説明

油圧ショベル

【課題】製造コストが増大する問題や操作応答性を損なう問題を招来することなく、ポンプ駆動源のエネルギー消費量を低減する。
【解決手段】油圧ポンプ10の第1吐出口10aと旋回用油圧モータ20の第1吸込口20aとの間及び第2吐出口10bと第2吸込口20bとの間に、中立保持弁60の位置に関わらず油圧ポンプ10と旋回用油圧モータ20との間を接続し、かつ旋回用油圧モータ20から油圧ポンプ10への油の通過を阻止する給油チェック弁71A,71Bを有した給油通路70A,70Bを設け、中立保持弁60は、第1位置に配置されると第2吸込口20bから第2吐出口10bに向けた油の通過を許容するとともに、第1吸込口20aから第1吐出口10aに向けた油の通過を阻止し、第2位置に配置されると第1吸込口20aから第1吐出口10aに向けた油の通過を許容するとともに、第2吸込口20bから第2吐出口10bに向けた油の通過を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型油圧ポンプからの油の供給制御を行うことにより、旋回用油圧モータを第1回転方向及び第2回転方向に回転させるようにした旋回用油圧回路を備える油圧ショベルに関するもので、より詳細には、旋回用油圧モータの中立保持機能を有した旋回用油圧回路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回用油圧モータによって旋回体を旋回させるようにした油圧ショベルに対しては、油圧ポンプとして可変容量型のものを適用し、かつこれら油圧ポンプと旋回用油圧モータとの間を一対の主油通路によって閉回路を構成するようにした旋回用油圧回路が提供されている。この旋回用油圧回路では、油圧ポンプの傾転角を変更することにより、旋回用油圧モータで必要となるトルクや回転数を無段階で得ることができ、また旋回用油圧モータの回転方向を反転することも可能となる。
【0003】
この種の旋回用油圧回路では、油圧ポンプの傾転角がゼロの場合、つまり操作レバーが無操作状態にあると、油圧ポンプが停止されるため、旋回用油圧モータに油が供給されることはない。しかしながら、操作レバーが操作されていない状態においても、例えば油圧ショベルが坂道で停車している等、旋回体を旋回させようとする外力が加えられた場合には、旋回用油圧モータを停止させておくことが困難であり、旋回体に設けられた作業機が坂の下方に向かって旋回する恐れがある。このため、この種の旋回用油圧回路には、中立保持機能が設けられている場合が多い。
【0004】
例えば、特許文献1では、油圧ポンプと旋回用油圧モータとの間を接続する2つの主油通路にそれぞれチェック弁を有した中立保持ユニットを介在させ、操作レバーが無操作状態にある場合、旋回用油圧モータから油圧ポンプへの油の通過を阻止するようにしている。同様に、特許文献2では、油圧ポンプと旋回用油圧モータとの間を接続する2つの主油通路にチェック弁の機能を内蔵した中立保持弁を介在させ、操作レバーが無操作状態にある場合、チェック弁の機能によって旋回用油圧モータから油圧ポンプへの油の通過を阻止している。
【0005】
これらの先行技術によれば、操作レバーが無操作状態にある場合、チェック弁によって旋回用油圧モータから油圧ポンプへの油の通過が阻止されるため、旋回体を旋回させようとする外力が加えられた場合にも旋回用油圧モータを継続して停止状態に維持することができるようになる。
【0006】
ここで、中立状態から操作レバーを操作して油圧ポンプから旋回用油圧モータに対して油を供給する初期の段階では、主油通路においてチェック弁よりも旋回用油圧モータに近い側の圧力が、チェック弁よりも油圧ポンプに近い側の圧力よりも高い状態が起こり得る。このような場合には、主油通路の油が一旦油圧ポンプに向けて流れるため、旋回体が操作レバーの操作方向とは逆方向に旋回するという問題を招来することになる。具体的には、坂道の上方に向けて旋回体を旋回させるように操作レバーを操作した場合にも、一旦、坂の下方に向けて旋回体が旋回し、その後、油圧ポンプから供給される油によって主油通路の圧力が上昇した時点で旋回体が所望の方向に旋回する事態が起こり得る。
【0007】
