油圧ショベルの較正システム及び油圧ショベルの較正方法
【課題】本発明の課題は、作業点の位置検出の精度を向上させると共に、較正作業時間を短縮することができる油圧ショベルの較正システム及び較正方法を提供することにある。
【解決手段】油圧ショベルの較正システムは、形状検出部54と、座標検出部65aと、較正演算部65c,65dとを備える。形状検出部54は、車体に取り付けられている。形状検出部54は、作業具の形状を検出する。座標検出部65aは、形状検出部54が検出した作業具の形状から作業点の位置を認識して作業点の位置座標を検出する。較正演算部65c,65dは、作業点位置情報に基づいて、パラメータの較正値を演算する。作業点位置情報は、座標検出部65aによって検出された複数の位置での作業点の位置座標を示す。
【解決手段】油圧ショベルの較正システムは、形状検出部54と、座標検出部65aと、較正演算部65c,65dとを備える。形状検出部54は、車体に取り付けられている。形状検出部54は、作業具の形状を検出する。座標検出部65aは、形状検出部54が検出した作業具の形状から作業点の位置を認識して作業点の位置座標を検出する。較正演算部65c,65dは、作業点位置情報に基づいて、パラメータの較正値を演算する。作業点位置情報は、座標検出部65aによって検出された複数の位置での作業点の位置座標を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルの較正システム及び油圧ショベルの較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機の作業点の現在位置を検出する位置検出装置を備える油圧ショベルが知られている。例えば、特許文献1に開示されている油圧ショベルでは、GPSアンテナからの位置情報に基づいて、バケットの刃先の位置座標が演算される。具体的には、GPSアンテナとブームピンとの位置関係、ブームとアームとバケットとのそれぞれの長さ、ブームとアームとバケットとのそれぞれの方向角などのパラメータに基づいて、バケットの刃先の位置座標が演算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
演算されたバケットの刃先の位置座標の精度は、上述したパラメータの精度の影響を受ける。しかし、これらのパラメータは、設計値に対して誤差を有することが通常である。このため、油圧ショベルの位置検出装置の初期設定時には、パラメータをメジャーテープなどの計測手段によって計測することが行われる。しかし、上記のようにパラメータをメジャーテープなどの計測手段によって精度よく計測することは容易ではない。また、パラメータの数が多い場合には、それらのパラメータを全て測定するために多くの時間が必要であり、煩雑である。
【0005】
また、測定されたパラメータを位置検出装置に入力した後に、位置検出装置による位置検出の精度の確認が行われる。例えば、GPSによりバケットの刃先の位置座標が直接的に測定される。そして、位置検出装置によって演算されたバケットの刃先の位置座標と、GPS計測装置によって直接的に測定されたバケットの刃先の位置座標とが比較される。位置検出装置によって演算されたバケットの刃先の位置座標と、GPS計測装置によって直接的に測定されたバケットの刃先の位置座標とが一致していない場合には、これらの位置座標が一致するまで、メジャーテープによるパラメータの測定と位置検出装置への入力とが繰り返される。すなわち、位置座標の実測値と計算値とが一致するまで、人による試行錯誤によるパラメータの値の合わせ込みが行われる。このような較正作業には非常に多くの時間が必要であり、煩雑である。
【0006】
本発明の課題は、作業点の位置検出の精度を向上させると共に、較正作業時間を短縮することができる油圧ショベルの較正システム及び較正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、油圧ショベルにおいて、複数のパラメータを較正するための較正システムである。油圧ショベルは、車体と、作業機と、角度検出部と、現在位置演算部とを含む。作業機は、ブームと、アームと、作業具とを含む。ブームは、車体に揺動可能に取り付けられる。アームは、ブームに揺動可能に取り付けられる。作業具は、アームに揺動可能に取り付けられる。角度検出部は、車体に対するブームの揺動角と、ブームに対するアームの揺動角と、アームに対する作業具の揺動角とを検出する。現在位置演算部は、複数のパラメータに基づいて作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する。複数のパラメータは、ブームとアームと作業具との寸法と揺動角とを示す。較正システムは、形状検出部と、座標検出部と、較正演算部とを備える。形状検出部は、車体に取り付けられている。形状検出部は、作業具の形状を検出する。座標検出部は、形状検出部が検出した作業具の形状から作業点の位置を認識して作業点の位置座標を検出する。較正演算部は、作業点位置情報に基づいて、パラメータの較正値を演算する。作業点位置情報は、座標検出部によって検出された複数の位置での作業点の位置座標を示す。
【0008】
本発明の第2の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第1の態様の油圧ショベルの較正システムであって、油圧ショベルは、車体に取り付けられる位置検出部をさらに備える。位置検出部は、位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標を検出する。現在位置演算部は、複数の第1パラメータに基づいて車体座標系における作業点の現在位置の座標を演算する。複数の第1パラメータは、ブームとアームと作業具との寸法と揺動角とを示す。車体座標系は、車体に含まれる所定位置を原点とする座標系である。現在位置演算部は、作業点の現在位置の車体座標系における座標と、第2パラメータと、位置検出部が検出した位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標とに基づいて、作業点の現在位置のグローバル座標系における座標を演算する。第2パラメータは、位置検出部と車体座標系における原点との位置関係を示す。油圧ショベルの較正システムは、入力部をさらに備える。入力部には、基準位置情報が入力される。基準位置情報は、油圧ショベルの外部に位置する所定の基準位置のグローバル座標系における座標を示す。較正演算部は、作業点が所定の基準位置に位置している状態で座標検出部によって検出された作業点のグローバル座標系における位置座標と、基準位置情報とに基づいて、第2パラメータの較正値を演算する。
【0009】
本発明の第3の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第1又は第2の態様の油圧ショベルの較正システムであって、車体は運転室を有する。形状検出部は、運転室に取り付けられている。形状検出部は、所定の検出範囲内を移動する作業具の形状を検出する。所定の検出範囲は運転室の前方に位置する。座標検出部は、作業具が検出範囲内を移動している間に、作業点の複数の位置での位置座標を検出する。
【0010】
本発明の第4の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第3の態様の油圧ショベルの較正システムであって、形状検出部は、運転室の室内に取り付けられている。
【0011】
本発明の第5の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第1から第4の態様のいずれかの油圧ショベルの較正システムであって、較正演算部は、数値解析によりパラメータの較正値を演算する。
【0012】
本発明の第6の態様に係る油圧ショベルの較正方法は、油圧ショベルにおいて、複数のパラメータを較正するための較正方法である。油圧ショベルは、車体と、作業機と、角度検出部と、現在位置演算部とを含む。作業機は、ブームと、アームと、作業具とを含む。ブームは、車体に揺動可能に取り付けられる。アームは、ブームに揺動可能に取り付けられる。作業具は、アームに揺動可能に取り付けられる。角度検出部は、車体に対するブームの揺動角と、ブームに対するアームの揺動角と、アームに対する作業具の揺動角とを検出する。現在位置演算部は、複数のパラメータに基づいて作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する。複数のパラメータは、ブームとアームと作業具との寸法と揺動角とを示す。較正方法は、次のステップを備える。第1ステップでは、形状検出部が、作業具の形状を検出する。形状検出部は、車体に取り付けられている。第2ステップでは、第1ステップにおいて検出された作業具の形状から作業点の位置を認識して作業点の位置座標を検出する。第3ステップでは、作業点位置情報に基づいて、パラメータの較正値を演算する。作業点位置情報は、第2ステップにおいて検出された複数の位置での作業点の位置座標を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、形状検出部によって作業具の形状が検出される。また、座標検出部によって、作業具の形状から作業点の位置が認識され、作業点の位置座標が検出される。そして、検出された作業点の複数の位置での位置座標に基づいて、パラメータの較正値が演算される。このため、パラメータの値をメジャーテープなどの測定手段によって実測する必要がない。或いは、実測が必要なパラメータの数を低減することができる。また、位置座標の実測値と計算値とが一致するまでパラメータの値の合わせ込みを行う必要がない。これにより、第1の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、作業点の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
本発明の第2の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、作業点が所定の基準位置に位置している状態で座標検出部によって検出された作業点のグローバル座標系における位置座標と、基準位置情報とに基づいて、第2パラメータの較正値が演算される。基準位置情報については、所定の基準位置のグローバル座標系における座標を予め外部装置によって計測しておくことによって、精度の高い値を得ることができる。このため、第2パラメータの較正値を精度よく演算することができる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、座標検出部は、作業具が検出範囲内を移動している間に、作業点の複数の位置での位置座標を検出する。このため、オペレータが作業機を操作している間に自動的に作業点の複数の位置での位置座標が検出される。或いは、作業機が自動制御によって移動している間に、自動的に作業点の複数の位置での位置座標が検出される。このため、作業点の複数の位置での位置座標を容易に取得することができる。
【0016】
本発明の第4の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、形状検出部が運転室の室内に取り付けられているため、形状検出部が外部からの衝撃によって適正な位置からずれる恐れが少ない。このため、座標検出部が検出する作業点の位置座標の信頼性が高い。
【0017】
本発明の第5の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、数値解析によりパラメータの較正値が演算される。これにより、パラメータの較正値を容易に演算することができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る油圧ショベルの較正方法では、形状検出部によって作業具の形状が検出される。また、形状検出部によって検出された作業具の形状から作業点の位置が認識され、作業点の位置座標が検出される。そして、検出された作業点の複数の位置での位置座標に基づいて、パラメータの較正値が演算される。このため、パラメータの値をメジャーテープなどの測定手段によって実測する必要がない。或いは、実測が必要なパラメータの数を低減することができる。また、位置座標の実測値と計算値とが一致するまでパラメータの値の合わせ込みを行う必要がない。これにより、第6の態様に係る油圧ショベルの較正方法では、作業点の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの斜視図。
【図2】油圧ショベルの構成を模式的に示す図。
【図3】油圧ショベルが備える制御系の構成を示すブロック図。
【図4】設計地形の構成の一例を示す図。
【図5】案内画面の一例を示す図。
【図6】パラメータのリストを示す図。
【図7】ブームの側面図。
【図8】アームの側面図。
【図9】バケット及びアームの側面図。
【図10】バケットの側面図。
【図11】シリンダの長さを示すパラメータの演算方法を示す図。
【図12】運転室の斜視図
【図13】較正システムの操作画面の一例を示す図。
【図14】較正システムの較正に係わる処理機能を示す機能ブロック図。
【図15】オペレータが較正時に行う作業手順を示すフローチャート。
【図16】第1作業点位置情報の検出方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.構成
1−1.油圧ショベルの全体構成
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの較正システム及び較正方法について説明する。図1は、較正システムによる較正が実施される油圧ショベル100の斜視図である。油圧ショベル100は、車体1と作業機2とを有する。車体1は、旋回体3と運転室4と走行体5とを有する。旋回体3は、走行体5に旋回可能に取り付けられている。旋回体3は、油圧ポンプ37(図3参照)や図示しないエンジンなどの装置を収容している。運転室4は旋回体3の前部に載置されている。運転室4内には、後述する表示入力装置38及び操作装置25が配置される(図3参照)。走行体5は履帯5a,5bを有しており、履帯5a,5bが回転することにより油圧ショベル100が走行する。
【0021】
作業機2は、車体1の前部に取り付けられており、ブーム6とアーム7とバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して車体1の前部に揺動可能に取り付けられている。すなわち、ブームピン13は、ブーム6の旋回体3に対する揺動中心に相当する。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に揺動可能に取り付けられている。すなわち、アームピン14は、アーム7のブーム6に対する揺動中心に相当する。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が揺動可能に取り付けられている。すなわち、バケットピン15は、バケット8のアーム7に対する揺動中心に相当する。
【0022】
図2は、油圧ショベル100の構成を模式的に示す図である。図2(a)は油圧ショベル100の側面図である。図2(b)は油圧ショベル100の背面図である。図2(c)は油圧ショベル100の上面図である。図2(a)に示すように、ブーム6の長さ、すなわち、ブームピン13とアームピン14との間の長さは、L1である。アーム7の長さ、すなわち、アームピン14とバケットピン15との間の長さは、L2である。バケット8の長さ、すなわち、バケットピン15とバケット8の刃先Pとの間の長さは、L3である。
【0023】
図1に示すブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ油圧によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10の基端部は、ブームシリンダフートピン10aを介して旋回体3に揺動可能に取り付けられている。また、ブームシリンダ10の先端部は、ブームシリンダトップピン10bを介してブーム6に揺動可能に取り付けられている。ブームシリンダ10は、油圧によって伸縮することによって、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11の基端部は、アームシリンダフートピン11aを介してブーム6に揺動可能に取り付けられている。また、アームシリンダ11の先端部は、アームシリンダトップピン11bを介してアーム7に揺動可能に取り付けられている。アームシリンダ11は、油圧によって伸縮することによって、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12の基端部は、バケットシリンダフートピン12aを介してアーム7に揺動可能に取り付けられている。また、バケットシリンダ12の先端部は、バケットシリンダトップピン12bを介して第1リンク部材47の一端及び第2リンク部材48の一端に揺動可能に取り付けられている。第1リンク部材47の他端は、第1リンクピン47aを介してアーム7の先端部に揺動可能に取り付けられている。第2リンク部材48の他端は、第2リンクピン48aを介してバケット8に揺動可能に取り付けられている。バケットシリンダ12は、油圧によって伸縮することによって、バケット8を駆動する。
【0024】
図3は、油圧ショベル100が備える制御系の構成を示すブロック図である。ブーム6とアーム7とバケット8には、それぞれ第1〜第3角度検出部16−18が設けられている。第1〜第3角度検出部16−18は、ストロークセンサであり、各シリンダ10−12のストローク長さを検出することにより、車体1に対するブーム6の揺動角と、ブーム6に対するアーム7の揺動角と、アーム7に対するバケット8の揺動角とを間接的に検出する。具体的には、第1角度検出部16は、ブームシリンダ10のストローク長さを検出する。後述する表示コントローラ39は、第1角度検出部16が検出したブームシリンダ10のストローク長さから、図2(a)に示す車体座標系のz軸に対するブーム6の揺動角αを演算する。第2角度検出部17は、アームシリンダ11のストローク長さを検出する。表示コントローラ39は、第2角度検出部17が検出したアームシリンダ11のストローク長さから、ブーム6に対するアーム7の揺動角βを演算する。第3角度検出部18は、バケットシリンダ12のストローク長さを検出する。表示コントローラ39は、第3角度検出部18が検出したバケットシリンダ12のストローク長さから、アーム7に対するバケット8の揺動角γを演算する。揺動角α,β,γの演算方法については後に詳細に説明する。
【0025】
図2(a)に示すように、車体1には、位置検出部19が取り付けられている。位置検出部19は、位置検出部19の現在位置のグローバル座標系における座標を検出する。すなわち、位置検出部19は、油圧ショベル100の車体1の現在位置を検出する。具体的には、位置検出部19は、図1に示すRTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう。)用の2つのアンテナ21,22と、図2(a)に示す3次元位置センサ23とを有する。アンテナ21,22は、後述する車体座標系xm−ym−zmのym軸(図2(c)参照)に沿って一定距離だけ離間して配置されている。アンテナ21,22で受信されたGNSS電波に応じた信号は3次元位置センサ23に入力される。3次元位置センサ23は、アンテナ21,22のグローバル座標系における現在位置を検出する。なお、グローバル座標系は、GNSSによって計測される座標系であり、地球に固定された原点を基準とした座標系である。これに対して、後述する車体座標系は、車体1(具体的には旋回体3)に固定された原点を基準とする座標系である。アンテナ21(以下、「基準アンテナ21」と呼ぶ)は、車体1の現在位置を検出するためのアンテナである。アンテナ22(以下、「方向アンテナ22」と呼ぶ)は、車体1(具体的には旋回体3)の向きを検出するためのアンテナである。位置検出部19は、基準アンテナ21と方向アンテナ22との位置によって、後述する車体座標系のxm軸のグローバル座標系での方向角を検出する。なお、アンテナ21,22は、GPS用のアンテナであってもよい。
【0026】
車体1には、車体傾斜角度検出部が備えられている。車体傾斜角度検出部は、作業機2の鉛直方向に対する傾斜角を検出する。具体的には、図3に示すように、車体1には、ロール角センサ24と、ピッチ角センサ29とが備えられている。ロール角センサ24は、図2(b)に示すように、重力方向(鉛直線)に対する車体1の幅方向の傾斜角θ1(以下、「ロール角θ1」と呼ぶ)を検出する。なお、本実施形態において、幅方向とは、バケット8の幅方向を意味しており、車幅方向と一致している。ただし、作業機2が後述するチルトバケットを備える場合には、バケット8の幅方向と車幅方向とが一致しないことがあり得る。ピッチ角センサ29は、図2(a)に示すように、重力方向に対する車体1の前後方向の傾斜角θ2(以下、「ピッチ角θ2」と呼ぶ)を検出する。
【0027】
図3に示すように、油圧ショベル100は、操作装置25と、作業機コントローラ26と、作業機制御装置27と、油圧ポンプ37と、を備える。操作装置25は、作業機操作部材31と、作業機操作検出部32と、走行操作部材33と、走行操作検出部34と、旋回操作部材51と、旋回操作検出部52とを有する。作業機操作部材31は、オペレータが作業機2を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。作業機操作検出部32は、作業機操作部材31の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。走行操作部材33は、オペレータが油圧ショベル100の走行を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。走行操作検出部34は、走行操作部材33の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。旋回操作部材51は、オペレータが旋回体3の旋回を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。旋回操作検出部52は、旋回操作部材51の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。
【0028】
作業機コントローラ26は、RAMやROMなどの記憶部35や、CPUなどの演算部36を有している。作業機コントローラ26は、主として作業機2の動作及び旋回体3の旋回の制御を行う。作業機コントローラ26は、作業機操作部材31の操作に応じて作業機2を動作させるための制御信号を生成して、作業機制御装置27に出力する。作業機制御装置27は、比例制御弁などの油圧制御機器を有している。作業機制御装置27は、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて、油圧ポンプ37から油圧シリンダ10−12に供給される作動油の流量を制御する。油圧シリンダ10−12は、作業機制御装置27から供給された作動油に応じて駆動される。これにより、作業機2が動作する。また、作業機コントローラ26は、旋回操作部材51の操作に応じて旋回体3を旋回させるための制御信号を生成して、旋回モータ49に出力する。これにより、旋回モータ49が駆動され、旋回体3が旋回する。
【0029】
1−2.表示システム28の構成
油圧ショベル100には、表示システム28が搭載されている。表示システム28は、作業エリア内の地面を掘削して後述する設計面のような形状に形成するための情報をオペレータに提供するためのシステムである。表示システム28は、表示入力装置38と、表示コントローラ39とを有している。
【0030】
表示入力装置38は、タッチパネル式の入力部41と、LCDなどの表示部42とを有する。表示入力装置38は、掘削を行うための情報を提供するための案内画面を表示する。また、案内画面には、各種のキーが表示される。オペレータは、案内画面上の各種のキーに触れることにより、表示システム28の各種の機能を実行させることができる。案内画面については後に詳細に説明する。
【0031】
表示コントローラ39は、表示システム28の各種の機能を実行する。表示コントローラ39と作業機コントローラ26とは、無線あるいは有線の通信手段により互いに通信可能となっている。表示コントローラ39は、RAMやROMなどの記憶部43と、CPUなどの演算部44とを有している。演算部44は、記憶部43に記憶されている各種のデータと、位置検出部19の検出結果とに基づいて、案内画面を表示するための各種の演算を実行する。
【0032】
表示コントローラ39の記憶部43には、設計地形データが予め作成されて記憶されている。設計地形データは、3次元の設計地形の形状及び位置に関する情報である。設計地形は、作業対象となる地面の目標形状を示す。表示コントローラ39は、設計地形データや上述した各種のセンサからの検出結果などのデータに基づいて、案内画面を表示入力装置38に表示させる。具体的には、図4に示すように、設計地形は、三角形ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の設計面45によって構成されている。なお、図4では複数の設計面のうちの一部のみに符号45が付されており、他の設計面の符号は省略されている。オペレータは、これらの設計面45のうちの1つ、或いは、複数の設計面45を目標面70として選択する。表示コントローラ39は、目標面70の位置をオペレータに知らせるための案内画面を表示入力装置38に表示させる。
【0033】
2.案内画面
以下、案内画面について詳細に説明する。案内画面は、目標面70とバケット8の刃先との位置関係を示し、作業対象である地面が目標面70と同じ形状になるように油圧ショベル100の作業機2を誘導するための画面である。
【0034】
2−1.案内画面の構成
図5に案内画面53を示す。案内画面53は、作業エリアの設計地形と油圧ショベル100の現在位置とを示す上面図53aと、目標面70と油圧ショベル100との位置関係を示す側面図53bとを含む。
【0035】
案内画面53の上面図53aは、複数の三角形ポリゴンによって上面視による設計地形を表現している。より具体的には、上面図53aは、油圧ショベル100の旋回平面を投影面として設計地形を表現している。従って、上面図53aは、油圧ショベル100の真上から見た図であり、油圧ショベル100が傾いたときには設計面45が傾くことになる。また、複数の設計面45から選択された目標面70は、他の設計面45と異なる色で表示される。なお、図5では、油圧ショベル100の現在位置が上面視による油圧ショベルのアイコン61で示されているが、他のシンボルによって示されてもよい。また、上面図53aは、油圧ショベル100を目標面70に対して正対させるための情報を含んでいる。油圧ショベル100を目標面70に対して正対させるための情報は、正対コンパス73として表示される。正対コンパス73は、目標面70に対する正対方向と油圧ショベル100を旋回させるべき方向とを示すアイコンである。オペレータは、正対コンパス73により、目標面70への正対度を確認することができる。
【0036】
案内画面53の側面図53bは、目標面70とバケット8の刃先との位置関係を示す画像と、目標面70とバケット8の刃先との間の距離を示す距離情報88とを含む。具体的には、側面図53bは、設計面線81と、目標面線82と、側面視による油圧ショベル100のアイコン75とを含む。設計面線81は、目標面70以外の設計面45の断面を示す。目標面線82は目標面70の断面を示す。設計面線81と目標面線82とは、図4に示すように、バケット8の刃先の幅方向における中点P(以下、単に「バケット8の刃先」と呼ぶ)の現在位置を通る平面77と設計面45との交線80を演算することにより求められる。バケット8の刃先の現在位置を演算する方法については後に詳細に説明する。
【0037】
以上のように、案内画面53では、設計面線81と、目標面線82と、バケット8を含む油圧ショベル100と、の相対位置関係が画像によって表示される。オペレータは、目標面線82に沿ってバケット8の刃先を移動させることによって、現在の地形が設計地形になるように、容易に掘削することができる。
【0038】
2−2.刃先位置の演算方法
次に、上述したバケット8の刃先位置の演算方法について詳細に説明する。表示コントローラ39の演算部44は、位置検出部19の検出結果、及び、記憶部43に記憶されている複数のパラメータに基づいて、バケット8の刃先の現在位置を演算する。図6に、記憶部43に記憶されているパラメータのリストを示す。パラメータは、作業機パラメータと、アンテナパラメータとを含む。作業機パラメータは、ブーム6とアーム7とバケット8との寸法と揺動角とを示す複数のパラメータを含む。すなわち、作業機パラメータは、本発明の第1パラメータに相当する。アンテナパラメータは、アンテナ21,22と後述する車体座標系の原点との位置関係を示す複数のパラメータを含む。すなわち、アンテナパラメータは、本発明の第2パラメータに相当する。図3に示すように、表示コントローラ39の演算部44は、第1現在位置演算部44aと、第2現在位置演算部44bとを有する。第1現在位置演算部44aは、作業機パラメータに基づいて、バケット8の刃先の車体座標系における現在位置を演算する。第2現在位置演算部44bは、アンテナパラメータと、位置検出部19が検出したアンテナ21,22のグローバル座標系における現在位置の座標と、第1現在位置演算部44aが演算したバケット8の刃先の車体座標系における現在位置の座標とから、バケット8の刃先のグローバル座標系における現在位置の座標を演算する。具体的には、バケット8の刃先の現在位置の座標は、次のように求められる。
