンプ、モータジェネレータ90、およびクラッチ60を一体的に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびモータジェネレータを油圧ポンプの駆動源として利用可能な油圧ショベルの動力伝達装置における、各構成部材の配置構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンおよびモータジェネレータを油圧ポンプの駆動源として利用し、当該油圧ポンプから圧送された作動油により油圧アクチュエータを駆動する動力伝達装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の動力伝達装置は、油圧アクチュエータに作動油を圧送する油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動するエンジンと、エンジンおよび油圧ポンプの間に介装されるクラッチと、油圧ポンプに連結されるモータジェネレータと、を具備するものである。
このような動力伝達装置において、油圧アクチュエータの負荷に応じてエンジンおよびモータジェネレータの駆動、およびクラッチの断接を制御することにより、エネルギー効率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−99103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような動力伝達装置を油圧ショベルに搭載するにあたっては、搭載スペースの確保が困難であった。
【0006】
詳細に説明すると、住宅地や都市部などの作業スペースが狭い場所での工事で使用される油圧ショベルとしては、作業中に周囲の作業者や建造物等との接触を避けるために、履帯(クローラ)からの旋回台後端部のはみ出し量が小さい油圧ショベル(いわゆる、後方超小旋回型の油圧ショベルなど)を用いるのが主流となっている。
上述のような油圧ショベルにおいては、作業中の車両バランスを安定させるために、エンジンや油圧ポンプなどの重量物を、作業装置(掘削装置等)とは反対側の旋回台後端部近傍に配置させる必要がある。その結果、油圧ポンプの搭載スペース(特に、当該油圧ポンプの駆動軸長手方向のスペース)が制限されることになり、当該搭載スペースの確保が困難となる。
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、コンパクト化を図ることが可能な油圧ショベルの動力伝達装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、油圧アクチュエータに作動油を圧送するための少なくとも2つの油圧ポンプと、電力が供給されることにより前記少なくとも2つの油圧ポンプを駆動し、またはエンジンに駆動されることにより発電するモータジェネレータと、前記エンジンから前記少なくとも2つの油圧ポンプおよび前記モータジェネレータへと伝達される動力を断接するクラッチと、を具備し、前記エンジンおよび/または前記モータジェネレータにより前記少なくとも2つの油圧ポンプを駆動する油圧ショベルの動力伝達装置であって、前記少なくとも2つの油圧ポンプおよび前記モータジェネレータを並列に配置し、前記少なくとも2つの油圧ポンプ、前記モータジェネレータ、および前記クラッチを一体的に構成したものである。
【0010】
請求項2においては、前記少なくとも2つの油圧ポンプ、前記モータジェネレータ、および前記クラッチと、前記エンジンのフライホイールを覆うフライホイールカバーと、を一体的に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、
油圧ショベルの動力伝達装置のコンパクト化を図ることができ、当該動力伝達装置の油圧ショベルへの搭載を容易にすることができる。
【0013】
請求項2においては、
油圧ショベルの動力伝達装置のコンパクト化を図ることができ、当該動力伝達装置の油圧ショベルへの搭載を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る動力伝達装置を具備する油圧ショベルの全体側面図。
【図2】動力伝達装置の全体的な構成を示したブロック図。
【図3】動力伝達ケースの正面断面図。
【図4】動力伝達ケースの側面図。
【図5】エンジンおよび動力伝達ケースの配置を示す油圧ショベルの平面模式図。
【図6】油圧ポンプおよびモータジェネレータの動力伝達構成を示す模式図。(a)はプーリを介して動力を伝達する構成を示す図、(b)はギヤを介して動力を伝達する構成を示す図。
【図7】油圧ポンプおよびモータジェネレータの動力伝達構成を示す模式図。(a)はギヤを介して動力を伝達する構成を示す図、(b)は油圧ポンプとして斜軸式アキシャルピストンポンプを適用した構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明においては、図中の矢印L方向を左方向、矢印U方向を上方向、矢印F方向を前方向と定義する。
【0016】
まず、図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る動力伝達装置20を具備する油圧ショベル1について説明する。
【0017】
油圧ショベル1は、走行装置2、旋回装置3、および作業装置4を具備する。
【0018】
走行装置2は、左右一対のクローラ5・5、左走行モータ5L、および右走行モータ5R等を具備する。
走行装置2は、左走行モータ5Lにより機体左側のクローラ5を、右走行モータ5Rにより機体右側のクローラ5を、それぞれ駆動することで、油圧ショベル1を前後進および旋回させることができる。
【0019】
旋回装置3は油圧ショベル1の車体を成すものであり、旋回台6、旋回モータ7、操縦部8、およびエンジン9等を具備する。
旋回台6は、走行装置2の上方に配置され、走行装置2に旋回可能に支持される。旋回装置3は、旋回モータ7を駆動することで、当該旋回台6を走行装置2に対して旋回させることができる。また、旋回台6上には、種々の操作具を備える操縦部8、動力源となるエンジン9等が配置される。エンジン9の出力軸9aにはフライホイール9bが固設され、当該フライホイール9bに連結される連結軸9cから動力を取り出すことが可能である(図2参照)。
なお、本実施形態に係るエンジン9はディーゼルエンジンであるものとするが、本発明はこれに限るものではなく、ガソリンエンジンであっても良い。
【0020】
作業装置4は、ブーム10、アーム11、バケット12、ブームシリンダ13、アームシリンダ14、およびバケットシリンダ15等を具備する。