これに対して特許文献3では、2つの主油通路にそれぞれチェック弁の機能を内蔵した中立保持弁を介在させ、操作レバーが無操作状態にある場合、並びに油圧ポンプから旋回用油圧モータに油を供給する場合、チェック弁の機能によって旋回用油圧モータから油圧ポンプに向かう油の流れを阻止している。特許文献3によれば、中立状態から操作レバーを操作して油圧ポンプから旋回用油圧モータに対して油を供給する際に、主油通路においてチェック弁よりも旋回用油圧モータに近い側の圧力が高くても、チェック弁によって油圧ポンプに向けた油の流れが阻止されているため、旋回体が操作レバーの操作方向とは逆方向に旋回する事態を招来する恐れがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−134663号公報
【特許文献2】特開昭57−81536号公報
【特許文献3】特開2011−33177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3にあっては、中立保持弁の弁内に設けたチェック弁の機能を有する部分の開口断面積を大きく確保することが困難であるため、油圧ポンプから旋回用油圧モータに油が流れる際の圧力損失も大きなものとなる。このため、油圧ポンプを駆動するポンプ駆動源のエネルギー消費量、例えばエンジンの燃料消費量が増大せざるを得ず、省エネルギーの観点から見た場合、必ずしも好ましいとはいえない。
【0010】
こうした問題は、中立保持弁を大型化することで解決することは可能である。すなわち、中立保持弁のスプールを大径化すれば、チェック弁機能部分の開口面積を大きく確保することができ、圧力損失を低減することが可能となる。しかしながら、大型化した中立保持弁にあっては、製造コストが増大するばかりでなく、操作レバーの操作に対する応答性が損なわれる恐れがある。因に、操作応答性を確保するにはパイロット圧を大きくせざるを得ないため、結局、ポンプ駆動源の燃料消費量が増大するのは否めない。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストが増大する問題や操作応答性を損なう問題を招来することなく、ポンプ駆動源のエネルギー消費量を低減することのできる油圧ショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧ショベルは、可変容量型油圧ポンプの第1吐出口及び旋回用油圧モータの第1吸込口の間を接続する第1主油通路と、前記油圧ポンプの第2吐出口及び前記旋回用油圧モータの第2吸込口の間を接続し、前記第1主油通路とによって前記油圧ポンプ及び前記旋回用油圧モータの間に閉回路を構成する第2主油通路と、前記第1主油通路及び前記第2主油通路に介在し、前記油圧ポンプ及び前記旋回用油圧モータの間の油の通過制御を行う中立保持弁とを備え、前記中立保持弁を中立位置に切り換えた場合に前記旋回用油圧モータから前記油圧ポンプへの油の通過を阻止し、前記旋回用油圧モータの回転を停止することによって旋回体の旋回を阻止するようにした旋回用油圧回路を備える油圧ショベルであって、前記旋回用油圧回路には、前記油圧ポンプの第1吐出口と前記旋回用油圧モータの第1吸込口との間及び前記油圧ポンプの第2吐出口と前記旋回用油圧モータの第2吸込口との間に、前記中立保持弁の位置に関わらず前記油圧ポンプと前記旋回用油圧モータとの間を接続し、かつ前記旋回用油圧モータから前記油圧ポンプへの油の通過を阻止する給油チェック弁を有した個別の給油通路を設け、前記中立保持弁は、前記第1主油通路及び前記第2主油通路の双方に渡って介在し、前記中立位置から第1位置もしくは第2位置に切り換わるものであり、前記第1位置に配置された場合には、前記旋回用油圧モータの第2吸込口から前記油圧ポンプの第2吐出口に向けた油の通過を許容するとともに、前記旋回用油圧モータの第1吸込口から前記油圧ポンプの第1吐出口に向けた油の通過を阻止し、前記第2位置に配置された場合には、前記旋回用油圧モータの第1吸込口から前記油圧ポンプの第1吐出口に向けた油の通過を許容するとともに、前記旋回用油圧モータの第2吸込口から前記油圧ポンプの第2吐出口に向けた油の通過を阻止することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述の油圧ショベルにおいて、前記給油通路は、前記中立保持弁をバイパスするように前記油圧ポンプの第1吐出口と前記旋回用油圧モータの第1吸込口との間及び前記油圧ポンプの第2吐出口と前記旋回用油圧モータの第2吸込口との間を接続することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上述の油圧ショベルにおいて、前記給油通路は、前記中立保持弁を通過して前記油圧ポンプの第1吐出口と前記旋回用油圧モータの第1吸込口との間及び前記油圧ポンプの第2吐出口と前記旋回用油圧モータの第2吸込口との間を接続し、かつ前記中立保持弁の外部に前記給油チェック弁を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、油圧ポンプの第1吐出口と旋回用油圧モータの第1吸込口との間及び油圧ポンプの第2吐出口と旋回用油圧モータの第2吸込口との間を接続する給油通路に給油チェック弁を配設し、中立保持弁が中立位置に配置された場合には給油通路の給油チェック弁を機能させて旋回用油圧モータから油圧ポンプへの油の通過を阻止し、かつ一方の給油通路を通じて油圧ポンプから旋回用油圧モータに油を供給する場合にもこの給油通路に介在させた給油チェック弁を機能させて旋回用油圧モータから油圧ポンプへの油の通過を阻止するようにしている。従って、給油チェック弁の機能を中立保持弁の外部に設けることが可能であり、中立保持弁を大型化せずとも油の通過開口断面積を十分に確保して圧力損失を低減することができる。これにより、製造コストが増大する問題や操作応答性を損なう問題を招来することなくポンプ駆動源のエネルギー消費量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である油圧ショベルに適用する旋回用油圧回路図である。
【図2】図2は、図1に示した旋回用油圧回路を適用した油圧ショベルの外観側面図である。
【図3】図3は、図2に示した油圧ショベルの平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2である油圧ショベルに適用する旋回用油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る油圧ショベルの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である油圧ショベルに適用する旋回用油圧回路図である。ここで例示する油圧ショベルは、図2及び図3に示すように、上部旋回体1及び下部走行体2を備えた油圧ショベルに適用し、下部走行体2に対して上部旋回体1を上下方向に沿った旋回軸心Cを中心に旋回させるもので、エンジン3によって駆動される油圧ポンプ10と、油圧ポンプ10から供給される油によって駆動される旋回用油圧モータ20と、これら油圧ポンプ10及び旋回用油圧モータ20の間に閉回路を構成する一対の主油通路30A,30Bとを備えて構成してある。
【0019】
油圧ポンプ10は、斜板11の傾転角を変更することにより、押しのけ容積及び油の吐出方向が変化する可変容量型のもので、上部旋回体1に配設したエンジン3に付設する形で設けてある。図1に示すように、油圧ポンプ10には、斜板11を動作させるための容量制御ユニット12が付設してある。容量制御ユニット12は、油圧ポンプ10の斜板11を動作させる容量制御シリンダ121と、容量制御シリンダ121の2つの圧力室に対する油の供給制御を行う容量制御弁122とを備えて構成したものである。
【0020】
容量制御シリンダ121は、ピストンロッド121aを介して油圧ポンプ10の斜板11に接続したもので、ピストンロッド121aが進退移動することにより油圧ポンプ10の斜板11を傾転動作させることが可能である。容量制御シリンダ121には、通常状態において斜板11の傾転角がゼロとなるようにピストンロッド121aを付勢する内蔵バネ121bが設けてある。
【0021】
容量制御弁122は、後述のコントローラ40から制御信号が出力された場合に、2つの容量制御用電磁比例弁41A,41Bを介して与えられるパイロット圧によって動作し、容量制御シリンダ121の2つの圧力室に対して適宜油を供給/排出させることでピストンロッド121aの位置を変更するものである。この容量制御弁122の給油ポート122aを介して容量制御シリンダ121に供給する油は、後述するチャージポンプ51の吐出口から吐出されるものである。
【0022】