【0039】
まず、図2に示すように、ブームピン13の軸と後述する作業機2の動作平面との交点を原点とする車体座標系xm−ym−zmを設定する。なお、以下の説明においてブームピン13の位置は、ブームピン13の車幅方向における中点の位置を意味するものとする。また、第1〜第3角度検出部16−18の検出結果から、上述したブーム6、アーム7、バケット8の現在の揺動角α、β、γが演算される。揺動角α、β、γの演算方法については後述する。車体座標系でのバケット8の刃先の座標(xm,ym,zm)は、ブーム6、アーム7、バケット8の揺動角α、β、γと、ブーム6、アーム7、バケット8の長さL1、L2、L3とを用いて、以下の数1式により演算される。
【0040】
【数1】
【0041】
また、数1から求められた車体座標系でのバケット8の刃先の座標(xm,ym,zm)は、以下の数2式により、グローバル座標系での座標(X,Y,Z)に変換される。
【0042】
【数2】
【0043】
ただし、ω,ψ,κは以下のように表される。
【0044】
【0045】
ここで、上述したとおり、θ1はロール角である。θ2はピッチ角である。また、θ3は、Yaw角であり、上述した車体座標系のxm軸のグローバル座標系での方向角である。従って、Yaw角θ3は、位置検出部19によって検出された基準アンテナ21と方向アンテナ22との位置に基づいて演算される。(A,B,C)は、車体座標系の原点のグローバル座標系での座標である。上述したアンテナパラメータは、アンテナ21,22と車体座標系の原点との位置関係、すなわち、アンテナ21,22とブームピン13の車幅方向における中点との位置関係を示す。具体的には、図2(b)及び図2(c)に示すように、アンテナパラメータは、ブームピン13と基準アンテナ21との間の車体座標系のxm軸方向の距離Lbbxと、ブームピン13と基準アンテナ21との間の車体座標系のym軸方向の距離Lbbyと、ブームピン13と基準アンテナ21との間の車体座標系のzm軸方向の距離Lbbzとを含む。また、アンテナパラメータは、ブームピン13と方向アンテナ22との間の車体座標系のxm軸方向の距離Lbdxと、ブームピン13と方向アンテナ22との間の車体座標系のym軸方向の距離Lbdyと、ブームピン13と方向アンテナ22との間の車体座標系のzm軸方向の距離Lbdzとを含む。(A,B,C)は、アンテナ21,22が検出したグローバル座標系におけるアンテナ21,22の座標と、アンテナパラメータとに基づいて、演算される。
【0046】
図4に示すように、表示コントローラ39は、上記のように演算したバケット8の刃先Pの現在位置と、記憶部43に記憶された設計地形データとに基づいて、3次元設計地形とバケット8の刃先を通る平面77との交線80を演算する。そして、表示コントローラ39は、この交線80のうち目標面70を通る部分を上述した目標面線82として演算する。この交線80のうち目標面線82以外の部分を設計面線81として演算する。
【0047】
2−3.揺動角α、β、γの演算方法
次に、第1〜第3角度検出部16−18の検出結果から、ブーム6、アーム7、バケット8の現在の揺動角α、β、γを演算する方法について説明する。
【0048】
図7は、ブーム6の側面図である。ブーム6の揺動角αは、図7に示されている作業機パラメータを用いて、以下の数3式によって表される。
【0049】
【数3】
【0050】
図7に示すように、Lboom2_xは、ブームシリンダフートピン10aとブームピン13との間のブーム6が取り付けられる車体2の水平方向(すなわち車体座標系のxm軸方向に相当する)の距離である。Lboom2_zは、ブームシリンダフートピン10aとブームピン13との間のブーム6が取り付けられる車体2の鉛直方向(すなわち車体座標系のzm軸方向に相当する)の距離である。Lboom1は、ブームシリンダトップピン10bとブームピン13との間の距離である。Lboom2は、ブームシリンダフートピン10aとブームピン13との間の距離である。boom_cylは、ブームシリンダフートピン10aとブームシリンダトップピン10bとの間の距離である。Lboom1_zは、ブームシリンダトップピン10bとブームピン13との間のzboom軸方向の距離である。なお、側面視においてブームピン13とアームピン14とを結ぶ方向をxboom軸とし、xboom軸に垂直な方向をzboom軸とする。Lboom1_xは、ブームシリンダトップピン10bとブームピン13との間のxboom軸方向の距離である。
【0051】
図8は、アーム7の側面図である。アーム7の揺動角βは、図7及び図8に示されている作業機パラメータを用いて、以下の数4式によって表される。
【0052】
【数4】
【0053】
図7に示すように、Lboom3_zは、アームシリンダフートピン11aとアームピン14との間のzboom軸方向の距離である。Lboom3_xは、アームシリンダフートピン11aとアームピン14との間のxboom軸方向の距離である。Lboom3は、アームシリンダフートピン11aとアームピン14との間の距離である。図8に示すように、Larm2は、アームシリンダトップピン11bとアームピン14との間の距離である。図7に示すように、arm_cylは、アームシリンダフートピン11aとアームシリンダトップピン11bとの間の距離である。図8に示すように、Larm2_xは、アームシリンダトップピン11bとアームピン14との間のxarm2軸方向の距離である。Larm2_zは、アームシリンダトップピン11bとアームピン14との間のzarm2軸方向の距離である。なお、側面視においてアームシリンダトップピン11bとバケットピン15とを結ぶ方向をxarm2軸とし、xarm2軸に垂直な方向をzarm2軸とする。Larm1_xは、アームピン14とバケットピン15との間のxarm2軸方向の距離である。Larm1_zは、アームピン14とバケットピン15との間のzarm2軸方向の距離である。また、側面視においてアームピン14とバケットピン15とを結ぶ方向をxarm1軸とする。アーム7の揺動角βは、xmboom軸とxarm1軸との間のなす角である。
【0054】
図9は、バケット8及びアーム7の側面図である。図10は、バケット8の側面図である。バケット8の揺動角γは、図8から図10に示されている作業機パラメータを用いて、以下の数5式によって表される。
【0055】
【数5】
【0056】
図8に示すように、Larm3_z2は、第1リンクピン47aとバケットピン15との間のzarm2軸方向の距離である。Larm3_x2は、第1リンクピン47aとバケットピン15との間のxarm2軸方向の距離である。図9に示すように、Ltmpは、バケットシリンダトップピン12bとバケットピン15との間の距離である。Larm4は、第1リンクピン47aとバケットピン15との間の距離である。Lbucket1は、バケットシリンダトップピン12bと第1リンクピン47aとの間の距離である。Lbucket3は、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間の距離である。Lbucket2は、バケットシリンダトップピン12bと第2リンクピン48aとの間の距離である。図10に示すように、Lbucket4_xは、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のxbucket軸方向の距離である。Lbucket4_zは、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のzbucket軸方向の距離である。なお、側面視においてバケットピン15とバケット8の刃先Pとを結ぶ方向をxbucket軸とし、xbucket軸に垂直な方向をzbucket軸とする。バケット8の揺動角γは、xbucket軸とxarm1軸との間のなす角である。上述したLtmpは以下の数6式によって表される。
【0057】
【数6】
【0058】
なお、図8に示すように、Larm3は、バケットシリンダフートピン12aと第1リンクピン47aトの間の距離である。Larm3_x1は、バケットシリンダフートピン12aとバケットピン15との間のxarm2軸方向の距離である。Larm3_z1は、バケットシリンダフートピン12aとバケットピン15との間のzarm2軸方向の距離である。
【0059】
また、上述したboom_cylは、図11に示すように、第1角度検出部16が検出したブームシリンダ10のストローク長bssにブームシリンダオフセットboftを加えた値である。同様に、arm_cylは、第2角度検出部17が検出したアームシリンダ11のストローク長assにアームシリンダオフセットaoftを加えた値である。同様に、bucket_cylは、第3角度検出部18が検出したバケットシリンダ12のストローク長bkssにバケットシリンダ12の最小距離を含んだバケットシリンダオフセットbkoftを加えた値である。
【0060】
3.較正システム50
較正システム50は、油圧ショベル100において、上述した揺動角α,β,γの演算、及び、バケット8の刃先の位置を演算するために必要なパラメータを較正するためのシステムである。図3に示すように、較正システム50は、形状検出部54と較正装置60とを有する。
【0061】
形状検出部54は、ステレオカメラである。形状検出部54は、車体1に取り付けられている。具体的には、形状検出部54は、旋回体3に取り付けられている。図12は、運転室4の斜視図である。図12に示すように、形状検出部54は、運転室4に取り付けられている。さらに具体的には、形状検出部54は、運転室4の室内に取り付けられている。形状検出部54は、第1カメラ部54aと第2カメラ部54bとを有する。第1カメラ部54aと第2カメラ部54bとは、それぞれ図示しないレンズ機構やシャッター機構などを有する。第1カメラ部54aと第2カメラ部54bとは、運転室4内において車幅方向に間隔を空けて配置されている。形状検出部54は、運転室4の前窓4aの上部の後方に配置されている。形状検出部54は、運転室4の前方に位置する所定の検出範囲A1(図16参照)内を移動するバケット8の3次元的な形状及び位置を検出する。
【0062】
較正装置60は、有線または無線によって表示コントローラ39とデータ通信を行うことができる。較正装置60は、形状検出部54によって計測された形状情報に基づいて図6に示すパラメータの較正を行う。パラメータの較正は、例えば、油圧ショベル100の出荷時やメンテナンス後の初期設定において実行される。図3に示すように、較正装置60は、入力部63と、記憶部67と、表示部64と、演算部65とを有する。
【0063】
入力部63は、パラメータの較正処理に必要な情報が入力される部分である。入力部63は、オペレータが上述した情報を手入力するための構成を備えており、例えば複数のキーを有する。入力部63は、数値の入力が可能であればタッチパネル式のものであってもよい。表示部64は、例えばLCDであり、較正を行うための操作画面が表示される部分である。図13は、較正装置60の操作画面の一例を示す。操作画面には、上述した情報を入力するための入力欄66が表示される。オペレータは、入力部63を操作することにより、操作画面の入力欄66に上述した情報を入力する。記憶部67は、RAMやROMなどのメモリによって構成されている。記憶部67は、パラメータの較正処理に必要な各種の情報を記憶する。記憶部67は、入力部63を介して入力された情報を記憶する。
【0064】
演算部65は、入力部63を介して入力された情報に基づいて、パラメータの較正処理を実行する。図14は、演算部65の較正に係わる処理機能を示す機能ブロック図である。演算部65は、座標検出部65aと、座標変換部65bと、第1較正演算部65cと、第2較正演算部65dとの各機能を有している。オペレータが較正装置60に較正処理の実行を指示すると、較正装置60は図15に示すフローチャートに基づいて、パラメータの較正処理を実行する。以下、図14及び図15に基づいてパラメータの較正処理について説明する。
【0065】
まず、図15に示すステップS1において、バケット8の形状が検出される。ここでは、図14に示すように、形状検出部54が形状情報を検出する。形状情報は、バケット8の形状及び位置を示す情報である。形状検出部54は次のようにして形状情報を検出する。図16は、運転室4内のオペレータから見た運転4の前方の視界を示している。図16に示すように、オペレータは、作業機操作部材31を操作して、バケット8の刃先を基準杭91の上端部に向けて移動させる。このとき、旋回体3は旋回させずに走行体5に対して固定された状態を維持する。バケット8の刃先が基準杭91に向けて移動している間に、バケット8の刃先は、形状検出部54の検出範囲A1内を通過する。バケット8の刃先が形状検出部54の検出範囲A1内を通過している間、形状検出部54はバケット8を撮影して、形状情報を取得する。すなわち、形状情報は、バケット8を含む画像情報である。形状情報は、形状検出部54の検出範囲A1内の異なる位置でのバケット8の画像情報を含む。
【0066】
次に、ステップS2において、第1作業点位置情報が検出される。ここでは、図14に示すように、座標検出部65aが、形状検出部54が検出した形状情報から第1作業点位置情報を検出する。具体的には、座標検出部65aは、形状情報からバケット8の刃先の位置を認識する。そして、座標検出部65aは、認識したバケット8の刃先の位置に基づいて刃先の位置座標を検出する。より具体的には、座標検出部65aは、形状検出部54が撮影したバケット8を含む画像を解析することにより、バケット8の刃先の位置座標を演算する。座標検出部65aは、バケット8が形状検出部54の検出範囲A1内を移動している間に、刃先の複数の位置での位置座標を第1作業点位置情報として検出する。例えば、図16に示すように、バケット8の刃先の第1位置P1〜第5位置P5での座標が、第1作業点位置情報として検出される。
【0067】
ステップS3において、第2作業点位置情報が検出される。ここでは、図14に示すように、座標検出部65aが、形状検出部54が検出した形状情報から第2作業点位置情報を検出する。具体的には、座標検出部65aは、形状検出部54が検出した形状情報からバケット8の刃先の位置を認識する。特に、図16に示すように、バケット8の刃先の規準位置P0での座標が、第2作業点位置情報として検出される。すなわち、第2作業点位置情報は、バケット8の刃先が基準位置P0に位置している状態で座標検出部65aによって検出された座標である。基準位置P0は、基準杭91の上端部に位置している。なお、図16において、8’は、バケット8の刃先が規準位置P0に位置している状態を示している。
【0068】