ブーム10は、その一端部が旋回台6の前部に枢支され、伸縮自在に駆動するブームシリンダ13によって回動される。より詳細には、ブームシリンダ13が伸ばされた場合、ブーム10は上方に回動され、ブームシリンダ13が縮められた場合、ブーム10は下方に回動される。
アーム11は、その一端部がブーム10の他端部に枢支され、伸縮自在に駆動するアームシリンダ14によって回動される。より詳細には、アームシリンダ14が伸ばされた場合、アーム11は下方(アーム11の他端側がブーム10に近接する方向)に回動され、アームシリンダ14が縮められた場合、アーム11は上方(アーム11の他端側がブーム10から離間する方向)に回動される。
バケット12は、その一端部がアーム11の他端部に支持されて、伸縮自在に駆動するバケットシリンダ15によって回動される。より詳細には、バケットシリンダ15が伸ばされた場合、バケット12は下方(バケット12の他端側がアーム11に近接する方向)に回動され、バケットシリンダ15が縮められた場合、バケット12は上方(バケット12の他端側がアーム11から離間する方向)に回動される。
以上の如く、作業装置4は、バケット12を用いて土砂等の掘削を行う多関節構造を構成している。
【0021】
以下では、ブームシリンダ13、アームシリンダ14、バケットシリンダ15、左走行モータ5L、右走行モータ5R、および旋回モータ7を総称して油圧アクチュエータ16と記す。
【0022】
なお、本実施形態に係る油圧ショベル1に具備する作業装置は、バケット12を有して掘削作業を行う作業装置4としているが、これに限定するものではなく、例えば油圧ブレーカーを有して破砕作業を行う作業装置等であっても良い。
【0023】
以下では、図2を用いて、本発明の実施の一形態にかかる動力伝達装置20について説明する。
【0024】
動力伝達装置20は、駆動源からの動力を伝達し、種々のアクチュエータを駆動させるためのものである。
動力伝達装置20は、第一油圧ポンプ40、第二油圧ポンプ50、クラッチ60、コントロールバルブ70、操作手段80、モータジェネレータ90、バッテリ100、インバータ110、セルモータ120、吸収馬力検出手段130、操作状態検出手段140、充電状態検出手段150、エンジン回転数設定手段160、アイドルストップ選択手段170、エンジンコントローラユニット180、およびメインコントローラ190等を具備する。
【0025】
第一油圧ポンプ40は、本発明に係る油圧ポンプの実施の一形態であり、伝達される動力によって回転駆動され、作動油を吐出するものである。第一油圧ポンプ40は、可動斜板46の傾斜角度を変更することによって作動油の吐出量を変更可能な可変容量型のポンプである。可動斜板46の傾斜角度は、図示しないアクチュエータ、または手動による操作によって変更することができる。第一油圧ポンプ40は、当該第一油圧ポンプ40に設けられる入力軸41から入力される動力により回転駆動する。入力軸41にはギヤ42およびプーリ48が固設される。第一油圧ポンプ40の吐出ポートには、油路49の一端が接続される。
【0026】
第二油圧ポンプ50は、本発明に係る油圧ポンプの実施の一形態であり、伝達される動力によって回転駆動され、作動油を吐出するものである。第二油圧ポンプ50は、可動斜板56の傾斜角度を変更することによって作動油の吐出量を変更可能な可変容量型のポンプである。可動斜板56の傾斜角度は、図示しないアクチュエータ、または手動による操作によって変更することができる。第二油圧ポンプ50は、当該第二油圧ポンプ50に設けられる入力軸51から入力される動力により回転駆動する。入力軸51にはギヤ52が固設される。ギヤ52は、第一油圧ポンプ40の入力軸41に固設されるギヤ42と歯合される。第二油圧ポンプ50の吐出ポートには、油路59の一端が接続される。
【0027】
また、ギヤ52の歯数は、ギヤ42の歯数と同一に設定される。これによって、ギヤ52とギヤ42とが歯合しながら回転する場合、当該ギヤ52およびギヤ42の回転数は同一となる。すなわち、第一油圧ポンプ40と第二油圧ポンプ50とは同一回転数で回転する。
【0028】
クラッチ60は、エンジン9の連結軸9cと第一油圧ポンプ40の入力軸41との間に介設され、連結軸9cと入力軸41との間で伝達される動力を断接するものである。クラッチ60が接続されると、連結軸9cと入力軸41とが連結される。この場合、連結軸9cおよび入力軸41は同一回転数で回転可能となり、ひいてはエンジン9、並びに第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50は同一回転数で回転可能となる。クラッチ60が切断されると、連結軸9cと入力軸41との連結が解除され、エンジン9の連結軸9cが回転しても、当該回転動力は入力軸41に伝達されない。
クラッチ60としては、油圧クラッチや電磁クラッチ等、種々のクラッチを適用することが可能である。
【0029】
コントロールバルブ70は、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50から供給される作動油の方向および流量を適宜切り換えるためのものである。コントロールバルブ70は、方向切換弁、圧力補償弁等を適宜具備する。
コントロールバルブ70には、油路49の他端が接続され、当該油路49を介して第一油圧ポンプ40から吐出される作動油がコントロールバルブ70に供給される。
コントロールバルブ70には、油路59の他端が接続され、当該油路59を介して第二油圧ポンプ50から吐出される作動油がコントロールバルブ70に供給される。
第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50から圧送された作動油は、コントロールバルブ70を介して油圧アクチュエータ16(ブームシリンダ13、アームシリンダ14等)に適宜供給される。当該供給される作動油によって、油圧アクチュエータ16が駆動される。
【0030】
なお、本発明に係る油圧アクチュエータは上記の油圧アクチュエータ16(ブームシリンダ13、アームシリンダ14等)に限るものではなく、作動油によって駆動される油圧アクチュエータであればよい。
【0031】
操作手段80は、コントロールバルブ70を介して油圧アクチュエータ16に供給される作動油の方向および流量を切り換えるためのものである。操作手段80がオペレータによって操作されると、当該操作信号(電気信号)がコントロールバルブ70に送信される。当該信号に基づいて、コントロールバルブ70に具備される種々の弁(方向切換弁等)が切り換えられる。これによって、オペレータの所望の油圧アクチュエータ16に、所望の量の作動油を供給することができる。
【0032】