旋回用油圧モータ20は、駆動した場合に作業機1aを備えた上部旋回体1を下部走行体2に対して旋回させることができるように油圧ショベルに設けたものである。本実施の形態1では、図2及び図3に示すように、出力軸21が鉛直下方に向いた状態で旋回用油圧モータ20が上部旋回体1に配設してあるとともに、出力軸21に接続した旋回減速機4の出力ギヤ4aが下部走行体2の旋回リング5に歯合している。旋回用油圧モータ20が回転すると、出力ギヤ4aが出力軸21の軸心を中心として自転するとともに下部走行体2の旋回リング5に沿って旋回軸心Cを中心に公転し、下部走行体2に対して上部旋回体1が旋回軸心Cを中心として旋回することになる。旋回用油圧モータ20の回転方向は、油圧ポンプ10からの油の供給方向に応じて変更することが可能であり、上部旋回体1を上方から見て右回り、もしくは左回りに旋回させることができる。
【0023】
一対の主油通路30A,30Bは、図1において油圧ポンプ10の上方に位置する第1吐出口10aと旋回用油圧モータ20の上方に位置する第1吸込口20aとの間を接続する第1主油通路30Aと、図1において油圧ポンプ10の下方に位置する第2吐出口10bと旋回用油圧モータ20の下方に位置する第2吸込口20bとの間を接続する第2主油通路30Bとを有したものである。これら第1主油通路30A及び第2主油通路30Bには、油圧ポンプ10と旋回用油圧モータ20との間に中立保持弁60及び2つの給油通路70A,70Bが設けてある。
【0024】
中立保持弁60は、後述のコントローラ40から制御信号が出力された場合に、2つの中立保持用電磁比例弁42A,42Bを介して与えられるパイロット圧によって動作し、油圧ポンプ10の第1吐出口10aに接続される第1ポンプポート60a及び第2吐出口10bに接続される第2ポンプポート60bと、旋回用油圧モータ20の第1吸込口20aに接続される第1モータポート60c及び第2吸込口20bに接続される第2モータポート60dとの間において油の通過制御を行うものである。図2及び図3に示すように、本実施の形態1では、旋回用油圧モータ20に付設する形で中立保持弁を配設するようにしている。
【0025】
この中立保持弁60は、図1に示すように、中立位置、第1位置及び第2位置の3位置に切り換わる。中立保持弁60の中立位置は、第1ポンプポート60aと第1モータポート60cとの間及び第2ポンプポート60bと第2モータポート60dとの間をそれぞれ遮断された状態に維持するものである。中立保持弁60が第1位置に切り換えられた場合には、第1ポンプポート60aと第1モータポート60cとの間が遮断された状態のまま、第2モータポート60dから第2ポンプポート60bに向けた油の通過が許容される。これに対して中立保持弁60が第2位置に切り換えられた場合には、第2ポンプポート60bと第2モータポート60dとの間が遮断された状態のまま、第1モータポート60cから第1ポンプポート60aに向けた油の通過が許容される。
【0026】
給油通路70A,70Bは、中立保持弁60をバイパスするように油圧ポンプ10の第1吐出口10aと旋回用油圧モータ20の第1吸込口20aとの間及び油圧ポンプ10の第2吐出口10bと旋回用油圧モータ20の第2吸込口20bとの間を接続するもので、それぞれに給油チェック弁71A,71Bを有している。給油チェック弁71A,71Bは、油圧ポンプ10から旋回用油圧モータ20への油の通過のみを許容するものである。尚、以下においては便宜上、油圧ポンプ10の第1吐出口10aと旋回用油圧モータ20の第1吸込口20aとの間を接続するものを第1給油通路70Aと称し、油圧ポンプ10の第2吐出口10bと旋回用油圧モータ20の第2吸込口20bとの間を接続するものを第2給油通路70Bと称して説明を行う。
【0027】
一方、油圧ショベルの旋回用油圧回路は、チャージユニット50及びレギュレータユニット80を備えるとともに、コントローラ40を備えている。
【0028】