ステップS4において、第1作業点位置情報及び第2作業点位置情報が車体座標系に変換される。図14に示すように、座標検出部65aによって検出された第1作業点位置情報及び第2作業点位置情報は、形状検出部54によって検出された形状情報に基づいて演算されているため、形状検出部54の座標系xc−yc−zcを基準とした座標である。このため、座標変換部65bは、座標変換情報を用いて、第1作業点位置情報及び第2作業点位置情報を、形状検出部54の座標系xc−yc−zcから車体座標系xm−ym−zmに変換する。座標変換情報は、形状検出部54の座標系xc−yc−zcの座標を車体座標系xm−ym−zmの座標に変換するための情報である。具体的には、座標変換情報は、回転行列Rと並進行列Hとを含む。回転行列Rと並進行列Hとは、形状検出部54の取付位置及び取付姿勢などから予め演算される。座標変換情報は、例えば油圧ショベル100の出荷時に入力部63に入力されて、記憶部67に保存されている。座標変換部65bは、以下の数7式により、形状検出部54の座標系xc−yc−zcの座標を車体座標系xm−ym−zmの座標に変換する。
【0069】
【数7】
【0070】
次に、ステップS5において、作業機パラメータの較正値が演算される。ここでは図14に示すように、第1較正演算部65cが、車体座標系に変換された第1作業点位置情報に基づいて、数値解析を用いることにより、作業機パラメータの較正値を演算する。具体的には、第1較正演算部65cは、以下の数8式に示すように、最小二乗法により作業機パラメータの較正値を演算する。
【0071】
【数8】
【0072】
上記のkの値は、第1作業点位置情報の第1位置P1から第5位置P5に相当する。従って、n=5である。(x1,z1)は、車体座標系での第1位置P1の座標である。(x2,z2)は、車体座標系での第2位置P2の座標である。(x3,z3)は、車体座標系での第3位置P3の座標である。(x4,z4)は、車体座標系での第4位置P4の座標である。(x5,z5)は、車体座標系での第5位置P5の座標である。この数8式の関数Jが最小になる点を探索していることにより、作業機パラメータの較正値が演算される。具体的には図6のリストにおいてNo.1〜29の作業機パラメータの較正値が演算される。
【0073】
なお、図6のリストに含まれる作業機パラメータのうち、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のxbucket軸方向の距離Lbucket4_x、及び、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のzbucket軸方向の距離Lbucket4_zは、バケット情報として入力部63に入力された値が用いられる。バケット情報は、バケット8の寸法に関する情報である。オペレータは、設計値又はメジャーテープなどの計測手段によって計測した値を、バケット情報として入力部63に入力する。
【0074】
ステップS6において、アンテナパラメータの較正値が演算される。ここでは、図14に示すように、第2較正演算部65dが、基準位置情報と第2作業点位置情報とに基づいてアンテナパラメータを較正する。基準位置情報は、油圧ショベル100の外部に位置する所定の基準位置P0のグローバル座標系の座標を示す。具体的には、基準位置情報は、上述した基準杭91の上端部の位置のグローバル座標系の座標である。基準位置情報は、予め油圧ショベル100の外部のGNSS装置によって計測されている。基準位置P0は、例えば油圧ショベル100が使用される作業現場内に配置されている。基準位置情報は、例えば、油圧ショベル100が当該作業現場に搬送されたときに、入力部63に入力される(図13参照)。第2較正演算部65dは、車体座標系による第2作業点位置情報を、アンテナパラメータを用いてグローバル座標系に変換する。そして、第2較正演算部65dは、第2作業点位置情報として取得されたグローバル座標系による基準位置P0の座標と、基準位置情報として取得されたグローバル座標系による基準位置P0の座標との差を最小にするアンテナパラメータの補正量を、最小二乗法を用いて演算する。これにより、第2較正演算部65dは、アンテナパラメータの較正値を演算する。
【0075】
第1較正演算部65cによって演算された作業機パラメータと、第2較正演算部65dによって演算されたアンテナパラメータと、入力部63に入力されたバケット情報とは、表示コントローラ39の記憶部43に保存され、上述した刃先位置の演算に用いられる。
【0076】
4.特徴
本実施形態に係る油圧ショベル100の較正システム50は、以下のような特徴を有する。
【0077】
形状検出部54および座標検出部65aによって検出されたバケット8の刃先の複数の位置P1−P5での座標に基づいて、パラメータの較正値が数値解析により自動的に演算される。このため、実測が必要なパラメータの数を低減することができる。また、較正時に、バケット8の刃先の位置座標の実測値と計算値とが一致するまでパラメータの値の合わせ込みを行う必要がない。これにより、本実施形態に係る油圧ショベル100の較正システム50では、刃先の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を大幅に短縮することができる。
【0078】
本実施形態に係る油圧ショベル100では、シリンダのストローク長からブーム6とアーム7とバケット8との揺動角α、β、γを演算している。この場合、角度センサによって揺動角を演算する場合と比べて、演算に必要なパラメータが多くなる。このため、全てのパラメータをメジャーテープなどの測定手段によって測定する場合には、較正作業時間が増大してしまう。しかし、本実施形態に係る油圧ショベル100の較正システム50では、パラメータが数値解析により自動的に演算されるため、パラメータの数が多くなっても、較正作業時間の増大を抑えることができる。
【0079】
バケット8の刃先の複数の位置P1−P5での座標は、形状検出部54がバケット8を撮影して、座標検出部65aが撮影された画像を解析することによって、自動的に検出される。作業機2の寸法をメジャーテープを用いて計測する場合と異なり、オペレータが、作業機2に触れる必要ない。従って、安全にパラメータの較正を行うことができる。また、形状検出部54が、移動中のバケット8を撮影することにより、バケット8の刃先の複数の位置P1−P5を連続的に検出することができる。このため、バケット8の刃先の位置P1−P5を検出するためにバケット8の動作を止める必要がない。従って、迅速にバケット8の刃先の複数の位置P1−P5での座標を検出することができる。さらに、人がバケット8の刃先の位置P1−P5を計測する場合と比べて、バケット8の刃先の位置P1−P5の検出精度が高い。このため、パラメータの較正を精度良く行うことができる。
【0080】
形状検出部54の車体座標系における正確な位置と姿勢とを事前に求めておくことにより、精度の高い座標変換情報を容易に取得することができる。また、座標変換情報は記憶部67に保存されているため、座標検出部65aによって検出された第1作業点位置情報と第2作業点位置情報とを車体座標系に瞬時に変換することができる。このため、座標検出部65aによってバケット8の刃先の全ての位置P1−P5,P0での座標の検出が完了したときに、作業機パラメータとアンテナパラメータとの較正を直ちに実施することができる。
【0081】
基準位置P0は、正確なグローバル座標系での座標が既知の点であればよい。このため、基準杭91を、設置の容易な安全な場所に設置することができる。
【0082】
5.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
上記の実施形態では、作業具としてバケット8が例示されているが、バケット8以外の作業具が用いられもよい。また、作業点としてバケット8の刃先が例示されているが、作業点はバケット8の刃先以外の部分であってもよい。また、バケット8以外の作業具が用いられる場合には、作業点は、作業具の先端に位置する点など、作業対象物と接触する部分であればよい。
【0084】
上記の実施形態ではブーム6、アーム7、バケット8の揺動角α、β、γは、シリンダのストローク長から演算されているが、傾斜計やIMU(Inertial Measurement Unit)などの角度センサによって直接的に検出されてもよい。この場合、上述した作業機パラメータの較正方法と同様の手法によって、角度センサの較正値が演算されてもよい。
【0085】
第1作業点位置情報は、上述した5つの位置の座標に限られない。第1作業点位置情報のバケット8の刃先の位置の数は、4点以下、或いは6点以上であってもよい。ただし、較正の精度を向上させる観点からは、第1作業点位置情報のバケット8の刃先の位置は、5つ以上であることが好ましい。また、較正時にオペレータが手動で作業機2を操作するのではなく、作業機2が自動で制御されることによって第1作業点位置情報が検出されてもよい。
【0086】
基準位置は1つに限らず、複数の基準位置が用いられてもよい。較正の精度を向上させる観点からは、複数の基準位置が較正に用いられることが好ましい。
【0087】
上記の実施形態では、形状検出部54はステレオカメラであるが、計測対象物の形状及び位置を検出する装置であれば3次元レーザースキャナなどの他の装置であってもよい。
【0088】
上記の実施形態では、較正装置60は、表示コントローラ39とは別の装置であるが、表示コントローラ39と一体化されてもよい。すなわち、表示コントローラ39が較正装置60の機能を有してもよい。
【0089】
第1較正演算部65cによって演算されるパラメータは、上記の実施形態で述べたパラメータに限られない。例えば、上述したバケット情報を含む全ての作業機パラメータが、演算によって求められてもよい。また、車体傾斜角度検出部によって検出される車体の傾斜角の較正値が演算によって求められてもよい。具体的には、上述した実施形態におけるロール角センサ24及び/又はピッチ角センサ29の出力の較正値が演算されてもよい。
【0090】
上記の実施形態では、最小二乗法によってパラメータの較正値が演算されている。しかし、最小二乗法に限らず他の数学的解法によって較正値が演算されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、作業点の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を短縮することができる油圧ショベルの較正システム及び較正方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
1・・・車体、2・・・作業機、4・・・運転室、6・・・ブーム、7・・・アーム、8・・・バケット(作業具)、10・・・ブームシリンダ、11・・・アームシリンダ、12・・・バケットシリンダ(作業具シリンダ)、16−18・・・角度検出部、19・・・位置検出部、44a,44b・・・現在位置演算部、50・・・較正システム、54・・・形状検出部、63・・・入力部、65a・・・座標検出部、65c,65d・・・較正演算部、100・・・油圧ショベル、α・・・ブームの揺動角、β・・・アームの揺動角、γ・・・バケットの揺動角
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルの較正システム及び油圧ショベルの較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機の作業点の現在位置を検出する位置検出装置を備える油圧ショベルが知られている。例えば、特許文献1に開示されている油圧ショベルでは、GPSアンテナからの位置情報に基づいて、バケットの刃先の位置座標が演算される。具体的には、GPSアンテナとブームピンとの位置関係、ブームとアームとバケットとのそれぞれの長さ、ブームとアームとバケットとのそれぞれの方向角などのパラメータに基づいて、バケットの刃先の位置座標が演算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
演算されたバケットの刃先の位置座標の精度は、上述したパラメータの精度の影響を受ける。しかし、これらのパラメータは、設計値に対して誤差を有することが通常である。このため、油圧ショベルの位置検出装置の初期設定時には、パラメータをメジャーテープなどの計測手段によって計測することが行われる。しかし、上記のようにパラメータをメジャーテープなどの計測手段によって精度よく計測することは容易ではない。また、パラメータの数が多い場合には、それらのパラメータを全て測定するために多くの時間が必要であり、煩雑である。
【0005】
また、測定されたパラメータを位置検出装置に入力した後に、位置検出装置による位置検出の精度の確認が行われる。例えば、GPSによりバケットの刃先の位置座標が直接的に測定される。そして、位置検出装置によって演算されたバケットの刃先の位置座標と、GPS計測装置によって直接的に測定されたバケットの刃先の位置座標とが比較される。位置検出装置によって演算されたバケットの刃先の位置座標と、GPS計測装置によって直接的に測定されたバケットの刃先の位置座標とが一致していない場合には、これらの位置座標が一致するまで、メジャーテープによるパラメータの測定と位置検出装置への入力とが繰り返される。すなわち、位置座標の実測値と計算値とが一致するまで、人による試行錯誤によるパラメータの値の合わせ込みが行われる。このような較正作業には非常に多くの時間が必要であり、煩雑である。
【0006】
本発明の課題は、作業点の位置検出の精度を向上させると共に、較正作業時間を短縮することができる油圧ショベルの較正システム及び較正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、油圧ショベルにおいて、複数のパラメータを較正するための較正システムである。油圧ショベルは、車体と、作業機と、角度検出部と、現在位置演算部とを含む。作業機は、ブームと、アームと、作業具とを含む。ブームは、車体に揺動可能に取り付けられる。アームは、ブームに揺動可能に取り付けられる。作業具は、アームに揺動可能に取り付けられる。角度検出部は、車体に対するブームの揺動角と、ブームに対するアームの揺動角と、アームに対する作業具の揺動角とを検出する。現在位置演算部は、複数のパラメータに基づいて作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する。複数のパラメータは、ブームとアームと作業具との寸法と揺動角とを示す。較正システムは、形状検出部と、座標検出部と、較正演算部とを備える。形状検出部は、車体に取り付けられている。形状検出部は、作業具の形状を検出する。座標検出部は、形状検出部が検出した作業具の形状から作業点の位置を認識して作業点の位置座標を検出する。較正演算部は、作業点位置情報に基づいて、パラメータの較正値を演算する。作業点位置情報は、座標検出部によって検出された複数の位置での作業点の位置座標を示す。
【0008】