なお、本実施形態に係る操作手段80は、電気信号によりコントロールバルブ70を動作させるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、オペレータの操作に基づいてコントロールバルブ70にパイロット圧を付与し、当該パイロット圧によりコントロールバルブ70を動作させる油圧式の操作手段であっても良い。
上記の如く操作手段80として油圧式の操作手段を用いる場合においては、後述するアイドルストップ制御によりエンジン9が停止された際においても当該油圧式の操作手段に作動油を供給できるように、当該油圧式の操作手段に作動油を供給するための油圧ポンプ、および当該油圧ポンプを駆動するための電動機を別途設けるものとする。
【0033】
モータジェネレータ90は、電力が供給された場合は電動機として回転駆動して動力を発生し、動力が供給された場合は発電機として電力を発生するものである。モータジェネレータ90は入出力軸91を備え、当該入出力軸91にはプーリ92が固設される。プーリ92およびプーリ48にはベルト93が巻回され、当該プーリ92およびプーリ48間の動力の伝達が可能とされる。
モータジェネレータ90は、電力が供給された場合、入出力軸91を回転駆動させることができる。
モータジェネレータ90は、動力が伝達されて入出力軸91が回転駆動された場合、電力を発生させることができる。
【0034】
バッテリ100は、モータジェネレータ90、およびその他の電気機器に供給する電力を蓄え、放電することが可能な二次電池である。
【0035】
インバータ110は、バッテリ100からの電力をモータジェネレータ90に供給し、またはモータジェネレータ90からの電力をバッテリ100に供給することを可能にするものである。
インバータ110は、直流を交流に変換する回路(インバータ回路)と交流を直流に変換する回路(コンバータ回路)とを備え、当該インバータ回路とコンバータ回路のうちいずれか一方を選択する、またはいずれも選択しないことが可能である。
【0036】
インバータ回路が選択された場合、インバータ110は、バッテリ100から供給される直流の電力を交流に変換し、モータジェネレータ90に供給する。このように、インバータ110によってバッテリ100からの電力をモータジェネレータ90に供給可能とすることで、当該モータジェネレータ90は入出力軸91を回転駆動させる。すなわち、この場合、モータジェネレータ90を電動機として使用することができる。この場合、モータジェネレータ90からバッテリ100への電力の供給は遮断される。以下、このモータジェネレータ90が入出力軸91を回転駆動させる状態を「駆動状態」と記す。
【0037】
コンバータ回路が選択された場合、インバータ110は、モータジェネレータ90から供給される交流の電力を直流に変換し、当該電力をバッテリ100に蓄える。このように、インバータ110によってモータジェネレータ90からの電力をバッテリ100に供給可能とすることで、当該モータジェネレータ90はエンジン9からの動力により電力を発生させ、当該電力をバッテリ100に蓄える(充電する)ことができる。すなわち、この場合、モータジェネレータ90を発電機として使用することができる。この場合、バッテリ100からモータジェネレータ90への電力の供給は遮断される。以下、このモータジェネレータ90がバッテリ100を充電させる状態を「発電状態」と記す。
【0038】
インバータ回路およびコンバータ回路のいずれも選択されない場合、インバータ110は、モータジェネレータ90への電力の供給も、バッテリ100への電力の供給も行わない。このように、モータジェネレータ90への電力の供給を行わないため、モータジェネレータ90は入出力軸91を回転駆動させない。また、モータジェネレータ90の入出力軸91が回転駆動されても、バッテリ100への電力の供給を行わないため、バッテリ100の充電も行われず、この際のモータジェネレータ90の入出力軸91の回転抵抗は、発電状態の入出力軸91の回転抵抗よりも小さくなる。以下、このモータジェネレータ90が入出力軸91の回転駆動もバッテリ100の充電も行わない状態を「中立状態」と記す。
【0039】
セルモータ120は、エンジン9を始動させるための電動機である。セルモータ120は、バッテリ100から供給される電力により駆動される。
【0040】
吸収馬力検出手段130は、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50による吸収馬力Lpを検出するためのものである。ここで、吸収馬力Lpとは、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50が駆動するために必要な馬力をいう。吸収馬力検出手段130は、第一圧力検出手段131、第二圧力検出手段132、第一容積検出手段133、第二容積検出手段134、およびポンプ回転数検出手段135を具備する。
【0041】
第一圧力検出手段131は、第一油圧ポンプ40の吐出圧P1を検出するセンサである。第一圧力検出手段131は油路49の中途部に接続され、当該油路49内の圧力を検出することにより、ひいては第一油圧ポンプ40の吐出圧P1を検出することができる。
【0042】
第二圧力検出手段132は、第二油圧ポンプ50の吐出圧P2を検出するセンサである。第二圧力検出手段132は油路59の中途部に接続され、当該油路59内の圧力を検出することで、ひいては第二油圧ポンプ50の吐出圧P2を検出することができる。
【0043】
第一容積検出手段133は、第一油圧ポンプ40の押しのけ容積q1を検出するためのものである。第一容積検出手段133は、第一油圧ポンプ40の可動斜板46の傾斜角度を検出するセンサである。当該可動斜板46の傾斜角度に基づいて、後述するメインコントローラ190により第一油圧ポンプ40の押しのけ容積q1が算出される。
【0044】
第二容積検出手段134は、第二油圧ポンプ50の押しのけ容積q2を検出するためのものである。第二容積検出手段134は、第二油圧ポンプ50の可動斜板56の傾斜角度を検出するセンサである。当該可動斜板56の傾斜角度に基づいて、後述するメインコントローラ190により第二油圧ポンプ50の押しのけ容積q2が算出される。
【0045】
ポンプ回転数検出手段135は、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50の回転数Npを検出するセンサである。ポンプ回転数検出手段135は第二油圧ポンプ50の入力軸51に固設されるギヤ52の回転数を検出することで、ひいては第二油圧ポンプ50の回転数Npを検出することができる。また、第二油圧ポンプ50および第一油圧ポンプ40の回転数Npは同一であるため、ポンプ回転数検出手段135は、第二油圧ポンプ50の回転数Npを検出することで、同時に第一油圧ポンプ40の回転数Npも検出することになる。