チャージユニット50は、いずれか一方の主油通路30A,30Bの圧力が設定値を超えて低くなった場合に油を補充するためのもので、エンジン3によって駆動されるチャージポンプ51と、一端部がチャージポンプ51の吐出口に接続し、他端部が低圧選択弁52を介して第1主油通路30A及び第2主油通路30Bのそれぞれに接続したチャージ通路53と、チャージ通路53から分岐して上述した容量制御弁122の給油ポート122aに接続したチャージ給油通路54と、チャージ通路53に接続したチャージリリーフ弁55とを備えて構成してある。このチャージユニット50では、エンジン3が駆動した場合にチャージポンプ51が常時駆動された状態となり、例えば油圧ポンプ10や旋回用油圧モータ20の内部漏れに起因して第1主油通路30A及び第2主油通路30Bのいずれか一方の圧力がチャージリリーフ弁55の設定圧力よりも低くなった場合、低圧側の主油通路30A,30Bに対してチャージポンプ51から油が補充されることになる。尚、第1主油通路30A及び第2主油通路30Bの圧力がいずれもチャージリリーフ弁55の設定圧力以上であれば、チャージポンプ51から吐出された油は、チャージリリーフ弁55を介して油タンクTに戻される。
【0029】
レギュレータユニット80は、いずれか一方の主油通路30A,30Bの圧力が設定値を超えて高くなった場合に他方の主油通路30A,30Bに油を逃がすためのもので、第1主油通路30A及び第2主油通路30Bの間を接続する吸込油通路81に互いに逆向きとなるように調圧チェック弁82を介在させ、かつ個々の調圧チェック弁82に圧力制御弁83を並列に接続して構成してある。このレギュレータユニット80では、外力等の影響により、いずれか一方の主油通路30A,30B、例えば第1主油通路30Aの油圧が上昇し、圧力制御弁83の設定圧力を超えると、吸込油通路81が連通状態となり、第1主油通路30Aの油が低圧側となる第2主油通路30Bに流入することになる。
【0030】
コントローラ40は、操作レバー43が操作されたことを検出した場合に、操作レバー43の操作量及び操作方向に応じた制御信号を容量制御用電磁比例弁41A,41B及び中立保持用電磁比例弁42A,42Bに対して出力するものである。
【0031】
上記のように構成した油圧ショベルの旋回用油圧回路では、操作レバー43が中立位置に配置されている場合、容量制御用電磁比例弁41A,41Bを介して容量制御弁122の両端がタンク圧となるとともに、中立保持用電磁比例弁42A,42Bを介して中立保持弁60の両端がタンク圧となり、容量制御弁122及び中立保持弁60がそれぞれ中立位置に配置された状態となる。容量制御弁122が中立位置に配置されると、油圧ポンプ10の斜板傾転角がゼロとなるため、この状態からエンジン3を起動して油圧ポンプ10が駆動されても、油圧ポンプ10からの油の吐出量もゼロとなり、旋回用油圧モータ20が回転することはない。
【0032】
しかも、この状態においては中立保持弁60も中立位置に配置されており、旋回用油圧モータ20から油圧ポンプ10に向けた油の流れが阻止された状態にある。中立保持弁60をバイパスするように設けた第1給油通路70A及び第2給油通路70Bには、それぞれ旋回用油圧モータ20から油圧ポンプ10に向けた油の流れを阻止する給油チェック弁71A,71Bが設けてある。これにより、油圧ショベルを坂道に停車させる等、上部旋回体1にこれを旋回させようとする外力が加えられた場合にも、旋回用油圧モータ20を停止した状態に維持することができ、上部旋回体1が不用意に旋回する事態を招来する恐れがない。
【0033】
上述した状態から運転者が上部旋回体1を旋回させるべく操作レバー43を操作すると、コントローラ40から操作レバー43の操作量及び操作方向に応じた制御信号が容量制御用電磁比例弁41A,41B及び中立保持用電磁比例弁42A,42Bに対して出力され、油圧ポンプ10の斜板傾転角が変更されるとともに、中立保持弁60が切り換わる。
【0034】
この結果、例えば、油圧ポンプ10の第1吐出口10aから油が吐出されるとともに、中立保持弁60が第1位置に切り換えられると、油圧ポンプ10の第1吐出口10aから第1主油通路30Aに吐出された油が、第1給油通路70Aを経由して旋回用油圧モータ20の第1吸込口20aに供給される。旋回用油圧モータ20に供給された油は、第2吸込口20bから第2主油通路30Bに吐出された後、第1位置に配置された中立保持弁60を介して油圧ポンプ10の第2吐出口10bに至る。つまり、油圧ポンプ10から旋回用油圧モータ20に対して図1中の右回りに油が循環供給されることになり、例えば下部走行体2に対して上部旋回体1が右回りに旋回する。
【0035】