本発明の第2の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第1の態様の油圧ショベルの較正システムであって、油圧ショベルは、車体に取り付けられる位置検出部をさらに備える。位置検出部は、位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標を検出する。現在位置演算部は、複数の第1パラメータに基づいて車体座標系における作業点の現在位置の座標を演算する。複数の第1パラメータは、ブームとアームと作業具との寸法と揺動角とを示す。車体座標系は、車体に含まれる所定位置を原点とする座標系である。現在位置演算部は、作業点の現在位置の車体座標系における座標と、第2パラメータと、位置検出部が検出した位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標とに基づいて、作業点の現在位置のグローバル座標系における座標を演算する。第2パラメータは、位置検出部と車体座標系における原点との位置関係を示す。油圧ショベルの較正システムは、入力部をさらに備える。入力部には、基準位置情報が入力される。基準位置情報は、油圧ショベルの外部に位置する所定の基準位置のグローバル座標系における座標を示す。較正演算部は、作業点が所定の基準位置に位置している状態で座標検出部によって検出された作業点のグローバル座標系における位置座標と、基準位置情報とに基づいて、第2パラメータの較正値を演算する。
【0009】
本発明の第3の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第1又は第2の態様の油圧ショベルの較正システムであって、車体は運転室を有する。形状検出部は、運転室に取り付けられている。形状検出部は、所定の検出範囲内を移動する作業具の形状を検出する。所定の検出範囲は運転室の前方に位置する。座標検出部は、作業具が検出範囲内を移動している間に、作業点の複数の位置での位置座標を検出する。
【0010】
本発明の第4の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第3の態様の油圧ショベルの較正システムであって、形状検出部は、運転室の室内に取り付けられている。
【0011】
本発明の第5の態様に係る油圧ショベルの較正システムは、第1から第4の態様のいずれかの油圧ショベルの較正システムであって、較正演算部は、数値解析によりパラメータの較正値を演算する。
【0012】
本発明の第6の態様に係る油圧ショベルの較正方法は、油圧ショベルにおいて、複数のパラメータを較正するための較正方法である。油圧ショベルは、車体と、作業機と、角度検出部と、現在位置演算部とを含む。作業機は、ブームと、アームと、作業具とを含む。ブームは、車体に揺動可能に取り付けられる。アームは、ブームに揺動可能に取り付けられる。作業具は、アームに揺動可能に取り付けられる。角度検出部は、車体に対するブームの揺動角と、ブームに対するアームの揺動角と、アームに対する作業具の揺動角とを検出する。現在位置演算部は、複数のパラメータに基づいて作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する。複数のパラメータは、ブームとアームと作業具との寸法と揺動角とを示す。較正方法は、次のステップを備える。第1ステップでは、形状検出部が、作業具の形状を検出する。形状検出部は、車体に取り付けられている。第2ステップでは、第1ステップにおいて検出された作業具の形状から作業点の位置を認識して作業点の位置座標を検出する。第3ステップでは、作業点位置情報に基づいて、パラメータの較正値を演算する。作業点位置情報は、第2ステップにおいて検出された複数の位置での作業点の位置座標を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、形状検出部によって作業具の形状が検出される。また、座標検出部によって、作業具の形状から作業点の位置が認識され、作業点の位置座標が検出される。そして、検出された作業点の複数の位置での位置座標に基づいて、パラメータの較正値が演算される。このため、パラメータの値をメジャーテープなどの測定手段によって実測する必要がない。或いは、実測が必要なパラメータの数を低減することができる。また、位置座標の実測値と計算値とが一致するまでパラメータの値の合わせ込みを行う必要がない。これにより、第1の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、作業点の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
本発明の第2の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、作業点が所定の基準位置に位置している状態で座標検出部によって検出された作業点のグローバル座標系における位置座標と、基準位置情報とに基づいて、第2パラメータの較正値が演算される。基準位置情報については、所定の基準位置のグローバル座標系における座標を予め外部装置によって計測しておくことによって、精度の高い値を得ることができる。このため、第2パラメータの較正値を精度よく演算することができる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、座標検出部は、作業具が検出範囲内を移動している間に、作業点の複数の位置での位置座標を検出する。このため、オペレータが作業機を操作している間に自動的に作業点の複数の位置での位置座標が検出される。或いは、作業機が自動制御によって移動している間に、自動的に作業点の複数の位置での位置座標が検出される。このため、作業点の複数の位置での位置座標を容易に取得することができる。
【0016】
本発明の第4の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、形状検出部が運転室の室内に取り付けられているため、形状検出部が外部からの衝撃によって適正な位置からずれる恐れが少ない。このため、座標検出部が検出する作業点の位置座標の信頼性が高い。
【0017】
本発明の第5の態様に係る油圧ショベルの較正システムでは、数値解析によりパラメータの較正値が演算される。これにより、パラメータの較正値を容易に演算することができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る油圧ショベルの較正方法では、形状検出部によって作業具の形状が検出される。また、形状検出部によって検出された作業具の形状から作業点の位置が認識され、作業点の位置座標が検出される。そして、検出された作業点の複数の位置での位置座標に基づいて、パラメータの較正値が演算される。このため、パラメータの値をメジャーテープなどの測定手段によって実測する必要がない。或いは、実測が必要なパラメータの数を低減することができる。また、位置座標の実測値と計算値とが一致するまでパラメータの値の合わせ込みを行う必要がない。これにより、第6の態様に係る油圧ショベルの較正方法では、作業点の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの斜視図。
【図2】油圧ショベルの構成を模式的に示す図。
【図3】油圧ショベルが備える制御系の構成を示すブロック図。
【図4】設計地形の構成の一例を示す図。
【図5】案内画面の一例を示す図。
【図6】パラメータのリストを示す図。
【図7】ブームの側面図。
【図8】アームの側面図。
【図9】バケット及びアームの側面図。
【図10】バケットの側面図。
【図11】シリンダの長さを示すパラメータの演算方法を示す図。
【図12】運転室の斜視図
【図13】較正システムの操作画面の一例を示す図。
【図14】較正システムの較正に係わる処理機能を示す機能ブロック図。
【図15】オペレータが較正時に行う作業手順を示すフローチャート。
【図16】第1作業点位置情報の検出方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.構成
1−1.油圧ショベルの全体構成
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの較正システム及び較正方法について説明する。図1は、較正システムによる較正が実施される油圧ショベル100の斜視図である。油圧ショベル100は、車体1と作業機2とを有する。車体1は、旋回体3と運転室4と走行体5とを有する。旋回体3は、走行体5に旋回可能に取り付けられている。旋回体3は、油圧ポンプ37(図3参照)や図示しないエンジンなどの装置を収容している。運転室4は旋回体3の前部に載置されている。運転室4内には、後述する表示入力装置38及び操作装置25が配置される(図3参照)。走行体5は履帯5a,5bを有しており、履帯5a,5bが回転することにより油圧ショベル100が走行する。
【0021】
作業機2は、車体1の前部に取り付けられており、ブーム6とアーム7とバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して車体1の前部に揺動可能に取り付けられている。すなわち、ブームピン13は、ブーム6の旋回体3に対する揺動中心に相当する。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に揺動可能に取り付けられている。すなわち、アームピン14は、アーム7のブーム6に対する揺動中心に相当する。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が揺動可能に取り付けられている。すなわち、バケットピン15は、バケット8のアーム7に対する揺動中心に相当する。
【0022】
図2は、油圧ショベル100の構成を模式的に示す図である。図2(a)は油圧ショベル100の側面図である。図2(b)は油圧ショベル100の背面図である。図2(c)は油圧ショベル100の上面図である。図2(a)に示すように、ブーム6の長さ、すなわち、ブームピン13とアームピン14との間の長さは、L1である。アーム7の長さ、すなわち、アームピン14とバケットピン15との間の長さは、L2である。バケット8の長さ、すなわち、バケットピン15とバケット8の刃先Pとの間の長さは、L3である。
【0023】
図1に示すブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ油圧によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10の基端部は、ブームシリンダフートピン10aを介して旋回体3に揺動可能に取り付けられている。また、ブームシリンダ10の先端部は、ブームシリンダトップピン10bを介してブーム6に揺動可能に取り付けられている。ブームシリンダ10は、油圧によって伸縮することによって、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11の基端部は、アームシリンダフートピン11aを介してブーム6に揺動可能に取り付けられている。また、アームシリンダ11の先端部は、アームシリンダトップピン11bを介してアーム7に揺動可能に取り付けられている。アームシリンダ11は、油圧によって伸縮することによって、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12の基端部は、バケットシリンダフートピン12aを介してアーム7に揺動可能に取り付けられている。また、バケットシリンダ12の先端部は、バケットシリンダトップピン12bを介して第1リンク部材47の一端及び第2リンク部材48の一端に揺動可能に取り付けられている。第1リンク部材47の他端は、第1リンクピン47aを介してアーム7の先端部に揺動可能に取り付けられている。第2リンク部材48の他端は、第2リンクピン48aを介してバケット8に揺動可能に取り付けられている。バケットシリンダ12は、油圧によって伸縮することによって、バケット8を駆動する。
【0024】
図3は、油圧ショベル100が備える制御系の構成を示すブロック図である。ブーム6とアーム7とバケット8には、それぞれ第1〜第3角度検出部16−18が設けられている。第1〜第3角度検出部16−18は、ストロークセンサであり、各シリンダ10−12のストローク長さを検出することにより、車体1に対するブーム6の揺動角と、ブーム6に対するアーム7の揺動角と、アーム7に対するバケット8の揺動角とを間接的に検出する。具体的には、第1角度検出部16は、ブームシリンダ10のストローク長さを検出する。後述する表示コントローラ39は、第1角度検出部16が検出したブームシリンダ10のストローク長さから、図2(a)に示す車体座標系のz軸に対するブーム6の揺動角αを演算する。第2角度検出部17は、アームシリンダ11のストローク長さを検出する。表示コントローラ39は、第2角度検出部17が検出したアームシリンダ11のストローク長さから、ブーム6に対するアーム7の揺動角βを演算する。第3角度検出部18は、バケットシリンダ12のストローク長さを検出する。表示コントローラ39は、第3角度検出部18が検出したバケットシリンダ12のストローク長さから、アーム7に対するバケット8の揺動角γを演算する。揺動角α,β,γの演算方法については後に詳細に説明する。
【0025】
図2(a)に示すように、車体1には、位置検出部19が取り付けられている。位置検出部19は、位置検出部19の現在位置のグローバル座標系における座標を検出する。すなわち、位置検出部19は、油圧ショベル100の車体1の現在位置を検出する。具体的には、位置検出部19は、図1に示すRTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう。)用の2つのアンテナ21,22と、図2(a)に示す3次元位置センサ23とを有する。アンテナ21,22は、後述する車体座標系xm−ym−zmのym軸(図2(c)参照)に沿って一定距離だけ離間して配置されている。アンテナ21,22で受信されたGNSS電波に応じた信号は3次元位置センサ23に入力される。3次元位置センサ23は、アンテナ21,22のグローバル座標系における現在位置を検出する。なお、グローバル座標系は、GNSSによって計測される座標系であり、地球に固定された原点を基準とした座標系である。これに対して、後述する車体座標系は、車体1(具体的には旋回体3)に固定された原点を基準とする座標系である。アンテナ21(以下、「基準アンテナ21」と呼ぶ)は、車体1の現在位置を検出するためのアンテナである。アンテナ22(以下、「方向アンテナ22」と呼ぶ)は、車体1(具体的には旋回体3)の向きを検出するためのアンテナである。位置検出部19は、基準アンテナ21と方向アンテナ22との位置によって、後述する車体座標系のxm軸のグローバル座標系での方向角を検出する。なお、アンテナ21,22は、GPS用のアンテナであってもよい。
【0026】