【0046】
操作状態検出手段140は、操作手段80が操作されているか否かを検出するセンサである。操作状態検出手段140はポテンショメータ等で構成され、オペレータにより操作手段80が操作されたことを検出することができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る操作状態検出手段140は、ポテンショメータ等により操作手段80が操作されたことを直接検出するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、操作手段80が油圧式である場合、コントロールバルブ70を動作させるパイロット圧を圧力スイッチ等で検出することにより、操作手段80が操作されていることを検出する構成であっても良い。
上記の如く操作手段80が油圧式である場合においては、後述するアイドルストップ制御によりエンジン9が停止された際においても当該油圧式の操作手段に作動油を供給できるように、当該油圧式の操作手段に作動油を供給するための油圧ポンプ、および当該油圧ポンプを駆動するための電動機を別途設けるものとする。
【0048】
充電状態検出手段150は、バッテリ100の充電量(残量)Cを検出するものである。充電状態検出手段150は、バッテリ100の充電量(残量)Cを示す情報(例えば電圧、バッテリ液の比重等)を検出することができる。
【0049】
エンジン回転数設定手段160は、エンジン9の回転数を設定するものである。エンジン回転数設定手段160は、ダイヤルスイッチにより構成され、オペレータによって操作可能とされる。エンジン回転数設定手段160の操作量は、当該エンジン回転数設定手段160に設けられるセンサ(不図示)により検出することができる。
なお、エンジン回転数設定手段160はダイヤルスイッチに限るものではなく、レバー、ペダル等であっても良い。
【0050】
アイドルストップ選択手段170は、後述するアイドルストップ制御を行うか否かを選択するためのものである。アイドルストップ選択手段170は、ダイヤルスイッチにより構成され、オペレータによって操作可能とされる。アイドルストップ選択手段170は、アイドルストップ制御を行わない「OFF」ポジション、アイドルストップ制御を行う「ON」ポジション、またはエンジン9を停止させ、モータジェネレータ90のみを駆動させる「モータ駆動」ポジションに切り換えることができる。アイドルストップ選択手段170のポジションは、当該アイドルストップ選択手段170に設けられるセンサ(不図示)により検出することができる。
【0051】
エンジンコントローラユニット(以下、単に「ECU」と記す)180は、種々の信号およびプログラムに基づいて、エンジン9の動作を制御するためのものである。ECU180は、具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0052】
ECU180は、エンジン9の回転数Neを検出するエンジン回転数検出手段(不図示)と接続され、当該エンジン回転数検出手段によるエンジン9の回転数Neの検出信号を取得することが可能である。
【0053】
ECU180は、セルモータ120と接続され、当該セルモータ120に制御信号を送信し、当該セルモータ120によりエンジン9のクランク軸を回転させることで当該エンジン9を始動させることが可能である。
ECU180は、エンジン9の燃料噴射量を調節するための調速装置(不図示)と接続され、当該調速装置に制御信号を送信し、エンジン9の燃料噴射量を調節することで回転数Neやトルク特性を変更したり、エンジン9の燃料供給を停止することで当該エンジン9を停止したりすることが可能である。
【0054】
メインコントローラ190は、種々の信号およびプログラムに基づいて、クラッチ60、インバータ110、およびECU180に制御信号を送信するものである。メインコントローラ190は、具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0055】
メインコントローラ190は、第一圧力検出手段131に接続され、第一圧力検出手段131による第一油圧ポンプ40の吐出圧P1の検出信号を取得することが可能である。
メインコントローラ190は、第二圧力検出手段132に接続され、第二圧力検出手段132による第二油圧ポンプ50の吐出圧P2の検出信号を取得することが可能である。
メインコントローラ190は、第一容積検出手段133に接続され、第一容積検出手段133による第一油圧ポンプ40の可動斜板46の傾斜角度の検出信号を取得することが可能である。メインコントローラ190には、可動斜板46の傾斜角度と第一油圧ポンプ40の押しのけ容積q1との関係を示すマップが記憶されている。当該メインコントローラ190は、当該可動斜板46の傾斜角度の検出信号に基づいて、第一油圧ポンプ40の押しのけ容積q1を算出する。
メインコントローラ190は、第二容積検出手段134に接続され、第二容積検出手段134による第二油圧ポンプ50の可動斜板56の傾斜角度の検出信号を取得することが可能である。メインコントローラ190には、可動斜板56の傾斜角度と第二油圧ポンプ50の押しのけ容積q2との関係を示すマップが記憶されている。当該メインコントローラ190は、当該可動斜板56の傾斜角度の検出信号に基づいて、第二油圧ポンプ50の押しのけ容積q2を算出する。
メインコントローラ190は、ポンプ回転数検出手段135に接続され、ポンプ回転数検出手段135による第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50の回転数Npの検出信号を取得することが可能である。
【0056】
メインコントローラ190は、吐出圧P1、吐出圧P2、押しのけ容積q1、押しのけ容積q2、および回転数Npに基づいて、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50による吸収馬力Lpを算出する。吸収馬力Lpは、Lp=K×((P1×q1×Np)+(P2×q2×Np))の式(Kは定数)を用いて算出される。
【0057】
メインコントローラ190は、操作状態検出手段140に接続され、操作状態検出手段140による操作手段80が操作された旨の検出信号を取得することが可能である。
メインコントローラ190は、充電状態検出手段150に接続され、充電状態検出手段150によるバッテリ100の充電量(残量)Cの検出信号を取得することが可能である。
【0058】
メインコントローラ190は、ECU180と接続され、当該ECU180(より詳細には、ECU180に接続されるエンジン回転数検出手段)によるエンジン9の回転数Neの検出信号を取得することが可能である。また、メインコントローラ190は、ECU180に、エンジン9を始動または停止させる旨、およびエンジン9の目標回転数を指示する旨の制御信号を送信することが可能である。