これとは逆に、操作レバー43を操作し、例えば、油圧ポンプ10の第2吐出口10bから油が吐出されるとともに、中立保持弁60が第2位置に切り換えられると、油圧ポンプ10の第2吐出口10bから第2主油通路30Bに吐出された油が、第2給油通路70Bを経由して旋回用油圧モータ20の第2吸込口20bに供給される。旋回用油圧モータ20に供給された油は、第1吸込口20aから第1主油通路30Aに吐出された後、第2位置に配置された中立保持弁60を介して油圧ポンプ10の第1吐出口10aに至る。つまり、油圧ポンプ10から旋回用油圧モータ20に対して図1中の左回りに油が循環供給されることになり、例えば下部走行体2に対して上部旋回体1が左回りに旋回する。
【0036】
これらの動作の間、上記油圧ショベルによれば、常に給油通路70A,70Bの給油チェック弁71A,71Bを介して油圧ポンプ10から旋回用油圧モータ20に油が供給されることになり、旋回用油圧モータ20から油圧ポンプ10に向けた油の流れが阻止された状態にある。従って、中立状態から操作レバー43を操作した初期の段階において主油通路30A,30Bの圧力が低い状態にあっても、上部旋回体1が操作者の意に反して逆方向に旋回する事態を招来することがなく、停止状態から操作レバー43の操作方向に応じた向きに旋回を開始するようになる。
【0037】
しかも、給油チェック弁71A,71Bは、中立保持弁60の外部に設けたものであるため、中立保持弁60を大型化することなく油の通過面積を十分に確保して圧力損失を低減することができる。これにより、製造コストが増大する問題や操作応答性を損なう問題を招来することなく、エンジン3の燃料消費量を低減して省エネルギーに寄与することが可能となる。
【0038】
(実施の形態2)
上述した実施の形態1の油圧ショベルでは、中立保持弁60に対して給油通路70A,70Bをバイパスするように設けているが、本発明はこれに限らない。例えば、図4に示す実施の形態2の油圧ショベルでは、中立保持弁160を通過して油圧ポンプ10の第1吐出口10aと旋回用油圧モータ20の第1吸込口20aとの間を接続するとともに、油圧ポンプ10の第2吐出口10bと旋回用油圧モータ20の第2吸込口20bとの間を接続するように給油通路を設けるようにしている。
【0039】
すなわち、実施の形態2の中立保持弁160は、油圧ポンプ10の側に第1吐出口10aに接続される第1ポンプポート160a及び第2吐出口10bに接続される第2ポンプポート160bを有する一方、旋回用油圧モータ20の側に第1吸込口20aに接続される第1モータポート160c、給油チェック弁171Aを介して第1吸込口20aに接続される第1給油ポート160e、第2吸込口20bに接続される第2モータポート160d、給油チェック弁171Bを介して第2吸込口20bに接続される第2給油ポート160fとを有し、これら油圧ポンプ10の側の2つのポート160a,160bと旋回用油圧モータ20の側の4つのポート160c,160e,160d,160fとの間の油の通過制御を行うものである。2つの給油チェック弁171A,171Bは、いずれも中立保持弁160の外部に設けたものである。
【0040】
この中立保持弁160は、実施の形態1の中立保持弁60と同様、中立位置、第1位置及び第2位置の3位置に切り換わる。中立保持弁160の中立位置は、第1モータポート160c及び第2モータポート160dを遮断した状態で第1ポンプポート160aと第1給油ポート160eとの間及び第2ポンプポート160bと第2給油ポート160fとの間をそれぞれ連通した状態に維持するものである。中立保持弁160が第1位置に切り換えられた場合には、第1モータポート160cを遮断し、かつ第1ポンプポート160aと第1給油ポート160eとの間を連通した状態のまま、第2モータポート160dから第2ポンプポート160bに向けた油の通過が許容される。これに対して中立保持弁160が第2位置に切り換えられた場合には、第2モータポート160dを遮断し、かつ第2ポンプポート160bと第2給油ポート160fとの間を連通した状態のまま、第1モータポート160cから第1ポンプポート160aに向けた油の通過が許容される。コントローラ40から制御信号が出力された場合に、2つの中立保持用電磁比例弁42A,42Bを介して与えられるパイロット圧によって中立保持弁160が動作するのは実施の形態1と同様である。
【0041】