車体1には、車体傾斜角度検出部が備えられている。車体傾斜角度検出部は、作業機2の鉛直方向に対する傾斜角を検出する。具体的には、図3に示すように、車体1には、ロール角センサ24と、ピッチ角センサ29とが備えられている。ロール角センサ24は、図2(b)に示すように、重力方向(鉛直線)に対する車体1の幅方向の傾斜角θ1(以下、「ロール角θ1」と呼ぶ)を検出する。なお、本実施形態において、幅方向とは、バケット8の幅方向を意味しており、車幅方向と一致している。ただし、作業機2が後述するチルトバケットを備える場合には、バケット8の幅方向と車幅方向とが一致しないことがあり得る。ピッチ角センサ29は、図2(a)に示すように、重力方向に対する車体1の前後方向の傾斜角θ2(以下、「ピッチ角θ2」と呼ぶ)を検出する。
【0027】
図3に示すように、油圧ショベル100は、操作装置25と、作業機コントローラ26と、作業機制御装置27と、油圧ポンプ37と、を備える。操作装置25は、作業機操作部材31と、作業機操作検出部32と、走行操作部材33と、走行操作検出部34と、旋回操作部材51と、旋回操作検出部52とを有する。作業機操作部材31は、オペレータが作業機2を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。作業機操作検出部32は、作業機操作部材31の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。走行操作部材33は、オペレータが油圧ショベル100の走行を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。走行操作検出部34は、走行操作部材33の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。旋回操作部材51は、オペレータが旋回体3の旋回を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。旋回操作検出部52は、旋回操作部材51の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。
【0028】
作業機コントローラ26は、RAMやROMなどの記憶部35や、CPUなどの演算部36を有している。作業機コントローラ26は、主として作業機2の動作及び旋回体3の旋回の制御を行う。作業機コントローラ26は、作業機操作部材31の操作に応じて作業機2を動作させるための制御信号を生成して、作業機制御装置27に出力する。作業機制御装置27は、比例制御弁などの油圧制御機器を有している。作業機制御装置27は、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて、油圧ポンプ37から油圧シリンダ10−12に供給される作動油の流量を制御する。油圧シリンダ10−12は、作業機制御装置27から供給された作動油に応じて駆動される。これにより、作業機2が動作する。また、作業機コントローラ26は、旋回操作部材51の操作に応じて旋回体3を旋回させるための制御信号を生成して、旋回モータ49に出力する。これにより、旋回モータ49が駆動され、旋回体3が旋回する。
【0029】
1−2.表示システム28の構成
油圧ショベル100には、表示システム28が搭載されている。表示システム28は、作業エリア内の地面を掘削して後述する設計面のような形状に形成するための情報をオペレータに提供するためのシステムである。表示システム28は、表示入力装置38と、表示コントローラ39とを有している。
【0030】
表示入力装置38は、タッチパネル式の入力部41と、LCDなどの表示部42とを有する。表示入力装置38は、掘削を行うための情報を提供するための案内画面を表示する。また、案内画面には、各種のキーが表示される。オペレータは、案内画面上の各種のキーに触れることにより、表示システム28の各種の機能を実行させることができる。案内画面については後に詳細に説明する。
【0031】
表示コントローラ39は、表示システム28の各種の機能を実行する。表示コントローラ39と作業機コントローラ26とは、無線あるいは有線の通信手段により互いに通信可能となっている。表示コントローラ39は、RAMやROMなどの記憶部43と、CPUなどの演算部44とを有している。演算部44は、記憶部43に記憶されている各種のデータと、位置検出部19の検出結果とに基づいて、案内画面を表示するための各種の演算を実行する。
【0032】
表示コントローラ39の記憶部43には、設計地形データが予め作成されて記憶されている。設計地形データは、3次元の設計地形の形状及び位置に関する情報である。設計地形は、作業対象となる地面の目標形状を示す。表示コントローラ39は、設計地形データや上述した各種のセンサからの検出結果などのデータに基づいて、案内画面を表示入力装置38に表示させる。具体的には、図4に示すように、設計地形は、三角形ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の設計面45によって構成されている。なお、図4では複数の設計面のうちの一部のみに符号45が付されており、他の設計面の符号は省略されている。オペレータは、これらの設計面45のうちの1つ、或いは、複数の設計面45を目標面70として選択する。表示コントローラ39は、目標面70の位置をオペレータに知らせるための案内画面を表示入力装置38に表示させる。
【0033】
2.案内画面
以下、案内画面について詳細に説明する。案内画面は、目標面70とバケット8の刃先との位置関係を示し、作業対象である地面が目標面70と同じ形状になるように油圧ショベル100の作業機2を誘導するための画面である。
【0034】
2−1.案内画面の構成
図5に案内画面53を示す。案内画面53は、作業エリアの設計地形と油圧ショベル100の現在位置とを示す上面図53aと、目標面70と油圧ショベル100との位置関係を示す側面図53bとを含む。
【0035】
案内画面53の上面図53aは、複数の三角形ポリゴンによって上面視による設計地形を表現している。より具体的には、上面図53aは、油圧ショベル100の旋回平面を投影面として設計地形を表現している。従って、上面図53aは、油圧ショベル100の真上から見た図であり、油圧ショベル100が傾いたときには設計面45が傾くことになる。また、複数の設計面45から選択された目標面70は、他の設計面45と異なる色で表示される。なお、図5では、油圧ショベル100の現在位置が上面視による油圧ショベルのアイコン61で示されているが、他のシンボルによって示されてもよい。また、上面図53aは、油圧ショベル100を目標面70に対して正対させるための情報を含んでいる。油圧ショベル100を目標面70に対して正対させるための情報は、正対コンパス73として表示される。正対コンパス73は、目標面70に対する正対方向と油圧ショベル100を旋回させるべき方向とを示すアイコンである。オペレータは、正対コンパス73により、目標面70への正対度を確認することができる。
【0036】
案内画面53の側面図53bは、目標面70とバケット8の刃先との位置関係を示す画像と、目標面70とバケット8の刃先との間の距離を示す距離情報88とを含む。具体的には、側面図53bは、設計面線81と、目標面線82と、側面視による油圧ショベル100のアイコン75とを含む。設計面線81は、目標面70以外の設計面45の断面を示す。目標面線82は目標面70の断面を示す。設計面線81と目標面線82とは、図4に示すように、バケット8の刃先の幅方向における中点P(以下、単に「バケット8の刃先」と呼ぶ)の現在位置を通る平面77と設計面45との交線80を演算することにより求められる。バケット8の刃先の現在位置を演算する方法については後に詳細に説明する。
【0037】
以上のように、案内画面53では、設計面線81と、目標面線82と、バケット8を含む油圧ショベル100と、の相対位置関係が画像によって表示される。オペレータは、目標面線82に沿ってバケット8の刃先を移動させることによって、現在の地形が設計地形になるように、容易に掘削することができる。
【0038】
2−2.刃先位置の演算方法
次に、上述したバケット8の刃先位置の演算方法について詳細に説明する。表示コントローラ39の演算部44は、位置検出部19の検出結果、及び、記憶部43に記憶されている複数のパラメータに基づいて、バケット8の刃先の現在位置を演算する。図6に、記憶部43に記憶されているパラメータのリストを示す。パラメータは、作業機パラメータと、アンテナパラメータとを含む。作業機パラメータは、ブーム6とアーム7とバケット8との寸法と揺動角とを示す複数のパラメータを含む。すなわち、作業機パラメータは、本発明の第1パラメータに相当する。アンテナパラメータは、アンテナ21,22と後述する車体座標系の原点との位置関係を示す複数のパラメータを含む。すなわち、アンテナパラメータは、本発明の第2パラメータに相当する。図3に示すように、表示コントローラ39の演算部44は、第1現在位置演算部44aと、第2現在位置演算部44bとを有する。第1現在位置演算部44aは、作業機パラメータに基づいて、バケット8の刃先の車体座標系における現在位置を演算する。第2現在位置演算部44bは、アンテナパラメータと、位置検出部19が検出したアンテナ21,22のグローバル座標系における現在位置の座標と、第1現在位置演算部44aが演算したバケット8の刃先の車体座標系における現在位置の座標とから、バケット8の刃先のグローバル座標系における現在位置の座標を演算する。具体的には、バケット8の刃先の現在位置の座標は、次のように求められる。
【0039】
まず、図2に示すように、ブームピン13の軸と後述する作業機2の動作平面との交点を原点とする車体座標系xm−ym−zmを設定する。なお、以下の説明においてブームピン13の位置は、ブームピン13の車幅方向における中点の位置を意味するものとする。また、第1〜第3角度検出部16−18の検出結果から、上述したブーム6、アーム7、バケット8の現在の揺動角α、β、γが演算される。揺動角α、β、γの演算方法については後述する。車体座標系でのバケット8の刃先の座標(xm,ym,zm)は、ブーム6、アーム7、バケット8の揺動角α、β、γと、ブーム6、アーム7、バケット8の長さL1、L2、L3とを用いて、以下の数1式により演算される。
【0040】
【数1】
【0041】
また、数1から求められた車体座標系でのバケット8の刃先の座標(xm,ym,zm)は、以下の数2式により、グローバル座標系での座標(X,Y,Z)に変換される。
【0042】
【数2】
【0043】
ただし、ω,ψ,κは以下のように表される。
【0044】
【0045】
ここで、上述したとおり、θ1はロール角である。θ2はピッチ角である。また、θ3は、Yaw角であり、上述した車体座標系のxm軸のグローバル座標系での方向角である。従って、Yaw角θ3は、位置検出部19によって検出された基準アンテナ21と方向アンテナ22との位置に基づいて演算される。(A,B,C)は、車体座標系の原点のグローバル座標系での座標である。上述したアンテナパラメータは、アンテナ21,22と車体座標系の原点との位置関係、すなわち、アンテナ21,22とブームピン13の車幅方向における中点との位置関係を示す。具体的には、図2(b)及び図2(c)に示すように、アンテナパラメータは、ブームピン13と基準アンテナ21との間の車体座標系のxm軸方向の距離Lbbxと、ブームピン13と基準アンテナ21との間の車体座標系のym軸方向の距離Lbbyと、ブームピン13と基準アンテナ21との間の車体座標系のzm軸方向の距離Lbbzとを含む。また、アンテナパラメータは、ブームピン13と方向アンテナ22との間の車体座標系のxm軸方向の距離Lbdxと、ブームピン13と方向アンテナ22との間の車体座標系のym軸方向の距離Lbdyと、ブームピン13と方向アンテナ22との間の車体座標系のzm軸方向の距離Lbdzとを含む。(A,B,C)は、アンテナ21,22が検出したグローバル座標系におけるアンテナ21,22の座標と、アンテナパラメータとに基づいて、演算される。
【0046】
図4に示すように、表示コントローラ39は、上記のように演算したバケット8の刃先Pの現在位置と、記憶部43に記憶された設計地形データとに基づいて、3次元設計地形とバケット8の刃先を通る平面77との交線80を演算する。そして、表示コントローラ39は、この交線80のうち目標面70を通る部分を上述した目標面線82として演算する。この交線80のうち目標面線82以外の部分を設計面線81として演算する。
【0047】
2−3.揺動角α、β、γの演算方法
次に、第1〜第3角度検出部16−18の検出結果から、ブーム6、アーム7、バケット8の現在の揺動角α、β、γを演算する方法について説明する。
【0048】
図7は、ブーム6の側面図である。ブーム6の揺動角αは、図7に示されている作業機パラメータを用いて、以下の数3式によって表される。
【0049】
【数3】
【0050】
図7に示すように、Lboom2_xは、ブームシリンダフートピン10aとブームピン13との間のブーム6が取り付けられる車体2の水平方向(すなわち車体座標系のxm軸方向に相当する)の距離である。Lboom2_zは、ブームシリンダフートピン10aとブームピン13との間のブーム6が取り付けられる車体2の鉛直方向(すなわち車体座標系のzm軸方向に相当する)の距離である。Lboom1は、ブームシリンダトップピン10bとブームピン13との間の距離である。Lboom2は、ブームシリンダフートピン10aとブームピン13との間の距離である。boom_cylは、ブームシリンダフートピン10aとブームシリンダトップピン10bとの間の距離である。Lboom1_zは、ブームシリンダトップピン10bとブームピン13との間のzboom軸方向の距離である。なお、側面視においてブームピン13とアームピン14とを結ぶ方向をxboom軸とし、xboom軸に垂直な方向をzboom軸とする。Lboom1_xは、ブームシリンダトップピン10bとブームピン13との間のxboom軸方向の距離である。
【0051】
図8は、アーム7の側面図である。アーム7の揺動角βは、図7及び図8に示されている作業機パラメータを用いて、以下の数4式によって表される。
【0052】
【数4】
【0053】