【0059】
メインコントローラ190は、エンジン回転数設定手段160に設けられるセンサに接続され、当該センサによるエンジン回転数設定手段160の操作量の検出信号を取得することが可能である。
メインコントローラ190は、アイドルストップ選択手段170に設けられるセンサに接続され、当該センサによるアイドルストップ選択手段170のポジションの検出信号を取得することが可能である。
【0060】
メインコントローラ190は、クラッチ60に接続され、当該クラッチ60に、当該クラッチ60を断接する旨の制御信号を送信することが可能である。
メインコントローラ190は、インバータ110に接続され、当該インバータ110に、インバータ回路またはコンバータ回路のうちいずれか一方を選択する旨、またはいずれも選択しない旨の制御信号を送信することが可能である。
【0061】
以下では、上述の如く構成された動力伝達装置20の基本的な動作態様について説明する。
【0062】
図示せぬキースイッチ等が操作され、メインコントローラ190にエンジン9を始動する旨の信号が送信されると、メインコントローラ190は、ECU180にエンジン9を始動させる旨の制御信号を送信する。当該制御信号を受信したECU180は、セルモータ120に制御信号を送信し、エンジン9を始動させる。
【0063】
また、図示せぬキースイッチ等が操作され、メインコントローラ190にエンジン9を停止する旨の信号が送信されると、メインコントローラ190は、ECU180にエンジン9を停止させる旨の制御信号を送信する。当該制御信号を受信したECU180は、前記調速装置に制御信号を送信し、エンジン9を停止させる。
【0064】
エンジン9が始動した場合、メインコントローラ190は、エンジン回転数設定手段160の操作量に基づいて、エンジン9の目標回転数を決定する。メインコントローラ190は、当該エンジン9の目標回転数を制御信号としてECU180に送信する。当該制御信号を受信したECU180は、前記調速装置に制御信号を送信し、エンジン9の回転数Neが目標回転数になるように、当該エンジン9の回転数Neを調節する。
【0065】
エンジン9が始動(駆動)し、クラッチ60が接続された場合、当該エンジン9の動力は、連結軸9c、クラッチ60、および入力軸41を介して第一油圧ポンプ40に伝達される。また、エンジン9からの動力は、ギヤ42、ギヤ52および入力軸51を介して第二油圧ポンプ50にも伝達される。これによって、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50が同一の回転数Npで回転する。
【0066】
第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50が駆動(回転)されると、当該第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50から作動油が吐出される。当該作動油は、油路49および油路59を介してコントロールバルブ70に供給される。コントロールバルブ70は操作手段80からの操作信号に基づいて、オペレータの所望の油圧アクチュエータ16に作動油を供給する。
【0067】
一方、メインコントローラ190によってインバータ回路を選択する旨の制御信号がインバータ110に送信された場合、モータジェネレータ90は駆動状態に切り換えられる。この場合、モータジェネレータ90はバッテリ100の電力により入出力軸91を回転駆動させ、動力を発生させる。当該動力は、入出力軸91、プーリ92、ベルト93、プーリ48、および入力軸41を介して第一油圧ポンプ40に伝達されるとともに、ギヤ42、ギヤ52、および入力軸51を介して第二油圧ポンプ50に伝達される。すなわちこの場合、エンジン9からの動力に加えてモータジェネレータ90からの動力により、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50を駆動させることができる。
【0068】
また、メインコントローラ190によってコンバータ回路を選択する旨の制御信号がインバータ110に送信された場合、モータジェネレータ90は発電状態に切り換えられる。この場合、モータジェネレータ90は、ベルト93、プーリ92、および入出力軸91を介して伝達されるエンジン9からの動力により回転駆動され、電力を発生させる。当該電力は、インバータ110を介してバッテリ100に蓄えられる。すなわちこの場合、エンジン9からの動力により、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50が駆動されるとともに、モータジェネレータ90が回転駆動されてバッテリ100に電力が蓄えられる。
【0069】
また、メインコントローラ190によってインバータ回路およびコンバータ回路のいずれも選択しない旨の制御信号がインバータ110に送信された場合、モータジェネレータ90は中立状態に切り換えられる。この場合、モータジェネレータ90は、ベルト93、プーリ92、および入出力軸91を介して伝達されるエンジン9からの動力により回転駆動されるものの、バッテリ100の充電は行わない。このため、モータジェネレータ90の入出力軸91の回転抵抗は、発電状態に比べて小さい。
【0070】
上述の如く構成された動力伝達装置20において、例えば以下のような制御が可能である。
【0071】
吸収馬力Lpが予め設定される値よりも大きい場合、メインコントローラ190はモータジェネレータ90を駆動状態に切り換える。これによって、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50は、エンジン9に加えてモータジェネレータ90により駆動されることになる。すなわち、モータジェネレータ90によって第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50の駆動を補助することができる。
【0072】
吸収馬力Lpが予め設定される値よりも大きい場合であっても、バッテリ100の充電量Cが予め設定される値よりも小さい場合、メインコントローラ190はモータジェネレータ90を中立状態に切り換える。これによって、バッテリ100の過放電を防止することができる。
【0073】
一方、吸収馬力Lpが予め設定される値よりも小さく、かつバッテリ100の充電量Cが予め設定される値よりも小さい場合、メインコントローラ190はモータジェネレータ90を発電状態に切り換える。これによって、エンジン9の出力の余裕分を用いてバッテリ100を充電することができる。
【0074】