尚、実施の形態2で示した油圧ショベルの旋回用油圧回路において、上述した以外の構成及び上部旋回体1や下部走行体2への配置態様に関しては、実施の形態1と同様であるため、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0042】
上記のように構成した油圧ショベルの旋回用油圧回路では、中立保持弁160の第1ポンプポート160aから第1給油ポート160e及び給油チェック弁171Aを経て第1主油通路30Aに接続される油通路が一方の給油通路(以下、第1給油通路170Aという)を構成し、中立保持弁160の第2ポンプポート160bから第2給油ポート160f及び給油チェック弁171Bを経て第2主油通路30Bに接続される油通路がもう一方の給油通路(以下、第2給油通路170Bという)を構成している。
【0043】
操作レバー43が中立位置に配置されている場合には、容量制御用電磁比例弁41A,41Bを介して容量制御弁122の両端がタンク圧となるとともに、中立保持用電磁比例弁42A,42Bを介して中立保持弁160の両端がタンク圧となり、容量制御弁122及び中立保持弁160がそれぞれ中立位置に配置された状態となる。容量制御弁122が中立位置に配置されると、油圧ポンプ10の斜板傾転角がゼロとなるため、この状態からエンジン3を起動しても油圧ポンプ10からの油の吐出量もゼロとなり、旋回用油圧モータ20が回転することはない。
【0044】
しかも、この状態においては中立保持弁160も中立位置に配置され、第1モータポート160c及び第2モータポート160dが遮断されているため、旋回用油圧モータ20から油圧ポンプ10に向けた油の流れが阻止された状態にある。中立保持弁160を通過するように設けた第1給油通路170A及び第2給油通路170Bには、それぞれ旋回用油圧モータ20から油圧ポンプ10に向けた油の流れを阻止する給油チェック弁171A,171Bが設けてある。これにより、油圧ショベルを坂道に停車させる等、上部旋回体1にこれを旋回させようとする外力が加えられた場合にも、旋回用油圧モータ20を停止した状態に維持することができ、上部旋回体1が不用意に旋回する事態を招来する恐れがない。
【0045】
上述した状態から運転者が上部旋回体1を旋回させるべく操作レバー43を操作すると、コントローラ40から操作レバー43の操作量及び操作方向に応じた制御信号が容量制御用電磁比例弁41A,41B及び中立保持用電磁比例弁42A,42Bに対して出力され、油圧ポンプ10の斜板傾転角が変更されるとともに、中立保持弁160が切り換わる。
【0046】
この結果、例えば、油圧ポンプ10の第1吐出口10aから油が吐出されるとともに、中立保持弁160が第1位置に切り換えられると、油圧ポンプ10の第1吐出口10aから第1主油通路30Aに吐出された油が、第1給油通路170Aを経由して旋回用油圧モータ20の第1吸込口20aに供給される。旋回用油圧モータ20に供給された油は、第2吸込口20bから第2主油通路30Bに吐出された後、第1位置に配置された中立保持弁160の第2モータポート160d及び第2ポンプポート160bを介して油圧ポンプ10の第2吐出口10bに至る。つまり、油圧ポンプ10から旋回用油圧モータ20に対して図1中の右回りに油が循環供給されることになり、例えば下部走行体2に対して上部旋回体1が右回りに旋回する。
【0047】
これとは逆に、操作レバー43を操作し、例えば、油圧ポンプ10の第2吐出口10bから油が吐出されるとともに、中立保持弁160が第2位置に切り換えられると、油圧ポンプ10の第2吐出口10bから第2主油通路30Bに吐出された油が、第2給油通路170Bを経由して旋回用油圧モータ20の第2吸込口20bに供給される。旋回用油圧モータ20に供給された油は、第1吸込口20aから第1主油通路30Aに吐出された後、第2位置に配置された中立保持弁160の第1モータポート160c及び第1ポンプポート160aを介して油圧ポンプ10の第1吐出口10aに至る。つまり、油圧ポンプ10から旋回用油圧モータ20に対して図1中の左回りに油が循環供給されることになり、例えば下部走行体2に対して上部旋回体1が左回りに旋回する。
【0048】