図7に示すように、Lboom3_zは、アームシリンダフートピン11aとアームピン14との間のzboom軸方向の距離である。Lboom3_xは、アームシリンダフートピン11aとアームピン14との間のxboom軸方向の距離である。Lboom3は、アームシリンダフートピン11aとアームピン14との間の距離である。図8に示すように、Larm2は、アームシリンダトップピン11bとアームピン14との間の距離である。図7に示すように、arm_cylは、アームシリンダフートピン11aとアームシリンダトップピン11bとの間の距離である。図8に示すように、Larm2_xは、アームシリンダトップピン11bとアームピン14との間のxarm2軸方向の距離である。Larm2_zは、アームシリンダトップピン11bとアームピン14との間のzarm2軸方向の距離である。なお、側面視においてアームシリンダトップピン11bとバケットピン15とを結ぶ方向をxarm2軸とし、xarm2軸に垂直な方向をzarm2軸とする。Larm1_xは、アームピン14とバケットピン15との間のxarm2軸方向の距離である。Larm1_zは、アームピン14とバケットピン15との間のzarm2軸方向の距離である。また、側面視においてアームピン14とバケットピン15とを結ぶ方向をxarm1軸とする。アーム7の揺動角βは、xmboom軸とxarm1軸との間のなす角である。
【0054】
図9は、バケット8及びアーム7の側面図である。図10は、バケット8の側面図である。バケット8の揺動角γは、図8から図10に示されている作業機パラメータを用いて、以下の数5式によって表される。
【0055】
【数5】
【0056】
図8に示すように、Larm3_z2は、第1リンクピン47aとバケットピン15との間のzarm2軸方向の距離である。Larm3_x2は、第1リンクピン47aとバケットピン15との間のxarm2軸方向の距離である。図9に示すように、Ltmpは、バケットシリンダトップピン12bとバケットピン15との間の距離である。Larm4は、第1リンクピン47aとバケットピン15との間の距離である。Lbucket1は、バケットシリンダトップピン12bと第1リンクピン47aとの間の距離である。Lbucket3は、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間の距離である。Lbucket2は、バケットシリンダトップピン12bと第2リンクピン48aとの間の距離である。図10に示すように、Lbucket4_xは、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のxbucket軸方向の距離である。Lbucket4_zは、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のzbucket軸方向の距離である。なお、側面視においてバケットピン15とバケット8の刃先Pとを結ぶ方向をxbucket軸とし、xbucket軸に垂直な方向をzbucket軸とする。バケット8の揺動角γは、xbucket軸とxarm1軸との間のなす角である。上述したLtmpは以下の数6式によって表される。
【0057】
【数6】
【0058】
なお、図8に示すように、Larm3は、バケットシリンダフートピン12aと第1リンクピン47aトの間の距離である。Larm3_x1は、バケットシリンダフートピン12aとバケットピン15との間のxarm2軸方向の距離である。Larm3_z1は、バケットシリンダフートピン12aとバケットピン15との間のzarm2軸方向の距離である。
【0059】
また、上述したboom_cylは、図11に示すように、第1角度検出部16が検出したブームシリンダ10のストローク長bssにブームシリンダオフセットboftを加えた値である。同様に、arm_cylは、第2角度検出部17が検出したアームシリンダ11のストローク長assにアームシリンダオフセットaoftを加えた値である。同様に、bucket_cylは、第3角度検出部18が検出したバケットシリンダ12のストローク長bkssにバケットシリンダ12の最小距離を含んだバケットシリンダオフセットbkoftを加えた値である。
【0060】
3.較正システム50
較正システム50は、油圧ショベル100において、上述した揺動角α,β,γの演算、及び、バケット8の刃先の位置を演算するために必要なパラメータを較正するためのシステムである。図3に示すように、較正システム50は、形状検出部54と較正装置60とを有する。
【0061】
形状検出部54は、ステレオカメラである。形状検出部54は、車体1に取り付けられている。具体的には、形状検出部54は、旋回体3に取り付けられている。図12は、運転室4の斜視図である。図12に示すように、形状検出部54は、運転室4に取り付けられている。さらに具体的には、形状検出部54は、運転室4の室内に取り付けられている。形状検出部54は、第1カメラ部54aと第2カメラ部54bとを有する。第1カメラ部54aと第2カメラ部54bとは、それぞれ図示しないレンズ機構やシャッター機構などを有する。第1カメラ部54aと第2カメラ部54bとは、運転室4内において車幅方向に間隔を空けて配置されている。形状検出部54は、運転室4の前窓4aの上部の後方に配置されている。形状検出部54は、運転室4の前方に位置する所定の検出範囲A1(図16参照)内を移動するバケット8の3次元的な形状及び位置を検出する。
【0062】
較正装置60は、有線または無線によって表示コントローラ39とデータ通信を行うことができる。較正装置60は、形状検出部54によって計測された形状情報に基づいて図6に示すパラメータの較正を行う。パラメータの較正は、例えば、油圧ショベル100の出荷時やメンテナンス後の初期設定において実行される。図3に示すように、較正装置60は、入力部63と、記憶部67と、表示部64と、演算部65とを有する。
【0063】
入力部63は、パラメータの較正処理に必要な情報が入力される部分である。入力部63は、オペレータが上述した情報を手入力するための構成を備えており、例えば複数のキーを有する。入力部63は、数値の入力が可能であればタッチパネル式のものであってもよい。表示部64は、例えばLCDであり、較正を行うための操作画面が表示される部分である。図13は、較正装置60の操作画面の一例を示す。操作画面には、上述した情報を入力するための入力欄66が表示される。オペレータは、入力部63を操作することにより、操作画面の入力欄66に上述した情報を入力する。記憶部67は、RAMやROMなどのメモリによって構成されている。記憶部67は、パラメータの較正処理に必要な各種の情報を記憶する。記憶部67は、入力部63を介して入力された情報を記憶する。
【0064】
演算部65は、入力部63を介して入力された情報に基づいて、パラメータの較正処理を実行する。図14は、演算部65の較正に係わる処理機能を示す機能ブロック図である。演算部65は、座標検出部65aと、座標変換部65bと、第1較正演算部65cと、第2較正演算部65dとの各機能を有している。オペレータが較正装置60に較正処理の実行を指示すると、較正装置60は図15に示すフローチャートに基づいて、パラメータの較正処理を実行する。以下、図14及び図15に基づいてパラメータの較正処理について説明する。
【0065】
まず、図15に示すステップS1において、バケット8の形状が検出される。ここでは、図14に示すように、形状検出部54が形状情報を検出する。形状情報は、バケット8の形状及び位置を示す情報である。形状検出部54は次のようにして形状情報を検出する。図16は、運転室4内のオペレータから見た運転4の前方の視界を示している。図16に示すように、オペレータは、作業機操作部材31を操作して、バケット8の刃先を基準杭91の上端部に向けて移動させる。このとき、旋回体3は旋回させずに走行体5に対して固定された状態を維持する。バケット8の刃先が基準杭91に向けて移動している間に、バケット8の刃先は、形状検出部54の検出範囲A1内を通過する。バケット8の刃先が形状検出部54の検出範囲A1内を通過している間、形状検出部54はバケット8を撮影して、形状情報を取得する。すなわち、形状情報は、バケット8を含む画像情報である。形状情報は、形状検出部54の検出範囲A1内の異なる位置でのバケット8の画像情報を含む。
【0066】
次に、ステップS2において、第1作業点位置情報が検出される。ここでは、図14に示すように、座標検出部65aが、形状検出部54が検出した形状情報から第1作業点位置情報を検出する。具体的には、座標検出部65aは、形状情報からバケット8の刃先の位置を認識する。そして、座標検出部65aは、認識したバケット8の刃先の位置に基づいて刃先の位置座標を検出する。より具体的には、座標検出部65aは、形状検出部54が撮影したバケット8を含む画像を解析することにより、バケット8の刃先の位置座標を演算する。座標検出部65aは、バケット8が形状検出部54の検出範囲A1内を移動している間に、刃先の複数の位置での位置座標を第1作業点位置情報として検出する。例えば、図16に示すように、バケット8の刃先の第1位置P1〜第5位置P5での座標が、第1作業点位置情報として検出される。
【0067】
ステップS3において、第2作業点位置情報が検出される。ここでは、図14に示すように、座標検出部65aが、形状検出部54が検出した形状情報から第2作業点位置情報を検出する。具体的には、座標検出部65aは、形状検出部54が検出した形状情報からバケット8の刃先の位置を認識する。特に、図16に示すように、バケット8の刃先の規準位置P0での座標が、第2作業点位置情報として検出される。すなわち、第2作業点位置情報は、バケット8の刃先が基準位置P0に位置している状態で座標検出部65aによって検出された座標である。基準位置P0は、基準杭91の上端部に位置している。なお、図16において、8’は、バケット8の刃先が規準位置P0に位置している状態を示している。
【0068】
ステップS4において、第1作業点位置情報及び第2作業点位置情報が車体座標系に変換される。図14に示すように、座標検出部65aによって検出された第1作業点位置情報及び第2作業点位置情報は、形状検出部54によって検出された形状情報に基づいて演算されているため、形状検出部54の座標系xc−yc−zcを基準とした座標である。このため、座標変換部65bは、座標変換情報を用いて、第1作業点位置情報及び第2作業点位置情報を、形状検出部54の座標系xc−yc−zcから車体座標系xm−ym−zmに変換する。座標変換情報は、形状検出部54の座標系xc−yc−zcの座標を車体座標系xm−ym−zmの座標に変換するための情報である。具体的には、座標変換情報は、回転行列Rと並進行列Hとを含む。回転行列Rと並進行列Hとは、形状検出部54の取付位置及び取付姿勢などから予め演算される。座標変換情報は、例えば油圧ショベル100の出荷時に入力部63に入力されて、記憶部67に保存されている。座標変換部65bは、以下の数7式により、形状検出部54の座標系xc−yc−zcの座標を車体座標系xm−ym−zmの座標に変換する。
【0069】
【数7】
【0070】
次に、ステップS5において、作業機パラメータの較正値が演算される。ここでは図14に示すように、第1較正演算部65cが、車体座標系に変換された第1作業点位置情報に基づいて、数値解析を用いることにより、作業機パラメータの較正値を演算する。具体的には、第1較正演算部65cは、以下の数8式に示すように、最小二乗法により作業機パラメータの較正値を演算する。
【0071】
【数8】
【0072】
上記のkの値は、第1作業点位置情報の第1位置P1から第5位置P5に相当する。従って、n=5である。(x1,z1)は、車体座標系での第1位置P1の座標である。(x2,z2)は、車体座標系での第2位置P2の座標である。(x3,z3)は、車体座標系での第3位置P3の座標である。(x4,z4)は、車体座標系での第4位置P4の座標である。(x5,z5)は、車体座標系での第5位置P5の座標である。この数8式の関数Jが最小になる点を探索していることにより、作業機パラメータの較正値が演算される。具体的には図6のリストにおいてNo.1〜29の作業機パラメータの較正値が演算される。
【0073】
なお、図6のリストに含まれる作業機パラメータのうち、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のxbucket軸方向の距離Lbucket4_x、及び、バケットピン15と第2リンクピン48aとの間のzbucket軸方向の距離Lbucket4_zは、バケット情報として入力部63に入力された値が用いられる。バケット情報は、バケット8の寸法に関する情報である。オペレータは、設計値又はメジャーテープなどの計測手段によって計測した値を、バケット情報として入力部63に入力する。
【0074】
ステップS6において、アンテナパラメータの較正値が演算される。ここでは、図14に示すように、第2較正演算部65dが、基準位置情報と第2作業点位置情報とに基づいてアンテナパラメータを較正する。基準位置情報は、油圧ショベル100の外部に位置する所定の基準位置P0のグローバル座標系の座標を示す。具体的には、基準位置情報は、上述した基準杭91の上端部の位置のグローバル座標系の座標である。基準位置情報は、予め油圧ショベル100の外部のGNSS装置によって計測されている。基準位置P0は、例えば油圧ショベル100が使用される作業現場内に配置されている。基準位置情報は、例えば、油圧ショベル100が当該作業現場に搬送されたときに、入力部63に入力される(図13参照)。第2較正演算部65dは、車体座標系による第2作業点位置情報を、アンテナパラメータを用いてグローバル座標系に変換する。そして、第2較正演算部65dは、第2作業点位置情報として取得されたグローバル座標系による基準位置P0の座標と、基準位置情報として取得されたグローバル座標系による基準位置P0の座標との差を最小にするアンテナパラメータの補正量を、最小二乗法を用いて演算する。これにより、第2較正演算部65dは、アンテナパラメータの較正値を演算する。
【0075】
第1較正演算部65cによって演算された作業機パラメータと、第2較正演算部65dによって演算されたアンテナパラメータと、入力部63に入力されたバケット情報とは、表示コントローラ39の記憶部43に保存され、上述した刃先位置の演算に用いられる。
【0076】
4.特徴
本実施形態に係る油圧ショベル100の較正システム50は、以下のような特徴を有する。
【0077】
形状検出部54および座標検出部65aによって検出されたバケット8の刃先の複数の位置P1−P5での座標に基づいて、パラメータの較正値が数値解析により自動的に演算される。このため、実測が必要なパラメータの数を低減することができる。また、較正時に、バケット8の刃先の位置座標の実測値と計算値とが一致するまでパラメータの値の合わせ込みを行う必要がない。これにより、本実施形態に係る油圧ショベル100の較正システム50では、刃先の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を大幅に短縮することができる。
【0078】
本実施形態に係る油圧ショベル100では、シリンダのストローク長からブーム6とアーム7とバケット8との揺動角α、β、γを演算している。この場合、角度センサによって揺動角を演算する場合と比べて、演算に必要なパラメータが多くなる。このため、全てのパラメータをメジャーテープなどの測定手段によって測定する場合には、較正作業時間が増大してしまう。しかし、本実施形態に係る油圧ショベル100の較正システム50では、パラメータが数値解析により自動的に演算されるため、パラメータの数が多くなっても、較正作業時間の増大を抑えることができる。