また、上述の如く構成された動力伝達装置20において、例えば以下のような制御(いわゆるアイドルストップ制御)が可能である。
【0075】
操作手段80が一定時間の間継続して操作されていない場合、メインコントローラ190は、エンジン9を停止し、クラッチ60を切断し、モータジェネレータ90を中立状態に切り換える。これによって、無駄な燃料および電力の消費を抑制することができる。
【0076】
この後操作手段80が操作された場合、メインコントローラ190はモータジェネレータ90を駆動状態に切り換える。これによって、一般に低速トルクの高いモータジェネレータ90(電動機)によって速やかに第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50を駆動することができる。
【0077】
さらに、この後吸収馬力Lpが予め設定される値よりも大きくなった場合、メインコントローラ190はエンジン9を始動し、クラッチ60を接続し、モータジェネレータ90を中立状態に切り換える。これによって、吸収馬力Lpが大きい場合にはエンジン9により第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50を駆動することができる。
【0078】
以下では、図3および図4を用いて、第一油圧ポンプ40、第二油圧ポンプ50、クラッチ60、およびモータジェネレータ90の構成について詳細に説明する。
【0079】
第一油圧ポンプ40、第二油圧ポンプ50、クラッチ60、およびモータジェネレータ90は、動力伝達ケース30に支持される。
動力伝達ケース30は、フライホイールカバー31、連結プレート32、およびポンプケース33等を具備する。
【0080】
フライホイールカバー31は、エンジン9のフライホイール9bを右方から覆う部材である。フライホイールカバー31は、正面断面視で略円錐台形状のカバー部31a、およびカバー部31aの右端上部に一体的に形成される略直方体状の本体部31bを具備する。カバー部31aの内部は左方に向かって開放するように形成され、本体部31bの内部は右方に向かって開放するように形成される。フライホイールカバー31の左右略中央部(より詳細には、カバー部31aの上下左右方向略中央部)には、カバー部31aの内部と本体部31bの内部とを連通する貫通孔31cが形成される。
【0081】
連結プレート32は、略矩形板状の部材である。連結プレート32は、板面を左右方向に向けて配置される。連結プレート32には、その板面を左右方向に貫通する上下一対の貫通孔32aおよび貫通孔32bが形成される。連結プレート32は、フライホイールカバー31の本体部31bの右端に固設される。
【0082】
ポンプケース33は、略直方体状の部材である。ポンプケース33の内部は左方に向かって開放するように形成される。ポンプケース33の右側面下部には、当該ポンプケース33の内部と外部とを連通する貫通孔33aが形成される。ポンプケース33は、連結プレート32の右端に固設される。
【0083】
クラッチ60は、フライホイールカバー31のカバー部31a内(詳細には、カバー部31a内の右側面であって貫通孔31cの周辺)に配置される。
【0084】
第一油圧ポンプ40は、入力軸41、ギヤ42、シリンダブロック43、ピストン44、シュー45、可動斜板46、およびバルブプレート47等を具備する。
【0085】
入力軸41は、軸線方向を左右方向に向けて配置され、フライホイールカバー31の貫通孔31c、連結プレート32の貫通孔32b、およびポンプケース33の貫通孔33aに挿通される。この際、貫通孔31c、貫通孔32b、および貫通孔33aと入力軸41との間には、オイルシール31d、オイルシール32d、およびオイルシール33bがそれぞれ設けられる。入力軸41は、軸受41aを介してポンプケース33に回動可能に支持される。入力軸41の一端(左端)はクラッチ60に連結される。入力軸41の他端(右端)はポンプケース33の右方に突出され、当該突出した部分にプーリ48が固設される。
【0086】
ギヤ42は、フライホイールカバー31の本体部31bの内部において、入力軸41にスプライン嵌合され、当該入力軸41に相対回転不能に支持される。ギヤ42は、軸受42aおよび軸受42bを介してフライホイールカバー31の本体部31bに回動可能に支持される。
【0087】
シリンダブロック43は、略円柱状の部材であり、軸線方向を左右方向に向けて配置される。シリンダブロック43は、ポンプケース33の内部において、入力軸41にスプライン嵌合され、当該入力軸41に相対回転不能に支持される。シリンダブロック43の軸線を中心とした同一円周上には、複数のシリンダ43a・43a・・・が形成される。
【0088】
ピストン44は、シリンダ43a内を摺動することにより、作動油の吸入および吐出を行うものである。ピストン44は複数設けられ、当該複数のピストン44・44・・・の右端側は、シリンダ43a・43a・・・にそれぞれ摺動可能に挿通される。
【0089】
シュー45は、ピストン44の摺動位置を可動斜板46側に拘束するものである。シュー45は複数設けられ、当該複数のシュー45・45・・・は、ピストン44・44・・・の左端にそれぞれ連結される。シュー45・45・・・は、図示しないプレート等によって可動斜板46から離間しないように、かつ可動斜板46上を摺動可能となるように保持される。
【0090】
可動斜板46は、ピストン44・44・・・の摺動量を変更するものである。可動斜板46はシリンダブロック43の左方において、入力軸41に外嵌される。可動斜板46の傾斜角度を変更することによって、シリンダ43a・43a・・・に対するピストン44・44・・・の摺動量を任意に変更することができる。
【0091】
バルブプレート47は、ピストン44・44・・・により吸入および吐出される作動油を案内するものである。バルブプレート47は略円盤状の部材であり、シリンダブロック43の右端と当接した状態で、入力軸41に外嵌される。バルブプレート47には、作動油を適宜案内するための油路が形成される。
【0092】
上述の如く構成された第一油圧ポンプ40において、入力軸41が回転すると、当該入力軸41とともにシリンダブロック43が回転する。シリンダブロック43が回転すると、当該シリンダブロック43のシリンダ43a・43a・・・に挿通されたピストン44・44・・・が、シュー45・45・・・を介して可動斜板46上を摺動しながら入力軸41の周りを回転する。
【0093】
この状態で可動斜板46が傾斜すると、ピストン44・44・・・がシリンダ43a・43a・・・内を摺動する。ピストン44・44・・・の摺動運動によって、作動油はバルブプレート47を介してシリンダ43a・43a・・・に吸入され、またはシリンダ43a・43a・・・からバルブプレート47を介して吐出される。