これらの動作の間、上記油圧ショベルによれば、常に給油通路170A,170Bの給油チェック弁171A,171Bを介して油圧ポンプ10から旋回用油圧モータ20に油が供給されることになり、旋回用油圧モータ20から油圧ポンプ10に向けた油の流れが阻止された状態にある。従って、中立状態から操作レバー43を操作した初期の段階において主油通路30A,30Bの圧力が低い状態にあっても、上部旋回体1が操作者の意に反して逆方向に旋回する事態を招来することがなく、停止状態から操作レバー43の操作方向に応じた向きに旋回を開始するようになる。
【0049】
しかも、給油チェック弁171A,171Bは、中立保持弁160の外部に設けたものであるため、中立保持弁160を大型化することなく油の通過面積を十分に確保して圧力損失を低減することができる。これにより、製造コストが増大する問題や操作応答性を損なう問題を招来することなく、エンジン3の燃料消費量を低減して省エネルギーに寄与することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 上部旋回体
10 油圧ポンプ
10a 第1吐出口
10b 第2吐出口
20 旋回用油圧モータ
20a 第1吸込口
20b 第2吸込口
21 出力軸
30A,30B 主油通路
60 中立保持弁
70A,70B 給油通路
71A,71B 給油チェック弁
160 中立保持弁
170A,170B 給油通路
171A,171B 給油チェック弁
C 旋回軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型油圧ポンプの第1吐出口及び旋回用油圧モータの第1吸込口の間を接続する第1主油通路と、
前記油圧ポンプの第2吐出口及び前記旋回用油圧モータの第2吸込口の間を接続し、前記第1主油通路とによって前記油圧ポンプ及び前記旋回用油圧モータの間に閉回路を構成する第2主油通路と、
前記第1主油通路及び前記第2主油通路に介在し、前記油圧ポンプ及び前記旋回用油圧モータの間の油の通過制御を行う中立保持弁と
を備え、前記中立保持弁を中立位置に切り換えた場合に前記旋回用油圧モータから前記油圧ポンプへの油の通過を阻止し、前記旋回用油圧モータの回転を停止することによって旋回体の旋回を阻止するようにした旋回用油圧回路を備える油圧ショベルであって、
前記旋回用油圧回路には、
前記油圧ポンプの第1吐出口と前記旋回用油圧モータの第1吸込口との間及び前記油圧ポンプの第2吐出口と前記旋回用油圧モータの第2吸込口との間に、前記中立保持弁の位置に関わらず前記油圧ポンプと前記旋回用油圧モータとの間を接続し、かつ前記旋回用油圧モータから前記油圧ポンプへの油の通過を阻止する給油チェック弁を有した個別の給油通路を設け、
前記中立保持弁は、前記第1主油通路及び前記第2主油通路の双方に渡って介在し、前記中立位置から第1位置もしくは第2位置に切り換わるものであり、
前記第1位置に配置された場合には、前記旋回用油圧モータの第2吸込口から前記油圧ポンプの第2吐出口に向けた油の通過を許容するとともに、前記旋回用油圧モータの第1吸込口から前記油圧ポンプの第1吐出口に向けた油の通過を阻止し、
前記第2位置に配置された場合には、前記旋回用油圧モータの第1吸込口から前記油圧ポンプの第1吐出口に向けた油の通過を許容するとともに、前記旋回用油圧モータの第2吸込口から前記油圧ポンプの第2吐出口に向けた油の通過を阻止する
ことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
前記給油通路は、前記中立保持弁をバイパスするように前記油圧ポンプの第1吐出口と前記旋回用油圧モータの第1吸込口との間及び前記油圧ポンプの第2吐出口と前記旋回用油圧モータの第2吸込口との間を接続することを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項3】
前記給油通路は、前記中立保持弁を通過して前記油圧ポンプの第1吐出口と前記旋回用油圧モータの第1吸込口との間及び前記油圧ポンプの第2吐出口と前記旋回用油圧モータの第2吸込口との間を接続し、かつ前記中立保持弁の外部に前記給油チェック弁を備えることを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104244(P2013−104244A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249504(P2011−249504)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】