【0079】
バケット8の刃先の複数の位置P1−P5での座標は、形状検出部54がバケット8を撮影して、座標検出部65aが撮影された画像を解析することによって、自動的に検出される。作業機2の寸法をメジャーテープを用いて計測する場合と異なり、オペレータが、作業機2に触れる必要ない。従って、安全にパラメータの較正を行うことができる。また、形状検出部54が、移動中のバケット8を撮影することにより、バケット8の刃先の複数の位置P1−P5を連続的に検出することができる。このため、バケット8の刃先の位置P1−P5を検出するためにバケット8の動作を止める必要がない。従って、迅速にバケット8の刃先の複数の位置P1−P5での座標を検出することができる。さらに、人がバケット8の刃先の位置P1−P5を計測する場合と比べて、バケット8の刃先の位置P1−P5の検出精度が高い。このため、パラメータの較正を精度良く行うことができる。
【0080】
形状検出部54の車体座標系における正確な位置と姿勢とを事前に求めておくことにより、精度の高い座標変換情報を容易に取得することができる。また、座標変換情報は記憶部67に保存されているため、座標検出部65aによって検出された第1作業点位置情報と第2作業点位置情報とを車体座標系に瞬時に変換することができる。このため、座標検出部65aによってバケット8の刃先の全ての位置P1−P5,P0での座標の検出が完了したときに、作業機パラメータとアンテナパラメータとの較正を直ちに実施することができる。
【0081】
基準位置P0は、正確なグローバル座標系での座標が既知の点であればよい。このため、基準杭91を、設置の容易な安全な場所に設置することができる。
【0082】
5.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
上記の実施形態では、作業具としてバケット8が例示されているが、バケット8以外の作業具が用いられもよい。また、作業点としてバケット8の刃先が例示されているが、作業点はバケット8の刃先以外の部分であってもよい。また、バケット8以外の作業具が用いられる場合には、作業点は、作業具の先端に位置する点など、作業対象物と接触する部分であればよい。
【0084】
上記の実施形態ではブーム6、アーム7、バケット8の揺動角α、β、γは、シリンダのストローク長から演算されているが、傾斜計やIMU(Inertial Measurement Unit)などの角度センサによって直接的に検出されてもよい。この場合、上述した作業機パラメータの較正方法と同様の手法によって、角度センサの較正値が演算されてもよい。
【0085】
第1作業点位置情報は、上述した5つの位置の座標に限られない。第1作業点位置情報のバケット8の刃先の位置の数は、4点以下、或いは6点以上であってもよい。ただし、較正の精度を向上させる観点からは、第1作業点位置情報のバケット8の刃先の位置は、5つ以上であることが好ましい。また、較正時にオペレータが手動で作業機2を操作するのではなく、作業機2が自動で制御されることによって第1作業点位置情報が検出されてもよい。
【0086】
基準位置は1つに限らず、複数の基準位置が用いられてもよい。較正の精度を向上させる観点からは、複数の基準位置が較正に用いられることが好ましい。
【0087】
上記の実施形態では、形状検出部54はステレオカメラであるが、計測対象物の形状及び位置を検出する装置であれば3次元レーザースキャナなどの他の装置であってもよい。
【0088】
上記の実施形態では、較正装置60は、表示コントローラ39とは別の装置であるが、表示コントローラ39と一体化されてもよい。すなわち、表示コントローラ39が較正装置60の機能を有してもよい。
【0089】
第1較正演算部65cによって演算されるパラメータは、上記の実施形態で述べたパラメータに限られない。例えば、上述したバケット情報を含む全ての作業機パラメータが、演算によって求められてもよい。また、車体傾斜角度検出部によって検出される車体の傾斜角の較正値が演算によって求められてもよい。具体的には、上述した実施形態におけるロール角センサ24及び/又はピッチ角センサ29の出力の較正値が演算されてもよい。
【0090】
上記の実施形態では、最小二乗法によってパラメータの較正値が演算されている。しかし、最小二乗法に限らず他の数学的解法によって較正値が演算されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、作業点の位置検出の精度を向上させることができると共に、較正作業時間を短縮することができる油圧ショベルの較正システム及び較正方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
1・・・車体、2・・・作業機、4・・・運転室、6・・・ブーム、7・・・アーム、8・・・バケット(作業具)、10・・・ブームシリンダ、11・・・アームシリンダ、12・・・バケットシリンダ(作業具シリンダ)、16−18・・・角度検出部、19・・・位置検出部、44a,44b・・・現在位置演算部、50・・・較正システム、54・・・形状検出部、63・・・入力部、65a・・・座標検出部、65c,65d・・・較正演算部、100・・・油圧ショベル、α・・・ブームの揺動角、β・・・アームの揺動角、γ・・・バケットの揺動角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に揺動可能に取り付けられるブームと前記ブームに揺動可能に取り付けられるアームと前記アームに揺動可能に取り付けられる作業具とを含む作業機と、前記車体に対する前記ブームの揺動角と前記ブームに対する前記アームの揺動角と前記アームに対する前記作業具の揺動角とを検出する角度検出部と、前記ブームと前記アームと前記作業具との寸法と前記揺動角とを示す複数のパラメータに基づいて前記作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する現在位置演算部と、を含む油圧ショベルにおいて、前記パラメータを較正するための較正システムであって、
前記車体に取り付けられ、前記作業具の形状を検出する形状検出部と、
前記形状検出部が検出した前記作業具の形状から前記作業点の位置を認識して前記作業点の位置座標を検出する座標検出部と、
前記座標検出部によって検出された複数の位置での前記作業点の位置座標を示す作業点位置情報に基づいて、前記パラメータの較正値を演算する較正演算部と、
を備える油圧ショベルの較正システム。
【請求項2】
前記油圧ショベルは、前記車体に取り付けられる位置検出部をさらに備え、
前記位置検出部は、前記位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標を検出し、
前記現在位置演算部は、前記ブームと前記アームと前記作業具との寸法と前記揺動角とを示す複数の第1パラメータに基づいて前記車体に含まれる所定位置を原点とする車体座標系における前記作業点の現在位置の座標を演算し、
前記現在位置演算部は、前記車体座標系の原点と前記位置検出部との位置関係を示す第2パラメータと、前記作業点の現在位置の車体座標系における座標と、前記位置検出部が検出した前記位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標とに基づいて、前記作業点の現在位置のグローバル座標系における座標を演算し、
前記油圧ショベルの較正システムは、
前記油圧ショベルの外部に位置する所定の基準位置のグローバル座標系における座標を示す基準位置情報が入力される入力部をさらに備え、
前記較正演算部は、前記作業点が前記所定の基準位置に位置している状態で前記座標検出部によって検出された前記作業点のグローバル座標系における位置座標と、前記基準位置情報とに基づいて、前記第2パラメータの較正値を演算する、
請求項1に記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項3】
前記車体は運転室を有し、
前記形状検出部は、前記運転室に取り付けられており、前記運転室の前方に位置する所定の検出範囲内を移動する前記作業具の形状を検出し、
前記座標検出部は、前記作業具が前記検出範囲内を移動している間に、前記作業点の複数の位置での位置座標を検出する、
請求項1又は2に記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項4】
前記形状検出部は、前記運転室の室内に取り付けられている、
請求項3に記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項5】
前記較正演算部は、数値解析により前記パラメータの較正値を演算する、
請求項1から4のいずれかに記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項6】
車体と、前記車体に揺動可能に取り付けられるブームと前記ブームに揺動可能に取り付けられるアームと前記アームに揺動可能に取り付けられる作業具とを含む作業機と、前記車体に対する前記ブームの揺動角と前記ブームに対する前記アームの揺動角と前記アームに対する前記作業具の揺動角とを検出する角度検出部と、前記ブームと前記アームと前記作業具との寸法と前記揺動角とを示す複数のパラメータに基づいて前記作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する現在位置演算部と、を含む油圧ショベルにおいて、前記パラメータを較正するための較正方法であって、
前記車体に取り付けられた形状検出部が前記作業具の形状を検出するステップと、
検出された前記作業具の形状から前記作業点の位置を認識して前記作業点の位置座標を検出するステップと、
検出された複数の位置での前記作業点の位置座標を示す作業点位置情報に基づいて、前記パラメータの較正値を演算するステップと、
を備える油圧ショベルの較正方法。
【請求項1】
車体と、前記車体に揺動可能に取り付けられるブームと前記ブームに揺動可能に取り付けられるアームと前記アームに揺動可能に取り付けられる作業具とを含む作業機と、前記車体に対する前記ブームの揺動角と前記ブームに対する前記アームの揺動角と前記アームに対する前記作業具の揺動角とを検出する角度検出部と、前記ブームと前記アームと前記作業具との寸法と前記揺動角とを示す複数のパラメータに基づいて前記作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する現在位置演算部と、を含む油圧ショベルにおいて、前記パラメータを較正するための較正システムであって、
前記車体に取り付けられ、前記作業具の形状を検出する形状検出部と、
前記形状検出部が検出した前記作業具の形状から前記作業点の位置を認識して前記作業点の位置座標を検出する座標検出部と、
前記座標検出部によって検出された複数の位置での前記作業点の位置座標を示す作業点位置情報に基づいて、前記パラメータの較正値を演算する較正演算部と、
を備える油圧ショベルの較正システム。
【請求項2】
前記油圧ショベルは、前記車体に取り付けられる位置検出部をさらに備え、
前記位置検出部は、前記位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標を検出し、
前記現在位置演算部は、前記ブームと前記アームと前記作業具との寸法と前記揺動角とを示す複数の第1パラメータに基づいて前記車体に含まれる所定位置を原点とする車体座標系における前記作業点の現在位置の座標を演算し、
前記現在位置演算部は、前記車体座標系の原点と前記位置検出部との位置関係を示す第2パラメータと、前記作業点の現在位置の車体座標系における座標と、前記位置検出部が検出した前記位置検出部の現在位置のグローバル座標系における座標とに基づいて、前記作業点の現在位置のグローバル座標系における座標を演算し、
前記油圧ショベルの較正システムは、
前記油圧ショベルの外部に位置する所定の基準位置のグローバル座標系における座標を示す基準位置情報が入力される入力部をさらに備え、
前記較正演算部は、前記作業点が前記所定の基準位置に位置している状態で前記座標検出部によって検出された前記作業点のグローバル座標系における位置座標と、前記基準位置情報とに基づいて、前記第2パラメータの較正値を演算する、
請求項1に記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項3】
前記車体は運転室を有し、
前記形状検出部は、前記運転室に取り付けられており、前記運転室の前方に位置する所定の検出範囲内を移動する前記作業具の形状を検出し、
前記座標検出部は、前記作業具が前記検出範囲内を移動している間に、前記作業点の複数の位置での位置座標を検出する、
請求項1又は2に記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項4】
前記形状検出部は、前記運転室の室内に取り付けられている、
請求項3に記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項5】
前記較正演算部は、数値解析により前記パラメータの較正値を演算する、
請求項1から4のいずれかに記載の油圧ショベルの較正システム。
【請求項6】
車体と、前記車体に揺動可能に取り付けられるブームと前記ブームに揺動可能に取り付けられるアームと前記アームに揺動可能に取り付けられる作業具とを含む作業機と、前記車体に対する前記ブームの揺動角と前記ブームに対する前記アームの揺動角と前記アームに対する前記作業具の揺動角とを検出する角度検出部と、前記ブームと前記アームと前記作業具との寸法と前記揺動角とを示す複数のパラメータに基づいて前記作業具に含まれる作業点の現在位置を演算する現在位置演算部と、を含む油圧ショベルにおいて、前記パラメータを較正するための較正方法であって、
前記車体に取り付けられた形状検出部が前記作業具の形状を検出するステップと、
検出された前記作業具の形状から前記作業点の位置を認識して前記作業点の位置座標を検出するステップと、
検出された複数の位置での前記作業点の位置座標を示す作業点位置情報に基づいて、前記パラメータの較正値を演算するステップと、
を備える油圧ショベルの較正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−233353(P2012−233353A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103111(P2011−103111)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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