【0094】
第二油圧ポンプ50は、入力軸51、ギヤ52、シリンダブロック53、ピストン54、シュー55、可動斜板56、およびバルブプレート57等を具備する。
なお、第二油圧ポンプ50は概ね第一油圧ポンプ40と同様の構成であるため、以下では第二油圧ポンプ50の構成のうち、第一油圧ポンプ40と異なる部分について説明する。
【0095】
入力軸51は、軸線方向を左右方向に向けて、第一油圧ポンプ40の入力軸41の直上に配置され、連結プレート32の貫通孔32aに挿通される。この際、貫通孔32aと入力軸51との間には、オイルシール32cが設けられる。入力軸51は、軸受51aを介してポンプケース33に回動可能に支持される。
【0096】
ギヤ52は、フライホイールカバー31の本体部31bの内部において、入力軸51にスプライン嵌合され、当該入力軸51に相対回転不能に支持される。ギヤ52は、軸受52aおよび軸受52bを介してフライホイールカバー31の本体部31bに回動可能に支持される。ギヤ52は、第一油圧ポンプ40のギヤ42と歯合される。
【0097】
第二油圧ポンプ50は、第一油圧ポンプ40と並列に配置される。すなわち、第二油圧ポンプ50の入力軸51は第一油圧ポンプ40の入力軸41と平行に配置され、第二油圧ポンプ50の少なくとも一部は左右方向において第一油圧ポンプ40と重複するように配置される。
本実施形態においては、第二油圧ポンプ50の各部材は第一油圧ポンプ40の各部材と左右方向において同一位置となるように配置されている。詳細には、ギヤ52はギヤ42と、シリンダブロック53はシリンダブロック43と、可動斜板56は可動斜板46と、バルブプレート57はバルブプレート47と、それぞれ左右方向において同一位置となるように配置されている。
【0098】
上述の如く構成された第二油圧ポンプ50において、入力軸41の回転がギヤ42およびギヤ52を介して入力軸51に伝達されると、当該入力軸51とともにシリンダブロック53が回転する。シリンダブロック53が回転すると、当該シリンダブロック53のシリンダ53a・53a・・・に挿通されたピストン54・54・・・が、シュー55・55・・・を介して可動斜板56上を摺動しながら入力軸51の周りを回転する。
【0099】
この状態で可動斜板56が傾斜すると、ピストン54・54・・・がシリンダ53a・53a・・・内を摺動する。ピストン54・54・・・の摺動運動によって、作動油はバルブプレート57を介してシリンダ53a・53a・・・に吸入され、またはシリンダ53a・53a・・・からバルブプレート57を介して吐出される。
【0100】
モータジェネレータ90は、入出力軸91の軸線方向を左右方向に向けて、かつ入出力軸91が右方を向くように配置される。モータジェネレータ90は、入出力軸91が第一油圧ポンプ40の入力軸41の直下に位置するように、ポンプケース33の下部に固定される。これによって、モータジェネレータ90は、ポンプケース33、連結プレート32、およびフライホイールカバー31(詳細には、本体部31b)の下方であって、フライホイールカバー31(詳細には、カバー部31a)の下部の右方の空間に配置される。モータジェネレータ90の入出力軸91は、ポンプケース33の右側面よりも右方に突出するように延設され、当該突出した部分にプーリ92が固設される。プーリ92とプーリ48との間には、ベルト93が巻回される。
【0101】
モータジェネレータ90は、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50と並列に配置される。すなわち、モータジェネレータ90の入出力軸91は第一油圧ポンプ40の入力軸41および第二油圧ポンプ50の入力軸51と平行に配置され、モータジェネレータ90の少なくとも一部は左右方向において第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50と重複するように配置される。
本実施形態においては、モータジェネレータ90は第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50と左右方向において略同一位置となるように配置されている。詳細には、モータジェネレータ90の左端はギヤ42およびギヤ52と、モータジェネレータ90の右端はバルブプレート47およびバルブプレート57と、それぞれ左右方向において略同一位置となるように配置されている。
【0102】
上述の如く、第一油圧ポンプ40、第二油圧ポンプ50、クラッチ60、およびモータジェネレータ90は、動力伝達ケース30に支持されることにより、一体的に構成される。
【0103】
以下では、図3から図5までを用いて、上述の如く構成された動力伝達装置20を油圧ショベル1に搭載する際の配置について説明する。
【0104】
図5に示すように、油圧ショベル1においては、作業中の車両バランスを安定させるために、エンジン9、第一油圧ポンプ40、および第二油圧ポンプ50等の重量物を、旋回台6における作業装置4とは反対側(旋回台6の後端部近傍)に配置させるのが通常である。
【0105】
この場合、後方超小旋回型の油圧ショベルなどでは、旋回台6は平面視略円形状に構成されていることが通常であるため、エンジン9と第一油圧ポンプ40等の搭載スペースが制限されることになる。より具体的には、第一油圧ポンプ40の入力軸41の軸線方向(図5における左右方向)のスペースが制限される。
【0106】
本実施形態においては、図3および図4に示すように、第一油圧ポンプ40、第二油圧ポンプ50、およびモータジェネレータ90を上下方向に並列に配置し、かつ第一油圧ポンプ40、第二油圧ポンプ50、クラッチ60、およびモータジェネレータ90は一体的に構成される。そして、第二油圧ポンプ50は第一油圧ポンプ40の上方に、モータジェネレータ90は第一油圧ポンプ40の下方に、それぞれ配置して、左右のバランスをとるとともに、フライホイールカバー31、連結プレート32、およびポンプケース33で構成する動力伝達ケース30の右部下方空間において、モータジェネレータ90をポンプケース33の下面に一体的に固設している。これによって、モータジェネレータ90は、平面視において動力伝達ケース30の投影面積内に入り、側面視においてカバー部31aの投影面積内に略入るようになる。こうして、第一油圧ポンプ40、第二油圧ポンプ50、クラッチ60、およびモータジェネレータ90のコンパクト化を図り、ひいては動力伝達装置20のコンパクト化を図ることができる。
したがって、上述の如くエンジン9や第一油圧ポンプ40等の搭載スペースが制限される油圧ショベル1においても、本実施形態に係る動力伝達装置20を容易に搭載することができる。
【0107】
以上の如く、本実施形態に係る油圧ショベル1の動力伝達装置20は、油圧アクチュエータ16に作動油を圧送するための油圧ポンプ(第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50)と、電力が供給されることにより前記油圧ポンプを駆動し、またはエンジン9に駆動されることにより発電するモータジェネレータ90と、エンジン9から前記油圧ポンプおよびモータジェネレータ90へと伝達される動力を断接するクラッチ60と、を具備し、エンジン9および/またはモータジェネレータ90により前記油圧ポンプを駆動する油圧ショベル1の動力伝達装置20であって、前記油圧ポンプおよびモータジェネレータ90を並列に配置し、前記油圧ポンプ、モータジェネレータ90、およびクラッチ60を一体的に構成したものである。
このように構成することにより、油圧ショベル1の動力伝達装置20のコンパクト化を図ることができ、当該動力伝達装置20の油圧ショベル1への搭載を容易にすることができる。
また、前記油圧ポンプ、モータジェネレータ90、およびクラッチ60を一体的に構成することにより、動力伝達装置20の油圧ショベル1への組み立て工数の削減を図ることができる。
【0108】
また、本実施形態に係る動力伝達装置20は、前記油圧ポンプ、モータジェネレータ90、およびクラッチ60と、エンジン9のフライホイール9bを覆うフライホイールカバー31と、を一体的に構成したものである。
このように構成することにより、油圧ショベル1の動力伝達装置20のコンパクト化を図ることができ、当該動力伝達装置20の油圧ショベル1への搭載を容易にすることができる。
また、前記油圧ポンプ、モータジェネレータ90、クラッチ60、およびフライホイールカバー31を一体的に構成することにより、動力伝達装置20の油圧ショベル1への組み立て工数の削減を図ることができる。
【0109】
また、本実施形態に係る動力伝達装置20は、
前記油圧ポンプおよびモータジェネレータ90を上下方向に一列に配置したものである。
このように構成することにより、
油圧ショベル1の動力伝達装置20のコンパクト化を図ることができ、当該動力伝達装置20の油圧ショベル1への搭載を容易にすることができる。
【0110】
なお、本実施形態においては、図6(a)に示すように、入力軸41と入出力軸91との間の動力の伝達は、プーリ48、ベルト93、およびプーリ92を介してなされるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。
すなわち、図6(b)に示すように、ギヤ48aおよびギヤ92aを介して動力を伝達する構成とすることも可能である。
また、図7(a)に示すように、入出力軸91に固設されたギヤ92bを、ギヤ42に歯合させて、入力軸41と入出力軸91との間の動力の伝達を行うことも可能である。
【0111】
さらに、本実施形態に係る第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50は、図6(a)、(b)および図7(a)に示すように、入力軸41および入力軸51の軸線とシリンダブロック43およびシリンダブロック53の軸線とがそれぞれ同一直線上にある、いわゆる斜板式アキシャルピストンポンプであるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。
すなわち、図7(b)に示すように、第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50は、入力軸41および入力軸51の軸線に対してシリンダブロック43およびシリンダブロック53の軸線がそれぞれ所定の角度だけ傾いている、いわゆる斜軸式アキシャルピストンポンプであってもよい。
【0112】
また、本実施形態に係る動力伝達装置20は、油圧ポンプとして2つの油圧ポンプ(第一油圧ポンプ40および第二油圧ポンプ50)を具備するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、3つ以上の油圧ポンプを具備する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 油圧ショベル
4 作業装置
5 クローラ
5L 左走行モータ(油圧アクチュエータ)
5R 右走行モータ(油圧アクチュエータ)
6 旋回台
7 旋回モータ(油圧アクチュエータ)
9 エンジン
9b フライホイール
13 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
14 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
15 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
16 油圧アクチュエータ
20 動力伝達装置
30 動力伝達ケース
31 フライホイールカバー
40 第一油圧ポンプ(油圧ポンプ)
50 第二油圧ポンプ(油圧ポンプ)
60 クラッチ
90 モータジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータに作動油を圧送するための少なくとも2つの油圧ポンプと、
電力が供給されることにより前記少なくとも2つの油圧ポンプを駆動し、またはエンジンに駆動されることにより発電するモータジェネレータと、
前記エンジンから前記少なくとも2つの油圧ポンプおよび前記モータジェネレータへと伝達される動力を断接するクラッチと、
を具備し、
前記エンジンおよび/または前記モータジェネレータにより前記少なくとも2つの油圧ポンプを駆動する油圧ショベルの動力伝達装置であって、
前記少なくとも2つの油圧ポンプおよび前記モータジェネレータを並列に配置し、
前記少なくとも2つの油圧ポンプ、前記モータジェネレータ、および前記クラッチを一体的に構成した、
油圧ショベルの動力伝達装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの油圧ポンプ、前記モータジェネレータ、および前記クラッチと、前記エンジンのフライホイールを覆うフライホイールカバーと、を一体的に構成した、
請求項1に記載の油圧ショベルの動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−117349(P2012−117349A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270623(P2010−270623)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】